説明

フローティングキャリパ型ディスクブレーキ

【課題】サポート3aに対してキャリパ4aを軸方向の変位を可能に支持する為の構造を工夫して、小型・軽量且つ低コストで造れる構造を実現する。
【解決手段】前記キャリパ4aに設けた一対のガイド腕部17、17の先端部にそれぞれ、軸方向両側面に加えてこの軸方向に対し直角方向にも開口するガイド凹部18、18を形成する。そして、これら両ガイド凹部18、18に、前記サポート3aに固定した一対のガイドピン5a、5aの軸方向の一部を、軸方向の変位を可能に内嵌する。又、前記キャリパ4aのアウタ側端部に固定したアウタパッド9aの回入側及び回出側に設けた一対のガイド切り欠き29と、前記サポート3aに固定した一対のアンカピン13とを係合させて、前記キャリパ4aの姿勢を安定させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の制動に使用するフローティングキャリパ型ディスクブレーキの改良に関する。具体的には、小型・軽量且つ低コストで造れるフローティングキャリパ型ディスクブレーキの実現を意図したものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の制動装置として、ディスクブレーキが広く使用されている。ディスクブレーキとして大きく分けて、対向ピストン型とフローティングキャリパ型とがある。このうちのフローティングキャリパ型のディスクブレーキは、固定のサポートに、キャリパ及び一対のパッドを、軸方向の変位を可能に支持している。そして、制動時には、このキャリパのインナ側部分に設けたシリンダ部に嵌装したピストンと、このキャリパのアウタ側端部に設けたキャリパ爪とにより、前記両パッドを前記ロータの両側面に押し付ける。この様なフローティングキャリパ型のディスクブレーキは、対向ピストン型のディスクブレーキに比べて安価に製作できる為、一般的な乗用車を中心に使用されている。この様なフローティングキャリパ型のディスクブレーキとして従来から、例えば特許文献1〜6に記載されている様な、各種構造のものが知られている。尚、特に断らない限り、本明細書及び特許請求の範囲で、軸方向、径方向、周方向とは、それぞれロータに関しての、軸方向、径方向、周方向を言う。
【0003】
例えば特許文献3には、図14〜15に示す様に、1枚のサポートプレート1と一対のアンカブロック2、2とから成るサポート3にキャリパ4を、一対のガイドピン5、5により軸方向の変位を可能に支持した構造が記載されている。制動時には、前記キャリパ4のインナ側(車体への組み付け状態で幅方向内側、反対に幅方向外側をアウタ側と言う。本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。)に設けたシリンダ部6内に圧油を送り込み、このシリンダ部6に内嵌したピストンと、前記キャリパ4のアウタ側端部に設けたキャリパ爪7との間で、インナパッド8とアウタパッド9とを、車輪と共に回転するロータ10(後述する本発明の実施の形態を示す、図2〜5参照)の両側面に押し付ける。この様な特許文献3に記載された構造は、従前の構造に比べれば軽量且つ低コストに造れるが、より一層の小型・軽量化を図る面からは、改良の余地がある。この点に就いて、以下に説明する。
【0004】
前記図14〜15に示した従来構造の場合、前記両ガイドピン5、5を前記サポート3に設けた一対のガイド孔に挿入する事により、前記キャリパ4をこのサポート3に対し、軸方向の移動を可能に支持している。この様な構造の場合、前記両ガイド孔が周囲を囲まれた構造であり、一度これら両ガイド孔と前記両ガイドピン5、5との摺動部に、雨水や塵芥等の異物が入り込むと、この異物がそのままの位置に止まって、この摺動部の作動を不良にする可能性がある。この様な不都合の発生を防止する為に前記従来構造の場合には、前記両ガイドピン5、5の軸方向中間部周囲にゴム製のブーツ11、11を配置すると共に、これら両ブーツ11、11の両端部を、前記キャリパ4と前記サポート3とに結合して、前記摺動部への異物の進入防止を図っている。
【0005】
この様な従来構造の場合には、前記両ブーツ11、11が必要になる分、部品製作、部品管理、組立作業が煩雑になり、コスト低減の面から不利になる。又、前記両ガイド孔は、前記サポート3の一部(サポート側にガイドピンを設ける場合にはキャリパの一部)に、軸方向に貫通する貫通孔として、或はガイドピンの設置側にのみ開口する有底孔(袋孔)として形成する。そして、貫通孔の場合には、ガイドピンを設置した側と反対側の開口部にも、ブーツ或はキャップ等の第二のシール構造物を設けたり、ガイド孔の内周面を耐食材製のスリーブにより覆う必要があり、コスト面からの不利が著しくなる。これに対して、有底孔の場合には、前記第二のシール構造物が不要になる代わりに、前記両ガイド孔の軸方向長さ(深さ)を十分に確保する必要があり、小型・軽量化及び低コスト化や防錆性の面から不利になる。
【0006】
このうち、小型・軽量化及び低コスト化を妨げられる理由は、前記両ガイド孔の軸方向寸法が嵩む為である。即ち、これら両ガイド孔の軸方向寸法は、前記インナパッド8及びアウタパッド9を構成するライニング12a、12bの厚さが十分に大きい場合(新品時)から、前記両ガイドピンと前記両ガイド孔との係り代、即ち、これら両ガイド孔に対するこれら両ガイドピンの挿入量を確保して、前記サポートに対する前記キャリパの支持剛性を確保し、しかも、前記両ライニング12a、12bが摩耗した場合にも、これら両ガイドピンの先端面が前記両ガイド孔の奥端面に突き当たらず、前記サポートに対して前記キャリパが軸方向に変位し得る様に、十分に大きくする必要がある。この様な理由により、前記両ガイド孔の軸方向長さが嵩むと、前記サポート(或はキャリパ)のうちでこれら両ガイド孔を設けた部分の軸方向寸法が嵩み、小型・軽量化の面から不利になる。又、これら両ガイド孔の内周面に、平滑化等の為に行う仕上加工に要する時間が長くなり、低コスト化の面から不利になる。
【0007】
更に、防錆性の面から不利になる理由は、有底でしかも深いガイド孔の場合、このガイド孔の奥部内周面を、防錆の為のメッキ層により覆う事が難しい為である。そして、このガイド孔の奥部内周面が防錆の為のメッキ層により覆われないと、この奥部内周面が、フローティングキャリパ型ディスクブレーキの組立完了前(前記ガイド孔にガイドピンを挿入する以前)に錆びる可能性がある。そして、錆びた場合には、前記サポートに対する前記キャリパの軸方向変位が円滑に行われなくなる。
【0008】
【特許文献1】特開平7−139565号公報
【特許文献2】特開2006−207722号公報
【特許文献3】特開2008−169961号公報
【特許文献4】特開2008−111496号公報
【特許文献5】特開昭55−33995号公報
【特許文献6】特開平8−49736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、サポートに対してキャリパを軸方向の変位を可能に支持する為の構造を工夫する事により、小型・軽量且つ低コストで造れるフローティングキャリパ型ディスクブレーキを実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、前述した従来から知られているフローティングキャリパ型ディスクブレーキと同様に、ロータと、サポートと、インナパッドと、一対のガイドピンと、キャリパと、アウタパッドとを備える。
このうちのロータは、車輪と共に回転する。
又、前記サポートは、前記ロータのインナ側面に対向する状態で車体に固定される。
又、前記インナパッドは、軸方向の変位を可能として、前記サポートに支持されている。
又、前記両ガイドピンは、前記サポートの回入側と回出側とに、それぞれインナ側に突出する状態で設けられている。
又、前記キャリパは、回入側と回出側とに突出した一対のガイド腕部の先端部と前記両ガイドピンとを軸方向の変位を可能に係合させる事により前記サポートに、軸方向の変位を可能に支持されている。
又、前記アウタパッドは、前記ロータを挟んで前記インナパッドと対向する部分に、軸方向の変位を可能に支持されている。
【0011】
特に、本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキに於いては、前記両ガイド腕部の先端部にそれぞれ、軸方向両側面に加えてこの軸方向に対し直角方向にも開口するガイド凹部を形成している。
そして、前記両ガイド腕部のガイド凹部に前記両ガイドピンの軸方向の一部を、軸方向の変位を可能に内嵌している。
【0012】
上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記両ガイド凹部に、それぞれが弾性及び耐食性を有する板材製である一対のパッドクリップを装着する。そして、前記両ガイド凹部と前記両ガイドピンとを、これら両パッドクリップを介して係合させる。
【0013】
或は、請求項3に記載した発明の様に、前記キャリパの回入側と回出側とに、それぞれアウタ側に突出する状態で一対のアンカピンを設ける。そして、これら両アンカピンの先端寄り部分と、前記アウタパッドの回入側、回出側両端部に形成したガイド切り欠きとを、軸方向の変位を可能に係合させる。この場合に好ましくは、前記アウタパッドを、前記キャリパのアウタ側端部に結合固定する。
【0014】
そして、この様な請求項3に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した発明の様に、前記両ガイドピンと前記両アンカピンとを、同軸且つ互いに一体とする。そして、これら両ガイドピンと両アンカピンとの連続部に形成された雄ねじ部を前記サポートの回入側と回出側とに設けたねじ孔に螺合し更に締め付ける事により、前記両ガイドピン及び前記両アンカピンを前記サポートに固定する。
【0015】
又、前述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、前記アウタパッドを構成するプレッシャプレートを前記キャリパのアウタ側端部に結合固定する。そして、このアウタパッドに基端部を係止した第二のパッドクリップの先端部により、前記インナパッドの外径側端縁を弾性的に押圧する。
【発明の効果】
【0016】
上述の様に構成する本発明によれば、小型・軽量且つ低コストで造れるフローティングキャリパ型ディスクブレーキを実現できる。
先ず、小型・軽量化は、両ガイド腕部の先端部に形成するガイド凹部の軸方向長さを大きくする必要がない事で達成できる。即ち、本発明の構造の場合には、前記両ガイド凹部に対して両ガイドピンを、これら両ガイド凹部の軸方向両側に突出する状態で内嵌する。この為、これら両ガイド凹部の軸方向長さが短くても、サポートに対してキャリパを安定した状態で、しかも、軸方向の変位量を十分に確保した状態で支持できる。この為、前記両ガイド腕部の先端部の軸方向に関する寸法を小さく抑えて、小型・軽量化を図れる。又、前記両ガイド凹部の軸方向寸法を抑える事で、これら両ガイド凹部の内面の仕上加工に要する手間を軽減して、低コスト化を図れる。
【0017】
更に、低コスト化は、ブーツ等のシール構造物が不要になる事でも図れる。即ち、前記両ガイド凹部は、軸方向両側面だけでなく、軸方向に対し直角方向にも開口している為、これら両ガイド凹部内に入り込んだ異物は、これら両ガイド凹部から外に排出され易く、これら両ガイド凹部内に止まりにくい。この為、前記異物自体が、これら両ガイド凹部に対する前記両ガイドピンの軸方向変位(前記サポートに対する前記キャリパの軸方向変位)を妨げる要因とはなりにくい。又、仮に、前記両ガイド凹部の内面等に付着した前記異物により、これら両ガイド凹部の内面と前記両ガイドピンの外周面とが錆び付いたり、粘着性を有する異物が付着したとしても、錆び付きや粘着の面積は僅少に止まる。この為、仮に錆び付いたり、粘着したりしても、制動時に前記サポートと前記キャリパとの間に加わる力によってこの錆び付き或は粘着部分が剥離し、このサポートに対しこのキャリパを軸方向に変位させられる。
特に、請求項2に記載した発明の様に、前記両ガイド凹部にパッドクリップを装着すれば、これら両ガイド凹部と前記両ガイドピンとの錆び付きを抑えて、前記サポートに対する前記キャリパの軸方向変位を、より確実に保証できる。同時に、これらサポートとキャリパとの係合部ががたつく事を防止できる。
【0018】
又、請求項3に記載した発明の様に、一対のアンカピンによりアウタパッドを支持する構造を採用すれば、このアウタパッドを支持する部分の構造を簡略化して、より一層の小型・軽量化を図れる。特に、前記アウタパッドを前記キャリパのアウタ側端部に固定すれば、このキャリパの回入側及び回出側を、それぞれ軸方向に離隔した2箇所位置ずつで支持して、このキャリパの姿勢をより安定させられる。
この場合に、請求項4に記載した発明の様に、互いに一体とした前記両ガイドピンと前記両アンカピンとを、前記サポートの回入側と回出側とにねじ止め固定すれば、このサポートに対するこれら両ガイドピン及び両アンカピンの固定作業が容易になる。
更に、請求項5に記載した発明の様に、前記キャリパのアウタ側端部に前記アウタパッドを固定すれば、このキャリパの小型・軽量化と、このキャリパに対するこのアウタパッドのがたつき防止とを図れる。そして、このアウタパッドに基端部を係止した第二のパッドクリップの先端部により前記インナパッドの外径側端縁を弾性的に押圧する事で、このインナパッドと前記キャリパとの間のがたつき防止も図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[実施の形態の第1例]
図1〜8は、全請求項に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、車輪と共に回転するロータ10に隣接して車体に固定されるサポート3aに、一対のガイドピン5a、5aを介してキャリパ4aを、一対のアンカピン13、13を介してインナパッド8a及びアウタパッド9aを、それぞれ軸方向(図2、3、6の表裏方向、図4の上下方向、図5の左右方向)に変位可能に支持している。
【0020】
前記両ガイドピン5a、5aと前記両アンカピン13、13とは、互いに同心に、且つ一体に造られている。そして、このうちのガイドピン5a、5aとアンカピン13、13との連続部に、ガイドピン5a、5a側から順番に、外向鍔部14と雄ねじ部15とを、一体に設けている。又、これら両ガイドピン5a、5aの先端部であるインナ側端部に、断面形状が非円形(図示の例では正六角形)である係止部16を形成している。この係止部16の外接円の直径は、前記ガイドピン5a、5aの本体部分(後述するガイド凹部18、18と係合する部分)の外径以下である。この様なアンカピン13、13一体型のガイドピン5a、5aは、前記サポート3aの回入側と回出側とに設けたねじ孔に、前記両アンカピン側13、13を先にして、インナ側からアウタ側に挿入している。そして、前記雄ねじ部15を前記ねじ孔に螺合し、更に締め付ける事で、前記サポート3aに、前記ロータ10の中心軸と平行に固定している。この締め付け作業の際、前記係止部16に、スパナ、ボックスレンチ等の、工具を係止する。締め付け完了の状態で、前記外向鍔部14のアウタ側面と前記サポート3aのインナ側面とが突き当たる。
【0021】
上述の様にして前記サポート3aに固定した前記両ガイドピン5a、5aを利用して前記キャリパ4aを、本例の特徴である構造により、軸方向に変位可能に支持している。この為に本例の構造では、前記キャリパ4aの周方向両側面に一対のガイド腕部17、17を、それぞれ回入側と回出側とに向け、周方向に突出する状態で形成している。これら両ガイド腕部17、17の先端部にそれぞれ、ガイド凹部18、18を形成している。これら両ガイド凹部18、18は、軸方向に見た形状が、図2に示す様に略矩形であり、前記両ガイド腕部17、17の先端部の軸方向両側面に加えて、この軸方向に対し直角方向である、周方向(これら両ガイド腕部17、17の先端面)にも開口している。前記両ガイド凹部18、18の、軸方向に関する幅寸法W18は、前記両ガイドピン5a、5aの有効長さ(これら両ガイド凹部18、18を案内できる部分の軸方向長さ)L5 よりも十分に小さい(W18≪L5 )。
【0022】
そして、前記両ガイド腕部17、17のガイド凹部18、18に前記両ガイドピン5a、5aの軸方向の一部を、それぞれパッドクリップ19、19を介して、軸方向の変位を可能に内嵌している。これら両パッドクリップ19、19はそれぞれ、ステンレスのばね鋼板等の、弾性及び耐食性を有する板材である素材に、適宜の打ち抜き加工及び曲げ加工を施す事により、図7に示す様な形状としている。造られたパッドクリップ19、19は、両ガイドピン5a、5aをほぼ隙間なく内嵌可能な、略コ字形の基部20、20と、この基部20、20の一端側{径方向内側で、図2及び図7の(A)の下側}からこの基部20、20の内側に折り返された弾性押圧部21、21と、この基部20、20の他端側{径方向外側で、図2及び図7の(A)の上側}からこの基部20、20の外側に折り返された抑え部22、22とを備える。又、この基部20、20の他端寄り部分の両側縁と、前記弾性押圧部21、21の先端寄り部分の両側縁との、合計4箇所位置に係止舌片23a、23bを、それぞれ前記基部20、20の外側に突出する状態で形成している。このうちの係止舌片23b、23bが、前記両パッドクリップ19、19の内側に前記両ガイドピン5a、5aを挿入する際のガイドとして機能する。更に、前記抑え部22、22の先端寄り部分に、前記基部20、20に向けて、噛合舌片24、24を形成している。
【0023】
それぞれが上述の様な構成を有する、前記両パッドクリップ19、19は、それぞれ前記両ガイド凹部18、18内に装着する。この状態で、前記噛合舌片24、24が前記両ガイド腕部17、17の先端部外径側側面に噛合して、前記両パッドクリップ19、19が前記両ガイド凹部18、18から不用意に抜け出る事を防止する。そこで、前記両パッドクリップ19、19の内側に、前記両ガイドピン5a、5aの中間部を組み付ける(内嵌する)。この状態で、前記弾性押圧部21、21がこれら両ガイドピン5a、5aの外周面を弾性的に押圧し、これら両ガイドピン5a、5aが前記両ガイド凹部18、18内でがたつく事を防止する。又、前記各係止舌片23a、23aが、前記両ガイド腕部17、17の先端部軸方向両側面と係合して、前記両パッドクリップ19、19が前記両ガイド凹部18、18から軸方向に抜け出る事を防止する。この状態で前記キャリパ4aが前記サポート3aに対し、軸方向に変位可能に支持される。尚、実際にこのキャリパ4aをこのサポート3aに組み付けるのに本例の場合には、先ず、前記両パッドクリップ19、19及び前記両ガイドピン5a、5aを、前記両ガイド凹部18、18部分に組み付ける。その後、前記雄ねじ部15、15を前記ねじ孔に螺合し更に締め付けて、前記両ガイドピン5a、5aを前記サポート3aに組み付ける。
【0024】
この様にしてサポート3aに支持した、前記キャリパ4aは、インナ側部分に設けたシリンダ部6aからアウタ側に向けて連結部25を、前記ロータ10を跨ぐ状態で設けている。本例の場合、この連結部25を二股状としている。そして、この連結部25のアウタ側端面に、前記アウタパッド9aを構成するプレッシャプレート26aの径方向外端寄り部分を、一対のボルト27、27により結合固定している。このプレッシャプレート26aのうちで前記連結部25よりも径方向内側部分のインナ側面にはライニング28aを添着固定して、前記アウタパッド9aを構成している。
【0025】
又、前記プレッシャプレート26aのうちで、回入側、回出側両端縁部に、それぞれガイド切り欠き29、29を形成し、これら両ガイド切り欠き29、29に、前記両アンカピン13、13の中間部先端寄り部分を、軸方向の変位を可能に係合させている。前記両ガイド切り欠き29、29の奥端面は、凸部分円筒面としており、前記両アンカピン13、13の先端部(アウタ側端部)の外周面の互いに対向する部分は、前記凸部分円筒面である奥端面と、当接若しくは近接対向している。尚、上記プレッシャプレート26aの、回入側、回出側両端部にガイド通孔を形成し、これら両ガイド通孔に、前記両アンカピン13、13の中間部先端寄り部分を挿通する事もできる。
【0026】
又、前記両アンカピン13、13の中間部基端寄り部分に、前記インナパッド8aを、軸方向の変位を可能に支持している。この為に、インナパッド8aを構成するプレッシャプレート26bの回入側、回出側両端部でライニング28bよりも周方向に突出した部分に係止孔30、30を形成し、これら両係止孔30、30に、前記両アンカピン13、13の中間部基端寄り部分を、軸方向の変位を可能に挿通している。これら両アンカピン13、13の中間部基端寄り部分の外周面と、前記両係止孔30、30の周方向両内側縁とは、当接若しくは近接対向している。尚、実際に前記インナパッド8aを前記両アンカピン13、13の基端部同士の間に支持する作業は、前記アウタパッド9aをこれら両アンカピン13、13の先端部同士の間に支持するのに先立って行う。
【0027】
更に、前記アウタパッド9aと前記インナパッド8aとの間に第二のパッドクリップ31を掛け渡して、前記サポート3aに対する、これら両パッド9a、8a及び前記キャリパ4aのがたつきを防止している。前記第二のパッドクリップ31は、ステンレスのばね鋼等の弾性金属板を曲げ形成して成るもので、図8に詳示する様に、大略コ字形の基部32と、この基部32のインナ側端部からインナ側に折れ曲がった弾性抑え部33とを備える。又、この基部32のインナ側板部に、係止孔34を形成している。この様な第二のパッドクリップ31は、前記基部32を前記アウタパッド9aのプレッシャプレート26aの径方向外端縁部に外嵌すると共に、前記係止孔34に、このプレッシャプレート26aのインナ側面に突設した係止突起35を係合させる。必要に応じて、この係止突起35の先端部をかしめ拡げても良い。
【0028】
何れにしても、上記基部32を前記アウタパッド9aのプレッシャプレート26aの径方向外端縁部に支持固定した状態で、前記弾性抑え部33の先端部(インナ側端部)を前記インナパッド8aを構成するプレッシャプレート26bの外径側端縁に弾性的に当接させている。この結果、前記インナパッド8aには径方向内方に向いた力が加わり、前記プレッシャプレート26bに形成した前記両係止孔30、30の内面が、前記サポート3aに固定された、前記両アンカピン13、13の中間部基端寄り部分の外径側側面に押し付けられる。同時にこの反作用として、前記アウタパッド9a及びこのアウタパッド9aを固定した前記キャリパ4aに径方向外方に向いた力が加わり、その結果、前記プレッシャプレート26aに形成した前記両ガイド切り欠き29、29の内面が、前記両アンカピン13、13の中間部先端寄り部分の内径側側面に押し付けられる。この結果、前記両パッド9a、8a及び前記キャリパ4aが、前記サポート3aに対しがたつかなくなる。
【0029】
上述の様に構成する本例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキにより制動を行う場合には、前記キャリパ4aのインナ側端面に設けたコネクタ36を通じて、前記シリンダ部6a内に油圧を導入し、このシリンダ部6a内に嵌装したピストン37(図3、5、6参照)を押し出す。この押し出しに伴って前記インナパッド8aを前記ロータ10のインナ側面に押し付けると同時に、前記キャリパ4aをインナ側に変位させて、前記アウタパッド9aを前記ロータ10のアウタ側面に押し付ける。この結果、このロータ10が両側から挟持されて、制動が行われる。この制動に伴って前記インナパッド8a及び前記アウタパッド9aに加わった制動トルクは、前記両アンカピン13、13により支承する。支承の機構は特に問わないが、本例の場合には、前記アウタパッド9aに関しては、回出側のアンカピン13のみが支承する、所謂押しアンカとなる。これに対して、前記インナパッド8aに関しては、制動トルクが小さい場合には回入側のアンカピン13のみが支承する、所謂引きアンカとなり、同じく大きい場合には回入側に加えて回出側のアンカピン13もが支承する、所謂押し引きアンカとなる。尚、上記アウタパッド9aに関しても、プレッシャプレート26aの両端部にガイド通孔を形成した構造を採用すれば、引きアンカの機能も併せ持たせる事ができる。
【0030】
制動開始及び制動解除に伴って、前記キャリパ4aが前記サポート3aに対し軸方向に変位するが、この変位は、前記両ガイドピン5a、5aに対して前記両ガイド腕部17、17のガイド凹部18、18が変位する事により許容する。これら両ガイド凹部18、18の内面と前記両ガイドピン5a、5aの外周面との間には、それぞれ前記パッドクリップ19、19を装着している為、前記軸方向の変位は、がたつきなく、しかも円滑に行われる。
【0031】
上述の様に構成する本例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、次の様な理由により、小型・軽量且つ低コストで造れる。即ち、本例の構造の場合には、前記両ガイド凹部18、18に対して前記両ガイドピン5a、5aを、これら両ガイド凹部18、18の軸方向両側に突出する状態で内嵌している。この為、前記両ガイドピン5a、5aの長さ寸法さえ確保すれば、前記サポート3aに対する前記キャリパ4aの変位量を確保できる。言い換えれば、前記両ガイド凹部18、18の軸方向長さが短くても、前記サポート3aに対して前記キャリパ4aを、安定した状態で、しかも、軸方向の変位量を十分に確保した状態で支持できる。この為、前記両ガイド腕部17、17の先端部の軸方向に関する寸法を小さく抑えて、小型・軽量化を図れる。又、前記両ガイド凹部18、18の軸方向寸法を抑える事で、これら両ガイド凹部18、18の内面の仕上加工に要する手間を軽減して、低コスト化を図れる。又、本例の構造の場合には、前記サポート3aと前記キャリパ4aとを、回入側と回出側とのそれぞれの部分で、前記両ガイド凹部18、18と前記両ガイドピン5a、5aとの係合部と、前記両アンカピン13、13と前記両ガイド切り欠き29、29との係合部との2箇所位置ずつで(合計4箇所で)係合させている。従って、前記両ガイド凹部18、18と前記両ガイドピン5a、5aとの係合部の軸方向長さが短くても、前記キャリパ4aの姿勢を十分に安定させられる。
【0032】
又、本例の構造の場合には、前記両アンカピン13、13により前記アウタパッド9aを支持する構造を採用しているので、このアウタパッド9aを支持する部分の構造を簡略化して、より一層の小型・軽量化を図れる。しかも本例の構造の場合には、前記両ガイドピン5a、5aと前記両アンカピン13、13とを互いに同心且つ一体とし、これら両ガイドピン5a、5a及び両アンカピン13、13を前記サポート3aの回入側と回出側とにねじ止め固定しているので、このサポート3aに対する前記両ガイドピン5a、5a及び前記両アンカピン13、13の固定作業を容易に行えて、低コスト化を図れる。
【0033】
又、本例の構造の場合には、前記キャリパ4aのアウタ側端部に前記アウタパッド9aを構成するプレッシャプレート26aを直接固定し、前述の図14〜15に示した従来構造の様なキャリパ爪7を省略している。この為、その分、前記キャリパ4aの小型・軽量化と、このキャリパ4aに対する前記アウタパッド9aのがたつき防止とを図れる。更に本例の場合には、前記第二のパッドクリップ31を設けている為、前記サポート3aに対する、前記両パッド8a、9a及び前記キャリパ4aのがたつきも、有効に抑えられる。
【0034】
又、本例の構造の場合には、前記両ガイドピン5a、5aと前記両ガイド腕部17、17との間に、ブーツ等のシール構造物を設けない分、低コスト化を図れる。即ち、前記両ガイドピン5a、5aの軸方向中間部を内嵌した前記両ガイド凹部18、18は、軸方向両側面だけでなく、軸方向に対し直角方向である、回入側或いは回出側にも開口している。要するに、前記両ガイドピン5a、5aの軸方向中間部で前記両ガイド凹部18、18に嵌合した部分は、全周囲まれてはいない(三方のみ囲まれて側方に開口している)。この為、これら両ガイド凹部18、18内に入り込んだ異物は、これら両ガイド凹部18、18から外に排出され易く、これら両ガイド凹部18、18内に止まりにくい。この為、前記異物自体が、これら両ガイド凹部18、18に対する前記両ガイドピン5a、5aの軸方向変位を妨げる要因とはなりにくい。
【0035】
又、仮に、前記両ガイド凹部18、18の内面や前記両ガイドピン5a、5aの外周面等に付着した前記異物により、これら両ガイド凹部18、18の内面と両ガイドピン5a、5aの外周面とが錆び付いたり、粘着性を有する異物が付着しとしても、錆び付きや粘着の面積は僅少に止まる。特に本例の構造の場合には、前記両ガイド凹部18、18の内面形状を略矩形としている為、これら両ガイド凹部18、18の内面と、円筒状の外周面を有する前記両ガイドピン5a、5aの外周面との接触面積を小さく抑えられる。この為、前記付着や錆び付きが生じたとしても、前記両ガイド凹部18、18の内面と前記両ガイドピン5a、5aの外周面との接着(粘着或いは錆び付き)強度は低く抑えられる。この為、仮に錆び付いたり、粘着したりしても、制動時に、前記ピストン37の押し出しに伴って、前記サポート3aと前記キャリパ4aとの間に加わる力によって、前記錆び付き或は粘着部分が剥離し、このサポート3aに対し前記キャリパ4aを軸方向に変位させられる。しかも本例の構造の場合には、前記両ガイド凹部18、18に前記両パッドクリップ19、19を装着しているので、これら両ガイド凹部18、18と前記両ガイドピン5a、5aとの錆び付きを抑えられる。従って、前記サポート3aに対する前記キャリパ4aの軸方向変位を、より確実に保証できる。
【0036】
[実施の形態の第2例]
図9は、請求項1、3〜5に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の場合には、キャリパ4aのガイド腕部17、17の先端部に設けたガイド凹部18a、18aの奥半部の形状を、奥部に向かうに従って径方向の幅が狭くなる、V字形としている。そして、前記両ガイド凹部18a、18aと一対のガイドピン5a、5aとのうち、一方(図9の左方)のガイド凹部18aとガイドピン5aとの間部分にのみ、パッドクリップ19aを設けている。このパッドクリップ19aは、前記ガイドピン5aを前記ガイド凹部18aから押し出す方向の弾力を有する。
【0037】
この様な本例の構造では、前記パッドクリップ19aの弾力により、このパッドクリップ19aを設けた側(図9の左側)の、前記ガイド凹部18aと前記ガイドピン5aとの係合部のがたつきを防止できるだけでなく、設けていない側(図9の右側)のガイド凹部18aとガイドピン5aとの係合部のがたつきも防止できる。即ち、この設けていない側の係合部に就いても、前記パッドクリップ19aの弾力により、前記ガイドピン5aの外周面と前記ガイド凹部18aの内面とが隙間なく当接し、上記がたつきの防止を図れる。この為、部品点数の削減によるコスト低減を図れる。前記パッドクリップ19aを設けていない側の係合部が、錆び付き、粘着等により付着しても、制動時に簡単に剥離する為、制動不良を生じる事はない。
その他の部分の構造及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0038】
[実施の形態の第3例]
図10は、全請求項に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、キャリパ4aに設けた一対のガイド腕部17、17のうち、一方(図10の左方)のガイド腕部17の中間部先端寄り部分にガイド凹部18bを、外径側側面に開口する状態で形成している。これに対して他方(図10の右方)のガイド腕部17の中間部先端寄り部分にガイド凹部18bを、内径側側面に開口する状態で形成している。そして、これら両ガイド凹部18b、18bに内嵌したガイドピン5a、5aをパッドクリップ19b、19bにより、これら両ガイド凹部18b、18bからの抜け止めを図りつつ、これら両ガイド凹部18b、18bの奥部に向け、弾性的に押圧している。
【0039】
この様な本例の構造によれば、制動時に両パッドから前記キャリパ4aに伝わった制動トルクの一部を、回入側のガイドピン5aにより支承できる。言い換えれば、この回入側のガイドピン5aを、所謂引きアンカとして利用できる。この為、前記両パッドからアンカピンに伝わる制動トルクを低減して、このアンカピンの強度及び剛性確保の面から有利になる。
【0040】
又、本例の構造の場合には、前記両パッドクリップ19b、19bにより前記キャリパ4aに付与するモーメントの方向は、前進状態での制動時に、各パッドとロータとの摩擦に伴って前記キャリパ4aに加わるモーメントの方向と一致させている。従って本例の構造によれば、制動開始時に前記キャリパ4aが、回転方向に変位する事を防止できて、このキャリパ4aとサポート3aの一部とが勢い良く衝突する事を防止でき、不快な振動や異音が発生する事を防止できる。
その他の部分の構造及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0041】
[実施の形態の第4〜5例]
図11〜12は、請求項1、3〜5に対応する、本発明の実施の形態の第4〜5例を示している。前述の図1〜8に示した実施の形態の第1例、及び、前述の図9に示した実施の形態の第2例は、1乃至2個のパッドクリップ19、19aを設けていた。これに対して、これら第4〜5例の場合には、パッドクリップを省略して第二のパッドクリップ31(図1〜4参照)のみで、各部のがたつきを防止する事を意図している。この為、部品点数の低減によるコスト低減を、より十分に図れる。
その他の部分の構造及び作用は、前述した実施の形態の第1〜2例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、図示の実施の形態に示す様な、キャリパに対してアウタパッドのプレッシャプレートを直接固定する様な構造に限らずに実施できる。即ち、前述の図14〜15に示す様な、サポートに支持したアウタパッドを、キャリパに設けたキャリパ爪により押圧する構造に関して、本発明を適用する事もできる。
【0043】
又、ガイドピンの断面形状やガイド腕部17の先端部に設けるガイド凹部の形状に関しても、適宜変更して実施する事もできる。例えば、図13の(A)に示す様に、ガイドピン5bの断面形状を正方形とする事もできる。この場合には、このガイドピン5bをガイド凹部18に係合させた状態で、このガイドピン5bを回転させる事はできない。そこで、図13の(A)に示した構造を実施する場合には、例えば、前記ガイドピン5bをサポート3aに圧入するか、かしめ等にて固定する。
【0044】
又、ガイド凹部の凹部の形状に関しても、図13の(B)に示す様に、奥面中央部に凸部を設けたガイド凹部18cとしたり、(C)に示す様に、奥面がガイドピン5aの外周面よりも曲率半径が大きい凹部分円筒面であるガイド凹部18dとする事もできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態の1例を、インナ側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。
【図2】図1のX矢印方向であるインナ側から見た状態で示す正投影図。
【図3】図2と逆側であるアウタ側から見た状態で示す正投影図。
【図4】図2の上側である径方向外側から見た状態で示す正投影図。
【図5】図3の右側である周方向から見た状態で示す正投影図。
【図6】アウタパッドを省略して図3と同方向から見た正投影図。
【図7】パッドクリップを示す、(A)は図2と同方向から見た、(B)は図4と同方向から見た、(C)は図5と同方向から見た、それぞれ正投影図。
【図8】第二のパッドクリップを示す、(A)は図5と同方向から見た、(B)は図2と同方向から見た、それぞれ正投影図。
【図9】本発明の実施の形態の第2例を、一部を省略して図2と同方向から見た正投影図。
【図10】同第3例を示す、図9と同様の図。
【図11】同第4例を示す、図9と同様の図。
【図12】同第5例を示す、図9と同様の図。
【図13】ガイドピンとガイド凹部との別形状の3例を示す部分断面図。
【図14】従来構造の1例を、インナ側且つ径方向外側から見た状態で示す斜視図。
【図15】同じくアウタ側且つ径方向内側から見た状態で示す斜視図。
【符号の説明】
【0046】
1 サポートプレート
2 アンカブロック
3、3a サポート
4、4a キャリパ
5、5a、5b ガイドピン
6、6a シリンダ部
7 キャリパ爪
8、8a インナパッド
9、9a アウタパッド
10 ロータ
11 ブーツ
12a、12b ライニング
13 アンカピン
14 外向鍔部
15 雄ねじ部
16 係止部
17 ガイド腕部
18、18a、18b、18c、18d ガイド凹部
19、19a、19b パッドクリップ
20 基部
21 弾性押圧部
22 抑え部
23a、23b 係止舌片
24 噛合舌片
25 連結部
26a、26b プレッシャプレート
27 ボルト
28a、28b ライニング
29 ガイド切り欠き
30 係止孔
31 第二のパッドクリップ
32 基部
33 弾性抑え部
34 係止孔
35 係止突起
36 コネクタ
37 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するロータと、このロータのインナ側面に対向する状態で車体に固定されるサポートと、軸方向の変位を可能としてこのサポートに支持されたインナパッドと、このサポートの回入側と回出側とに、それぞれインナ側に突出する状態で設けられた一対のガイドピンと、回入側と回出側とに突出した一対のガイド腕部の先端部とこれら両ガイドピンとを軸方向の変位を可能に係合させる事により前記サポートに、軸方向の変位を可能に支持されたキャリパと、前記ロータを挟んで前記インナパッドと対向する部分に、軸方向の変位を可能に支持されたアウタパッドとを備えたフローティングキャリパ型ディスクブレーキに於いて、前記両ガイド腕部の先端部にそれぞれ、軸方向両側面に加えてこの軸方向に対し直角方向にも開口するガイド凹部を形成しており、前記両ガイド腕部のガイド凹部に前記両ガイドピンの軸方向の一部を、軸方向の変位を可能に内嵌している事を特徴とするフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項2】
前記両ガイド凹部に、それぞれが弾性及び耐食性を有する板材製である一対のパッドクリップを装着しており、前記両ガイド凹部と前記両ガイドピンとを、これら両パッドクリップを介して係合させている、請求項1に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項3】
前記キャリパの回入側と回出側とに、それぞれアウタ側に突出する状態で一対のアンカピンを設け、これら両アンカピンの先端寄り部分と、前記アウタパッドの回入側、回出側両端部に形成したガイド切り欠きとを、軸方向の変位を可能に係合させている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項4】
前記両ガイドピンと前記両アンカピンとが、同軸且つ互いに一体であり、これら両ガイドピンと両アンカピンとの連続部に形成された雄ねじ部を前記サポートの回入側と回出側とに設けたねじ孔に螺合し更に締め付ける事により、前記両ガイドピン及び前記両アンカピンを前記サポートに固定している、請求項3に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項5】
前記アウタパッドを構成するプレッシャプレートを前記キャリパのアウタ側端部に結合固定しており、このアウタパッドに基端部を係止した第二のパッドクリップの先端部により、前記インナパッドの外径側端縁を弾性的に押圧している、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−127326(P2010−127326A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300329(P2008−300329)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】