説明

フレーム付き車両の車体下部構造

【課題】フレーム付き車両において、側面衝突時における車体変形を抑制することを目的とする。
【解決手段】車両前後方向に延設されたサイドレール12(フレーム)と、該サイドレール12上にマウントされるボデー16のうち、サイドレール12の車幅方向外側において車両前後方向に延設されたロッカ18と、該ロッカ18に結合されたフロアクロスメンバロア20(フロアクロスメンバ)と、該フロアクロスメンバロア20に結合され、サイドレール12とロッカ18との間において、該サイドレール12及び該ロッカ18と夫々車幅方向に対向すると共に少なくとも該サイドレール12と車幅方向に離間して配置された第1荷重伝達部材11と、を有している。このため、側面衝突時にロッカ18からフロアクロスメンバロア20に伝達される側突荷重を、第1荷重伝達部材11を介してサイドレール12へ伝達して分散させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突を考慮した、フレーム付き車両の車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体への側面衝突時に、ロッカへ入力された側突荷重を、キャブマウント部を介してフレームへ伝達する構成が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−256395号公報
【特許文献2】特開平8−2437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例のように、キャブマウント部を介してフレームへ側突荷重を伝達する構成では、該キャブマウント部がフロアクロスメンバと異なる車両前後方向位置に設けられている場合に、該フロアクロスメンバ付近に入力された側突荷重をフレームへ伝達して分散させることが難しいと考えられる。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、フレーム付き車両において、側面衝突時における車体変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車体下部において車両前後方向に延設されたフレームと、該フレーム上にマウントされるボデーのうち、前記フレームの車幅方向外側において車両前後方向に延設されたロッカと、前記ボデーの下部において車幅方向に延設されると共に前記ロッカに結合されたフロアクロスメンバと、前記フロアクロスメンバに結合され、前記フレームと前記ロッカとの間において、該フレーム及び該ロッカと夫々車幅方向に対向すると共に少なくとも該フレームと車幅方向に離間して配置された第1荷重伝達部材と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載のフレーム付き車両の車体下部構造では、フロアクロスメンバに結合され、フレームとロッカとの間において、該フレーム及び該ロッカと夫々車幅方向に対向すると共に少なくとも該フレームと車幅方向に離間して配置された第1荷重伝達部材を有しているので、側面衝突時にロッカからフロアクロスメンバに伝達される側突荷重を、フレームへ伝達して分散させることができる。このため、側面衝突時における車体変形を抑制することが可能である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のフレーム付き車両の車体下部構造において、前記第1荷重伝達部材は、前記フロアクロスメンバの前後の縦壁部に結合され該縦壁部から夫々垂下する車幅方向面と、該車幅方向面を車両前後方向に結合する車両前後方向面とを含んで構成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載のフレーム付き車両の車体下部構造では、第1荷重伝達部材が、フロアクロスメンバの前後の縦壁部に結合され該縦壁部から夫々垂下する車幅方向面と、該車幅方向面を車両前後方向に結合する車両前後方向面とを含んで構成されており、車幅方向面及び車両前後方向面がフレームとロッカとの間のスペーサとなると共に、該車幅方向面及び車両前後方向面の車幅方向両端部が、ロッカ及びフレームとの荷重伝達面となる。このため、請求項2に記載のフレーム付き車両の車体下部構造では、簡易な構成で第1荷重伝達部材を構成することが可能である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のフレーム付き車両の車体下部構造において、前記フロアクロスメンバに対応した前記ボデーのフロア上に、車体側部と車幅方向に対向する第2荷重伝達部材が設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載のフレーム付き車両の車体下部構造では、フロアクロスメンバに対応したボデーのフロア上に、車体側部と車幅方向に対向する第2荷重伝達部材が設けられているので、側面衝突時に車体側部に入力された側突荷重を、該車体側部から第2荷重伝達部材を介してボデーのフロアへ伝達し、更にフロアクロスメンバから第1荷重伝達部材を介してフレームへ伝達することができる。このため、側突荷重をフレームへ伝達するための荷重伝達経路をより多くすることができ、側面衝突時における車体変形をより抑制することが可能である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載のフレーム付き車両の車体下部構造において、前記第2荷重伝達部材と車幅方向に対向する前記車体側部内に、第3荷重伝達部材が設けられていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載のフレーム付き車両の車体下部構造では、第2荷重伝達部材と車幅方向に対向する車体側部内に第3荷重伝達部材が設けられているので、側面衝突時に、該車体側部の変形を抑制しつつ、該車体側部に入力された側突荷重をより効率的に第2荷重伝達部材へ伝達することができる。このため、側面衝突時における車体変形をより一層抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のフレーム付き車両の車体下部構造によれば、側面衝突時における車体変形を抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0014】
請求項2に記載のフレーム付き車両の車体下部構造によれば、簡易な構成で第1荷重伝達部材を構成することができる、という優れた効果が得られる。
【0015】
請求項3に記載のフレーム付き車両の車体下部構造によれば、側面衝突時における車体変形をより抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0016】
請求項4に記載のフレーム付き車両の車体下部構造によれば、側面衝突時における車体変形をより一層抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1において、本実施形態におけるフレーム付き車両10の車体は、フレームの一例たる左右一対のサイドレール12と、その車両前後方向の所定位置に架設された複数のクロスメンバ(図示せず)とを有するシャシフレーム14を備えており、該シャシフレーム14の複数箇所にボデーマウント(図示せず)を介してボデー16がマウントされている。そして本実施形態に係るフレーム付き車両の車体下部構造S1は、上記サイドレール12と、ロッカ18と、フロアクロスメンバの一例たるフロアクロスメンバロア20と、第1荷重伝達部材11とを有して構成されている。
【0019】
左右一対のサイドレール12は、フレーム付き車両10の車体下部において、夫々車両前後方向に延設された、例えば断面矩形状の骨格部材である。このサイドレール12は、例えば断面コ字状の鋼材が車幅方向に対向した状態で接合されており、これによって矩形状の閉断面に構成されている。
【0020】
ロッカ18は、サイドレール12上にマウントされるボデー16のうち、サイドレール12の車幅方向外側において車両前後方向に延設されたボデー16の骨格部材である。このロッカ18は、例えばロッカインナパネル22とロッカアウタパネル24とを接合して構成され、ボデー16の左右に一対設けられている。
【0021】
ロッカインナパネル22は車幅方向内側へ凸となる略断面ハット形に形成され、またロッカアウタパネル24は車幅方向外側へ凸となる略断面ハット形に形成されている。ロッカインナパネル22及びロッカアウタパネル24は、車両上側のフランジ部22A,24Aと、車両下側のフランジ部22B,24Bにおいて、例えばスポット溶接により接合されて閉断面に構成されている。なお、図示は省略するが、ロッカインナパネル22とロッカアウタパネル24との間にロッカリインフォースメントを挟んで接合することで、ロッカ18を補強してもよい。
【0022】
図1,図2に示される断面位置では、車体側部の一例たるセンターピラー26がロッカ18に結合されている。このセンターピラー26は、例えばピラーアウタパネル28とピラーインナパネル30とを有して構成されている。このうちピラーアウタパネル28の下部は、例えばロッカアウタパネル24における車両下側のフランジ部24Bに接合され、またピラーインナパネル30の下部は、例えばロッカインナパネル22における車両上側のフランジ部22Aに接合されている。
【0023】
フロアクロスメンバロア20は、ボデー16の下部において車幅方向に延設されると共にロッカ18に結合された、該ボデー16の骨格部材である。図3に示されるように、このフロアクロスメンバロア20は、車両下方に凸となる略断面ハット形に形成されており、一対のフランジ部20Aが車幅方向に延設されている。
【0024】
図2に示されるように、フランジ部20Aの車幅方向端部には、該フランジ部20Aと連なる縦フランジ20Cと、該縦フランジ20Cと連なる下フランジ20Dとが設けられている。図2に示されるように、縦フランジ20Cは、ロッカインナパネル22の縦壁部22Cと接合され、下フランジ20Dはロッカインナパネル22の下壁部22Dと接合されている。図2,図4に示されるように、フロアクロスメンバロア20のフランジ部20A及びロッカインナパネル22の上壁部22Eの車両上側には、フロアパネル32の車幅方向の縁部32Aが接合されており、これによってボデー16のフロア34が構成されている。
【0025】
図1に示されるように、フロア34上には、シート取付け台座44が設けられ、該シート取付け台座44上に脚部36を介して車両用シート38が設置されている。フロア34の車幅方向中央部には、車両上方に凸となるトンネル部40が設けられている。このトンネル部40では、フロアクロスメンバロア20及びフロアパネル32が共に車両上方に凸に形成されている。トンネル部40上には、例えばセンタコンソール42が配設されている。
【0026】
図1,図4に示されるように、フロアクロスメンバロア20におけるサイドレール12の車両上方位置には、該サイドレール12との干渉を抑制するための凹部20Bが形成されている。この凹部20Bにより、フロアクロスメンバロア20とサイドレール12との干渉を抑制することで、フロア34をより低床化できるようになっている。
【0027】
図1から図4に示されるように、第1荷重伝達部材11は、フロアクロスメンバロア20に結合され、サイドレール12とロッカ18との間において、該サイドレール12及び該ロッカ18と夫々車幅方向に対向すると共に、少なくとも該サイドレール12と車幅方向に離間して配置されている。この第1荷重伝達部材11は、フロアクロスメンバロア20の前後の縦壁部20Eに結合され該縦壁部20Eから夫々垂下する車幅方向面11Aと、該車幅方向面11Aを車両前後方向に結合する車両前後方向面11Bとを含んで構成されている。前後の車幅方向面11Aを、フロアクロスメンバロア20の縦壁部20Eに夫々接合することで、第1荷重伝達部材11とフロアクロスメンバロア20との間が閉断面に構成されている。
【0028】
前後の車幅方向面11Aは、例えば各々の車幅方向内側の端面11Cから夫々車両前後方向に延びる連結部11Dにより連結されており、これにより第1荷重伝達部材11の剛性が高められている。具体的には、車両前方側の端面11Cからは、連結部11Dが車両後方に延び、また車両後方側の端面11Cからは、連結部11Dが車両前方に延びており、これらの連結部11Dは、例えば車幅方向に重ねられた状態で接合されている。図2,図4に示されるように、連結部11Dは、例えばフロアクロスメンバロア20に近接する高さ位置に設けられている。なお、連結部11Dの構成は、上記記載及び図示の構成に限られるものではない。
【0029】
図4に示されるように、第1荷重伝達部材11の車両前後方向面11Bは、車幅方向外側から車幅方向内側へ向かって車両下方に傾斜している。これは、側面衝突時にロッカ18に入力された側突荷重を、該ロッカ18に対して比較的車両下方に位置しているサイドレール12の車幅方向外側面12Aへ効率的に伝達するためである。これに関連して、第1荷重伝達部材11における車幅方向面11Aの端面11C及び車両前後方向面11Bの車幅方向内側の端面11Eは、サイドレール12の車幅方向外側面12Aと車幅方向に対向している。一方、第1荷重伝達部材11における車幅方向面11Aの車幅方向外側の端面11Fは、フロアクロスメンバロア20のうちロッカインナパネル22の縦壁部22Cに接合されている縦フランジ20Cと車幅方向に対向している。
【0030】
なお、第1荷重伝達部材11においてサイドレール12の車幅方向外側面12Aと車幅方向に対向する部分を面状に構成してもよいが、本実施形態のように、端面11C,11E及び連結部11Dが、そのままサイドレール12の車幅方向外側面12Aと対向するようにした方が、より好ましい。第1荷重伝達部材11の構成を簡易化し、かつ該第1荷重伝達部材11を軽量化できるからである。
【0031】
図4に示されるように、通常時において、第1荷重伝達部材11とサイドレール12との間は、車幅方向に適度に離間した状態とされている。具体的には、第1荷重伝達部材11において最も車幅方向内側に位置する連結部11Dと、サイドレール12の車幅方向外側面12Aとの間が、距離Aだけ離間している。これは、ボデー16がボデーマウントを介してシャシフレーム14上にマウントされていることから、通常時におけるボデーマウントを介したボデー16とシャシフレーム14との相対運動により、第1荷重伝達部材11とサイドレール12とが接触することを防止するためである。
【0032】
また第1荷重伝達部材11とロッカ18との間についても、車幅方向に適度に離間した状態とされている。具体的には、第1荷重伝達部材11のうち最も車幅方向外側に位置する端面11Fと、ロッカインナパネル22の縦壁部22Cに接合されたフロアクロスメンバロア20の縦フランジ20Cとの間が、距離Bだけ離間している。これは、第1荷重伝達部材11及びその周辺部品の寸法精度や組付け時のばらつきを吸収すると共に、側面衝突時におけるロッカ18の変形の影響が第1荷重伝達部材11に及ぶことを抑制するためである。
【0033】
なお、距離A,Bについては、異音の発生等が生じない範囲においてできるだけ小さく設定することが望ましい。側面衝突時にロッカ18に入力された側突荷重を、第1荷重伝達部材11を介してサイドレール12へより速やかに伝達することができるからである。
【0034】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図4において、フレーム付き車両の車体下部構造S1では、第1荷重伝達部材11とサイドレール12との間が距離Aだけ離間しているので、通常時においてボデー16とシャシフレーム14とが相対運動しても、該第1荷重伝達部材11とサイドレール12とが接触することがなく、振動の伝達を遮断することができる。このため、車両走行時の路面からの入力に基づく振動やエンジンからの振動等が、サイドレール12からボデー16側へ伝達することを防止することができる。
【0035】
次に、側面衝突時の作用について説明する。図5において、フレーム付き車両の車体下部構造S1では、サイドレール12とロッカ18との間において、該サイドレール12及び該ロッカ18と夫々車幅方向に対向すると共に少なくとも該サイドレール12と車幅方向に離間して配置され、フロアクロスメンバロア20に結合された第1荷重伝達部材11を有しているので、側面衝突時にロッカ18からフロアクロスメンバロア20に伝達される側突荷重Fを、サイドレール12へ伝達して分散させることができる。
【0036】
具体的には、相手車両等の衝突体46がフレーム付き車両10に側面衝突し、側突荷重Fがロッカ18に入力されると、該側突荷重Fは該ロッカ18からフロアクロスメンバロア20へ、矢印D1方向に伝達される。この側突荷重Fにより、フロアクロスメンバロア20が、車幅方向内側へ変形すると、該フロアクロスメンバロア20に固定されている第1荷重伝達部材11のうち、例えば連結部11Dがサイドレール12の車幅方向外側面12Aに当接する。またロッカ18及びフロアクロスメンバロア20の変形に伴い、フロアクロスメンバロア20のうちロッカインナパネル22の縦壁部22Cと接合されている縦フランジ20Cが、第1荷重伝達部材11の車幅方向外側の端面11Fに当接する。
【0037】
ここで、第1荷重伝達部材11は、フロアクロスメンバロア20の前後の縦壁部20Eに結合され該縦壁部20Eから夫々垂下する車幅方向面11Aと、該車幅方向面11Aを車両前後方向に結合する車両前後方向面11Bとを含んで構成されているので、車幅方向面11A及び車両前後方向面11Bがサイドレール12とロッカ18との間のスペーサとなると共に、該車幅方向面11A及び車両前後方向面11Bの車幅方向両端部が、ロッカ18及びサイドレール12との荷重伝達面となる。
【0038】
第1荷重伝達部材11においてロッカ18との荷重伝達面となり得るのは、具体的には、車幅方向面11Aの車幅方向外側の端面11Fである。また第1荷重伝達部材11においてサイドレール12との荷重伝達面となり得るのは、連結部11D、車幅方向面11Aにおける車幅方向内側の端面11C、及び車両前後方向面11Bにおける車幅方向内側の端面11Eである。図4において、第1荷重伝達部材11とサイドレール12との距離A、及び該第1荷重伝達部材11とフロアクロスメンバロア20の縦フランジ20Cとの距離Bを必要最小限とすることで、側突荷重Fを速やかにサイドレール12へ伝達することができ、またこれによって該サイドレール12からの反力を迅速に得ることができる。
【0039】
図5においては、第1荷重伝達部材11の連結部11Dのみがサイドレール12の車幅方向外側面12Aと接触した状態となっているが、該連結部11Dに加えて、第1荷重伝達部材11の端面11C,11Eがサイドレール12の車幅方向外側面12Aに接触することで、より効率的に側突荷重Fを伝達することが可能である。
【0040】
第1荷重伝達部材11とフロアクロスメンバロア20との間は、閉断面に構成されているので、側突荷重伝達時に第1荷重伝達部材11が変形し難く、効率的な荷重伝達が可能である。これに加えて、第1荷重伝達部材11は、ロッカ18ではなく、フロアクロスメンバロア20に結合されているので、ロッカ18が例えば車両前後方向軸回りに変形した場合でも、その変形の影響が第1荷重伝達部材11に及び難く、第1荷重伝達部材11とサイドレール12との対向状態に変化が生じ難い。このため、第1荷重伝達部材11からサイドレール12への側突荷重Fの伝達を、より安定的に行うことが可能である。
【0041】
フロア34の低床化のために、フロアクロスメンバロア20におけるサイドレール12の車両上方位置には凹部20Bが形成されているが、第1荷重伝達部材11を介して側突荷重Fをサイドレール12へ分散させることにより、該凹部20Bの変形を抑制することができる。また第1荷重伝達部材11を介して側突荷重Fをサイドレール12へ分散させることにより、サイドレール12よりも車幅方向内側に位置しているフロア34の中央部に対する補強を最小限に抑えつつ、効率的な荷重伝達が可能となる。このようにして、フレーム付き車両の車体下部構造S1では、側面衝突時における車体変形を抑制することが可能である。
【0042】
なお、本実施形態では、フロアクロスメンバロア20及び第1荷重伝達部材11がセンターピラー26に対応する車両前後方向位置にあるものとして説明したが、これに限られず、車両前後方向における例えば複数箇所に、同様のフロアクロスメンバロア20及び第1荷重伝達部材11を設けてもよい。
【0043】
[第2実施形態]
図6において、本実施の形態に係るフレーム付き車両の車体下部構造S2では、第1実施形態の構成に加えて、第2荷重伝達部材21と、第3荷重伝達部材31とを有している。
【0044】
本実施形態では、フロアクロスメンバロア20の車両上方となるフロアパネル32の上面に、ボデー16の骨格部材であるフロアクロスメンバアッパ48が、車幅方向に延設されている。このフロアクロスメンバアッパ48は、車両上方に凸となる略断面ハット形に形成されており、一対のフランジ部48Aが車幅方向に延設されている。フロアクロスメンバアッパ48は、該フランジ部48Aにおいてフロアパネル32上に接合されている。このフランジ部48Aと、フロアパネル32と、フロアクロスメンバロア20のフランジ部20Aとは、3枚重ねで接合されている。
【0045】
フロアクロスメンバアッパ48の車幅方向外側の端部48Bは、フロアクロスメンバロア20の車幅方向外側の端部、即ち縦フランジ20Cや下フランジ20Dよりも車幅方向内側に位置している。この端部48B付近となるフロアクロスメンバアッパ48の上面48Cには、例えば2箇所の貫通孔48Dが、車幅方向に直列に配置されて設けられている。上面48Cの裏面側には、該貫通孔48Dに対応したナット(図示せず)が夫々例えば溶接されている。
【0046】
図6に示されるように、第2荷重伝達部材21は、フロアクロスメンバロア20に対応したボデー16のフロア34上に、車体側部の一例たるセンターピラー26と車幅方向に対向して設けられた部材である。具体的には、第2荷重伝達部材21は、フロアクロスメンバアッパ48の上へ部分的に重ねることができるように、車両上方に凸となる略断面ハット形に形成されており、一対のフランジ部21A,21B,21Cが車幅方向に連なって形成されている。このうちフランジ部21Aは、フロアクロスメンバアッパ48のフランジ部48Aと重なり、フランジ部21Bはフロアパネル32と重なっている。またフランジ部21Cは、フロアパネル32の縁部32Aよりも車幅方向外側へ延設されてロッカインナパネル22の上壁部22E(図8)と重なっている。フランジ部21Aの範囲は、フロアクロスメンバアッパ48の端部48Bの位置に対応して設定されており、フランジ部21Bの形状は、フロアパネル32の縁部32A付近の形状に沿うように設定されている。
【0047】
図7に示されるように、一対のフランジ部21Cには、貫通孔21Eが夫々設けられている。図示は省略するが、ロッカインナパネル22の上壁部22Eには、第2荷重伝達部材21の貫通孔21Eに対応した貫通孔が設けられている。そしてロッカインナパネル22の上壁部22Eの裏面側には、該上壁部22Eに設けられた貫通孔に対応したナットが例えば溶接されている。
【0048】
第2荷重伝達部材21は、車幅方向内側の端部21G付近の所定領域が、フロアクロスメンバアッパ48と重ねられるようになっている。このため、第2荷重伝達部材21における前後の縦壁部21Hの内法は、フロアクロスメンバアッパ48における前後の縦壁部48Hの外法よりもわずかに大きく設定されている。縦壁部21Hの高さ寸法は、縦壁部48Hの高さ寸法と同等である。図7に示されるように、第2荷重伝達部材21の上面21Fにおける車幅方向内側の端部21G付近には、フロアクロスメンバアッパ48の貫通孔48Dに対応した2箇所の貫通孔21Dが、車幅方向に直列に配置されて設けられている。
【0049】
第2荷重伝達部材21は、フロアクロスメンバアッパ48の所定位置に重ねられた状態で、貫通孔21D,21Eから夫々差し込まれるボルト50,52により、該フロアクロスメンバアッパ48及びロッカインナパネル22に対して締結固定されている(図6も参照)。この状態において、第2荷重伝達部材21の車幅方向外側の端部21Jは、ピラーインナパネル30と車幅方向に近接対向している。
【0050】
図6において、第3荷重伝達部材31は、第2荷重伝達部材21と車幅方向に対向するセンターピラー26内に設けられた部材である。具体的には、図7に示されるように、第3荷重伝達部材31は、例えば金属板を折曲げ加工することで、車幅方向外側が開口した略箱形に構成されている。これにより、第2荷重伝達部材21は、ピラーインナパネル30と対向する荷重伝達面31Aの四辺を折曲げ部とした上壁部31B、前後の縦壁部31C及び下壁部31Dを有している。
【0051】
縦壁部31Cの上縁には、上壁部31Bの裏面側へ折り曲げられて該上壁部31Bと接合された接合部31Eが設けられている。下壁部31Dの前縁及び後縁には、縦壁部31Cの裏面側へ折り曲げられて該縦壁部31Cと接合された接合部31Fが設けられている。このように、第3荷重伝達部材31は、接合部31Eにおいて上壁部31Bと縦壁部31Cとを接合すると共に、接合部31Fにおいて縦壁部31Cと下壁部31Dとを接合することで、車幅方向外側が開口した略箱形に構成されている。
【0052】
図6に示されるように、上壁部31B及び縦壁部31Cの車幅方向外側の端縁には、フランジ部31H,31Gが夫々設けられている。第3荷重伝達部材31は、該フランジ部31H,31Gにおいてピラーアウタパネル28に接合されている。図8に示されるように、第3荷重伝達部材31の荷重伝達面31Aは、通常時はピラーインナパネル30から離間した状態となっており、車幅方向において、該ピラーインナパネル30を挟んで第2荷重伝達部材21の端部21Jと対向している。
【0053】
なお、本実施形態における第2荷重伝達部材21及び第3荷重伝達部材31については、上記構成及び図示の構成に限られるものではなく、センターピラー26へ入力された側突荷重Fを効率的にサイドレール12へ伝達できる構成であればよい。従って、例えば第3荷重伝達部材31をピラーインナパネル30側に接合するようにしてもよい。
【0054】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0055】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図8において、フレーム付き車両の車体下部構造S2では、第1実施形態(図4参照)と同様に、通常時において第1荷重伝達部材11とサイドレール12とが接触することがなく、振動の伝達を遮断することができる。このため、車両走行時の路面からの入力に基づく振動やエンジンからの振動等が、サイドレール12からボデー16側へ伝達することを防止することができる。
【0056】
またフレーム付き車両の車体下部構造S2では、第2荷重伝達部材21の車幅方向外側の端部21Jが、通常時においてピラーインナパネル30と車幅方向に近接対向しており、該ピラーインナパネル30と第2荷重伝達部材21とが接触することはない。第2荷重伝達部材21は、フロアクロスメンバアッパ48の形状に合せて重ねられているので、車室側への張り出しは最小限に抑えられている。
【0057】
センターピラー26内に設けられた第3荷重伝達部材31の荷重伝達面31Aも、ピラーインナパネル30と離間している。この第3荷重伝達部材31は、金属板を折り曲げて略箱形に構成されているので、剛性が高く、かつ軽量である。
【0058】
次に、側面衝突時の作用について説明する。図9において、フレーム付き車両の車体下部構造S2では、フロアクロスメンバロア20に対応したボデー16のフロア34上に、センターピラー26と車幅方向に対向する第2荷重伝達部材21が設けられているので、側面衝突時にセンターピラー26に入力された側突荷重Fを、該センターピラー26から第2荷重伝達部材21を介してボデー16のフロア34へ伝達し、更にフロアクロスメンバロア20から第1荷重伝達部材11を介してサイドレール12へ伝達することができる。
【0059】
また、フレーム付き車両の車体下部構造S2では、第2荷重伝達部材21と車幅方向に対向するセンターピラー26内に第3荷重伝達部材31が設けられているので、側面衝突時に、該センターピラー26の変形を抑制しつつ、該センターピラー26に入力された側突荷重Fをより効率的に第2荷重伝達部材21へ伝達することができる。
【0060】
このため、フレーム付き車両の車体下部構造S2では、側突荷重Fをサイドレール12へ伝達するための荷重伝達経路をより多くすることができ、側面衝突時における車体変形をより抑制することが可能である。
【0061】
具体的には、相手車両等の衝突体46がフレーム付き車両10に側面衝突し、側突荷重Fがセンターピラー26に入力されると、該センターピラー26を構成するピラーアウタパネル28及びピラーインナパネル30が車幅方向内側へ変形する。しかしながら、センターピラー26の余分な潰れ変形は、該センターピラー26内に設けられた第3荷重伝達部材31により抑制される。このため、側面衝突後速やかに、第3荷重伝達部材31の荷重伝達面31Aがピラーインナパネル30に当接し、更に該ピラーインナパネル30が第2荷重伝達部材21の端部21Jに当接した状態となる。
【0062】
これにより、センターピラー26に入力された側突荷重Fは、第3荷重伝達部材31を介して第2荷重伝達部材21へ矢印D2方向に伝達され、更に該第2荷重伝達部材21からフロア34におけるフロアクロスメンバアッパ48へ伝達される。このフロアクロスメンバアッパ48は、フロアパネル32を挟んでフロアクロスメンバロア20と接合されているので、フロアクロスメンバアッパ48に伝達された側突荷重Fは、該フロアクロスメンバロア20から第1荷重伝達部材11を介してサイドレール12へも伝達される。
【0063】
このように、フレーム付き車両の車体下部構造S2では、側面衝突時に、センターピラー26の変形を抑制しつつ、該センターピラー26に入力された側突荷重Fをより効率的に第2荷重伝達部材21へ伝達することができる。これにより、側突荷重Fを、矢印D1方向及び矢印D2方向という2つの荷重伝達経路を介して、迅速かつ効率的に伝達することが可能である。このため、側面衝突時における車体変形をより一層抑制することが可能である。
【0064】
なお、第1荷重伝達部材11を介した側突荷重Fの伝達の詳細については、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、フロアクロスメンバロア20、第1荷重伝達部材11、第2荷重伝達部材21及び第3荷重伝達部材31が、センターピラー26に対応する車両前後方向位置にあるものとして説明したが、これに限られず、車両前後方向における例えば複数箇所に、同様のフロアクロスメンバロア20、第1荷重伝達部材11、第2荷重伝達部材21及び第3荷重伝達部材31を設けるようにしてもよい。
【0066】
車体側部の一例として、センターピラー26を挙げて説明したが、車体側部はセンターピラー26に限られるものではなく、例えば図示しない車両用ドアであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1から図5は、第1実施形態に係り、図1はフレーム付き車両の車体下部構造を示す断面図である。
【図2】フレーム付き車両の車体下部構造を示す部分破断拡大斜視図である。
【図3】フロアクロスメンバロア及び第1荷重伝達部材を示す拡大分解斜視図である。
【図4】通常使用時におけるフレーム付き車両の車体下部構造を示す拡大断面図である。
【図5】フレーム付き車両の車体下部構造において、側面衝突時にロッカからフロアクロスメンバロアに伝達される側突荷重が、第1荷重伝達部材を介してサイドレール12へ伝達されている状態を示す拡大断面図である。
【図6】図6から図9は、第2実施形態に係り、図6はフレーム付き車両の車体下部構造を示す部分破断拡大斜視図である。
【図7】フロアクロスメンバアッパ、第2荷重伝達部材及び第3荷重伝達部材を示す拡大分解斜視図である。
【図8】通常使用時におけるフレーム付き車両の車体下部構造を示す拡大断面図である。
【図9】フレーム付き車両の車体下部構造において、側面衝突時に車体側部に入力された側突荷重が、第1荷重伝達部材、第2荷重伝達部材及び第3荷重伝達部材を介して、サイドレール12へ効率的に伝達されている状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0068】
11 第1荷重伝達部材
12 サイドレール(フレーム)
16 ボデー
18 ロッカ
20 フロアクロスメンバロア(フロアクロスメンバ)
26 センターピラー(車体側部)
21 第2荷重伝達部材
31 第3荷重伝達部材
34 フロア
S1 フレーム付き車両の車体下部構造
S2 フレーム付き車両の車体下部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体下部において車両前後方向に延設されたフレームと、
該フレーム上にマウントされるボデーのうち、前記フレームの車幅方向外側において車両前後方向に延設されたロッカと、
前記ボデーの下部において車幅方向に延設されると共に前記ロッカに結合されたフロアクロスメンバと、
前記フロアクロスメンバに結合され、前記フレームと前記ロッカとの間において、該フレーム及び該ロッカと夫々車幅方向に対向すると共に少なくとも該フレームと車幅方向に離間して配置された第1荷重伝達部材と、
を有することを特徴とするフレーム付き車両の車体下部構造。
【請求項2】
前記第1荷重伝達部材は、前記フロアクロスメンバの前後の縦壁部に結合され該縦壁部から夫々垂下する車幅方向面と、該車幅方向面を車両前後方向に結合する車両前後方向面とを含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフレーム付き車両の車体下部構造。
【請求項3】
前記フロアクロスメンバに対応した前記ボデーのフロア上に、車体側部と車幅方向に対向する第2荷重伝達部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフレーム付き車両の車体下部構造。
【請求項4】
前記第2荷重伝達部材と車幅方向に対向する前記車体側部内に、第3荷重伝達部材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のフレーム付き車両の車体下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−195252(P2008−195252A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33056(P2007−33056)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】