説明

フロントエンド構造

本発明は、エネルギー吸収バンパ構造(3)を有し、前部領域(14)で、バンパ装置(3)の前端の下方及び後方に延び、剛性成形部品の形で提供される下部エンジンルームライニング(1)を有する、乗用車等の自動車のフロントエンド構造(12)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の乗用車等の自動車のフロントエンド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車道に近接して延びるフロントエンド部品を備えた自動車を開示する。この場合、ブレーキ冷却用に使用される空気導入ダクトが、フロントエンド部品と一体に形成され、各空気導入ダクトは、車道に向かって開口しているフロントエンド部品のチャネルを通り、少なくともその長手方向範囲の部分的領域にわたり、示されている。この構造によって、構成及び設置が簡単な、ブレーキを冷却する装置とすることができる。さらに、自動車の抗力係数は、アンダーボディライニングを形成するフロントエンド部品の区間へ空気導入ダクトを配置することによって低減される。
【0003】
特許文献2は、自動車の空力及び調整可能なアンダーボディフロントエンドを開示する。このフロントエンドは、調整機構を用いて、基本位置からより下方に位置し走行方向前方に移動できる少なくとも1つのアクティブ位置へ仕切るように下降できる寸法固定フロントトラフを有し、フロントトラフの垂直仕切壁は、トラフの全位置でボディの垂直区間下に達し、ボディとの隙間のない移行を形成する。トラフのフロアは、基本的にエンジンルームの全アンダーボディ開口部全体に広がり、ホイールハウスに合致した垂直な仕切壁が設けられる。フロントトラフの前部は、下降アクティブ位置において、車道とベンチュリ断面を形成するフロントエプロンとして前輪間の領域全体にわたり形成されており、フロントトラフと、フロア又はその基本位置の下方のフロントトラフに配置された関節軸は回転可能な構造となっている。
【0004】
特許文献3は、自動車のフロントエンド用の下降可能なアンダーボディライニングを開示している。このアンダーボディライニングは、本質的に硬質の弾性変形パネルによって形成され、調整機構によって車道に向かって曲げることができる。フロントサイドボディ部品への平坦な隙間のない移行を維持しながらアンダーボディライニングが弾性変形可能であることによって、新たな制御動作によって再び補正されなければならない余計な予期せぬ気流効果が生成されることなくアンダーボディライニングの位置を所定の運転条件に合致させることが可能となる。
【0005】
特許文献4は、乗用車の下側カバーを開示している。このカバーは、シャシフレーム及び自動車フロアの下方に配置され、車輪及び隆起縁部用のカットアウトを有する平面トラフを有する。この場合、トラフの縁部は、自動車ボディの縁部の上方に突出する。自動車の前端側及びリヤエンド側のこれらの突出トラフ縁部は、通常はそこにあるバンパと置き換わり、それらがドアの下方縁部にわたり突出している自動車の長手方向側に衝撃ガードを形成する。自動車のエンド側への衝撃応力が一般的により高いことを考慮して、トラフの縁部は、長手方向側と比べてフロント及びリヤエンドにおいてより広くなっている。
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第35 42 376号明細書
【特許文献2】独国特許発明第42 08 999号明細書
【特許文献3】独国特許発明第36 13 303号明細書
【特許文献4】DE−PS 1 286 917号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、特に、歩行者に対する事故の影響を低減すべく自動車のフロントエンド構造への改良実施形態を示すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項の主題によって達成され、有利な改良は、従属請求項の主題である。
【0009】
本発明は、自動車のフロントエンド構造の場合、周知のバンパクロスメンバの下に平行に配置される追加のクロスメンバの代わりに、硬質成形部品として下部エンジンルームライニングを設計し、その前部領域においてバンパ構造のフロントエンドの下方及び後方にそれを延ばすようにするという一般概念に基づいていた。その成形部品は、基本的に自動車の全幅にわたり延び、その結果、原則的に自動車の全幅にわたり同一の剛性を与える。歩行者との衝突の際、このように設計された成形部品は、歩行者の下肢に対して有効な支持体となり、その結果、該歩行者下肢のバンパ下部への侵入、ゆえに大きな膝屈曲角度を回避できる。さらに、延長されたエンジンルームライニングは、衝突の際に、容易に変形可能なボンネットに歩行者を衝突させ、自動車によって轢かれないようにする。本発明による解決法で、一方では、将来法的に有効となる歩行者保護に関する高レベルの法的規制がより容易に満たされ、他方では、歩行者に対する事故の影響の危険性が低減される。さらに、この成形部品は、追加の下部クロスメンバよりも実質的により費用効果が高く、製造がより容易となる。
【0010】
1つの特に好適な実施形態によれば、少なくともエンジンルームライニングの前部領域をプラスチックから形成し、及び/又は少なくともエンジンルームライニングの前部領域に補強構造要素を一体化して形成することができる。プラスチックはその材料特性やその成形性のため、特に自動車製造に適している。プラスチックからの成形部品の形成及び補強構造要素の一体化形成により、軽量化が可能になり、また、クロスメンバと比べて成形部品の製造費をかなり低減することが可能となる。補強構造要素は、追加的に個々に成形部品の剛性に影響を及ぼすことができる。
【0011】
本発明による解決の特に好ましい実施形態は、エンジンルームライニングの前部領域がバンパ構造よりも堅固なこと、及び/又は少なくともエンジンルームライニングの前部領域が自動車の幅全体にわたり均一に堅固なことが特徴である。変形容易なバンパ構造は、最初の衝撃、ゆえに歩行者に対する事故の影響を弱めるが、エンジンルームライニングの前部領域の剛性がより大きいと、歩行者の下肢が支えられ、ゆえに過度な膝屈曲角度及び/又はバンパ下部の空間内への下肢の侵入が確実に回避される。その結果、衝突の際に、歩行者は、容易に変形できる比較的軟らかいボンネット上に投げ飛ばされ、自動車によって轢かれることがなく、このことは、歩行者への予想される負傷の危険性を著しく低減する効果がある。
【0012】
本発明の1つの有利な発展形態は、成形部品の前端に配置されたライニング要素によって特徴付けられる。ライニング要素は、純粋にデザイン的な目的に使用でき、及び/又は他の実施形態によれば、エネルギー吸収構造で形成されることもある。このことにより、一方では、自動車の下部フロントエンド構造を個々に覆うこと、ゆえに自動車の前部領域の視覚的印象全体に影響を与えることが可能となり、他方では、エネルギー吸収構造は衝撃緩和効果を保証する。
【0013】
本発明の他の重要な特徴や利点は、従属請求項、図面、及び図面を参照しての関連説明から明らかとなる。
【0014】
上述の特徴や、以下で説明される特徴は、それぞれ記述された組合せだけでなく、本発明の記述から逸脱することなく他の組合せ又はそれらのままで使用できることはいうまでもない。
【0015】
本発明の好ましい例示的な実施形態は、図面で示され、以下の説明で詳述されるが、同一又は同等又は機能的に同一の構成要素には同参照番号が付される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1によれば、本発明によるエンジンルームライニング1は、基本的にパネル形状を有する。エンジンルームライニング1の安定性及び/又は剛性は、基本的に最大長手方向範囲と平行に延びるビード9によって、及び/又は平面状の凹所10又は凸所15によって増加される。さらに、冷気をエンジンルーム16に導入してエンジンの冷却を向上させる切欠5が備えられる(図2参照)こともあり得る。
【0017】
この場合、エンジンルームライニング1は、部分的に又は全体的に又は少なくとも前縁部19に沿って延びる前部領域14においてプラスチックから形成されることが好ましい。図1によれば、前縁部19は、基本的に自動車の横方向に湾曲して延び、それ以外図示しない自動車の前端領域12の輪郭に対して配向される。
【0018】
前縁部19の反対側では、エンジンルームライニング1は、複数の接合点10が配置され、それらの内の2つが図1で例として示され、エンジンルームライニング1を自動車車体(図示せず)に固定するために使用される鋭角な波形の後部領域17を有する。
【0019】
エンジンルームライニング1は、深絞り部品として又は他の方法による成形部品として形成できるので、以下では成形部品1とも称される。
【0020】
図1によれば、凹所10、ビード9及び凸所15は、均一な剛性が少なくともエンジンルームライニング1の前部領域14の縁部19に沿う自動車の幅全体にわたり達成されるように配置される。作用力2、2’又は2’’の方向に関係なく、エンジンルームライニング1は、したがって、少なくとも同等の大きさの変形抵抗を有する。
【0021】
図2によれば、エンジンルームライニング1は、前部領域14においてバンパ構造3又はライニング要素8のフロントエンドの下方及び後方に延長される。エンジンルームライニング1の機能を確実にするために、バンパ構造3又はラインニング要素8が少なくとも成形部品1の前部領域14よりも堅固とならないように構成される。ライニング要素8は、ここではバンパ構造3の一部として形成でき、エネルギー吸収特性をもたせることができる。
【0022】
図2によれば、エンジンルームライニング1は、車体(図示せず)の一部である一体の支持体6の固定要素11を介して、走行方向に見てその後部領域17において取り付けられている。凹所10又は凸所15に加えて、補強構造要素7がエンジンルームライニング1に配置されても良い。成形部品1の前部領域14において、すなわち、フロント縁部19に沿って、前記成形部品は、ラッチングラグ4として形成され、それと対応し、ライニング要素8に配置されるレセプタクル18に係合する。これにより、ライニング要素8と成形部品1との間が隙間なく移行し、流れに関して好ましいものとなる。上述のように、基本的にバンパ構造3の一体化部品としてライニング要素8を形成することも考えられる。
【0023】
さらに、エンジンルームライニング1は、バンパ構造3とエンジンルームライニング1との間の鉛直距離Vがバンパ構造3及び成形部品1のそれぞれの前端領域間の水平距離H(図2参照)よりも大きくなるように、バンパ構造3の後方及び下方に配置される。歩行者を保護する目的を効果的に満たすことができるようにするために、バンパ構造3及び成形部品1のそれぞれの前端にフロント側で接触し、自動車の長手方向と平行に配置された鉛直面に延びる接線Tは、鉛直線に対して15°未満の傾斜角αをなす。この手段によって、衝撃の際の歩行者の下肢に対する所望の支持が達成され、バンパ構造3下部への侵入が回避される。
【0024】
要約すると、本発明の最も重要な特徴は以下のように特徴付けられる。
【0025】
自動車のフロントエンド構造12において、下部エンジンルームライニング1は、硬質成形部品として形成され、その前部領域14においてバンパ構造3の前端の下方及び後方に延長され、その結果、自動車と衝突する歩行者の下肢を効果的に支持し、その結果、バンパ構造3下部への侵入や過度な膝屈曲角度が回避される。
【0026】
このことにより、将来有効となる歩行者を保護するのに施行される高レベルな法的規制をより容易に満たし、歩行者に対する事故の影響の危険性を低減することが可能となる。さらに、成形部品1は、例えば、追加のクロスメンバよりも、費用効果が十分に高く、製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明によるエンジンルームライニングの平面図を示す。
【図2】隣接ボディ部品と共にエンジンルームライニングの断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− エネルギー吸収バンパ構造(3)を有し、
− 前部領域(14)において前記バンパ構造(3)の前端の下方及び後方に延び、硬質成形部品として形成される下部エンジンルームライニング(1)を有する乗用車等の自動車のフロントエンド構造(12)。
【請求項2】
前記エンジンルームライニング(1)の前記前部領域(14)は、前記バンパ構造(3)よりも堅固であることを特徴とする請求項1に記載のフロントエンド構造。
【請求項3】
走行方向に見て、前記エンジンルームライニング(1)の前記前部領域(14)は、前記バンパ構造(3)の前記前端の近くに配置されることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のフロントエンド構造。
【請求項4】
前記バンパ構造(3)と前記成形部品(1)との間の垂直距離(V)は、前記バンパ構造(3)と前記成形部品(1)とのそれぞれの前記前端領域間の水平距離(H)よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフロントエンド構造。
【請求項5】
鉛直方向及び前記自動車の長手方向と平行に延びる面において、フロント側で前記バンパ構造(3)及び前記成形部品(1)の前端に接触する接線は、鉛直線(V)に対して15°未満傾斜していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフロントエンド構造。
【請求項6】
前記エンジンルームライニング(1)の少なくとも前記前部領域(14)は、プラスチックから形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフロントエンド構造。
【請求項7】
補強構造要素(7)が前記エンジンルームライニング(1)の少なくとも前記前部領域(14)に一体化して形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフロントエンド構造。
【請求項8】
前記エンジンルームライニング(1)は、走行方向に見てその後部領域(17)が、一体支持体(6)に配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のフロントエンド構造。
【請求項9】
前記エンジンルームライニング(1)の少なくとも前記前部領域(14)は、前記自動車の幅全体にわたり均一に堅固であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のフロントエンド構造。
【請求項10】
ライニング要素(8)が、前記成形部品(1)の前記前端に配置されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のフロントエンド構造。
【請求項11】
前記ライニング要素(8)は、エネルギー吸収構造で形成されることを特徴とする請求項10に記載のフロントエンド構造。
【請求項12】
前記ライニング要素(8)は、前記バンパ構造(3)よりもより小さい変形距離を可能にすることを特徴とする請求項11あるいは12に記載のフロントエンド構造。
【請求項13】
前記ライニング要素(8)は、前記バンパ構造(3)の一部として形成されることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載のフロントエンド構造。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−515247(P2006−515247A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501552(P2006−501552)
【出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000285
【国際公開番号】WO2004/071822
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】