説明

フレキシブル多層回路基板の製造方法

【課題】 熱による絶縁層の損傷を抑制して、層間の電気的な接続を行うことができるフレキシブル多層回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 フレキシブル多層回路基板1の製造方法は、第1絶縁層11と、第1導体層12とを有する第1回路層10、及び、第2絶縁層21と、第2導体層22とを有し、孔26a、26bが形成された第2回路層20、を準備する準備工程P1と、第1導体層12上の少なくとも1部に第2絶縁層21が配置されると共に、孔26a、26bが第1導体層12と重なるように、第2回路層20を第1回路層10上に積層する積層工程P2と、孔26a、26bを覆うように第2導体層22上にはんだ30a、10bを配置する配置工程P3と、はんだ30a、30bのみを直接的に加熱し、はんだ30a、30bを溶融させて、はんだ30a、30bを第1導体層12及び第2導体層22と接続させる加熱工程P4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル多層回路基板の製造方法に関し、特に、熱による絶縁層の損傷を抑制して、層間の電気的な接続を行うことができるフレキシブル多層回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)に代表される小型電子機器には、一般的に、絶縁層上に導体層が形成された回路層が複数積層される多層回路基板が用いられている。下記特許文献1に記載の多層回路基板においては、それぞれの絶縁層上に形成された導体層同士を電気的に接続する手段として、スルーホールめっきが用いられている。このスルーホールめっきは、絶縁層に形成された孔の壁面に金属めっきを施して、この金属めっきにより、それぞれの絶縁層上に形成された導体層同士を電気的に接続するものである。
【0003】
しかし、スルーホールめっきを多層回路基板に形成するには、高価な設備が必要であり、コストがかかるという問題がある。そこで、下記特許文献2に記載の多層プリント基板の製造方法においては、はんだを用いてそれぞれの絶縁層上に形成された導体層同士を電気的に接続している。
【0004】
具体的には、まず、絶縁層としての基板上に導体層が設けられた複数のプリント基板が、互いに積層された多層基板を準備する。この多層基板には、中間層におけるプリント基板の導体層と、表面におけるプリント基板の導体層とが重なる位置において、中間層におけるプリント基板の導体層が露出するように孔が形成されている。そして、この孔を覆うようにはんだを配置して、はんだが配置された多層基板をリフロー処理する。このリフロー処理によりはんだが溶融して、一部のはんだが孔に入り込む。こうして、はんだが中間層におけるプリント基板の導体層、及び、表面におけるプリント基板の導体層に接続されて、それぞれの導体層同士が、はんだを介して電気的に接続されるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−140989号公報
【特許文献2】特開2009−176843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載の多層基板を構成するそれぞれのプリント基板においては、耐熱性に優れた紙フェノール製や紙エポキシ製の基板上に導体層が形成されている。従って、リフロー処理を行う際、それぞれのプリント基板は然程損傷を受けない。ところで、近年電子機器の小型化に伴い狭い空間内に多層回路基板を配置したいという要請があり、可撓性を有するフレキシブル多層回路基板が用いられている。しかし、フレキシブル多層回路基板においては、それぞれの絶縁層が、樹脂から構成されており、通常、このような樹脂は耐熱性に劣っている。従って、上記特許文献2に記載の多層プリント基板の製造方法のようなリフロー処理を用いて、それぞれの導体の電気的な接続を行うと、それぞれの絶縁層が熱により損傷を受けて歪んでしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、熱による絶縁層の損傷を抑制して、層間の電気的な接続を行うことができるフレキシブル多層回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のフレキシブル多層回路基板の製造方法は、可撓性を有する第1絶縁層と、前記第1絶縁層の一方の面上に設けられる第1導体層とを有する第1回路層、及び、可撓性を有する第2絶縁層と、前記第2絶縁層の一方の面上に設けられる第2導体層とを有し、前記第2導体層及び前記第2絶縁層を貫通する孔が形成された第2回路層、を準備する準備工程と、前記第1導体層上の少なくとも一部に前記第2絶縁層が配置されると共に、前記孔が前記第1導体層と重なるように、前記第2回路層を前記第1回路層上に積層する積層工程と、前記孔を覆うように前記第2導体層上にはんだを配置する配置工程と、前記はんだのみ、または、前記はんだ及び前記第2導体層のみを直接的に加熱し、前記はんだを溶融させて、前記はんだを前記第1導体層及び前記第2導体層と接続させる加熱工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
このようなフレキシブル多層回路基板の製造方法によれば、第2回路層に形成された孔が第1導体層と重なるようにして、第2回路層が第1回路層上に積層されるため、この孔を介して第1導体層が露出する。そして、この孔を覆うようにして第2導体層上に配置されたはんだを溶融することで、溶融したはんだが孔から第1導体層上まで流れ込む。こうして第1導体層及び第2導体層がそれぞれはんだに接続されて、第1導体層と第2導体層とが、はんだを介して電気的に接続される。このとき、はんだのみ、または、はんだ及び第2導体層のみを直接的に加熱して、はんだを溶融する。つまり、はんだを溶融する際、第1絶縁層及び第2絶縁層は、加熱されたはんだ等から伝導する熱により加熱されることがあっても、はんだ等と同様に直接的には加熱されない。従って、絶縁層の温度の上昇が抑制される。こうして、絶縁層が熱に弱い材料から成る場合であっても、熱による絶縁層の損傷を抑制して、層間の電気的な接続を行うことができる。
【0010】
また、上記フレキシブル多層回路基板の製造方法における前記加熱工程おいて、前記はんだのみ、または、前記はんだ及び前記第2導体層のみに、レーザを照射して加熱することが好ましい。
【0011】
レーザは、狭小領域に照射することが可能であるため、このようなフレキシブル多層回路基板の製造方法によれば、加熱するはんだや第2導体層の領域が小さい場合であっても、はんだのみ、または、はんだ及び第2導体層のみをより適切に加熱することができる。
【0012】
また、上記フレキシブル多層回路基板の製造方法における前記加熱工程において、前記はんだのみ、または、前記はんだ及び前記第2導体層のみに、抵抗により加熱した加熱体を接触させて加熱することが好ましい。
【0013】
このようなフレキシブル多層回路基板の製造方法によれば、加熱体を直接はんだや第2導体層に接触させるため、加熱するはんだや第2導体層の領域が小さい場合であっても、はんだのみ、または、はんだ及び第2導体層のみをより適切に加熱することができる。
【0014】
また、上記フレキシブル多層回路基板の製造方法における前記加熱工程の前において、前記多層基板の上に、前記はんだのみ、または、前記はんだ及び前記第2導体層のみが露出する開口が形成されたマスクを重ねるマスキング工程を更に備え、前記加熱工程において、放射熱による加熱を行うことが好ましい。
【0015】
このようなフレキシブル多層回路基板の製造方法によれば、放射熱により広い領域を一度に加熱することができる。このとき多層基板の絶縁層はマスクにより保護されているため、放射熱により直接加熱されず、マスクの開口から露出しているはんだのみ、または、はんだ及び第2導体層のみをより適切に加熱することができる。
【0016】
また、上記フレキシブル多層回路基板の製造方法において、前記マスクは、前記多層基板における表面の絶縁層と非接触状態とされることが好ましい。
【0017】
このようなフレキシブル多層回路基板の製造方法によれば、放射熱により加熱されたマスクにより、絶縁層を損傷することを抑制することができる。
【0018】
また、上記フレキシブル多層回路基板の製造方法において、前記第1導体層及び前記第2導体層の少なくとも一方は、アンテナを含むこととしても良い。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、熱による絶縁層の損傷を抑制して、層間の電気的な接続を行うことができるフレキシブル多層回路基板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフレキシブル多層回路基板を示す平面図である。
【図2】図1のフレキシブル多層回路基板のII−II線での断面における構造の様子を示す図である。
【図3】図1のフレキシブル多層回路基板を製造する製造方法のフローチャートである。
【図4】積層工程の様子を示す図である。
【図5】積層工程後の多層基板の様子を示す図である。
【図6】配置工程後の多層基板の様子を示す図である。
【図7】加熱工程の様子を示す図である。
【図8】第2実施形態におけるマスキング工程後の多層基板の様子を示す図ある。
【図9】第2実施形態における加熱工程の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るフレキシブル多層回路基板の製造方法の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るフレキシブル多層回路基板を示す平面図であり、図2は、図1のフレキシブル多層回路基板のII−II線での断面における構造の様子を示す図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態のフレキシブル多層回路基板1は、下側の層である第1回路層10と、第1回路層10上に積層された上側の層である第2回路層20とを備える。
【0024】
第1回路層10は、第1絶縁層11と、第1絶縁層11の一方の面上に設けられた第1導体層12と、保護層16とを備える。
【0025】
第1絶縁層11は、可撓性を有し、絶縁性の樹脂がフィルム状に形成された、絶縁性フィルムとされている。第1絶縁層11の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等が挙げられる。
【0026】
第1絶縁層11上に設けられる第1導体層12は、アンテナ13と、アンテナ13の両端に接続される一対の第1端子15a、15bとから構成されている。
【0027】
アンテナ13は、薄い導体が、外形が略四角形のループ状となる線路状に形成されている。また、一対の第1端子15a、15bは、それぞれ、直径がアンテナ13の線路幅よりも大きな略円形に形成されている。そして、アンテナ13の外側の端部には、第1端子15aが接続されており、アンテナ13の内側の端部には、第1端子15bが接続されている。
【0028】
なお、アンテナ13および第1端子15a、15bの材料は、特に限定されないが、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)や、アルミニウム(Al)等の金属や、銀ペーストなどの各種金属ペーストやカーボンペースト等の導電性ペーストが挙げられる。また、アンテナ13と第1端子15a、15bとを同様の材料から構成しても良く、それぞれ、別の材料から構成しても良い。
【0029】
また、保護層16は、第1端子15a、15bを除いて、第1絶縁層11及び第1導体層12の表面を覆っている。保護層16の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリイミド等が挙げられる。
【0030】
第2回路層20は、第2絶縁層21と、第2絶縁層21の一方の面上に設けられた第2導体層22とを備える。なお、第1回路層10と第2回路層20との間には、図示しない接着剤が設けられており、第1回路層10と第2回路層20とが一体にされている。
【0031】
第2絶縁層21は、可撓性を有し、絶縁性の樹脂がフィルム状に形成された、絶縁性フィルムとされている。そして、第2絶縁層21は、第1絶縁層11の外周内に収まる大きさとされており、第1導体層12における一対の第1端子15a、15b及びアンテナ13の一部を覆っている。第2絶縁層21の材料としては、特に限定されないが、第1絶縁層11の材料と同様の材料を挙げることができる。
【0032】
第2絶縁層21上に設けられる第2導体層22は、一対の第2端子25a、25bとから構成されている。一対の第2端子25a、25bは、それぞれ略四角形の形状をしており、互いに略合同とされている。そして、第2端子25aは、第1導体層12における一方の第1端子15a及びアンテナ13の一部を覆っており、第2端子25bは、第1導体層12における他方の第1端子15b及びアンテナ13の一部を覆っている。なお、第2導体層の材料としては、特に限定されないが、第1導体層の材料と同様の材料を挙げることができる。
【0033】
また、第2回路層20には、第1導体層12の一方の第1端子15aと、第2導体層22の一方の第2端子25aとが重なる位置において、第2絶縁層21、及び、第2端子25aを貫通する孔26aが形成されている。そして、孔26a内には、はんだ30aが充填されると共に、はんだ30aは、第1端子15a及び第2端子25aに接続されて、第1端子15aと第2端子25aとを電気的に接続している。さらに、第2回路層20には、第1導体層12の他方の第1端子15bと、第2導体層22の他方の第2端子25bとが重なる位置において、第2絶縁層21、及び、第2端子25bを貫通する孔26bが形成されている。そして、孔26b内には、はんだ30bが充填されると共に、はんだ30bは、第1端子15b及び第2端子25bに接続されて、第1端子15bと第2端子25bとを電気的に接続している。
【0034】
こうしてフレキシブル多層回路基板1は、第2端子25a、25bが外部端子とされた、アンテナ装置をされている。
【0035】
次に、フレキシブル多層回路基板1の製造方法について説明する。
【0036】
図3は、図1のフレキシブル多層回路基板1を製造する製造方法のフローチャートである。
【0037】
図3に示すように、本実施形態のフレキシブル多層回路基板1の製造方法は、準備工程P1と、積層工程P2と、配置工程P3と、加熱工程P4とを備える。
【0038】
(準備工程P1)
まず、第1回路層10と、第2回路層20とを準備する。第1回路層10は、上述の第1絶縁層11上に第1導体層12を形成することにより準備される。第1導体層12が金属からなる場合、アンテナ13および第1端子15a、15bが所定のパターンとなるように、この金属をめっきする。また、第1導体層12が導電性ペーストから成る場合、アンテナ13および第1端子15a、15bが所定のパターンとなるように、例えば、スクリーン印刷法等の印刷により、導電性ペーストを第1絶縁層11上に印刷する。また、アンテナ13及び第1端子15a、15bの一方をめっきにより形成して、その後、アンテナ13及び第1端子15a、15bの他方を導電性ペーストで形成しても良い。次に、第1端子15a、15bを除いて、第1絶縁層11及び第1導体層12の表面を保護層16で覆う。保護層16は、例えば、紫外線硬化性樹脂を塗布して、硬化させることにより形成すれば良い。こうして図4に示す第1回路層10とされる。
【0039】
また、第2回路層20の準備においては、第1回路層10と同様にして、第2導体層22を第2絶縁層21の一方の面上に形成し、第2導体層22のそれぞれの第2端子25a、25bが設けられている位置において、第2端子25a、25b及び第2絶縁層21を貫通する孔26a、26bを形成する。これらの孔26a、26bは、図1に示すように、第2回路層20が第1回路層10に積層されたときに、それぞれ第1端子15a、15bと重なる位置となるように形成される。これらの孔26a、26bは、ドリル等の機械的手段や、レーザ等の熱的手段により、形成することができる。こうして図4に示す第2回路層20とされる。
【0040】
(積層工程P2)
次に、準備した第1回路層10と第2回路層20とを図4の矢印に示すように重ね合わせて、第1導体層12上に第2絶縁層21が配置されると共に、孔26a、26bが第1端子15a、15bと重なるように、第2回路層20を第1回路層10上に積層する。このとき図示しない接着剤により、第1回路層10と第2回路層20とを一体とする。この接着剤は、第2回路層が第1回路層10の外形内に収まるように積層されるため、第2回路層の絶縁層21における第1回路層10側の表面に予め設けられていることが好ましい。こうして、図5に示すように、第2回路層が第1回路層上に積層された多層基板2が準備される。
【0041】
(配置工程P3)
次に、孔26a、26bを覆うように第2導体層22のそれぞれの第2端子25a、25b上に、はんだ30a、30bを配置する。このとき、はんだ30a、30bは、クリームはんだ、或いは、固形のはんだのどちらでも良いが、クリームはんだであることが好ましい。はんだ30a、30bがクリームはんだであれば、配置したはんだ30a、30bが、作業中に第2端子25a、25bから他の位置にずれることを防止することができる。はんだ30a、30bがクリームはんだである場合、ディスペンサにより、はんだ30a、30bを塗布して配置しても良く、開口を有するメタルマスクを多層基板2上に配置して、メタルマスク上に配置されたクリームはんだをスキージで伸ばすことで、開口からはんだを多層基板2上に塗布して、その後、メタルマスクを取り除いて、はんだを配置しても良い。こうして、図6に示すように、はんだ30a、30bが配置された多層基板2とされる。
【0042】
(加熱工程P4)
図7は、加熱工程の様子を示す図であり、具体的には、図7の(A)は、レーザを用いて、加熱を行う様子を示し、図7の(B)は、はんだこて41を用いて加熱を行う様子を示す。
【0043】
レーザを用いてはんだ30a、30bを加熱する場合には、図7の(A)に示すように、レーザLをはんだ30a、30bのみに照射するか、はんだ30a、30b及び第2導体層22である第2端子25a、25bのみに照射する。こうして、はんだ30、30bのみ、または、はんだ30a、30b及び第2導体層22のみが直接的に加熱される。
【0044】
はんだこてを用いてはんだ30a、30bを加熱する場合には、図7の(B)に示すように、加熱したはんだこて41をはんだ30a、30bのみに接触させるか、はんだ30a、30b及び第2導体層22である第2端子25a、25bのみにはんだこて41を接触させる。こうして、はんだ30、30bのみ、または、はんだ30a、30b及び第2導体層22のみが直接的に加熱される。なお、はんだこて41は、抵抗42により加熱される加熱体である。
【0045】
そして、加熱されたはんだ30aが溶融して、孔26a内に充填され、はんだ30aは、第1導体層12の第1端子15a及び第2導体層22の第2端子25aと接続させる。同様に加熱されたはんだ30bが溶融して、孔26b内に充填され、はんだ30bは、第1導体層12の第1端子15b及び第2導体層22の第2端子25bと接続させる。こうして、第1導体層12の第1端子15aと第2導体層22の第2端子25aとが電気的に接続され、第1導体層12の第1端子15bと第2導体層22の第2端子25bとが電気的に接続される。その後、はんだ30a、30bが冷却固化して、図1、図2に示すフレキシブル多層回路基板1を得る。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によるフレキシブル多層回路基板1の製造方法によれば、孔26a、26bが第1導体層12のそれぞれの第1端子15a、15bと重なるようにして、第2回路層20が第1回路層10上に積層されるため、これらの孔26a、26bを介してそれぞれの端子15a、15bが露出する。そしてこれらの孔26a、26bを覆うように第2端子25a、25b上に配置されたはんだ30a、30bを溶融することで、はんだ30aが孔26a、26bから第1端子15a、15b上まで流れ込む。こうして第1端子15a及び第2端子25aがそれぞれはんだ30a、30bに接続されて、第1端子15a、15bと第2端子25a、25bとが、はんだ30a、30bを介して電気的に接続される。このとき、はんだ30a、30bのみ、または、はんだ30a、30b及び第2端子25a、25bのみを直接的に加熱して、はんだ30a、30bを溶融する。つまり、はんだ30a、30bを溶融する際、第1絶縁層11及び第2絶縁層21は、加熱されたはんだ30a、30b等から伝導する熱により加熱されることがあっても、はんだ30a、30b等と同様に直接的には加熱されない。従って、絶縁層11、21の温度の上昇が抑制される。こうして、絶縁層11、21が熱に弱い材料から成る場合であっても、熱による絶縁層11、21の損傷を抑制して、層間の電気的な接続を行うことができる。
【0047】
また、上記実施形態においては、孔26a、26bの底面が第1端子15a、15bの表面であるため、それぞれの孔26a、26bの底面において、はんだ30a、30bと第1端子15a、15bとが接続されるため、第1導体層が孔26a、26bを形成する壁面から露出する場合よりも、より確実にはんだ30a、30bと第1端子15a、15bとを接続することができる。
【0048】
また、上記実施形態においては、レーザL、或いは、はんだこて41により、はんだ30a、30bのみ、または、はんだ30a、30b及び第2端子25a、25bのみを直接的に加熱するため、はんだ30a、30bや第2端子25a、25bの領域が小さい場合であっても、はんだ30a、30bのみ、または、はんだ30a、30b及び第2端子25a、25bのみを適切に加熱することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図8、9を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して、特に説明する場合を除き、重複する説明を省略する。
【0050】
本実施形態は、加熱工程P4の前において、マスキング工程を更に備え、加熱工程P4において、放射熱による加熱を行う点において、第1実施形態のフレキシブル多層回路基板1の製造方法と異なる。
【0051】
まず、第1実施形態と同様にして、準備工程P1、積層工程P2、配置工程P3を行う。
【0052】
(マスキング工程)
次に、マスキング工程を行う。マスキング工程においては、配置工程P3により、はんだ30a、30bが配置された多層基板2の上に、マスク45を重ねる。マスク45には、はんだ30a、30bのみ、または、はんだ30a、30b及び第2導体層22である第2端子25a、25bのみが露出するように、複数の開口46a、46bが形成されている。このときマスク45は、第1絶縁層11、及び、第2絶縁層21から離れていることが好ましく、多層基板2から完全に離れていることがより好ましい。こうして、図8に示す、マスク45により、多層基板2がマスキングされた状態となる。なお、マスク45の材料としては、加熱工程P4に用いることのできる耐熱性を有する材料であれば、特に制限されないが、例えば、ステンレス鋼を挙げることができる。
【0053】
(加熱工程P4)
次に多層基板2のはんだ30a、30bのみ、または、はんだ30a、30b及び第2端子25a、25bのみを直接的に加熱する。具体的には、図9に示すようにマスク45の上から放射加熱を行う。図9のマスク45に向けられる矢印は、熱を示す。このとき、マスク45に形成されている複数の開口46a、46bから、はんだ30a、30bのみ、または、はんだ30a、30b及び第2端子25a、25bのみに直接的に熱が同時に放射される。こうして、はんだ30a、30bのみ、または、はんだ30a、30b及び第2端子25a、25bのみが直接的に同時に加熱されると共に、絶縁層11、21は、マスク45により熱から保護される。
【0054】
このとき、上述のように、マスク45が、少なくとも第1絶縁層11、及び、第2絶縁層21から離れていれば、放射熱によりマスク45が加熱される場合においても、マスク45の熱から絶縁層11、12を保護することができため好ましく、マスク45が多層基板2から完全に離れていれば、マスク45の熱から多層基板2全体を保護することができより好ましい。
【0055】
こうして、第1実施形態と同様に、加熱されたはんだ30a、30bが溶融して、孔26a、26b内に充填される。そして、はんだ30aは、第1導体層12の第1端子15a及び第2導体層22の第2端子25aと接続され、はんだ30bは、第1導体層12の第1端子15b及び第2導体層22の第2端子25bと接続される。その後、第1実施形態と同様にして、はんだ30a、30bが冷却固化して、図1、図2に示すフレキシブル多層回路基板1を得る。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によるフレキシブル多層回路基板1の製造方法によれば、放射熱により広い領域を一度に加熱することができる。このとき多層基板2の第1絶縁層11、第2絶縁層21は、マスク45により保護されているため、放射熱により直接加熱されず、マスク45の開口46a、46bから露出しているはんだ30a、30bのみ、または、はんだ30a、30b及び第2端子25a、25bのみを適切に加熱することができる。
【0057】
さらに、上記実施形態においては、マスク45に、複数の開口46a、46bが形成されているため、一度に複数個所において、第1導体層12と第2導体層22との電気的な接続を行うことができる。従って、フレキシブル多層回路基板1の生産の効率を上げることができる。
【0058】
以上、本発明について、第1、第2実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
例えば、上記実施形態においては、第1導体層12のみがアンテナ13を有していたが、第2導体層22にもアンテナを形成しても良い。この場合、アンテナ同士を接続して、より放射強度の強いアンテナとしたり、面積の小さいアンテナとすることができる。
【0060】
また、上記実施形態においては、フレキシブル多層回路基板1として、アンテナ装置を例に説明したが、本発明はこれに限らず、他の回路にも応用できる。
【0061】
また、第2実施形態において、マスク45に形成された開口は複数とされたが、1つのみの開口が形成されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、熱による絶縁層の損傷を抑制して、層間の電気的な接続を行うことができるフレキシブル多層回路基板の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0063】
1・・・フレキシブル多層回路基板
2・・・多層基板
10・・・第1回路層
11・・・第1絶縁層
12・・・第1導体層
13・・・アンテナ
15a、15b・・・第1端子
16・・・保護層
20・・・第2回路層
21・・・第2絶縁層
22・・・第2導体層
25a、25b・・・第2端子
26a、26b・・・孔
30a、30b・・・はんだ
41・・・はんだこて
42・・・抵抗
45・・・マスク
46a、46b・・・開口
P1・・・準備工程
P2・・・積層工程
P3・・・配置工程
P4・・・加熱工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する第1絶縁層と、前記第1絶縁層の一方の面上に設けられる第1導体層とを有する第1回路層、及び、可撓性を有する第2絶縁層と、前記第2絶縁層の一方の面上に設けられる第2導体層とを有し、前記第2導体層及び前記第2絶縁層を貫通する孔が形成された第2回路層、を準備する準備工程と、
前記第1導体層上の少なくとも一部に前記第2絶縁層が配置されると共に、前記孔が前記第1導体層と重なるように、前記第2回路層を前記第1回路層上に積層する積層工程と、
前記孔を覆うように前記第2導体層上にはんだを配置する配置工程と、
前記はんだのみ、または、前記はんだ及び前記第2導体層のみを直接的に加熱し、前記はんだを溶融させて、前記はんだを前記第1導体層及び前記第2導体層と接続させる加熱工程と、
を備えることを特徴とするフレキシブル多層回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程おいて、前記はんだのみ、または、前記はんだ及び前記第2導体層のみに、レーザを照射して加熱することを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル多層回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程において、前記はんだのみ、または、前記はんだ及び前記第2導体層のみに、抵抗により加熱した加熱体を接触させて加熱することを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル多層回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程の前において、前記多層基板の上に、前記はんだのみ、または、前記はんだ及び前記第2導体層のみが露出する開口が形成されたマスクを重ねるマスキング工程を更に備え、
前記加熱工程において、放射熱による加熱を行うことを特徴とする請求項1フレキシブル多層回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記マスクは、前記多層基板における表面の絶縁層と非接触状態とされることを特徴とする請求項4に記載のフレキシブル多層回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記第1導体層及び前記第2導体層の少なくとも一方は、アンテナを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のフレキシブル多層回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−49154(P2012−49154A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186761(P2010−186761)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】