説明

フープと可撓性コネクターの選定された部分との両方に、改変された分子構造を有するポリマーステント

【課題】管腔内ステントを製造するための材料および関連方法であって、工学技術によってデバイスを特定の用途に設計する機会をデバイスの設計者に提供する該材料および該方法を開発すること。
【解決手段】生体適合性材料は、管腔内ステントを包含する何種類もの植え込み可能な医療デバイスに設計することができる。ポリマー材料を利用して、ステントを包含するこれらのデバイスのいかなるものをも作ることができる。ステントは、バルーン拡張型または自己拡張型となり得る。ポリマーの選択的機械的変形を行うことによって、ポリマー鎖を配向させて、幾つか所望の性能特性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本特許出願は、特許出願日、2005年12月13日の同時係属出願米国特許出願シリアル番号11/301,879号の一部継続出願であって、それの内容は、参照されることによって本明細書に組み入れられる。
【0002】
〔発明の背景〕
〔1.発明の分野〕
本発明は、管腔内ポリマーステント(intraluminal polymeric stents)に関し、更に詳しくは、加力(application of stress)に起因して改変された分子配向(modified molecular orientation)を有する管腔内ポリマーステントに関する。
【0003】
〔2.関連技術の解説〕
現在製造されている管腔内ステントは、臨床関連の生体内負荷条件の下での該デバイスの所望の機械的挙動に対する、該ステントを形成している材料の特性の十分な調整を適切に提供している訳ではない。いかなる管腔内デバイスでも好ましくは、脈管をそれの意図された内腔直径に再形成するのに役立つ、短期的および/または長期的な外向きの力(outward force)によって該脈管の開通性(patency)を維持する特性と、配置される時、半径方向の過剰のリコイル(recoil)を防止する特性と、十分な疲労抵抗(fatigue resistance)を示す特性と、十分な柔軟性を示す特性とを包含する幾つかの特性を示して、意図された拡張直径(expansion diameters)の全範囲に渡って十分な適用範囲(coverage)を提供する。
【0004】
したがって、管腔内ステントを製造するための材料および関連方法であって、工学技術によってデバイスを特定の用途に設計する機会をデバイスの設計者に提供する該材料および該方法を開発する必要性が存在する。
【0005】
〔発明の概要〕
一般に入手可能な材料を、上記に簡潔に記述されるような特定の管腔内治療用途に適用する限界が、本発明によって克服される。
【0006】
本発明は、一つの実施形態によると、長さ方向軸と半径方向軸(radial axis)とを有する、実質的に管状の管腔内医療デバイスに向けられている。該デバイスは、複数の半径方向ストラット(struts)、および複数の半径方向円弧部材を有する、ポリマー材料で形成された複数のフープ(hoops)であって、前記の複数の半径方向ストラットが、前記長さ方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した(in a direction substantially parallel)、前記ポリマー材料を構成(comprising)する第1の整列度のポリマー鎖を有しており、前記の複数の半径方向円弧部材が、前記半径方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第2の整列度のポリマー鎖を有しており、前記の第1の整列度が、前記の第2の整列度より大きい、前記複数のフープと、前記の複数のフープを相互連結している、ポリマー材料で形成された複数のブリッジであって、前記複数のブリッジの各々が、機械的変形(mechanical deformation)によって生じる所定のポリマー鎖整列度(amount of polymer chain alignment)を有する少なくとも1つの部材を有している前記複数のブリッジと、を備えている。
【0007】
本発明は、もう一つの実施形態によると、長さ方向軸と半径方向軸とを有する、実質的に管状の管腔内医療デバイスに向けられている。該デバイスは、複数の半径方向ストラット、および複数の半径方向円弧部材を有する、ポリマー材料で形成された複数のフープであって、前記の複数の半径方向ストラットが、前記長さ方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第1の整列度のポリマー鎖を有しており、前記の複数の半径方向円弧部材が、前記半径方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第2の整列度のポリマー鎖を有しており、前記の第1の整列度が、前記の第2の整列度より小さい、前記の複数のフープと、前記の複数のフープを相互連結している、ポリマー材料で形成された複数のブリッジであって、前記複数のブリッジの各々が、機械的変形によって生じる所定のポリマー鎖整列度を有する少なくとも1つの部材を有している前記複数のブリッジと、を備えている。
【0008】
本発明は、もう一つの実施形態によると、長さ方向軸と半径方向軸とを有する、実質的に管状の管腔内医療デバイスに向けられている。該デバイスは、複数の半径方向ストラット、および複数の半径方向円弧部材を有する、ポリマー材料で形成された複数のフープであって、前記の複数の半径方向ストラットが、前記長さ方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第1の整列度のポリマー鎖を有しており、前記の複数の半径方向円弧部材が、前記半径方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第2の整列度のポリマー鎖を有しており、前記の第1の整列度が、前記の第2の整列度と実質的に同等である、前記の複数のフープと、前記の複数のフープを相互連結している、ポリマー材料で形成された複数のブリッジであって、前記複数のブリッジの各々が、機械的変形によって生じる所定のポリマー鎖整列度を有する少なくとも1つの部材を有している前記複数のブリッジと、を備えている。
【0009】
本発明の、植え込み可能な医療デバイスのための生体適合性材料は、脈管開通性デバイス(vessel patency devices)(例えば、脈管用ステント、胆管用ステント、尿管用ステント)、脈管閉塞用デバイス(vessel occlusion devices)(例えば、心房中隔閉鎖器具および心室中隔閉鎖器具(atrial septal and ventricular septal occluders)、卵円孔開存閉鎖器具(patent foramen ovale occluders))、ならびに、整形外科デバイス(例えば、固定用デバイス(fixation devices))を包含する何種類もの医療用途のために利用することができる。
【0010】
本発明の生体適合性材料は、現在入手可能なステントに比べてより広い範囲の負荷条件に耐え得るステントを製造することのできる、ユニークな組成と設計された特性(designed-in properties)とを有する。更に詳しくは、生体適合性材料の中に設計されている分子構造によって、広範囲に渡る幾何学的配列(geometries)であって様々な負荷条件に適合できる該幾何学的配列を有するステントを設計することが容易となる。
【0011】
本発明の管腔内デバイスは、何種類もの生体適合性ポリマー材料で形成することができる。所望の機械的特性を得るために、該ポリマー材料は、それが原料の状態であろうと管またはシートの状態であろうと、いずれの場合も、物理的に変形させて、ある整列度(degree of alignment)のポリマー鎖を得ることができる。この整列を利用して、ステントの1個以上の部品の物理的特性および/または機械的特性を改善することができる。
【0012】
本発明の、前述の特徴および利点、ならびに、他の特徴および利点は、添付図面に例示されるような、本発明の好ましい実施形態に関する、次のより詳細な記述から明らかになるであろう。
【0013】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
植え込み可能な医療デバイスは、ポリマー材料を包含する何種類もの適切な生体適合性材料で作ることができる。これらのポリマー材料の内部構造は、該ポリマーの機械操作および/または化学操作(mechanical and/or chemical manipulation)を利用して変更されうる。これらの、内部構造の部分変更を利用して、以下に詳細に説明されているような固有の総合特性(例えば、結晶および非晶質の形態、ならびに、結晶および非晶質の配列)を有するデバイスを作り出すことができる。本発明は、何種類もの植え込み可能な医療デバイスに適用されるが、説明を容易にするため、次の詳細な記述は、例示的なステントに焦点が当てられている。
【0014】
図1を参照すると、本発明による例示的なステント100の部分平面図が例示される。例示的なステント100は、複数個の可撓性コネクター104によって相互連結されている、複数個のフープ部品102を備えている。フープ部品102は、連続的な一連の、実質的に長さ方向または軸方向に配向された半径方向ストラット部材106、および、交互に並んだ、実質的に周方向に配列された半径方向円弧部材108として形成されている。フープ部品102は、平面図で示されているが、可撓性コネクター104によって一緒に連結されて、実質的に管状ステント構造体を形成している、本質的に環状の部材である。半径方向ストラット部材106と、交互に並んだ、半径方向円弧部材108との組合せによって、実質的に正弦波のパターンが形成される。フープ部品102は、何種類もの、構造上の特徴(design features)で設計することができ、また、何種類もの形状(configurations)を想定することができるが、例示的な実施形態において、半径方向ストラット部材106は、それらの中央領域110においていっそう広くなっている。この構造上の特徴は、薬物運搬のための増大した表面積を包含する多数の目的のために利用することができる。
【0015】
可撓性コネクター104は、連続する一連の、可撓性ストラット部材112、および、交互に並んだ、可撓性円弧部材114で作られている。可撓性コネクター104は、上述の通り、隣接するフープ部品102同士を連結している。この例示的な実施形態において、可撓性コネクター104は実質的にNの形をしており、一方の端部は一方のフープ部品上の半径方向円弧部材に連結されており、他方の端部は隣接するフープ部品上の半径方向円弧部材に連結されている。フープ部品102と同様、可撓性コネクター104は、何種類もの、構造上の特徴と、何種類もの形状とを有することができる。例示的な実施形態において、ステントのクリンプ加工(crimping)が行われる間、ネスティング(nesting)を容易にするため、可撓性コネクター104の両端部は、隣接するフープ部品の半径方向円弧部材の異なる部分に連結されている。この例示的な形状に関し、隣接するフープ部品上の半径方向円弧部材は、僅かに位相が異なっているのに対して、1つおきのフープ部品上の半径方向円弧部材は、実質的に同位相であることに注目することは、興味深い。加えて、各々のフープ部品上の半径方向の全ての円弧部材が、隣接するフープ部品の全ての半径方向円弧部材に連結される必要がある訳ではないことに注目することは、重要である。
【0016】
管腔内の足場(scaffold)即ちステントの可撓性コネクターまたはコネクターのために、何種類もの構造を利用し得ることに注目することは、重要である。例えば、上述の構造において、コネクターは、2種類の要素、実質的に長さ方向に配向されたストラット部材と可撓性円弧部材とを有する。しかし、代わりの構造において、コネクターは、実質的に長さ方向に配向されたストラット部材のみを有し可撓性円弧部材を全く有さないことがあるか、または、可撓性円弧部材を有し実質的に長さ方向に配向されたストラット部材を全く有さないこともある。
【0017】
ステント100の実質的に管状の構造は、動脈等の実質的に管状の器官の開通性を維持するための、一時的または半永久的な足場を提供する。ステント100は、管腔内面(luminal surface)と管腔外面(abluminal surface)とを有する。それら2つの表面の間の距離によって、壁の厚さは画定される。ステント100は、運搬のための拡張されていない直径と、拡張された直径であって、ステント100が中に運搬される器官の正常直径におおよそ一致する拡張された直径とを有する。動脈等の管状器官は、直径が変化することがあるので、本発明の趣旨から逸脱することなく、拡張されていない直径と拡張された直径との異なる組を有する異なる寸法のステントを設計することができる。本明細書に記述されるように、ステント100は、多数の種類のポリマー材料で作ることができる。
【0018】
したがって、1つの例示的な実施形態において、管腔内足場要素(intraluminal scaffold element)は、非架橋熱可塑性樹脂、架橋熱硬化性樹脂、それらの複合材料および混合物を包含するポリマー材料のような非金属材料で作ることができる。ポリマーが固体に関連する機械的特性を示し得る、典型的には3種の形態、即ち、結晶構造、半結晶構造、および/または非晶質構造としての形態、が存在する。結晶化が起こるには、ポリマー鎖内部における高度な分子の規則性が不可欠であるので、全てのポリマーは、完全に結晶化し得る訳ではない。結晶化するポリマーにおいてさえ、結晶化度は一般に、100%未満である。完全なる結晶構造と非晶質構造との間の連続体(continuum)の内部には、2つの熱転移、即ち、結晶−液体転移(即ち、融点温度,Tm)およびガラス−液体転移(即ち、ガラス転移温度,Tg)、が存在する。これらの2つの転移の間の温度範囲には、規則正しく配列した結晶と、無秩序な非晶質ポリマー領域との混合物が存在することがある。
【0019】
「折り畳み(folded)」鎖を有するポリマー結晶の形成に関するホフマン−ローリッツェン(Hoffman-Lauritzen)理論は、ポリエチレンの薄い単結晶を希薄溶液から成長させることができるという1957年の発見にその起源を帰さねばならない。折り畳み鎖は好ましくは、実質的に結晶性の構造を形成する必要がある。ホフマンおよびローリッツェンは、鎖折り畳み核(chain-folded nuclei)の形成に関連する熱力学に対する特別な認識によって、「溶液(solution)」および「溶融体(melt)」からポリマーを結晶化させることに関する運動論の基礎を確立した。
【0020】
希薄溶液から結晶化を行うためには、巨視的完全無欠さ(macroscopic perfection)(典型的には、約200倍〜約400倍の範囲の倍率)を有する単結晶を生成する必要がある。この点に関し、ポリマーは、無機塩等の低分子量化合物と実質的に相違する訳ではない。温度、溶媒および溶質濃度のような結晶化条件は、結晶の形成と最終形態とに影響を及ぼすことがある。ポリマーは、複数の薄板、即ち、「ラメラ(lamellae)」の形態で結晶化する。これらラメラの厚さは、10ナノメータ(即ち、nm)程度である。小さい寸法(small dimensions)に垂直な結晶プレート(crystal plates)の寸法は、結晶化条件によって決まるが、十分に成長した結晶の小板(platelets)の厚さより何倍も大きい。結晶内部における鎖の方向は、該結晶の短い幅(short dimension)と並行する。このことは、分子が(例えば、折り畳まれた消火用ホースのように)前後に折り重なり、結果的に、折り畳まれた分子(folded molecules)の連続層がそれら小板の横方向成長(lateral growth)を引き起こすことを示している。結晶は単一分子から成る訳ではないし、分子が専ら単一結晶で存在する訳でもない。鎖によって形成されるループ(loop)は、鎖が結晶から現われるときに、向きを変えて、この結晶に再び入る。2つの結晶質セクションを連結する部分は、非晶質ポリマーと見なすことができる。更に、ポリマー鎖の端部は、上述のような、結晶の整然とした折り畳みパターン(fold patterns)を破壊し、該結晶から排除される傾向にある。それゆえに、ポリマー鎖の端部は、該ポリマーの非晶質部分となる。したがって、現在知られているいかなるポリマー材料も、100%の結晶質であるとは考えられない。結晶構造は、後重合(post polymerization)の処理条件に十分なほどに影響を受ける。
【0021】
単結晶は、バルク処理(bulk processing)による結晶化では観察されない。溶融体(melt)からのバルク結晶化ポリマーは、核形成中心の周りに対称である、「スフェルライト(spherulites)」と呼ばれるドメイン(domains)を示す。スフェルライトの成長が、拡張しているもう一つのスフェルライトと接触することによって衝突しなければ、対称性は完全に円形である。鎖の折り畳み(chain folding)は、ポリマーが溶融状態から結晶化することの本質的特徴である。スフェルライトは、核形成部位から放射状に広がる「ラメラ(lamellar)」結晶の凝集体で構成される。したがって、溶液とバルク成長結晶との間には関連がある。
【0022】
球対称は、時間と共に成長する。樹枝状結晶の成長の場合のように、繊維結晶またはラス様結晶(lathlike crystals)が、枝分かれし四方八方に広がり始める。ラメラ(lamellae)が、核から立体的に広がるにつれて、微結晶の枝分かれは、球状形態を生成し続ける。鎖の連続層が、放射状に広がるラス(laths)の端部に付加されることによって、成長は達成される。所与の分子が、2個以上のラメラの中に含有されることに成り、したがって、同一または隣接するスフェルライトからの、放射状に広がる微結晶を連結することができるということを、ポリマー分子の鎖構造は示唆する。これらの層間結合(interlamellar links)は、低分子量化合物のスフェルライト中では起こり得ず、該スフェルライトは、結果として、より小さい機械的強度を示す。
【0023】
分子鎖の折り畳みは、直交偏光子(crossed polarizers)の下、スフェルライトを同定する「マルテーゼ(Maltese)」クロス(cross)の起源(origin)である。所与のポリマー系の結晶粒径分布は、初期核形成密度と、核形成速度と、結晶成長の速度と、配向状態とに影響される。ポリマーが、核形成が半径方向の成長(radial growth)より優勢である条件にさらされる場合、より小さい結晶が生じる。比較的少ない核形成部位が存在し、かつ、成長速度がより速い場合、より大きい結晶が形成される。スフェルライトの直径は、約数μmから数百μmに及ぶことがあり、ポリマー系と結晶化条件とによって決まる。
【0024】
したがって、バルク結晶化ポリマー(bulk-crystallized polymer)中のスフェルライト形態には、組織体(organization)(すなわち、次には配向して球状凝集体になる微結晶の中に折り畳まれる個々の分子)の、様々なレベルでの規則配列(ordering)が含まれる。スフェルライトは、合成物質と、生物学的製剤と、月の石(moon rocks)を包含する地質的素因(geological origin)との有機系ならびに無機系の中で観察されてきたのであり、したがって、ポリマーにとってユニークではない。
【0025】
応力誘導結晶化度(stress induced crystallinity)は、膜および繊維の技術において重要である。ポリマーの希薄溶液が急速に撹拌されるとき、独特の構造体が成長し、これは、「シシカバブ(shish kebab)」形態を有すると言われている。これらの構造体は、繊維質中心カラム(fibrous central column)に沿って延ばされている、折り畳み鎖結晶(folded chain crystals)の大きい塊(chunks)から成る。該構造体の「シシ(shish)」部分と「カバブ(kebab)」部分との両方において、ポリマー鎖は、該構造体の全体軸に平行である。
【0026】
ポリマー溶融体が、剪断されて、熱的に安定な状態まで冷却される時、ポリマー鎖は、それらのランダムコイル(random coils)でかき乱されて、剪断方向に平行に容易に伸びる。このことによって、変形スフェルライト(deformed spherulites)から小さい結晶凝集体が形成される結果となることがある。スフェルライトからフィブリルへの転換(transformation)、多形結晶形成(polymorphic crystal formation)の変化、既に形成された結晶質ラメラの再配向、配向した微結晶の形成、非晶質ポリマー鎖の配向、および/または、それらの組合せを包含する他の形態学的変化が生じることがある。
【0027】
分子配向は重要である。なぜなら、分子配向は、主として、バルクポリマーの特性に影響を及ぼし、したがって、様々な材料用途に不可欠である最終特性に強い影響を持つからである。配向によって影響を受ける特性の幾つかは、透過性(permeability)、耐磨耗性(wear)、屈折率、吸収性(absorption)、分解速度、引張強さ、降伏応力、引裂き強度、弾性率(modulus)および破断点伸びのような物理的および機械的特性である。配向は異方性挙動(anisotropic behavior)を促進するため、配向は、必ずしも有利であるとは限らない。配向は、一軸配向、二軸配向および多軸配向のような幾つかの方向で生じることがある。配向は、延伸(drawing)、ローリング(rolling)、カレンダリング(calendaring)、スピニング(spinning)、吹込み成形(blowing)、等によって誘導される場合があり、繊維、膜、管、瓶(bottles)、成形品、押出し成形品、コーティングおよび複合材料を包含する系の中に存在する。ポリマー材料が処理されるとき、特定方向の選択配向(preferential orientation)が存在することとなる。選択配向は通常、処理が行われる方向となり、縦方向(machine direction:流れ方向)(MD)と呼ばれる。生成物の多くは、特性を改善するために、意図的に特定方向に配向させられる。生成物が溶融処理される場合、該生成物は、ある程度の選択配向を有する。溶媒処理材料の場合、例えば、ポリマー溶液を剪断し、次いで、剪断処理の間、配向を固定するために、所望の幾何学的条件まで直ちに沈降させるかまたは急冷するような方法によって処理される間に配向が誘導されることがある。代替的に、ポリマーが、剛体棒(rigid rod)のような化学構造を有する場合、ポリマー溶液中で液晶形態であることに起因して処理が行われる間に、該剛体棒は配向するであろう。
【0028】
配向状態は、変形(deformation)の種類とポリマーの種類とによって決まる。材料がたとえ著しく変形されようと、または延伸されようと、ポリマー鎖はそれの最初の状態に戻ることができるため、高い配向度を与える必要はない。このことは一般に、延伸温度で非常に可撓性であるポリマーで起こる。したがって、幾つかの要因が、所与のポリマー系の配向状態に影響を及ぼすことがある。それら要因には、変形の速度(例えば、ひずみ速度、剪断速度、頻度、等);変形の量(例えば、延伸比);温度;分子量および分子量分布;鎖の立体配置(configuration)(例えば、立体規則性、幾何異性体、等);鎖の構造(直鎖、枝分かれ鎖、架橋、樹枝状鎖、等);鎖の剛性(可撓性、硬質、半硬質、等);共重合体の種類(ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、等);ならびに、添加剤(可塑剤、硬質充填剤、軟質充填剤、長繊維、短繊維、治療薬、混合物、等)の存在、が包含される。
【0029】
ポリマーは2つの相(即ち、結晶質相および非晶質相)からなるので、これらの相に対する配向の影響は異なる。したがって、半結晶質ポリマー系中のこれら2つの相に対する最終的な配向は同一でない場合がある。これは、可撓性の非晶質鎖が、変形および負荷条件に対して、硬質の結晶質相とは異なるように反応するからである。
【0030】
配向を誘導した後、様々な相を形成することができ、それの挙動は、ポリマー骨格の化学的性質によって決まる。完全に非晶質材料のような均質状態は、単一の配向挙動を有するであろう。しかし、半結晶質、ブロック共重合体または複合材料(繊維強化、充填系、液晶)であるポリマーの配向挙動は、2個以上のパラメータによって記述する必要がある。配向挙動は一般に、材料の構造と配向状態とに正比例する。ポリマー系に存在する、構造に関する幾つかの共通標準(common levels)(例えば、結晶の単位セル、ラメラの厚さ、ドメイン寸法(domain size)、スフェルライト構造、配向した超構造(superstructures)、ポリマー混合物中の相分離ドメイン(phase separated domains)、等)が存在する。
【0031】
例えば、押出しポリエチレンの構造は、積層された折り畳み鎖のラメラ構造である。該構造内部における複数のラメラの配向は縦方向に並行するが、小板(platelets)は、縦方向に垂直に配向する。それらラメラ間の非晶質構造は一般に、配向しない。材料の機械的特性は、様々な方向(縦方向に対して0°、縦方向に対して45°、および、縦方向に対して90°)で試験したとき、異なる。伸び値は通常、材料が縦方向に引っ張られたとき、最小となる。縦方向に対して45°で引っ張られたとき、ラメラの剪断変形が生じて、より大きい伸び値が与えられる。縦方向に対して90°で引っ張られたとき、材料は、鎖軸(chain axis)が広がっている時、最大の伸び率を示す。
【0032】
ポリマー鎖が、所与の変形軸(deformation axis)に対して、ある角度で配向されるとき、鎖の配向性は、ヘルマンズ配向関数(Hermans orientation function)fであって、該変形軸に沿って完全配向(perfect orientation)、垂直配向(perpendicular orientation)およびランダム配向(random orientation)をそれぞれ表わす1、−1/2および0から外れるヘルマンズ配向関数fによって規定することができる。これは、主として、一軸配向系に適用される。配向を測定するために使用される幾つかの技術[例えば、複屈折技術、直線二色性技術、広角X線散乱技術、偏光ラマン散乱技術、偏光蛍光技術およびNMR(核磁気共鳴分析法)]が存在する。
【0033】
本発明のステントは、溶融法および溶解法のような様々な方法で製造することができる。典型的な溶融法(melt processes)には、射出成形法、押出し成形法、紡糸法、圧縮成形法、吹込み成形法、連続式引抜き成形(pultrusion)法、等が包含される。典型的な溶解法(solution processes)には、溶媒キャストチューブおよびフィルム(solvent cast tubes and films)法、静電繊維紡糸(electrostatic fiber spinning)法、乾式および湿式紡糸(dry and wet spinning)法、中空繊維および膜紡糸(hollow fiber and membrane spinning)法、スピニングディスク(spinning disk)法が包含される。ステントを製造するためには、純ポリマー、混合物および複合材料を使用することができる。前駆体材料は、上述の方法のいずれかによって製造され、次いで、レーザーで切断される管またはフィルムである場合がある。前駆体材料は、製造されたまま使用されることが可能であるか、または、様々な条件の下、該前駆体材料のアニーリング、配向または緩和(relaxing)を行うことによって改変されることが可能である。代替的に、レーザーで切断されたステントは、製造されたまま使用されることが可能であるか、または、様々な条件の下、該ステントのアニーリング、配向または緩和(relaxing)を行うことによって改変されることが可能である。
【0034】
ステントまたはデバイスにおけるポリマー配向の効果は、半径方向の強度、リコイル(recoil)および可撓性を包含するデバイス性能を改善することができる。配向は更に、ステントの分解時間を変えることができ、したがって、ステントの異なるセクションは、要望通り、異なるように配向させることができる。配向は、軸方向および周方向または半径方向だけでなく、単位セル(unit cell)および可撓性コネクターにおける他のあらゆる方向と並行して、それらの各々の方向におけるステントの性能を改善することができる。配向は、一つの方向(一軸)のみに制限される場合もあり、2つの方向(二軸)および/または多数の方向(多軸)である場合もある。配向は、所与の材料に様々な手順(例えば、先ず、軸方向の配向を行い、次いで、半径方向の配向を誘導すること、および、逆の場合も同様)で誘導することができる。代替的に、材料は、同時に、両方の方向に配向させることができる。軸方向の配向は、所与の材料(例えば、管またはフィルム)の軸方向または長さ方向に沿って、通常、ポリマーのガラス転移温度より高い温度で引き伸ばすことによって誘導することができる。半径方向または周方向の配向は、幾つかの異なる方法[例えば、加熱されたガス(例えば、窒素)によるか、または、鋳型の内側にバルーン(balloon)を使用することにより、材料に吹き込みを行うこと]によって誘導することができる。代替的に、複合材料またはサンドイッチ構造体は、様々な方向に配向された材料の複数の層を積み重ねて、異方特性(anisotropic properties)を与えることによって形成することができる。二軸配向および/または多軸配向を誘導するために、吹込み成形を使用することもできる。
【0035】
バルーンによる拡張が可能な用途のためのステントは、該ステントを脈管構造の中に挿入するための低プロフィール状態(low profile state)で該ステントを捲縮させるのに十分な破断点伸び(elongation at break)を有する材料であって、バルーンが拡張する間、該ステントが損傷することなく過剰なひずみ(excessive strains)に耐えることを可能にする該材料を要求することが好ましい。最小限のステントリコイル(stent recoil)と共に十分に高い半径方向強度(radial strength)を該ステントに提供するのに必要な、材料のモジュラス(modulus)をも極限強さ(ultimate strength)をも低下させることなく、破断点伸び(即ち、極限ひずみ容量(ultimate strain capacity))が改善された該材料を有することが更に好ましい。材料の強度および剛性を維持しながら、または、それらの改善さえも行いながら、破断点伸びを増大させる方法によって、該ステントの厚さを薄く保つことが可能となり、そうなることによって、結果的に、デバイスの可撓性はより優れたものとなり、かつ、血流を妨げる抵抗はより小さくなる。従来の植え込み可能な吸収性ポリマーPLA、PGA、および、PLAとPGAとの共重合体(PLGA)は、破断点伸びが比較的小さく(約5〜10%)、また、バルーン拡張型ステントを製造するのに現在利用されている金属合金(316Lステンレス鋼およびCoCr合金L605)と比べて引張強さおよびモジュラスが小さい。これらの金属合金は典型的には、約40%の破断点伸びを有し、したがって、そのような材料で作られたステントは、バルーン圧力の下、破壊されないで展開されることが可能である。
【0036】
吸収性ポリマーベース材料の破断点伸びを増大させるための従来技術の例には、1種以上の、エラストマー成分または低融点可塑剤成分を、典型的には約5〜約25重量%の範囲で混合する工程が含まれていた。そのようなアプローチの潜在的な不利な点は、引張強さおよび/またはモジュラスが典型的には、ある程度低下しており、したがって、ステントの半径方向の強度/剛性が低下していることである。加えて、クリープ(creep)が増大する危険性、または、より高い弾性リコイル(elastic recoil)の危険性もあり得ることである。したがって、あるポリマーベース材料の破断点伸びを改善し、かつ、その後、該材料の引張モジュラスまたは引張強さを低下させることなく、それらを増大させる能力、または、それらを少なくとも維持する能力を有する方法の必要性が存在する。そのような材料は恐らく、放射線不透過性を改善するための充填剤と、医薬品または他の生理活性物質もしくは生理活性化合物を溶出する可能性とを有することが更に好ましいであろう。
【0037】
改変された分子配向を得るために使用される材料は、溶液流延(solvent casting)、射出成形および押出し成形を包含する既知のいずれかの加工方法であって、成形品の中間形態(管、フィルムおよびビレット(billet))、または、成形品の最終形態(例えば、レーザー切断されたステント)を用いる加工方法によって製造することができる。改変された分子配向を得る方法は典型的には、改変された分子配向を得るために使用される材料を、該材料のガラス転移温度(Tg)と溶融温度(Tm)と間のある温度まで、最も好ましくは該材料のTgよりも約10〜20℃高い温度まで加熱する工程を含む。PLGA材料では、これは、約70℃の温度である場合がある。加熱工程は、湯浴(heated water bath)、人工気候室(environmental chamber)、誘導加熱および赤外線照射を包含する、当該技術分野で知られている様々な手段によって達成することができる。当業者は、本発明の範囲にも含まれる他の加熱手段を認識するであろう。該材料は、所定の時間の間、この温度に保持される。該所定の時間は、改変された分子配向を得るために使用される材料と、結晶化度(amount of crystallinity)と、成形品の形態とを包含する多数の要因に左右される。外径が約1.5〜2mmで肉厚が0.5mmのPLGA管の加熱工程の保持時間は、70℃の湯浴に約10秒である場合がある。
【0038】
上記保持時間の後、1つ以上の所望の方向に力(延伸)を加えて、その方向に改変された分子配向を引き起こす。延伸は、1つの方向に、または、同時にもしくは逐次的に複数の方向に行うことができる。全延伸量は、非延伸状態から特定の延伸速度で直接達成するか、または、最終的なある特定の延伸量まで逐次的かつ段階的に様々な延伸速度で達成することができる。該分子配向は、先ず前記材料を1つ以上の方向に過延伸する工程(overdrawing)と、続いて、この材料を同一温度に保持しながら、該材料が過延伸条件より低いある配向度合いまで緩和されるのを制御する工程とによって行うこともできる。加えて、延伸は、軸の方向に延伸し、同時にその部分を回転させることによって、螺旋方向(helical direction)に行うことができる。このことは、螺旋ピッチ軸(helical pitch axis)に並行する配向を取り入れるための螺旋状ステントの設計にとって好都合である場合がある。
【0039】
次の諸実施例は、上述の諸方法の効果を例示する。
【0040】
実施例1:
実施例1は、厚さ約0.25mm(約0.010インチ)の非晶質PLGAの試験フィルム試験片に及ぼす、1倍〜2.8倍の範囲の配向の影響を例示する。下の表1に、1倍〜2.8倍の範囲の延伸倍率(draw ratio)に対する降伏強さ(yield strength)および引張モジュラス(tensile modulus)を示す。表1において、延伸倍率は、その特定方向における[最終寸法]/[初期寸法]として規定されている。
【0041】
【表1】

【0042】
前記延伸方法は、アニーリングのような事前熱処理または事後熱処理と組み合わせて使用され、前記ポリマーの形態構造または結晶構造に影響を及ぼすことができ、かつ、前記材料の諸特性を特殊な目的に更に適応させることができる。
【0043】
実施例2:
実施例2は、PLGAの厚さ約0.25mm(約0.010インチ)の試験フィルム試験片であって、該材料に約25〜35%の結晶化度を付与するために、120℃で18時間の間アニーリングされた該試験片に及ぼす、1倍〜2.8倍の範囲の配向の影響を例示する。下の表2に、1倍〜2.8倍の範囲の延伸倍率に対する降伏強さおよび引張モジュラスを示す。
【0044】
【表2】

【0045】
整列方向の破断点伸びは、非晶質であるかまたは半晶質であるかどうかとは関係なく、ポリマー鎖の配向によって改善されることを、実施例1および実施例2は例証する。延伸度合い(draw levels)が増大するにつれて、引張モジュラス、引張強さ、および、ひずみ硬化(strain hardening)の影響、もまた増大する傾向があるのに対し、破断点伸びは、減少し始めるが、依然として非延伸試料よりもかなり高いレベルにある。表1および表2に示される動向(trends)によって、当業者は、延伸量の理論上限値が存在するであろうこと、そして、その場合、表1および表2に示される延伸度合いよりも大きい過剰の延伸度合いにより、該材料が破壊されるか、または、破断点伸びが結果的に非延伸材料と比べて減少するであろうこと、を推測するであろう。
【0046】
実施例3:
表3に、2.1倍延伸の前または後、120℃で18時間の間アニーリングを行うことの効果をグラフ的に、2.1倍延伸を行っただけの非晶質材料の応力−ひずみ曲線と比べて、PLGAの応力−ひずみ曲線で例示する。表3は本質的に、延伸と組み合わせてアニーリングまたは熱処理を行うことによって、強度特性を更にいっそう改善することができること、ならびに、延伸およびアニーリングの順番(order)が、とりわけ、該曲線の塑性域(plastic region)において、または、降伏の始まり(onset of yielding)の後、役割を果たすことを例示する。延伸後のアニーリングによって、引張強さおよび引張モジュラスを増大させることができ、同時に、高い破断点伸びを維持することができる。延伸前のアニーリングは、(より大きい結晶化度を有する)材料を延伸するために、より大きい力を必要とすることがあり、結果的に、より大きいひずみ硬化度(levels of strain hardening)を得ることができる。
【0047】
【表3】

【0048】
実施例4:
PLGA圧縮成形フィルムを先ず、あるレベルの延伸比(X1)まで延伸し、次いで、所定の延伸比(X2)(ここに、X2は、X1より小さい)まで戻した場合、その引張強さおよびモジュラスは、(X2まで)直接延伸されたフィルムの引張強さおよびモジュラスに匹敵するが、その破断点伸びは著しく増大するということが、該フィルムのデータによって実証される。所望の限界を超えて過剰延伸し、次いで、所望の延伸比まで、制御された緩和(controlled relaxation)を行うことによって、引張降伏強さおよびモジュラスを維持しながら、該材料の破断点伸びの可能性を更に高めることができる。表4に、それらの結果を例示する。
【0049】
【表4】

【0050】
管材料に二軸延伸を行う1つの例は、該管を先ずその軸に沿って所望のレベルまで延伸し、次いで、該管を、ブロー成形(blow molding)のような既知の方法によって、半径方向に所望の最終寸法まで直接的に拡張させるか、または、該管の直径を、所望の最終寸法を超えて過剰延伸し、次いで、内部圧力を減少させて、該管をそれの所望の最終寸法まで緩和させる工程を含むことがある。この工程は、ステントの形状寸法の最終の機械加工(例えば、レーザー切断)を行う前であってもよいし、または、ステントの形状寸法が定まった後であってもよい。この場合、レーザー切断は、圧縮状態のステントに対して行われ、延伸の後、所望の形状寸法が提供される。1つ以上の配向工程の後、結果として得られるステントが、最終ステントとして必要なあらゆる寸法、形状および他のパラメータを有するように、形状、寸法および他のパラメータならびに配向プロセスは設計される。この場合の利点は、配向させる必要のある部分(ストラット、連結部分、等)のみが、実際に、該部分が展開時に変形すると思われる方向に沿って配向され、このようにして、最適特性が提供されることである。
【0051】
実施例5:
実施例5は、1)試験方向に平行に2.75倍延伸を行い、次いで、非配向試料と比較した、厚さ約0.25mm(約0.010インチ)のPLGA圧縮成形フィルムと、2)試験方向に垂直に2.75倍延伸を行い、次いで、非配向試料と比較した、厚さ約0.25mm(約0.010インチ)のPLGA圧縮成形フィルムとを例示する。表5に、それらの結果をグラフで例示する。
【0052】
【表5】

【0053】
それらの結果は、PLGA等のある材料が1つの方向に配向することによって、直交方向における材料特性はある程度低下することを示す。したがって、一軸延伸方向に垂直な特性が低下するのを補償するためには、ある程度の二軸配向が望ましいであろう。実施例6は、配向させた管を使用してステントを製造して、この点を例示する。
【0054】
実施例6:
実施例6は、押出し成形したPLGA管の二軸配向を例示する。ステントを製造するための配向の方向に関し、最も好ましい実施形態は、管の二軸配向である。5つの群の管を順次延伸した。下の表6に例示される下記の程度まで、先ず、軸方向に延伸し、次いで、半径方向に延伸した。
【0055】
【表6】

【0056】
(管がいずれかの方向に一軸延伸された)A群およびB群から切り取ったステントはいずれも、バルーンによる拡張時、配向の方向に平行な破壊面(failure planes)で破壊した。これらの破壊面は、A群では軸方向の面であり、また、これらの破壊面は、B群では周方向に伸びる面であった。これらの破壊面は、延伸方向に垂直な垂直力(force normal components)を有する。また、実施例5と一致して、法線方向または垂直方向の強度および破断点伸びは、この材料が延伸されることによって、ある程度低下する。しかし、二軸延伸されたステントは全て、亀裂を生じることなく首尾よく展開され、半径方向の強度は約8.96×104〜1.24×105Pa(約13〜約18psi)の範囲であり、早期リコイル(acute recoil)は約13〜約15%であった。
【0057】
図2を参照すると、本明細書に記述されるポリマー材料で形成されたフープ部品102のセクション200が例示される。図示されるように、フープ部品102のセクション200は、2つの第1の帯域t2と1つの第2の帯域t1とを有するように設計されている。2つの帯域t2は、1つの第2の帯域t1と比べてより大きいポリマー鎖配向度を有するように設計または構成されている。帯域t2における、より大きいポリマー鎖配向度は、前駆体物質を、ステントの長さ方向軸に並行する方向またはその軸方向に延伸することによって達成することができる。加えて、配向はまた、上述の方法によっても達成することができる。図2に例示される例示的な実施形態において、t2領域は、意図的にt1領域よりも薄くなっており、このため、t2領域は、t1領域に比べてひずみ(strain)が大きい帯域である。デバイスの性能特性(performance characteristics)は、ポリマー鎖配向の種類および配向度と機能特性(feature characteristics)とを最適化することによって改善することができる。ステントのフープ部品のための性能特性には、典型的には、半径方向の強度、半径方向の剛性、および、半径方向のリコイル(radial recoil)が包含される。加えて、好ましくは、脈動(pulsatile motion)等の動荷重(dynamic loads)を考慮することが望ましい。
【0058】
図3を参照すると、本明細書に記述されるポリマー材料で形成されたフープ部品102のセクション300が例示される。図示されるように、フープ部品102のセクション300は、1つの第1の帯域t1と2つの第2の帯域t2とを有するように設計されている。1つの第1の帯域t1は、2つの第2の帯域t2と比べてより大きいポリマー鎖配向度を有するように設計または構成されている。帯域t1における、より大きいポリマー鎖配向度は、前駆体物質を、ステントの半径方向または周方向の軸に並行する方向に延伸することによって達成することができる。加えて、配向はまた、上述の方法によっても達成することができる。図3に例示される例示的な実施形態において、t1領域は、意図的にt2領域よりも薄くなっており、このため、t1領域は、t2領域に比べてひずみが大きい帯域である。デバイスの性能特性は、ポリマー鎖配向の種類および配向度と機能特性とを最適化することによって改善することができる。ステントのフープ部品のための性能特性には、典型的には、半径方向の強度、半径方向の剛性、および、半径方向のリコイルが包含される。加えて、好ましくは、脈動等の動荷重を考慮することが望ましい。
【0059】
更に、図4を参照すると、本明細書に記述されるポリマー材料で形成されたフープ部品102のセクション400が例示される。この図は、図2および図3に例示されるポリマー鎖配向の組合せを示している。換言すれば、帯域t1およびt2における整列度(degree of alignment)は実質的に同等になる場合がある。
【0060】
図5を参照すると、本明細書に記述されるポリマー材料で形成された可撓性コネクター104のセクション500が例示される。図示されるように、可撓性コネクター104のセクション500は、2つの第1の帯域t2と1つの第2の帯域t1とを有するように設計されている。2つの帯域t2は、1つの第2の帯域t1と比べてより大きいポリマー鎖配向度を有するように設計または構成されている。帯域t2における、より大きいポリマー鎖配向度は、前駆体物質を、ステントの半径方向または周方向の軸に並行する方向に延伸することによって達成することができる。加えて、配向はまた、上述の方法によっても達成することができる。図5に例示される例示的な実施形態において、t2領域は、意図的にt1領域よりも薄くなっており、このため、t2領域は、t1領域に比べてひずみが大きい帯域である。デバイスの性能特性は、ポリマー鎖配向の種類および配向度と機能特性とを最適化することによって改善することができる。ステントの可撓性コネクターの諸部品のための性能特性は、動荷重状況を考慮すれば、複数軸およびねじれの可撓性(multiaxial and torsional flexibility)であり、また、展開(deployment)を考慮すれば、短縮性(foreshortening)である。
【0061】
図6を参照すると、本明細書に記述されるポリマー材料で形成された可撓性コネクター104のセクション600が例示される。図示されるように、可撓性コネクター104のセクション600は、1つの第1の帯域t1と2つの第2の帯域t2とを有するように設計されている。1つの第1の帯域t1は、2つの帯域t2と比べてより大きいポリマー鎖配向度を有するように設計または構成されている。帯域t1における、より大きいポリマー鎖配向度は、前駆体物質を、ステントの長さ方向軸に並行する方向に延伸することによって達成することができる。加えて、配向はまた、上述の方法によっても達成することができる。図6に例示される例示的な実施形態において、t1領域は、t2領域に比べてひずみが大きい帯域である。デバイスの性能特性は、ポリマー鎖配向の種類および配向度と機能特性とを最適化することによって改善することができる。ステントの可撓性コネクター部品のための性能特性は、動荷重状況を考慮すれば、複数軸およびねじれの可撓性であり、また、展開を考慮すれば、短縮性である。
【0062】
図7を参照すると、本明細書に記述されるポリマー材料で形成された可撓性コネクター104のセクション700が例示される。この図は、図5および図6に例示されるポリマー鎖配向の組合せを示している。換言すれば、帯域t1およびt2における整列度(degree of alignment)は実質的に同等になる場合がある。
【0063】
当業者には、最適なステント性能を達成するためにはどの形状(configuration)が好ましいかを決定する、設計に関する多数の検討事項が存在する。上記の諸図面は、幾つかの可能性を例示するに過ぎない。設計と材料との組合せを最適化するためには、ステントの短期的かつ長期的性能特性(performance attributes)を考慮することが適切である。これらの因子の一つには、可撓性コネクター要素の設計が包含される。例えば、可撓性コネクターが、半径方向円弧部材の頂点で、半径方向のフープに接合する場合、設計者は、高ひずみ領域が含まれるように、半径方向のフープの長さ方向の部品を選定するかもしれない。したがって、材料と設計との最適化を行えば、結果的にポリマー鎖の長さ方向配向が選択的に生じるであろう。代替的に、可撓性コネクターが、半径方向円弧部材の端部で、または、半径方向ストラットのセクションにおいて、半径方向のフープに接合する場合、設計者は、高ひずみ領域が含まれるように、半径方向円弧部材の頂点を選定するかもしれない。したがって、材料と設計との設計最適化(design optimization)を行えば、結果的にポリマー鎖の周方向配向が選択的に生じるであろう。
【0064】
加えて、可撓性コネクター上の負荷が、該可撓性コネクターの、長さ方向に配向した要素と一直線に並ぶ場合、材料と設計との最適化を行えば、結果的にポリマー鎖の長さ方向配向が選択的に生じるであろう。同様に、可撓性コネクター上の負荷が、該可撓性コネクターの、周方向に配向した要素と一直線に整列する場合、材料と設計との最適化を行えば、結果的にポリマー鎖の周方向配向が選択的に生じるであろう。
【0065】
上記記述は、単に例示的なものであり、設計と材料配向との最適化に関する決定を行うために考慮すべき事項を全て捕らえているものと解釈されるべきでない。
【0066】
特定の形状(configuration)が例示され記述されているものの、記述された原理が、フープと可撓性コネクターとの設計に関するいかなる形状にも同等に適用され得ることに注目することは、重要である。加えて、整列軸は、単一方向に(例えば、長さ方向または半径方向に)一致する訳ではなく、2つの方向の組合せに一致する。
【0067】
ポリマー材料は概して、合成のもの、天然のもの、および/または、それらの組合せに分類することができる。ポリマー材料は、これらの概略分類の中で、生物学的安定性または生分解性なものとして規定することができる。生物学的安定性ポリマーの例には、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、フルオロポリマーおよびアクリル樹脂が包含される。天然ポリマーの例には、多糖類およびタンパク質が包含される。
【0068】
生体吸収性ポリマーは、バルクエロージョン性材料および表面エロージョン性材料(bulk and surface erodable materials)から成る。表面エロージョン性材料(Surface erosion polymers)は典型的には、疎水性であり、水に不安定な結合(water labile linkages)を有する。加水分解は、そのような表面エロージョン性ポリマーの表面では急速に生じる傾向があり、多量の透水は生じない。しかし、そのような表面エロージョン性ポリマーの初期強度は、低くなる傾向があり、そのような表面エロージョン性ポリマーはしばしば、商業的に容易に入手することができない。とは言え、そのような表面エロージョン性ポリマーの例には、ポリ無水物類(polyanhydrides)、例えば、ポリ(カルボキシフェノキシヘキサン−セバシン酸)、ポリ(フマル酸−セバシン酸)、ポリ(カルボキシフェノキシヘキサン−セバシン酸)、ポリ(イミド−セバシン酸)(50−50)、ポリ(イミド−カルボキシフェノキシヘキサン−)(33−67)およびポリオルトエステル(ジケトンアセタールベースポリマー)、が包含される。
【0069】
一方、バルクエロージョン性ポリマー(Bulk erosion polymers)は典型的には、親水性であり、水に不安定な結合を有する。バルクエロージョン性ポリマーの加水分解は、前記デバイスのポリマーマトリックスの端から端まで、より均一な速度で生じる傾向がある。バルクエロージョン性ポリマーは、優れた初期強度を示し、かつ、商業的に容易に入手することができる。
【0070】
バルクエロージョン性ポリマーの例には、ポリ(αヒドロキシエステル)類、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(p−ジオキサノン)(poly (p-dioxanone))、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(オキサエステル)[poly(oxaesters)]、ポリ(オキサアミド)[poly(oxaamides)]、ならびに、それらの共重合体および混合物が包含される。商業的に容易に入手することのできる幾つかの種類のバルクエロージョン性ポリマー、および、それらの一般に関連する医療用途には、ポリ(ジオキサノン)[ニュージャージー州サマービル(Somerville)、エチコン社(Ethicon, Inc.)から入手することのできるPDS(登録商標)縫合糸]、ポリ(グリコリド)[コネチカット州ノースヘーヴン(North Haven)、ユナイテッド・ステイツ・サージカル社(United States Surgical Corporation)から入手することのできるDexon(登録商標)縫合糸]、ポリ(ラクチド)−PLLA[骨修復]、ポリ(ラクチド/グリコリド)[ニュージャージー州サマービル、エチコン社から入手することのできるVicryl(登録商標)(10/90)縫合糸およびPanacryl(登録商標)(95/5)縫合糸]、ポリ(グリコリド/カプロラクトン(75/25))[ニュージャージー州サマービル、エチコン社から入手することのできるMonocryl(登録商標)縫合糸]、および、ポリ(グリコリド/トリメチレンカーボネート)[コネチカット州ノースヘーヴン、ユナイテッド・ステイツ・サージカル社から入手することのできるMaxon(登録商標)縫合糸]が包含される。
【0071】
他のバルクエロージョン性ポリマーは、チロシンから誘導されるポリアミノ酸[例えば、ポリ(DTH)カーボネート、ポリ(アリレート)[poly(arylates)]、およびポリ(イミノカーボネート)]、リン含有ポリマー[例えば、ポリ(ホスホエステル)およびポリ(ホスファゼン)]、ポリ(エチレングリコール)[PEG]ベースのブロック共重合体[PEG−PLA、PEG−ポリ(プロピレングリコール)、PEG−ポリ(ブチレンテレフタレート){PEG-poly (butylene terphthalate)}]、ポリ(αリンゴ酸)、ポリ(エステルアミド)、ならびに、ポリアルカノエート(polyalkanoates)[例えば、ポリ(ヒドロキシブチラート)(HB)とポリ(ヒドロキシバレラート)[poly(hydroxyvalerate)](HV)との共重合体]である。
【0072】
もちろん、前記デバイスは、所望の物理的特性を達成し、かつ、分解機構を制御するために、表面エロージョン性ポリマーとバルクエロージョン性ポリマーとの組合せから作ることができる。所望の物理的特性とデバイスの分解速度とを達成するために、例えば、2種類以上のポリマーを混合することができる。代替的に、デバイスは、表面エロージョン性ポリマーで被覆されているバルクエロージョン性ポリマーで作ることができる。
【0073】
形状記憶ポリマー(shape memory polymers)も使用することができる。形状記憶ポリマーは、硬質セグメントと軟質セグメントとを有する相分離線形ブロック共重合体(phase segregated linear block co-polymers)としての特徴を示す。硬質セグメントは典型的には、規定された融点を有する結晶であり、軟質セグメントは典型的には、規定されたガラス転移温度を有する非晶質である。形状記憶ポリマーにおいて、軟質セグメントの転移温度は、硬質セグメントの転移温度よりも実質的に低い。形状記憶ポリマーの形状は、加熱技術および冷却技術によって、該形状記憶ポリマーの硬質セグメントおよび軟質セグメントの中に記憶される。形状記憶ポリマーは、生物学的安定性かつ生体吸収性である場合がある。生体吸収性形状記憶ポリマーは、比較的新しく、熱可塑性物質および熱硬化性物質を含有する。形状記憶熱硬化性物質は、ポリ(カプロラクトン)ジメチルアクリレートを含有することができ、また、形状記憶熱可塑性物質は、軟質セグメントとしてのポリ(カプロラクトン)と、硬質セグメントとしてのポリ(グリコリド)とを含有することができる。
【0074】
高い柔軟性(ductility)および靭性(toughness)、例えば、整形外科用のインプラント、縫合糸、ステント、移植片(grafts)、および、薬物運搬デバイスを包含する他の医療用途のためにしばしば必要とされるような柔軟性および靭性を有する材料を提供するために、複数の生体吸収性ポリマー材料を改変して、それらの複合材料または混合物を形成することができる。そのような複合材料または混合物は、ポリマー主鎖の化学構造を変えることによるか、または、それら生体吸収性ポリマー材料を異なるポリマーおよび可塑剤と混合することにより複合材料を作り出すことによって、得ることができる。基礎を成す生体吸収性ポリマーを改変するために使用されるいかなる追加材料も、好ましくは、主ポリマー系と相溶性である(compatible)ことが望ましい。それらの追加材料は、該生体吸収性ポリマーのガラス転移温度を低下させる傾向があり、そのことによって、基礎を成すポリマーは、より柔軟性となり、かつ、剛性が低下する。
【0075】
複合材料または混合材料を生成する例として、非常に堅いポリマー[例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコリド)およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)共重合体]を、軟質で柔軟性のポリマー[例えば、ポリ(カプロラクトン)およびポリ(ジオキサノン)]と混合する工程によって、高柔軟性および高剛性を有する材料が生成される傾向がある。様々な割合の剛性ポリマーと軟質ポリマーとから、弾性共重合体を合成することができる。例えば、ポリ(グリコリド)またはポリ(ラクチド)は、ポリ(カプロラクトン)またはポリ(ジオキサノン)と共重合して、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)共重合体またはポリ(グリコリド−コ−ジオキサノン)共重合体、および、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)共重合体またはポリ(ラクチド−コ−ジオキサノン)共重合体を調製することができる。次いで、これらの弾性共重合体を剛性材料[例えば、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)共重合体]と混合して、高柔軟性を有する材料を生成することができる。代わりに、様々なモノマーから三元重合体(terpolymers)を調製して、所望の特性を得ることができる。マクロマー(Macromers)および他の架橋性ポリマー系を使用して、所望の特性を得ることができる。
【0076】
前記デバイスが患者に植え込まれる時、該デバイスを視覚化することは、該デバイスを配置する医師にとって重要であるので、該デバイスに放射線不透過性物質が添加されることがある。放射線不透過性物質は、処理の間、デバイスを構成する生体吸収性材料のマトリックスに直接添加することができ、その結果として、該放射線不透過性物質は該デバイスの全体に渡ってかなり均一に組み入れられる。もう一つの方法として、放射線不透過性物質は、デバイスに、層、コーティング、バンド(band)または粉末の形態で、該デバイスの所定の部分に付け加えることができ、これは、該デバイスの幾何学的条件と該デバイスを形成するために使用されるプロセスとによって決まる。コーティングは、当該技術分野で知られている様々な方法(例えば、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、電気メッキ、高真空蒸着法、マイクロ溶融(microfusion)、吹付け塗装、浸漬塗装、静電塗装、または、他の表面被覆技術もしくは表面改変技術)で、デバイスに施用することができる。デバイスが、内部にデバイスが展開される解剖学的構造(anatomy)を容易に通過することができるように、放射線不透過性物質は有意な剛性をデバイスに付加しないことが理想的である。放射線不透過性物質は、該デバイスが内部に配置される組織(tissue)と生体適合性であることが望ましい。そのような生体適合性によって、デバイスとの望ましくない組織反応(tissue reactions)の可能性が最小限に抑えられる。不活性な貴金属(例えば、金、白金、イリジウム、パラジウムおよびロジウム)は、生体適合性の放射線不透過性物質として十分認識されている。他の放射線不透過性物質には、硫酸バリウム(BaSO4)、次炭酸ビスマス[(BiO)2CO3]、および、酸化ビスマスが包含される。デバイスからの、放射線不透過性物質のピーリング(peeling:剥脱)もしくは剥離が、最小限に抑えられるような具合に、または、理想的には該ピーリングもしくは該剥離が生じないような具合に、該放射線不透過性物質はデバイスに十分に付着することが理想的である。放射線不透過性物質が、金属バンドとしてデバイスに付加される場合、該金属バンドは、該デバイスの所定のセクションで波状の表面を作る(crimped)ことができる。代替的に、デバイスの所定のセクションは、放射線不透過性の金属粉末で被覆することができるのに対し、該デバイスの他の部分には該金属粉末がない。
【0077】
治療薬/治療薬の組合せの局所運搬(local delivery)を利用し、何種類もの医療デバイスを利用しながら多種多様の容態を処置することができるか、または、医療デバイスの機能および/または耐用期間を高めることができる。例えば、白内障手術の後に視力を回復させるために設置された眼内レンズは、二次性白内障(secondary cataract)の形成によってしばしば傷付けられる。二次性白内障は、しばしば、レンズ表面で細胞が過成長した結果であり、また、1種以上の薬剤をデバイスと組合せることによって、潜在的に(potentially)二次性白内障を最小限に抑えることができる。組織の内方成長(in-growth)に起因して、または、デバイスの中、デバイスの上、もしくは、デバイスの周りへのタンパク質物質の蓄積に起因して、しばしば作動しなくなる他の医療デバイス[例えば、水頭症用シャント、透析グラフト(dialysis grafts)、結腸瘻バッグ取り付けデバイス、耳排膿管、ペースメーカー用リード、および、植え込み可能な細動除去器(defibrillators)]もまた、デバイス−薬物の組合せのアプローチによって利点を得ることができる。組織または器官の構造と機能とを改善するのに役立つデバイスもまた、1種以上の適切な薬剤と組合されたとき、利点を示すことができる。例えば、整形外科用デバイスのオステオインテグレーション(osteointegration:骨との結合)を改善して、植え込まれたデバイスの安定化を高めることは、該デバイスを薬剤(例えば、骨形成タンパク質)と組合せることによって、潜在的に達成することができるであろう。同様に、他の外科用器具、縫合糸、ステープル、吻合デバイス、椎骨板(vertebral disks)、骨ピン(bone pins)、縫合糸固定用アンカー(suture anchors)、止血用障壁(hemostatic barriers)、留め具(clamps)、ネジ、プレート(plates)、クリップ、脈管インプラント、組織接着剤および組織シーラント(tissue adhesives and sealants)、組織用足場(tissue scaffolds)、様々な種類の包帯(dressings)、骨代用品、管腔内デバイス(intraluminal devices)、ならびに、脈管支持体(vascular supports)もまた、この、薬剤−デバイスの組合せのアプローチを用いて、患者の利益を高めることができるであろう。血管周囲ラップ(perivascular wraps)は、単独か、または、他の医療デバイスと組合せて、とりわけ好都合となる場合がある。血管周囲ラップは、処置部位に追加の薬剤を供給することができる。本質的に、他のいかなるタイプの医療デバイスも、ある方法で、薬物、または、薬物の組合せで被覆することができ、そのことによって、処置は、医療デバイスまたは薬剤を単一的使用で用いる場合よりも改善される。
【0078】
様々な医療デバイスに加えて、これらのデバイス上のコーティングを使用して、複数種の治療薬および薬剤を運搬することができる。それらの治療薬および薬剤には、天然物を包含する抗増殖剤/抗有糸分裂物質(anti-proliferative/antimitotic agents)[例えば、ビンカアルカロイド(vinca alkaloids)(即ち、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)およびビノレルビン(vinorelbine))、パクリタキセル(paclitaxel)、エピジポドフィロトキシン(epidipodophyllotoxins)(即ち、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide))、抗生物質(ダクチノマイシン(dactinomycin)(アクチノマイシンD(actinomycin D))、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)およびイダルビシン(idarubicin))、アントラサイクリン(anthracyclines)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ブレオマイシン(bleomycins)、プリカマイシン(plicamycin)(ミトラマイシン(mithramycin))およびマイトマイシン(mitomycin)、酵素(全身的にL−アスパラギンを代謝し、かつ、細胞自体のアスパラギンを合成する機能を有していない該細胞を排除するL−アスパラギナーゼ(L-asparaginase))];抗血小板凝集阻害剤[例えば、G(GP)IIb/IIIa阻害剤およびビトロネクチン受容体拮抗薬];抗増殖性アルキル化剤/抗有糸分裂性アルキル化剤[例えば、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン(mechlorethamine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)および類似体、メルファラン(melphalan)、クロラムブシル(chlorambucil))、エチレンイミン(ethylenimines)およびメチルメラミン(methylmelamines)(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ(thiotepa))、アルキルスルホネート−ブスルファン(alkyl sulfonates-busulfan)、ニトロソウレア(nirtosoureas)(カルムスチン(carmustine)(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン(streptozocin))、トラゼン(trazenes)−ダカルバジン(dacarbazinine)(DTIC)];抗増殖性代謝拮抗剤/抗有糸分裂性代謝拮抗剤[例えば、葉酸類似体(メトトレキサート(methotrexate))、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスウリジン(floxuridine)およびシタラビン(cytarabine))、プリン類似体ならびに関連阻害剤(メルカプトプリン(mercaptopurine)、チオグアニン(thioguanine)、ペントスタチン(pentostatin)および2−クロロデオキシアデノシン(2-chlorodeoxyadenosine){クラドリビン(cladribine)})];白金配位錯体(シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin))、プロカルバジン(procarbazine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、ミトタン(mitotane)、アミノグルテチミド(aminoglutethimide);ホルモン(即ち、エストロゲン);抗凝血剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩、および、他のトロンビン阻害薬);線維素溶解薬[例えば、組織プラスミノゲンアクチベーター(tissue plasminogen activator)、ストレプトキナーゼ(streptokinase)およびウロキナーゼ(urokinase)]、アスピリン、ジピリダモール(dipyridamole)、チクロピジン(ticlopidine)、クロピドグレル(clopidogrel)、アブシキシマブ(abciximab);アンチミグラトリー(antimigratory);分泌抑制薬(antisecretory)(ブレベルジン(breveldin));抗炎症薬[例えば、副腎皮質ステロイド(コルチゾール(cortisol)、コルチゾン(cortisone)、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、プレドニゾン(prednisone)、プレドニゾロン(prednisolone)、6α-メチルプレドニゾロン(6α-methylprednisolone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、ベタメタゾン(betamethasone)およびデキサメタゾン(dexamethasone))、非ステロイド剤(サリチル酸誘導体、即ち、アスピリン)];パラアミノフェノール誘導体、即ち、アセトアミノフェン(acetaminophen);インドールおよびインデン酢酸(インドメタシン(indomethacin)、スリンダク(sulindac)およびエトダレク(etodalec))、ヘテロアリール酢酸(トルメチン(tolmetin)、ジクロフェナク(diclofenac)およびケテロラック(ketorolac))、アリールプロピオン酸(イブプロフェン(ibuprofen)および誘導体)、アントラニル酸(anthranilic acids)(メフェナム酸(mefenamic acid)およびメクロフェナム酸(meclofenamic acid))、エノール酸(ピロキシカム(piroxicam)、テノキシカム(tenoxicam)、フェニルブタゾン(phenylbutazone)およびオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone))、ナブメトン(nabumetone)、金化合物(オーラノフィン(auranofin)、オーロチオグルコース(aurothioglucose)、金チオリンゴ酸ナトリウム(gold sodium thiomalate));免疫抑制薬[シクロスポリン(cyclosporine)、タクロリムス(tacrolimus)(FK−506)、シロリムス(sirolimus)(ラパマイシン(rapamycin))、アザチオプリン(azathioprine)、ミコフェノレート・モフェチル(mycophenolate mofetil)];血管新生剤[血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor)(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor)(FGF)];アンジオテンシン受容体遮断薬(angiotensin receptor blockers);酸化窒素ドナー(nitric oxide donors)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligionucleotides)およびそれらの組合せ;細胞周期阻害剤(cell cycle inhibitors)、mTOR阻害剤、および、増殖因子受容体シグナル伝達キナーゼ阻害剤(growth factor receptor signal transduction kinase inhibitors);レテノイド(retenoids);サイクリン(cyclin)/CDK阻害剤;HMG補酵素還元酵素阻害薬(スタチン(statins));ならびに、プロテアーゼ阻害薬(protease inhibitors)が包含される。
【0079】
もう一つの例示的な実施形態によると、本明細書に記載のステントは、金属製であろうとポリマー製であろうと、治療薬または薬剤の運搬デバイスとして利用することができる。金属製ステントは、生物学的安定性もしくは生体吸収性のポリマーまたはそれらの組合せであって、その中に治療薬が組み込まれている該ポリマーで被覆することができる。コーティングのための典型的な材料特性には、可撓性、柔軟性(ductility)、粘着性(tackiness)、耐久性、付着性(adhesion)および凝集性(cohesion)が包含される。これらの所望の特性を示す生物学的安定性もしくは生体吸収性のポリマーには、メタクリレート、ポリウレタン、シリコーン、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、エチレンビニルアルコール、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリホスホエステル、ポリアミノ酸、ならびに、それらの共重合体および混合物が包含される。
【0080】
コーティングは、治療薬が組み入れられることに加えて、他の添加剤[例えば、放射線不透過性構成物質、該コーティングおよび/または該治療薬のための化学安定剤、放射性薬剤、トレーシング試薬(tracing agents)(例えば、放射性同位元素(例えば、トリチウム、即ち重水)および強磁性体粒子)、ならびに、機械的改変剤(mechanical modifiers)(例えば、後で、より詳細に記述されるセラミック微小球(ceramic microspheres))]をも含有することができる。代替的に、デバイスの表面とコーティングとの間、および/または、コーティングそれ自体の内部に、エントラップトギャップ(entrapped gaps:閉じ込められた隙間)を作り出すことができる。これらのギャップの例には、空気だけでなく他のガス、および、物質不在(absence of matter)(即ち、真空環境)が包含される。これらのエントラップトギャップは、かなり多数の既知技術(例えば、マイクロカプセル化ガス(microencapsulated gaseous matter)の注入)を利用して作り出すことができる。
【0081】
上述のように、治療薬として、様々な薬剤を利用することができる。それら薬剤には、シロリムス(sirolimus)、ヘパリン(heparin)、エベロリムス(everolimus)、タクロリムス(tacrolimus)、パクリタキセル(paclitaxel)、クラドリビン(cladribine)だけでなく、スタチン(statins)等の種類の薬剤も包含される。これらの薬剤および/または作用物質は、親水性、疎水性、親油性および/または疎油性であってもよい。作用物質の種類は、ポリマーの種類を決定する場合の役割を果たす。コーティング中の薬剤の量は、様々である場合があり、該コーティングの貯蔵能力、該薬剤、該薬剤の濃度、該薬剤の溶出速度だけでなく、多くの付加的要因をも包含する、多数の要因によって決まる。薬剤の量は、実質的に0%から実質的に100%まで様々である場合がある。典型的な範囲は、約1%未満から約40%までまたはそれ以上である場合がある。コーティング中での薬剤の分布は、様々である場合がある。単一層、複数層、拡散障壁を有する単一層、または、それらのいずれかの組合せの中に1種以上の薬剤を分布させることができる。
【0082】
薬物/ポリマーの混合物を溶解するために様々な溶媒を使用して、コーティング配合物を調製することができる。それら溶媒の幾種類かは、良溶媒または貧溶媒である場合があり、これは、所望の薬剤溶出プロフィールと薬剤の形態と薬剤の安定性とに基づく。
【0083】
従来技術に開示されている、ステントを被覆するための幾つかの方法が存在する。通常使用される方法の幾つかには、吹付け塗装、浸漬塗装、静電塗装、流動層塗装(fluidized bed coating)、および、超臨界流体塗装(supercritical fluid coatings)が包含される。
【0084】
使用することのできる、本明細書に記述されている諸方法と改変(modifications)との幾つかによって、ステント上に薬剤を保持するポリマーの必要性が排除されるであろう。薬剤含有量と組織−デバイスとの相互作用を増大させるため、ステント表面を部分的に修正して、表面積を大きくすることができる。ナノテクノロジーを応用して、組織特定薬剤を含有するナノ粒子を含有することのできる自己組織化ナノ材料(self-assembled nanomaterials)を作り出すことができる。これらのナノ粒子を組み入れることのできるマイクロエッチング(microetching)によって、表面上に微構造(microstructures)を形成することができる。それらの微構造は、レーザーマイクロマシニング(laser micromachining)、リソグラフィー(lithography)、化学蒸着および化学エッチングのような方法によって形成することができる。微構造は、微小電気機械システム(micro electro-mechanical systems)(MEMS)およびマイクロ流体力学(microfluidics:マイクロフルイディクス)の進展を利用することによって、ポリマーおよび金属の上に作られてきた。ナノ材料の例には、ゾルゲル技術によって形成されたカーボンナノチューブおよびナノ粒子が包含される。治療薬は、これらの表面上に化学的もしくは物理的に付着させ得るか、または、直接的に堆積させ得る。これらの諸表面改変の組合せによって、薬剤を所望速度で放出することができる。ポリマーの保護膜(top-coat)を施用して、ポリマーコーティングが存在しない場合に薬剤が直接暴露されることに起因する初期バースト(initial burst)を制御することができる。
【0085】
上述のように、ポリマー製ステントは、コーティング(例えば、表面改変)として、治療薬を含有することができる。代替的に、治療薬は、コーティングを必要としなくてよいステント構造体(例えばバルク改変(bulk modification))の中に組み入れることができる。生物学的安定性ポリマーおよび/または生体吸収性ポリマーで作られたステントのためのコーティングは、使用される場合、生物学的安定性および/または生体吸収性である筈である。しかし、上述のように、デバイスそれ自体が運搬デポー(delivery depot)で作られているので、コーティングは必要でない場合がある。この実施形態によって、多数の利点が提供される。例えば、より高い濃度の1種以上の治療薬を得ることができる。加えて、より高い濃度の1種以上の治療薬を用いて、より長い期間の間、局所への薬剤運搬を達成することができる。
【0086】
更にもう一つの代替的実施形態において、基礎材料の物理特性を改変するため、該基礎材料の中にセラミックおよび/またはガラスを意図的に混合することを利用することができる。セラミックおよび/またはガラスの意図的混合は典型的には、医療用途に使用されるポリマー材料の中に行われるであろう。生物学的安定性セラミックおよび/もしくは生物学的安定性ガラス、ならびに/または、生体吸収性セラミックおよび/もしくは生体吸収性ガラスの例には、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、リン酸三カルシウム、マグネシア、アルミナ、ジルコニア、イットリウム正方晶多結晶質ジルコニア(yittrium tetragonal polycrystalline zirconia)、非晶質シリコーン、非晶質カルシウムおよび非晶質リン酸化物が包含される。非常に多くの技術を用いることができるが、生物学的安定性ガラスは、工業的に適したゾルゲル法を用いて形成することができる。ゾルゲル技術は、セラミックとガラスとのハイブリッド(hybrids)を作るための溶解法である。ゾルゲル法には典型的には、大部分がコロイド状である液体(ゾル)からゲルへの系の転換が包含される。
【0087】
最も実用的かつ好ましい実施形態であると思われるものが図示され記述されてきたものの、記述され図示された特定の設計および方法から変更したものは、当業者によって思い付かれるであろうし、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、使用することができることは明らかである。本発明は、記述され例示された特定の構成に限定される訳ではなく、特許請求の範囲に含まれ得るあらゆる部分的修正と首尾一貫するように構成されることが望ましい。
【0088】
〔実施の態様〕
(1)長さ方向軸および半径方向軸を有する、実質的に管状の管腔内医療デバイスにおいて、
複数の半径方向ストラット、および複数の半径方向円弧部材を有する、ポリマー材料で形成された複数のフープであって、
前記複数の半径方向ストラットは、前記長さ方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第1の整列度のポリマー鎖を有しており、
前記複数の半径方向円弧部材は、前記半径方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第2の整列度のポリマー鎖を有しており、
前記第1の整列度は、前記第2の整列度より大きい、
前記複数のフープと、
前記複数のフープを相互連結している、ポリマー材料で形成された複数のブリッジであって、前記複数のブリッジの各々は、機械的変形によって生じる所定のポリマー鎖整列度を有する少なくとも1つの部材を有している、前記複数のブリッジと、
を備えている、デバイス。
(2)長さ方向軸および半径方向軸を有する、実質的に管状の管腔内医療デバイスにおいて、
複数の半径方向ストラット、および複数の半径方向円弧部材を有する、ポリマー材料で形成された複数のフープであって、
前記複数の半径方向ストラットは、前記長さ方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第1の整列度のポリマー鎖を有しており、
前記複数の半径方向円弧部材は、前記半径方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第2の整列度のポリマー鎖を有しており、
前記第1の整列度は、前記第2の整列度より小さい、
前記複数のフープと、
前記複数のフープを相互連結している、ポリマー材料で形成された複数のブリッジであって、前記複数のブリッジの各々は、機械的変形によって生じる所定のポリマー鎖整列度を有する少なくとも1つの部材を有している、前記複数のブリッジと、
を備えている、デバイス。
(3)長さ方向軸および半径方向軸を有する、実質的に管状の管腔内医療デバイスにおいて、
複数の半径方向ストラット、および複数の半径方向円弧部材を有する、ポリマー材料で形成された複数のフープであって、
前記複数の半径方向ストラットは、前記長さ方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第1の整列度のポリマー鎖を有しており、
前記複数の半径方向円弧部材は、前記半径方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第2の整列度のポリマー鎖を有しており、
前記第1の整列度は、前記第2の整列度と実質的に同等である、
前記複数のフープと、
前記複数のフープを相互連結している、ポリマー材料で形成された複数のブリッジであって、前記複数のブリッジの各々は、機械的変形によって生じる所定のポリマー鎖整列度を有する少なくとも1つの部材を有している、前記複数のブリッジと、
を備えている、デバイス。
(4)実施態様1〜3のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、
前記ポリマー材料は、生体吸収性ポリマーを含有している、デバイス。
(5)実施態様4に記載のデバイスにおいて、
前記生体吸収性ポリマーは、ポリ(α−ヒドロキシエステル)(poly(α-hydroxy esters))を含有している、デバイス。
(6)実施態様4に記載のデバイスにおいて、
前記生体吸収性ポリマーは、チロシン誘導ポリアミノ酸を含有している、デバイス。
(7)実施態様4に記載のデバイスにおいて、
前記生体吸収性ポリマーは、リン含有材料を含有している、デバイス。
(8)実施態様4に記載のデバイスにおいて、
前記生体吸収性ポリマーは、ポリアルカノエート(polyalkanoates)を含有している、デバイス。
(9)実施態様4に記載のデバイスにおいて、
前記生体吸収性ポリマーは、ポリ無水物を含有している、デバイス。
(10)実施態様4に記載のデバイスにおいて、
前記生体吸収性ポリマーは、ポリオルトエステル(polyorthoesters)を含有している、デバイス。
(11)実施態様1〜3のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、
前記ポリマー材料は、生物学的安定性ポリマー(biostable polymers)を含有している、デバイス。
(12)実施態様11に記載のデバイスにおいて、
前記生物学的安定性ポリマーは、ポリオレフィンを含有している、デバイス。
(13)実施態様11に記載のデバイスにおいて、
前記生物学的安定性ポリマーは、ポリウレタンを含有している、デバイス。
(14)実施態様11に記載のデバイスにおいて、
前記生物学的安定性ポリマーは、フッ素ポリマーを含有している、デバイス。
【0089】
(15)実施態様11に記載のデバイスにおいて、
前記生物学的安定性ポリマーは、ポリアミドを含有している、デバイス。
(16)実施態様11に記載のデバイスにおいて、
前記生物学的安定性ポリマーは、ポリエステルを含有している、デバイス。
(17)実施態様11に記載のデバイスにおいて、
前記生物学的安定性ポリマーは、アクリル樹脂を含有している、デバイス。
(18)実施態様1〜3のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、
少なくとも1種の治療薬、
を更に備えている、デバイス。
(19)実施態様18に記載のデバイスにおいて、
前記少なくとも1種の治療薬は、抗再狭窄薬(antirestenotic agent)を含有している、デバイス。
(20)実施態様19に記載のデバイスにおいて、
前記抗再狭窄薬は、ラパマイシン(rapamycin)を含有している、デバイス。
(21)実施態様19に記載のデバイスにおいて、
前記抗再狭窄薬は、パクリタキセル(paclitaxel)を含有している、デバイス。
(22)実施態様18に記載のデバイスにおいて、
前記治療薬は、抗炎症薬を含有している、デバイス。
(23)実施態様21に記載のデバイスにおいて、
前記抗炎症薬は、ラパマイシンを含有している、デバイス。
(24)実施態様21に記載のデバイスにおいて、
前記抗炎症薬は、デキサメタゾン(dexamethasone)を含有している、デバイス。
(25)実施態様18に記載のデバイスにおいて、
前記治療薬は、抗凝血剤を含有している、デバイス。
(26)実施態様25に記載のデバイスにおいて、
前記抗凝血剤は、ヘパリン(heparin)である、デバイス。
(27)実施態様1〜3のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、
放射線不透過性物質、
を更に備えている、デバイス。
(28)実施態様1〜3のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、
ステントは、自己拡張型である、デバイス。
(29)実施態様1〜3のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、
ステントは、バルーン拡張型である、デバイス。
【0090】
(30)ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
を含む、方法。
(31)ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料をアニーリングする工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
を含む、方法。
(32)ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料をアニーリングする工程と、
を含む、方法。
【0091】
(33)ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第1の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第1の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第1の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第2の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第2の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第2の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
を含む、方法。
(34)ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第1の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第1の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第1の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第2の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第2の方向に所与の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記ポリマー材料を前記の延伸された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記延伸されたポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第3の温度まで加熱する工程と、
前記第2の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
を含む、方法。
【0092】
(35)ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料をアニーリングする工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第1の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第1の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第1の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第2の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第2の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第2の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
を含む、方法。
(36)ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料をアニーリングする工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第1の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第1の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第1の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第2の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第2の方向に所与の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記ポリマー材料を前記の延伸された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記延伸されたポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第3の温度まで加熱する工程と、
前記第2の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
を含む、方法。
【0093】
(37)ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第1の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第1の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第1の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第2の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第2の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第2の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料をアニーリングする工程と、
を含む、方法。
(38)ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第1の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第1の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第1の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第2の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第2の方向に所与の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記ポリマー材料を前記の延伸された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記延伸されたポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第3の温度まで加熱する工程と、
前記第2の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料をアニーリングする工程と、
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明による、生体適合性材料で作られた例示的なステントを平面的に示す図である。
【図2】例示的なステントのフープ部品の部分を示す図であって、軸配向に対応する2つの高ひずみ帯域を例示する図である。
【図3】例示的なステントのフープ部品の部分を示す図であって、周配向に対応する1つの高ひずみ帯域を例示する図である。
【図4】例示的なステントのフープ部品の部分を示す図であって、二軸配向に対応する3つの高ひずみ帯域を例示する図である。
【図5】例示的なステントの可撓性コネクター部品の部分を示す図であって、周配向に対応する2つの高ひずみ帯域を例示する図である。
【図6】例示的なステントの可撓性コネクター部品の部分を示す図であって、軸配向に対応する1つの高ひずみ帯域を例示する図である。
【図7】例示的なステントの可撓性コネクター部品の部分を示す図であって、二軸配向に対応する3つの高ひずみ帯域を例示する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向軸および半径方向軸を有する、実質的に管状の管腔内医療デバイスにおいて、
複数の半径方向ストラット、および複数の半径方向円弧部材を有する、ポリマー材料で形成された複数のフープであって、
前記複数の半径方向ストラットは、前記長さ方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第1の整列度のポリマー鎖を有しており、
前記複数の半径方向円弧部材は、前記半径方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第2の整列度のポリマー鎖を有しており、
前記第1の整列度は、前記第2の整列度より大きい、
前記複数のフープと、
前記複数のフープを相互連結している、ポリマー材料で形成された複数のブリッジであって、前記複数のブリッジの各々は、機械的変形によって生じる所定のポリマー鎖整列度を有する少なくとも1つの部材を有している、前記複数のブリッジと、
を備えている、デバイス。
【請求項2】
長さ方向軸および半径方向軸を有する、実質的に管状の管腔内医療デバイスにおいて、
複数の半径方向ストラット、および複数の半径方向円弧部材を有する、ポリマー材料で形成された複数のフープであって、
前記複数の半径方向ストラットは、前記長さ方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第1の整列度のポリマー鎖を有しており、
前記複数の半径方向円弧部材は、前記半径方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第2の整列度のポリマー鎖を有しており、
前記第1の整列度は、前記第2の整列度より小さい、
前記複数のフープと、
前記複数のフープを相互連結している、ポリマー材料で形成された複数のブリッジであって、前記複数のブリッジの各々は、機械的変形によって生じる所定のポリマー鎖整列度を有する少なくとも1つの部材を有している、前記複数のブリッジと、
を備えている、デバイス。
【請求項3】
長さ方向軸および半径方向軸を有する、実質的に管状の管腔内医療デバイスにおいて、
複数の半径方向ストラット、および複数の半径方向円弧部材を有する、ポリマー材料で形成された複数のフープであって、
前記複数の半径方向ストラットは、前記長さ方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第1の整列度のポリマー鎖を有しており、
前記複数の半径方向円弧部材は、前記半径方向軸に対して実質的に平行な方向に整列した、前記ポリマー材料を構成する第2の整列度のポリマー鎖を有しており、
前記第1の整列度は、前記第2の整列度と実質的に同等である、
前記複数のフープと、
前記複数のフープを相互連結している、ポリマー材料で形成された複数のブリッジであって、前記複数のブリッジの各々は、機械的変形によって生じる所定のポリマー鎖整列度を有する少なくとも1つの部材を有している、前記複数のブリッジと、
を備えている、デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、
前記ポリマー材料は、生体吸収性ポリマーを含有している、デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスにおいて、
前記生体吸収性ポリマーは、ポリ(α−ヒドロキシエステル)を含有している、デバイス。
【請求項6】
請求項4に記載のデバイスにおいて、
前記生体吸収性ポリマーは、チロシン誘導ポリアミノ酸を含有している、デバイス。
【請求項7】
請求項4に記載のデバイスにおいて、
前記生体吸収性ポリマーは、リン含有材料を含有している、デバイス。
【請求項8】
請求項4に記載のデバイスにおいて、
前記生体吸収性ポリマーは、ポリアルカノエートを含有している、デバイス。
【請求項9】
請求項4に記載のデバイスにおいて、
前記生体吸収性ポリマーは、ポリ無水物を含有している、デバイス。
【請求項10】
請求項4に記載のデバイスにおいて、
前記生体吸収性ポリマーは、ポリオルトエステルを含有している、デバイス。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、
前記ポリマー材料は、生物学的安定性ポリマーを含有している、デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のデバイスにおいて、
前記生物学的安定性ポリマーは、ポリオレフィンを含有している、デバイス。
【請求項13】
請求項11に記載のデバイスにおいて、
前記生物学的安定性ポリマーは、ポリウレタンを含有している、デバイス。
【請求項14】
請求項11に記載のデバイスにおいて、
前記生物学的安定性ポリマーは、フッ素ポリマーを含有している、デバイス。
【請求項15】
請求項11に記載のデバイスにおいて、
前記生物学的安定性ポリマーは、ポリアミドを含有している、デバイス。
【請求項16】
請求項11に記載のデバイスにおいて、
前記生物学的安定性ポリマーは、ポリエステルを含有している、デバイス。
【請求項17】
請求項11に記載のデバイスにおいて、
前記生物学的安定性ポリマーは、アクリル樹脂を含有している、デバイス。
【請求項18】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、
少なくとも1種の治療薬、
を更に備えている、デバイス。
【請求項19】
請求項18に記載のデバイスにおいて、
前記少なくとも1種の治療薬は、抗再狭窄薬を含有している、デバイス。
【請求項20】
請求項19に記載のデバイスにおいて、
前記抗再狭窄薬は、ラパマイシンを含有している、デバイス。
【請求項21】
請求項19に記載のデバイスにおいて、
前記抗再狭窄薬は、パクリタキセルを含有している、デバイス。
【請求項22】
請求項18に記載のデバイスにおいて、
前記治療薬は、抗炎症薬を含有している、デバイス。
【請求項23】
請求項22に記載のデバイスにおいて、
前記抗炎症薬は、ラパマイシンを含有している、デバイス。
【請求項24】
請求項22に記載のデバイスにおいて、
前記抗炎症薬は、デキサメタゾンを含有している、デバイス。
【請求項25】
請求項18に記載のデバイスにおいて、
前記治療薬は、抗凝血剤を含有している、デバイス。
【請求項26】
請求項25に記載のデバイスにおいて、
前記抗凝血剤は、ヘパリンである、デバイス。
【請求項27】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、
放射線不透過性物質、
を更に備えている、デバイス。
【請求項28】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、
ステントは、自己拡張型である、デバイス。
【請求項29】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のデバイスにおいて、
ステントは、バルーン拡張型である、デバイス。
【請求項30】
ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
を含む、方法。
【請求項31】
ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料をアニーリングする工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
を含む、方法。
【請求項32】
ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料をアニーリングする工程と、
を含む、方法。
【請求項33】
ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第1の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第1の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第1の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第2の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第2の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第2の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
を含む、方法。
【請求項34】
ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第1の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第1の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第1の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第2の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第2の方向に所与の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記ポリマー材料を前記の延伸された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記延伸されたポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第3の温度まで加熱する工程と、
前記第2の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
を含む、方法。
【請求項35】
ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料をアニーリングする工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第1の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第1の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第1の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第2の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第2の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第2の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
を含む、方法。
【請求項36】
ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料をアニーリングする工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第1の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第1の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第1の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第2の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第2の方向に所与の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記ポリマー材料を前記の延伸された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記延伸されたポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第3の温度まで加熱する工程と、
前記第2の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
を含む、方法。
【請求項37】
ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第1の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第1の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第1の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第2の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第2の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第2の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料をアニーリングする工程と、
を含む、方法。
【請求項38】
ポリマー材料の破断点伸びを増大させる方法において、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第1の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第1の方向に所定の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記第1の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第2の温度まで加熱する工程と、
0%より大きく約500%までの範囲の延伸比を利用して、前記加熱されたポリマー材料を第2の方向に所与の時間の間延伸して、改変された分子配向を前記延伸の方向に誘導する工程と、
前記ポリマー材料を前記の延伸された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記延伸されたポリマー材料を、ほぼ前記ポリマー材料のガラス転移温度からほぼ前記ポリマー材料の溶融温度までの範囲の第3の温度まで加熱する工程と、
前記第2の方向の前記延伸比を約500%未満まで減少させることによって、前記加熱されたポリマー材料を緩和する工程と、
前記ポリマー材料を前記の緩和された位置に保持し、同時に、前記ポリマー材料を前記ポリマー材料のガラス転移温度より低い温度まで冷却する工程と、
前記ポリマー材料をアニーリングする工程と、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−325923(P2007−325923A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−138102(P2007−138102)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(597041828)コーディス・コーポレイション (206)
【氏名又は名称原語表記】Cordis Corporation
【Fターム(参考)】