説明

フレキシブルプリント配線板用補強板およびフレキシブルプリント配線板

【課題】耐熱性、機械強度特性などにおいて優れた樹脂組成物からの成形板を用いて作製されるフレキシブルプリント配線板用補強板およびそれを用いたフレキシブルプリント配線板を提供する。
【解決手段】芳香族ジアミン類好ましくはベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミド樹脂40〜90質量%、および(B)前記同様のポリイミドからなる体積平均粒子径Dが0.5〜50μmの粉末10〜60質量%とを含有する樹脂組成物から成形されたポリイミドシートであるフレキシブルプリント配線板用補強板とこれを使用したフレキシブルプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂にポリイミド粉末を含有せしめたフレキシブルプリント配線板用補強板およびそれを用いたフレキシブルプリント配線板(以下、FPCともいう)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高密度化に伴い、これに用いられるFPCにおいて基板の小型化および薄型化が進んでいる。これらの電子機器の多機能化に伴い機器内部の使用部品点数が増加し、それらの部品同士との接続や部品搭載が可能なFPCの需要は拡大しており、搭載部品との接続や搭載を図るにあたり、薄くて柔軟性に富んだFPCには、これらの接続部分の接続強度を維持するために補強用の補強板を貼り合せる場合も多い。
【0003】
補強板(以下、補強用シートともいう)を用いて補強したFPC(以下、補強板付きFPCという)は、絶縁ベースフィルム(絶縁基材)の片面若しくは両面に銅箔を貼り合せた積層体に回路を形成し、形成した回路導体を保護する為に所定の形状で開口した絶縁基材を回路導体の表面に被覆し半田メッキ等の表面処理を行った後、補強板を熱硬化性若しくは熱可塑性の接着剤で貼り合わせを行っている方式が採用されている。
補強板は、FPC接続端子を相手側のコネクターに挿抜する際に製品が折れ曲がる事を防止する為や、コネクター挿入後の脱落を防止する為にコネクター挿入部の厚さとFPCの厚さとを同一にする為に、更にはコネクター等の実装部品をFPCに実装する際に柔軟性があるFPCを補強する為等に使用されるのが一般的な使用方法である。
【0004】
各種無機繊維フィラーを添加し、その樹脂の機械強度や耐熱性を向上させる試みが提案されている(特許文献1参照)。
補強板に使用される材料は、その工程における耐熱温度とコストにより、一般に銅、銅合金、アルミニウム、ステンレス等の金属板の他、セラミック板、樹脂シート等が使用されている。耐熱樹脂シートとして熱硬化型ポリイミド樹脂シートやガラス繊維強化エポキシ樹脂シート等が主に使用されている。
補強板として使用されるポリイミド樹脂ではシート製法上の制約によって、特に厚さが200μm以上の場合、生産コストが高くなることや吸湿性の点で課題がある。
ガラス繊維やカーボン繊維等をポリエーテル芳香族ケトン樹脂やポリエーテルイミド樹脂に添加する試みがなされている。熱可塑性樹脂に繊維状の強化繊維材を添加する場合、得られた樹脂成形シート品の線膨張挙動の異方性が大きく、使用環境下での雰囲気温度が上昇したときの寸法安定性が低下する。したがって精度の高い寸法精度を必要とする用途においては使用が困難である。
【特許文献1】特開昭63−022854号公報
【0005】
ガラス繊維強化エポキシ樹脂シートでは打ち抜き加工性等の二次加工性に課題が残っている。熱可塑性樹脂を耐熱性が必要とされる条件下で用いる場合には、樹脂の固有特性である耐熱性も重要となる。例えば半田リフロー工程では、リフロー温度が230℃以上であることが多く、ガラス転移温度が低い熱可塑性樹脂では変形等の不具合を発生する事があった。
また、熱可塑性樹脂の特性を改良し、耐熱性、機械特性、成形性、寸法安定性に優れた特定組成のガラス転移温度が高い熱可塑性樹脂に板状タルクのような板状フィラーを含有した組成物からのシートを用いたフレキシブルプリント配線板補強用シートおよびそれを用いたフレキシブルプリント配線板も提案されている(特許文献2参照)が、熱可塑性樹脂のフロー成形によるものであり、おのずと成形温度などの制約があり、耐熱性の点で充分に満足できるものではない。
【特許文献2】特開2005−243757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決し、耐熱性、機械強度特性などにおいて優れた樹脂組成物を提供し、その樹脂組成物からの成形板を用いて作製されるFPC補強板およびそれを用いたFPCを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、耐熱性ポリイミド粉末を耐熱性ポリイミド樹脂に含有せしめた組成物から、耐熱性、機械強度特性などに優れたFPC補強板が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.(A)芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られる融点を有さないポリイミド樹脂40〜90質量%、および(B)芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られる融点を有さないポリイミドからなる体積平均粒子径Dが0.5〜50μmである粉末10〜60質量%とを含有する樹脂組成物から成形されたポリイミドシートであることを特徴とするフレキシブルプリント配線板用補強板。
2.(A)がベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせから得られるポリイミド樹脂である前記1のフレキシブルプリント配線板用補強板。
3.(B)がベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせから得られるポリイミド粉末のである前記1又は2いずれかに記載のフレキシブルプリント配線板用補強板。
4.前記1〜3いずれかに記載のフレキシブルプリント配線板用補強板を使用したフレキシブルプリント配線板。
【発明の効果】
【0008】
本発明の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミド樹脂40〜90質量%、芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドからなる体積平均粒子径Dが0.5〜50μmである粉末10〜60質量%とを含有する樹脂組成物から成形されたポリイミドシートを用いたフレキシブルプリント配線板用補強板は、硬化型ポリイミドにおける厚さが大きい場合の成形上の制約が、予めポリイミド粉末を含有せしめることで大幅に改善され、しかも繊維状の強化繊維材を添加する場合、得られた樹脂成形シート品の線膨張挙動の異方性が大きく使用環境下での雰囲気温度が上昇したときの寸法安定性が低下する欠点も改善され、耐熱性に優れかつ寸法安定性にも優れたフレキシブルプリント配線板用補強板を提供するものであり、このフレキシブルプリント配線板用補強板を使用したフレキシブルプリント配線板も耐熱性と寸法安定性に優れたものとなり、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における(A)および(B)のポリイミドは、芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドであれば、特に限定されるものではなく、ポリイミドを得るために、例えば芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類との反応は、溶媒中で芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを(開環)重付加反応に供してポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を得て、次いで、このポリアミド酸の溶液から前駆体を成形した後に乾燥・熱処理・脱水縮合(イミド化)することにより製造される。
本発明における(A)および(B)のポリイミドは、芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドであれば限定されるものではないが、融点を明確に有しないポリイミドであることが必須である。
本発明における(A)および(B)のポリイミドは、前記したものであれば特に限定されるものではないが、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.上記のABCの一種以上の組み合わせ。
中でも特にA.の組み合わせが好ましい。
本発明で特に好ましく使用できるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを反応させて得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とするポリイミドベンゾオキサゾールに使用される、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類として、下記の化合物が例示できる。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
【化9】

【0019】
【化10】

【0020】
【化11】

【0021】
【化12】

【0022】
【化13】

【0023】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0024】
本発明は、前記事項に限定されず下記の芳香族ジアミンを使用してもよいが、好ましくは全芳香族ジアミンの30モル%未満であれば下記に例示されるベンゾオキサゾール構造を有しないジアミン類を一種又は二種以上、併用してのポリイミドフィルムである。
そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0025】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0026】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0027】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0028】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0029】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0030】
本発明で用いられる芳香族テトラカルボン酸類は例えば芳香族テトラカルボン酸無水物類である。芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0031】
【化14】

【0032】
【化15】

【0033】
【化16】

【0034】
【化17】

【0035】
【化18】

【0036】
【化19】

【0037】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%未満であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種又は二種以上、併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、
【0038】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0039】
前記芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを重縮合(重合)してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。 これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるような量が挙げられる。
【0040】
ポリアミド酸を得るための重合反応の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0dl/g以上が好ましく、4.0dl/g以上がさらに好ましい。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
【0041】
本発明における(B)のポリイミド粉末の製法は特に限定されないが、例えば、芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを反応せしめて得られるポリイミドの成形体(例えば無定形体やフィルムや棒状体)を破砕・粉砕したものでもよく、溶媒中で前記のように芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを反応せしめる分散重合法(前駆体であるポリアミド酸溶液の良溶性媒体であり同時に生成するポリイミド樹脂の難溶性媒体となる溶媒中においてポリアミド酸を化学イミド化、ないし加熱イミド化して溶媒中に析出させる分散重合法)により粉末化するか、又は溶媒中で前記両者を反応せしめ得られたポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を貧溶媒と混合し析出したポリイミド前駆体を濾過し、揮発成分が3〜38質量%となるまで乾燥した後、250〜550℃にて加熱処理してポリイミド樹脂粉体を得る方法や、同様にして得られるポリアミド酸の溶液を、貧溶媒と混合し析出したポリイミド前駆体を濾過し、揮発成分が下限が3質量%程度で上限が32質量%未満となるまで乾燥しポリイミド前駆体粉体を得る方法で予め得たポリイミド前駆体粉体を使用してもよい(この場合は(A)のポリイミドとの組成物をイミド化させる際に同時にポリイミド粉末となる)が、いずれの場合も得られた(B)の粉末は体積平均粒子径Dが0.5〜50μmである。好ましくは5〜50μmである。形状については特に限定されない。飛散を防止し取り扱い性を容易とする観点より顆粒状に加工されることが好ましい態様である。
【0042】
本発明の(A)のポリイミドと(B)のポリイミド粉末を用いて成形体を得る方法としては、例えば(A)が熱可塑性の場合は、(B)のポリイミド粉末を(A)に混合してシート状に流延し冷却によってシートとする方法、(A)の前駆体であるポリアミド酸溶液に(B)のポリイミド粉末を混合しシート状に流延しシート状前駆体となしこれをイミド化によってポリイミドシートとする方法、得られたシートを複数枚重ね合わせてプレスなどにより積層する方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
いずれにおいても(A)のポリイミド樹脂は40〜90質量%であり、(B)のポリイミドの粉末は10〜60質量%であり、両者を含有する樹脂組成物から成形されたポリイミドシートである。
本発明のポリイミド成形体シートは、その厚さは特に限定されないが20μm〜5.0mmの厚さのものが好ましい。
【0043】
高温処理によるイミド化方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
熱閉環法の加熱最高温度は、100〜500℃が例示され、好ましくは200〜480℃である。加熱最高温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、複合体が脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間処理する2段階熱処理が挙げられる。
【0044】
化学閉環法では、ポリアミド酸溶液のイミド化反応を一部進行させて自己支持性を有する前駆体複合体を形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。
この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
(1)ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
(2)ポリイミドからなる粉末の体積平均粒子径
粉末を、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1質量%を添加したイオン交換水に、超音波洗浄機を用いて分散し、レーザー散乱式粒度分布計LB−500(堀場製作所社製)により測定した。
(3)加熱揮発成分
加熱揮発成分の測定は、DSC測定装置を用いて、室温から200℃まで5℃/分の速度で昇温し、200℃にて60分保持する条件下での質量減を求め、下記式にて算出した。
加熱揮発成分(%)={(初期の質量−加熱後の質量)/(初期の質量)}×100
【0046】
(4)耐折強さ
0.2mm厚さのシート状サンプルを用いて耐折強さを測定(JIS P8155に準拠)した。
【0047】
(5)ポリイミドの融点
試料を下記条件でDSC測定し、融点(融解ピーク温度Tpm)をJIS K 7121に準拠して下記測定条件で求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製DSC3100S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料質量 ; 4mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0048】
(6)シートの線膨張係数
測定対象のポリイミドシートについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。MD方向、TD方向の意味は上記「3.」の測定と同様である。
機器名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0049】
(7)シートの耐熱性
260℃で10分間加熱し、加熱前後でのサンプル形状変化について、変形の殆どないものを○、変形が若干でも見られるものを△、変形の大きいものを×とした。
(8)シートの成形性
二軸混錬機および単軸混錬機でのシート加工成形を行い得られたサンプルの外観を目視で評価。外観良好なものを○、外観に若干難点があるものを△、安定した成形品が得られないか外観不良なものについて×とした。
【0050】
(9)シートの打ち抜き性
シートを所定大きさに打ち抜いた時のシート外観にて判定した。割れ・欠け個所無いものを○、割れ・欠け個所が1〜2箇所あるものを△、割れ・欠け個所が多数あるものを×とした。
(10)シートの半田耐熱性
評価用シートをFPC用接着剤を介し、25μmポリイミドフィルムを使用したテスト用FPCと、温度200℃、圧力3MPaで20分間加熱加圧し、補強板付きFPCを作製し、260℃半田浴に10秒浸漬したときの外観評価が、膨れがなく良好のものを○、膨れなどの外観不良が明らかなものを×とした。
【0051】
〔ポリアミド酸溶液の重合例1〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を1.22質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を、容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。予備分散液中の平均粒子径は0.11μmであった。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、223質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、4000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて24時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.8dl/gであった。
【0052】
〔ポリアミド酸溶液の重合例2〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を7.6質量部、N−メチル−2−ピロリドン390質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、200質量部のジアミノジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を390質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.7dl/gであった。
【0053】
〔ポリアミド酸溶液の重合例3〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を3.7質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、108質量部のフェニレンジアミンを入れた。次いで、3600質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と292.5質量部のジフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて、25℃にて12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は4.5dl/gであった。
【0054】
〔ポリイミド粉末製造例1〜6〕
得られたポリアミド酸溶液A1000質量部を、25℃で攪拌下において10000質量部のメタノールに静かに滴下し、吸引漏斗で凝固物を回収した。ついで10000質量部のメタノールにて凝固物を洗浄し、再度吸引漏斗で濾過し、ポリアミド酸粗粉体を得た。得られた粗粉体を、真空乾燥機にて110℃12時間乾燥し、瑪瑙乳鉢にて解砕し、118質量部のポリイミド前駆体樹脂粉体(a1)を得た。
得られたポリイミド前駆体樹脂粉体の加熱揮発成分は31質量%であった。
さらに得られたポリイミド前駆体樹脂粉体をマッフル炉を用いて、160℃にて30分間加熱し、ついで20℃/分にて420℃まで昇温し45分間保持した後、室温まで冷却し、褐色のポリイミド樹脂粉末(A1)を得た。得られたポリイミド樹脂粉末(A1)の体積平均粒子径は35μm、融点は無く、加熱揮発成分は1.6質量%であった。
同様にして体積平均粒子径は55μm、融点は無く、加熱揮発成分は1.9質量%のポリイミド樹脂粉末(A2)を得た。
上記した処方で、ポリアミド酸溶液B、ポリアミド酸溶液Cを使用してそれぞれポリイミド粉末(B1)、(B2)、ポリイミド粉末(C1)、(C2)を得た。これらのポリイミド粉末は全て明確な融点を有していなかった。
【0055】
<実施例1〜3、比較例1〜3>
〔ポリイミドシートの製造〕
上記で得られたポリイミド粉末A1の5質量部を、ポリアミド酸溶液Aの95質量部に添加し分散し分散液を得た。この分散液を、20mm×50mmの方形容器に流し込み、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となった厚さ0.27mmポリアミド酸シート状物を得た。
得られたこのポリアミド酸シート状物を、窒素置換された熱処理炉において、第1段が180℃で4分、昇温速度1℃/秒で昇温して第2段として460℃で7分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈する20mm×50mmの大きさで厚さ0.2mmの実施例1のポリイミドシートA−1を得た。得られたシートの特性および評価結果を表1に示す。
【0056】
同様にして各製造例で得られたポリイミド粉末とポリアミド酸を使用してシートを得た、
得られた各シートの使用ポリイミド粉末種とポリアミド酸種、各シートの特性および評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
<実施例4〜7、比較例4〜5>
〔ポリイミドシートの製造〕
上記で得られたポリイミド粉末A1を、ポリアミド酸溶液Aに添加し分散し分散液を得た。この分散液を、20mm×50mmの方形容器に流し込み、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となった厚さ0.30mmポリアミド酸シート状物を得た。
得られたこのポリアミド酸シート状物を、窒素置換された熱処理炉において、第1段が180℃で4分、昇温速度4℃/秒で昇温して第2段として460℃で7分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈する20mm×50mmの大きさで厚さ0.2mmの実施例4のポリイミドシートA−1を得た。得られたシートの特性および評価結果を表1に示す。
同様にしてポリイミド粉末とポリアミド酸を使用してシートを得た、得られた各シートの使用ポリイミド粉末質量部とポリアミド酸質量部、各シートの特性および評価結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のポリイミド樹脂に特定量のポリイミド粉末を含有せしめた組成物からのシートは、耐熱性に優れ、剛性が充分に高められたシートであって、フレキシブルプリント配線板用補強板として極めて有用であり、それを用いたフレキシブルプリント配線板もまた耐熱性と機械的性能に優れたフレキシブルプリント配線板となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られる融点を有しないポリイミド樹脂40〜90質量%、および(B)芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られる融点を有しないポリイミドからなる体積平均粒子径Dが0.5〜50μmである粉末10〜60質量%とを含有する樹脂組成物から成形されたポリイミドシートであることを特徴とするフレキシブルプリント配線板用補強板。
【請求項2】
(A)のポリイミド樹脂が、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせから得られるポリイミド樹脂である請求項1記載のフレキシブルプリント配線板用補強板。
【請求項3】
(B)のポリイミド樹脂がベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせから得られるポリイミドの粉末である請求項1又は2いずれかに記載のフレキシブルプリント配線板用補強板。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のフレキシブルプリント配線板用補強板を使用したフレキシブルプリント配線板。

【公開番号】特開2007−194323(P2007−194323A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9662(P2006−9662)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】