説明

フレキシブルプリント基板の製造方法

【課題】 ポリマーフィルムと金属箔間の接着強度の強い、高精細且つ高周波用途に適したフレキシブル金属配線板の作製方法を提供すること。
【解決手段】ポリマーフィルム上に金属箔を形成する前に、金属酸化物を1μm以下の厚さで形成したのち、導電体金属を蒸発源として金属薄膜の膜厚が1μm以下の厚さで蒸着させた後、電気メッキを1μm以上30μm以下形成して、樹脂フィルムと金属膜との密着性を高めた配線基板用フィルム基材を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板の作製方法等に関し、より詳しくは金属とポリマーフィルムとの接着強度に優れたフィルムを有する高精密且つ高周波用途に適したフレキシブルプリント基板の作成方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の高速化、高密度化に伴い、配線基板の高機能化が要求されている。特に、携帯機器の進展に伴い、携帯電話用途、携帯音楽機器や液晶ディスプレイ用途においては配線基板のフレキシブル性が必須で、これに対応したいわゆるフレキシブルプリント基板(以下、「フレキ基板」と記する)の開発が活発に進められている。
【0003】
現在フレキ基板を用いて量産される配線の寸法は、ライン/スペースとして35μm〜70μm程度である。さらに、高周波対応として、パターンの微細化に対応できる素材、高周波での電気特性を劣化させない素材が求められており、低誘電率基板材料、低水分吸収性材料およびフィルム表面の凹凸が少ないことが望まれている。フレキ基板の基材はポリイミドフィルムが広く使用されているが、前述のような背景から、低吸湿性且つ絶縁性に優れた材料のフィルムが使用されはじめた。(非特許文献1参照)。
【0004】
フレキ基板用フィルム上に銅箔膜を形成する方法として、密着性を確保するために、通常、NiまたはCr等を含む銅の薄膜を接着層としてスパッタで形成したのち、電気めっきをする(特許文献1,2,3,4参照)。続いて配線のパターニングにおけるエッチング工程では銅をエッチングする工程だけでなく、これらのNi、Cr等もエッチングするなどの工程が追加されるという問題がある。(特許文献5,6,7,8,9,10,11参照)また、Niは磁性金属であるため、高周波用途において支障を来たすおそれがある
【0005】
またスパッタ法だけで、フレキ基板用フィルム上に銅箔膜を形成する方法も提案されている。(特許文献12参考)。しかし、スパッタ法だけで銅箔の膜厚を12μmまで形成するには多大な時間を要して、実用的ではない。
スパッタ法によるシード層形成でのこのような問題は、無電界メッキ法を使えばある程度解消される。(特許文献13参照)即ち、無電界メッキによれば、プロセス効率が高まるとともに、フレキ基板用フィルム上に銅のシード層を直接形成することが可能である。しかし、従来行われているプラスチックフィルム上の無電界メッキは、前処理によりプラスチックフィルム表面に凹凸を形成し、いわゆるアンカー効果によってメッキ層を付着させる。例えば、ポリイミドフィルムの場合は、一般に、コンディショナーとよばれる前処理剤によってフレキ基板用フィルムの表面粗化処理が行われている。しかし、表面の凹凸は高周波用途では信号の散乱現象を引き起こし、適さない。
【0006】
これらのポリマーフィルムは、スパッタ等の乾式法及びメッキ等の湿式法のいずれの方法を採用しても、ポリマーフィルムに対する金属膜の付着性が低く、シード層を形成することが困難である。これらのポリマーフィルムの分子が、主としてベンゼン環を骨格とした構造を有するため、高周波基板としての高い絶縁性を示すにも拘らず、ポリマーの表面安定性が高く、その結果、表面付着性が低下するものと考えられる。
とくに、液晶性ポリマ(以下「LCP」と記す)を用いた配線基板は、銅箔貼り付けタイプに限られ、LCPは、素材自体の絶縁性質が優れているにも拘らず、銅箔の薄膜化が困難で、高周波用途の高精細基板としての使用形態が制約されているという問題があった。このように、ポリマーフィルムを基材に用いて、簡単且つ低コストの工程によりシード層を形成した配線基板用フィルム基材の作製方法及びフレキ基板が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−306099号公報
【特許文献2】特開2007−247026号公報
【特許文献3】特開2007−245645号公報
【特許文献4】特開2007−245646号公報
【特許文献5】特開平9−555575号公報
【特許文献6】特開2000−16503号公報
【特許文献7】特開2000−340911号公報
【特許文献8】特開2002−176242号公報
【特許文献9】特開2005−15861号公報
【特許文献10】特開2003−64431号公報
【特許文献11】特開2003−180157号公報
【特許文献12】特開2002−09420号公報
【特許文献13】特開2006−135179号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】小野寺稔、「マイクロファブリケーションを支える新材料技術−3.回路 基板用液晶ポリマーフィルムの開発と応用」、マイクロファブリケーション研究会第14回公開研究会、社団法人エレクトロニクス実装学会、平成16年9月8日、p16−22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した技術的課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、フレキシブルポリマーフィルムを基材に用いた高精細且つ高周波用途に適した配線基板用フィルム基材の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的のもと、本発明によれば、ポリマーフィルムの少なくとも片面に金属酸化物を1μm以下の厚さで形成するステップと、真空蒸着により1μm以下の膜厚で導電性金属薄膜を形成するステップと、所定の金属箔膜厚までめっき処理するステップと加熱乾燥するステップとを有することを特徴とする配線基板用フィルム基材の作製方法である。
【0011】
本発明が適用される配線基板用フィルム基材の作製方法において、密着を向上させるための金属酸化物層と金属層を形成する方法として真空蒸着法が優れている。
【0012】
本発明が適用される配線基板用フィルム基材の作製方法において、メッキ処理は電気めっき処理が好ましい。
【0013】
また、本発明が適用される配線基板用フィルム基材の作製方法における加熱処理は、下地のポリマーフィルムのガラス転移温度より高温で、且つ、ポリマーフィルムの分解温度より低い温度で樹脂フィルムを加熱することが好ましい。また、加熱乾燥処理は金属箔の損傷を防ぐため、窒素やアルゴンなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。このような条件で樹脂フィルムを加熱することにより、金属膜とポリマーフィルムとの付着性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリマーフィルムを基材に用いた高精細且つ高周波用途に適した配線基板用フィルム基材の作製方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態が適用されるフレキ基板の作製のための蒸着装置を説明するための図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。ポリマーフィルム11は、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエステル、テフロン、ポリアミド、ポリイミドエーテル、ポリアミドイミド、ポリスチレン、アラミド、ポリカーボネートから選ばれる一つまたは、これらの混合物からなる材料が使用できる。またポリエステルはサーモトロピック液晶等の従来公知の各種LCPを含み、なかでも、液晶性ポリエステルが好ましい。
【0017】
ポリマーフィルムはフィルム作成時に表面付着した不純物を除去する目的で、脱脂処理を施す。通常はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン類の溶液に浸漬して処理を行う。場合によっては、これらの液体を浸み込ませた紙、布、不織布などで拭いてもよい。また、一般にプリント基板で広く使用されている希塩酸などの酸水溶液、界面活性剤を含む水溶液で洗浄してもよい。
【0018】
図1は、本実施の形態が適用される配線基板用フィルム基材を作製するための蒸着装置を説明するための図である。ポリマーフィルム11は蒸着装置の固定治具14を介して、蒸着ボート12の上方に固定する。蒸着ボート12の上に蒸発源となる金属酸化物13を置く。蒸着ボート14には蒸発源となる金属15を置く。固定治具はポリマーフィルムの温度を一定に保つため、ヒーターが内臓してある。また、ポリマーフィルムの表面温度を一定に保つため、蒸発ボートとポリマーフィルムとの間に加熱ヒーター16が設置されている。
【0019】
このとき使用される金属酸化物は、銅、銀、ニッケル、クロム、亜鉛、チタン、バナジウム、マンガン、錫から選ばれる金属酸化物である。また、これらの複合酸化物でもよい。具体的には、酸化銅1、酸化銅2、酸化銀1、酸化銀2、酸化銀3、酸化ニッケル、酸化ニッケル3、酸化クロム2、酸化クロム3、三酸化クロム(酸化クロム4)、クロム酸亜鉛、酸化亜鉛、一酸化チタン、二酸化チタン、酸化バナジウム(酸化バナジウム2)、三酸化二バナジウム(酸化バナジウム3)、二酸化バナジウム(酸化バナジウム4)、五酸化バナジウム(酸化バナジウム5)、一酸化マンガン、二酸化マンガン、酸化錫2、酸化錫4、酸化錫6、錫酸亜鉛があげられる。
【0020】
ポリマーフィルム11はヒーター内臓の固定治具16に固定した後、蒸着ボート12の上方に固定する。続いて、装置全体を真空ポンプ18で排気し、真空計測器19で測定した装置内部の圧力が10−1Pa以下となるまで排気する。このとき、蒸着中のポリマーフィルムの温度を一定にする目的で、固定治具14と加熱ヒーター17で加熱し、150℃以上とする。
【0021】
装置の圧力が10−1Pa以下に達したら、蒸着ボート12に電流を印加して加熱する。蒸発源である金属酸化物13は加熱され、蒸着が開始される。ポリマーフィルムに付着する金属酸化物の付着量は0.1〜10オングストローム毎秒であれば達成できる。
【0022】
続いて蒸着ボート14に電流を印加して加熱する。蒸発源である金属15は溶融し、蒸着が開始される。ポリマーフィルムに付着する金属酸化物の付着速度は0.1〜10オングストローム毎秒であれば達成できる。
【0023】
このとき、ポリマーフィルムに付着する金属の膜厚は1μm以下でよく、続く工程のめっき処理で厚膜めっきができればよい。金属の厚さが0.1μm以下の過度に薄いと、めっき処理液に浸漬したときにめっき液に溶解して、金属膜が形成されなかったり、めっき処理での膜化が不十分でムラが生じて、導電膜等としての機能を損なう傾向がある。金属の厚さが1μm以上の過度に大きいと、膜質が劣化し、膜の歪が増大し、最悪の場合は剥離する傾向がある。通常は0.1μmから0.5μmが最適である。
【0024】
また、蒸着中のポリマーフィルム温度は金属の結晶の大きさとポリマーフィルムと金属箔との密着強度を大きく影響させるため厳密に制御されなければならない。通常はポリマーフィルム温度を100℃以上とし、ポリマーフィルムの分解開始温度以下がよい。望ましくは150℃から250℃で、その範囲で選択される。
【0025】
続いて、蒸着金属付きポリマーフィルムは、添加剤でめっき応力を調整した、電気めっきをおこない必要な膜厚にする。
【0026】
銅の電気めっきは基板用のハイスロータイプの硫酸銅基本浴(硫酸銅:75g/L 硫酸:180g/L 塩素:40ppm)に市販の添加剤、荏原ユージライト社製のCu−Brite HA−Eまたは、メルテックス社製のST−901を添加し、調整した硫酸銅めっき液で、5〜30μmの厚さになるようにめっき処理施した。
【0027】
また金のめっきは通常使われる 青化金2.3g/Lと青化カリ15g/Lおよびリン酸ソーダ4g/Lとからなるめっき浴を使用し、70℃で電流密度を0.1〜0.5A/dmに調整して電気めっきを行う。
【0028】
次に、めっき処理により形成された金属膜を有するポリマーフィルムを加熱処理し、金属箔膜とポリマーフィルムとの密着性が高められた配線基板用フィルム基材を作製する。
(加熱処理)
加熱処理の条件は、ポリマーフィルムの種類により適宜選択されるが、通常、めっき処理の処理温度(通常、15℃〜120℃程度)よりも高温で、且つ、ポリマーフィルムの熱変形温度より低温において適当な時間行われる。例えば、温度200℃で30分間程度の加熱処理が好ましい。
【0029】
このように、めっき処理により、樹脂フィルム表面に金属箔膜を形成した後、ポリマーフィルムを加熱処理することにより、ポリマーフィルムと金属箔膜との密着力が高められる。これは、加熱処理により、ポリマーフィルムを構成するポリマーの微細構造(ミクロ構造)が、温度で変化する過程で、ポリマーフィルムと銅箔膜との界面が活性化された状態になり、その結果、結合が強まるためと考えられる。
通常、ポリマーフィルムは、熱変形温度以下であれば、微細構造(ミクロ構造)は変化するが、電気的性質、吸水性、寸法安定性等のフィルムとしての実用的性質に変化が生じるほどのマクロな変化は生じない。また、めっき処理は、通常、100℃以下の温度において行われるのでポリマーフィルムの微細構造(ミクロ構造)の変化は軽微であり、実質的影響は生じない。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本実施の形態は実施例に限定されるものではない。
(テープ剥離試験)
予め調製した配線基板用フィルム基材のメッキ膜面に、幅15mm、長さ40mmの粘着テープを、接着面長さ20mmになるように貼り付け、その後、粘着テープの他端を引き上げて、そのときの剥離状況を目視で観察した。
【0031】
(実施例1)
厚さ25μmのLCPフィルム11(株式会社クラレ製;Vecstar(登録商標)CT)を準備し、このLCPフィルム表面を、イソプロピルアルコールを含ませた不織布で表面をこすり、脱脂処理をした。続いて、LCPフィルムを固定板14に固定し、真空蒸着装置の蒸発ボート12上に固定する。蒸発ボート12に蒸発源である酸化銅13の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.01μmとなるようにして置く。同時に蒸発ボート14に蒸発源である銅金属15の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.2μmとなるようにして置く。真空装置内を真空ポンプ16で排気し、同時に固定治具のヒーター14と加熱ヒーター17とに通電して、LCPフィルム11を加熱する。LCPフィルムの温度が200℃に達したら通電を停止し、さらに真空蒸着装置内の圧力が10−2Paとなったら、蒸発ボート12を加熱して、蒸着を開始する。酸化銅13の塊が消失したら通電をやめる。蒸発ボート14を加熱して、銅の蒸着を開始する。金属銅15の塊が消失したら通電をやめる。LCPフィルム11が50℃以下に冷却できたことを確認したら、真空ポンプ18の排気を停止し、リークバルブ20を開とし、真空装置内を常圧に戻す。つづいて、LCPフィルムをハイスロータイプの硫酸銅基本浴(硫酸銅:75g/L 硫酸:180g/L 塩素:40ppm)に市販の添加剤、荏原ユージライト社製のCu−Brite HA−Eを加えた浴中に投入し、銅箔の膜厚が18μmとした。次いで、窒素雰囲気中で、温度200℃で30分間の熱処理を行い、LCP配線基板用フィルム基材を調製した。
このように調製した配線基板用フィルム基材のテープ剥離試験を行ったが、銅箔がテープに付着せず、LCPフィルムと銅箔膜との高い付着強度が確認された。
【0032】
(実施例2)
厚さ25μmのポリイミドフィルム11(宇部興産社製;ユーピレックス(登録商標))を準備し、このポリイミドフィルム表面を、イソプロピルアルコールを含ませた不織布で表面をこすり、脱脂処理をした。続いて、ポリイミドフィルムを固定板14に固定し、真空蒸着装置の蒸発ボート12上に固定する。蒸発ボート12に蒸発源である酸化銅13の塊を蒸着後にポリイミドフィルム上に付着する量が0.01μmとなるようにして置く。同時に蒸発ボート14に蒸発源である銅金属15の塊を蒸着後にポリイミドフィルム上に付着する量が0.25μmとなるようにして置く。真空装置内を真空ポンプ18で排気し、同時に固定治具のヒーター14と加熱ヒーター17とに通電して、ポリイミドフィルム11を加熱する。ポリイミドフィルムの温度が200℃に達したら通電を停止し、さらに真空蒸着装置内の圧力が10−2Paとなったら、蒸発ボート12を加熱して、蒸着を開始する。酸化銅13の塊が消失したら通電をやめる。蒸発ボート14を加熱して、銅の蒸着を開始する。金属銅15の塊が消失したら通電をやめる。ポリイミドフィルム11が50℃以下に冷却できたことを確認したら、真空ポンプ18の排気を停止し、リークバルブ20を開とし、真空装置内を常圧に戻す。つづいて、ポリイミドフィルムをハイスロータイプの硫酸銅基本浴(硫酸銅:75g/L 硫酸:180g/L 塩素:40ppm)に市販の添加剤、荏原ユージライト社製のCu−Brite HA−Eを加えた浴中に投入し、銅箔の膜厚が18μmとした。次いで、窒素雰囲気中で、温度200℃で30分間の熱処理を行い、ポリイミド配線基板用フィルム基材を調製した。
このように調製した配線基板用フィルム基材のテープ剥離試験を行ったが、銅箔がテープに付着せず、ポリイミドフィルムと銅箔膜との高い付着強度が確認された。
【0033】
(実施例3)
厚さ25μmのPPS11(東レ株式会社製;トレリナ(登録商標)))を準備し、このポリイミドフィルム表面を、イソプロピルアルコールを含ませた不織布で表面をこすり、脱脂処理をした。続いて、PPSフィルムを固定板14に固定し、真空蒸着装置の蒸発ボート12上に固定する。蒸発ボート12に蒸発源である酸化銅13の塊を蒸着後にPPSフィルム上に付着する量が0.01μmとなるようにして置く。同時に蒸発ボート14に蒸発源である銅金属15の塊を蒸着後にPPSフィルム上に付着する量が0.15μmとなるようにして置く。真空装置内を真空ポンプ18で排気し、同時に固定治具のヒーター14と加熱ヒーター17とに通電して、PPSフィルム11を加熱する。PPSフィルムの温度が180℃に達したら通電を停止し、さらに真空蒸着装置内の圧力が10−2Paとなったら、蒸発ボート12を加熱して、蒸着を開始する。酸化銅13の塊が消失したら通電をやめる。蒸発ボート14を加熱して、銅の蒸着を開始する。金属銅15の塊が消失したら通電をやめる。PPSフィルム11が50℃以下に冷却できたことを確認したら、真空ポンプ18の排気を停止し、リークバルブ20を開とし、真空装置内を常圧に戻す。つづいて、PPSフィルムをハイスロータイプの硫酸銅基本浴(硫酸銅:75g/L 硫酸:180g/L 塩素:40ppm)に市販の添加剤、荏原ユージライト社製のCu−Brite HA−Eを加えた浴中に投入し、銅箔の膜厚が18μmとした。次いで、窒素雰囲気中で、温度200℃で30分間の熱処理を行い、PPS配線基板用フィルム基材を調製した。
このように調製した配線基板用フィルム基材のテープ剥離試験を行ったが、銅箔がテープに付着せず、PPSドフィルムと銅箔膜との高い付着強度が確認された。
【0034】
(実施例4)
厚さ25μmのLCPフィルム11(株式会社クラレ製;Vecstar(登録商標)CT)を準備し、このLCPフィルム表面を、イソプロピルアルコールを含ませた不織布で表面をこすり、脱脂処理をした。続いて、LCPフィルムを固定板14に固定し、真空蒸着装置の蒸発ボート12上に固定する。蒸発ボート12に蒸発源である酸化クロム13の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.01μmとなるようにして置く。同時に蒸発ボート14に蒸発源である銅金属15の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.2μmとなるようにして置く。真空装置内を真空ポンプ18で排気し、同時に固定治具のヒーター14と加熱ヒーター17とに通電して、LCPフィルム11を加熱する。LCPフィルムの温度が200℃に達したら通電を停止し、さらに真空蒸着装置内の圧力が10−2Paとなったら、蒸発ボート12を加熱して、蒸着を開始する。酸化銅13の塊が消失したら通電をやめる。蒸発ボート14を加熱して、銅の蒸着を開始する。金属銅15の塊が消失したら通電をやめる。LCPフィルム11が50℃以下に冷却できたことを確認したら、真空ポンプ18の排気を停止し、リークバルブ20を開とし、真空装置内を常圧に戻す。つづいて、LCPフィルムをハイスロータイプの硫酸銅基本浴(硫酸銅:75g/L 硫酸:180g/L 塩素:40ppm)に市販の添加剤、荏原ユージライト社製のCu−Brite HA−Eを加えた浴中に投入し、銅箔の膜厚が18μmとした。次いで、窒素雰囲気中で、温度200℃で30分間の熱処理を行い、LCP配線基板用フィルム基材を調製した。
このように調製した配線基板用フィルム基材のテープ剥離試験を行ったが、銅箔がテープに付着せず、LCPフィルムと銅箔膜との高い付着強度が確認された。
【0035】
(実施例5)
厚さ25μmのLCPフィルム11(株式会社クラレ製;Vecstar(登録商標)CT)を準備し、このLCPフィルム表面を、イソプロピルアルコールを含ませた不織布で表面をこすり、脱脂処理をした。続いて、LCPフィルムを固定板14に固定し、真空蒸着装置の蒸発ボート12上に固定する。蒸発ボート12に蒸発源である酸化ニッケル13の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.01μmとなるようにして置く。同時に蒸発ボート14に蒸発源である銅金属15の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.2μmとなるようにして置く。真空装置内を真空ポンプ18で排気し、同時に固定治具のヒーター14と加熱ヒーター17とに通電して、LCPフィルム11を加熱する。LCPフィルムの温度が200℃に達したら通電を停止し、さらに真空蒸着装置内の圧力が10−2Paとなったら、蒸発ボート12を加熱して、蒸着を開始する。酸化銅13の塊が消失したら通電をやめる。蒸発ボート14を加熱して、銅の蒸着を開始する。金属銅15の塊が消失したら通電をやめる。LCPフィルム11が50℃以下に冷却できたことを確認したら、真空ポンプ18の排気を停止し、リークバルブ20を開とし、真空装置内を常圧に戻す。つづいて、LCPフィルムをハイスロータイプの硫酸銅基本浴(硫酸銅:75g/L 硫酸:180g/L 塩素:40ppm)に市販の添加剤、荏原ユージライト社製のCu−Brite HA−Eを加えた浴中に投入し、銅箔の膜厚が18μmとした。次いで、窒素雰囲気中で、温度200℃で30分間の熱処理を行い、LCP配線基板用フィルム基材を調製した。
このように調製した配線基板用フィルム基材のテープ剥離試験を行ったが、銅箔がテープに付着せず、LCPフィルムと銅箔膜との高い付着強度が確認された。
【0036】
(実施例6)
厚さ25μmのLCPフィルム11(株式会社クラレ製;Vecstar(登録商標)CT)を準備し、このLCPフィルム表面を、イソプロピルアルコールを含ませた不織布で表面をこすり、脱脂処理をした。続いて、LCPフィルムを固定板14に固定し、真空蒸着装置の蒸発ボート12上に固定する。蒸発ボート12に蒸発源である酸化クロム亜鉛13の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.01μmとなるようにして置く。同時に蒸発ボート14に蒸発源である銅金属15の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.2μmとなるようにして置く。真空装置内を真空ポンプ18で排気し、同時に固定治具のヒーター14と加熱ヒーター17とに通電して、LCPフィルム11を加熱する。LCPフィルムの温度が200℃に達したら通電を停止し、さらに真空蒸着装置内の圧力が10−2Paとなったら、蒸発ボート12を加熱して、蒸着を開始する。酸化銅13の塊が消失したら通電をやめる。蒸発ボート14を加熱して、銅の蒸着を開始する。金属銅15の塊が消失したら通電をやめる。LCPフィルム11が50℃以下に冷却できたことを確認したら、真空ポンプ18の排気を停止し、リークバルブ20を開とし、真空装置内を常圧に戻す。つづいて、LCPフィルムをハイスロータイプの硫酸銅基本浴(硫酸銅:75g/L 硫酸:180g/L 塩素:40ppm)に市販の添加剤、荏原ユージライト社製のCu−Brite HA−Eを加えた浴中に投入し、銅箔の膜厚が18μmとした。次いで、窒素雰囲気中で、温度200℃で30分間の熱処理を行い、LCP配線基板用フィルム基材を調製した。
このように調製した配線基板用フィルム基材のテープ剥離試験を行ったが、銅箔がテープに付着せず、LCPフィルムと銅箔膜との高い付着強度が確認された。
【0037】
(比較例)
厚さ25μmのLCPフィルム11(株式会社クラレ製;Vecstar(登録商標)CT)を準備し、このLCPフィルム表面を、イソプロピルアルコールを含ませた不織布で表面をこすり、脱脂処理をした。続いて、LCPフィルムを固定板14に固定し、真空蒸着装置の蒸発ボート14上に固定する。蒸発ボートに蒸発源である銅金属(純度99.99%)15の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.5μmとなるようにして置く。真空装置内を真空ポンプ18で排気し、同時に固定治具のヒーター14と加熱ヒーター15とに通電して、LCPフィルム11を加熱する。LCPフィルムの温度が130℃に達したら通電を停止し、さらに真空蒸着装置内の圧力が10−2Paとなったら、蒸発ボート12を加熱して、蒸着を開始する。銅金属13の塊が消失したら通電をやめる。LCPフィルム11が50℃以下に冷却できたことを確認したら、真空ポンプ18の排気を停止し、リークバルブ20を開とし、真空装置内を常圧に戻す。このとき形成された銅箔の結晶粒界の大きさをSEMにて観察した結果、1μm以下であった。つづいて、LCPフィルム基板用のハイスロータイプの硫酸銅基本浴(硫酸銅:75g/L 硫酸:180g/L 塩素:40ppm)に市販の添加剤、メルテックス社製のST−901を添加した浴中に入れ、銅箔の膜厚が12.5μmとした。次いで、窒素雰囲気中で、温度200℃で30分間の熱処理を行い、LCP配線基板用フィルム基材を調製した。このように調製した配線基板用フィルム基材のテープ剥離試験を行ったところ、テープに銅箔が付着し、LCPと銅箔膜とは実用には十分な付着強度がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明が適用される配線基板用フィルム基材の作製方法によれば、密着性が高いフレキシブルプリント基板を作成することができる。この方法は配線基板以外の種々の用途に応用が可能であり、例えば電磁シールドフィルム、反射防止フィルム、などが考えられる。
【符号の説明】
【0039】
11 配線基板用フィルム基材
12 金属酸化物蒸着ボート
13 酸化物蒸発源
14 金属用蒸着ボート
15 金属蒸発源
16 ポリマフィルム固定治具
17 加熱ヒーター
18 真空ポンプ
19 真空圧力計
20 リークバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーフィルム上に金属酸化物からなる層を1μm以下となるように真空中で設け、この上に導電体金属を蒸発源としてこの金属薄膜の膜厚が1μm以下となるように蒸着させた後、電気めっきで膜厚1μm以上30μm以下で金属を膜形成し、加熱乾燥することを特徴とするフレキシブルプリント基板の作製方法。
【請求項2】
酸化物層として、銅、銀、ニッケル、クロム、亜鉛、チタン、バナジウム、マンガンから選ばれる一つまたは、これらの混合物からなることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント基板の作製方法。
【請求項3】
前記蒸発源の導電体金属として、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル、クロムから選ばれる一つまたは、これらの混合物からなることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント基板の作製方法。
【請求項4】
前記電気めっきによる金属箔を形成した後加熱乾燥として、ポリマーフィルムのガラス転移温度以上でかつ、分解開始温度以下で処理することを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント基板の作製方法。
【請求項5】
前記加熱乾燥として、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で処理することを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント基板の作製方法。
【請求項6】
前記ポリマーフィルムとして、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、テフロン、ポリアミド、ポリイミドエーテル、ポリアミドイミド、ポリスチレン、アラミド、ポリカーボネートから選ばれる一つまたは、これらの混合物からなることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント基板の作製方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−192861(P2010−192861A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57098(P2009−57098)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(500558687)株式会社ファインテック (5)
【Fターム(参考)】