説明

フルオロポリマー粒子を含む分散液

【課題】本発明は、低減したフルオロ界面活性剤濃度での、重合速度の増大、比較的低い反応性を有するコモノマー組み込みの向上、球状分散液粒子径の低減、ロッド形状の分散液粒子の生成、および凝塊形成の低減を目的とする。
【解決手段】本発明は、フルオロ界面活性剤を含有する水性媒体中に、実質的に球状のフルオロポリマー粒子を含む分散液であって、前記分散液が、分散液の全重量に対して少なくとも20重量%の固形分を含有し、前記粒子が、150ナノメートル以下の平均直径を有し、前記フルオロ界面活性剤の濃度が、前記分散液中の水の重量を基準にして、前記フルオロ界面活性剤の臨界ミセル濃度未満であることを特徴とする分散液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、フッ素化モノマーを重合する方法であり、詳細には水性分散重合方法である。
【背景技術】
【0002】
水性媒体においてフッ素化モノマー(フルオロモノマー)を重合するための分散方法はよく知られている。そのような方法は、安定性を提供し、重合によって商業上許容される固形分となることを可能にするために、界面活性剤、すなわち分散媒を使用する。
【0003】
分散重合方法に用いられてきた分散媒には、フルオロアルキル基を含有する分散媒が含まれ、Berryによって特許文献1に開示されたペルフルオロアルキルカルボン酸および塩、KhanおよびMorganによって特許文献2に、BlaiseおよびGrimaudによって特許文献3に、ならびにBakerおよびZipfelによって特許文献4および特許文献5に開示されたペルフルオロアルキルエタンスルホン酸および塩、Morganによって特許文献6に開示されたペルフルオロアルコキシベンゼンスルホン酸および塩、Feiring他によって特許文献7に開示された部分フッ素化カルボン酸および塩、Garrisonによって特許文献8に、GiannettiおよびViscaによって特許文献9に、ならびにAbuslemeおよびMacconeによって特許文献10に開示されたペルフルオロポリエーテルカルボン酸および塩などである。反応速度、分散フルオロポリマーの粒径、分散安定性、色などへの作用のため、分散重合に使用するために種々の分散媒が選択される。特許文献8の実施例は、ペルフルオロポリエーテルカルボン酸/塩の使用で、152〜299mmの範囲の粒径を有するポリテトラフルオロエチレン分散液が得られたことを明らかにしている。
【0004】
たとえば上述の特許文献9、およびGiannetti他によって特許文献11に開示されているように、中性末端基を有するペルフルオロポリエーテルが分散重合に添加されてきた。
【0005】
特許文献12においてMayerは、最大50nmの数平均粒径を有するテトラフルオロエチレン(TFE)およびフルオロアルキルペルフルオロビニルエーテルの溶融加工性ジポリマーの水性分散液を開示している。Mayerは、このフッ素化乳化剤が慣例よりいくらか多い量で有利に添加されることを延べ、その実施例は、水充填量に対して0.5重量%の乳化剤濃度を用いている。Mayerは、慣例的な量は、たとえば重合液の重量に対して0.1〜0.15%であることを指摘している。特許文献13においてMorganは、その界面活性剤の臨界ミセル濃度の、少なくとも1.2倍の界面活性剤濃度を用いて、少なくとも2種のフルオロモノマーを重合する水性方法を開示している。開示されたこの方法は、小さい粒径を有する分散液をもたらしている。実施例1は、水充填量に対して0.4重量%のフルオロ界面活性剤濃度(臨界ミセル濃度を超える濃度)を用いて、平均粒径29nmを有するTFEおよびヘキサフルオロプロピレン(HFP)のコポリマーの分散液を得ている。
【0006】
上述のBerryの特許文献1もまた、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の、伸長またはリボン形状の粒子の形成を開示している。実質的にすべてのポリマー粒子が伸長リボン状である実施例IIIは、水充填量に対して2重量%を超えるフルオロ界面活性剤濃度を用いた。Berryは、生成したPTFE樹脂の分子量を記載していない。特許文献14においてFolda他は、その界面活性剤の臨界ミセル濃度から全溶解度にわたる範囲の濃度のフルオロ界面活性剤存在下で重合することによって、TFEポリマーの異方性液晶分散液を生成する方法を開示している。Folda他の異方性分散液は、高い割合のロッド様粒子を含有する。Foldaのロッド形状樹脂に関してFoldaにより報告されている唯一の分子量は25,000であった。非特許文献1は、PTFEの乳化重合におけるより高いレベルの界面活性剤は、ロッド様粒子を提供するが、その分子量が減少することを述べている。樹脂の分子量が105と5.5×105の間であるとき、ロッド様粒子が得られ、さらに106を超える分子量では、粒状粒子が得られることが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第2,559,752号
【特許文献2】米国特許第4,380,618号
【特許文献3】米国特許第4,025,709号
【特許文献4】米国特許第5,688,884号
【特許文献5】米国特許第5,789,508号
【特許文献6】米国特許第4,621,116号
【特許文献7】米国特許第5,763,552号
【特許文献8】米国特許第3271341号
【特許文献9】米国特許第4864006号
【特許文献10】欧州特許出願公開第0 625 526号
【特許文献11】米国特許第4,789,717号
【特許文献12】米国特許第5,563,213号
【特許文献13】PCT公開WO第96/24625号
【特許文献14】欧州特許出願公開第0 248 446号
【特許文献15】米国特許第2,559,752号
【特許文献16】米国特許第4,380,618号
【特許文献17】米国特許第5,688,884号
【特許文献18】米国特許第5,789,508号
【特許文献19】米国特許第4,621,116号
【特許文献20】米国特許第5,763,552号
【特許文献21】米国特許第4982009号
【特許文献22】米国特許第5310838号
【特許文献23】米国特許第4138426号
【特許文献24】米国特許第3,819,594号
【特許文献25】米国特許第4,360,618号
【特許文献26】米国特許第4380618号
【特許文献27】米国特許第3,142,665号
【特許文献28】米国特許第4,879,362号
【特許文献29】米国特許第4,380,618号
【特許文献30】米国特許第3,819,594号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Seguchi等(J.Polym.Sci.、Polymer Phys.Ed.、12、2567〜2576、1974年)
【非特許文献2】S.V.Gangal、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、16、第2版、John Wiley&Sons、577〜599、1989年、「Tetrafluoroethylene Polymer」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
改善された分散重合方法が望まれている。改善の領域には、特に低減したフルオロ界面活性剤濃度での、重合速度の増大、比較的低い反応性を有するコモノマー組み込みの向上、球状分散液粒子径の低減、ロッド形状の分散液粒子の生成、および凝塊形成の低減が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、開始剤および分散剤を含有する水性媒体において、少なくとも1種のフッ素化モノマーを重合して、フルオロポリマー粒子の水性分散液を得ることを含む方法を提供し、前記分散剤は、少なくとも2種のフルオロ界面活性剤の組み合わせであって、前記フルオロ界面活性剤の少なくとも1種は、ペルフルオロポリエーテルカルボン酸、またはその塩であり、前記フルオロ界面活性剤の少なくとも1種は、フルオロアルキルカルボン酸、もしくはスルホン酸、またはその塩、あるいはフルオロアルコキシアリールスルホン酸、またはその塩である。
【0011】
本発明はさらに、フルオロ界面活性剤を含有する水性媒体中の、実質的に球状のフルオロポリマー粒子の分散液を提供し、前記分散液は、分散液の全重量に対して少なくとも20重量%の固形分を含有し、前記粒子は、150ナノメートル以下の平均直径を有し、前記フルオロ界面活性剤の濃度は、前記分散液中の水の重量に対して0.35重量%以下である。
【0012】
本発明はさらに、フルオロ界面活性剤を含有する水性媒体中の、実質的にロッド形状のフルオロポリマー粒子の分散液を提供し、前記フルオロ界面活性剤の濃度は、前記分散液中の水の重量に対して0.35重量%以下である。
【0013】
本発明はさらに、水性媒体にフルオロポリマー粒子を含む分散液を提供し、前記フルオロポリマー粒子は、少なくとも約1×106、好ましくは少なくとも約3×106の数平均分子量を有し、前記粒子の少なくとも約20%は、3を超える長さ対直径比を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
存在する成分界面活性剤の1種がペルフルオロポリエーテル(PFPE)カルボン酸、またはその塩(「カルボキシル末端を有するPFPE」)であるとき、フルオロ界面活性剤の混合物である分散剤を用いるフルオロモノマーの水性分散重合が改善された結果をもたらすことが見出された。存在する他の界面活性剤には、フルオロアルキルカルボン酸、またはスルホン酸、あるいはそれらの塩など、分散重合に通例用いられるフルオロ界面活性剤が含まれる。改善には、コポリマーへのコモノマー組み込みの向上、重合速度の増大、ロッド形状粒子の生成、および/または分散粒子径の低減が含まれる。驚いたことに、そのような効果を得るためにPFPE酸/塩は全フルオロ界面活性剤の副次的な部分であることができ、かつ全フルオロ界面活性剤濃度は低い濃度であることができる。
【0015】
本発明の水性分散重合方法は、フッ素化モノマーを重合するための分散剤の成分として、PFPEカルボン酸、またはその塩を使用する点を除いて通常である。1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンなどの有機液体が水性媒体に存在できるが、無溶媒水性分散重合が好ましい。開始剤は水溶性であり、一般に、存在する水の重量に対して2〜500ppmの量で用いられることになる。そのような開始剤の例には、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、およびジコハク酸ペルオキシドが含まれる。この重合は、水、界面活性剤、モノマー、および任意選択で連鎖移動剤を重合反応器に充填し、反応器の内容物を攪拌し、所望の重合温度、たとえば25℃〜110℃に反応器を加熱し、次いで所望の速度で開始剤を添加して重合を開始、継続することによって実行できる。消費されるモノマーを補充するために、追加のモノマーを添加することができる。重合中、追加の界面活性剤も反応器に添加できる。
【0016】
重合の速度を調節するためにいくつかの別法があり、それらは本発明の方法に適用できる。開始剤の注入、および反応の開始後、通例、選択された圧力を維持するために追加のモノマーを添加する。重合速度を増大または低減し、それによって一定の全圧を維持するために必要に応じて攪拌機の速度を変化させながら、モノマーを一定速度で添加することができる。別法として、一定の圧力を維持するために必要に応じてモノマーを添加して、全圧および攪拌機速度の両方を一定に保持することができる。3つ目の別法は、攪拌機速度は可変であるが、モノマーの供給速度は一様に増加させながら、複数の段階において重合を行うことである。他の別法は、所望の反応速度を維持するために、攪拌機速度を一定に保ち、モノマーの供給速度を制御することによって圧力を変えることである。当業者は、他の制御方式を用い得ることを理解するであろう。
【0017】
本発明の分散重合方法に用いられるフルオロ界面活性剤混合物には、フルオロアルキル、および多くとも1つのエーテル酸素を含有し、したがってポリエーテルでないフルオロ界面活性剤が含まれる。エーテル酸素が存在する場合、酸素−炭素結合の1つが、好ましくはエーテル酸素を、フッ素を含有しない分子のセグメントに結合している。そのような界面活性剤には、フルオロモノマーの分散重合に一般的に用いられるものが含まれる。そのような界面活性剤の例には、6〜20個の炭素原子、好ましくは6〜12個の炭素原子を有する、フルオロアルキル、好ましくはペルフルオロアルキルカルボン酸、およびその塩、たとえばペルフルオロオクタン酸アンモニウム塩、およびペルフルオロノナン酸アンモニウム塩などが含まれる(Berry、特許文献15参照)。そのような界面活性剤の他の例には、ペルフルオロアルキルスルホン酸、およびペルフルオロアルキルエタンスルホン酸、およびそれらの塩が含まれ、この界面活性剤は、4〜16個の炭素原子、平均6〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルの混合物を含有することができ(KhanおよびMorgan、特許文献16参照)、あるいは主として6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルを含有することができる(BakerおよびZipfel、特許文献17、および特許文献18参照)。そのような界面活性剤の他の例には、ペルフルオロアルコキシベンゼンスルホン酸、およびその塩が含まれ、そのペルフルオロアルコキシのペルフルオロアルキル成分は、4〜12個の炭素原子、好ましくは7〜12個の炭素原子を有する(Morgan、特許文献19参照)。そのような界面活性剤の他の例にはさらに、内部メチレン基を有し、次式Rf−(CH2m−R′f−COOMを有し、式中、mは1〜3、Rfは3〜8個の炭素原子を含有するペルフルオロアルキル、またはペルフルオロアルコキシ、R′fは1〜4個の炭素原子を含有する直鎖、または分枝鎖ペルフルオロアルキレンであり、MはNH4、Li、Na、K、またはHである部分フッ素化界面活性剤が含まれる(Feiring他、特許文献20参照)。好ましくは、ポリエーテルでないこの界面活性剤はエーテル結合を持たない。好ましいそのような界面活性剤には、ペルフルオロアルキルカルボン酸、およびその塩、ならびにペルフルオロアルキルエタンスルホン酸、およびその塩が含まれる。複数のそのような界面活性剤を用いることができるが、一般に1種のみが用いられる。
【0018】
本発明に用いられるペルフルオロポリエーテル(カルボキシル末端を有するPFPE)は、1〜3個の炭素原子を有する飽和フルオロカーボン基によって分子主鎖の酸素が隔てられている任意の鎖構造を有することができる。複数のタイプのフルオロカーボン基が、分子内に存在できる。
【0019】
代表的な構造は、
(−CFCF3−CF2−O−)n (I)
(−CF2−CF2−CF2−O−)n (II)
(−CF2−CF2−O−)n−(−CF2−O−)m (III)
(−CF2−CFCF3−O−)n−(−CF2−O−)m (IV)
である。
【0020】
これらの構造は、J.Appl.Polymer Sci.57、797、1995年においてKasaiによって論じられている。そこに記載されているとおり、そのようなPFPEは、1つの末端または両方の末端に、カルボン酸基、またはその塩(「カルボン酸基」)を有することができる。モノカルボキシルPFPEの場合、分子のもう一方の末端は一般に全フッ素化されているが、水素、または塩素原子を含むことができる。本発明に用いることのできる、1つ、または両方の末端にカルボキシル基を有するPFPEは、少なくとも2個のエーテル酸素、より好ましくは少なくとも4個のエーテル酸素、さらに好ましくは少なくとも6個のエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を隔てているフルオロカーボン基の少なくとも1つ、より好ましくは、そのようなフルオロカーボン基の少なくとも2つが、2個、または3個の炭素原子を有する。さらに好ましくは、エーテル酸素を隔てているフルオロカーボン基の少なくとも50%が、2個、または3個の炭素原子を有する。さらに、好ましくは、このPFPEは合計で少なくとも9個の炭素原子を有する。1つ、または両方の末端にカルボキシル基を有する複数のPFPEを用いることができるが、一般にそのようなPFPEを1種だけ用いる。
【0021】
本発明の方法に用いられるすべてのフルオロ界面活性剤の量は、既知の範囲内であることができ、上に挙げた慣例的な量である0.1〜0.15重量%を含む。したがって、全界面活性剤の量は、重合に用いられる水の量に対して、約0.01重量%から約10重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.05〜0.35重量%であることができる。本発明の重合方法に用いることのできる界面活性剤の濃度は、その界面活性剤の臨界ミセル濃度(c.m.c.)超、または未満の濃度であってよい。c.m.c.は、種々の界面活性剤によって異なる。たとえば、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム塩の場合、c.m.c.は約14g/l、Zonyl(登録商標)TBS、またはZonyl(登録商標)6,2−TBSなどのペルフルオロアルキルエタンスルホン酸では1g/lである(室温で求めたc.m.c.値)。
【0022】
当業者に理解されるとおり、所与のレベルの分散液安定性を得るために必要とされる界面活性剤の量は、一定の粒径で製造されるポリマーの量に伴って増加することになる。安定性のために必要とされる界面活性剤の量はさらに、このような条件下で総表面積が増加するので、一定に製造されるポリマーの粒子径の減少に伴って増加する。これは、カルボキシル末端を持たないPFPEの非存在下で行われる類似の方法に比べて、より小さな分散液粒子を一般に生じる本発明の方法に関して、いくらかの場合に認められる。そのような場合、全界面活性剤が増加しなければ、結果として生じる分散液は室温で不安定であり、ゲルを形成する可能性がある。驚いたことに、結果として生じる室温で不安定な分散液は、反応器内の少量の凝塊によって判断されるように、重合に用いる高温において安定であるように見える。「凝塊」は、重合中に水性分散液から分離され得る非可湿性ポリマーである。形成される凝塊の量は、分散液安定性の指標である。
【0023】
カルボキシル末端を有するPFPEは、分散媒組み合わせ中に主要な量で存在することができるが、そのような化合物は高価である。全フルオロ界面活性剤のうち、カルボキシル末端基を有するPFPEは、好ましくは副次的な量で、すなわち全フルオロ界面活性剤の半分未満の重量で存在する。カルボキシル末端を有するPFPEの量は、全フルオロ界面活性剤の重量に対して、より好ましくは20重量%以下、もっとも好ましくは10重量%以下である。一般に、存在するカルボキシル末端を有するPFPEの量は、全フルオロ界面活性剤の重量に対して、少なくとも0.25重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%である。用いられるカルボキシル末端基を有するPFPEの量は、所望の効果のレベル(すなわち粒径)によって決まることになる。驚いたことに、カルボキシル末端を有するPFPEのみの使用は、たとえば多くとも1つのエーテル結合を有するフルオロ界面活性剤(ポリエーテルでない)の非存在下では、多くとも1つのエーテル結合を有するフルオロ界面活性剤のみの使用に比べて改善された結果を生じない。すなわち、フルオロ界面活性剤の少なくとも1種が、ペルフルオロポリエーテルカルボン酸、またはその塩であり、フルオロ界面活性剤の少なくとも1種がフルオロアルキルカルボン酸、もしくはスルホン酸、またはその塩、あるいはフルオロアルコキシアリールスルホン酸、またはその塩である、少なくとも2種のフルオロ界面活性剤の組み合わせを使用することは、いずれかの種類の界面活性剤を単独で使用する場合に比べて、この重合方法に相乗効果をもたらす。
【0024】
本明細書では、「フルオロ界面活性剤の組み合わせ」は、「組み合わせ」の成分が重合中に反応器内に存在することを意味する。その成分は、異なる時間で導入することも含め、別個に導入することができ、反応器に導入する前に物理的に化合することもできるが、そのように化合されている必要はない。すべてのフルオロ界面活性剤は、重合が開始される前に反応器に添加することができ、あるいは反応器への予備充填、およびその後の添加、典型的には大部分の粒子核生成が起こった後の添加に、添加を分割することができる。PFPEの添加は、好ましくは予備充填による。
【0025】
本発明の方法において重合することのできるフッ素化モノマー、すなわち少なくとも35重量%のフッ素を含有するモノマーには、2〜10個の炭素原子を有するフルオロオレフィン、フッ素化ジオキソール、および次式CY2=CYOR、またはCY2=CYOR′ORであり、式中、YはHまたはF、−Rおよび−R′−は独立して、1〜8個の炭素原子を含有する完全フッ素化された、または部分フッ素化アルキル、およびアルキレン基であるフッ素化ビニルエーテルが含まれる。好ましい−R基は、1〜4個の炭素原子を含有し、好ましくは全フッ素化されている。好ましい−R′基は、2〜4個の炭素原子を含有し、好ましくは全フッ素化されている。好ましいフルオロオレフィンは、2〜6個の炭素原子を含有し、TFE、ヘキサフルオロプロピレン(HEP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(VF2)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、およびペルフルオロブチルエチレンを含む。好ましい環状フッ素化モノマーには、ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)、およびペルフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PMD)が含まれる。
【0026】
フルオロモノマーをホモ重合できる場合には、そのフルオロモノマーを単独で重合してホモポリマーを形成してもよく、あるいは、1種または複数の他のフルオロモノマー、または他のモノマー、たとえばフルオロモノマーでない炭化水素モノマーなどと共に重合してコポリマーを形成してもよい。コポリマーが形成される場合、選択されるモノマーは、共重合できるものでなければならない。フルオロモノマーのいくつかの組み合わせと共に共重合されるフッ素を含まないモノマーには、プロピレン、およびエチレンが含まれる。フルオロポリマー由来の有用なホモポリマーの例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびポリフッ化ビリニデンが含まれる。さらに、一般にホモポリマーPTFEと同じ部類であると考えられるのは、高分子量PTFEの非溶融加工性をその改質ポリマーが保持するような副次的な量で、TFE以外にフルオロモノマーを含有する改質PTFEポリマーである。有用なコポリマーの例には、TFEとHFPおよび/またはPPVEもしくはPEVEなどペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)のコポリマー、TFEとPMVEのコポリマー、TFEとPDDのコポリマー、TFEまたはCTFEとエチレンのコポリマーが含まれる。さらなる例には、フッ化ビニリデンとHFPまたはHFP、およびTFEのコポリマーが含まれる。上に含意したように、コポリマーは名前を挙げたもの以外に追加のモノマーを含有することができる。たとえば、TFE/エチレンコポリマーは、PFBE、HFP、PPVE、または2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンなど大きな側基を導入する追加のモノマーを含む場合もっとも有用であり、エラストマー性ポリマーは多くの場合、硬化サイトモノマー由来の低濃度の硬化サイト部分を含む。
【0027】
本発明のポリマーには、TFEおよびCTFEのホモポリマー、フルオロモノマーが全ポリマー(重量%)の<1重量%であるように1種または複数の上述した他のフルオロモノマーと重合されたTFEまたはCTFE、1〜99重量%の1種または複数の他のフルオロモノマー、好ましくは1〜50重量%の1種または複数の他のフルオロモノマー、より好ましくは1〜20重量%の1種または複数の他のフルオロモノマー、もっとも好ましくは1〜10重量%の1種または複数の他のフルオロモノマーと重合されたTFEまたはCTFEが含まれる。すべての場合において、重量%の値はポリマーに組み込まれたコモノマーの量を指す。
【0028】
好ましいフルオロポリマーには、テトラフルオロエチレン(TFE)ポリマーのグループが含まれる。好ましいTFEポリマーには、ペルフルオロポリマー、特にTFEホモポリマー、ならびにTFEと、3〜8個の炭素原子を有する1種または複数のペルフルオロオレフィン、特にHFP、および1〜5個の炭素原子、特に1〜3個の炭素原子を含有するアルキル基を有するペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)とのコポリマーが含まれる。
【0029】
本発明の方法によって製造されたフルオロポリマーは、可塑性、またはエラストマー性であることができる。それらのフルオロポリマーは、非晶質、または部分結晶質であることができ、溶融加工性、または非溶融加工性であることができる。本明細書では、「可塑性」は通常の意味を持ち、すなわち、このフルオロポリマーは塑性変形を受け、大きな変形から完全には回復しない。「エラストマー性」は、このフルオロポリマーが、一般に定義されているとおりエラストマーであるか、またはエラストマーに硬化できる、すなわち初期長の2倍に延伸し、緩めた後、実質的に元の長さに戻ることを意味する。
【0030】
本発明の方法によって製造されたフルオロポリマーはまた、表面特性を変性する、架橋サイトを提供するなどのために、ポリマーに官能基を導入するモノマー由来の単位を含有することができる。そのような官能性を有するペンダント側基を導入する官能モノマーは、一般式CY12=CY3−Zを有することができ、式中、各Yは独立して、H、F、またはClであり、Zは官能基を含有する。好ましくは、各YはFであり、−Zは−Rf−Xであって、式中、Rfはフッ素化ジラジカル、XはCH2基を含有することのできる官能基である。そのような官能モノマーの例には、ブロモテトラフルオロブテンが含まれる。官能モノマーの例にはさらに、特許文献21に開示されたCF2=CF[OCF2CF(CF3)]m−O−(CF2nCH2OHなどのフルオロビニルエーテル、および特許文献22に開示されたCF2=CF[OCF2CF(CF3)]m−O−(CF2n−(CH2p−O−CORなどのアルコールエステルが含まれる。さらなるフルオロビニルエーテルには、特許文献23に開示されたCF2=CF[OCF2CF(CF3)]mO(CF2nCOOHおよびそのカルボン酸エステルCF2=CF[OCF2CF(CF3)]mO(CF2nCOORが含まれる。これらの式において、m=0〜3、n=1〜4、p=1〜2、Rはメチルまたはエチルである。好ましいそのようなフルオロビニルエーテルには、CF2=CF−O−CF2CF2−SO2F、式中−Yは−SO2F、−CN、または−COOHであるCF2=CF[OCF2CF(CF3)]O(CF22−Y、および式中−Zは−OH、−OCN、−O−(CO)−NH2、または−OP(O)(OH)2であるCF2=CF[OCF2CF(CF3)]O(CF22−CH2−Zが含まれる。表面特性を変性すること、または架橋サイトと提供することが目的であるとき、そのような官能モノマーは一般に、フルオロポリマーの全モノマー単位に対して5モル%以下、より一般的には3モル%以下などの副次的な量でフルオロポリマーに組み込まれる。他の目的の場合、たとえばそのコポリマーがイオン交換ポリマーの前駆物質であるとき、官能モノマーはより多い量でポリマーに組み込むことができる。
【0031】
本発明の方法は、テトラフルオロエチレン(TFE)を重合して、高分子量、または比較的低い分子量を有するTFEポリマー、すなわちTFEを含むポリマーを製造するために用いることができる。TFEは用いられる唯一のモノマーであってよく、その場合、形成されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)はホモポリマーとなる。別法として、TFE以外のある量の共重合性全フッ素化コモノマーを反応器に添加してTFEと共重合させることができ、ここで結果として生じる高分子量TFEポリマーは、0.5モル%未満のコモノマーで改質され、少なくとも焼結時の改善された塗膜形成能を付与するが、一方でポリマーのPTFEの特性は保持したままである(改質PTFE)。このPTFEは非溶融加工性であってよく、すなわち380℃で1×108Pa・sを超える溶融粘度(MV)を有することになる。この範囲のMVは、ASTM D−4895に従って試験試料を成形および焼結し、特許文献24に記載の引張クリープ法によって380℃で測定される。より低いMV、たとえば372℃での測定値10Pa・sから1×105Pa・sを有するPTFEを提供するために、エタン、またはメタノールなどの連鎖移動剤を重合反応中に存在させることができる。そのようなPTFEは一般的に微粉として知られており、たとえばASTM Standard D−5675に記載されている。コモノマーが存在する場合、コモノマーは、好ましくは、アルキル基が1〜8個の炭素原子、好ましくは1〜3個、より好ましくは2から3個の炭素原子を含有するペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレンなどのペルハロオレフィン、ヘキサフルオロプロピレンなどのペルフルオロオレフィン、またはペルフルオロブチルエチレンなどのペルフルオロアルキルオレフィンであることになる。複数の改質コモノマーを用いることができる。本発明の方法に従ってTFEが重合されるとき、圧力は典型的に0.3から7MPaの範囲であり、TFEは通例目標値で圧力を維持する速度で反応器内に加圧添加される。水性分散液中に所望のポリマー固形分濃度、たとえば水およびポリマー固形分を合わせた重量に対して20から60%を得るためにこの重合は実行され、TFEの供給を止め、反応器を通気して未反応モノマーを除去し、任意選択でTFE供給停止後、通気前にしばらくの間反応を継続させることによってこの重合は停止される。
【0032】
溶融加工性TFEコポリマーを製造するために本発明の重合方法を用いるとき、反応器に添加されるコモノマーの量は、融点をPTFEまたは改質PTFEの融点よりも実質的に低く、たとえば320℃以下に下げ、溶融加工性とするために十分なコモノマーをTFEコポリマーに組み込むのに有効な量となり、その量はTFEに対するコモノマーの反応性、およびそのコポリマーに溶融加工性を付与するために必要とされる組み込み量によって決まり、必要とされる組み込み量もまた用いられる特定のコモノマーによって決まる。一般的に、溶融加工性、部分結晶性のTFEコポリマーに組み込まれるコモノマーの量は、少なくとも0.5モル%となり、そのコモノマーに応じて15モル%程の高い量、およびさらに高い量であることができる。溶融加工性の目標は、押出し、射出成形、圧縮成形など、1種または複数の溶融加工技術によってそのコポリマーが加工可能であることによって実証できる。典型的に、このTFEコポリマーは、10Pa・sから106Pa・sの範囲のMVを有することになる。MVは、特許文献25に開示された変更ASTM法D−1238によって求められる。用いられる共重合性コモノマーの量は、通例重合反応の開始に先立って反応器に添加されるが、所望であれば反応中に添加することもできる。溶融加工性TFEコポリマーを得るために、種々のコモノマーをTFEと共に使用できることを当業者は理解するであろうが、この多様なコモノマーを本発明の方法に使用できる。共重合性全フッ素化モノマーの例には、HFPなどのペルフルオロオレフィン、またはアルキル基が1から8個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含有するペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)が含まれる。複数のコモノマーをTFEコポリマーに組み込むことができ、たとえば、TFEとHEP、および1種または複数のPAVEのコポリマーであることができる。代表的なTFE/HFPコポリマー(FEP)、およびTFE/PAVEコポリマー(PFA)は、たとえばASTM Standard D−2116、およびD−3307に記載されている。
【0033】
他のTFEポリマーには、VF2/HFP/TFEコポリマーが含まれる。当分野で知られているとおり、そのようなフルオロポリマーは、コポリマーに組み込まれるモノマー種の割合に応じて可塑性、またはエラストマー性となる可能性がある。
【0034】
本発明の重合方法における界面活性剤混合物の利点は、未処理分散液粒子径(RDPS)が低減された、および/またはロッド形状の分散液粒子が形成された実施例において明らかである。RDPSは、以下の実施例に示したように、驚くほど小さく、20nmより小さくもなり得る。ポリマーがTFEポリマーであり、分散粒子が主として球状であるとき、RDPSは約5nmから約250nm、好ましくは10〜200nm、より好ましくは25〜150nmの範囲であることができる。約0.3モル%(0.5重量%)を超えるコモノマーを含有するコポリマーの場合には小さな球状粒子が得られ、TFEホモポリマーまたはコポリマーは低分子量を有する(可測メルトフロー)。低分子量PTFEの小さな球状粒子は、Seguchi他、およびFolda他によって報告された、高濃度、すなわちc.m.c.を超える濃度の通常のセッケン存在下における低分子量PTFEの重合によるロッド様粒子とは対照的である。ロッドを含有する本発明の高分子量TFEのバッチがさらに球状粒子を含有するとき、それらの球状粒子は減少した直径を有する。約0.3モル%を超えるコモノマーを含有する高分子量TFEポリマーは、ほぼ排他的に減少した直径、すなわち150nm未満の球状粒子からなる。用いられる分散剤の量、およびカルボキシル末端を有するPFPEの界面活性剤全量における割合は、ポリマー粒子の分散液、好ましくは上述した範囲内の好ましい粒径を得るために有効な量である。たとえば、低分子量TFEコポリマーの球状粒子が所望であるとき、カルボキシル末端を有するPFPEの量は、存在するフルオロ界面活性剤の全量の約0.4〜20%である。
【0035】
ロッド形状分散液粒子(長さ対直径比またはL/D比、3.0超)は、TFEポリマーの分子量が高く(溶融加工性でない)、コモノマーが存在する場合にはコモノマーの量が少なく、すなわち0.3モル%以下である場合に形成される可能性がある。3.0を超えるL/D値を有する分散液粒子は、時として従来技術の高分子量TFEポリマーの重合中に形成されることがあるが、フルオロ界面活性剤量が非常に高く、一般にその界面活性剤のc.m.c.値より高くない限り、そのレベルは一般に低く、約10から15%であり、かつL/D値が低く、10未満、通例5未満である。カルボキシル末端を有するPFPEを重合に添加することによって、特にc.m.c.未満の界面活性剤量で、より多くのロッド形成、および高いL/D値が可能になる。低減された量のカルボキシル末端を有するPFPEを、分割添加技法によって使用することができ、他のフルオロ界面活性剤の大部分(50%超)は、ほとんどの粒子核生成が起こった後(通例、重合の約10分後)に添加される。ロッド形状の分散液粒子を有する高分子量TFEポリマーが望まれるとき、カルボキシル末端を有するPFPEの量は典型的に、全フルオロ界面活性剤の0.2〜10%である。
【0036】
驚いたことに、たとえカルボキシル酸を有するPFPEまたはその塩の存在によって、室温で測定された分散剤を含有する水の表面張力が、もしあったとしても著しく低減されていない場合でも、本発明の方法にによる分散液粒子径および形状への効果を得ることができる。たとえば、水中のペルフルオロヘキシルエタンスルホン酸(6,2−TBS、以下の実施例を参照)の室温における表面張力は、6,2−TBSの濃度が0.094重量%であるとき26.6ダイン/cmであり、6,2−TBS濃度が0.0012重量%であるとき64.4ダイン/cmである。カルボン酸末端を有するPFPE(PFPE−1、以下の実施例参照)が、6,2−TBS濃度の15%に等しい濃度で存在するとき、対応する表面張力はそれぞれ、26.5ダイン/cm、および67.8ダイン/cmである。このように、「フルオロ界面活性剤」という用語は本明細書においてカルボン酸末端を有するPFPEに適用されるが、それらは強力な界面活性剤であるようには見えない。
【0037】
本発明の他の実施形態は、実質的に球状の小さな粒子を有し、フルオロ界面活性剤が低濃度であるフルオロポリマー水性分散液である。そのような分散液の状態で存在できるフルオロポリマーには、上に開示したフルオロポリマーが含まれる。好ましいそのようなフルオロポリマーには、上に開示したように、溶融加工性または非溶融加工性のTFEコポリマー、および低分子量PTFE(微粉)が含まれる。「実質的に球状」とは、無作為に選択した少なくとも20個の粒子を用いて平均を算出した乾燥分散液試料の電子顕微鏡写真における粒子の、最小寸法に対する最大寸法の平均比が、1.5以下であることを意味する。「小さい粒径」とは、以下に記載のとおり測定したポリマー粒子の平均径が、150nm以下、好ましくは75nm以下、より好ましくは50nmであることを意味する。「低濃度のフルオロ界面活性剤」とは、存在するフルオロ界面活性剤の全量が、分散液中の水の全重量に対して、前記フルオロ界面活性剤の臨界ミセル濃度未満、好ましくは0.35重量%以下、より好ましくは0.25重量%以下、もっとも好ましくは0.20重量%以下であることを意味する。上述のとおり、存在するフルオロ界面活性剤の全量は、少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%である。したがって、フルオロ界面活性剤の全量は、分散液中の水の重量に対して、0.01〜0.35重量%の範囲、好ましくは0.05〜0.25重量%の範囲、より好ましくは0.05〜0.20重量%の範囲であることができる。驚いたことに、そのような分散液は、高い含量のフルオロポリマー固形分を有することができる。本発明のフルオロポリマー分散液は、分散液の全重量に対して少なくとも20重量%の固形分、好ましくは少なくとも25重量%の固形分を有する。固形分はさらに高い含量、たとえば30重量%以上であることができる。
【0038】
本発明の他の実施形態は、実質的にロッド形状である粒子を有し、フルオロ界面活性剤が低濃度であるフルオロポリマー水性分散液である。そのような分散液の状態で存在できるフルオロポリマーには、上述したように、高分子量PTFE、および改質PTFEが含まれる。この文脈において「実質的に」とは、乾燥分散液試料の電子顕微鏡写真において、粒子体積の少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは75%がロッド形状であることを意味する。「ロッド形状」とは、乾燥分散液試料の電子顕微鏡写真において粒子の最小寸法に対する最大寸法の平均比が、少なくとも3、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10であることを意味する。「低濃度のフルオロ界面活性剤」とは、存在するフルオロ界面活性剤の全量が、分散液中の水の全重量に対して、前記フルオロ界面活性剤の臨界ミセル濃度未満、好ましくは0.35重量%以下、より好ましくは0.30重量%以下であることを意味する。存在するカルボキシル末端を有するPFPEの全量は、分散液中の水の全重量に対して少なくとも0.0025重量%、好ましくは少なくとも0.01重量%である。カルボキシル末端を有するPFPEは、好ましくはすべて反応器にあらかじめ充填するのに対して、他のフルオロ界面活性剤は少量部分だけをあらかじめ充填する。他の界面活性剤の残部は、好ましくは粒子核生成がおおむね完了した後、典型的には10分間の反応が起こった後に添加する。他の界面活性剤の「分割」添加によって、用いられるカルボキシル末端を有するPFPEがより少量となる。驚いたことに、そのような分散液は、高い含量のフルオロポリマー固形分を有することができる。本発明の本実施形態のフルオロポリマー分散液は、分散液の全重量に対して少なくとも20重量%の固形分、好ましくは少なくとも25重量%の固形分を有する。固形分はさらに高い含量、たとえば30重量%以上であることができる。さらに驚くことに、ロッド様形状を有する樹脂は、高分子量を有することができる。これらの樹脂の分子量は、1×106超、好ましくは3×106超であることができる。
【0039】
本発明の方法によって製造されたフルオロポリマーは、金属被覆、グラスクロス被覆、含浸など、様々な適用例に分散液形態で用いることができる。意図した目的に適した安定性および/または湿潤性を有しているならば、反応器から排出した、重合したまま(未処理)の分散液を用いてもよい。別法として、未処理分散液は、界面活性剤の添加によって調整、希釈、または濃縮、および当分野でよく知られる技法によって安定化することができる。分散液の濃度は、ポリマー固形分および水性媒体を合わせた重量に対して、固形分約10重量%から約70重量%など、広い範囲に渡って多様であることができる。
【0040】
別法として、本発明の分散重合方法によって製造されたポリマー粒子は、激しい攪拌、任意選択で電解質および/または低い表面張力を有する水不混和溶媒の添加によって補助、または凍結融解操作、続いて液体からポリマー固形分を分離し、乾燥するなど、任意の都合のよい方法で水性未処理分散液から分離することができる。
【0041】
本発明の重合方法における界面活性剤混合物の驚くべき利点はさらに、重合を制御するために選択された方法を反映するという点で以下の実施例に明らかである。上に略述したように、重合を制御する一方法は、あらかじめ決めた重合速度(モノマー消費量)を達成するために、攪拌の強度(攪拌機速度)を変化させて水性媒体への気体モノマーの物質移動を調節することである。そのような制御方式のもとでは、攪拌機の速度が十分に広い範囲であるならば、すべての反応は同一の速度で実行され、反応性の変動は所望の速度を維持するために必要な攪拌速度に反映され、より低い攪拌機速度はより高い反応性を示す。一定の攪拌機速度で実行することを選択するならば、重合速度における固有の差異が直接に認められるであろう。
【0042】
本発明の重合方法における界面活性剤混合物の利点はさらに、驚くほど向上したコモノマーの組み込みにおいて以下の実施例に明らかである。たとえば、TFE/HFPコポリマーを製造する重合において、コポリマーに組み込まれるHFPの量は、カルボキシル末端を有するPFPEを含む界面活性剤混合物を用いない類似の方法に比べて、本発明の方法では著しく高い。HFP含量が十分に高くTFE/HFPコポリマーが非晶質であるとき、本発明の方法は、WO96/24625の方法に比べて、より容易に高いMVを得ることを可能にする。
【実施例】
【0043】
以下の実施例に用いたフルオロ界面活性剤を表1に記載し、一般に表に示した略号によって識別される。
【0044】
【表1】

【0045】
重合したままのポリマー粒子の平均径、すなわち未処理分散液粒子径(RDPS)を、光子相関分光法(PCS)、またはポリッシュトシリコンウエハ上に析出させ、乾燥させた分散液試料の走査電子顕微鏡(SEM)写真の測定によって測定する。このPCS法は球状の粒子形状を想定し、実質的に非球(ロッド)形状の粒子を含有する分散液の測定には不適切である。
【0046】
分散液試料中のロッドの体積パーセントは、シリコンウエハ上の分散液の一部を乾燥し、イオンビームスパッタシステムを用いて真空下、2nmのイリジウムで被覆し、次いで走査電子顕微鏡(SEM)で検査することによって求める。透明グリッドを、典型的に20000倍の倍率で撮られた、およそ5インチ×8インチ(約12.7cm×約20.32cm)のSEM写真上に置く。このグリッドは、1インチ(約2.54cm)の区画、さらに1/8インチ(約0.32cm)の正方形に分割されている。写真の2平方インチ(256の小区分)を検査し、ロッド形状粒子を含んだ小区分のパーセントを算出する。粒子を含有しない、または重なっている粒子が粒子形状(L/D)の正確な判定を妨げている小区分は計算から除外する。この結果をロッド「体積パーセント」として報告する。
【0047】
水性分散液の固形分は、分散液試料を蒸発乾燥することによって、または比重計を用いて比重を求めることによって求め、液体媒体および分散固体を合わせた重量に対する重量%で示す。
【0048】
フルオロポリマー組成は、0.025〜0.051mmの厚さの溶融プレスフィルムで赤外分光法によって求める。1重量%を超えるHFPを含有するTFE/HFPコポリマーの場合には、特許文献26に記載の方法に従ってフーリエ変換赤外分光法を用いる。この方法の適用において、約10.18μm、および約4.25μmで見られるピーク吸光度の帯を用い、これらの厳密な波長での吸光度は、それらがピーク吸光度でない限り用いない。HFP含量は、HFPI指数、2つのピーク吸光度の比として表す。1重量%未満のHFPを含有するTFE/HFPコポリマーの場合には、特許文献27のCardinalの方法を用いてHFPレベルを求める。
【0049】
TFE溶融加工性ポリマーのPAVE含量は、分析される樹脂の融点に応じて、またはそれ無しに、150℃〜350℃でプレスされた0.095〜0.105mm厚のフィルムでFTIR分光法によって求める。PMVEは、11.24μmの赤外帯から求め、4.25μの吸光度に対する11.24μmの吸光度の比を8倍して、重量%に算出する。PMVEを求める場合、11.24μmの吸光度のベースラインは、10.36μmでの最小吸光度とみなされる。PPVEは、10.1μmの赤外帯から求め、4.25μの吸光度に対する10.1μmの吸光度の比を0.97倍して、重量%に算出する。非溶融加工性TFEコポリマーにおける低いレベルのPPVE含量(1%未満)は、特許文献28の手順によって求める。
【0050】
10Pa・sから106Pa・sの範囲のMVを有するフルオロポリマーの溶融流量(MFR)は、低いMV(103Pa・s未満)を有する試料に関して直径0.062インチ(1.6mm)有するオリフィス、833gまたは325gの重量を用いることを除いて、特許文献29に記載の変更ASTM法D1238−52Tによって求める。MVは試験条件および樹脂の溶融密度によって決まる数式により、MFRに対して反比例する。たとえばFEP樹脂の場合、ASTM D1238に従って測定を行うとき、その関係はMV=53.15/MFRであり、MVは103Pa・sの単位、MFRはg/10分の単位である。380℃で約1×108Pa・sを超えるMVは、試験試料をASTM D−4895に従って成形、焼結し、特許文献30に記載された引張クリープ法によって380℃で測定する。
【0051】
フルオロポリマー樹脂の熱特性は、ASTM D−4591−87の方法によって、示差走査熱分析(DSC)により求める。慣例どおり、融解温度(Tm)は、融解吸熱のピーク温度とみなされる。
【0052】
PTFE樹脂の標準比重(SSG)は、ASTM D−4895の方法により測定する。ポリマーの数平均分子量(MW)はSSGに反比例し、非特許文献2に記載の相関によりSSG値から算出することができる。
【0053】
SSG=2.612−0.058・log10MW
【0054】
比表面積(SSA)は、ASTM D−5675の方法に従って測定される。より高いSSA値は、一般により小さい基本粒径を示す。しかしながら、粒子形状の変化、たとえばロッド様粒子の形成などは、この相関関係をより複雑にする。
【0055】
別に記述のない限り、溶液中の溶質の濃度は、溶質および溶媒を合わせた重量を基準にする。
【0056】
(対照A)
約1.5の長さ対直径比、および79重量部の水容量を有する円筒型、水平配置、水ジャケット付き櫂形攪拌ステンレス鋼製反応器に、47.4部の脱塩水を充填する。反応器を65℃に加熱し、排気し、TFEでパージし、その後再び排気する。次に反応器内の真空を利用して、4.7重量%の6,2−TBS界面活性剤水溶液1.87部を引き入れる。別の0.88部の水を用いて、この溶液を反応器に洗い入れる。次に反応器を閉じ、42rpmで攪拌を開始し、反応器温度を103℃に上げる。温度が103℃で一定になった後、圧力が475psig(3.38MPa)になるまで、HFPをゆっくりと反応器に添加する。次にTFEを添加して、反応器の圧力を650psig(4.59MPa)に上げる。次に、3.0重量%の過硫酸アンモニウム(APS)を含有する新たに調製した水溶液0.66部を、0.11部/分の速度で反応器にポンプで送る。その後、残りの重合の間、同じ開始剤溶液を0.024部/分の速度で反応器にポンプで送る。反応器の圧力が10psig(0.07MPa)下がることによって示されるとおり重合が始まった(開始)後、追加のTFEを反応器に添加して、圧力を650psig(4.58MPa)で一定に維持する。攪拌機速度を利用して、TFE添加速度が約0.13部/分となるように水性相へのTFEの物質移動を制御する。攪拌機速度は、分散液が不安定化するのを回避するために、最大70rpmに制限される。開始後、合計18.0部のTFEが添加されたら(150分)、TFEの供給を停止し、反応器を冷却する。重合中の平均攪拌速度は58rpmである。反応器の内容物が90℃に冷却されたら、開始剤の供給、および攪拌を停止し、反応器を通気する。ほぼ大気圧に通気した後、反応器を窒素でパージして残留モノマーを除去する。次に分散液を反応器から排出し、取っておくが、この分散液は32.8重量%のポリマーを含有している。未処理分散液粒子径(RDPS)は150nmである。
【0057】
分散液の一部をプラスチックボトルに注入し、次にそれを一晩、−20℃で冷凍庫に置く。次いで分散液のボトルをバケツの温水中で融解し、分離するポリマー相をフィルタ上に集める。元の分散液体積の75%に相当する体積の脱塩水で、ポリマーを3回フィルタ上で洗浄する。次にこれを同量のイソプロピルアルコールで3回洗浄する。各洗浄液の多くは、フィルタの下部に真空を適用することによって除去される。次にポリマーを、150℃の空気循環炉で乾燥する。この乾燥樹脂は、MV1.7×102Pa・s、およびHFPI4.71を有する。
【0058】
(実施例1)
対照Aの手順を本質的に繰り返すが、ただし6,2−TBS界面活性剤溶液と共に0.011部のPFPE−1を添加する。必要とされる反応時間は、平均攪拌機速度37rpmで140分である。この分散液は、33.9重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは65nmである。MVは1.5×102Pa・s、HFPIは5.48である。このように、カルボキシル末端基を有するPFPEが全界面活性剤の11%のみ存在する場合、HFPの組み込みは増加し、一方でより低い平均攪拌機速度で反応時間は縮小し、RDPSは減少する。
【0059】
(実施例2)
対照Aの手順を本質的に繰り返すが、ただし6,2−TBS界面活性剤溶液と共に0.011部のPFPE−2を添加する。必要とされる反応時間は、平均攪拌機速度41rpmで140分である。この分散液は、33.5重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは90nmである。MVは1.4×102Pa・s、HFPIは5.88である。ここでも、カルボキシル末端基を有するPFPEが全界面活性剤の11%のみ存在する場合、HFPの組み込みは増加し、一方でより低い平均攪拌機速度で反応時間は縮小し、RDPSは減少する。
【0060】
(対照B)
対照Aの手順を本質的に繰り返すが、ただし6,2−TBS界面活性剤溶液と共に0.011部のPFPE−5(カルボン酸末端を持たない)を添加する。必要とされる反応時間は、平均攪拌機速度65rpmで151分である。この分散液は、33.8重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは175nmである。MVは1.6×102Pa・s、HFPIは4.58である。このように、カルボキシル末端基の無いPFPEは、速度またはHFPの組み込みによい効果を及ぼさず、RDPSも減少しない。
【0061】
(実施例3)
実施例1の手順を本質的に繰り返すが、ただし0.002部のみのPFPE−1を添加する。必要とされる反応時間は、平均攪拌機速度42rpmで137分である。この分散液は、32.6重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは104nmである。樹脂のMVは1.6×102Pa・s、HFPIは5.52である。このように、カルボン酸末端を有するPFPEが全界面活性剤のわずか2.3%存在する場合でも、対照Aに対してHFPの組み込みは増加し、一方でより低い平均攪拌機速度で反応時間は縮小し、RDPSは減少する。
【0062】
(対照C)
対照Aの手順を本質的に繰り返すが、ただし初期HFP圧力は495psig(3.52MPa)、あらかじめ充填する開始剤溶液は1.10部であり、TFE添加速度は約0.086部/分に低減し、開始剤溶液は重合中に0.017部/分の速度で反応器にポンプで送る。反応時間は、平均攪拌機速度66rpmで212分である。この分散液は、32.9重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは165nmである。MVは2.2×102Pa・s、HFPIは5.47であり、より低いHFP圧力、より低い攪拌機速度、およびより短い反応速度を有する実施例1および3に類似の組成結果である。
【0063】
(対照D)
対照Aの手順を本質的に繰り返すが、ただしこの界面活性剤溶液は0.11部のPFPE−1を含み、6,2−TBSを含まない。目標のTFE添加速度は0.13部/分(反応時間140分)であるが、この速度は最大攪拌速度70rpmでは達成できない。最終反応時間は214分である。この生成物分散液は、28.7重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは335nmである。分散液を排出した後、反応器内に11部を超える湿潤ポリマー凝塊が見出される。MVは3.1×102Pa・s、HFPIは4.76である。このように、対照Aの界面活性剤を、実施例1および3において副次的な量で存在するときに著しい改善をもたらすカルボキシル末端を有するPFPEで完全に置き換えるとき、HFPの組み込みに向上は見られず、反応速度は低く、RDPSは大きく、かつ分散液の低い固体含量および多量の凝塊で示されるように分散液の安定性は劣る。
【0064】
(実施例4および対照E)
実施例1の手順を本質的に繰り返すが、ただし6,2−TBS溶液の濃度は5.9重量%であり、0.0006部のみのPFPE−1を添加する。必要とされる反応時間は、平均攪拌機速度65rpmで133分である。この分散液は、31.0重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは127nmである。樹脂のMVは1.3×102Pa・s、HFPIは4.97である。この配合からPFPE−1を省くとき(対照E)、反応時間は攪拌機速度64rpmで126分であり、分散液は30.9重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは142nm、樹脂のMVは1.9×102Pa・s、HFPIは4.72である。このように、カルボン酸末端を有するPFPEが全界面活性剤のわずか0.5重量%存在する場合でも、対照Eに比べてHFPの組み込みは増加する。
【0065】
(実施例5および対照F)
実施例4の手順を本質的に繰り返すが、ただし6,2−TBSの代わりに0.11部のC−8を用い、PFPE−1の量は0.0066部である。必要とされる反応時間は、平均攪拌機速度36rpmで152分である。この分散液は、33.5重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは62nmである。樹脂のMVは1.8×102Pa・s、HFPIは6.27である。この配合からPFPE−1を省くとき(対照F)、反応時間は攪拌機速度63rpmで171分であり、分散液は30.2重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは213nmであり、樹脂はMV1.7×102Pa・s、HFPI4.96を有する。このように、分散剤がPFPEカルボン酸およびフルオロアルキルカルボン酸の塩の混合物であるとき、本発明の方法は、増加した反応速度(より低い攪拌機速度)において、より小さい粒径、および増加したHFPの組み込みをもたらす。
【0066】
(実施例6)
実施例4の手順を本質的に繰り返すが、ただしPFPE−1の代わりに0.011部のPFPE−3を用いる。必要とされる反応時間は、平均攪拌機速度49rpmで120分である。この分散液は、32.8重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは46nmである。樹脂のMVは1.1×102Pa・s、HFPIは6.03である。このように、対照Eに対して本発明の方法は、PFPEカルボン酸、または分散剤の塩成分がジカルボン酸であるとき、増加した反応速度(より低い攪拌機速度)において、より小さい粒径、および増加したHFPの組み込みをもたらす。
【0067】
(実施例7および対照G)
対照Aに記載した反応器に、50部の脱塩水、および1.87部の水溶液/3.8重量%の6,2−TBS(FS−62)界面活性剤および0.35重量%のPFPE−1の混合物を充填する。6,2−TBS/PFPE−1混合物の容器を0.88部の脱塩水で洗い、これも反応器に添加する。攪拌機を40rpmで作動させ、反応器の内容物を65℃に加熱する。反応器を排気し、TFEでパージし、再び排気する。次に温度を103℃に上げ、反応器をまずHFPで410psig(2.93MPa)に加圧し、その後、TFEで635psig(4.48MPa)に加圧する。0.76重量%のKPSおよび0.70重量%のAPSを含有する水溶液を、3.4分間、0.11部/分の速度で反応器に添加し、その後、残りの重合の間、添加速度を0.0187部/分に低減する。反応開始は、反応器圧力が10psig(0.07MPa)下がることによって示される。攪拌速度を40rpmで一定に保ち、130分かけて17.5部のTFEを反応器に供給する。反応器圧力は520と560psig(3.69および3.96MPa)の間で変え、等速度を維持する。計画したTFEの添加が完了したら、開始剤およびTFEの供給を停止し、反応器ジャケットに冷却水を通す。反応器の内容物の温度が90℃に下がったら、攪拌機を停止し、対照Aで記載のとおり反応器を通気し、パージする。この分散液は、34.9重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは60nmである(SEMによる)。対照Aに記載のとおり分散液の一部から単離した乾燥樹脂に関して、MVは3.8×103Pa・s、HFPIは4.78である。この配合からPFPE−1を省くとき(対照G)、分散液は34.0重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは140nm(SEM)であり、樹脂はMV6.1×103Pa・s、HFPI3.66を有する。このように、分散剤がPFPEカルボン酸およびフルオロアルキルカルボン酸の塩の混合物であるとき、本発明の方法は、より小さい粒径、および増加したHFPの組み込みをもたらす。HFP組み込みの大きな増加は、対照GのコポリマーのHFPレベルを得るために、本発明の方法においてHFPの分圧が低減され得ることを示している。
【0068】
(実施例8および対照H)
対照Aの反応器に47.6部の脱塩水を充填し、60℃に加熱、次いで対照Aのとおり、排気しTFEでパージする。次に反応器内の真空を用いて、水2.7部中0.086部の6,2−TBSおよび0.0066部のPFPE−1を引き入れる。次いで反応器を103℃に加熱し、HFPで410psig(2.93MPa)に加圧し、次にTFEで600psig(4.24MPa)に加圧し、その後、約2分で0.26部のPEVEを反応器に添加する。0.8重量%のAPSおよび0.8重量%のKPSを含有する水溶液(0.44部)を、0.11部/分の速度で反応器に添加する。その後、残りの重合の間、同じ溶液を0.013部/分の速度で反応器にポンプで送る。重合が始まった後、TFEの添加によって、圧力を600psig(4.2MPa)に維持する。攪拌機速度を調節して、重合開始後115分で17.5部のTFEが添加されるように反応速度を制御する。平均攪拌機速度は42rpmである。次にTFEおよび開始剤の供給を停止し、対照Aに記載のとおり、反応器を冷却、通気する。この分散液は33.5%のポリマー固形分を含有し、RDPSは59nmである。対照Aに記載した手順によってポリマーの一部を単離、乾燥するが、ただし濾過後、ポリマーを脱塩水のみで洗浄する。この樹脂は、MV4.6×103Pa・s、HFPI3.90を有し、0.76重量%のPEVEを含有する。この配合からPFPE−1を省き、最初の水充填量を50部に増し、界面活性剤と共に添加する水を0.24部に減らすとき(対照H)、反応時間は、平均攪拌機速度58rpmで119分、分散液は33.8重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは150nm(SEM)であり、樹脂はMV5.7×103Pa・s、HFPI2.98を有し、0.69重量%のPEVEを含有する。このように、分散剤がPFPEカルボン酸およびフルオロアルキルカルボン酸の塩の混合物であるとき、本発明の方法は、増加した反応速度(より低い攪拌機速度)において、より小さい粒径、および増加したHFPおよびPEVEの組み込みをもたらす。
【0069】
(実施例9および対照I)
対照Aで用いた反応器に50.3部の脱塩水を充填し、圧力試験をして、対照AのとおりTFEでパージし、その後、減圧のままにする。エタンシリンダのバルブを開け、反応器の圧力が4水銀柱インチ(13.5kPa)上昇するまでエタンを反応器に供給する。次に真空を用いて、PPVE0.61部、次いで4.7重量%の6,2−TBS界面活性剤および0.35重量%のPFPE−1の水溶液1.87部を反応器に引き入れる。別の0.88部の水で、この溶液を反応器に洗い入れる。反応器を閉じ、50rpmで攪拌を開始する。反応器の温度を75℃に上げ、次いでTFEで反応器を300psig(2.17MPa)に加圧する。次に、0.22重量%のAPS水溶液0.88部を、0.11部/分で反応器にポンプで送る。その後、残りの重合の間、0.22重量%のAPS水溶液を、0.0088部/分で反応器にポンプで送る。重合が始まった後、残りの重合の間、PPVEを0.0049部/分の速度で反応器に添加する。攪拌機速度を用いて気相から水性分散液へのモノマーの物質移動を制御し、TFEの添加によって重合中の反応器の圧力を300psig(2.17MPa)で維持する。最初の反応器加圧後150分かけて、平均攪拌機速度44.3rpmで、合計20部のTFE、および0.74部のPPVEを添加する。この添加の後、モノマーの供給を停止し、反応器を完全冷却する。攪拌機、および開始剤の供給を止め、反応器を通気する。圧力が5psig(0.14MPa)未満に下がったら、反応器を窒素でパージする。次に分散液を反応器から排出し、取っておく。この分散液は、RDPS31nmを有するポリマー固形分28.9重量%を含有する。分散液の一部を冷凍庫で一晩凍結し、その後電子オーブンで融解する。融解時に分離したポリマーをフィルタ上に集め、脱塩水で洗浄し、空気循環炉で2日間、150℃で乾燥する。この乾燥樹脂はMV3.5×103Pa・sを有し、PPVE3.58重量%を含有する。
【0070】
分散媒混合物のPFPE−1濃度が0.12重量%に低減されるとき、平均攪拌機速度は46.5rpm、RDPSは46nmであり、0.58重量%に増加されるとき、平均攪拌機速度は41.8rpm、RDPSは50nmである。この配合からPFPE−1を省くとき(対照I)、平均攪拌機速度は48.0rpmであり、分散液は29.8重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは146nmであり、樹脂はMV4.2×103Pa・sを有し、PPVE3.42重量%を含有する。
【0071】
(実施例10)
実施例9の手順に従って反応器に水、エタン、および界面活性剤溶液を充填するが、ただしエタン添加時の圧力上昇は3水銀柱インチ(10kPa)であり、界面活性剤溶液は、5.9重量%の6,2−TBS、および0.56重量%のPFPE−1を含有する。PPVEは添加しない。エタン添加後、4.41部のPMVEを添加し、攪拌機を46rpmで動かしながら、反応器の温度を80℃に上げる。次に反応器をTFEで350psid(2.52MPa)に加圧し、1.0重量%のAPS水溶液0.55部を、0.11部/分の速度で添加する。その後、残りの重合の間、0.52重量%のAPS溶液を0.022部/分の速度で反応器にポンプで送る。重合開始後、PMVEを0.038部/分で反応器にポンプで送り、TFEを添加して残りの重合の間、圧力を350psigで維持する。攪拌機速度を変化させ、反応時間200分を得る。開始後、12部のTFE、および6.49部のPMVEを添加した後、モノマーおよび開始剤の供給、ならびに攪拌機を停止し、反応器を冷却する。反応器の圧力を通気し、窒素でパージした後、反応器を開け、生成物分散液を排出する。この分散液は、30.0重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは18nmである。減圧下、窒素パージを伴って60℃の真空炉で乾燥することを除いて対照Aのとおり単離した乾燥ポリマーは、MV3.3×103Pa・sを有し、PMVE37.6重量%を含有する。結晶融点はDSCで検出されず、ガラス転移温度は室温より低い。適切な硬化サイトモノマーの添加によって、このコポリマーは硬化性ペルフルオロエラストマーとなるであろう。
【0072】
(実施例11および対照J)
実施例9の手順に本質的に従って反応器に水、エタン、および界面活性剤溶液を充填するが、ただし0.22部のみのPPVEをあらかじめ充填し、界面活性剤溶液は、4.7重量%の6,2−TBS、および0.59重量%のPFPE−1を含有する。50rpmで攪拌を開始した後、0.25部のPMVEを添加し、反応器の温度を75℃に上げる。次に反応器をTFEで300psid(2.17MPa)に加圧する。次いで、0.30重量%のKPS水溶液0.88部を、0.11部/分で反応器にポンプで送る。その後、残りの重合の間、同じKPS溶液を0.0077部/分で反応器にポンプで送る。重合が開始した後、残りの重合の間、PMVEを0.0084部/分の速度で反応器に添加する。攪拌機速度を用いて気相から水性分散液へのモノマーの物質移動を制御し、TFEの添加によって重合中の反応器の圧力を300psig(2.17MPa)で維持する。最初の反応器加圧後180分かけて、合計20部のTFE、および1.52部のPMVEを添加する。この添加の後、モノマーおよび開始剤の供給を停止し、反応器を完全冷却する。攪拌機を止め、反応器を通気する。圧力が5psig(0.14MPa)未満に下がったら、反応器を窒素でパージする。次に分散液を反応器から排出し、取っておく。この分散液は、31.2重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは49nmである。対照Aのとおり単離した乾燥ポリマーは、MV8.7×103Pa・sを有し、PMVE7.0重量%、PPVE0.70重量%を含有する。この配合からPFPE−1を省くとき(対照J)、RDPSは105nmである。
【0073】
(実施例12〜13および対照K)
対照Aの反応器に類似しているが、水容量約87重量部を有する反応器に、45.5部の脱塩水を充填する。300psig(2.17MPa)、窒素で反応器を圧力試験後、約30℃に反応器を冷却し、次いで交互に排気、およびTFEでのパージを3回行う。その後、反応器を真空のままにする。次に真空を用いて、5.9重量%の6,2−TBS、および0.59重量%のPFPE−3(Fluorolink(登録商標)C)を含有する水溶液1.87部を反応器に引き入れる。次にエタンシリンダのバルブを開け、反応器の圧力が0.081MPa(24水銀柱インチ)上昇するまで、反応器にエタンを供給する。反応器を閉じ、46rpmで攪拌を開始する。反応器温度を90℃に上げ、次にTFEで反応器を300psig(2.17MPa)に加圧する。次に0.25重量%のAPS水溶液0.53部を、0.066部/分の速度で反応器にポンプで送る。反応器の圧力が10psig(0.07MPa)下がることによって示されるとおり、開始剤のポンプ輸送が始まって6分後、反応開始が起こる。その後、残りの重合の間、0.50重量%のAPS水溶液を、0.0143部/分の速度で反応器にポンプで送る。攪拌機速度を用いて気相から水性分散液へのTFEの物質移動を制御し、TFEの添加によって重合中の反応器圧力を300psig(2.17MPa)に維持する。最初の反応器加圧後150分かけて、合計18部のTFEを添加する。その後、TFEおよび開始剤の供給を停止するが、圧力が約115psig(0.79MPa)に下がる間、さらに20分間反応を続ける。その後、攪拌機を止め、反応器を通気し、次いで分散液を反応器から排出し、取っておく。この分散液は、31.6重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは50nmである。約1.9部の分散液、および1.9部の脱塩水を容器中で合わせ、強く攪拌しながら、13.5重量%の炭酸アンモニウム水溶液0.077部を添加する。分離するポリマーをフィルタ上に集め、次いで2日間、150℃のオーブンで乾燥する。乾燥樹脂のMVは35Pa・sである(オリフィス0.0625インチ(約1.6mm)、および重量325gで求めたMFR)。PFPE−3を同量のPFPE−4で置き換えるとき(実施例13)、RDPSは63nm、MVは55Pa・sである。この配合からPFPEを省くとき(対照K)、RDPSは111nm、MVは86Pa・sである。
【0074】
(実施例14および対照L)
実施例12に記載の反応器に、48部の脱塩水を充填し、次いで80℃、400psig(2.86MPa)で圧力試験する。次いで温度を65℃に下げ、排気およびTFEでのパージを3回行い、反応器を真空のままにする。次に真空を用いて、5.9重量%のC−8、および1.2重量%のPFPE−1を含有する水溶液1.87部を反応器に引き入れ、次いで0.88部の脱塩水で洗う。次に攪拌機を43rpmで動かしながら、反応器の温度を80℃に上げる。温度が一定になったら、TFEで反応器を380psig(2.72MPa)に加圧する。次に0.04重量%のAPS水溶液1.10部を反応器にポンプで送る。圧力が10psig(0.07MPa)下がることによって示されるとおり、反応開始が起こった後、開始後に合計15部のTFEが添加されるまで、TFEを添加することによって反応器の圧力を380psigに維持する。その後、TFEの供給を停止するが、圧力が約185psig(1.38MPa)に下がるまで攪拌は続ける。攪拌機速度を30rpmに下げ、同時に反応器の内容物を50℃に冷却し、ここで攪拌機を停止し、反応器を通気し、分散液を反応器から排出する。この分散液は27.2%のポリマー固形分を含有する。SEM検査は、この分散液が球状およびロッド様粒子の混合物を、球対ロッドの数値比約25/75で含むことを示す。球状粒子はいくらか大きさが多様であるが、大多数は100nm未満であり、少なくとも95%は直径120nm未満である。ロッドの幅は約30nmであり、長さは主として約0.4μmから数μmの範囲である。実施例12の手順により分散液から固体を分離するが、ただし分散液、脱塩水、炭酸アンモニウム溶液の重量はそれぞれ2.20部、1.32部、0.11部である。この乾燥粉末は、SSG2.213(MW=7.5×106)、SSA15m2/gを有する。
【0075】
この重合からPFPE−1を省くとき(対照L)、生成物分散液は27.6重量%のポリマー固形分を含有し、SEM検査は、この分散液粒子が約90/10の比の、球およびロッドの混合物であることを示す。ロッドの幅は約100nmであり、大多数は長さ0.5μmのオーダーである。球の直径は典型的に160nmであり、実施例14に比べて多様でない。炭酸アンモニウム溶液の量が0.044部のみであることを除いて同様に分散液から単離した乾燥PTFE粉末のSSGは2.219(MW=6.0×106)であり、SSAは11m2/gである。実施例14では分散液がより安定であり、したがって凝固がより困難であるため、より多くの電解質を用いる。それでも、凝固時間は、対照Lの1.5分に対して20分である。
【0076】
(実施例15〜19)
実施例14および対照Lに記載の反応器に、48部の脱塩水、0.033部のC−8、および水に溶解した多様な量のPFPE−1(表2に記載)合計重量1.43部を充填する。反応器を排気し、TFEで4回パージし、最後に反応器を真空のままにする。次に46rpmで攪拌しながら、反応器温度を80℃に上昇させる。温度が80℃で一定となった後、TFEで反応器を380psig(2.72MPa)に加圧する。次に0.014重量%のAPS水溶液1.10部を、0.11部/分の速度で反応器に添加する。圧力が10psig(0.07MPa)下がることによって示されるとおり、反応開始が起こった後、攪拌を46rpmに維持し、TFEを反応器に添加して圧力を380psig(2.72MPa)に維持する。開始後、3部のTFEが添加された後、8.4重量%のC−8溶液の水溶液1.10部を、0.11部/分の速度で添加する。開始後、24部のTFEが添加された後、TFEの供給を停止し、圧力を約185psig(1.38MPa)に下げる。その後、攪拌機速度を30rpmに下げ、同時に反応器の内容物を50℃に冷却し、ここで攪拌機を停止し、反応器を通気し、分散液を反応器から排出する。
【0077】
結果として生じる分散液ポリマー固形分、および3.0を超えるL/Dを有する分散液粒子のパーセントを、反応器に添加したPFPE−1の量の関数として表2に示す。わずか5.5×10-4部のPFPE−1を添加した場合にも、著しいレベルのロッドが見出される。PFPE−1を添加しない場合にもいくらかのロッドが見られるが、これらはいずれも約7を超えるL/Dは持たない。湿潤「凝塊」の重量も、PFPE−1の量の関数として示す。低いレベルのPFPE−1で、凝塊の量は減少する。しかしながら、より高いレベルのPFPE−1のレベルで凝塊が再び増加する可能性がある。
【0078】
【表2】

【0079】
(実施例20)
実施例18の重合を繰り返すが、ただしTHEを添加する前に、0.05部のPPVEを添加する。PPVE0.03モル%を有する35.8%の固形分を含有する生成物分散液は、13%のロッド形状粒子を含有し、その大多数は少なくとも20のL/Dを有する。SEM写真から求めた平均分散液粒子径は102nmである。凝塊の量は0.04部のみである。この乾燥ポリマー粉末は、SSG2.167を有する。
【0080】
(実施例21および対照M)
実施例20の重合を繰り返すが、ただしAPS開始剤の濃度は0.04重量%であり、PPVEの添加は0.10部である。PPVE含量0.08モル%を有する32.3%の固形分を含有する生成物分散液は、3%のロッド形状粒子を含有する。SEM写真から求めた球状粒子の平均直径は85nmである。凝塊の量は0.22部である。この乾燥ポリマー粉末は、SSG2.185を有する。引張クリープ法によって求めた溶融粘度は、2.4×108Pa・sである。この重合からPFPE−1を除くとき(対照M)、凝塊の量は0.42部であり、生成物分散液は1%未満のロッド形状粒子を含有し、平均球状粒子直径は185nmである。この乾燥ポリマー粉末は、SSG2.175を有する。
【0081】
(実施例22)
実施例18の重合を繰り返すが、ただしAPS開始剤の濃度は0.028重量%であり、TFEの添加前に0.15部のHFPを添加する。35.8重量%の固形分を含有する生成物分散液は、ロッド形状の分散液粒子を含まない。平均球状分散液粒子径は90nmである。この生成物樹脂のHFP含量は0.31モル%である。乾燥ポリマー粉末は、SSG2.154を有する。
【0082】
(実施例23)
対照Aに記載の反応器に46.2部の脱塩水を充填し、次いで対照Aに記載のとおり排気し、TFEでパージする。次に反応器内の真空を利用して、4.7重量%のTBSおよび0.59重量%のPFPE−1を含有する水溶液1.87部を引き入れる。別の0.88部の脱塩水で、この溶液を反応器に洗い入れる。反応器を閉じ、43rpmで攪拌を開始し、反応器温度を103℃に上げる。温度が103℃で一定になった後、圧力が600psig(4.24MPa)になるまで、HFPをゆっくりと反応器に添加する。次にTFEの添加によって、圧力を650psig(4.59MPa)に上昇させる。次いで、新たに調製した3.0重量%のAPS開始剤水溶液0.55部を、0.028部/分の速度で20分間反応器にポンプで送り、ここで反応が開始する。表3に示したとおり、TFEおよび開始剤溶液(3.5重量%APS水溶液)を添加して、残りの重合を行う。
【0083】
【表3】

【0084】
上に示したTFEの添加完了後、対照Aに記載のとおり分散液を反応器から排出する。この分散液は33.0重量%のポリマー固形分を含有し、RDPSは33nmである。対照Aに記載のとおり分散液から単離したポリマーは、MV290Pa・s、HFPI10.5を有する。DSCによって融解吸熱は認められず、したがってこのTFE/HFPコポリマー樹脂は非晶質である。
なお、本発明は、特許請求の範囲を含め、以下の発明を包含する。
1.開始剤および分散剤を含有する水性媒体において、少なくとも1種のフッ素化モノマーを重合して、フルオロポリマー粒子の水性分散液を得ることを含む方法であって、前記分散剤が少なくとも2種のフルオロ界面活性剤の組み合わせであり、前記フルオロ界面活性剤の少なくとも1種がペルフルオロポリエーテルカルボン酸、またはその塩であり、前記フルオロ界面活性剤の少なくとも1種がフルオロアルキルカルボン酸、もしくはスルホン酸、またはその塩、あるいはフルオロアルコキシアリールスルホン酸、またはその塩であることを特徴とする方法。
2.前記ペルフルオロポリエーテルカルボン酸、またはその塩が、前記分散剤中に副次的な量で存在することを特徴とする1に記載の方法。
3.前記量が、前記分散剤の約25重量%以下であることを特徴とする2に記載の方法。
4.前記量が、前記分散剤の0.5重量%から15重量%であることを特徴とする3に記載の方法。
5.前記ペルフルオロポリエーテルカルボン酸または塩においてエーテル酸素を隔てている少なくとも1つのフルオロカーボン基が、2または3個の炭素原子を有することを特徴とする1に記載の方法。
6.エーテル酸素を隔てている前記フルオロカーボン基の少なくとも50%が、3個の炭素原子を有することを特徴とする5に記載の方法。
7.前記フルオロアルキルカルボン酸、またはその塩が、ペルフルオロアルキルカルボン酸、またはその塩であることを特徴とする1に記載の方法。
8.前記フルオロアルキルスルホン酸、またはその塩が、ペルフルオロアルキルエタンスルホン酸、またはその塩であることを特徴とする1に記載の方法。
9.前記の少なくとも1種のフルオロモノマーが、2〜6個の炭素原子を有するペルフルオロオレフィン、および式CY2=CYOR、またはCY2=CYOR′ORを有し、式中、YはHまたはFであり、−Rおよび−R′−は独立して、1〜8個の炭素原子を含有する完全フッ素化、または部分フッ素化アルキル、およびアルキレン基であるフルオロビニルエーテルから選択されることを特徴とする1に記載の方法。
10.官能モノマーが存在することを特徴とする1に記載の方法。
11.前記ペルフルオロオレフィンが、テトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロピレンであり、前記フルオロビニルエーテルが、前記アルキルが1〜3個の炭素原子を有するペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)であることを特徴とする9に記載の方法。
12.前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンポリマーであることを特徴とする1に記載の方法。
13.前記テトラフルオロエチレンポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、改質ポリテトラフルオロエチレン、またはテトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、およびペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)から選択された少なくとも1種のコモノマーとを含有するコポリマーであることを特徴とする12に記載の方法。
14.前記フルオロポリマーが、可塑性であることを特徴とする1に記載の方法。
15.前記フルオロポリマーが、エラストマー性であることを特徴とする1に記載の方法。
16.開始剤および分散剤を含有する水性媒体において、テトラフルオロエチレン、および任意選択で少なくとも1種のフッ素化モノマーを重合して、フルオロポリマー粒子の水性分散液を得ることを含む方法であって、前記分散剤が少なくとも2種のフルオロ界面活性剤の組み合わせであり、前記フルオロ界面活性剤の少なくとも1種がペルフルオロポリエーテルカルボン酸、またはその塩であり、前記フルオロ界面活性剤の少なくとも1種がフルオロアルキルカルボン酸、もしくはスルホン酸、またはその塩、あるいはフルオロアルコキシアリールスルホン酸、またはその塩であって、前記の少なくとも1種のフッ素化モノマーが、重合された全モノマーの0.3モル%以下を占め、前記粒子のいくらかの長さ対直径比が少なくとも3であることを特徴とする方法。
17.前記粒子の少なくとも25%の長さ対直径比が少なくとも3であることを特徴とする16に記載の方法。
18.前記フルオロポリマーの分子量が少なくとも1×106であることを特徴とする16に記載の方法。
19.開始剤および分散剤を含有する水性媒体において、テトラフルオロエチレン、および任意選択で少なくとも1種のフッ素化モノマーを重合して、フルオロポリマー粒子の水性分散液を得ることを含む方法であって、前記分散剤が少なくとも2種のフルオロ界面活性剤の組み合わせであり、前記フルオロ界面活性剤の少なくとも1種がペルフルオロポリエーテルカルボン酸、またはその塩であり、前記フルオロ界面活性剤の少なくとも1種がフルオロアルキルカルボン酸、もしくはスルホン酸、またはその塩、あるいはフルオロアルコキシアリールスルホン酸、またはその塩であって、前記の少なくとも1種のフッ素化モノマーが、重合された全モノマーの0.3モル%以下を占め、球状、または長さ対直径比が3未満である前記粒子の最大寸法が平均120nm以下であることを特徴とする方法。
20.フルオロ界面活性剤を含有する水性媒体中に、実質的に球状のフルオロポリマー粒子を含む分散液であって、前記分散液が、分散液の全重量に対して少なくとも20重量%の固形分を含有し、前記粒子が、150ナノメートル以下の平均直径を有し、前記フルオロ界面活性剤の濃度が、前記分散液中の水の重量を基準にして、前記フルオロ界面活性剤の臨界ミセル濃度未満であることを特徴とする分散液。
21.フルオロ界面活性剤を含有する水性媒体中に、実質的にロッド形状のフルオロポリマー粒子を含む分散液であって、前記フルオロ界面活性剤の濃度が、前記分散液中の水の重量を基準にして、前記フルオロ界面活性剤の臨界ミセル濃度未満であることを特徴とする分散液。
22.水性媒体中にフルオロポリマー粒子を含む分散液であって、前記フルオロポリマー粒子が、少なくとも約1×106の数平均分子量を有し、前記粒子の少なくとも約20%の長さ対直径比が3を超えていることを特徴とする分散液。
23.前記フルオロポリマー粒子の少なくとも約40%の長さ対直径比が3を超えていることを特徴とする22に記載の分散液。
24.前記フルオロポリマー粒子の少なくとも約75%の長さ対直径比が3を超えていることを特徴とする22に記載の分散液。
25.前記フルオロポリマー粒子の少なくとも約90%の長さ対直径比が3を超えていることを特徴とする22に記載の分散液。
26.前記フルオロポリマー粒子が、本質的に、テトラフルオロエチレンのホモポリマー、またはテトラフルオロエチレンと0.3モル%以下の他のフルオロモノマーとのコポリマーからなることを特徴とする22に記載の分散液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロ界面活性剤を含有する水性媒体中に、実質的に球状のフルオロポリマー粒子を含む分散液であって、前記分散液が、分散液の全重量に対して少なくとも20重量%の固形分を含有し、前記粒子が、150ナノメートル以下の平均直径を有し、前記フルオロ界面活性剤の濃度が、前記分散液中の水の重量を基準にして、前記フルオロ界面活性剤の臨界ミセル濃度未満であることを特徴とする分散液。
【請求項2】
フルオロ界面活性剤を含有する水性媒体中に、実質的にロッド形状のフルオロポリマー粒子を含む分散液であって、前記フルオロ界面活性剤の濃度が、前記分散液中の水の重量を基準にして、前記フルオロ界面活性剤の臨界ミセル濃度未満であることを特徴とする分散液。

【公開番号】特開2010−159430(P2010−159430A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96929(P2010−96929)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【分割の表示】特願2000−619980(P2000−619980)の分割
【原出願日】平成12年5月19日(2000.5.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】