説明

フレキシブルプリント配線板用樹脂硬化膜、及びその製造方法

【課題】銅を実質的に含有しない錫メッキが施された電子部品用フレキシブルプリント配線板に光・熱硬化性樹脂硬化膜が被覆され、従来の方法に比べ純錫メッキ層への銅の拡散を低減されたフレキシブルプリント配線板を提供する。
【解決手段】電子部品用フレキシブルプリント配線板において、銅を実質的に含有しない錫メッキを施した後に形成させる絶縁硬化膜であって、硬化後のガラス転移温度が80℃以下であることを特徴とする光・熱硬化性樹脂硬化膜、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用フレキシブルプリント配線板において、銅を実質的に含有しない錫メッキを施した後に形成させる絶縁硬化膜であって、好適な条件(例えば、ウィスカー成長を抑制する温度条件)で硬化させることが可能な光・熱硬化性樹脂硬化膜、それが形成されたフレキシブルプリント配線板、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の軽薄短小化に伴い、電子部品実装用のフレキシブルプリント配線板が多く使用されてきている。このフレキシブル配線板の分野においては、電子部品の小型化に伴い一層の高密度化が要求されるため、繊細なパターニングが可能な樹脂(例えば紫外線硬化性樹脂)を用いた光・熱硬化性樹脂硬化膜が多く用いられている。
【0003】
このフレキシブルプリント配線板には、はんだの濡れ性の向上や導体パターンの錆の発生を防止するために、通常は錫メッキが施される。
【0004】
錫メッキが施されたプリント配線板を形成するための方法として、銅回路を形成した配線板に絶縁硬化膜を形成した後、錫メッキを施す方法がある。この方法では、メッキ工程で、硬化膜の端部から配線パターンに沿って硬化膜の下面にメッキ液が侵入し、局部電池を形成してこの部分の銅を溶出してしまう傾向がある。更には、このようなフレキシブル配線板を折り曲げた場合、溶出した端部に応力が集中し回路が破損する問題点があった。
【0005】
この問題点を解決するために、非常に薄い錫メッキを施した配線板に硬化膜を形成した後、再度錫メッキを行うことが提案されている(特開2001−144145号公報;特許文献1)。しかしながら、この方法では、メッキ工程で塗膜表面からメッキ成分が染み込むため、硬化膜の変色や電気的長期信頼性が低下しやすい。
【0006】
他の方法として、両面に錫メッキを施された配線板に、絶縁硬化膜を形成する方法がある。錫メッキはメッキ後に放置しておくと、導電パターン材の内部応力により錫の針状結晶(ウィスカー)が成長し、隣接するパターンが短絡する恐れがあるため、ウィスカー抑制を目的にメッキ後に加熱処理することが、通常は必要である。錫メッキを施された配線板に絶縁硬化膜を形成する際、加熱硬化時の温度条件とウィスカーの成長を抑制する温度条件とは必ずしも一致するものではなく、いずれか一方の温度条件に合わせて加熱処理すると、他方の作用効果が充分に得られない問題点があった。
【0007】
このような観点から、ウィスカー成長を抑制するための加熱条件で形成できる樹脂組成物を用いてプリント配線板を形成する方法が提案されている。しかしながら、この方法では回路絶縁膜に熱硬化性のレジストを使用しているため、微細な電子部品を実装する配線板を形成することが困難であった(特開平6−342969号公報、特許文献2)。
【0008】
特に、微細なパターンを形成するための絶縁膜として、光・熱硬化性硬化膜が用いられていが、従来の光・熱硬化性樹脂硬化膜は、一般的に130〜150℃、30〜60分の熱による硬化条件が必要であった。この硬化条件で、純錫メッキ層が配線部の銅に多く拡散するためメッキ層が脆くなり、フレキシブルプリント配線板を折り曲げた場合、銅が拡散したメッキ層が破断し、回路が断線する問題があった。一方、ウィスカー成長の抑制の熱処理条件とされる100〜130℃、60〜150分の硬化条件では、硬化反応が充分に進まず、光・熱硬化性硬化膜の特性を得られない。
【0009】
【特許文献1】特開2001−144145号公報
【特許文献2】特開平6−342969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消することが可能なフレキシブルプリント配線基板を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、錫メッキが施された回路が光・熱硬化性硬化膜で保護され、ウィスカー成長を抑制する温度条件で硬化することにより錫メッキ層への銅の拡散を低減し、かつ安価で品質の安定したフレキシブルプリント配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意研究した結果、銅を実質的に含有しない錫メッキが施された電子部品用フレキシブルプリント配線板に、ガラス転移温度(以下、「Tg」と略すことがある。)が80℃以下の光・熱硬化性樹脂硬化膜を用いることにより、100〜130℃、60〜150分のウィスカーの抑制の熱処理条件で硬化膜が形成されたフレキシブルプリント配線板を得ることできることを見出した。
【0013】
本発明は、例えば、以下の態様を含む。
[1]電子部品用フレキシブルプリント配線板において、銅を実質的に含有しない錫メッキを施した後に形成させる絶縁硬化膜であって、硬化後のガラス転移温度が80℃以下であることを特徴とする光・熱硬化性樹脂硬化膜。
【0014】
[2](A)1分子中に2個以上の不飽和二重結合と1個以上のカルボキシル基を有する感光性プレポリマー、(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有しかつ融点もしくは軟化点が120℃以下のエポキシ樹脂化合物、(C)光重合開始剤、(D)希釈剤を含有する光・熱硬化性樹脂組成物から形成される[1]に記載の光・熱硬化性樹脂硬化膜。
【0015】
[3](A)1分子中に2個以上の不飽和二重結合と1個以上のカルボキシル基を有する感光性プレポリマー、(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有しかつ融点もしくは軟化点が120℃以下のエポキシ樹脂化合物、(C)光重合開始剤、(D)希釈剤を含有する[2]に記載の光・熱硬化性樹脂組成物。
【0016】
[4]温度100〜130℃、硬化時間60〜150分の熱硬化工程を経て形成される[1]または[2]に記載の光・熱硬化性樹脂硬化膜。
【0017】
[5][3]に記載の光・熱硬化性樹脂組成物を用い、[4]に記載の熱硬化工程を経て形成されることを特徴とする光・熱硬化性樹脂硬化膜の製造方法。
[6][1]、[2]または[4]に記載の光・熱硬化性樹脂硬化膜によって、一部または全面が被覆されていることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【0018】
[7]銅を実質的に含有しない錫メッキ層の平均厚さが0.05〜1.0μmである[6]に記載のフレキシブルプリント配線板。
【0019】
[8]光・熱硬化性樹脂硬化膜の形成が、銅を実質的に含有しない錫メッキ層の平均厚さの減少が0.3μm以内となる硬化条件で行われる[6]または[7]に記載のフレキシブルプリント配線板。
【発明の効果】
【0020】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、ウィスカーの発生を抑制する温度条件で硬化できる光・熱硬化性硬化膜を用いることにより、安価で信頼性が高く、かつ柔軟性が優れている。従って、本発明のフレキシブルプリント配線板は、例えば、柔軟性が要求される高密度の部品実装を目的とする電子機器への利用に特に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
(光・熱硬化性樹脂硬化膜)
本発明の光・熱硬化性樹脂硬化膜は、銅を実質的に含有しない錫メッキが施された電子部品用フレキシブルプリント配線板へ被覆すべき光・熱硬化性樹脂硬化膜であって、且つ、硬化後のTgが80℃以下であることを特徴とするものである。
【0023】
硬化膜のTgが80℃を越えると、光・熱硬化性硬化膜を形成する際、熱による硬化が進むに連れ100〜130℃の硬化温度での分子運動が低減するため、硬化反応が阻害される。そのため、プリント配線板が必要とする特性を発揮する硬化膜を得るためには、150分以上の硬化時間が必要となり、銅が拡散した錫メッキ層の厚みが厚くなってしまうため、好ましくない。
【0024】
(樹脂硬化膜の好適な態様)
本発明の光・熱硬化性樹脂硬化膜は、上記した物性を満足する限り、特に制限されない。光硬化性や熱硬化性またはアルカリ現像容易性の点からは、本発明の光・熱硬化性樹脂硬化膜は、(A)1分子中に2個以上の不飽和二重結合と1個以上のカルボキシル基を有する感光性プレポリマー、(B)一分子中に2個以上のエポキシ基を有しかつ融点もしくは軟化点が120℃以下のエポキシ樹脂化合物、(C)光重合開始剤、(D)希釈剤を含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。
【0025】
(感光性プレポリマー(A))
感光性プレポリマー(A)は、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和二重結合と1個以上のカルボキシル基を有する感光性プレポリマーである。この感光性プレポリマーの具体例としては、特に限定されるものではないが、イソシアネート基とカルボキシル基を有するウレタンオリゴマー又はポリマー、例えば、カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物、数平均分子量が200〜20,000であるポリオール化合物、ジイソシアネート化合物から得られるウレタンオリゴマー又はポリマー等に、(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシル化合物を反応させて得られる感光性プレポリマー、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能のエポキシ樹脂や、アルキル(メタ)アクリレートとグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートとグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体等に、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和モノカルボン酸を反応させた後、不飽和又は飽和の多価カルボン酸無水物を付加反応させて得られる感光性プレポリマー、カルボキシル基を有するオリゴマー又はポリマー、例えばアルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体に、1分子中にエチレン性不飽和二重結合とエポキシ基を有する不飽和化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレートを部分的もしくは全量反応させて得られる感光性 プレポリマー、この得られた感光性プレポリマーに不飽和又は飽和の多価カルボン酸無水物を付加反応させて得られる感光性プレポリマーなどが挙げられる。
【0026】
感光性プレポリマー(A)の酸価は、45〜160mgKOH/gの範囲にあることが好ましい。感光性 プレポリマーの酸価が45mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、160mgKOH/gを超えると感光性 プレポリマーの親水性が高くなりすぎるために、電気特性に悪影響を及ぼすので好ましくない。この感光性 プレポリマー(A)は、単独で又は2種以上の混合物として使用することが出来る。
【0027】
(エポキシ樹脂(B))
本発明で使用するエポキシ樹脂(B)は、一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、かつ融点もしくは軟化点が120℃以下のエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂の具体例としては、特に限定されるものではないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などの一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、かつ融点もしくは軟化点が120℃以下のエポキシ化合物が挙げられる。
【0028】
また、このエポキシ樹脂(B)として、難燃性付与のために、塩素、臭素等のハロゲンや燐等の原子がその構造中に導入されたものを使用してもよい。さらに、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂及びテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂等を使用してもよい。
【0029】
本発明の光・熱硬化性樹脂組成物における成分(B)の融点もしくは軟化点が120℃を超えると、充分な特性を有する硬化膜を得るために必要な熱硬化温度が130℃以上となる傾向がある。そのため、銅が拡散された錫メッキ層の厚みが厚くなり、銅配線が脆くなり好ましくない。
【0030】
(光重合開始剤(C))
本発明に用いられる光重合開始剤(C)は特に制限されない。光重合開始剤(C)の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、4―フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のアセトフェノン類、チオキサンテン、2-クロルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2,4−ジメチルチオキサンテン等のチオキサンテン類、エチルアントラキノン、ブチルアントラキノン等のアルキルアントラキノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどのベンジルジメチルケタール類、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などのα−アミノケトン類、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オンなどのα−ヒドロキシケトン類、9,10−フェナンスレンキノン等を挙げることができる。これらは単独で、あるいは必要に応じて2種以上の混合物として用いることができる。
【0031】
光重合開始剤(C)の配合量は、フレキシブルプリント配線板を得るための樹脂組成物中の光硬化成分の合計100質量部に対し0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜10質量部がより好ましい。光重合開始剤(C)の配合量が0.1質量部未満では感光性組成物の硬化が不充分となる場合がある。一方、この配合量が20質量部を超えると耐溶剤性や可撓性が低下するため好ましくない。なお、上記した「光硬化成分」とは成分(A)、希釈剤(D)及び必要に応じて添加されるその他の成分のうち、(メタ)アクリレート基等の光重合性の官能基を有する成分を指す。
【0032】
(光増感剤)
本発明において光重合開始剤を使用し、紫外線で重合硬化させる場合には、重合速度を向上させるために、必要に応じて光増感剤を併用することができる。そのような目的で使用する増感剤としては、ピレン、ペリレン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、フェノチアジンなどが挙げられる。増感剤を併用する場合の使用量は、光重合開始剤100質量部に対して、0.1〜100質量部の範囲が好ましい。
【0033】
(希釈剤(D))
本発明に用いる希釈剤(D)としては、有機溶剤のほか、光重合性モノマーが溶剤を兼ねる反応性希釈剤として使用できる。
【0034】
(有機溶剤)
本発明の目的に反しない限り、使用可能な有機溶剤は特に制限されない。このような有機溶剤の具体例としては、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグルコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等を挙げることができる。
【0035】
(反応性希釈剤)
一方、溶剤を兼ねる反応性希釈剤である光重合性モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート類、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール、またはこれらのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート類、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのε−カプロラクトン変性(メタ)アクリレート類、及びメラミン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0036】
上記希釈剤(D)は、単独で、または必要に応じて2種以上の混合物として用いることができる。その使用量は、樹脂組成物の粘度が0.5〜500Pa・sになる量が好ましく、さらに好ましくは10〜300Pa・sとなる量である。なお、本明細書において、粘度はJISK5400の4.5.3記載の回転粘度計法に従い、温度25℃の条件で測定した値である。
【0037】
好適なフレキシブルプリント配線板を得るための樹脂組成物中の希釈剤の割合としては、(感光性プレポリマー(A)100質量部に対して)5〜80質量%が好ましく、特に10〜70質量%が好ましい。
【0038】
(添加剤等)
本発明のフレキシブルプリント配線板を得るための樹脂組成物には、更に、耐熱性、難燃性、硬度、流動性(チクソトロピー性、粘性など)の特性を向上する目的で、必要に応じて公知慣用の硬化剤、難燃剤、無機充填剤、有機充填剤、ワックスや界面活性剤等を添加することができる。これらの添加剤の総量は、光・熱硬化性樹脂組成物に対して、200質量部以下が好ましい。200質量部を越えると、柔軟性など本来有する硬化膜の特性を著しく低下させる。
【0039】
(硬化剤)
本発明における硬化剤とは、熱硬化性を促進させるものである。硬化剤の具体例としては、例えば、四国化成工業(株)製、2MZ、2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ、1B2MZ、2MZ−CN、2E4MZ−CN,C11Z−CN、2PZ−CN、2PHZ−CN、2MZ−CNS、2E4MZ−CNS、2PZ−CNS、2MZ−AZINE、2E4MZ−AZINE、C11Z−AZINE、2MA−OK、2P4MHZ、2PHZ、2P4BHZ等のイミダゾール誘導体;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォンン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩及び/またはエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート、チバ・ガイギー社製、イルガキュアー261、旭電化(株)製、オプトマ−SP−170等の光カチオン重合触媒;スチレン−無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物等の公知慣用である硬化剤類あるいは硬化促進剤類が挙げられる。
【0040】
(難燃剤)
難燃剤の具体例としては、臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アクリロイル基を有する臭素化エポキシ化合物、アクリロイル基を有する酸変性臭素化エポキシ化合物などのような臭素含有化合物、赤りん、酸化錫、アンチモン系化合物、水酸化ジルコニウム、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤、リン酸アンモニウム化合物、ホスフェート化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含窒素りん化合物、ホスファゼン化合物などのリン系化合物等が挙げられる。
【0041】
(無機充填剤)
無機充填剤の具体例としては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、結晶性シリカ、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉等の公知慣用の無機充填剤が使用できる。
【0042】
(有機充填剤等)
有機充填剤の具体例としては、シリコーン樹脂、シリコンゴム、弗素樹脂等が挙げられる。ワックスの具体例としては、ポリアミドワックス、酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。界面活性剤の具体例としては、シリコンオイル、高級脂肪酸エステル、アミド等が挙げられる。
【0043】
(他の添加剤等)
更に、必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の重合禁止剤、シリカ、アスベスト、オルベン、ベントン、モンモリロナイト等の公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、アクリル系、高分子系等の消泡剤及び/またはレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような公知慣用の添加剤類を用いることができる。また、他の添加剤として、例えば保存安定性のために紫外線防止剤、可塑剤など、本発明の主旨を損ねない範囲で添加することができる。
【0044】
また、アクリル酸エステル類などのエチレン性不飽和化合物の共重合体類や、多価アルコール類と多塩基酸化合物から合成されるポリエステル樹脂類等の公知慣用のバインダー樹脂及びポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性モノマーやオリゴマー類も組成物としての諸特性に影響を及ぼさない範囲で用いることができる。これらは前記の反応性希釈剤として用いられることもある。
【0045】
(水)
本発明のフレキシブルプリント配線板を得るための樹脂組成物の引火性を低下させるために水を添加することもできる。水を添加する場合には、成分(A)のカルボキシル基をトリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等の3級アミノ基を有する(メタ)アクリレート化合物で造塩することにより、成分(A)を水に溶解するようにすることが好ましい。
【0046】
本発明のフレキシブルプリント配線板用樹脂硬化膜を得るための樹脂組成物は、上記の各成分を通常の方法で均一に混合することによって得ることができる。混合の方法には特に制限はなく、一部の成分を混合してから残りの成分を混合してもよく、またはすべての成分を一括で混合してもよい。混合装置としては、例えばリゾルバー、ロールミル、ビーズミルなどの公知の混練機を用いることができる。
【0047】
(製造方法の一態様)
フレキシブルプリント配線板の製造方法は、特に制限されない。該製造方法の一態様として、例えば、次のようにして銅を実質的に含有しない錫メッキが施された電子部品用フレキシブルプリント配線板に、光・熱硬化性樹脂硬化膜で一部または全面が被覆し製造することができる。すなわち、このような態様においては、12〜125μmの厚さのフィルム上にパターニングされた5〜35μmの銅箔の導電パターンのすべて、もしくは一部の部分に0.05〜1.0μmの厚さでメッキを行う。このメッキの際の処理方法は、まず非鉄金属表面洗浄剤で洗浄後、酸処理を行い、メッキする銅箔表面を綺麗にしたのち、無電解錫メッキ液により錫をメッキする。
【0048】
その基板を水や酸溶液で充分洗浄・乾燥した後、光・熱硬化性樹脂組成物を、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の方法により5〜160μmの膜厚で塗布する。60℃〜100℃の温度範囲で、5〜60分間程度で乾燥する。所望の露光パターンが施されたネガマスクを介して露光し、未露光部分をアルカリ性現像液で現像除去し、市水などで水洗浄する。その後、100〜130℃、60〜150分の温度条件で熱硬化して、一部または全面が樹脂硬化膜で被覆されたフレキシブルプリント配線板を製造する方法が挙げられる。
【0049】
上記した態様の方法では、メッキの際の脱脂などの洗浄工程が硬化膜を形成する前に行われるため、硬化膜と基板との密着力の低下や、加水分解による塗膜劣化などが起こらない。また、硬化膜への影響を考慮しなくて良いため、銅箔の充分な洗浄を行うことが出来る。メッキ後に光・熱硬化性樹脂組成物の密着性を向上する目的で、メッキ表面を充分に洗浄することもできる。さらに、光・熱硬化樹脂硬化膜の形成をメッキ後のプリント配線板に施すため、メッキ液による塗膜汚染ややエグレやかじりなどメッキ液が硬化膜の端部から侵入する不具合の発生がない。
【0050】
(錫メッキ層)
光・熱硬化性硬化膜を形成する前の銅を実質的に含有しない錫メッキ層の平均厚さは、0.05〜1.0μmの範囲であることが好ましい。錫メッキ層の平均厚さが0.05μmより薄いと、ウィスカーを抑制する熱処理条件で、全ての錫メッキ層に銅が拡散し、メッキ層が脆くなり、フレキシブルプリント配線板を折り曲げた場合、銅が拡散したメッキ層が破断しやすくなる傾向がある。他方、錫メッキ層の平均厚さが1.0μmよりも厚い場合、錫の使用量が多く製造コストが高くなる傾向がある。
【0051】
(エポキシ樹脂が主成分の樹脂硬化膜)
現在一般的に使用されているエポキシ樹脂が主成分の光・熱硬化樹脂硬化膜の形成には、製品の仕様により異なるが、通常は、熱硬化するために130℃〜150℃で、30〜60分の加熱を必要とする。そのため、通常ウィスカーの発生を抑制するための熱処理温度である100〜130℃、60〜150分で熱硬化形成できる光・熱硬化性樹脂組成物を使用することにより、従来の方法にくらべ、銅を実質的に含有しない錫メッキ層の減少量を0.3μm未満に低減することができる。錫メッキ層が0.3μm以上減少すると、銅が拡散した錫メッキ層の厚みが厚く、フレキシブルプリント配線板を折り曲げた場合、銅が拡散したメッキ層が破断しやすくなるため、好ましくない。
【0052】
(活性光)
本発明において、露光に用いられる活性光は特に制限されない。この活性光は、公知の活性光源、例えば、カーボンアーク、水銀蒸気アーク、キセノンアーク等から発生する活性光を用いることができる。感光層に含まれる光重合開始剤(C)の感受性は、通常、紫外線領域において最大であるので、その場合の活性光源は紫外線を有効に放射するものが好ましい。もちろん、光重合開始剤(C)が可視光線に感受するもの、例えば、9,10−フェナンスレンキノン等の場合には、活性光としては可視光が用いられ、その光源としては前記活性光源以外に写真用フラッド電球、太陽ランプなども用いられる。
【0053】
(現像液)
本発明において、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液を使用することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
以下の本発明のフレキシブルプリント配線板の実施例及び比較例で使用した市販品は以下のとおりである。
【0056】
(洗浄剤)
(1)ニュートラ・クリーン7L; 中性浸漬洗浄剤(ローム・アンド・ハース電子材料社製)
【0057】
(酸処理液)
(1)硫酸; 10%硫酸水溶液(市販試薬)
【0058】
(無電解錫メッキ液)
(1)LT−34; 無電解錫メッキ液(ローム・アンド・ハース電子材料社製)
【0059】
(感光性プレポリマー(A))
(1)PUA−1; ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(PUA−1)は、下記のように製造したものを使用した。
【0060】
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、ポリオール化合物(e)としてポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学工業株式会社製、PLACCEL212、分子量1250)3750g(3mol)、カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物(d)としてジメチロールブタン酸445g(3mol)、ジイソシアナート化合物(g)としてイソホロンジイソシアナート1554g(7mol)、及び(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシル化合物(f)として2−ヒドロキシエチルアクリレート、238g(2.05mol)、さらにp−メトキシフェノール及びジ−t−ブチル−ヒドロキシトルエンを各々1.0gずつを投入した。撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、ジブチル錫ジラウレート1.6gを添加した。
【0061】
反応容器内の温度が低下し始めたら再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアナート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。固形分が50質量%となるように希釈剤としてカルビトールアセテートを添加し、粘度10Pa・s(25℃)のウレタン(メタ)アクリレート樹脂(以下、PUA−1と略す。)を得た。得られたPUA−1の重量平均分子量は15,000、固形分の酸価は47mgKOH/gであった。
【0062】
(2)PUA−2; ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(PUA−2)、は下記のように製造したものを使用した。
【0063】
ポリオール化合物(e)としてポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学工業社製、PTMG−850、分子量850)2550g(3mol)、カルボキシル基を有するジヒドロキシル化合物(d)としてジメチロールプロピオン酸670g(5mol)、ジイソシアナート化合物(g)としてイソホロンジイソシアナート1776g(8mol)およびヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとして2−ヒドロキシエチルアクリレート238g(=2.05mol)を用いた他は、PUA−1の製造法と同様に製造し、固形分が45質量%となるように希釈剤としてカルビトールアセテートを添加し、粘度26Pa・s(25℃)のウレタン(メタ)アクリレート樹脂(以下、PUA−2と略す。)を得た。得られたPUA−2重量平均分子量は16,000、固形分の酸価は90mgKOH/gであった。
【0064】
(3)ZFR-1401H; エポキシアクリレートプレポリマーのカルビトールアセテート希釈品(日本化薬社製)、固形分酸価100mg・KOH/g、加熱残分65%。
【0065】
(エポキシ樹脂(B))
(1)YX−4000: テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製)、エポキシ当量185g/eq.、融点105℃、
(2)1002; ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製)、エポキシ当量650g/eq.、軟化点78℃(環球法、JIS K7234−1986に準拠)、
(3)1009; ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製)、エポキシ当量3000g/eq.、軟化点144℃。
【0066】
(光重合開始剤(C))
(1)IRGACURE907:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、
(2)DETX:2,4−ジエチルチオキサンソン(日本化薬社製)。
【0067】
(希釈剤(D))
(1)DPHA:6官能アクリル酸エステルモノマー(KAYARAD DPHA;日本化薬社製)、
(2)UA−200AX:2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学社製)、
(3)カルビトールアセテート:ダイセル化学社製、
(4)#8500:カルビトールアセテートと石油ナフサの混合物(日本ポリテック社製)。
【0068】
(充填剤)
(1)硫酸バリウム:堺化学工業社製、
(2)シリカ:AEROSIL、日本アエロジル社製。
【0069】
(硬化剤)
(1)ジシアンジアミド:日本カーバイド工業社製。
【0070】
(光・熱硬化性樹脂組成物の調製)
後述する表1に示す各成分及び配合割合(質量%)で、4インチ三本ロール(井上製作所製)を用いて温度23℃の条件で混合し、フレキシブルプリント配線板を得るための光・熱硬化性樹脂組成物を調製した。得られた組成物は、#8500を添加して23Pa・sの粘度に調整した。粘度は、JIS K 5400の4.5.3記載の回転粘度計法にて測定した。
【0071】
(フレキシブルプリント配線板の作成)
ポリイミドフィルム上に厚さ12μmの銅箔からなる配線パターンを形成し、この配線パターン全面に厚さ0.3μmの錫メッキ層を形成した。
【0072】
この銅を実質的に含有しない錫メッキ層を有する配線板に、光・熱硬化性樹脂組成物を硬化塗膜の膜厚が18〜23μmになるようにスクリーンプリント法にて塗布し、70℃の熱風乾燥機で30分乾燥させた。塗膜が室温になるまで放冷して、メタルハライドランプで露光(0.5J/cm、波長365nm換算、散乱光)後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、溶液温度30℃、スプレー圧0.2MPaで1分間現像した。水温度30℃、スプレー圧0.2MPaで1分間水洗した後、熱風乾燥機を用いて、実施例及び比較例で例示した条件で熱処理し、フレキシブルプリント配線板を得た。
【0073】
〔純錫メッキ層の厚さ〕
実質的に銅を含まない純錫メッキ層の厚さは、コクール膜厚測定装置(電測社製)を用いて測定した。このコクール膜厚測定装置は、錫メッキ層の所定面積に電解液を滴下して電解し、不純物を含む層が現われることにより電位が上昇した時点で電解を停止する。このときの単位面積あたりの通電量から溶解した錫量を算出し、測定した面積と錫の比重から純錫メッキ層の厚さを算出する装置である。この測定法に関しては、必要に応じて、電測社のカタログ、取扱説明書を参照することができる。
【0074】
〔ガラス転移温度(Tg)〕
光・熱硬化性樹脂硬化膜のガラス転移温度(Tg)は、熱機械分析TMA(セイコーインスツルメンツ社製TMA6100)を用いて測定した。測定に使用した試験片は、テフロン(登録商標)シート上にフレキシブルプリント配線板の作成方法と同じ方法で作成した硬化膜を使用した。ガラス転移温度は、低温側ベースラインの延長線とガラス転移後の曲線接線との交点温度である。
【0075】
〔可撓性〕
得られたフレキシブルプリント配線板を0.5MPaの圧力で180°に折り曲げた。可撓性の判定は、硬化膜のクラック発生度合いを顕微鏡にて観察し、下記の3段階で行った。
【0076】
1:クラックの発生が無いもの、
2:クラックの発生が若干あるもの、
3:クラックの発生があるもの。
【0077】
〔耐溶剤性〕
得られたフレキシブルプリント配線板を23℃のイソプロピルアルコール(IPA)に浸漬した。耐溶剤性の判定は、硬化膜の表面を目視にて観察し、下記の3段階で行った。
【0078】
1:硬化膜に変化が無いもの、
2:硬化膜が僅かに膨潤したもの、
3:硬化膜が白色に膨潤や、硬化膜が剥がれや浮きが発生したもの
【0079】
以上の評価結果を表1に示す。
【0080】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品用フレキシブルプリント配線板において、銅を実質的に含有しない錫メッキを施した後に形成させる絶縁硬化膜であって、硬化後のガラス転移温度が80℃以下であることを特徴とする光・熱硬化性樹脂硬化膜。
【請求項2】
(A)1分子中に2個以上の不飽和二重結合と1個以上のカルボキシル基を有する感光性プレポリマー、(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有しかつ融点もしくは軟化点が120℃以下のエポキシ樹脂化合物、(C)光重合開始剤、(D)希釈剤を含有する光・熱硬化性樹脂組成物から形成される請求項1に記載の光・熱硬化性樹脂硬化膜。
【請求項3】
(A)1分子中に2個以上の不飽和二重結合と1個以上のカルボキシル基を有する感光性プレポリマー、(B)1分子中に2個以上のエポキシ基を有しかつ融点もしくは軟化点が120℃以下のエポキシ樹脂化合物、(C)光重合開始剤、(D)希釈剤を含有する請求項2に記載の光・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
温度100〜130℃、硬化時間60〜150分の熱硬化工程を経て形成される請求項1または2に記載の光・熱硬化性樹脂硬化膜。
【請求項5】
請求項3に記載の光・熱硬化性樹脂組成物を用い、請求項4に記載の熱硬化工程を経て形成されることを特徴とする光・熱硬化性樹脂硬化膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1、2または4に記載の光・熱硬化性樹脂硬化膜によって、一部または全面が被覆されていることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
銅を実質的に含有しない錫メッキ層の平均厚さが0.05〜1.0μmである請求項6に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
光・熱硬化性樹脂硬化膜の形成が、銅を実質的に含有しない錫メッキ層の平均厚さの減少が0.3μm以内となる硬化条件で行われる請求項6または7に記載のフレキシブルプリント配線板。

【公開番号】特開2006−173592(P2006−173592A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334226(P2005−334226)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】