説明

フレキシブル生産システム

【課題】セル生産方式のフレキシブル生産システムにおいて、人の生産性は落とすことなく容易かつ柔軟にシステムの再編成を可能とする人機械協調型のシステムを実現して生産性向上を図る。
【解決手段】本システム1は人セル部11に隣接する機械部12を備え、機械部12は移載するための複数のハンド部21と、ハンド部21を移動させる複数のアクチュエータ22と、ハンド部21の移動の方向に沿って配置され、部品に処理を施す複数の処理装置3と、人セル部11側から機械部12に部品を投入するための投入部4と、機械部12から人セル部11側に部品を取り出すための取出部5と、投入部4から各処理装置3を経由して取出部5に至る部品の順路の途中に人セル部11側から追加部品を投入し供給するための途中部品搬入装置6とを備えている。途中部品搬入装置6を備えることにより、人セル部11と機械部12とを分離したシステムを容易かつ柔軟に構成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル生産方式のフレキシブル生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産量の増減や多品種変量生産に柔軟に対応できるフレキシブル生産システムとしてセル生産システムが採用されている。セル生産システムは、作業者がセルと呼ばれる作業場所で複数の作業工程を行って1つの製品、または複数工程毎の完成品を作り上げる自己完結性の高いシステムである。セル生産システムやこのシステムを用いたセル生産方式は、作業者の多能工化を推進でき、製品仕様変更への対応が容易であり、また設備投資が少なくて済むという利点がある。
【0003】
また、人を配置した人セルに代えて、ロボットを配置したロボットセルによるセル生産システムも構成できる。例えば、1台のロボットが複数種類の作業工程を行って複数の製品をバッチ的に生産する構成とすることができる。この場合、種類の異なる作業工程に応じてロボットハンドを交換したり、必要なワークや部品を自動で適切に準備したりする必要がある。そこで、このような交換や準備に要する時間を短縮すべく作業工程の順番やシステム構成を工夫した物品組付け装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−197343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようなセル生産システムを適用したフレキシブル生産システムにおいては、さらに柔軟に、より短時間で、生産数量の増減に対応することが求められている。例えば、生産システムをロボットセルが集合した機械部と人セルの混合によって構成することが考えられる。この場合、品種変更や生産量変動に対する柔軟性が、機械部における生産工程の自動化によって損なわれることを回避しなければならない。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するものであって、人の生産性は落とすことなく容易かつ柔軟にシステムの再編成を可能とすると共に、人のフレキシブル性は活かしつつ生産性を向上させることのできるフレキシブル生産システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、人の作業領域である人セル部に隣接して配置され、人セル部から投入される部品に処理を施す機械部を備えたフレキシブル生産システムにおいて、前記機械部は、部品を把持し移載するための複数のハンド部と、前記ハンド部を移動させる複数のアクチュエータと、前記各アクチュエータによる前記ハンド部の移動の方向に沿って配置され、前記部品に対して処理を施す複数の処理装置と、前記人セル部側から当該機械部に対して部品を投入するための投入部と、当該機械部から前記人セル部側に部品を取り出すための取出部と、前記投入部から前記各処理装置を経由して前記取出部に至る部品の順路の途中に前記人セル部側から前記部品に対する追加部品を投入し供給するための途中部品搬入装置と、を備えているものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記複数のアクチュエータは、互いに平行に離間して水平配置された2本のアクチュエータと、前記2本のアクチュエータの共通の一端部側において両アクチュエータに対して段違いに交差する1本のアクチュエータとから成り、前記投入部または取出部がそれぞれ前記平行配置された2本のアクチュエータのいずれかの各他端部側に配置され、前記ハンド部は、前記3本のアクチュエータに少なくとも2つずつ備えられているものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記ハンド部は、前記処理装置間における部品の移載を、部品を仮置きすることなく直接行うものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記処理装置は、前記機械部に対して着脱自在とされているものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記処理装置は、車輪付の台車に乗せられており、前記台車を前記アクチュエータのベースフレームに設けた当接部に突き当てることにより該アクチュエータに対する離間位置が決められ、前記台車の前記ベースフレームからの機械的高さにより高さ位置が決められ、前記アクチュエータによる移動方向における前記ハンド部との相対位置が該アクチュエータを制御するソフトウエアによる設定によって決められるものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記アクチュエータの1つに属する処理装置は、互いに等ピッチで配置されているものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記機械部は、不良部品を排出するためのコンベアを備えているものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記機械部と人セル部の境界に該境界を横切る物体を検知するためのライトカーテンを備えているものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記機械部における動作周期を表示するための表示部を備えているものである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記機械部は、前記処理装置から処理の不具合が通知された部品を不良部品として部品の順路から自動排出する部品排出手段と、前記部品排出手段によって部品が不良部品として排出された場合に、再投入すべき部品を人に指示する指示装置と、を備えているものである。
【0017】
請求項11の発明は、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、人手により部品を不良部品として前記機械部から排出した場合に、人が部品を排出したことを前記機械部側に入力するための入力装置を備えているものである。
【0018】
請求項12の発明は、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、人が部品を仮置きするためのストッカを前記投入部または前記途中部品搬入装置に設けているものである。
【0019】
請求項13の発明は、請求項10に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記部品排出手段が不良部品を排出したことにより人が前記取出部から部品を取り出す必要がないと判断すると共に、取り出し作業をすることなく次の作業をするように人に指示する指示装置を備えているものである。
【0020】
請求項14の発明は、請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記機械部が前記処理装置として同種のものを複数台含む場合に、該機械部が自ら計測した部品の投入サイクルタイムの計測結果に基づいて、前記同種の処理装置の稼働台数を増減するものである。
【0021】
請求項15の発明は、請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記機械部が自ら計測した部品の投入サイクルタイムの計測結果に基づいて、その計測値より一定時間短い時間間隔で人に部品投入または部品取出を指示する指示装置を備えているものである。
【0022】
請求項16の発明は、請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システムにおいて、前記機械部のサイクルタイムを、前記機械部が人毎に自ら計測した部品の投入サイクルタイムの中で最も短い時間に基づいて自動調整するものである。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の発明によれば、順路の途中に人セル側から追加部品を投入し供給するための途中部品搬入装置を備えたので、人が人セル内でのみ作業でき、人の生産性は落とすことなく人のフレキシブル性は活かしつつ、生産性を向上できる人機械協調型のセル生産方式のフレキシブル生産システムを提供することができる。この途中部品搬入装置は、機械部側から人セル側に手を差し延べて追加部品を取りに行く装置と考えられ、これにより機械部に柔軟性を持たせることができ、システム全体としての柔軟性を簡単かつ容易に構築することができる。このような途中部品搬入装置を備えて機械部と人セルとの協調性を付与された人と機械のハイブリッドシステムは、容易かつ柔軟にシステムの再編成ができると共に、機械部と人セルの各々の特性を活かして生産性を向上させることができる。
【0024】
請求項2の発明によれば、3本のアクチュエータを互いに交差させて配置したので、投入部から取出部に至る部品の順路を自然に形成できると共に、投入部と取出部とを近接して配置することができる。投入部と取出部とが近接配置されることにより、人セル内で作業する人の移動や動作および部品の移動に係る移動距離が短縮されるので、作業効率を向上することができる。また、各アクチュエータに少なくとも2つのハンド部を備えたので、人の両手動作のような動作が可能になり、処理装置に係る部品移載の時間を短縮することができ生産性を向上させることができる。
【0025】
請求項3の発明によれば、処理装置間の部品の移載を、中継することなくハンド部によって直接行うようにしたので、処理装置に対してコンベアなどを介して部品を出し入れする必要がなく、搬送のムダを省き、生産性を向上させることができる。
【0026】
請求項4の発明によれば、処理装置を入れ替えたり、取り外したりすることができるので、製品変更、工程変更、生産量変更などに容易に対応でき、生産の柔軟性を高めることができる。
【0027】
請求項5の発明によれば、処理装置を容易かつ位置精度良く入れ替えることができるので、製品変更、工程変更、生産量変更などに容易に対応でき、生産の柔軟性を高めることができる。
【0028】
請求項6の発明によれば、ハンド部を等ピッチで移動させることができるので、ハンド部を移動させる制御が簡単化され、生産の柔軟性を高めることができる。
【0029】
請求項7の発明によれば、機械部において不良品が発生した場合に、不良品の排出が可能であり、不良品が発生しても生産を止めることなく継続することができ、生産性を向上させることができる。
【0030】
請求項8の発明によれば、人が機械部に侵入したことを検知できるので、機械を一時停止させて人の安全性を高めることができる。
【0031】
請求項9の発明によれば、表示部によって機械部の動作周期を把握できるので、機械部をペースメーカとして用いて作業でき、1個当り生産時間のばらつき少なくして安定に生産することができる。
【0032】
請求項10の発明によれば、不良部品が排出された場合に、機械部内に生じた部品の不足、すなわち、部品とその部品に対する追加部品とから成る組を形成するために必要な部品の不足を解消できるので、機械部の稼働率が下がらないようにすることができる。
【0033】
請求項11の発明によれば、人手により機械部が感知しないところで不良部品を排出した場合に、機械部側の制御における部品数の不整合などを解消して機械部における不具合発生を回避するようにでき、機械部の稼働率が下がらないようにすることができる。
【0034】
請求項12の発明によれば、投入部と途中部品搬入装置に投入するため持って行った部品のいずれかが投入する必要がなくなった場合に、その部品をストッカに仮置きできるので、その部品の持ち帰り作業や戻し作業などといった人の非定型作業を減らすことができ、人の作業効率を下げないようにすることができる。
【0035】
請求項13の発明によれば、既に排出された部品を取り出そうとして取出部において無駄に待機する、ということを防止でき、人の作業効率、従って機械部の生産効率を落とさないようにすることができる。
【0036】
請求項14の発明によれば、例えば、人セル部における人数の増減や作業者の熟練度の違いなどによって、部品投入のサイクルタイムが増減するときに、そのサイクルタイムに見合った台数の処理装置だけを稼働するように稼働数を増減することができ、装置稼働のためのエネルギを低減したり、装置の消耗を防いだりすることができる。
【0037】
請求項15の発明によれば、人の作業繰り返し間隔よりも少し早目の作業要求を常に人に出すことにより、人の作業効率の向上を常に促して、作業熟練度の向上や作業効率の向上を図ることができる。
【0038】
請求項16の発明によれば、人セル部の個々の作業者の作業速度に応じて機械部を動かすことにより、人の待ち時間などの無駄を減らして、作業熟練度の向上や作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るフレキシブル生産システムについての平面図。
【図2】同上システムの斜視図。
【図3】同上システムの他の実施形態を示す部分平面図。
【図4】同上システムの部分斜視図。
【図5】同上システムの動作例を示すフローチャート。
【図6】同上システムの他の動作例を示すフローチャート。
【図7】同上システムのさらに他の動作例を示すフローチャート。
【図8】同上システムのさらに他の動作例を示すフローチャート。
【図9】同上システムのさらに他の動作例を示すフローチャート。
【図10】同上システムのさらに他の動作例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一実施形態に係るフレキシブル生産システムについて、図面を参照して説明する。フレキシブル生産システム1は、図1、図2に示すように、人セル部11に隣接して機械部12を備えて人機械協調型とされたセル生産方式の生産システムである。人セル部11は、自動化が困難な作業や、自動化するにはコストやスペースが増加し過ぎるような部品供給作業、梱包作業などを行う人の作業領域である。機械部12は、人セル部11から投入される部品に処理を施した後、人セル部11に処理済み品を戻す処理を行う。機械部12は不図示の制御部を備えており、機械部12を構成する各構成要素の動作は、その制御部によって制御される。以下、機械部12の主要構成に注目して説明を行い、その後、機械部12の組み替え、および機械部12と人セル部11との連携に関する構成(台車30、ライトカーテン7、表示部8等)について説明する。
【0041】
機械部12は、矩形の3辺に沿ってそれぞれ平行に配置された3系統の直線移動型の搬送系2と、各搬送系2に沿って配置された複数の処理装置3と、人セル部11側から機械部12に対して部品を投入するための投入部4と、機械部12から人セル部11側に部品を取り出すための取出部5と、投入部4から各処理装置3を経由して取出部5に至る部品の順路の途中に人セル部11側から前記部品に対する追加部品を投入し供給するための途中部品搬入装置6と、を備えている。
【0042】
各搬送系2は、部品を把持し移載するための2つのハンド部21と、ハンド部21を直線的に移動させるアクチュエータ22とを備えている。2本のアクチュエータ22は、人セル部11側から機械部12の奥行き方向に向けて、互いに平行に水平配置されている。これらは、互いに同等の構成を有している。他の1本のアクチュエータ22は、前記2本のアクチュエータ22の共通の一端部側、すなわち人セル部11側から見て機械部12の奥方側において、両アクチュエータ22に対して段違いに直交して交差するように配置されている。奥方側のアクチュエータ22は、2本の平行なアクチュエータ22よりも下側に配置されている。各アクチュエータ22が、このように段違いに交差していることから、各ハンド部21は、各アクチュエータ22の端から端まで移動することができる。また、各搬送系2が組み合わされた結果、機械部12の領域が、搬送系2によって囲まれた内部領域側と搬送系2の外側に位置する外部領域側とに2分されている。
【0043】
各ハンド部21は、それぞれが属するアクチュエータ22の長手方向に沿って、2つのハンド部21が互いに追い越すことなく独立に移動制御される。また、各ハンド部21は、開閉され上下動される把持部を有し、その把持部を用いて、所定位置に配置された部品を把持して拾い上げたり、把持した部品を所定位置に載置したりして、部品を移載する。各ハンド部21が部品を移載する所定位置(下記の載置台31等)は、一定の水平高さ、およびアクチュエータ22から一定の距離に設定されている。
【0044】
処理装置3は、部品加工、部品追加、検査、印字などの処理を全自動で行う装置である。処理装置3は、部品が載置される載置台31またはコンベア33と、処理部32またはコンベア33に連結された格納部34とを有している。ここで、説明の便のため、機械部12における処理装置3の位置を、右手前側から位置A,・・,Kによって区別する。このような処理装置3は、本実施形態の場合、人セル部11側から見て機械部12の右側に4台、奥方側に2台、左側に4台備えられている。処理装置3は、搬送系2によって機械部12の領域を2分して成る外部領域側に配置されている。また、位置A側が部品投入側であり、位置K側が部品取出側である。ここで装置例を述べると、位置A,B,Cにおける処理装置3は同等であって互いに独立並列処理を行う部品加工装置であり、位置Dにおける処理装置3は不良部品回収用装置であり、位置E,Gにおける処理装置3は他の部品加工装置であり、位置H,I,Jにおける処理装置3は同等であって互いに独立並列処理を行う機能検査装置であり、位置Kにおける処理装置3は印字装置である。なお、位置Fにおける破線で示した処理装置3は、本実施形態では、機械部12から外された状態、または休止状態とされている。
【0045】
投入部4は、直線搬送機構41と、部品載置台42とを備えている。部品載置台42は、直線搬送機構41における人セル部11側の位置a1と機械部12の奥方側の位置a2との間を、直線搬送機構41によってシャトル移動(往復移動)する。部品載置台42のシャトル移動により、人セル部11側から機械部12に対して部品が投入される。位置a2における部品載置台42の位置は、上述のように、ハンド部21が部品を把持して拾い上げ可能な所定位置とされている。
【0046】
取出部5は、直線搬送機構51と、部品載置台52とを備えており、投入部4とは逆向きの部品搬送を行う。部品載置台52は、直線搬送機構51における機械部12の奥方側の位置b1と人セル部11側の位置b2との間を、直線搬送機構51によってシャトル移動する。部品載置台52のシャトル移動により、機械部12側から人セル部11側に部品を取り出し可能とされる。位置b1における部品載置台52の位置は、上述同様に、ハンド部21が部品を把持して載置可能な所定位置とされている。
【0047】
途中部品搬入装置6は、直線搬送機構61と、部品載置台62とを備えて、投入部4と同様の搬送を行うものである。部品載置台62は、直線搬送機構61における人セル部11側の位置c1と機械部12の奥方側の位置c2との間を、直線搬送機構61によってシャトル移動する。部品載置台62のシャトル移動により、人セル部11側から機械部12における部品の順路の途中に前記部品に対する追加部品が投入される。位置c2における部品載置台62の位置は、上述同様に、ハンド部21が部品を把持して拾い上げ可能な所定位置とされている。この場合、位置c2における追加部品を扱うハンド部21は、奥方側のアクチュエータ22に属するハンド部21である。
【0048】
次に、フレキシブル生産システム1の動作を説明する。ここで生産される製品は、例えば、蓋部品を有する容器部品にセンサと回路基板を内蔵する製品であって、蓋部品に操作用のスイッチを有する電気製品であるとする。その生産の概略は次の如くである。人セル部11における作業者Mが、容器部品にセンサと回路基板を仮置きして投入部4から投入し、さらに、蓋部品を途中部品搬入装置6から投入する。すると、機械部12が、これらの部品を組み立てた後、性能検査、印字処理を行って取出部5に載置する。作業者Mは取出部5から製品を取出し、外観検査、スイッチの操作感触検査等を行い、合格品と不合格品とを選別して1個の製品生産が終了する。以下、詳細に述べる。
【0049】
人セル部11における作業者Mは、センサと回路基板を仮置きした容器部品を位置a1における部品載置台42に載せる。すると、部品載置台42が位置a2に移動し、ハンド部21が位置A,B,Cのいずれかに位置する受入可能な部品加工用の処理装置3の載置台31に容器部品を載置する。部品加工用の処理装置3は、それぞれ不図示のネジ供給部を有し、そこから供給されるネジを用いてセンサと回路基板を容器部品にネジ止め固定する。前記により固定された部品は、奥方側のハンド部21によって位置Eにおける処理装置3の載置台31に移載される。また、前記ネジ止め固定ができないなどの不具合が発生した場合には、処理装置3から不図示の制御部にその旨が通知される。不具合のある容器部品は、ハンド部21によって位置Dにおけるコンベア33上に載置され格納部34に格納される。作業者Mは、位置a1における部品載置台42が空の状態である限り容器部品を部品載置台42に載せる作業を行う。
【0050】
また、作業者Mは、位置c1における部品載置台62が空の状態である限り追加の部品である蓋部品を部品載置台62に載せる作業を行う。すると、途中部品搬入装置6は、蓋部品が載置された部品載置台62を位置c1に移動させる。奥方側の搬送系2のハンド部21は、部品載置台62における蓋部品を、位置Eにおける処理装置3の載置台31に載置されている容器部品の上に重ねて移載する。空になった部品載置台62は、直線搬送機構61によって位置c1に戻される。蓋部品を備えた容器部品は、位置Eにおいて位置合わせされた後、ハンド部21によって位置Gにおける処理装置3の載置台31に移載される。位置Gにおける処理装置3は、不図示のネジ供給部を有し、そこから供給されるネジを用いて容器部品に蓋部品をネジ止め固定する。
【0051】
上述のネジ止め固定された部品は、左方側の搬送系2のハンド部21によって位置H,I,Jのいずれかに位置する受入可能な機能検査用の処理装置3の載置台31に載置され、機能検査が行われる。機能検査の終了した部品は、ハンド部21によって位置Kにおける処理装置3の載置台31に載置され、その処理部32においてロット番号等の印字が、例えばレーザを用いて行われる。機能検査により発見された不具合製品には、その旨の印字が施されるか、または印字なしとされて、良品との識別が可能とされる。また、印字は、部品表面に直接行うこともでき、予め部品表面に添付したラベル表面に行うこともできる。さらに、処理装置3の構成変更により、不良履歴をラベルシールに印字して不良部品に貼り付ける構成とすることもできる。
【0052】
処理装置3によって全ての処理が行われた部品(製品)は、ハンド部21によって位置b1における部品載置台52に移載された後、位置b2に移動され、作業者Mによって取り上げられる。部品載置台52は、その後、位置b1に戻される。作業者Mは、不良品を所定の位置に取り除き、良製品について外観検査やスイッチの操作感触検査や調整等を行った後、所定の製品格納箱に格納する。以上の動作が、それぞれ人セル部11と機械部12において、所定量の部品について行われる。
【0053】
上述のように、本実施形態のフレキシブル生産システム1によれば、機械部12では、2つのアクチュエータ22と1つの交差アクチュエータ22とによって搬送経路を形成し、その搬送経路の外周側に処理装置3を配置しているので、処理装置3間の搬送距離が極力少なくなっており、機械部12の稼働率を高めることができる。また、各アクチュエータ22に取り付けた2つづつのハンド部21は、部品を仮置きすることなく、ハンド部21から処理装置3に部品を直接投入、取り出し可能な配置とされ、機械部12の稼働率を高めることができる。
【0054】
本システム1によれば、順路の途中に追加部品を投入し供給するための途中部品搬入装置6を備えたので、作業者が人セル部11内でのみ作業でき、人の生産性は落とすことなく人のフレキシブル性(作業対応性)は活かしつつ、生産性を向上できる人機械協調型のセル生産方式の生産システムが得られる。途中部品搬入装置6は、機械部12側から人セル部11側に手を出して追加部品を取りに行く装置であり、これにより機械部12に柔軟性を持たせることができ、システム全体としての柔軟性を簡単かつ容易に構築できる。すなわち、途中部品搬入装置6を備えて機械部12と人セル部11との協調性を付与された人と機械のハイブリッドシステムは、容易かつ柔軟にシステムの再編成ができ、さらに、機械部12と人セル部11の各々の特性を活かして生産性を向上させることができる。
【0055】
さらに述べると、一般に、人の作業領域を人セル部11に局在させて集めることにより、人セル部11と機械部12を分離した構成として、人の作業効率や人の配置効率を高めることができる。しかしながら、人の作業と機械の作業とは、処理対象の商品における作業順序の関係よって、必ずしもきれいに作業分離ができない場合が多く発生する。この点、本実施形態のフレキシブル生産システム1によれば、途中部品搬入装置6を備えることにより、搬送経路の途中に追加部品を人セル部11側から投入することができるので、作業順序(搬送経路)に制約されることなく、人セル部11と機械部12とを分離することが可能になる。すなわち、途中部品搬入装置6を備えることにより、人セル部11と機械部12とを分離したシステムを容易かつ柔軟に構成できる。このようにすることにより、人セル部11の部分はセル生産の形態をとることができ、柔軟な生産が可能になる。一方機械部12は、処理装置3の効率を徹底的に高めることができ、従来からの大量コンベア生産などの自動化ラインの考え方に近い生産が可能となる。
【0056】
また、本システム1によれば、3本のアクチュエータ22を互いに交差させて配置したので、投入部4から取出部5に至る部品の順路を自然に形成できると共に、投入部4と取出部5とを近接して配置することができる。投入部4と取出部5とが近接配置されることにより、人セル部11内で作業する人の移動や動作および部品の移動に係る移動距離が短縮されるので、作業効率を向上することができる。また、各アクチュエータ22に少なくとも2つのハンド部21を備えるようにしたので、ハンド部21による人の両手動作のような動作が可能になり、処理装置3に係る部品移載の時間を短縮することができ生産性を向上させることができる。
【0057】
また、本システム1によれば、処理装置3間の部品の移載を、ハンド部21によって直接行うようにしたので、ハンド部21と処理装置3の間に中継用のコンベアなどを介在させて部品を出し入れする必要がなく、コンベアそのものの無駄やコンベアによる受け渡し時間と搬送時間の無駄を省くことができ、生産性を向上させることできる。また、本システム1において、機械部12に、不良部品を排出するためのコンベア(位置Dにおける処理装置3)を備えているので、機械部12において不良品が発生した場合に、不良品の自動排出が可能であり、不良品が発生しても生産を止めることなく継続することができ、生産性を向上させることができる。
【0058】
(処理装置の着脱)
次に、主に図2を参照して、生産の変動に対する機械部12の柔軟な対応性について説明する。フレキシブル生産システム1は、上述の搬送系2および途中部品搬入装置6の構成を機械部12に備えていることに加え、各処理装置3が機械部12に対して着脱自在とされる構成を備えている。すなわち、各処理装置3は、車輪30a付の台車30に乗せられており、台車30をアクチュエータ22のベースフレーム20に設けた当接部2aに突き当てることによりアクチュエータ22に対する離間位置が決められる。ベースフレーム20は、複数の処理装置3に対して共通となるように、または、1つのアクチュエータ22における全ての処理装置3に対して共通となるように、または、機械部12における全ての処理装置3に対して共通となるように設けられ、台車30は、寸法、形状ともすべての処理装置3に共通な構造とされている。
【0059】
また、台車30のベースフレーム20からの機械的高さにより処理装置3の高さ位置、従って載置台31の高さ位置が決められる。ベースフレーム20には、台車30の車輪30aをガイドするガイドレール2bが所定の設定位置に設けられている。ガイドレール2bに沿って台車30を移動させて設置することにより、アクチュエータ22に沿ったハンド部21の移動方向における処理装置3の位置が決められる。さらに、処理装置3とハンド部21とのアクチュエータ22に沿った方向の相対位置は、アクチュエータ22を制御するソフトウエアによる設定によって調整することができる。
【0060】
また、1つのアクチュエータ22に属する複数の処理装置3は、ガイドレール2bの設定により、互いに等ピッチとなるように配置される。従って、同一種類の処理装置3の場合、それらの載置台31は互いに等ピッチとなる。また、処理装置3に、電気的に共通規格のインターフェイスを備えることにより、処理装置3を機械部12に対して電気的にもワンタッチで着脱可能とされている。
【0061】
また、処理装置3は機械部12に対して自在に着脱可能であり、かつ、共通仕様の台車30に載っていることから、アクチュエータ22に対してどの配置位置でも配置可能であるので、生産される品種や生産工程を変更する場合に、処理装置3を入れ替えることにより柔軟かつ迅速に対応が可能である。また、人セル部11の人数は、本実施形態では1名として説明したが、人数が増減する場合に、処理装置3の台数を増減することにより機械部12のサイクルタイムを増減することが、容易に実現可能である。すなわち、本実施形態のフレキシブル生産システム1によれば、処理装置3を入れ替えることができるので、また、処理装置3を容易にかつ位置精度良く入れ替えることができるので、製品変更、工程変更、生産量変更などに容易に対応でき、生産の柔軟性を高めることができる。また、等ピッチで配置した処理装置3に対応してハンド部21を等ピッチで移動させることができるので、ハンド部21を移動させる制御が簡単化され、機械部12の柔軟性、従って、生産の柔軟性を高めることができる。
【0062】
(ライトカーテン)
図1、図2に示すように、フレキシブル生産システム1は、機械部12と人セル部11との境界に、その境界を横切る物体を検知する安全装置としてのライトカーテン7を備えている。ライトカーテン7は、上下方向に光源を配列した発光部71と、発光部71の各光源に対向して上下方向に受光素子を配列した受光部72と、不図示の信号処理部とを備えている。発光部71の各光源からの光は、機械部12と人セル部11との境界に面状に分布して光カーテン73を形成する。作業者Mの身体の一部が光カーテン73を横切ると、受光部72における受光信号が変化するので、信号処理部がその信号変化に基づいて機械部12の制御部(不図示)に対して緊急信号を出力し、機械部12は制御部によって一時停止される。図1、図2に示す本実施形態の場合、作業者Mが機械部に対して部品の投入取出しを行う位置a1,b2,c1は、光カーテン73の手前側に配置されている。
【0063】
人セル部11と機械部12の境界上では、部品を機械部12へ投入し、完成品を取り出す際に機械部12に人が侵入することがあるが、人の出入りが可能なようにライトカーテン7を用いて境界を仕切っているので、従来用いられているような安全柵の場合のように人の動きが著しく阻害されてしまう、ということがない。光カーテン73を人が横切ると、人が機械部12に侵入したことを検知できるので、機械部12を一時停止させて人の安全性を高めることができる。
【0064】
(動作周期の表示部)
また、フレキシブル生産システム1は、人セル部11側の作業者Mに機械部12における動作周期を表示するための表示部8を備えている。表示部8は、機械部12の制御部に接続され、例えば、各処理装置3における一連の動作の開始と終了に応じてパイロットランプを点灯および消灯する構成とされる。また、表示部8は、動作周期を数値的に表示するようにすることもできる。作業者Mは、表示部8によって機械部12の動作周期を把握できるので、作業者間の作業時間のばらつきをできるだけ抑えることができる。すなわち、作業者Mが、機械部12をペースメーカとして用いて作業することにより、1個当り生産時間のばらつきなど少なくして、より安定に生産することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記図1、図2に示した実施形態の構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、搬送系2におけるアクチュエータ22は、ハンド部21を直線移動させるものに限らず、円周上の移動、一般的には曲線上の移動をさせるもの、さらには、曲線と直線とを組み合わせた経路に沿って移動させるものとすることができる。また、2つの端部を有する1本の曲線経路に沿って複数のハンド部21が移動するようにアクチュエータ22を構成してもよい。これらの場合に、載置台31が、ハンド部21の移動経路に沿って互いに等ピッチと成るように処理装置3を配置するのが望ましい。
【0066】
同様に、途中部品搬入装置6は、直線状に部品載置台62を移動させる直線搬送機構61に代えて、任意曲線の経路に沿って部品載置台62を任意の位置に移動させるものとすることができる。例えば、3次元的に配置されたレールに沿って部品載置台62を非直線、非平面的に移動させるようにしてもよい。また、途中部品搬入装置6は、1系統に限らず複数系統とすることができる。この場合、同じ追加部品を並行して同じ工程中に搬入したり、異なる追加部品をそれぞれ異なる製造工程中に搬入するようにすることができる。また、部品載置台62を、複数の追加部品を同時に載置可能な載置台とすることができる。これにより、追加部品を組み込むための処理装置3の処理能力に容易に追随して対応でき、また、組込用の処理装置3を増設する場合に、追加部品の供給速度制限からくる生産能力制限を解消することができる。また、不良部品を排出するためのコンベア33を備えている処理装置3は、機械部12の位置Dに限らず、例えば、位置Kにおける処理装置3の前または後などに、適宜配置することができる。このようなコンベアは、処理装置3として組み込む替わりに、別系統の搬送装置とすることもできる。また、人セル部11における作業者Mは、生産形態に応じて、複数のフレキシブル生産システム1における人セル部11を巡回するものとして、1つの人セル当たり1名以下とすることもできる。
【0067】
(他の実施形態)
次に、図3乃至図10によって、フレキシブル生産システムの他の実施形態を説明する。本実施形態のフレキシブル生産システム1は、図3、図4に示すように、順路の途中で部品が不良部品として排出された場合に、再投入すべき部品を作業者Mに指示する指示装置9と、作業者Mが追加部品を仮置きするため途中部品搬入装置6に設けたストッカSTと、順路の途中で人手により部品を不良部品として順路外に排出した場合に、作業者Mが部品を排出したことを機械部12側に入力するための入力装置10と、順路の最終段階において処理装置3が不良部品を排出して格納する排出容器35と、この排出を行うための排出機構35aと、を備えている。また、機械部12は、処理装置3から処理の不具合が通知された部品を不良部品として部品の順路から自動排出する部品排出装置(部品排出手段)を備えている。部品排出装置は、排出機構35aや、位置Dにおける処理装置3のコンベア33(図1参照)などを含めて構成され、これらの他に、部品のネジ止め固定ができない等の不具合を検出する各処理装置3に備えられたセンサや、位置H,I,Jにおける機能検査を行う各処理装置3そのものや、部品を搬送する搬送装置2や、機械部12を制御する制御部などの総体によって構成される。その他の構成は、上述の図1、図2に示した実施形態のフレキシブル生産システム1と同様であり、図1、図2を適宜参照する。以下、各要素について、順次説明する。
【0068】
(指示装置とストッカ)
指示装置9とストッカSTについて説明する。人セル部11から投入部4に投入された部品は、通常、複数の処理装置3を通った後、人セル部11から途中部品搬入装置6によってダイレクトに途中の経路に投入された追加部品と結合され、次工程に流れる。しかしながら、部品が、位置A,B,Cのいずれかの処理装置3で不良とされた場合、その不良部品は、追加部品と結合される前に、位置Dにおける不良品回収用のコンベア33を介して部品の順路から自動排出されるので、順路の途中に投入される追加部品と組み合わせる部品がなくなってしまう。そこで、人セル部11側から不良排出された部品と同じ部品を機械部12へ再投入する必要がある。これは、部品とその部品に対する追加部品とが、最終的に1セットに組み合わされて取り出されるように、機械部12内に投入されている部品数を適切に維持することにより、機械部12の稼働率を高く維持するためである。機械部12における不図示の制御部は、どの部品がどの段階で部品排出装置によって不良部品として自動排出されたかを認識し、部品の再投入(必要部品のみを投入すること)の必要性を把握している。そこで、制御部は、指示装置9によって部品の再投入を作業者Mに指示する。作業者Mに指示する方法として、音声や光(ランプの点滅や、モニタ画面への表示)を用いることができる。
【0069】
ここで、作業者Mの定型作業について説明する。作業者Mは、部品投入のため、部品と追加部品の両方を手に持って投入部4に行き、部品を投入し、その足で、途中部品搬入装置6のところに行って追加部品を投入し、さらに、その足で、取出部5のところに行って部品と追加部品とが一体となった部品(製品)を取り出す。作業者Mは、取り出した製品の外観チェック、梱包、箱詰めなどを行い、次の部品投入のための部品準備などを行い、以下、これらの動作を繰り返す。また、作業者Mが1人で複数の機械部12に対応したり、1つの人セル部11に複数の作業者Mが居て、各人が機械部12に対して順番に対応することもある。
【0070】
上述のような作業者Mの定型作業に対し、指示装置9に従って部品の再投入を行うのは非定型作業である。非定型作業は、作業手順の混乱を来したりして作業能率を下げることになるので、できるだけ回避する必要がある。例えば、人セル部11における複数の作業者Mが順番に巡回して作業を行う場合に、非定型作業によって1人の作業者の作業が遅れると、それにつれて後続の作業者の作業も遅れることになる。しかしながら、非定型作業は不可避であり、非定型作業が発生した場合に、極力その影響が出ないようにする必要がある。例えば、指示装置9によって部品の再投入が指示されると、部品の投入のみを行う必要があり、追加部品は投入する必要がなくなるので、部品と追加部品とをもって投入部4に行った作業者Mは、投入不要となった追加部品をストッカSTに仮置きして取出部5のところに向かう。もしも、追加部品をそのまま持って、取出部5のところに向かうと、追加部品の所持やその後の処置が煩雑であり、作業が遅滞するおそれがある。
【0071】
本システム1と作業者Mの一連の動作を説明する。図5に示すように、システム1が稼働開始すると定型作業による生産が行われ(S1)、部品が順路の途中で部品排出装置によって排出されたならば(S2でYes)、指示装置9が再投入すべき部品を作業者Mに指示し(S3)、作業者Mは指示された部品を再投入し、続けて投入予定だった他の部品、すなわち追加部品をストッカSTに仮置きする(S4)。仮置き後(S4)、または、部品が順路の途中で排出されてないとの判断の後(S2でNo)、生産終了か否かの判断がなされ(S5)、稼働継続(S5でNo)、または終了とされる(S5でYes)。
【0072】
指示装置9を備えた本実施形態によれば、順路の途中で不良部品が排出された場合に、機械部12に生じた部品の不足を解消することができるので、機械部12の稼働率が下がらないようにすることができる。また、指示装置9によって再投入の指示をするので、作業者Mが常に機械部12の状況を見ているとは限らず不良部品が排出されたか否かを認識できない状況においても、部品を再投入する必要がある場合に再投入を実施でき、機械部12の動作が待ち状態になるのをより確実に回避できる。
【0073】
また、ストッカSTを備えた本実施形態によれば、追加部品搬入装置6のところに投入のため持って行った追加部品を投入する必要がなくなった場合に、その追加部品をストッカSTに仮置きできるので、その追加部品の持ち帰り作業や戻し作業などといった作業者Mの、定型作業以外の作業を減らすことができ、作業者Mの作業効率を下げないようにすることができる。つまり、作業者Mは機械部12に追加部品を投入するのを中止したとしても仮置き場所であるストッカSTに追加部品を置くことができるので、実質的に、作業者Mの作業は定型作業とすることができる。仮置きされた部品は、後でまとめて処理することにより、生産効率の低下を最小限にすることができる。
【0074】
(入力装置)
次に、入力装置10について説明する。機械部12側で、搬送ミスや組立ミスなどが発生した場合に、人手によって部品を取り出すこと(排出すること)も行われる。機械部12に各種センサを備えて、搬送系2や処理装置3その他の各部に存在する全ての投入された部品の存在をセンサによって逐一完全に把握することは、コストや効果の観点から現実的ではないので、作業者Mが部品を取り出したか否かを100%機械部12側で把握することはできない。そこで、作業者Mが部品を取り出した際には、入力装置10を用いて、作業者Mが部品を取り出したという情報を作業者Mから機械部12側へ入力する。機械部12の制御部は、この入力された情報、例えば、どの部品をどの処理装置3から排出したかという情報に基づいて、上述の指示装置9を用いて作業者Mに部品の再投入を指示することができる。入力装置10は、例えば、押しボタンやタッチパネルなどの入力装置で構成することができる。
【0075】
本システム1と作業者Mの一連の動作を説明する。図6に示すように、システム1が稼働開始すると定型作業による生産が行われ(S11)、順路の途中で人手により不良部品を排出したならば(S12でYes)、作業者Mは、不良部品を排出したことを入力装置10を用いて機械部12側に入力する(S13)。入力後(S13)、または、部品排出がないとの判断の後(S12でNo)、生産終了か否かの判断がなされ(S15)、稼働継続または終了とされる。入力装置10を備えた本実施形態によれば、人手により順路の途中で機械部12が感知しないところで不良部品を排出した場合に、機械部12側の制御における部品数の不整合などを解消して機械部12における制御エラーなどの不具合発生を回避できるので、機械部12の稼働率が下がらないようにすることができる。
【0076】
(組合せ後の部品不良と指示装置)
次に、不良部品が発生したことにより作業者Mが取出部5から部品を取り出す必要がない場合に、上述の指示装置9が行う処理について説明する。部品とその部品に対する追加の部品とが組み合わされた後の互いに一体となった部品が、例えば、位置Kにおける処理装置3において不良品とされ、排出機構35aによって排出容器35に排出されることにより、順路外に排出された場合に、そのような部品は取出部5に出てくることはない。このような組合せ後の部品に不良が発生した場合には、作業者Mは取出部5で部品(製品)を取り出すことができないので、作業者Mの次の作業である梱包作業などを行うことができなくなる。また、作業者Mが不良部品の次に機械部12から出てくる製品を待って取り出しを行うと、その作業者Mは、製品1個分の部品(部品と追加部品)の投入に対し、不良品と次に出てくる製品の2個分の部品を取り出すことになり、投入と取り出しの数が合わなくなる。このような非定型作業が行われると、その作業者Mまたは、その後の作業者Mの作業手順に遅滞や混乱が生じたり、機械部12における稼働が乱れたりすることになる。このような不具合発生を防止するために、機械部12の制御部は、投入された部品や、追加部品や、排出された部品や、再投入された部品などの、諸々の部品の個数を常時把握して、機械部12内の部品数の過不足を自動的に認識している。そして、指示装置9は、制御部からの部品排出の情報を受けて、部品排出装置が不良部品を排出したことにより人が取出部5から部品を取り出す必要がないと判断すると共に、取り出し作業をすることなく次の作業をするように表示して、作業者Mに知らせる。
【0077】
本システム1と作業者Mの一連の動作を説明する。図7に示すように、システム1が稼働開始すると定型作業による生産が行われ(S21)、部品が組み合わされた後に部品排出装置、例えば排出機構35aによって部品が順路から排出されたならば(S22でYes)、機械部12は指示装置9によって、取出部5からの部品取出を行わずに次の作業を行うように作業者Mに指示する(S23)。作業者Mに指示した後(S23)、または、部品が組み合わされた後に順路から排出されてはいないとの判断の後(S22でNo)、生産終了か否かの判断がなされ(S24)、稼働継続または終了とされる。本実施形態によれば、作業者Mが、既に排出された部品を取り出そうとして取出部5において無駄に待機することを防止できるので、作業者Mの作業効率、従って機械部12の生産効率を落とさないようにすることができる。
【0078】
(処理装置の稼働台数)
次に、機械部12が処理装置3として同種のものを複数台含む場合に、機械部12への部品の投入サイクルタイムの計測結果に基づいて、同種の処理装置3の稼働台数を増減することについて説明する。ここで、同種の処理装置3は、図1の位置A,B,Cにおける処理装置3の組や、位置H,I,Jにおける処理装置3の組などである。このような同種の処理装置3は、機械部12の動作サイクルタイム(動作周期、例えば、処理済み部品を取出部5の位置b2に次々と出すときの時間間隔、またはその設定値)を速くするために複数台が稼働され、遅くてよい場合には稼働台数が減らされる。
【0079】
本システム1の動作を説明する。図8に示すように、システム1が稼働開始すると定型作業による生産が行われ(S31)、機械部12の制御部は、機械部12への部品投入サイクルタイムTcを自ら計測する(S32)。サイクルタイムTcが閾値Hc以上であれば(S33でYes)、同種の処理装置3の稼働台数を減らし(S34)、サイクルタイムTcが閾値Hc以上でなければ(S33でNo)、稼働台数を通常台数とする(S35)。その後、生産終了か否かの判断がなされ(S36)、稼働継続または終了とされる。部品投入サイクルタイムTcは、過去の平均値、例えば、過去10回の部品投入サイクルタイムの平均値を用いるようにする。本実施形態によれば、例えば、人セル部11への投入人数の増減や、作業者の熟練度の違いなどによって、部品投入のサイクルタイムTcが増減するときに、そのサイクルタイムTcに見合った台数の処理装置3だけを稼働するように稼働数をリアルタイムで増減することにより、装置稼働のためのエネルギ低減や、処理装置の消耗防止ができる。閾値Hcは大きさの異なる複数種類として、サイクルタイムTcを2段階ではなく複数段階で評価し、台数増減を複数段階で行うようにしてもよい。
【0080】
(人へのサイクルタイム指示)
次に、機械部12への部品の投入サイクルタイムTcの計測結果に基づいて、指示装置9を用いて、作業者Mに部品投入または部品取出を指示することについて説明する。図9に示すように、システム1が稼働開始すると定型作業による生産が行われ(S41)、機械部12の制御部は、機械部12への部品投入サイクルタイムTcを自ら計測し(S42)、その計測値Tcよりも一定時間δだけ短い時間間隔(Tc−δ)で、作業者Mに部品投入または部品取出を指示する(S43)。その後、生産終了か否かの判断がなされ(S44)、稼働継続または終了とされる。
【0081】
部品投入サイクルタイムTcは、過去の平均値、例えば、過去10回の部品投入サイクルタイムの平均値を用いるようにすればよい。また、複数人の作業者Mが、人セル部11内で交互に作業をする場合に、複数の作業者の中で最も作業が速い人のサイクルタイムを部品投入サイクルタイムTcとしてもよい。また、機械部12の動作サイクルタイムは時間間隔(Tc−δ)よりもある一定の割合、または一定の時間だけ、さらに短い時間となるように調整しておく。これにより機械部12の動作サイクルタイムは作業者Mのサイクルタイムよりも常に少し速い状況で稼働し、作業者Mの改善能力を最大限に引き出すことができる。本実施形態によれば、作業者Mの作業時間間隔よりも少し早目の作業要求を常にリアルタイムで作業者Mに出すことにより、作業者Mの作業効率の向上を常に促し、作業熟練度の向上や作業効率の向上を図ることができる。
【0082】
(機械部のサイクルタイム)
次に、機械部12の動作サイクルタイムを、複数の作業者M毎に計測した作業のサイクルタイムの中で最も短い時間に基づいてリアルタイムで自動調整することについて説明する。図10に示すように、システム1が稼働開始すると定型作業による生産が行われ(S51)、機械部12の制御部は、作業に従事するk人の作業者の全員について、作業者M毎に機械部12への部品投入サイクルタイムTc(n)、n=1,2,・・,kを自ら計測し(S52)、これらのサイクルタイムのうちで一番短いサイクルタイムTc(x)に基づいて機械部12の動作サイクルタイムTmを設定する(S53)。例えば、Tmは、Tc(x)よりもある一定の割合、または一定の時間だけ、さらに短い時間となるように設定すればよい。その後、生産終了か否かの判断がなされ(S54)、稼働継続または終了とされる。本実施形態によれば、人セル部11における個々の作業者の中で最も作業の速い人の作業サイクルタイムに基づいて機械部12を動かすことにより、作業者Mの待ち時間などの無駄を減らして、作業熟練度の向上や作業効率向上を図ることができる。複数の作業者Mの各人毎の部品投入サイクルタイムTc(n)は、各人に識別用のRFIDタグなどを装着させて部品投入タイミングを各人毎に記録することにより計測することができる。なお、各個人別のサイクルタイムは、機械部12と作業者Mとを1対1対応をさせるために、人数に応じて換算する必要がある。
【0083】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限らず種々の変形が可能である。例えば、機械部12に投入される部品として、部品とその部品に対する追加の部品の2種類の場合を説明したが、3種類以上の任意の複数の部品を投入すると共に、これらの部品の組合せから成る部品(製品)を取出部5から取り出すようにしてもよい。この場合、投入部4や途中部品搬入装置6のいずれか、または両方を増設してもよい。この場合、部品の順路の途中において、複数種類の部品や部品を組合せて成る部品に不良が発生すると、適宜順路外に排出される。従って、例えば、図3乃至図5で示した再投入すべき部品や、ストッカSTに仮置きされる部品は、排出される部品に応じて変動し、指示装置9は、そのような変動に対応した指示を作業者Mに出す。また、搬送系2、処理装置3、不良部品排出用のコンベア33、排出機構35a等は、部品とその組合せから成る製品の種類や特性に応じて、配置や構成の変更、台数変更などが適宜行われる。また、表示部8と指示装置9とは、同じ装置、例えばモニタ表示装置を備えたコンピュータによって構成することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 フレキシブル生産システム
3 処理装置
4 投入部
5 取出部
6 途中部品搬入装置
7 ライトカーテン
8 表示部
9 指示装置
2a 当接部
10 入力装置
11 人セル部
12 機械部
20 ベースフレーム
21 ハンド部
22 アクチュエータ
30 台車
33 コンベア
30a 車輪
ST ストッカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の作業領域である人セル部に隣接して配置され、人セル部から投入される部品に処理を施す機械部を備えたフレキシブル生産システムにおいて、
前記機械部は、
部品を把持し移載するための複数のハンド部と、
前記ハンド部を移動させる複数のアクチュエータと、
前記各アクチュエータによる前記ハンド部の移動の方向に沿って配置され、前記部品に対して処理を施す複数の処理装置と、
前記人セル部側から当該機械部に対して部品を投入するための投入部と、
当該機械部から前記人セル部側に部品を取り出すための取出部と、
前記投入部から前記各処理装置を経由して前記取出部に至る部品の順路の途中に前記人セル部側から前記部品に対する追加部品を投入し供給するための途中部品搬入装置と、を備えていることを特徴とするフレキシブル生産システム。
【請求項2】
前記複数のアクチュエータは、互いに平行に離間して水平配置された2本のアクチュエータと、前記2本のアクチュエータの共通の一端部側において両アクチュエータに対して段違いに交差する1本のアクチュエータとから成り、前記投入部または取出部がそれぞれ前記平行配置された2本のアクチュエータのいずれかの各他端部側に配置され、
前記ハンド部は、前記3本のアクチュエータに少なくとも2つずつ備えられていることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項3】
前記ハンド部は、前記処理装置間における部品の移載を、部品を仮置きすることなく直接行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項4】
前記処理装置は、前記機械部に対して着脱自在とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項5】
前記処理装置は、車輪付の台車に乗せられており、前記台車を前記アクチュエータのベースフレームに設けた当接部に突き当てることにより該アクチュエータに対する離間位置が決められ、前記台車の前記ベースフレームからの機械的高さにより高さ位置が決められ、前記アクチュエータによる移動方向における前記ハンド部との相対位置が該アクチュエータを制御するソフトウエアによる設定によって決められることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項6】
前記アクチュエータの1つに属する処理装置は、互いに等ピッチで配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項7】
前記機械部は、不良部品を排出するためのコンベアを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項8】
前記機械部と人セル部の境界に該境界を横切る物体を検知するためのライトカーテンを備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項9】
前記機械部における動作周期を表示するための表示部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項10】
前記機械部は、
前記処理装置から処理の不具合が通知された部品を不良部品として部品の順路から自動排出する部品排出手段と、
前記部品排出手段によって部品が不良部品として排出された場合に、再投入すべき部品を人に指示する指示装置と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項11】
人手により部品を不良部品として前記機械部から排出した場合に、人が部品を排出したことを前記機械部側に入力するための入力装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項12】
人が部品を仮置きするためのストッカを前記投入部または前記途中部品搬入装置に設けていることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項13】
前記部品排出手段が不良部品を排出したことにより人が前記取出部から部品を取り出す必要がないと判断すると共に、取り出し作業をすることなく次の作業をするように人に指示する指示装置を備えていることを特徴とする請求項10に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項14】
前記機械部が前記処理装置として同種のものを複数台含む場合に、該機械部が自ら計測した部品の投入サイクルタイムの計測結果に基づいて、前記同種の処理装置の稼働台数を増減することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項15】
前記機械部が自ら計測した部品の投入サイクルタイムの計測結果に基づいて、その計測値より一定時間短い時間間隔で人に部品投入または部品取出を指示する指示装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。
【請求項16】
前記機械部のサイクルタイムを、前記機械部が人毎に自ら計測した部品の投入サイクルタイムの中で最も短い時間に基づいて自動調整することを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載のフレキシブル生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−152865(P2010−152865A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175847(P2009−175847)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】