説明

フレキシブルプリント配線板

【課題】特性インピーダンスの測定信頼度の高い測定用テストクーポンを配置したフレキシブルプリント配線板を提供する。
【解決手段】一面に回路パターン30が配置され、可撓性を有する絶縁基板10と、回路パターン30のエッチング時の絶縁基板10の移動方向に対して垂直方向に配置された測定用テストクーポン20a〜20fとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に関し、特にプリント配線板のインピーダンスを測定するための測定用テストクーポンを有するフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の品質を維持するためには、導体回路の特性インピーダンスを測定することが必要である。従来、導体回路の特性インピーダンスは、インピーダンス測定機に接続されたプローブを、プリント配線板の測定用テストクーポンに接触させて電気信号を発信し受信することにより測定されている。
【0003】
近年、コンピュータ等の処理速度の向上に伴い、信号が流れるプリント配線板の性能に対する要求も厳しくなってきている。このため、プリント配線板に生じ得る特性インピーダンスを正確に把握するために、導体回路幅とテストクーポンの回路幅を一致させて特性インピーダンスの測定信頼度を高める発明が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、電子機器の小型・軽量・薄型化の要求に伴い用いられる機会が増加した可撓性を有するフレキシブル基板を用いたプリント配線板は、硬質のリジット基板と比較して基板の厚さが薄いために、サブトラエッチング法によるパターン形成時に、テストクーポンが配置される回路方向・回路の配置位置、基板の表裏によってインピーダンスの違いが生じてしまうことがある。
【特許文献1】特開2005−197556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特性インピーダンスの測定信頼度の高い測定用テストクーポンを配置したフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の一態様によれば、一面に回路パターンが配置され、可撓性を有する絶縁基板と、回路パターンのエッチング時の絶縁基板の移動方向に対して垂直方向に配置された測定用テストクーポンとを備えるフレキシブルプリント配線板であることを要旨とする。
【0007】
本願発明の他の態様によれば、一面に回路パターンが配置され、可撓性を有する絶縁基板と、エッチング時の絶縁基板の移動方向に対して平行方向に配置された測定用テストクーポンとを備え、絶縁基板の前記測定用テストクーポンが配置された面にエッチング液が溜まらないようにエッチングされるフレキシブルプリント配線板であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特性インピーダンスの測定信頼度の高い測定用テストクーポンを配置したフレキシブルプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
本発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線板は、図1に示すように、一面に回路パターン30が配置され、可撓性を有する絶縁基板10と、回路パターン30のエッチング時の絶縁基板10の移動方向に対して垂直方向に配置された測定用テストクーポン20a〜20fとを備える。また、実施の形態に係るフレキシブルプリント配線板は、エッチング時の前記絶縁基板の移動方向に対して平行方向に配置された測定用テストクーポン20g〜20oも備える。
【0011】
絶縁基板10は、図2に示すように、一面に回路パターン30が配置され、もう一方の面にグラウンド32がそれぞれ接着剤40を介して配置されている。回路パターン30の接続端子部を除いた箇所、及びグラウンド32上にはそれぞれ、接着後も優れた柔軟性を有する絶縁性のポリイミドフィルム等を基材にしたカバーレイやレジストの保護層50が接着剤42を介して配置される。保護層50で保護されていない回路パターン30の接続端子部等の露出している導体には、プリフラックス処理、ホットエアレベラ(HAL)、電解半田めっき、及び無電解半田めっき等で表面処理が行われる。
【0012】
絶縁基板10としては、例えばポリイミド基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板等の可撓性を有するフレキシブル基板を用いることができる。絶縁基板10の厚さは、25μm、12.5μm、8μm、6μm等を採用することができる。
【0013】
回路パターン30は、絶縁基板10上に圧延銅箔または電解銅箔等をパターン加工して形成される。回路パターン30には、銅箔以外の金属箔を導体として使うことも可能である。回路パターン30のパターン幅は10〜500μmを採用することができ、好ましくは50〜300μm、更に好ましくは70〜150μmとする。回路パターン30の厚さは、33μm、18μm、12μm、9μm等を採用することができる。回路パターン30のピッチ幅は10〜500μmを採用することができ、好ましくは、70〜250μm、更に好ましくは100〜200μmとする。回路パターン30の間には、補助導線(図示せず)が配線されることがある。補助導線は、裏面のグラウンド32へスルーホールで接続され、回路パターン30間のノイズを防ぐ。
【0014】
グラウンド32は、回路パターン30で発生するノイズ等を防ぐために設けられている。グラウンド32は、フレキシブルプリント配線板の屈曲性を損なわないためにメッシュ構造が好ましい。グラウンド32のパターン幅は10〜500μmを採用することができ、好ましくは70〜250μm、更に好ましくは100〜200μmとする。グラウンド32の厚さは、33μm、18μm、12μm、9μm等を採用することができる。
【0015】
測定用テストクーポン20a〜20oは、図3に示すように、インピーダンスを測定する測定器を接触させる導体の測定パッド22と、測定パッド22に接続され、単一の信号線である測定回路24と、測定回路24を挟むように配置されたダミーパターン26を備える。ダミーパターン26は、非接地であり、測定回路24を回路パターン30と同等の仕上がりを得るために配置される。ダミーパターン26の線幅は、回路パターン30の線幅に合わせることが好ましい。
【0016】
サブトラエッチング法によるエッチング時の絶縁基板10の移動方向に対して垂直方向(TD方向)に配置された測定用テストクーポン20a〜20f、及びエッチング時の絶縁基板10の移動方向に対して平行方向(MD方向)に配置された測定用テストクーポン20g〜20oは、形成条件が異なる。測定用テストクーポン20a〜20fは、エッチング時の回路面の向きが上向きでも下向きでも構わない。一方、測定用テストクーポン20g〜20oは、エッチング時の回路面の向きを下向きにして形成する。測定用テストクーポン20g〜20o回路面の向きを下向きにしてエッチングするのは、回路面にエッチング液が溜まることによってエッチングがされすぎるのを防ぐためである。エッチング液としては、塩化第二銅、塩化第二鉄、過硫酸塩類、過酸化水素/硫酸、及びアルカリエッチャント等の水溶液を用いることができる。
【0017】
(実施例1)
以下に、測定用テストクーポン20a〜20f、及び測定用テストクーポン20g〜20oの形成条件を変える理由を実施例1を踏まえて説明する。まず、測定回路24の回路幅が75μmの測定用テストクーポンが配置されたフレキシブルプリント配線板を用意する。フレキシブルプリント配線板の構成の具体的数値を図2を参照して説明すると、絶縁基板10として厚さが25μmのポリイミド基板、測定用テストクーポン20a〜20o及びグラウンド32として接着剤40の厚さ10μmで接着した厚さ33μmの銅箔、保護層50として接着剤42の厚さ20μmで接着した厚さ12.5μmのポリイミドフィルムとする。
【0018】
測定用テストクーポン20a〜20oの形成条件は、サブトラエッチング法によるエッチング時の絶縁基板10の移動方向に対しての向き(TD方向、又はMD方向)、エッチング時のエッチング液の添加方法(回路面上向き、又は回路面下向き)とする。エッチング時のエッチング液の添加方法として、回路面上向き、又は回路面下向きとするのは、エッチングマシーンでエッチングした際に、測定用テストクーポン20a〜20oのエッチング結果に差が出るのか比較するためである。
【0019】
上記した形成条件を変えて形成した測定用テストクーポンの回路幅とインピーダンスの関係を示すグラフを図4に示す。図4に示した結果から、エッチング時に回路面上向きで絶縁基板10の移動方向に対して測定用テストクーポンの配置がMD方向の場合、回路幅は50〜60μmとなり、他の形成条件の回路幅である75μm±10μmと大きく異なる。また、インピーダンスも同様に、他の形成条件と比して高い値を示し、大きく異なる。つまり、絶縁基板10の移動方向に対して測定用テストクーポンの配置がMD方向の場合、回路面上向きにしてエッチングを行うとエッチング液が溜まることで測定用テストクーポンの測定回路24がエッチングされすぎてインピーダンスが高くなってしまう。
【0020】
したがって、絶縁基板10の移動方向に対して測定用テストクーポンの配置がTD方向の場合、エッチング時の回路面が上向きでも下向きでも、回路幅は同じ傾向になり、インピーダンスも一致する。また、絶縁基板10の移動方向に対して測定用テストクーポンの配置がMD方向の場合、エッチング時の回路面が下向きで行われることで、配置がTD方向の場合と回路幅が一致して、インピーダンスも一致する。
【0021】
(実施例2)
特性インピーダンスが55Ωになるように、測定用テストクーポンの測定回路24の回路幅を70μmに設計し、回路のピッチ幅を60μmから250μmまで変化させてインピーダンスを測定する。
【0022】
使用するフレキシブルプリント配線板の構成の具体的数値を図2を参照して説明すると、絶縁基板10として厚さが25μmのポリイミド基板、測定用テストクーポン20a〜20o及びグラウンド32として接着剤40の厚さ10μmで接着した厚さ18μmの銅箔、保護層50として接着剤42の厚さ25μmで接着した厚さ12.5μmのポリイミドフィルムとする。
【0023】
実施例の結果として、特性インピーダンスと回路ピッチ幅との関係を示すグラフを図5に示す。図5に示した結果から、回路ピッチ幅が100μmより小さくなると、インピーダンスが小さくなる傾向がある。一方、回路ピッチ幅が100μmより大きくなっていっても、インピーダンスは変化しない。
【0024】
したがって、測定用テストクーポン20a〜20oの測定回路24とダミーパターン26のピッチ幅を100μm以上とし、回路パターン30の回路ピッチ幅も100μm以上とすれば、測定用テストクーポン20a〜20oと回路パターン30のインピーダンスが一致することになる。測定回路24とダミーパターン26のピッチ幅、及び回路パターン30のピッチ幅は、測定用テストクーポン20a〜20oの占有面積を小さくするために250μmを上限とすることが好ましく、200μmを上限とすることは更に好ましい。
【0025】
本発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線板によれば、絶縁基板10の移動方向に対して測定用テストクーポンの配置をTD方向にすることにより、回路パターン30のインピーダンスと測定用テストクーポン20a〜20fのインピーダンスが一致するので、測定用テストクーポン20a〜20fのインピーダンスを管理することで回路パターン30のインピーダンスも管理することが可能になる。
【0026】
また、本発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線板によれば、絶縁基板10の移動方向に対して測定用テストクーポンの配置がMD方向の場合、エッチング時にエッチング液を溜めないように回路面を下向きにしてエッチングを行うことで、回路パターン30のインピーダンスと測定用テストクーポン20g〜20oのインピーダンスが一致するので、測定用テストクーポン20g〜20oのインピーダンスを管理することで回路パターン30のインピーダンスも管理することが可能になる。
【0027】
更に、実施の形態に係るフレキシブルプリント配線板によれば、測定用テストクーポン20a〜20oの測定回路24とダミーパターン26のピッチ幅を100μm以上とし、回路パターン30の回路ピッチ幅も100μm以上とすれば、互いのインピーダンスの測定値が一致するので、測定用テストクーポン20a〜20oによるインピーダンス測定の信頼度を高くすることができる。
【0028】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。
【0029】
例えば、実施の形態における測定用テストクーポン20a〜20oは、すべて同様のサイズで記載したが、近傍の回路パターン30のパターン幅やピッチ幅に合わせて適宜サイズを変更しても構わない。
【0030】
また、実施の形態における測定用テストクーポン20g〜20oは、エッチング時の回路面の向きを下向きにして形成すると記載したが、エッチング時のエッチング液が回路面に溜まらなければ、回路面が垂直でもよく、回路面が完全に下向きではなくて斜めであっても構わない。
【0031】
この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線板の模式的平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント配線板の模式的断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る測定用テストクーポンを示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る測定用テストクーポンの回路幅とインピーダンスの関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態に係る測定用テストクーポンの特性インピーダンスと回路ピッチ幅との関係を示すグラフある。
【符号の説明】
【0033】
10…絶縁基板
20a〜20o…測定用テストクーポン
22…測定パッド
24…測定回路
26…ダミーパターン
30…回路パターン
32…グラウンド
40,42…接着剤
50…保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に回路パターンが配置され、可撓性を有する絶縁基板と、
前記回路パターンのエッチング時の前記絶縁基板の移動方向に対して垂直方向に配置された測定用テストクーポン
とを備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
一面に回路パターンが配置され、可撓性を有する絶縁基板と、
エッチング時の前記絶縁基板の移動方向に対して平行方向に配置された測定用テストクーポン
とを備え、前記絶縁基板の前記測定用テストクーポンが配置された面にエッチング液が溜まらないようにエッチングされることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記測定用テストクーポンは、
インピーダンスを測定する測定器を接触させる導体の測定パッドと、
前記測定パッドに接続され、単一の信号線である測定回路と、
前記測定回路を挟むように配置された非接地のダミーパターン
とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記測定回路と前記ダミーパターンのピッチ幅は、100μm以上、250μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記回路パターンのピッチ幅は、100μm以上、250μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−234826(P2007−234826A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53909(P2006−53909)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】