説明

フレキシブル配線基板、フレキシブル配線基板の組付構造及び電子機器

【課題】折り曲げて用いても、配線を通る信号にノイズが重畳しにくいフレキシブル配線基板、フレキシブル配線基板の組付構造及び電子機器を提供する。
【解決手段】フレキシブル配線基板15は、基材31(ベースフィルム)と、基材31の両面に形成された信号線32及びグランド層33と、信号線32及びグランド層33を被覆する保護膜38とを備えている。信号線32及びグランド層33は、スルーホール34〜37を介して基材31と表面と裏面と交互に入れ替わる経路で形成され、互いに基材31の反対側の面に形成されている。フレキシブル配線基板15を折り畳んだ状態で面が対向する部分では、信号線32とグランド層33とが対向している。また、屈曲部R1,R2では、グランド層33が基材31の外周面側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り曲げて用いられるフレキシブル配線基板、フレキシブル配線基板の組付構造及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフレキシブル配線基板として、例えば特許文献1には、フレキシブル配線基板の配線から放射されるノイズを小さくするための方法として、マイクロストリップラインを用いる方法が開示されている。すなわち、このフレキシブル配線基板では、基板(基材)の一方面にコンタクタ(配線)が設けられ、他方面にグランドが設けられた構造をとる。また、このフレキシブル配線基板には、信号の波長よりも十分短い長さで基板を削除して誘電損を低減するパターン(凹部)が設けられ、さらにノイズを低減できる構成となっていた。
【0003】
フレキシブル配線基板は可撓性を有するため、折り曲げて用いられる(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−334410号公報
【特許文献2】特開平5−327135号公報
【特許文献3】特開2007−134473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フレキシブル配線基板を折り曲げた場合、基板同士が対向する面で信号線同士が対向することになる。この状態において、フレキシブル配線基板の信号線を伝送される高周波信号と他の信号間で容量結合が起き、それにより信号の立ち上がり/立ち下がり時の高周波信号が重畳してノイズとなるという問題があった。これらのノイズにより、信号の信号波形が本来とるべき波形と異なり、場合によっては誤動作の原因となる恐れがあった。なお、フレキシブル配線基板を折り曲げたときに、信号線が、他の基板の信号線、又は筐体の金属に近接する場合がある。このような場合も、信号線にノイズが重畳する場合がある。
【0006】
なお、特許文献2、3には、フレキシブル配線基板を折り曲げた内周側に、補強板や、形状保持部材が設けられた構成が開示されている。しかし、特許文献2では、回路部品の実装面とその反対側の面(非配線面)との間に補強板が挟持される構成なので、そもそも信号線の容量結合が起こらない構成であった。また、特許文献3では、基板の片面だけに導体パターンが形成されており、折り曲げたときに、導体パターンのない基板の反対側の面に形状保持部材が設けられる構成なので、そもそも導体パターン同士の容量結合が起こらない構成であった。しかも、形状保持部材は屈曲部分に設けられていただけなので、仮にフレキシブル配線基板を導体パターン側の面が内周側となるように折り曲げ、その内周側に形状保持部材を設けたとしても、屈曲部以外の部分では対向する面が近接してしまい、導体パターン同士の容量結合が起こってしまう。
【0007】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、折り曲げて用いても、配線を通る信号にノイズが重畳しにくいフレキシブル配線基板、フレキシブル配線基板の組付構造及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、折り曲げて用いられるフレキシブル配線基板であって、絶縁材料よりなるフレキブルな基材と、前記基材に施された配線と、前記基材を前記配線の少なくとも一部が内周側の面に位置するように折り曲げた状態で当該基材同士の対向する面間に位置し当該面間における前記配線の容量結合を抑制するノイズ抑制手段とを備えたことを要旨とする。
【0009】
この発明によれば、基材を配線の少なくとも一部が内周側の面に位置するように折り曲げた状態では、当該基材同士の対向する面間にノイズ抑制手段が位置し、当該ノイズ抑制手段によって、当該面間における配線の容量結合が抑制される。よって、フレキシブル配線基板を折り曲げて用いても、配線を通る信号に容量結合に起因するノイズが重畳しにくい。
【0010】
本発明のフレキシブル配線基板では、前記ノイズ抑制手段は、前記基材を折り曲げた状態で当該基材同士の対向する面に、前記配線とグランド層とが当該折り曲げた内周側で対向して位置するようにそれぞれ形成されていることにより構成されることが好ましい。
【0011】
この発明によれば、フレキシブル配線基板を折り曲げた状態では、基材同士の対向する面では配線とグランド層とが対向する。このため、配線同士の容量結合が生じにくくなるので、例えば伝送速度の比較的高速な信号が配線を伝送しても、信号へのノイズの重畳を回避し易くなる。
【0012】
本発明のフレキシブル配線基板では、前記グランド層は、前記基材が折り曲げられたときにできる屈曲部では当該基材の外周面側に形成されていることが好ましい。
この発明によれば、フレキシブル配線基板が折り曲げられたときにできる屈曲部では基材の外周面側にグランド層が位置する。例えばフレキシブル配線基板の組付け状態で、屈曲部の外周面側に、他の電子部品や回路基板、金属筐体(電子機器のケース(ハウジング)、フレーム、シールド用のカバーや筐体など)の金属が近接して位置する場合でも、屈曲部ではグランド層が外周側に施された基材の内周側に配線が位置することになるので、その配線と他の電子部品や回路基板側の配線(例えば信号線)との間での容量結合の心配がなくなる。また、筐体の金属が屈曲部に近接して位置しても、静電気による電流が筐体の金属を流れた際に発生した電磁ノイズは、屈曲部の外周面側のグランド層でシールドされる。このため、フレキシブル配線基板の配線を伝送する信号にノイズが重畳しにくい。
【0013】
本発明のフレキシブル配線基板では、前記配線は、前記基材を折り曲げたときにできる屈曲部を当該基材の長手方向に挟んだ両側で当該基材の異なる面にそれぞれ形成された第1配線部及び第2配線部と、前記第1配線部と前記第2配線部とを接続するように前記基材を貫通する導電結合部とを備え、前記グランド層は、前記第1配線部と前記基材の反対側の面に形成された第1グランド層部と、前記第2配線部と前記基材の反対側の面に形成された第2グランド層部と、前記第1グランド層部と前記第2グランド層部とを接続するように前記基材を貫通する導電結合部とを備えることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、基材の長手方向に屈曲部を挟んだ両側では、第1配線部と第2配線部とが基材の異なる面に位置し、それぞれ基材を貫通する導電結合部(例えばスルーホールやコンタクトホール等)を介して互いに導通している。一方、第1配線部と基材の反対側の面に位置する第1グランド層部と、第2配線部と基材の反対側の面に位置する第2グランド層部は、それぞれ基材の異なる面に位置し、基材を貫通する導電結合部を介して互いに導通している。よって、フレキシブル配線基板を、その長手方向(配線延在方向)と交差する仮想線(折り目)で折り曲げたときに、その折り曲げた内周側では配線とグランド層とが対向することになる。その結果、配線の信号へのノイズの重畳を抑えることができる。このように信号へのノイズの重畳を抑えられることから、フレキシブル配線基板を、その長手方向(配線延在方向)と交差する折り目で折り曲げることができ、フレキシブル配線基板をコンパクトに折り畳むことができる。
【0015】
本発明のフレキシブル配線基板では、前記屈曲部の折り目を付与する刳り抜き部をさらに有し、前記導電結合部は前記基材の長手方向において前記刳り抜き部からずれた位置に設けられていることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、導電結合部が、基材の長手方向において屈曲部の折り目を付与する刳り抜き部からずれた位置に設けられているので、基材が導電結合部の部分で大きな角度で折れ曲がることを回避し易い。よって、基材が導電結合部の部分で大きな角度で折れ曲げられた場合に起こる導電結合部のクラックや剥がれ等に起因する導通不良などの発生を回避し易くなる。
【0017】
本発明のフレキシブル配線基板では、折り畳まれた状態で重なり方向の両側に位置する二つの部分の外面のうち、前記配線が前記基材の外側に位置する側の部分の外面には、間隔保持部材が設けられていることが好ましい。
【0018】
この発明によれば、フレキシブル配線基板を折り畳んで組み付けた場合、フレキシブル配線基板の重なり方向の両側に位置する二つの部分の外面が、周辺の金属製の部材(金属筐体等)や他の基板と対向する可能性が高い。このとき、配線が基材の外側に位置する側の部分にはその外面に間隔保持部材が設けられているため、この間隔保持部材の介在によって、その配線と、周辺の金属製の部材(金属筐体等)や他の基板との間には、少なくとも間隔保持部材の厚み相当の間隔が確保される。この結果、静電気よる電流が金属製の部材を流れたときに発生する電磁ノイズの配線の信号への影響を小さく抑制したり、配線と他の基板上の配線との容量結合を小さく抑制できる。従って、フレキシブル配線基板を折り畳んでも、配線を通る信号にノイズが重畳しにくい。
【0019】
本発明は、前記配線は前記基材の少なくとも一方の面に施されており、前記ノイズ抑制手段は、前記基材を折り曲げた状態で当該基材同士の対向する面間の間隙に介在して位置しうる部位に取り付けられた間隔保持部材であることが好ましい。
【0020】
この発明によれば、フレキシブル配線基板が折り曲げられた状態では、間隔保持部材が基材同士の対向する面間の間隙に介在する。よって、基材同士の対向する面に施された配線同士が対向しても、当該配線同士の間隔が少なくとも間隔保持部材の厚み相当以上確保される。よって、フレキシブル配線基板を折り曲げても、配線同士の容量結合が小さく抑えられ、配線を通る信号に容量結合に起因するノイズが重畳しにくい。
【0021】
本発明は、上記発明の前記フレキシブル配線基板を備え、当該フレキシブル配線基板が二つの電子部品を接続すると共に折り曲げられた状態で組み付けられているフレキシブル配線基板の組付構造であって、前記配線と前記グランド層とが前記基材同士の対向する面にそれぞれ対向して位置するように前記フレキシブル配線基板が折り曲げられていることを要旨とする。この発明によれば、配線とグランド層とが対向するので、上記のフレキシブル配線基板の発明と同様に、配線同士の容量結合を抑えられるので、配線を伝送する信号にノイズが重畳しにくい。
【0022】
本発明は、上記発明の前記フレキシブル配線基板を備え、当該フレキシブル配線基板が、二つの電子部品のうち少なくとも一方が金属筐体により少なくとも一部覆われた状態にある当該二つの電子部品を接続していると共に、前記配線と前記グランド層とが前記基材同士の対向する面に対向して位置するように折り畳まれた状態で組み付けられているフレキシブル配線基板の組付構造であって、前記フレキシブル配線基板が折り畳まれてできた屈曲部のうち前記基材の外周面側にグランド層が形成された屈曲部が前記金属筐体に対向した状態で配置されていることを要旨とする。
【0023】
この発明によれば、金属筐体と対向する屈曲部では基材の外周面側にグランド層が形成されているため、グランド層と金属筐体とが対向する。よって、配線を伝送する信号が、例えば金属筐体に静電気による電流が流れて発生する電磁ノイズの影響を受けにくい。
【0024】
本発明は、上記発明の前記フレキシブル配線基板を備え、二つの電子部品のうち少なくとも一方が金属筐体により少なくとも一部覆われた状態にある当該二つの電子部品を接続している前記フレキシブル配線基板が折り畳まれた状態で組み付けられているフレキシブル配線基板の組付構造であって、前記フレキシブル配線基板が折り曲げられてできた屈曲部のうち前記基材の外周面側に前記配線が施された屈曲部の外周面と、当該外周面と対向している金属筐体との間には間隔保持部材が配置されていることを要旨とする。
【0025】
この発明によれば、金属筐体と対向する屈曲部では基材の外周面側に配線が施されているが、配線と金属筐体との間には間隔保持部材が介在する。よって、配線と金属筐体との間には、間隔保持部材の厚み相当以上の間隔が保持されるので、例えば金属筐体に静電気による電流が流れて発生する電磁ノイズが配線を伝送する信号に重畳しにくい。
【0026】
本発明は、請求項5に記載の前記フレキシブル配線基板を備え、当該フレキシブル配線基板が、二つの電子部品のうち少なくとも一方が金属筐体により少なくとも一部覆われた状態にある当該二つの電子部品を接続している前記フレキシブル配線基板が折り畳まれた状態で組み付けられているフレキシブル配線基板の組付構造であって、前記フレキシブル配線基板が対向する面間、前記フレキシブル配線基板が折り畳まれてできた屈曲部と前記金属筐体との間、前記フレキシブル配線基板と前記電子部品との間のうち少なくとも一つの間には、間隔保持部材が介在していることを要旨とする。
【0027】
この発明によれば、フレキシブル配線基板が対向する面間に間隔保持部材が介在する構成や、フレキシブル配線基板と電子部品との間に間隔保持部材が介在する構成では、基材同士の対向する面間で対向する配線同士の容量結合が抑えられるので、配線を伝送する信号にノイズが重畳することを回避できる。また、フレキシブル配線基板の屈曲部と金属筐体との間に間隔保持部材が介在する構成では、配線を伝送する信号に、例えば金属筐体に静電気による電流が流れて発生する電磁ノイズが重畳しにくい。
【0028】
本発明は、電子機器であって、上記発明のフレキシブル配線基板の組付構造を備えたことを要旨とする。この発明によれば、電子機器によって、上記のフレキシブル配線基板の組付構造と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態のフレキシブル配線基板の組付構造を示す模式側断面図。
【図2】フレキシブル配線基板の模式側断面図。
【図3】フレキシブル配線基板の一部破断した模式平面図。
【図4】電子機器を示す斜視図。
【図5】第2実施形態におけるフレキシブル配線基板を示す模式側面図。
【図6】フレキシブル配線基板の組付構造を示す模式側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図4は、電子機器の斜視図を示す。図4に示すように、電子機器11はハウジング11aを備え、ハウジング11a内には電子ユニット12が内蔵されている。電子ユニット12は、電子部品としてのメイン基板13と、メイン基板13の図4における左端部上面に配置された電子部品としてのハードディスクドライブ(以下、「HDD14」という)とを備えている。
【0031】
メイン基板13とHDD14は、フレキシブル配線基板15を介して電気的に接続されている。フレキシブル配線基板15は、その長手方向二箇所で折り曲げられ、三つ折りの状態でコンパクトに折り畳まれている。メイン基板13及びHDD14には、金属製の筐体(以下、「金属筐体16」という)が、メイン基板13の上面全域(部品実装エリア全域)を覆いつつHDD14の上面に至るように組み付けられている。メイン基板13には、HDD14に対してデータの読み出し/書き込み処理を行うコントローラーや、このコントローラーに必要に応じて指示を出すCPUなどのチップ部品を含む各種の電子部品が実装されている。コントローラーによるHDD14へのアクセスは、フレキシブル配線基板15を介して行われる。このとき、フレキシブル配線基板15には、伝送速度が1.5Gbpsや3Gbpsの高速の信号が伝送される。なお、電子機器11内には、メイン基板13の他に図示しないサブ基板なども配置されている。
【0032】
本実施形態の電子機器11は、例えば画像を表示可能な表示部(図示省略)を備えた画像表示装置である。表示部に画像を表示するときには、メイン基板13上のCPUがコントローラーを介してHDD14にアクセスして指定の画像ファイルを読み込んで、その読み込んだ画像を表示部に表示させる表示処理を行う。もちろん、電子機器11は、画像表示装置に限定されず、プリンター、スキャナー、プロジェクター、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピューターなどでもよい。
【0033】
図1は、メイン基板13とHDD14とを接続するフレキシブル配線基板の組付構造を示す模式側断面図である。図1に示すように、フレキシブル配線基板15の長手方向両端部にはコネクター17,18が取り付けられている。そして、一方のコネクター17がメイン基板13上に固定されたコネクター19と電気的に接続され、他方のコネクター18が、HDD14側に設けられたコネクター20と電気的に接続されている。そして、フレキシブル配線基板15は、前述のとおり、その長手方向二箇所で折り曲げられて、三つ折りの状態でコンパクトに折り畳まれている。このフレキシブル配線基板15を折り畳んだ組付構造は、電子機器11のコンパクト化に寄与している。
【0034】
金属筐体16は、メイン基板13の図1における右寄り部分をその上面に近接する状態で覆い、コネクター19の近傍位置から上側へ屈曲してHDD14の上面高さまで延び、その後、HDD14側へ屈曲して水平に延び、HDD14の上面を覆うように組み付けられている。このため、フレキシブル配線基板15は、メイン基板13とHDD14と金属筐体16とに囲まれた比較的狭い空間内に、折り畳まれることでコンパクトに収容されている。
【0035】
また、メイン基板13上におけるフレキシブル配線基板15の下側となる箇所には、コネクター19に接続された配線パターン13aが位置すると共に、メイン基板13上の他の回路に接続された配線パターン13bが位置している。また、HDD14は、金属製の筐体(以下、金属筐体21)で被覆されており、コネクター20は金属筐体21の開口から露出した状態にある。また、フレキシブル配線基板15の折り畳まれた状態の上面には、間隔保持部材22が貼り付けられている。本例の間隔保持部材22は、例えば絶縁樹脂シートにより構成される。
【0036】
次にフレキシブル配線基板15の構造を、図2及び図3を用いて詳しく説明する。図2はフレキシブル配線基板の模式側断面図、図3はフレキシブル配線基板の一部破断した模式平面図を示す。なお、図2では、間隔保持部材22の図示を省略している。また、図3では、説明の便宜上、信号線を2本とした模式図としたが、実際は、これより多い本数の信号線が施されている。また、必要に応じて回路基板が、フレキシブル配線基板15の上側や横側に配置されてもよい。
【0037】
図2、図3に示すように、フレキシブル配線基板15は、基材31(ベースフィルム)と、基材31の両面に亘って形成された配線としての信号線32及びグランド層33とを備える。基材31は、絶縁材料のフィルムよりなるもので(例えばポリイミド基板)、可撓性を有している。もちろん、基材31は、フッ素樹脂基板、ガラス基材ビスマレイミドトリアジン樹脂基板、ガラス基材エポキシ樹脂基板、ガラス基材フェノール樹脂基板等を用いてもよい。
【0038】
信号線32及びグランド層33は金属(例えば銅箔)よりなる。本実施形態では、信号線32は、フレキシブル配線基板15の長手方向(図3では左右方向)に沿って延在しており、スルーホール34,35を介して基材31の表面と裏面とに交互に入れ替わる配線経路で形成されている。一方、グランド層33は、基材31の両面のうち信号線32と反対側の面に形成され、スルーホール36,37を介して裏面と表面とに交互に入れ替わる経路で形成されている。すなわち、信号線32及びグランド層33は、基材31の表面と裏面とを折り畳み回数と等しい数だけ交互に入れ替わるように施されている。但し、信号線32側のスルーホール34,35とグランド層33側のスルーホール36,37の位置がフレキシブル配線基板15の長手方向に若干ずれているため、信号線32とグランド層33が基材31の同じ側の面に施されている箇所もある。なお、配線には、信号線32の他に図示しない電源線なども含まれている。
【0039】
フレキシブル配線基板15は、本例では、図2に示すような三つ折り(三重)に折り畳んで使用されることが前提であり、信号線32とグランド層33は、フレキシブル配線基板15を折り畳んだときに対向する面間にできる二つの間隙を挟んで対向するようになっている。また、フレキシブル配線基板15が折り曲げられてできる二つの屈曲部では、グランド層33が基材31の外周面側に位置するように形成されている。なお、本実施形態では、フレキシブル配線基板15を図2に示すように折り畳んだ状態で、対向する面間の間隙を挟んで信号線32とグランド層33とが対向するように配置した構成により、ノイズ抑制手段が構成されている。
【0040】
ここで、説明の便宜上、図2のようにフレキシブル配線基板15を三つ折りに折り畳んだ状態で、三重の各段で略平坦に延びている部分を、上から順番に第1平坦部L1、第2平坦部L2、第3平坦部L3と呼ぶことにする。また、第1平坦部L1と第2平坦部L2とを繋ぐ折り曲がった部分を第1屈曲部R1、第2平坦部L2と第3平坦部L3とを繋ぐ折り曲がった部分を第2屈曲部R2と呼ぶことにする。また、フレキシブル配線基板15の図2における第1平坦部L1の上面側の面を表面(第2平坦部L2では下面、第3平坦部L3では上面)と呼び、第1平坦部L1の下面側の面を裏面(第2平坦部L2では上面、第3平坦部L3では下面)と呼ぶことにする。
【0041】
図2に示すように、信号線32は、第1平坦部L1で基材31の表面(上面)側に形成された第1信号線32Aと、第1屈曲部R1及び第2平坦部L2で基材31の裏面(内面)に形成された第2信号線32Bと、第2屈曲部R2及び第3平坦部L3で基材31の表面(内面)に形成された第3信号線32Cと、2つのスルーホール34,35とからなる。第1信号線32Aと第2信号線32Bはスルーホール34によって導通され、第2信号線32Bと第3信号線32Cはスルーホール35によって導通されている。
【0042】
また、グランド層33は、第1平坦部L1で基材31の裏面(内面)に形成された第1グランド層33Aと、第1屈曲部R1及び第2平坦部L2で基材31の表面に形成された第2グランド層33Bと、第2屈曲部R2及び第3平坦部L3で基材31の裏面に形成された第3グランド層33Cと、スルーホール36,37とからなる。そして、第1グランド層33Aと第2グランド層33Bはスルーホール36によって導通され、第2グランド層33Bと第3グランド層33Cはスルーホール37によって導通されている。
【0043】
よって、信号線32は、第1平坦部L1では基材31の表面を通り、スルーホール34を介して基材31の裏面へ至り、第1屈曲部R1では基材31の内周面(裏面)を通るとともに第2平坦部L2で基材31の上面(裏面)を通る。さらに信号線32は、第2平坦部L2の図2における左端部で基材31の上面(裏面)からスルーホール35を介して基材31の下面(表面)へ至り、第2屈曲部R2では基材31の内周面(表面)を通ると共に第3平坦部L3では基材31の上面(表面)を通っている。
【0044】
一方、グランド層33は、基材31に対し信号線32とほぼ反対側の面を通る。すなわち、グランド層33は、第1平坦部L1では基材31の下面(裏面)を通り、スルーホール36を介して基材31の表面へ至り、第1屈曲部R1では基材31の外周面(表面)を通るとともに第2平坦部L2で基材31の下面(表面)を通る。さらにグランド層33は、第2平坦部L2の図2における左端部で基材31の下面からスルーホール37を介して基材31の裏面(上面)へ至り、第2屈曲部R2では基材31の外周面(裏面)を通るとともに第3平坦部L3では基材31の下面(裏面)を通っている。
【0045】
なお、本実施形態では、第1平坦部L1と第2平坦部L2に着目した場合、第1信号線32Aが第1配線部に相当し、第2信号線32Bが第2配線部に相当し、これらを接合しているスルーホール34が導電結合部に相当する。さらに、第1グランド層33Aが第1グランド層部に相当し、第2グランド層33Bが第2グランド層部に相当し、これらを接合しているスルーホール36が導電結合部に相当する。一方、第2平坦部L2と第3平坦部L3に着目した場合、第3信号線32Cが第1配線部に相当し、第2信号線32Bが第2配線部に相当し、これらを接合しているスルーホール34が導電結合部に相当する。さらに、第1グランド層33Aが第1グランド層部に相当し、第2グランド層33Bが第2グランド層部に相当し、これらを接合しているスルーホール36が導電結合部に相当する。
【0046】
また、図2に示すように、フレキシブル配線基板15の信号線32及びグランド層33は、フォトソルダーレジスト膜又はカバーレイ(例えばポリイミド膜)よりなる電気絶縁性の保護膜38で被覆されている。
【0047】
図3に示すように、基材31の表面側に形成された第2グランド層33Bは、スルーホール36,37と接続されるようにその長手方向両端部で延出する複数(本例では3つ)の延出部41,41と、隣同士の延出部41間で信号線32及びスルーホール34,35を避けるように凹んだ凹部42,42とを有している。第2グランド層33Bは図3における左端部に延出する3つの延出部41を介して3つのスルーホール36と接続され、図3における右端部に延出する3つの延出部41を介して3つのスルーホール37と接続されている。
【0048】
また、図3における基材31の裏面側では、第1グランド層33Aがその長手方向右端部にて3つのスルーホール36と接続され、第3グランド層33Cがその長手方向左端部にて3つのスルーホール37と接続されている。
【0049】
また、信号線32については、図3における基材31の表面に施された第1信号線32Aが、第2グランド層33Bの左端側の凹部42内に位置するスルーホール34と接続されている。また、図3における基材31の表面に施された第3信号線32Cが、第2グランド層33Bの右端側の凹部42内に位置するスルーホール35と接続されている。また、図3における基材31の裏面に形成された第2信号線32Bは、その長手方向(配線延在方向)両端部で2つのスルーホール36,37と接続されている。
【0050】
また、図2に示すように、第1屈曲部R1と第2屈曲部R2にはその長手方向略中央位置に、グランド層33を一部除去して形成された刳り抜き部としての凹部43が設けられている。凹部43は、グランド層33のパターン形成過程で銅箔をエッチングで抜くことにより形成されている。図3に示すように、凹部43は、基材31の幅方向(図3では上下方向)に間隔をおいて複数個設けられている。フレキシブル配線基板15を折り曲げたときには、凹部43が屈曲部R1,R2の折り目となり易い。
【0051】
スルーホール34〜37は、これら凹部43の形成位置よりも基材31の長手方向にずらした位置に形成されている。そのため、スルーホール34〜37の形成箇所が折り目となることが回避されるようになっている。このため、スルーホール34〜37が比較的きつい角度で折れ曲がって例えばクラックや剥がれ等を誘発することに起因する導通不良を回避しやすくなっている。なお、凹部43は、基材31の幅方向に一列に形成したが、そのパターン形状は適宜変更でき、例えば複数列配置したり、網目状に施してもよい。なお、信号線32、グランド層33、凹部43などのパターン形成は、露光、現像、エッチング等を用いた方法に限定されず、少なくともそのうちの一部をレーザー加工により形成してもよい。
【0052】
このように構成されたフレキシブル配線基板15は、図1に示すように、その長手方向両端部のコネクター17,18が、メイン基板13側のコネクター19とHDD14側のコネクター20とにそれぞれ接続され、かつ三つ折りに折り畳んだ状態で組み付けられている。
【0053】
このフレキシブル配線基板15を折り畳んだ状態では、図1及び図2に示すように、第1平坦部L1の下面と第2平坦部L2の上面とが対向する。この結果、第1平坦部L1で基材31の下面に施された第1グランド層33Aと、第2平坦部L2で基材31の上面に施された第2信号線32Bとが対向する。また、第2平坦部L2の下面と第3平坦部L3の上面とが対向する。この結果、第2平坦部L2で基材31の下面に施された第2グランド層33Bと、第3平坦部L3で基材31の上面に施された第3信号線32Cとが対向する。このため、折り畳んだ状態では信号線32同士が対向している部分がほとんどないので、対向した信号線同士の容量結合によるノイズの重畳を抑制できる。
【0054】
また、図1に示すように、フレキシブル配線基板15の第1屈曲部R1では、基材31の外周面側に施されたグランド層33(第2グランド層33B)が、金属筐体16と対向している。また、フレキシブル配線基板15の第2屈曲部R2では、基材31の外周面側に施されたグランド層33(第3グランド層33C)が、金属筐体21と対向している。よって、金属筐体16,21を静電気による電流が流れて電磁場ノイズが発生しても、その電磁場ノイズはグランド層33で遮蔽されるため、信号線32の高周波信号への電磁ノイズの重畳を抑制することができる。
【0055】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)フレキシブル配線基板15を折り畳んだ状態では、対向する面間の間隙を挟んで信号線32とグランド層33とが対向する。このため、折り畳んだ状態で信号線32同士が対向することがないので、信号線同士の容量結合が起きにくくなる。よって、信号線32の高周波信号に信号線同士の容量結合に起因するノイズが重畳することを抑制できる。
【0056】
(2)フレキシブル配線基板15の2つの屈曲部R1,R2では、基材31の外周面側にグランド層33を配置し、グランド層33を金属筐体16,21に対向させる構成とした。よって、金属筐体16,21に静電気による電流が流れて電磁ノイズが発生しても、その電磁場ノイズが信号線32の高周波信号に重畳することを抑制できる。
【0057】
(3)屈曲部R1(又はR2)を挟んだ基材31の長手方向の両側で基材31の異なる面に形成された第1信号線32A(又は第3信号線32C)と第2信号線32Bとを、スルーホール34(又は35)を介して接続した。また、第1信号線32A(又は第3信号線32C)と基材31の反対側の面に形成された第1グランド層33A(又は第3グランド層33C)と、第2信号線32Bと基材31の反対側の面に形成された第2グランド層33Bとを、スルーホール36(又は37)を介して接続した。よって、フレキシブル配線基板15を、その長手方向(信号線延在方向)と交差する仮想線(折り目)で折り曲げたときに、対向する面では信号線32とグランド層33とが対向し、信号線32の高周波信号へのノイズの重畳を抑えることができる。このように高周波信号へのノイズの重畳を抑えられることから、フレキシブル配線基板15を、その長手方向と交差する折り目で折り曲げることができ、フレキシブル配線基板15を効果的にコンパクトに折り畳むことができる。例えばフレキシブル配線基板を幅方向(短手方向)と交差する仮想線(折り目)で折り畳むことになると、何重に折り畳んだとしても、その全長に匹敵する長さを収容可能な収容スペースが必要になる。これに対し、フレキシブル配線基板15をその長手方向と交差する折り目で折り畳むことができるので、最大長さを折り畳み数に応じて短くでき、フレキシブル配線基板15のコンパクトな収納な可能となる。
【0058】
(4)スルーホール34〜37を、屈曲部R1,R2の折り目となる凹部43から基材31の長手方向(配線延在方向)に外れた位置に配置したので、スルーホール34〜37の部分で大きな角度で折れ曲がることを回避し易い。よって、スルーホール34〜37の部分で大きな角度で折れ曲がることで、スルーホール34〜37にクラックや剥がれ等が発生し、これが原因で起こる導通不良などを防止し易くなる。このため、スルーホール34〜37を用いた構造の割に、フレキシブル配線基板15の長寿命化や信頼性の向上を実現できる。
【0059】
(5)フレキシブル配線基板15の重なり方向の両側に位置する部分(第1平坦部L1の上面と第3平坦部L3)の外面のうち、基材31の外側に信号線32が位置する外面である第1平坦部L1の上面に、間隔保持部材22を取り付けた。よって、基材31の外側に位置する信号線32(32A)が金属筐体16と対向することになっても、その間に間隔保持部材22が介在することによって、信号線32と金属筐体16との間に比較的広い間隔を保持できる。このため、金属筐体16に静電気による電流が流れた際に発生した電磁ノイズが、信号線32(第1信号線22A)の高周波信号に重畳することを抑制できる。
【0060】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について図5及び図6を用いて説明する。図5はフレキシブル配線基板を真っ直ぐ延ばした状態の模式側面図、図6は、フレキシブル配線基板の組付構造を示す側断面図を示す。
【0061】
図6に示すように、電子機器11の構成は、第1実施形態と同様であり、そのハウジング11a内に電子ユニット12が内蔵されている。電子ユニット12の構成は、メイン基板13、HDD14、フレキシブル配線基板50、金属筐体16等を同様に備えており、フレキシブル配線基板50及びその組付構造が、前記第1実施形態と異なっている。
【0062】
図5に示すように、フレキシブル配線基板50は、三重に折り畳まれた状態で、その長手方向の一端部に固定されたコネクター17がメイン基板13側のコネクター19に接続され、その他端部に固定されたコネクター18がHDD14側のコネクター20に接続されることにより、両者を電気的に接続する状態で組み付けられている。
【0063】
フレキシブル配線基板50には、折り畳まれたときにできる2組の対向する面間の間隙にそれぞれ介在しうる位置に、間隔保持部材51及び間隔保持部材52がそれぞれ取り付けられている。また、フレキシブル配線基板50の折り畳まれた部分と、メイン基板13(配線パターン13a,13b)との間には、間隔保持部材53が介在している。これら間隔保持部材51〜53は、電気絶縁材料(例えば絶縁性の合成樹脂)からなり、フレキシブル配線基板50の上記のように介在しうる所定位置に固定されている。その固定方法は、接着剤等を用いた接着や粘着など適宜な方法を採用できる。なお、本実施形態では、信号線62同士が対向する間隙に介在する間隔保持部材51により、ノイズ抑制手段が構成されている。
【0064】
図5及び図6に示すように、本実施形態のフレキシブル配線基板50は、基材61の一方の面(裏面)に信号線62が施され、基材61の他方の面(表面)にグランド層63が施されている。そして、信号線62とグランド層63は、コネクター17,18との接続部分を除き絶縁性の保護膜38で被覆されている。
【0065】
フレキシブル配線基板50の長手方向一端寄り(図5では左端寄り)の部分の下面(裏面)には、間隔保持部材51が固定されている。また、フレキシブル配線基板50の他端部寄り(図5では右端寄り)の部分には、その上面(表面)に間隔保持部材52が、その下面(裏面)に間隔保持部材53がそれぞれ固定されている。これらの間隔保持部材51〜53の長手方向(配線延在方向)の長さは、図6に示すように平坦部L1,L2,L3の1層分の長さより若干短くなっている。よって、フレキシブル配線基板50の対向する面のほぼ全域に亘る範囲で間隔保持部材51,52が介在し、しかも間隔保持部材51,52が屈曲部R1,R2に至らない少し控えた位置に固定されているので、屈曲部R1,R2を形成する際の妨げとならないようになっている。なお、図6に示すように、屈曲部R1,R2の長手方向中央部には、折り目を付け易くする凹部64,65が形成されている。これらの凹部64,65は、グランド層63をエッチング等で一部抜くことにより形成されている。
【0066】
さらに、図6に示すように、屈曲部R1,R2のうち信号線62が基材61の外周面側に位置する屈曲部R2と、金属筐体21との間には、間隔保持部材54が介在している。この間隔保持部材54は、例えば電気絶縁性の合成樹脂シートよりなり、金属筐体21の側面に固定されている。
【0067】
この第2実施形態によれば、フレキシブル配線基板50を折り畳んだ状態において、第1平坦部L1と第2平坦部L2とが対向する部分で信号線62同士が対向することになるが、対向する面間の間隙に間隔保持部材51が介在する。この結果、信号線62同士の間隔が一定以上の値に保持されるため、信号線62同士の容量結合が抑えられる。このため、信号線62と配線パターン13a,13bとの間隔が一定以上の値に保持され、信号線62同士の容量結合が抑えられる。よって、信号線62の高周波信号に、信号線62同士の容量結合に起因するノイズが重畳することを抑制できる。
【0068】
また、フレキシブル配線基板50の重なり方向の両側の外側面のうち信号線62が基材61の外側に位置する側の外側面と、メイン基板13との間に間隔保持部材53を介在させた。すなわち、メイン基板13上の配線パターン13a,13bとフレキシブル配線基板50との間に間隔保持部材53を介在させた。この結果、信号線62と配線パターン13a,13bとの間隔が一定以上の値に保持されるため、信号線62と配線パターン13a,13bとの容量結合が抑えられる。よって、信号線62の高周波信号に、信号線62と配線パターン13a,13bとの容量結合に起因するノイズが重畳することを抑制できる。
【0069】
さらに、屈曲部R2と金属筐体21との間に間隔保持部材54を介在させた。この間隔保持部材54は、例えば電気絶縁性の合成樹脂シートよりなり、金属筐体21の側面に固定されている。この結果、信号線62と金属筐体21との間隔が一定以上の値に保持されるため、金属筐体21に静電気による電流が流れた際に発生した電磁ノイズが、信号線62の高周波信号に重畳することを抑制できる。
【0070】
前記実施形態は上記に限定されず、以下の態様に変更することもできる。
(変形例1)前記第1実施形態では、すべての屈曲部で基材の外周面側にグランド層を形成したが、少なくとも1つの屈曲部で基材の外周面側にグランド層が形成されていれば足りる。この場合、金属筐体と対向することになる屈曲部で基材の外周面側にグランド層が形成されていればよい。
【0071】
(変形例2)前記各実施形態では、金属筐体側に間隔保持部材を取り付けたが、屈曲部の外周面に間隔保持部材を取り付けてもよい。さらには、間隔保持部材は、金属筐体と屈曲部の外周面との間に配置されていればよく、例えばブラケットで支持したり、メイン基板13上に支持したりしても構わない。
【0072】
(変形例3)第1実施形態において、屈曲部の基材の外周面側を配線(信号線)とし、屈曲部と金属筐体との間に間隔保持部材を配置する構成も採用できる。
(変形例4)間隔保持部材は、合成樹脂等の電気絶縁材料よりなることに限定されない。間隔保持部材は、電磁シールド材料(導電材料)でもよい。
【0073】
(変形例5)第2実施形態では、フレキシブル配線基板が対向する面間、フレキシブル配線基板の屈曲部と金属筐体との間、フレキシブル配線基板と電子部品(基板13)との間のうち全てに、間隔保持部材を介在させたが、このうち少なくとも一つに間隔保持部材を介在させればよい。但し、フレキシブル配線基板の信号線同士が対向する面間には間隔保持部材を介在させることが望ましい。例えば金属筐体がフレキシブル配線基板の近くにない組付構造に適用してもよく、この場合は、フレキシブル配線基板が対向する面間に間隔保持部材が介在していればよい。
【0074】
(変形例6)フレキシブル配線基板の折り畳み形態は、三重の折り畳み状態に限定されない。二重、四重、五重に折り畳んで使用してもよい。また、折り畳み方も、各層が完全に重なるのではなく、各層が少しずつずれた状態でフレキシブル配線基板が折り畳まれた構成も採用できる。
【0075】
(変形例7)前記各実施形態では、例えば両面銅張積層板を用いて製造した、基材の両面に配線とグランド層とが施されたフレキシブル配線基板を採用したが、例えば片面銅張積層板を用いて製造した、基材の片面のみに配線とグランド層とが施されたフレキシブル配線基板を採用してもよい。この構成であっても、フレキシブル配線基板を折り曲げた状態で基材同士が対向する面に配線同士が対向しない配線経路で配線を施したり、基材同士が対向する面に間隔保持部材を介在させたりすることで、当該面間における配信同士の容量結合に起因するノイズが配線を伝送される信号に重畳することを抑制できる。
【0076】
(変形例8)2つの電子部品は、メイン基板とHDDに限定されない。例えばプリンターにおいて、基板と記録ヘッドでもよい。その他、2つの電子部品は、2つの基板、基板とその基板上の実装部品、基板上に実装された2つの部品間であってもよい。
【0077】
上記実施形態及び変形例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(1)折り曲げて用いられるフレキシブル配線基板であって、絶縁材料よりなるフレキブルな基材と、前記基材に施された配線と、前記基材に施されたグランド層とを備え、前記配線と前記グランド層は、前記基材を折り曲げた状態で当該基材同士の対向する面にそれぞれ形成されていることを特徴とするフレキシブル配線基板。
【符号の説明】
【0078】
11…電子機器、11a…ハウジング、12…電子ユニット、13…電子部品としてのメイン基板、14…電子部品としてのHDD、15…フレキシブル配線基板、16…金属筐体、17…コネクター(フレキシブル配線基板側)、18…コネクター(フレキシブル配線基板側)、19…コネクター(メイン基板側)、20…コネクター(HDD側)、21…金属筐体、22…間隔保持部材、31…基材、32…配線としての信号線、32A…第1配線部としての第1信号線、32B…第2配線部としての第2信号線、32C…第1配線部としての第3信号線、33…グランド層、33A…第1グランド層部としての第1グランド層、33B…第2グランド層部としての第2グランド層、33C…第1グランド層部としての第3グランド層、34,35…導電結合部としてのスルーホール(信号線側)、36,37…導電結合部としてのスルーホール(グランド層側)、38…保護膜、41…延出部、42…凹部、43…刳り抜き部としての凹部、50…フレキシブル配線基板、51…ノイズ抑制手段としての間隔保持部材、52〜54…間隔保持部材、61…基材、62…信号線、63…グランド層、64,65…凹部、L1…第1平坦部、L2…第2平坦部、L3…第3平坦部、R1…屈曲部としての第1屈曲部、R2…屈曲部としての第2屈曲部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げて用いられるフレキシブル配線基板であって、
絶縁材料よりなるフレキブルな基材と、
前記基材に施された配線と、
前記基材を前記配線の少なくとも一部が内周側の面に位置するように折り曲げた状態で当該基材同士の対向する面間に位置し当該面間における前記配線の容量結合を抑制するノイズ抑制手段と
を備えたことを特徴とするフレキシブル配線基板。
【請求項2】
前記ノイズ抑制手段は、前記基材を折り曲げた状態で当該基材同士の対向する面に、前記配線とグランド層とが当該折り曲げられた内周側で対向して位置するようにそれぞれ形成されていることにより構成されることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル配線基板。
【請求項3】
前記グランド層は、前記基材が折り曲げられたときにできる屈曲部では当該基材の外周面側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のフレキシブル配線基板。
【請求項4】
前記配線は、前記基材を折り曲げたときにできる屈曲部を当該基材の長手方向に挟んだ両側で当該基材の異なる面にそれぞれ形成された第1配線部及び第2配線部と、前記第1配線部と前記第2配線部とを接続するように前記基材を貫通する導電結合部とを備え、
前記グランド層は、前記第1配線部と前記基材の反対側の面に形成された第1グランド層部と、前記第2配線部と前記基材の反対側の面に形成された第2グランド層部と、前記第1グランド層部と前記第2グランド層部とを接続するように前記基材を貫通する導電結合部とを備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のフレキシブル配線基板。
【請求項5】
前記屈曲部の折り目を付与する刳り抜き部をさらに有し、前記導電結合部は前記基材の長手方向において前記刳り抜き部からずれた位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のフレキシブル配線基板。
【請求項6】
折り畳まれた状態で重なり方向の両側に位置する二つの部分の外面のうち、前記配線が前記基材の外側に位置する側の部分の外面には、間隔保持部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載のフレキシブル配線基板。
【請求項7】
前記配線は前記基材の少なくとも一方の面に施されており、
前記ノイズ抑制手段は、前記基材を折り曲げた状態で当該基材同士の対向する面間の間隙に介在して位置しうる部位に取り付けられた間隔保持部材であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル配線基板。
【請求項8】
請求項2乃至6のうちいずれか一項に記載の前記フレキシブル配線基板を備え、当該フレキシブル配線基板が二つの電子部品を接続すると共に折り曲げられた状態で組み付けられているフレキシブル配線基板の組付構造であって、
前記配線と前記グランド層とが前記基材同士の対向する面にそれぞれ対向して位置するように前記フレキシブル配線基板が折り曲げられていることを特徴とするフレキシブル配線基板の組付構造。
【請求項9】
請求項3乃至6のうちいずれか一項に記載の前記フレキシブル配線基板を備え、当該フレキシブル配線基板が、二つの電子部品のうち少なくとも一方が金属筐体により少なくとも一部覆われた状態にある当該二つの電子部品を接続していると共に、前記配線と前記グランド層とが前記基材同士の対向する面に対向して位置するように折り畳まれた状態で組み付けられているフレキシブル配線基板の組付構造であって、
前記フレキシブル配線基板が折り畳まれてできた屈曲部のうち前記基材の外周面側にグランド層が形成された屈曲部が前記金属筐体に対向した状態で配置されていることを特徴とするフレキシブル配線基板の組付構造。
【請求項10】
請求項2、4、5、6乃至7のうちいずれか一項に記載の前記フレキシブル配線基板を備え、二つの電子部品のうち少なくとも一方が金属筐体により少なくとも一部覆われた状態にある当該二つの電子部品を接続している前記フレキシブル配線基板が折り畳まれた状態で組み付けられているフレキシブル配線基板の組付構造であって、
前記フレキシブル配線基板が折り曲げられてできた屈曲部のうち前記基材の外周面側に前記配線が施された屈曲部の外周面と、当該外周面と対向している金属筐体との間には間隔保持部材が配置されていることを特徴とするフレキシブル配線基板の組付構造。
【請求項11】
請求項7に記載の前記フレキシブル配線基板を備え、当該フレキシブル配線基板が、二つの電子部品のうち少なくとも一方が金属筐体により少なくとも一部覆われた状態にある当該二つの電子部品を接続している前記フレキシブル配線基板が折り畳まれた状態で組み付けられているフレキシブル配線基板の組付構造であって、
前記フレキシブル配線基板が対向する面間、前記フレキシブル配線基板が折り畳まれてできた屈曲部と前記金属筐体との間、前記フレキシブル配線基板と前記電子部品との間のうち少なくとも一つの間には、間隔保持部材が介在していることを特徴とするフレキシブル配線基板の組付構造。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか一項に記載のフレキシブル配線基板の組付構造を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−278132(P2010−278132A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127758(P2009−127758)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】