説明

フルオロエラストマーを製造するためのフルオロポリマー

本発明の一態様に従って、(i)反復単位の総量を基準にして0.1〜0.5モル%の量で非晶質フルオロポリマーに含有される1種以上の硬化部位成分を有する非晶質フルオロポリマー、および/または(ii)脱ヒドロフッ素化することができる非晶質フルオロポリマーが提供され、その非晶質フルオロポリマーは、(a)1種以上の気体フッ素化モノマーと(b)モノマーの全重量を基準にして、オレフィン二重結合の炭素に結合した臭素原子またはヨウ素原子を有する1種以上のオレフィン0.5重量%以下との重合から誘導可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、非晶質フルオロポリマー、つまりフッ素化主鎖を有する非晶質ポリマーに関する。非晶質フルオロポリマーは硬化性であり、硬化させてフルオロエラストマーを得ることができる。特に、本発明は、例えばチューブなどの物品への押出し成形において、かつ射出成形物品において望ましい加工特性を有するかかるフルオロポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
フルオロポリマーは長い間知られており、耐熱性、耐薬品性、耐候性、紫外線安定性等のいくつかの望ましい特性のために、様々な用途で使用されている。フルオロポリマーの種々の用途は、例えば、(非特許文献1)に記載されている。フルオロポリマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)および/またはフッ化ビニリデン(VDF)などの気体フッ化オレフィンのホモポリマー、ならびに気体フッ化オレフィンと、1種以上のコモノマー、例えばヘキサフルオロプロピレン(HFP)またはパーフルオロビニルエーテル(PVE)またはエチレン(E)およびプロピレン(P)などの非フッ素化オレフィンとのコポリマーが挙げられる。
【0003】
フルオロポリマーとしては、溶融加工性および非溶融加工性のポリマーが挙げられる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、およびテトラフルオロエチレンと少量のコモノマー(例えば、0.5重量%以下)とのコポリマーは一般に、その分子量および溶融粘度が高いことから、熱可塑性ポリマーの加工に使用される従来の装置で溶融加工することができない。したがって、これらの非溶融加工性フルオロポリマーに関しては、これらのフルオロポリマーを所望の物品および形状に形成することができるように、特別な加工技術が開発されている。
【0004】
溶融加工可能な熱可塑性フルオロポリマーも公知であり、これらは、フッ素化モノマーおよび/または非フッ素化モノマーの様々な組み合わせから得ることができる。熱可塑性フルオロポリマーが溶融加工可能である場合、それらは、例えば成形または押出し成形などの熱可塑性ポリマーの加工に一般に使用される装置で加工することができる。溶融加工可能な熱可塑性フルオロポリマーとしては、一般に非晶質のフルオロポリマーおよびかなりの結晶性を有するフルオロポリマーが挙げられる。一般に非晶質であるフルオロポリマーは通常、フルオロポリマーを硬化または加硫することによってフルオロエラストマーを製造するために使用される。硬化後にエラストマー特性が一般に得られるが、フルオロエラストマーを製造するために使用されるフルオロポリマーは、フルオロエラストマーとも呼ばれることが多い。かなりの結晶性を有し、したがって、はっきりと検出可能な、顕著な融点を有する、溶融加工可能な熱可塑性フルオロポリマーが、フルオロサーモプラスチック(fluorothermoplast)として当技術分野で公知である。それらは通常、そのモノマー組成に応じて、100℃〜320℃の間の融点を有する。
【0005】
非晶質フルオロポリマーは、非晶質フルオロポリマー中の硬化部位を提供することによって硬化することができ、次いで、硬化組成物の1つ以上の成分と反応して3次元架橋性網状構造を提供することができる。一般に、硬化部位は、過酸化物硬化反応に関与することができる臭素またはヨウ素などのハロゲンを含むか、あるいは硬化部位は、過酸化物または他の硬化成分と硬化することもできるニトリル基を含み得る。代替方法として、非晶質フルオロポリマーを脱ヒドロフッ素化(dehydrofluorinate)して、後に硬化反応に関与し得る硬化部位を形成することができる。かかる非晶質フルオロポリマーは、部分的にフッ素化されており、つまり、これらは、主鎖に炭素−水素結合を含有し、ビスフェノール硬化性フルオロポリマーとして当技術分野で公知である。
【0006】
過酸化物硬化性非晶質フルオロポリマーは、様々な発行物で開示されている。例えば、(特許文献1)には、ヨウ素化化合物の存在下で連続乳化重合することによって得られるフルオロポリマーが開示されている。このようにして製造されたフルオロポリマーは、ヨウ素を少なくとも0.1重量%含有する。フルオロポリマーはさらに、ポリマー中の臭素の量が0.1重量%と1重量%の間であるように、臭素を有する反復単位を含む。
【0007】
(特許文献2)には、ヨウ素含有モノマーの反復単位を含む過酸化物硬化性フルオロポリマーが開示されている。反復単位は、0.1〜2モル%の量でポリマー中に含有される。かかるフルオロポリマーは、臭素含有反復単位を有する類似体フルオロポリマーと比較して、硬化が速く、優れた圧縮永久ひずみを有することが教示されている。そのフルオロポリマーは、加工の利点を表す、臭素含有類似体よりも低い粘度を有することも開示されている。
【0008】
臭素含有過酸化物硬化性フルオロポリマーが、(特許文献3)および(特許文献4)に教示されている。後者の特許には、式CF2Br−(Rfn−O−CF=CF2(式中、Rfは、フッ素化アルキレンであり、nは、0または1である)の臭素化パーフルオロビニルモノマーから誘導される反復単位を含むフルオロポリマーが教示されている。このポリマーは、式R−(CF2Br)m(mは、1または2である)の連鎖移動剤の存在下で製造される。かかる連鎖移動剤を使用することによって、他の臭素含有連鎖移動剤と比較して、フルオロポリマーの分枝形成の可能性を最小限に維持することができることが教示されている。
【0009】
非晶質フルオロポリマーは一般に、例えば、チューブ、ガスケット、Oリング等を含む様々なエラストマー物品の製造に使用される。エラストマー物品の製造において、非晶質フルオロポリマーを含む硬化性エラストマー組成物および硬化組成物が押出し成形または射出成形され得る。押出し成形、特に射出成形における非晶質フルオロポリマーの加工挙動が改善されることが依然として望まれている。例えば、射出成形において、特に高速での金型の充填で問題が起こる場合がある。
【0010】
【特許文献1】EP第398241号明細書
【特許文献2】EP第171290号明細書
【特許文献3】米国特許第4,214,060号明細書
【特許文献4】EP 211251号明細書
【特許文献5】米国特許第4,501,869号明細書
【特許文献6】米国特許第4,000,356号明細書
【特許文献7】EPA第0 661 304 A1号明細書
【特許文献8】EPA第0 784 064 A1号明細書
【特許文献9】EPA第0 769 521 A1号明細書
【特許文献10】米国特許第4,233,421号明細書
【特許文献11】米国特許第4,912,171号明細書
【特許文献12】米国特許第5,086,123号明細書
【特許文献13】米国特許第5,262,490号明細書
【特許文献14】米国特許第5,929,169号明細書
【特許文献15】米国特許第5,591,804号明細書
【特許文献16】米国特許第3,876,654号明細書
【非特許文献1】Modern Fluoropolymers、John Scheirs編、Wiley Science 1997
【非特許文献2】R.N.Shroff、H.Mavridis著;Macromol.、32、8454−8464(1999)&34、7362−7367(2001)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
特に押出し成形および射出成形における非晶質フルオロポリマーの加工特性を改善することが望まれる。チューブの押出し成形での加工を改善するために、臨界剪断強さおよび溶融張力を向上させることが特に望ましい。加工特性のかかる向上によって、フルオロエラストマーを得るためのフルオロポリマーの硬化、および得られたフルオロエラストマーの機械的特性および物理的特性が悪影響を受けないことがさらに望まれる。フルオロポリマーは容易かつ簡便な方法で、そして環境に優しい方法で製造することができることもまた一般に望ましい。
【0012】
本発明の一態様にしたがって、非晶質フルオロポリマーが提供され、その非晶質フルオロポリマーは、(i)反復単位の総量を基準にして0.1モル%と0.5モル%との間の量で非晶質フルオロポリマー中に含有される1種以上の硬化部位成分を有するか、または(ii)脱ヒドロフッ素化することができ、この非晶質フルオロポリマーは、(a)1種以上の気体フッ素化モノマーと(b)モノマーの全重量を基準にして、オレフィン二重結合の炭素に結合した臭素原子またはヨウ素原子を有する1種以上のオレフィン0.5重量%以下との重合から誘導可能であるか、あるいはその非晶質フルオロポリマーは、(i)と(ii)のある組み合わせを有する。
【0013】
本発明による非晶質フルオロポリマーは、特に射出成形および押出し成形において向上した加工特性を有することが見出された。例えば、このフルオロポリマーは、向上した臨界ずり速度(すなわち、フルオロポリマーの押出し成形においてメルトフラクチャーが起こる速度)を有する。さらに、非晶質フルオロポリマーは良好な効果特徴を有し、得られるエラストマーは良好な機械的特性および物理的特性を有することが見出されている。
【0014】
本発明のさらなる態様において、フルオロポリマーを製造する方法が提供される。この方法は、(a)1種以上の気体フッ素化モノマーと、(b)モノマーの全重量を基準にして、オレフィン二重結合の炭素に結合した臭素原子またはヨウ素原子を有する1種以上のオレフィン0.5重量%以下とを重合する工程、および;(i)硬化部位を含む1種以上の成分の存在下で、1種以上の気体フッ素化モノマーを重合する工程(前記成分の総量は、非晶質フルオロポリマー中の硬化部位成分を反復単位の総量を基準にして0.1モル%と0.5モル%の間で導入するのに十分である)によってか、あるいは(ii)脱ヒドロフッ素化することができる非晶質フルオロポリマーを提供するために、前記の1種以上の気体フッ素化モノマーとして少なくとも1種類の部分的にフッ素化された気体モノマーを選択する工程、または前記気体フッ素化モノマーと、1種以上の非フッ素化コモノマーもしくは部分的にフッ素化された非気体モノマーとを共重合する工程によって、フルオロポリマーに硬化能力を提供する工程;を含む。
【0015】
なおさらなる態様において、本発明は、フルオロエラストマーを製造するための硬化性組成物を提供する。この組成物は、上記で定義される非晶質フルオロポリマーと、非晶質フルオロポリマーを硬化するための1種以上の成分を含む硬化組成物とを含む。本発明は、硬化性組成物を射出成形または押出し成形し、前記硬化性組成物を硬化させる工程を含む、エラストマー物品を製造する方法も提供する。
【0016】
本発明と関連する、「コポリマー」という用語は一般に、明示されていない他のモノマーから誘導される更なる他の反復単位が存在する選択肢を排除することなく、記載のモノマーから誘導される反復単位を含むポリマーを意味するものと理解されるべきである。したがって、例えば、「モノマーAとモノマーBのコポリマー」という用語は、AおよびBの二成分からなるポリマーならびに例えばターポリマーなどの、AおよびB以外の更なるモノマーを有するポリマーを包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明に従って、非晶質フルオロポリマーは、(a)1種以上の気体フッ素化モノマーと、(b)モノマーの全重量を基準にして、オレフィン二重結合の炭素に結合した臭素原子またはヨウ素原子を有する1種以上のオレフィン0.5重量%以下との重合から誘導可能である。そのオレフィンは、Br原子および/またはI原子を含有することに加えて、フッ素化されていなくてもよく(すなわち、フッ素原子を含有しない)、部分的にフッ素化されていてもよく(すなわち、水素原子の一部(しかし全てではない)がフッ素原子で置換されている)、あるいはオレフィンは、IまたはBrで置換されている水素原子を除いては、すべての水素原子がフッ素原子で置換されている過フッ素化化合物であってもよい。
【0018】
特定の実施形態において、そのオレフィンは、一般式:
2C=CXZ(I)
(式中、Xはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1つのXがBrまたはIを表すという条件で、水素、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択され、Zは、水素、F、Cl、Br、I、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基またはパーフルオロポリエーテル基を表す)に相当する。パーフルオロアルキル基の例としては、炭素原子1〜8個、例えば炭素原子1〜5個を有する直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基が挙げられる。パーフルオロアルコキシ基の例としては、アルキル基中に炭素原子1〜8個、例えば炭素原子1〜5個を有し、そのためにアルキル基が直鎖状または分岐状であり得る基が挙げられる。パーフルオロポリエーテル基の例としては、次式:
−O(R1fO)n(R2fO)m3f
(式中、R1fおよびR2fはそれぞれ、炭素原子1〜6個、特に炭素原子2〜6個の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して、0〜10であり、m+nは少なくとも1であり、R3fは、炭素原子1〜6個のパーフルオロアルキル基である)に相当する基が挙げられる。
【0019】
特定の実施形態において、式(I)(式中、Xは、少なくとも1つのXがBrを表すという条件で、水素、FおよびBrから選択され、Zは、水素、F、Br、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルコキシ基である)のオレフィンを用いることができる。好都合に使用され得るオレフィンの具体的な例としては、1−ブロモ−1,2,2,−トリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン(BTFEと呼ばれる)、臭化ビニル、1,1−ジブロモエチレン、1,2−ジブロモエチレンおよび1−ブロモ−2,3,3,3−テトラフルオロ−プロペンが挙げられる。一般に、1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン(BDFE)が好ましい。
【0020】
非晶質フルオロポリマーの調製に前述のオレフィンを使用することによって、ポリマーは非直鎖状ポリマー、つまり分岐状ポリマーとなる。分岐または非直鎖のレベルは、長鎖分岐指数(long chain branching index)(LCBI)によって特徴付けることができる。LCBIは、等式:
【数1】

に従って、(非特許文献2)に記載のように決定することができる。
【0021】
上記の等式において、η0,brは、温度Tで測定された分岐状フルオロポリマーのゼロずり粘度(単位Pa.s)であり、[η]brは、分岐状フルオロポリマーが溶解され得る溶媒中の温度T’での分岐状フルオロポリマーの固有粘度(単位ml/g)であり、aおよびkは定数である。これらの定数は、以下の等式:
【数2】

(式中、η0,linおよび[η]linは、それぞれ同じ温度TおよびT’にて同じ溶媒中で測定された、相当する直鎖状フルオロポリマーのゼロずり粘度および固有粘度をそれぞれ表す)から決定される。したがって、当然のことながら等式1および2で同じ溶媒および温度が使用されるという条件で、LCBIは、測定温度および選択される溶媒の選択に依存しない。ゼロずり粘度および固有粘度は通常、凍結凝固(freeze coagulated)フルオロポリマーで決定される。
【0022】
溶融加工可能なポリマー組成物中で使用され得るフルオロポリマーの一部の試験条件と共に、aおよびkの値を以下の表に示す:
【0023】
【表1】

【0024】
上記の表において、ポリマーにおけるモノマー単位の指数は、各単位の量をモル%で示し、試験条件は以下のとおりである:
A:265℃でのずり粘度および35℃のメチルエチルケトン中での固有粘度
B:230℃でのずり粘度および23℃のジメチルホルムアミド中での固有粘度
C:230℃でのずり粘度および110℃のジメチルホルムアミド中での固有粘度
【0025】
上記の表から、定数Aは、試験されたフルオロポリマーに依存しないと思われるのに対して、k値は、使用されるフルオロポリマーの組成および試験条件によって変化することが確認され得る。
【0026】
非晶質フルオロポリマーのLCBIは、使用されるオレフィンの性質および量によって影響を受ける場合がある。一般に、少なくとも0.1のLCBIを有する非晶質フルオロポリマーを得ることが望まれる。例えば、一実施形態において、LCBIは少なくとも0.5であり、他の実施形態では、LCBIは少なくとも1であり、さらに他の実施形態では、LCBIは少なくとも1.5である。フルオロポリマーの所定の分子量に関しては、臨界ずり速度は、LCBIの増加に伴って向上することが一般に確認されている。しかしながら、このことによって、フルオロエラストマーの加工特性および/または最終特性を付与し得る、かなりの量のゲルフラクションをフルオロポリマーが有するようになる可能性があることから、そのLCBIは、高すぎてはならない。一般に、LCBIは0.1と3との間であるべきである。一般に所望のLCBIを達成するために、二重結合上に臭素原子またはヨウ素原子を有するオレフィンが、フルオロポリマーを製造するために使用されるモノマーの全重量を基準にして0.5重量%以下の量で使用されるべきである。オレフィンの一般的な量は0.01重量%と0.4重量%との間である。特定の実施形態では、その量は0.05重量%と0.35重量%との間である。
【0027】
溶液重合および懸濁重合などの公知の重合技術のいずれかを用いて、フルオロポリマーを得ることができる。フルオロポリマーは一般に、公知の手法で行われ得る水性乳化重合プロセスによって製造される。水性乳化重合プロセスで使用される反応容器は一般に、重合反応中に内部圧力に耐えることができる加圧可能な容器である。一般に、その反応容器は、反応内容物を完全に混合する機械撹拌機と、熱交換システムとを備える。任意の量のフルオロモノマー(1種以上)を反応容器に充填することができる。モノマーは、バッチ式(batchwise)で充填されてもよいし、または連続式もしくは半連続式で充填されてもよい。半連続式とは、重合過程中にモノマーの複数のバッチが容器に充填されることを意味する。モノマーが反応がまに添加される独立した速度は、時間の経過に伴う特定のモノマーの消費速度に依存する。好ましくは、モノマーの添加速度は、モノマーの消費速度、つまりポリマーへのモノマーの転化率に等しい。
【0028】
反応がまに、水を充填する。その量は重要ではない。水相に、フッ素化界面活性剤、通常非テロゲン(non−telogenic)フッ素化界面活性剤も一般に添加される。重合は、フッ素化界面活性剤を添加することなく行うこともできる。使用される場合、フッ素化界面活性剤は一般に、0.01重量%〜1重量%の量で使用される。適切なフッ素化界面活性剤としては、水性乳化重合で通常用いられるいずれかのフッ素化界面活性剤が挙げられる。特に好ましいフッ素化界面活性剤は、
一般式:
Y−Rf−Z−M
(式中、Yは、水素、ClまたはFを表し;Rfは、炭素原子4〜10個を有する直鎖状または分岐状の過フッ素化アルキレンを表し;Zは、COO-またはSO3-を表し、Mは、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンを表す)に相当する界面活性剤である。本発明で使用される最も好ましいフッ素化界面活性剤は、パーフルオロオクタン酸およびパーフルオロオクタンスルホン酸のアンモニウム塩である。フッ素化界面活性剤の混合物を使用することができる。
【0029】
フルオロポリマーの分子量を制御するために、重合の際に連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤は一般に、重合開始前に反応がまに充填される。有用な連鎖移動剤としては、エタン、アルコール、エーテル、脂肪族カルボン酸エステルおよびマロン酸エステルを含むエステル、ケトン、ハロカーボンなどのC2〜C6炭化水素が挙げられる。特に有用な連鎖移動剤は、ジメチルエーテルおよびメチルt−ブチルエーテルなどのジアルキルエーテルである。重合中に連続式または半連続式で連鎖移動剤の更なる添加も行うことができる。例えば、二峰性分子量分布を有するフルオロポリマーは好都合なことに、初期量の連鎖移動剤の存在下でフッ素化モノマーを最初に重合し、次いで、重合の後の時点で追加のモノマーと共に更なる連鎖移動剤を添加することによって調製される。
【0030】
重合は通常、モノマーの最初の充填の後に水相に開始剤または開始剤系を添加することによって開始される。例えば、過酸化物をフリーラジカル開始剤として使用することができる。過酸化物開始剤の具体的な例としては、過酸化水素、ジアセチル過酸化物などのジアシル過酸化物、ジプロピオニル過酸化物、ジブチリル過酸化物、ジベンゾイル過酸化物、ベンゾイルアセチル過酸化物、ジグルタル酸過酸化物およびジラウリル過酸化物、およびその他の水溶性過酸およびその水溶性塩、例えばアンモニウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩が挙げられる。過酸の例としては、過酢酸が挙げられる。過酸のエステルも使用することができ、その例としては、t−ブチルパーオキシアセテートおよびt−ブチルパーオキシピバレートが挙げられる。使用することができる開始剤の他の種類は、水溶性アゾ化合物である。開始剤として使用される適切な酸化還元系としては、例えば、ペルオキソ二硫酸塩および水素亜硫酸塩または二亜硫酸塩の組み合わせ、チオ硫酸塩およびペルオキソ二硫酸塩の組み合わせ、またはペルオキソ二硫酸塩およびヒドラジンの組み合わせが挙げられる。使用することができる他の開始剤は、過硫酸、過マンガン酸またはマンガン酸(1種以上)のアンモニウム塩、アルカリ塩またはアルカリ土類塩である。用いられる開始剤の量は一般に、重合混合物の全重量を基準にして0.03重量%と2重量%の間、好ましくは0.05重量%と1重量%の間である。開始剤の全量が重合の開始時に添加されてもよいし、あるいは重合中に連続式で転化率70〜80%まで開始剤を重合に添加することができる。開始時に開始剤の一部を添加し、その残りをひとまとめに、または分けて、重合中に添加することもできる。例えば、鉄、銅および銀の水溶性塩などの促進剤も好ましくは添加され得る。
【0031】
重合反応を開始して、密閉された反応がまおよびその内容物を、反応温度に都合よく予熱する。重合温度は、20℃〜150℃、特に30℃〜110℃、さらに具体的には40℃〜100℃である。重合圧力は一般に、4バールと30バールとの間、特に8〜20バールである。水性乳化重合システムはさらに、緩衝剤および錯形成剤などの助剤を含むことができる。
【0032】
重合の最後に得られるポリマー固形物の量は一般に、10重量%と45重量%との間、好ましくは20重量%と40重量%との間であり、得られるフルオロポリマーの平均粒径は一般に、50nmと500nmとの間である。
【0033】
(水性エマルジョン)重合プロセスは、過フッ素化されていてもいなくてもよい1種以上の気体フッ素化モノマーの重合を含む。気体フッ素化モノマーの例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)、パーフルオロアルキルビニルモノマー、例えばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ素化アリルエーテル、特に過フッ素化アリルエーテルおよびフッ素化ビニルエーテル、特にパーフルオロメチルビニルエーテルなどのパーフルオロビニルエーテルが挙げられる。部分的にフッ素化された気体モノマーを使用することによって、脱ヒドロフッ素化することができるフルオロポリマーが提供され得る。例えば、VDFは、脱ヒドロフッ素化することができるフルオロポリマーを提供するのに特に適している。気体フッ素化モノマーとの共重合に使用することができるコモノマーとしては、非気体フッ素化モノマー、つまり、重合条件下で液相中にあるフッ素化モノマー、およびエチレンおよびプロピレンなどの非フッ素化モノマーが挙げられる。脱ヒドロフッ素化することができるフルオロポリマーが望ましく、過フッ素化気体モノマーが使用される場合には、フルオロポリマーに脱ヒドロフッ素化能力を付与するために、コモノマーは部分的にフッ素化されているか、またはフッ素化されていないべきである。
【0034】
本発明のプロセスで使用することができるパーフルオロビニルエーテルの例としては、次式:
CF2=CF−O−Rf
(式中、Rfは、1つ以上の酸素原子を含有し得る過フッ素化脂肪族基を表す)に相当するパーフルオロビニルエーテルが挙げられる。特に好ましい過フッ素化ビニルエーテルは、次式:
CF2=CFO(RafO)n(RbfO)mcf
(式中、RafおよびRbfは、炭素原子1〜6個、特に炭素原子2〜6個の、異なる直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して、0〜10であり、Rcfは、炭素原子1〜6個のパーフルオロアルキル基である)に相当する。過フッ素化ビニルエーテルの具体的な例としては、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロn−プロピルビニルエーテル(PPVE−1)、パーフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、パーフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、パーフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエーテルおよびCF3−(CF22−O−CF(CF3)−CF2−O−CF(CF3)−CF2−O−CF=CF2が挙げられる。前述のパーフルオロビニルエーテルのいくつかは、重合条件下で液体であり、したがって非気体フッ素化モノマーである。適切なパーフルオロアルキルビニルモノマーは、一般式:
CF2=CF−RdfまたはCH2=CH−Rdf
(式中、Rdfは、炭素原子1〜10個、好ましくは1〜5個のパーフルオロアルキル基を表す)に相当する。パーフルオロアルキルビニルモノマーの代表的な例は、ヘキサフルオロプロピレンである。
【0035】
分岐を導入するために本発明で使用されるオレフィンは、分けて、または連続式で重合容器に添加することができる。オレフィンは、別々の注入口または貯蔵シリンダーから重合に供給され得る。代替方法としては、オレフィンとフッ素化モノマーの混合物を使用して、オレフィンを重合に供給することができる。後者の方法は、ポリマー中へのオレフィンの向上した均質な組み込みを提供し得、長鎖分岐の分布がより一様となる。重合に供給するためにオレフィンを混合することができる適切なフッ素化モノマーとしては、CTFE、HFPなどのフッ化オレフィン、およびパーフルオロメチルビニルエーテルなどのパーフルオロビニルエーテルが挙げられる。
【0036】
本発明の一実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、硬化部位成分を含有する。硬化部位成分は一般に、0.1〜0.5モル%の量で存在する。特定の実施形態に従って、硬化部位成分の量は、フルオロポリマーにおける反復単位の総量を基準にして、0.15モル%と0.4モル%との間または0.2モル%と0.3モル%との間である。非晶質フルオロポリマー中に硬化部位成分を導入するために、特定の硬化部位を含むモノマーが使用されてもよいし、あるいはポリマー鎖の末端に硬化部位を導入することができる連鎖移動剤または開始剤を使用することによって、重合を行ってもよい。
【0037】
例えば、鎖に沿って、過酸化物硬化反応に関与することができるハロゲンを導入するために、フルオロポリマーの基本モノマーと適切なフッ素化硬化部位モノマーとの共重合が行われ得る。硬化部位モノマーは一般に、二重結合上にBr原子またはI原子を持たないエチレン性不飽和モノマー(ethylenically unsaturated monomer)である。コモノマーの例としては、次式:
CX2=CX−Rf−Z
(式中、Xはそれぞれ独立して、H、FまたはClを表し、Rfは、1つ以上の酸素原子を含有し得る過フッ素化脂肪族基を表し、Zは、BrまたはIを表す)に相当するコモノマーが挙げられる。
【0038】
コモノマーの更なる例は、例えば:
(a)次式:
Z−Rf−O−CF=CF2
(式中、Zは、BrまたはIであり、Rfは、任意に塩素および/またはエーテル酸素原子を含有する(パー)フルオロアルキレンC1〜C12である)を有する、ブロモ−(パー)フルオロアルキル−パーフルオロビニルエーテルまたはヨード−(パー)フルオロアルキル−パーフルオロビニルエーテル;例えば:BrCF2−O−CF=CF2、BrCF2CF2−O−CF=CF2、BrCF2CF2CF2−O−CF=CF2、CF3CFBrCF2−O−CF=CF2等;
(b)次式
Z’−R’f−CF=CF2
(式中、Z’は、BrまたはIであり、R’fは、任意に塩素原子を含有する(パー)フルオロアルキレンC1〜C12である)を有するものなど、ブロモ(パー)フルオロオレフィンまたはヨード(パー)フルオロオレフィン;例えば:4−ブロモ−パーフルオロブテン−1、または4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロブテン−1;
(c)4−ブロモ−1−ブテンなどの非フッ素化ブロモ−オレフィン;
から選択され得る。
【0039】
硬化部位コモノマーの代わりに、または硬化部位コモノマーに加えて、フルオロポリマーは、末端位置に硬化部位成分を含有することができ、(特許文献5)に記載のようにポリマーの調製中に反応媒体中に導入される適切な連鎖移動剤から誘導されるか、または適切な開始剤から誘導される。有用な開始剤の例としては、X(CF2nSO2Na(n=1〜10であり、Xは、BrまたはIである)または過硫酸アンモニウムおよび臭化カリウムを含む開始剤組成物が挙げられる。
【0040】
連鎖移動剤の例としては、式RfBrx(式中、Rfは、任意に塩素原子を含有するx価(パー)フルオロアルキルラジカルC1〜C12であり、xは、1または2である)を有する連鎖移動剤が挙げられる。その例としては、CF2Br2、Br(CF22Br、Br(CF24Br、CF2ClBr、CF3CFBrCF2Br等が挙げられる。適切な連鎖移動剤の更なる例は、(特許文献6)に開示されている。
【0041】
あるいは、またはさらに、フルオロポリマーは、ニトリル基を有する硬化部位成分を含み得る。かかるニトリル含有硬化部位成分を導入するために、ニトリル基含有硬化部位モノマーを重合プロセスにおいて使用することができる。一実施形態において、有用なニトリル基含有硬化部位モノマーとしては、以下に記載される:
CF2=CF−CF2−O−Rf−CN
CF2=CFO(CF2LCN
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]g(CF2O)vCF(CF3)CN
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]kO(CF2)uCN
(上記の式に関して:L=2〜12;g=0〜4;k=1〜2;v=0〜6;u=1〜4であり、Rfは、パーフルオロアルキレン基または二価パーフルオロエーテル基である)などのニトリル含有フッ化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルが挙げられる。かかるモノマーの代表的な例としては、パーフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)、CF2=CFO(CF25CN、およびCF2=CFO(CF23OCF(CF3)CNが挙げられる。
【0042】
ニトリル基含有塩または擬ハロゲン(pseudohalogen)の存在下で重合を開始することによって、フルオロポリマーの末端にニトリル基を導入することもできる。適切なニトリル基含有塩としては、塩の陰イオンにおいてニトリル基を有し、かつ特に次式:
M−(Xa−CN)n
(Mは、金属陽イオンまたはアンモニウムイオンなどの一価または多価の陽イオンを表し、Xは、O、S、SeまたはNであり、aは、0または1の値を有し、nは、陽イオンの原子価に相当する)に相当する塩が挙げられる。適切な陽イオンMとしては、有機陽イオン(例えば、テトラアルキルアンモニウム陽イオン)および無機陽イオンが挙げられる。特に有用な陽イオンは、ナトリウムおよびカリウムなどの一価陽イオンを含むアンモニウムおよび金属の陽イオン、ならびにカルシウムおよびマグネシウムなどの二価陽イオンである。カリウム塩の例としては、シアン化カリウム、シアン酸カリウムおよびチオシアン酸カリウムが挙げられる。式中、XがOまたはSである、塩およびシアン化物が一般に好ましい。
【0043】
本発明によるプロセスで製造され得るフルオロポリマーの例としては、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2またはPPVE−1とPPVE−2の組み合わせ)のコポリマー、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンのコポリマー、クロロトリフルオロエチレンとフッ化ビニリデンのコポリマー、テトラフルオロエチレンとエチレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンとプロピレンのコポリマー、フッ化ビニリデンとパーフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2、またはPPVE−1とPPVE−2の組み合わせ)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2、またはPPVE−1とPPVE−2の組み合わせ)のターポリマー、テトラフルオロエチレンとエチレンまたはプロピレンとパーフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2、またはPPVE−1とPPVE−2の組み合わせ)のターポリマー、テトラフルオロエチレンとエチレンまたはプロピレンとヘキサフルオロプロピレンのターポリマー、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのターポリマー、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとパーフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2、またはPPVE−1とPPVE−2の組み合わせ)のターポリマー、およびテトラフルオロエチレン、エチレンまたはプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびパーフルオロビニルエーテル(例えば、PMVE、PPVE−1、PPVE−2、またはPPVE−1とPPVE−2の組み合わせ)のコポリマーが挙げられる。前述のコポリマーのうちのいずれかはさらに、硬化部位コモノマーから、かつ/または上述の開始系もしくは連鎖移動剤から得られる硬化部位成分を含有し得る。
【0044】
本発明による硬化性フルオロエラストマー組成物は、非晶質フルオロポリマーおよび非晶質フルオロポリマーを硬化するための硬化組成物を含む。硬化組成物は当然のことながら、非晶質フルオロポリマーを脱ヒドロフッ素化することができるかどうか、およびフルオロポリマーが硬化部位成分を含むかどうか、ならびにその性質に依存する。
【0045】
フルオロポリマーが、ハロゲンまたはニトリルなどの硬化部位成分を含有する場合には、硬化組成物は、1種以上の過酸化物を含み得る。適切な有機過酸化物は、硬化温度で遊離基を生じる過酸化物である。50℃を超える温度で分解するジアルキル過酸化物またはビス(ジアルキル過酸化物)が特に好ましい。多くの場合には、ペルオキシ酸素に結合した第三級炭素原子を有する過酸化ジ−t−ブチルを使用することが好ましい。この種類の最も有用な過酸化物の中では、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが挙げられる。ジクミルペルオキシド、過酸化ジベンゾイル、過安息香酸t−ブチル、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン)、およびジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルパーオキシ)−ブチル]カーボネートなどの化合物から、他の過酸化物を選択することができる。一般に、フルオロポリマー100部につき過酸化物約1〜3部が使用される。
【0046】
有機過酸化物をベースとする硬化組成物中に通常含有される他の成分は、有用な硬化を提供するために過酸化物と協力することができる多価不飽和化合物で構成される助剤(coagent)である。これらの助剤は、フルオロポリマー100部につき0.1〜10部、好ましくはフルオロポリマー100部につき2〜5部に等しい量で添加され得る。有用な助剤の例としては、トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート;トリアリルトリメリテート;トリ(メチルアリル)イソシアヌレート;トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン;亜リン酸トリアリル;N,N−ジアリルアクリルアミド;ヘキサアリルホスホルアミド;N,N,N’,N’−テトラアルキルテトラフタルアミド;N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド;トリビニルイソシアヌレート;2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン;N,N’−m−フェニレンビスマレイミド;フタル酸ジアリルおよびトリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレートが挙げられる。トリアリルイソシアヌレートが特に有用である。他の有用な助剤としては、ビスオレフィン、例えば(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)に開示されるものが挙げられる。
【0047】
さらに、硬化部位成分がニトリルを含有する場合、ニトリル成分を硬化するのに適している硬化組成物のいずれかが使用され得る。例えば、かかるニトリル硬化組成物は、1種以上のアンモニア発生化合物を含み得る。「アンモニア発生化合物」は、周囲条件で固体または液体であるが、硬化条件下でアンモニアを発生する化合物を含む。かかる化合物としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(ウロトロピン)、ジシアンジアミド、および次式:
w+(NH3vw-
(式中、Aw+は、Cu2+、Co2+、Co3+、Cu+、およびNi2+などの金属陽イオンであり;wは、金属陽イオンの原子価に等しく;Yw-は、対イオン、一般にハロゲン化イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン等であり;vは、1〜約7の整数である)の金属含有化合物が挙げられる。
【0048】
次式:
【化1】

(式中、Rは、水素、または炭素原子1〜約20個を有する置換もしくは非置換のアルキル、アリール、またはアラルキル基である)の誘導体など、置換トリアジン誘導体および非置換トリアジン誘導体もまた、アンモニア発生化合物として有用である。具体的な有用なトリアジン誘導体としては、ヘキサヒドロ−1,3,5−s−トリアジンおよびアセトアルデヒドアンモニア三量体が挙げられる。
【0049】
あるいは、またはさらに、非晶質フルオロポリマーは脱ヒドロフッ素化することができる。フルオロポリマーが脱ヒドロフッ素化することができる場合、硬化組成物は一般に、脱ヒドロフッ素化剤を含有する。脱ヒドロフッ素化剤として有用な材料の例としては、以下に記述されるような有機オニウムが挙げられる。有用な脱ヒドロフッ素化剤の他の種類は、1,8−ジアザ[5.4.0]ビシクロウンデカ−7−エン(DBU)および1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)などの塩基である。好ましい脱ヒドロフッ素化剤としては、トリブチル(2−メトキシ)−プロピルホスホニウムクロリド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド、トリブチル(2−メトキシ)−ホスホニウムクロリドとビスフェノールAFとの錯体、およびDBUが挙げられる。所望の場合には、脱ヒドロフッ素化剤の組み合わせを用いることができる。
【0050】
フルオロポリマーが硬化成分を欠いている場合、フルオロポリマーを硬化させるために、脱ヒドロフッ素化剤を使用しなければならない。フルオロポリマーを硬化するのに有効な量の脱ヒドロフッ素化剤は、使用されるフルオロポリマー、および使用される他の添加剤の反応性に依存する。これらのパラメーター内で、脱ヒドロフッ素化剤の有効量は一般に、フルオロポリマー100部につき0.01〜20部である。好ましい添加レベルは、100部につき0.1〜5部である。
【0051】
一般に、脱ヒドロフッ素化剤を含有する硬化組成物は、ポリヒドロキシ化合物も含有する。ポリヒドロキシ化合物の他に、硬化組成物は一般に、1種以上の有機オニウム促進剤も含む。本発明において有用な有機オニウム化合物は一般に、少なくとも1つのヘテロ原子、つまり有機部分または無機部分に結合するN、P、S、Oなどの非炭素原子を含有し、例えばアンモニウム塩、ホスホニウム塩およびイミニウム塩が挙げられる。本発明において有用な第4級有機オニウム化合物の種類は、相対的に正のイオンおよび相対的に負のイオンを広く含み、リン、ヒ素、アンチモンまたは窒素は、陽イオンの中心原子を一般的に含み、負のイオンは有機陰イオンであっても無機陰イオンであってもよい(例えば、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、水酸化物イオン、アルコキシドイオン、フェノキシドイオン、ビスフェノキシドイオン等)。
【0052】
本発明において有用な有機オニウム化合物の多くは、当技術分野で記述されており、公知である。例えば、(特許文献10)(Worm)、(特許文献11)(Grootaertら)、(特許文献12)(Guenthnerら)、および(特許文献13)(Kolbら)、(特許文献14)を参照されたい。代表的な例としては、以下に個々に記載される化合物およびその混合物が挙げられる:
トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド
トリブチルアリルホスホニウムクロリド
トリブチルベンジルアンモニウムクロリド
テトラブチルアンモニウムブロミド
トリアリールスルホニウムクロリド
8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド
ベンジルトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリド
ベンジル(ジエチルアミノ)ジフェニルホスホニウムクロリド。
【0053】
有用な有機オニウム化合物の他の分類としては、1種以上のフッ素化アルキルペンダント基を有する化合物が挙げられる。一般に、最も有用なフッ素化オニウム化合物は、Coggioらにより(特許文献15)に開示されている。
【0054】
ポリヒドロキシ化合物は、その遊離型で、または塩ではない形で、または選択される有機オニウム促進剤の陰イオン部分として使用することができる。架橋剤は、例えば(特許文献16)(Pattison)および(特許文献10)(Worm)に開示されるポリヒドロキシ化合物など、フルオロエラストマーの架橋剤または共硬化剤として機能することが当技術分野で知られているポリヒドロキシのいずれかであり得る。代表的な芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、以下の:ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、およびテトラヒドロキシベンゼン、ナフタレン、およびアントラセン、ならびに以下の式:
【化2】

(式中、Aは、炭素原子1〜13個の二官能性の脂肪族、脂環式、もしくは芳香族のラジカル、またはチオラジカル、オキシラジカル、カルボニルラジカル、スルホニルラジカル、またはスルホニルラジカルであり、Aは、少なくとも1つの塩素原子またはフッ素原子で任意に置換され、xは、0または1であり、nは、1または2であり、ポリヒドロキシ化合物のいずれかの芳香族環が任意に、塩素、フッ素、臭素のうちの少なくとも1つの原子で置換されるか、またはカルボキシルラジカルまたはアシルラジカル(例えば、−COR(Rは、HまたはC1〜C8アルキル、アリール、またはシクロアルキル基である)または例えば炭素原子1〜8個を有するアルキルラジカルで置換される)のビスフェノールのうちのいずれか1つが挙げられる。上記のビスフェノールの式から、−OH基はどちらかの環のいずれかの位置(1位以外)で結合し得ることが理解される。これらの化合物の2種類以上のブレンドもまた使用される。
【0055】
最も有用かつ一般に使用される上記の式の芳香族ポリフェノールの1つは、ビスフェノールAFとしてさらに一般に知られている、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデニルビスフェノールである。化合物、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールSとしても知られる)および4,4’−イソプロピリデニルビスフェノール(ビスフェノールAとしても知られる)も実際に広く使用されている。
【0056】
脱ヒドロフッ素化剤をベースとする硬化組成物はさらに、酸受容体を含み得る。酸受容体は、無機であっても無機と有機とのブレンドであってもよい。無機受容体の例としては、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、二塩基性亜リン酸鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。有機受容体としては、エポキシ、ステアリン酸ナトリウム、およびシュウ酸マグネシウムが挙げられる。好ましい酸受容体は、酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムである。酸受容体は、単独で、または組み合わせて使用することができ、好ましくは、フルオロポリマー100重量部につき約2〜25重量部の範囲の量で使用される。
【0057】
フルオロポリマーが脱ヒドロフッ素化することができ、さらに1種以上の硬化部位成分を含む場合、硬化組成物は、脱ヒドロフッ素化反応および硬化部位成分の硬化の両方を生じさせる、硬化成分の組み合わせを含み得ることは明らかである。
【0058】
硬化性フルオロエラストマー組成物は、カーボンブラック、安定剤、可塑剤、潤滑剤、充填剤、および加工助剤などの他の添加剤を含有することができ、その添加剤が目的の実用条件に対して適切な安定性を有するという条件で、組成物中に組み込むことができる。従来のゴム加工装置においてフルオロポリマー、硬化組成物、および他の添加剤を混合することによって、組成物が調製され得る。かかる装置としては、ラバーミル、バンバリーミキサーなどの密閉式混合機、および混合押出機が挙げられる。
【0059】
硬化性フルオロエラストマー組成物を使用して、硬化させてフルオロエラストマーを提供することができる。特定の一実施形態において、硬化性フルオロエラストマー組成物は、押出し成形され、硬化されて、フルオロエラストマー物品、例えばチューブが得られる。他の実施形態において、硬化性フルオロエラストマー組成物は射出成形において使用され、硬化されて、ガスケットまたはOリングなどの射出成形物品を提供することができる。
【0060】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、本発明をそれに限定するものではない。
【実施例】
【0061】
(測定方法)
希釈ポリマー溶液の溶液粘度を通常、DIN 53726に従って35℃のメチルエチルケトン(MEK)中の0.16%ポリマー溶液で決定した。ISO/DIS 3105およびASTM D 2515を満たすConnon−Fenske−Routine−Viskosimeter(Fa.Schott社,マインツ/ドイツ(Mainz/Germany))を測定に使用し、ハーゲンバハ補正(Hagenbach correcture)を適用した。ハギンス等式(Huggins equation)(ηred.=[η]+kH×[η]2×c)およびkH=0.34のハギンス定数を用いて、このようにして得られた還元粘度ηredを固有粘度[η]に変換した。固有粘度[η]および還元粘度ηred.は、物理単位ml/gで記録される。
【0062】
レオメトリー・サイエンティフィック社(Rheometry Scientific)の歪み制御ARESレオメーターを使用して、265℃でのゼロずり粘度η0を評価した。窒素雰囲気中で25mm平行プレート配置を用いて、周波数掃引実験においてフルオロポリマーの動的機械データを記録した。ひずみは一般に、1〜20%の範囲であった。ゼロずり粘度η0は、オーケストレータ・ソフトウェア(orchestrator software)の4パラメーターCarreauフィット関数を使用して推定し、相関係数は通常、r2≧0.998であった。
【0063】
メルトフローインデックス(MFI)装置を一定応力レオメーターとして使用し、本明細書に記載のポリマーの押出特性を評価した。単位g/10分で示されるメルトフローインデックス(MFI)は、DIN 53735、ISO 12086またはASTM D−1238に従って、温度265℃にて、直径2.1mm、長さ8.0mmの標準化押出ダイを使用して得た。様々な標準化支持重量(support weight)を適用した(1.2kg、2.16kg、3.8kg、5.0kg、10.0kgおよび21.6kg)。支持重量mMFIは、以下の実験的関係:log[τapp./Pa]=1.03×log[mMFI/kg]+3.88を用いて、見掛けのずれ断応力に変換することができる。265℃でのポリマー密度1,50g/cm3を用いて、物理単位1/sで示される見掛けのずり速度γ・app.を、γ・app.=1.23×MFIによってMFIから計算した。押出し成形されたMFIストランドをメルトフラクチャーに関して目視検査した。本明細書に記載の臨界ずり速度γ・crit.(メルトフラクチャーの開始を示すずり速度)は、τcrti.=1.31e5 Paの補間臨界壁応力を意味する。
【0064】
ラテックス粒径の決定は、ISO/DIS 13321に従って、マルバーン・ゼータザイザー(Malvern Zetazizer)1000HSAを使用して動的光散乱によって行った。測定前に、重合から得られたポリマーラテックスを0.001mol/L KCl溶液で希釈し、測定温度はすべての場合において20℃であった。
【0065】
本明細書に記載のTFE/HFP/VDFターポリマーのモル組成は、以下の手順に従って透過型赤外分光法によって決定した:精製原料ゴム150±10mgをアセトン2±0.2mlに溶解した。ケマット・テクノロジー(Chemat Technology)KW−4Aスピンコーター(750rpmで10秒および1250rpmで20秒)を使用して、このポリマー溶液をKBrプレス焼結プレート(スペクトラテック社(Spectra−Tech))上に均一に塗布した。このようにして得られたポリマーフィルムをメトラー・トレド(Mettler−Toledo)LP16ハロゲンランプ下で60℃にて5分間乾燥させた。窒素雰囲気下で吸光モードで動作するニコレット(Nicolet)DX 510 FT−IR分光計の164スキャンで、スペクトル範囲4000〜400cm-1におけるポリマー赤外スペクトルを記録した。ポリマーフィルムの厚さを調節して、1194cm-1で0.5と0.7との間の吸光度を得た。生データスペクトルの組成分析は、Grams/32,Vers.5.1aソフトウェアの部分最小二乗法(PLS)によって行った。フッ素含有率68.3〜72.6%の範囲(1H/19Fクロス積分(cross integration)NMR技術によって定量化された)の異なる組成を有する、41の個々のTFE/HFP/VDFターポリマー標準試料を用いて、このPLS法を較正した。
【0066】
ASTM D 5289−95に従って、アルファ・テクノロジー移動ダイ(Alpha Technology Moving Die)レオメーター(MDR)モデル2000を使用して、177℃で、予熱なしで、経過時間12分(別段の指定がない限り)および0.5アークにて、硬化レオロジー試験(Cure Rheology Test)を未硬化配合混合物で行った。最小トルク(ML)、最大トルク(MH)、つまり、プラトーまたは最大値が得られない場合に、指定時間の間に得られた最も高いトルク、およびトルクの差(MH−ML)を記録した。ts2(MLを超えて2単位増加するまでのトルク時間)、t’50(ML+0,5[MH−ML]に達するトルク時間、およびt’90(ML+0,9[MH−ML]に達するトルク時間)も記録した。
【0067】
約22MPa、177℃で10分間プレスすることによって、プレス加硫試料(150×150×2.0mmシート,別段の指定がない限り)を物理的特性決定のために調製した。循環エアオーブン内にプレス加硫試料を入れることによって、後加硫試料を調製した。オーブンを232℃に維持し、試料を16時間処理した。
【0068】
DIN S2ダイで2.0mmシートから切断された試料で、DIN 53504を用いて、破断点引張強さ、破断点伸び、および100%伸びでのモジュラスを決定した。単位はメガパスカル(MPa)で記録する。硬度は、ASTM D 2240−02法Aを用いてA−2型ショアーデュロメータで測定した。
【0069】
(実施例1)
インペラ撹拌機スシステムを備えた総容積48.5Lの重合反応がまに脱イオン水29.0Lを充填した。次いで、酸素を含有しない反応がまを70℃まで加熱し、攪拌システムを240rpmに設定した。反応がまに、ジメチルエーテル4g、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)1217gを充填して絶対圧力10.2バールとなり、フッ化ビニリデン(VDF)180gを充填して絶対圧力13.5バールとなり、テトラフルオロエチレン(TFE)168gを充填して絶対反応圧力15.5バールとなった。ペルオキソ二硫酸アンモニウム(水120mlに溶解されたAPS)40gを添加することによって、重合を開始した。反応が開始したら、反応温度70℃を維持し、HFP(kg)/VDF(kg)の供給比1.029およびTFE(kg)/VDF(kg)の供給比0.726で気相中にTFE、VDFおよびHFPを供給することによって、絶対反応圧力15.5バールを維持した。VDFの総供給量が105分で2700gに達した時に、モノマーバルブを閉じることによって、モノマーの供給を止めた。10分以内に、モノマー気相が反応して、反応がまの圧力が9.5バールに下がった。次いで、反応器をガス抜きし、3サイクルでN2でフラッシングした。
【0070】
固形分20.7%および動的光散乱による直径485nmのラテックス粒子を有する、このようにして得られたポリマー分散液36.5kgを反応器の底から取り出した。
【0071】
このポリマー分散液5.0Lを冷蔵庫内で一晩、凍結凝固させた。材料を解凍した後、得られたスポンジ状原料ポリマーを脱塩水で5回洗浄し、ポリマーを絞り、130℃のオーブン内で12時間乾燥させた。このようにして得られたポリマーは、TFE22.8モル%、HFP22.9モル%、VDF54.3モル%の組成を有し、メチルエチルケトン(MEK)およびテトラヒドロフラン(THF)に容易に溶解することができ、以下に示す物理的特性が示された:
−MFI(265/5):12.2g/10分
−265℃でのゼロずり粘度η0:3.8e3 Pa・s
−還元粘度(35℃でのMEK):76ml/g
−固有粘度(35℃でのMEK):73ml/g
−LCBI:0.01
−臨界ずり速度:93s-1
【0072】
異なる量のジメチルエーテルを有するが、これらの試料および同様に調製された試料から、TFE23/HFP23/VDF54ターポリマーに関して、臨界ずり速度(γ・crit.)とゼロずり速度粘度η0との間の相関性が確立された。この相関性は以下のとおりである:
log[γ・crit./s-1]=5.55−log[η0/Pa・s]等式1
【0073】
調べたターポリマーが本質的に直鎖のトポロジーを有するという事実に基づいて(LCBIがゼロに非常に近いことに留意)、ゼロずり粘度η0は、以下のように固有粘度に関連し得る。
η0=5.5e−8×[η]5.8 等式2
【0074】
(LCBフルオロポリマーの合成)
長鎖分岐状フルオロポリマー(TFE23/HFP23/VDF23ターポリマー)を、本質的に上記の手順に従って製造した。ジメチルエーテルバッチの充填は、それぞれの場合で変化した。さらに、少量のBDFEを重合過程中に反応がまにさらに供給した。ジメチルエーテルバッチの充填ならびに使用されたBDFEの総量を、試験結果の物理的データと共に以下の表にまとめる。
【0075】
【表2】

【0076】
等式1に基づいて、相当する同一分子量の直鎖状フルオロポリマーの臨界ずり速度γ・crit.(lin.)を計算し得る。分岐状フルオロポリマーに関して確認された値γ・crit.(br.)を用いて、γ・crit.(br.)/γ・crit.(lin.)の比を計算することができ、加工特性の向上の因子が数値で表される。これらの値を表2にまとめる。
【0077】
【表3】

【0078】
1のLCBIを有するフルオロポリマーは、同じゼロずり粘度を有する従来技術のポリマーと比較して10倍高い臨界ずり速度を示すことが確認される。臨界ずり速度は、2のLCBIを有する分岐状ポリマーに関しては100倍増加する。表2に示されるポリマーについて、この観察は、以下の実験式:
log[γ・crit.(br.)/γ・crit.(lin.)](LCBI
2=0.99 等式3
で定量化することができる。
【0079】
この向上した加工挙動は、特にチューブの押出し成形および射出成形の用途に有益である。
【0080】
(実施例2)
以下に記載のように、実施例1の比較用ポリマーおよびLCB−FE3ポリマーをビスフェノール加硫パッケージを使用してプレス加硫し、種々の物理的性質を測定した。それぞれの場合において、ポリマー100部を2本ロールミルで以下の成分:
・トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド1.285mmol
・ビスフェノール−AF 4.85mmol
・酸化マグネシウム(モートン・インターナショナル社(Morton International)から市販のElastomag170)3g
・水酸化カルシウム6g
・カーボンブラック(MT−990)30g
と混合した。これらの2種類の硬化化合物を硬化レオロジーおよび機械的性質について試験し、互いに比較した。その試験結果を表3に報告する。
【0081】
【表4】

【0082】
(実施例3)
本質的にLCB−FE3の手順に従って、長鎖分岐状TFE23/HFP23/VDF23ターポリマーを調製した。ジメチルエーテルバッチ充填は5.0gであり、使用したBDFEの量は10gであった。さらに4−ブロモ−3,3,4,4,−テトラフルオロブテン−1(BTFB)硬化部位モノマー66g(モノマー供給の0.4モル%)を、BDFE10gと共に重合過程中に連続的に供給した。重合に275分間要した。このようにして得られた、固形分20.2%を有する分散液は、動的光散乱による平均直径448nmのラテックス粒子を示した。物理的データを以下に示す:
−MFI(265/1.2):11.2g/10分
−MFI(265/2.16):26.0g/10分
−MFI(265/3.8):54g/10分
−MFI(265/5):106g/10分
−MFI(265/10):230g/10分
−MFI(265/21.6):841g/10分(メルトフラクチャーが観察された)
−265℃でのゼロずり粘度η0:6.8e2 Pa・s
−還元粘度(35℃のMEK):40ml/g
−固有粘度(35℃のMEK):39ml/g
−LCBI:0.41
−臨界ずり速度:640s-1
【0083】
このポリマー実施例の臨界ずり速度は、同等な直鎖状ポリマーと比較して25%向上している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質フルオロポリマーを含有する組成物であって、前記非晶質フルオロポリマーが、(i)前記非晶質フルオロポリマー中の反復単位の総量を基準にして0.1モル%と0.5モル%との間の量で前記非晶質フルオロポリマー中に含有されている1種以上の硬化部位成分を有するか、または(ii)脱ヒドロフッ素化されることができ、前記非晶質フルオロポリマーが、(a)1種以上の気体フッ素化モノマーと、(b)モノマーの全重量を基準にして、オレフィン二重結合の炭素に結合した臭素原子またはヨウ素原子を有する1種以上のオレフィン0.5重量%以下との重合から誘導可能であるか、あるいは前記非晶質フルオロポリマーが、(iii)(i)と(ii)のある組み合わせを有する、組成物。
【請求項2】
前記硬化部位の少なくとも一部が、前記非晶質フルオロポリマーの末端基中に含有される、請求項1に記載の非晶質フルオロポリマー。
【請求項3】
前記硬化部位が、過酸化物硬化反応に関与することができるハロゲンを含む、請求項1または2に記載の非晶質フルオロポリマー。
【請求項4】
前記硬化部位が、次式:
CX2=CX−Rf−Z
(式中、Xはそれぞれ独立して、H、FまたはClを表し、Rfは、1つ以上の酸素原子を含有し得る過フッ素化脂肪族基を表し、Zは、BrまたはIを表す)による硬化部位モノマーから得られる、請求項3に記載の非晶質フルオロポリマー。
【請求項5】
前記硬化部位がニトリル基を含む、請求項1に記載の非晶質フルオロポリマー。
【請求項6】
前記硬化部位が、次式:
CF2=CF−Raf−CN
(式中、Rafは、1つ以上の酸素原子を含有し得る過フッ素化脂肪族基を表す)
を有するモノマーから得られる、請求項5に記載の非晶質フルオロポリマー。
【請求項7】
前記気体フッ素化モノマーのうちの少なくとも1つがフッ化ビニリデンである、請求項1に記載の非晶質フルオロポリマー。
【請求項8】
前記非晶質フルオロポリマーがテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンのコポリマーである、請求項1に記載の非晶質フルオロポリマー。
【請求項9】
フルオロエラストマーを製造するための硬化性組成物であって、前記組成物が、請求項1に記載の非晶質フルオロポリマーと、前記非晶質フルオロポリマーを硬化するための1種以上の成分を含有する硬化組成物とを含有する硬化性組成物。
【請求項10】
前記非晶質フルオロポリマーが硬化部位を含有し、かつ前記硬化組成物が有機過酸化物を含有する、請求項9に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記非晶質フルオロポリマーが脱ヒドロフッ素化されることができ、かつ前記硬化組成物が脱ヒドロフッ素化剤およびポリヒドロキシ化合物を含有する、請求項9に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
請求項9に記載の硬化性組成物を射出成形または押出し成形する工程、および前記硬化性組成物を硬化させる工程を含む、エラストマー物品を製造する方法。
【請求項13】
請求項1に記載の非晶質フルオロポリマーを製造する方法であって、(a)1種以上の気体フッ素化モノマーと、(b)モノマーの全重量を基準にして、オレフィン二重結合の炭素に結合した臭素原子またはヨウ素原子を有する1種以上のオレフィン0.5重量%以下とを重合する工程、および;(i)硬化部位を含む1種以上の成分の存在下で、1種以上の気体フッ素化モノマーを重合する工程であって、前記成分の総量は、前記非晶質フルオロポリマー中の硬化部位成分を0.1モル%と0.5モル%の間で導入するのに十分である、工程によってか、あるいは(ii)脱ヒドロフッ素化することができる非晶質フルオロポリマーを提供するために、前記の1種以上の気体フッ素化モノマーとして少なくとも1種類の部分的にフッ素化された気体モノマーを選択する工程、または前記気体フッ素化モノマーと、1種以上の非フッ素化コモノマーまたは部分的にフッ素化された非気体モノマーとを共重合する工程によって、フルオロポリマーに硬化能力を提供する工程を含む、方法。

【公表番号】特表2008−512545(P2008−512545A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531172(P2007−531172)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/028060
【国際公開番号】WO2006/031316
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】