説明

フレキシブルプリント配線板

【課題】電気回路から発生する電磁波ノイズを好適に遮断できると共に、カバーレイ等の絶縁層を厚肉な設計にする場合でも、電磁波シールド層の破断を効果的に防止することができ、良好な電気特性を維持することができるフレキシブルプリント配線板の提供を課題とする。
【解決手段】基材層10と、導電層20と、絶縁層30と、電磁波シールド層40とを備えると共に、絶縁層30の一部を取り除いた状態で、絶縁層30に形成される段差部Dの下に露出する導電層20からなる電極部Eを備えるフレキシブルプリント配線板1であって、段差部Dを、電極部Eへと向かう複数の階段状の段差面若しくは/及び電極部Eへと向かう1乃至複数の傾斜面として形成し、且つ段差部Dに沿って電磁波シールド層40を屈曲させた状態で、電磁波シールド層40と電極部Eとを導電性接着剤を介して電気接続させてあることを特徴とするフレキシブルプリント配線板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路から発生する電磁波ノイズを好適に遮断(シールド)できると共に、電磁波シールド層の破断を効果的に防止することができ、良好な電気特性を維持することができるフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に内蔵されるフレキシブルプリント配線板の電気回路から発生する電磁波ノイズは、他の電気回路や電気製品、人体等へ好ましくない影響を与えることがある。
そこで従来より、電磁波ノイズを遮断する電磁波シールド層をフレキシブルプリント配線板に設け、発生する電磁波ノイズの外部への漏出を防止するものが開発されている。
このような電磁波シールド層を備えるフレキシブルプリント配線板は、金属膜層と、導電性接着剤層とを備える樹脂からなるフィルムを、フレキシブルプリント配線板を構成する絶縁層及び導電層の表面に貼り付けることで形成されるものが一般的である。
またフレキシブルプリント配線板を構成するカバーレイ等の絶縁層の一部を取り除く(開口部等を設ける)ことで、絶縁層に形成される段差部の下に露出する導電層を電極等とすると共に、金属膜層、導電性接着剤層を備える樹脂からなるフィルムを段差部に沿って屈曲させた状態で電極等に貼り付けることで、電極等と金属膜層とを電気接続させ、グランド配線回路たる導電層と、金属膜層とで共振回路を形成し、発生した電磁波ノイズを遮断するものが一般的である。
このような電磁波ノイズを遮断する電磁波シールド層を備えるフレキシブルプリント配線板を示す従来技術として、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−7589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム及びその製造方法に関する発明で、接着剤層が薄い場合であっても、接着剤層と金属膜との接着力が優れ、フレキシブルプリント配線板との貼り合わせの際の熱プレス等により剥離の問題を生じることがないメリットがある。
しかし近年、電子機器の高密度化、高機能化、多様化等に伴い、フレキシブルプリント配線板の良好な電気特性を維持するためには、カバーレイ等の絶縁層を厚肉な設計にする必要性が生じてきている。
このようなカバーレイ等の絶縁層を厚肉な設計にする場合、フィルム状の電磁波シールド層を段差部に沿って屈曲させた状態で電極等に貼り付ける際に、電磁波シールド層に過度な応力が負荷されることで、金属膜層や導電性接着剤層に破断が生じ、電磁波シールド特性の低下やグランド接続の信頼性低下が生じるという問題がある。
しかし上記特許文献1には、このような問題を解決できるような構成はなく、またそのような記載や示唆も何らなされていないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、電気回路から発生する電磁波ノイズを好適に遮断できると共に、カバーレイ等の絶縁層を厚肉な設計にする場合でも、電磁波シールド層の破断を効果的に防止することができ、良好な電気特性を維持することができるフレキシブルプリント配線板の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、基材層と、該基材層上に積層される導電層と、該導電層上に積層される絶縁層と、該絶縁層上に積層される電磁波シールド層とを備えると共に、前記絶縁層の一部を取り除いた状態で、該絶縁層に形成される段差部の下に露出する前記導電層からなる電極部を備えるフレキシブルプリント配線板であって、前記段差部を、前記電極部へと向かう複数の階段状の段差面若しくは/及び前記電極部へと向かう傾斜面として形成し、且つ該段差部に沿って前記電磁波シールド層を屈曲させた状態で、該電磁波シールド層と前記電極部とを導電性接着剤を介して電気接続させてあることを第1の特徴としている。
【0007】
上記本発明の第1の特徴によれば、フレキシブルプリント配線板は、基材層と、該基材層上に積層される導電層と、該導電層上に積層される絶縁層と、該絶縁層上に積層される電磁波シールド層とを備えると共に、前記絶縁層の一部を取り除いた状態で、該絶縁層に形成される段差部の下に露出する前記導電層からなる電極部を備えるフレキシブルプリント配線板であって、前記段差部を、前記電極部へと向かう複数の階段状の段差面若しくは/及び前記電極部へと向かう傾斜面として形成し、且つ該段差部に沿って前記電磁波シールド層を屈曲させた状態で、該電磁波シールド層と前記電極部とを導電性接着剤を介して電気接続させてあることから、電磁波シールド層を設けることで、電気回路から発生する電磁波ノイズを好適に遮断(シールド)することができる。また絶縁層を厚肉な設計にする場合でも、電磁波シールド層に過度な応力が負荷されることを効果的に防止することができる。よって電磁波シールド層の破断が生じることを防止することができ、良好な電気特性を維持することができる。
【0008】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1の特徴に加えて、前記絶縁層は、絶縁性接着剤からなる絶縁性接着剤層と、該絶縁性接着剤層上に積層される絶縁性樹脂からなる絶縁性樹脂層とからなると共に、前記段差部を構成する階段状の段差面は、前記絶縁性樹脂層の端面と、該絶縁性樹脂層の端面よりも突出する前記絶縁性接着剤層の端面とからなることを第2の特徴としている。
【0009】
上記本発明の第2の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、前記絶縁層は、絶縁性接着剤からなる絶縁性接着剤層と、該絶縁性接着剤層上に積層される絶縁性樹脂からなる絶縁性樹脂層とからなると共に、前記段差部を構成する階段状の段差面は、前記絶縁性樹脂層の端面と、該絶縁性樹脂層の端面よりも突出する前記絶縁性接着剤層の端面とからなることから、段差部を構成する階段状の段差面を容易に形成することができる。
【0010】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1又は第2の特徴に加えて、前記絶縁層は、絶縁性接着剤からなる絶縁性接着剤層と、該絶縁性接着剤層に積層される絶縁性樹脂からなる絶縁性樹脂層とからなると共に、前記段差部を構成する傾斜面は、前記絶縁性接着剤層の端部よりも突出する前記絶縁性樹脂層の端部を、前記電極部へ向けて屈曲させてなることを第3の特徴としている。
【0011】
上記本発明の第3の特徴によれば、上記本発明の第1又は第2の特徴による作用効果に加えて、前記絶縁層は、絶縁性接着剤からなる絶縁性接着剤層と、該絶縁性接着剤層に積層される絶縁性樹脂からなる絶縁性樹脂層とからなると共に、前記段差部を構成する傾斜面は、前記絶縁性接着剤層の端部よりも突出する前記絶縁性樹脂層の端部を、前記電極部へ向けて屈曲させてなることから、絶縁層を厚肉な設計にする場合でも、電磁波シールド層に過度な応力が負荷されることを一段と効果的に防止することができる。よって電磁波シールド層の破断が生じることを一段と防止することができ、良好な電気特性を維持することができる。また段差部を構成する傾斜面を容易に形成することができる。
【0012】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1〜第3の何れか1つの特徴に加えて、前記絶縁層は、絶縁性接着剤からなる絶縁性接着剤層と、該絶縁性接着剤層に積層される絶縁性樹脂からなる絶縁性樹脂層とからなると共に、前記段差部を構成する傾斜面は、前記絶縁性樹脂層における前記電極部の側の端部を傾斜切断させてなることを第4の特徴としている。
【0013】
上記本発明の第4の特徴によれば、上記本発明の第1〜第3の何れか1つの特徴による作用効果に加えて、前記絶縁層は、絶縁性接着剤からなる絶縁性接着剤層と、該絶縁性接着剤層に積層される絶縁性樹脂からなる絶縁性樹脂層とからなると共に、前記段差部を構成する傾斜面は、前記絶縁性樹脂層における前記電極部の側の端部を傾斜切断させてなることから、絶縁層を厚肉な設計にする場合でも、電磁波シールド層に過度な応力が負荷されることを一段と効果的に防止することができる。よって電磁波シールド層の破断が生じることを一段と防止することができ、良好な電気特性を維持することができる。また段差部を構成する傾斜面を容易に形成することができる。
【0014】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1〜第4の何れか1つの特徴に加えて、前記導電性接着剤は、異方導電性接着剤であることを第5の特徴としている。
【0015】
上記本発明の第5の特徴によれば、上記本発明の第1〜第4の何れか1つの特徴による作用効果に加えて、前記導電性接着剤は、異方導電性接着剤であることから、加圧方向においては良好な導電性と接着性とを実現することができ、同時に非加圧方向においては、良好な絶縁性と接着性とを実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフレキシブルプリント配線板によれば、電気回路から発生する電磁波ノイズを好適に遮断できると共に、カバーレイ等の絶縁層を厚肉な設計にする場合でも、電磁波シールド層の破断を効果的に防止することができ、良好な電気特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を示す断面図で、(a)はフレキシブルプリント配線板の要部を示す断面図、(b)は磁気シールド層の要部を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を簡略化して示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法を簡略化して示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の変形例の要部を示す断面図である。
【図5】従来のフレキシブルプリント配線板の要部を示す断面図で、(a)はフレキシブルプリント配線板の要部を示す断面図、(b)は磁気シールド層に破断が生じた状態を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。
【0019】
まず図1〜図3を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を説明する。
【0020】
本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1は、携帯電話等の電子機器の内部に配設される、いわゆる片面フレキシブルプリント配線板である。
このフレキシブルプリント配線板1は、図1に示すように、基材層10と、導電層20と、絶縁層30と、磁気シールド層40とから構成される。
【0021】
前記基材層10は、フレキシブルプリント配線板1の基台となるものであり、絶縁性の樹脂フィルムで形成されている。
樹脂フィルムとしては、柔軟性に優れた樹脂材料からなるものが使用される。例えばポリイミドフィルムやポリエステルフィルム等、フレキシブルプリント配線板の基材を形成する樹脂フィルムとして通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
また特に、柔軟性に加えて高い耐熱性をも有しているものが望ましい。例えばポリアミド系の樹脂フィルムや、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系の樹脂フィルムや、ポリエチレンナフタレートを好適に用いることができる。
また耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等、フレキシブルプリント配線板を形成する耐熱性樹脂として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
なお基材層10の厚みは、10μm〜50μm程度とすることが望ましい。
【0022】
前記導電層20は、基材層10上に積層され、フレキシブルプリント配線板1の電極、配線回路等を構成する層である。
本実施形態においては、図1(a)に示すように、絶縁層30の一部を取り除いた状態で、絶縁層30に形成される段差部Dの下に露出する導電層20を電極部Eとすると共に、電極部Eと連通する導電層20を、いわゆるグランド配線回路としてある。
【0023】
この導電層20は、基材層10上に導電性金属箔をめっきを用いて積層することで形成することができる(いわゆるアディティブ法)。
また導電性金属箔としては、銅(Cu)を用いることができる。勿論、銅(Cu)に限るものではなく、プリント配線板の導電層を形成する導電性金属箔として通常用いられるものであれば、如何なるものであってもよい。
なお導電層20の厚みは、5μm〜35μm程度とすることが望ましい。
また導電層20に形成する電極部Eや配線回路の本数等は、本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0024】
前記絶縁層30は、主としてフレキシブルプリント配線板1の絶縁を確保するための層である。
本実施形態においては、絶縁層30を、導電層20上に積層されるカバーレイ層31と、カバーレイ層31上に積層される補強板層32との2層で形成する構成としてある。
【0025】
前記カバーレイ層31は、フレキシブルプリント配線板1の絶縁を確保するための層であり、絶縁性接着剤層31aと、絶縁性樹脂層31bとから構成される。
【0026】
前記絶縁性接着剤層31aは、絶縁性樹脂層31bを導電層20上に接着させるための接着剤層である。
なお絶縁性接着剤層31aを形成する絶縁性接着剤としては、エポキシ系接着剤等、フレキシブルプリント配線板を形成する絶縁性接着剤として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
【0027】
前記絶縁性樹脂層31bは、フレキシブルプリント配線板1の絶縁を確保するための層である。
なお絶縁性樹脂層31bを形成する絶縁性樹脂としては、ポリイミドフィルム等、フレキシブルプリント配線板におけるカバーレイ層を形成する絶縁性樹脂として通常用いられるものであれば、その材質、性状等は如何なるものを用いてもよい。
【0028】
前記補強板層32は、フレキシブルプリント配線板1の絶縁を確保すると共に、剛性を補強するための層であり、絶縁性接着剤層32aと、絶縁性樹脂層32bとから構成される。
【0029】
前記絶縁性接着剤層32aは、絶縁性樹脂層32bをカバーレイ層31上に接着させるための接着剤層である。
なお絶縁性接着剤層32aを形成する絶縁性接着剤としては、既述した絶縁性接着剤層31aを形成する絶縁性接着剤と同様のものを用いることができる。
【0030】
前記絶縁性樹脂層32bは、フレキシブルプリント配線板1の絶縁を確保すると共に、フレキシブルプリント配線板1の剛性を確保するための層である。
なお絶縁性樹脂層32bを形成する絶縁性樹脂としては、既述した絶縁性樹脂層31bと同様のものを用いることができる。
【0031】
なお本実施形態においては、図1(a)に示すように、カバーレイ層31を補強板層32よりも電極部E側へと突出させることで、カバーレイ層31における電極部E側の端面T1を、補強板層32における電極部E側の端面T2よりも突出させてある。これにより、段差部Dに端面T1からなる段差D1と、端面T2からなる段差D2との2つの段差を設け、段差部Dを電極部Eへと向かう複数の階段状の段差面として形成してある(本実施形態においては、2つの階段状の段差面)。
なお、ここで及び以下の説明において「階段状の段差面」とは、例えば図1(a)を参照して、絶縁性樹脂層32bの表面、端面T2、絶縁性樹脂層31bの表面の3面で形成される略Z字の階段状の段差面を、1つの階段状の段差面とするものとする。
なお絶縁層30の総厚みは、20μm〜200μm程度とすることが望ましい。
【0032】
前記電磁波シールド層40は、フレキシブルプリント配線板1の配線回路から発生する電磁波のノイズを遮断(シールド)すると共に、インピーダンス整合を実現させるための層である。
この電磁波シールド層40は、図1(b)に示すように、樹脂フィルム層41と、金属膜層42と、導電性接着剤層43とから構成される。
【0033】
前記樹脂フィルム層41は、電磁波シールド層40の基材となるものである。
なお樹脂フィルムとしては、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド等、電磁波シールド層40を形成する樹脂フィルムとして通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
また樹脂フィルム層41の厚みは、10μm〜100μm程度とすることが望ましい。
【0034】
前記金属膜層42は、導電性接着剤層43を介して電極部Eと電気接続されることで、グランド配線回路と共振回路を形成し、フレキシブルプリント配線板1から発生する電磁波ノイズを遮断すると共に、インピーダンス整合を実現させるための層である。
なお金属膜層42を形成する導電性金属としては、銀、銅、金等、フレキシブルプリント配線板の電磁波シールド層を形成する導電性金属として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
またこの金属膜層42は、真空蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング等の公知の薄膜形成方法を用いて樹脂フィルム層41上に形成することができる。
また金属膜層42の厚みは、0.1μm程度とすることが望ましい。
【0035】
前記導電性接着剤層43は、金属膜層42を備える樹脂フィルム層41を、絶縁層30及び電極部Eの表面に接着させると共に、金属膜層42と電極部Eとを電気接続させるための層である。
本実施形態においては、図1(b)に示すように、絶縁性接着剤43aの中に導電性粒子43bを分散させてなる異方導電性接着剤を用いて導電性接着剤層43を形成している。
なお絶縁性接着剤43aとしては、エポキシ樹脂系接着剤等、異方導電性接着剤を構成する絶縁性接着剤として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
また導電性粒子43bとしては、ニッケル等、異方導電性接着剤を構成する導電性粒子として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよいし、その粒径や形状等も適宜変更可能である。
また導電性接着剤層43の性状は、シート状、ペースト状等、適宜変更可能である。
なお導電性接着剤層43の厚みは、1μm〜20μm程度とすることが望ましい。
以上の構成からなる電磁波シールド層40は、図1(a)に示すように、段差部Dに沿って屈曲された状態で、絶縁層30及び導電層20に圧着やラミネートされることで貼り付けられ、これによって金属膜層42と電極部Eとが電気接続されている。
【0036】
このような構成からなる本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1は、以下の効果を奏する。
まず電磁波シールド層40を備える構成とすることで、フレキシブルプリント配線板1の電気回路から発生する電磁波ノイズを遮断(シールド)することができ、発生する電磁波ノイズの外部への漏出を防止することができる。よって他の電気回路や電気製品、人体等へ好ましくない影響を与えることを防止することができる。またインピーダンス整合を実現することができる。
また絶縁層30に形成される段差部Dを、電極部Eへと向かう複数の階段状の段差面(本実施形態においては2つの階段状の段差面)として形成すると共に、段差部Dに沿って電磁波シールド層40を屈曲させた状態で絶縁層30及び導電層20に貼り付ける構成とすることで、絶縁層30を厚肉な設計にする場合でも、段差部Dを複数の段差(本実施形態においては2つの段差)に分割させた状態で形成することができる。
よって段差部Dの電極部Eに対する勾配が急勾配(90度)であっても、フレキシブルプリント配線板1の製造時において、電磁波シールド層40を段差部Dに沿って電極部Eに押し込む際、段差部Dに対する電磁波シールド層40の押し込み量を複数の段差に分散させることができ、1つの段差に対する電磁波シールド層40の押し込み量を緩和させることができる。
よって1つの段差に対する電磁波シールド層40の伸びを小さくすることができ、電磁波シールド層40に過度な応力が負荷されることを効果的に防止することができる。従って電磁波シールド層40の破断、特に金属膜層42に破断が生じることを防止することができ、良好な電気特性を維持することができる。
またフレキシブルプリント配線板1の使用時においても電磁波シールド層40に過度な応力が負荷されることを効果的に防止することができ、電磁波シールド層40の破断、特に金属膜層42に破断が生じることを防止することができる。従って良好な電気特性を維持することができる。
またカバーレイ層31における電極部E側の端面T1を、補強板層32における電極部E側の端面T2よりも突出させることで、段差部Dを電極部Eへと向かう階段状の段差面として形成する構成とすることで、階段状の段差面を容易に形成することができる。
また導電性接着剤層43を異方導電性接着剤で形成する構成とすることで、電磁波シールド層40において、導電性接着剤層43が加圧される加圧方向(垂直方向)においては良好な導電性及び接着性を実現することができ、同時に導電性接着剤層43が加圧されることのない非加圧方向(水平方向)においては良好な絶縁性及び接着性を実現することができる。
【0037】
これに対して、図5に示す電磁波シールド層400を備える従来のフレキシブルプリント配線板2においては、絶縁層300に形成される段差部Dを、電極部Eに対して垂直な1つの平面のみで構成するものが一般的であった。
よってこのような構成からなる従来のフレキシブルプリント配線板2においては、絶縁層300を厚肉な設計にする場合(具体的には70μm程度以上の厚みとする場合)、段差部Dの電極部Eに対する勾配が急勾配(90度)となると共に、段差部Dの長さが長いものとなる。
よってフレキシブルプリント配線板2の製造時において、電磁波シールド層400を段差部Dに沿って電極部Eに押し込む際、1つの平面からなる段差に対する電磁波シールド層400の押し込み量が大きなものとなる。よって電磁波シールド層400の伸びが大きくなり、電磁波シールド層400に過度な応力が負荷されることで、金属膜層420や樹脂フィルム層410、導電性接着剤層430に破断Hが生じ、電磁波シールド特性の低下やグランド接続の信頼性低下が生じるという問題があった。
【0038】
従って本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1の構成とすることで、絶縁層30を厚肉な設計にする場合でも、電磁波シールド層40に過度な応力が負荷されることを効果的に防止することができる。よって電磁波シールド層40の破断、特に金属膜層42に破断が生じることを防止することができる。従って、良好な電気特性を維持することができる。
【0039】
次に図2、図3を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1の製造方法を説明する。
本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1は、いわゆるアディティブ法を用いて製造される。
【0040】
まず図2(a)を参照して、ポリイミドフィルム等の絶縁性の樹脂フィルムからなる基材層10を準備する。
次に図2(b)を参照して、基材層10上に、グランド配線回路、電極部等を構成する導電層20を形成する。より具体的には、公知の形成方法を用いて、基材層10上に下地となる導体薄膜(図示しない)を形成し、その上にめっきレジスト(図示しない)を形成する。その後、めっきレジストから露出する導体薄膜の表面に銅を用いて無電解めっき、電解めっき等の公知のめっき法により導電層を形成した後、めっきレジスト及びめっきレジストが形成されていた部分の導体薄膜をエッチング等により除去する。これにより、グランド配線回路及び電極部E等を備える導電層20が形成される。
次に図2(c)を参照して、導電層20上の所定位置に、絶縁性接着剤からなる絶縁性接着剤層31aと、絶縁性樹脂からなる絶縁性樹脂層31bとを順次積層することで、導電層20上にカバーレイ層31を形成する。この際、絶縁層30の一部を取り除いた状態で、絶縁層30に形成される段差部Dの下に導電層20からなる電極部Eが露出するようにカバーレイ層31を形成する。
【0041】
次に図3(a)を参照して、カバーレイ層31上の所定位置に、絶縁性接着剤からなる絶縁性接着剤層32aと、絶縁性樹脂からなる絶縁性樹脂層32bとを順次積層することで、カバーレイ層31上に補強板層32を形成する。この際、カバーレイ層31の端面T1が、補強板層32の端面T2よりも電極部Eの側へと突出するように補強板層32を形成する。これにより段差部Dが階段状の段差面として形成される。
次に図3(b)を参照して、絶縁層30及び電極部Eの上方に電磁波シールド層40を準備し、追圧手段50を用いて、段差部Dに沿って電磁波シールド層40を屈曲させて絶縁層30及び電極部Eに貼り付ける(圧着させる)。これにより絶縁層30及び電極部Eの表面に電磁波シールド層40が形成されると共に、金属膜層42と電極部Eとが導電性接着剤層43を介して電気接続される。
以上の工程により、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1が製造される。
【0042】
次に図4を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1の変形例1〜3を説明する。
【0043】
まず図4(a)を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1の変形例1を説明する。
本変形例1は、既述した本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1における段差部Dの構成を変化させたものである。その他の構成は、既述した本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1と同一であることから、同一部材、同一機能を果たすものには、同一番号を付し、以下の詳細な説明は省略するものとする。
【0044】
図4(a)に示すように、本変形例1は、絶縁性接着剤層31a及び絶縁性接着剤層32aを形成する絶縁性接着剤を、絶縁性樹脂層31b及び絶縁性樹脂層32bの端部よりも電極部E側へと意図的に流出させることで、絶縁性接着剤層31aの端面T3を絶縁性樹脂層31bの端面T4よりも突出させてカバーレイ層31を形成し、且つ絶縁性接着剤層32aの端面T5を絶縁性樹脂層32bの端面T6よりも突出させて補強板層32を形成してある。
これにより、段差部Dに端面T3からなる段差D3と、端面T4からなる段差D4と、端面T5からなる段差D5と、端面T6からなる段差D6との4つの段差を設け、段差部Dを電極部Eへと向かう複数の階段状の段差面として形成してある(本変形例1においては4つの階段状の段差面)。
【0045】
このような構成とすることで、絶縁層30を厚肉な設計にする場合でも、段差部Dを複数の段差(本実施形態においては4つの段差)に分割させた状態で形成することができる。
よって段差部Dの電極部Eに対する勾配が急勾配(90度)であっても、フレキシブルプリント配線板3の製造時において、電磁波シールド層40を段差部Dに沿って電極部Eに押し込む際、段差部Dに対する電磁波シールド層40の押し込み量を複数の段差に一段と分散させることができ、1つの段差に対する電磁波シールド層40の押し込み量を一段と緩和させることができる。
よって1つの段差に対する電磁波シールド層40の伸びを一段と小さくすることができ、電磁波シールド層40に過度な応力が負荷されることを一段と効果的に防止することができる。
よって絶縁層30を厚肉な設計にする場合でも、電磁波シールド層40の破断、特に金属膜層42に破断が生じることを一段と防止することができ、一段と良好な電気特性を維持することができる。
またフレキシブルプリント配線板1の使用時においても電磁波シールド層40に過度な応力が負荷されることを効果的に防止することができ、電磁波シールド層40の破断、特に金属膜層42に破断が生じることを防止することができる。従って一段と良好な電気特性を維持することができる。
なお絶縁性接着剤層31a及び絶縁性接着剤層32aを形成する絶縁性接着剤を、絶縁性樹脂層31b及び絶縁性樹脂層32bの端部よりも電極部E側へと流出させる方法としては、例えば絶縁性樹脂層31b及び絶縁性樹脂層32bの、絶縁性接着剤層31a及び絶縁性接着剤層32aに対する加圧条件の調整をあげることができる。勿論、これに限るものではなく、絶縁性接着剤層31a及び絶縁性接着剤層32aを、絶縁性樹脂層31b及び絶縁性樹脂層32bの端部よりも電極部E側へと流出させることができるものであれば、如何なる方法を用いてもよい。
【0046】
次に図4(b)を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1の変形例2を説明する。
【0047】
本変形例2は、既述した本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1における段差部Dの構成を変化させたものである。その他の構成は、既述した本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1と同一であることから、同一部材、同一機能を果たすものには、同一番号を付し、以下の詳細な説明は省略するものとする。
【0048】
図4(b)に示すように、本変形例2は、補強板層32において、絶縁性接着剤層32aの端部よりも突出する絶縁性樹脂層32bの端部を、電極部Eへ向けて屈曲させることで、段差部Dを電極部Eへと向かう傾斜面Kとして形成してある。
このような構成とすることで、電磁波シールド層40を沿わせて屈曲させる段差部Dの電極部Eに対する勾配を緩和させる(90度未満とする)ことができる。よって絶縁層30を厚肉な設計にする場合でも、フレキシブルプリント配線板4の製造時及び使用時において電磁波シールド層40に負荷される応力を一段と緩和させることができると共に、傾斜面Kの形成を容易なものとすることができる。
従って絶縁層30を厚肉な設計にする場合でも、製造時及び使用時において一段と容易且つ効果的に電磁波シールド層40の破断、特に金属膜層42に破断が生じることを防止することができる。よって一段と良好な電気特性を維持することができる。
【0049】
次に図4(c)を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1の変形例3を説明する。
【0050】
本変形例3は、既述した本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1における段差部Dの構成を変化させたものである。その他の構成は、既述した本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1と同一であることから、同一部材、同一機能を果たすものには、同一番号を付し、以下の詳細な説明は省略するものとする。
【0051】
図4(c)に示すように、本変形例3は、補強板層32において、絶縁性樹脂層32bにおける電極部Eの側の端部を傾斜切断させることで、段差部Dを電極部Eへと向かう傾斜面Kとして形成してある。
このような構成とすることで、電磁波シールド層40を沿わせて屈曲させる段差部Dの電極部Eに対する勾配を緩和させる(90度未満とする)ことができる。よって絶縁層30を厚肉な設計にする場合でも、フレキシブルプリント配線板5の製造時及び使用時において、電磁波シールド層40に負荷される応力を一段と緩和させることができると共に、傾斜面の形成を容易なものとすることができる。
従って絶縁層30を厚肉な設計にする場合でも、製造時及び使用時において一段と容易に電磁波シールド層40の破断、特に金属膜層42に破断が生じることを防止することができる。よって一段と良好な電気特性を維持することができる。
【0052】
なお本実施形態及びその変形例においては、フレキシブルプリント配線板として、いわゆる片面フレキシブルプリント配線板を用いる構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、両面フレキシブルプリント配線板を用いる構成としてもよい。
また本実施形態及びその変形例においては、導電性接着剤層43を異方導電性接着剤で形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、等方導電性接着剤で形成する構成としてもよい。
また本実施形態及びその変形例においては、いわゆるアディティブ法を用いてフレキシブルプリント配線板を製造する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、その他の製造方法を用いる構成としてもよい。例えばサブトラクティブ法を用いることができる。サブトラクティブ法を用いる構成とすることで、基材層10、導電層20、絶縁層30の厚みを均一化させ易く、良好な電気特性を実現することができるフレキシブルプリント配線板とすることができる。
また本実施形態及びその変形例においては、絶縁層30を、導電層20上に積層されるカバーレイ層31と、カバーレイ層31上に積層される補強板層32との2層で形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、絶縁層30の構成は適宜変更可能である。
また本実施形態及びその変形例においては、段差部Dを、電極部Eへと向かう階段状の段差面若しくは電極部Eへと向かう傾斜面Kの何れかで形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、段差部Dを、電極部Eへと向かう階段状の段差面と電極部Eへと向かう傾斜面Kとを組み合わせて形成する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、フレキシブルプリント配線板において、カバーレイ等の絶縁層の厚みを厚肉な設計にする場合でも、電磁波シールド層に過度な応力が負荷されることを効果的に防止することができる。よって電磁波シールド層に破断が生じることを防止することができ、良好な電気特性を維持することができることから、電磁波シールド層を備えるフレキシブルプリント配線板の分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0054】
1 フレキシブルプリント配線板
2 フレキシブルプリント配線板
3 フレキシブルプリント配線板
4 フレキシブルプリント配線板
5 フレキシブルプリント配線板
10 基材層
20 導電層
30 絶縁層
31 カバーレイ層
31a 絶縁性接着剤層
31b 絶縁性樹脂層
32 補強板層
32a 絶縁性接着剤層
32b 絶縁性樹脂層
40 電磁波シールド層
41 樹脂フィルム層
42 金属膜層
43 導電性接着剤層
43a 絶縁性接着剤
43b 導電性粒子
50 追圧手段
100 基材層
200 導電層
300 絶縁層
310 カバーレイ層
310a 絶縁性接着剤層
310b 絶縁性樹脂層
320 補強板層
320a 絶縁性接着剤層
320b 絶縁性樹脂層
400 電磁波シールド層
410 樹脂フィルム層
420 金属膜層
430 導電性接着剤層
430a 絶縁性接着剤
430b 導電性粒子
D 段差部
D1 段差
D2 段差
D3 段差
D4 段差
D5 段差
D6 段差
E 電極部
H 破断
K 傾斜面
T1 端面
T2 端面
T3 端面
T4 端面
T5 端面
T6 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、該基材層上に積層される導電層と、該導電層上に積層される絶縁層と、該絶縁層上に積層される電磁波シールド層とを備えると共に、前記絶縁層の一部を取り除いた状態で、該絶縁層に形成される段差部の下に露出する前記導電層からなる電極部を備えるフレキシブルプリント配線板であって、前記段差部を、前記電極部へと向かう複数の階段状の段差面若しくは/及び前記電極部へと向かう傾斜面として形成し、且つ該段差部に沿って前記電磁波シールド層を屈曲させた状態で、該電磁波シールド層と前記電極部とを導電性接着剤を介して電気接続させてあることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記絶縁層は、絶縁性接着剤からなる絶縁性接着剤層と、該絶縁性接着剤層上に積層される絶縁性樹脂からなる絶縁性樹脂層とからなると共に、前記段差部を構成する階段状の段差面は、前記絶縁性樹脂層の端面と、該絶縁性樹脂層の端面よりも突出する前記絶縁性接着剤層の端面とからなることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記絶縁層は、絶縁性接着剤からなる絶縁性接着剤層と、該絶縁性接着剤層に積層される絶縁性樹脂からなる絶縁性樹脂層とからなると共に、前記段差部を構成する傾斜面は、前記絶縁性接着剤層の端部よりも突出する前記絶縁性樹脂層の端部を、前記電極部へ向けて屈曲させてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記絶縁層は、絶縁性接着剤からなる絶縁性接着剤層と、該絶縁性接着剤層に積層される絶縁性樹脂からなる絶縁性樹脂層とからなると共に、前記段差部を構成する傾斜面は、前記絶縁性樹脂層における前記電極部の側の端部を傾斜切断させてなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記導電性接着剤は、異方導電性接着剤であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−227404(P2012−227404A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94674(P2011−94674)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】