説明

ブレーキ制御装置

【課題】凍結や錆びなどによって生じるブレーキシューとドラム内周面との固着による影響を抑制するブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】検知手段104が、パーキングブレーキの解除時以前の作動状況を検知すると、制御手段106が、検知された作動状況に基づいて、駆動モータ22によるブレーキシューの押圧力を設定する。このとき、ブレーキシューとドラムとが固着している可能性が高いことを示す作動状況が検知されると、制御手段106は、車両走行中において通常のブレーキペダル操作により生成される押圧力よりも大きい押圧力を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バックプレートに設けた貫通孔を挿通してプレートの反ドラム側まで延びる作動部材の作動によりブレーキシューを駆動するブレーキシュー駆動機構と、反ドラム側の面に配設されて、出力軸の動作に基づいて作動部材を作動させてブレーキシューをドラム内周面に対して接離させるブレーキアクチュエータとを備えた車両用電動ブレーキ装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−28215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パーキングブレーキを解除するとき、ブレーキ装置は、ドラム内のリターンスプリングによりブレーキシューが元の解除位置に戻されるように構成されている。しかしながら、たとえば寒冷地においてパーキングブレーキをロックすると、ブレーキシューとドラム内周面とが凍結により固着することがある。また、パーキングブレーキをロックした状態で長時間放置すると、ブレーキシューとドラム内周面とが錆びにより固着することがある。
【0005】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、凍結や錆びなどによって生じるブレーキシューとドラムの内周面との固着状態を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、車輪と共に回転するドラムと、ドラムの内周面に押圧されることによって車輪に制動力を与える一対のブレーキシューと、一対のブレーキシューに対し、それぞれがドラムの内周面から離間する方向への付勢力を与える付勢手段と、一対のブレーキシューをドラムの内周面に押圧させてブレーキを作動する第1駆動手段と、パーキングブレーキを作動する第2駆動手段と、第1駆動手段および第2駆動手段を制御する制御手段と、パーキングブレーキの解除時以前の作動状況を検知する検知手段とを備える。制御手段は、検知手段により検知された作動状況に基づいて、第1駆動手段による一対のブレーキシューの押圧力を設定する。
【0007】
この態様によると、パーキングブレーキの解除時以前の作動状況をもとにブレーキシューの押圧力を設定することで、たとえばブレーキシューとドラムとが凍結などにより固着している場合には、ブレーキシューのドラムへの押圧力を大きくすることで、固着したブレーキシューとドラムとを離すことが可能となる。
【0008】
ブレーキ制御装置は、パーキングブレーキの解除指令を受け付ける受付手段をさらに備えてもよい。制御手段は、受付手段が解除指令を受け付けると、第2駆動手段にパーキングブレーキの解除動作を行わせる前に、第1駆動手段を作動させてもよい。
【0009】
制御手段は、車両走行中における通常のブレーキペダル踏み込み操作に応じて第1駆動手段によりブレーキシューをドラムの内周面に押圧させる力よりも大きい押圧力を発生させてもよい。これにより、ブレーキシューとドラムとが凍結などにより固着している場合に、固着したブレーキシューとドラムとをすみやかに離すことが可能となる。
【0010】
検知手段は、車両のイグニッションオフからイグニッションオンまでのオフ期間を、パーキングブレーキの作動状況として検出し、制御手段は、オフ期間が所定期間を超えていれば、第1押圧力を第1駆動手段により発生させ、オフ期間が所定期間以内であれば、第1押圧力よりも小さい第2押圧力を第1駆動手段により発生させてもよい。これにより、車両を長期間放置したときに、ブレーキシューとドラムとが錆びなどにより固着している場合であっても、大きな第1押圧力を発生させることで、固着したブレーキシューとドラムとをすみやかに離すことが可能となる。
【0011】
検知手段は、気温をパーキングブレーキの作動状況として検出し、制御手段は、気温が所定値以下であれば、第1押圧力を第1駆動手段により発生させ、気温が所定値よりも高ければ、第1押圧力よりも小さい第2押圧力を第1駆動手段により発生させてもよい。これにより、外気温が低く、ブレーキシューとドラムとが凍結により固着している場合であっても、大きな第1押圧力を発生させることで、固着したブレーキシューとドラムとをすみやかに離すことが可能となる。
【0012】
ブレーキ制御装置は、一対のブレーキシューの少なくとも一つがドラムの内周面に固着しているか否かを判定する固着判定手段をさらに備えてもよい。固着判定手段により固着していることが判定された場合、制御手段は、第1押圧力を第1駆動手段により発生させてもよい。これにより、固着したブレーキシューとドラムとをすみやかに離すことが可能となる。
【0013】
固着判定手段は、第1駆動手段に含まれるモータの状態から、一対のブレーキシューの少なくとも一つがドラムの内周面に固着しているか否かを判定してもよい。固着判定手段は、たとえばモータに生じる逆起電力や、モータの回転角の状態を利用して、固着の有無を判定してもよい。
【0014】
固着判定手段は、ストラット部における荷重値をもとに、一対のブレーキシューの少なくとも一つがドラムの内周面に固着しているか否かを判定してもよい。固着判定手段は、たとえばストラット部における荷重値を所定値と比較し、その比較結果をもとに固着の有無を判定してもよい。
【0015】
制御手段は、固着判定手段により固着していることが判定された場合、第1駆動手段によるブレーキの作動と解除を複数回実行させてもよい。これにより、固着状態を解消する可能性を高めることができる。
【0016】
制御手段は、左右輪のブレーキの作動と解除のタイミングをずらしてもよい。これにより、消費電力を低減することが可能となる。
【0017】
制御手段は、ブレーキの作動と解除のタイミングを、車両が停止している路面の傾斜角に応じて設定してもよい。これにより、ブレーキの作動と解除のタイミングを適切に設定することが可能となる。
【0018】
本発明の別の態様もまた、ブレーキ制御装置である。この装置は、車輪と共に回転するドラムと、ドラムの内周面に押圧されることによって車輪に制動力を与える一対のブレーキシューと、一対のブレーキシューに対し、それぞれがドラムの内周面から離間する方向への付勢力を与える付勢手段と、一対のブレーキシューをドラムの内周面に押圧させてブレーキを作動する第1駆動手段と、パーキングブレーキを作動する第2駆動手段と、第1駆動手段および第2駆動手段を制御する制御手段と、パーキングブレーキの解除指令を受け付ける受付手段と、一対のブレーキシューの少なくとも一つがドラムの内周面に固着しているか否かを判定する固着判定手段とを備える。制御手段は、受付手段が解除指令を受け付けると、第2駆動手段にパーキングブレーキの解除動作を行わせる前に、第1駆動手段によりブレーキを作動させて、第2駆動手段にパーキングブレーキの解除動作を行わせた後に、第1駆動手段によりブレーキを解除させるものであって、制御手段は、第2駆動手段にパーキングブレーキの解除動作を行わせた後に、固着判定手段により固着していることが判定された場合、第1駆動手段によりブレーキを再度作動させる。
【0019】
この態様によると、ブレーキシューとドラムとが固着している場合に、固着したブレーキシューとドラムとを離すことが可能となる。制御手段が、第2駆動手段にパーキングブレーキの解除動作を行わせてから、第1駆動手段にブレーキを解除させた後に、固着判定手段が固着しているか否かを判定してもよい。
【0020】
制御手段は、第2駆動手段によるパーキングブレーキの解除動作後に、車両走行中における通常のブレーキペダル踏み込み操作に応じて第1駆動手段によりブレーキシューをドラムの内周面に押圧させる力よりも大きい押圧力を発生させてもよい。これにより、固着したブレーキシューとドラムとをすみやかに離すことが可能となる。
【0021】
固着判定手段は、第1駆動手段に含まれるモータの状態から、一対のブレーキシューの少なくとも一つがドラムの内周面に固着しているか否かを判定してもよい。固着判定手段は、たとえばモータに生じる逆起電力や、モータの回転角の状態を利用して、固着の有無を判定してもよい。
【0022】
固着判定手段は、ストラット部における荷重値をもとに、一対のブレーキシューの少なくとも一つがドラムの内周面に固着しているか否かを判定してもよい。固着判定手段は、たとえばストラット部における荷重値を所定値と比較し、その比較結果をもとに固着の有無を判定してもよい。
【0023】
制御手段は、固着判定手段により固着していることが判定された場合、第1駆動手段によるブレーキの作動と解除を複数回実行させてもよい。これにより、固着状態を解消する可能性を高めることができる。
【0024】
制御手段は、左右輪のブレーキの作動と解除のタイミングをずらしてもよい。これにより、消費電力を低減することが可能となる。
【0025】
制御手段は、ブレーキの作動と解除のタイミングを、車両が停止している路面の傾斜角に応じて設定してもよい。これにより、ブレーキの作動と解除のタイミングを適切に設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、凍結や錆びなどによって生じるブレーキシューとドラムの内周面との固着状態を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態のドラム型の車両用電動ブレーキ装置を示し、図2は、図1のX−X断面を示す図である。
【図2】図1のX−X断面を示す図である。
【図3】ブレーキアクチュエータの縦断面を示す図である。
【図4】減速機構および空転防止機構を示す概略斜視図である。
【図5】空転防止機構の動作を説明するための説明図である。
【図6】空転防止機構の動作を説明するための説明図である。
【図7】ブレーキ制御装置の構成を示す図である。
【図8】パーキングブレーキモードにおける駆動手段の基本動作を説明するための説明図である。
【図9】本実施形態のブレーキ制御処理を示すフローチャートである。
【図10】図9のS10の電流目標値設定処理を示すフローチャートである。
【図11】ブレーキストローク量と、駆動モータの電流目標値との関係を示す図である。
【図12】図9のS26の分離処理を示すフローチャートである。
【図13】分離処理の変形例を説明するための説明図である。
【図14】傾斜角と期間Δtの関係を示す図である。
【図15】分離処理の変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態のドラム型の車両用電動ブレーキ装置を示し、図2は、図1のX−X断面を示す。
【0029】
ブレーキ装置1において、有底円筒状のドラム2は車軸(図示略)に一体回転するように固定され、車輪とともに回転する。ドラム2の開口部側には円盤状のバックプレート3が回転不能に配設される。ドラム2内の空間には、一対のブレーキシュー4、5が配設される。ブレーキシュー4、5はそれぞれ円弧状をなしており、ドラム2の内周面2aと接離可能にバックプレート3のドラム側の面3aに支持されている。
【0030】
ブレーキシュー4、5の一端は、アジャスタ6を介して互いに連結されるとともに、該一端側の所定部位にはバックプレート3との間にそれぞれリターンスプリング7が掛装されている。またブレーキシュー4、5の他端は、それぞれリターンスプリング8を介してバックプレート3の外周側の所定位置に固定された固定ピン9に連結されている。そして、リターンスプリング7、8の付勢力により、ブレーキシュー4、5の他端がともに固定ピン9に当接し、ブレーキシュー4、5はこの位置で保持される。このとき、ブレーキシュー4、5は、ドラム2の内周面2aから僅かに離間した状態で保持される。
【0031】
またブレーキシュー4、5には、固定ピン9側の所定部位に連結バー10の各端部10a、10bがそれぞれ連結されている。連結バー10は、シュークリアランスを一定に保つストラットとして作用する。連結バー10の一つの端部10a側(図1において左側端部)においては、図2に示すように、作動部材としての作動レバー11の中央部が連結ピン12により左右方向に揺動可能に支持されている。本実施形態では、この作動レバー11と連結バー10によりブレーキシュー4、5をドラム2の内周面2aに接離させるブレーキシュー駆動機構13が構成されている。
【0032】
作動レバー11の先端部は係合部11aをなし、その係合部11aは一方のブレーキシュー4に設けた係合孔4aに挿通され、該作動レバー11の揺動方向において係合する。作動レバー11の基端部側は、バックプレート3に設けた貫通孔3cに挿通されて反ドラム2側に延びている。この貫通孔3cには、該貫通孔3cと作動レバー11との間の隙間を塞ぐとともに、該作動レバー11の動作に追従可能なゴム等の弾性部材にて構成されたカバー14が取着されている。カバー14は、バックプレート3の反ドラム2側から貫通孔3cを介してドラム2内部に雨水や砂等の異物の浸入を防止している。つまり、ドラム2の内周面2aとブレーキシュー4、5との間に雨水や砂等の異物が入り込んで、制動力がばらつくことが防止されている。
【0033】
また作動レバー11の基端部には連結部11bが構成され、その連結部11bはブレーキアクチュエータ20の出力軸21に連結されている。ブレーキアクチュエータ20は、バックプレート3の反ドラム側の面3bに配置され、複数の取付ボルト15により該バックプレート3に固定されている。ブレーキアクチュエータ20は、出力軸21を図1および図2において左右方向に駆動させ、作動レバー11を連結ピン12を支点として揺動させる。なお、図1および図2に示す出力軸21の位置は最も突出した位置(ホームポジション位置)であり、ブレーキ操作がなされていない状態の時に配置される位置である。
【0034】
なお図2に示すように、出力軸21の先端部には連結部21aが備えられ、該連結部21aには作動レバー11の連結部11bを挿通する連結孔21bが形成されている。この連結孔21bは、作動レバー11の連結部11bとの当接部分21cの中央部が突出した形状に形成されている。これに対し、作動レバー11の連結部11bには、出力軸21の連結部21aをガイドするガイド部16が該出力軸21の両側にそれぞれ組み付けられている。このガイド部16は、出力軸21の連結部21aとの当接部分16aの中央部が突出した曲面状に形成されている。つまり、出力軸21は後述するように往復直線運動を行なう一方、作動レバー11は連結ピン12を中心に揺動運動を行うため、両連結部11b、21aの各当接部分16a、21cを連結部21aに対して作動レバー11を傾動可能として両連結部11b、21aの互いの動作に対して追従可能とし、両連結部11b、21aが互いに円滑に動作するように構成されている。
【0035】
そして、ブレーキ操作がなされるとブレーキアクチュエータ20が作動し、出力軸21がホームポジション位置から没入移動(図1において右方向に移動)する。すると、連結ピン12を支点として作動レバー11が図2において反時計回り方向に回動し、ブレーキシュー4がドラム2の内周面2aに向かって拡張されるとともに、作動レバー11の係合部11aを支点として該作動レバー11が同方向に回動し、連結バー10を介してブレーキシュー5がドラム2の内周面2aに向かって拡張される。こうして、各ブレーキシュー4、5の固定ピン9側がリターンスプリング7、8の付勢力に抗して拡開される。そして、ブレーキシュー4、5がドラム2の内周面2aに押圧されると、ブレーキシュー4、5とドラム2との間に摩擦力が発生し、車輪に制動力を与えるようになっている。
【0036】
図3は、ブレーキアクチュエータ20の縦断面を示す。ブレーキアクチュエータ20は、駆動モータ22と、該駆動モータ22の回転を減速するとともにその減速した回転運動を出力軸21の往復直線運動に変換する出力部23とを備えている。本実施形態のブレーキアクチュエータ20は、出力軸21と駆動モータ22の回転軸22aとが平行(略水平)、かつ両軸21、22aが互いに対向するように配置され、バックプレート3の反ドラム側の面3bに沿って略コ字状に構成されている。なお駆動モータ22は、出力部23よりバックプレート3の径方向外側に位置している。
【0037】
具体的には、出力部23のハウジング24に駆動モータ22が組み付けられ、該ハウジング24及び駆動モータ22はバックプレート3に取付ボルト15により固定されている(図2参照)。駆動モータ22の回転軸22aには、ピニオン25が一体回転するように設けられている。
【0038】
図4は、減速機構および空転防止機構を示す概略斜視図である。図5は、空転防止機構の動作を説明するための説明図である。図6は、空転防止機構の動作を説明するための説明図である。ピニオン25は、図3〜図6に示すように第1減速ギヤ26と噛合され、その第1減速ギヤ26は第2減速ギヤ27と噛合される。第2減速ギヤ27は、軸方向にネジ孔27bが形成された出力軸部27aを有している。
【0039】
これに対し出力軸21は、ハウジング24に対して回転不能、かつ軸方向に移動可能に支持されている。出力軸21は、先端部に作動レバー11に連結される連結部21aを有し、基端部にウォーム部21dを有している。ウォーム部21dは出力軸部27aのネジ孔27bと螺合されている。尚、出力軸21とハウジング24の開口部との間には、その開口部と出力軸21との間の隙間からの異物の浸入を防止するゴム等の弾性部材にて構成されたブーツ28が取着されている。
【0040】
ハウジング24内には、出力軸部27aを回転可能な状態から回転不能な状態に切り替えて、負荷側(作動レバー11側)から入力される外力による該出力軸部27aの空転を防止する空転防止機構30が備えられている。
【0041】
詳述すると、空転防止機構30は、切替用モータ31と第1規制ギヤ32および第2規制ギヤ33とを備えている。切替用モータ31はハウジング24に組み付けられ、該切替用モータ31の回転軸にはピニオン31aが一体回転するように設けられている。第1規制ギヤ32は、第1減速ギヤ26を固定するシャフト26aに回転可能、かつ第1減速ギヤ26と一体に回転しないように支持されている。第2規制ギヤ33は、第2減速ギヤ27と一体回転するように出力軸部27aに対して設けられている。
【0042】
図4に示すように、第1規制ギヤ32は、切替用モータ31のピニオン31aと噛合するための扇状の第1噛合部32aと、第2規制ギヤ33と噛合するために周方向の一部に設けられる第2噛合部32bとを有している。第1規制ギヤ32は切替用モータ31の作動により回動され、図4〜図6に示すハウジング24内に突出形成された規制部24aの第1規制面24b及び第2規制面24cにより所定角度で回動が規制される。そして、第1規制ギヤ32は、第1規制面24bに規制されて第2規制ギヤ33と噛合する噛合位置(図6参照)と、第2規制面24cにて規制されて該第2規制ギヤ33と噛合しない非噛合位置(図5参照)に切り替え配置されるようになっている。
【0043】
すなわち、第1規制ギヤ32が図5に示す非噛合位置に配置された場合、出力軸部27aの回転は許容される。尚、この状態は、車両走行時及び車両停車時における状態である。一方、第1規制ギヤ32が図6に示す噛合位置に配置され、第2規制ギヤ33に反時計回り方向(矢印B方向)に回転力が作用した場合、第1規制ギヤ32が第1規制面24bに当接し、第1規制ギヤ32がそれ以上、時計回り方向に回転することが防止される。つまり、この状態では、第2規制ギヤ33、即ち該第2規制ギヤ33と一体回転する出力軸部27aの矢印B方向の回転が禁止される。尚、この状態は、車両駐車時における状態である。
【0044】
規制部24aには、ゴム等の弾性部材にて構成された緩衝部材34が組み付けられている。緩衝部材34は、第2規制面24cより突出するように構成されている。そして、緩衝部材34は、第1規制ギヤ32が図5に示す非噛合位置に配置される直前に当接し、弾性変形により第1規制ギヤ32が図5に示す非噛合位置に配置され第2規制面24cに当接する際の衝突音の発生を抑えるために設けられている。
【0045】
第1規制ギヤ32の第1減速ギヤ26とは反対側の側面には、係合孔32cが形成されている。これに対し、第1規制ギヤ32が図5に示す非噛合位置に配置された場合において、その第1規制ギヤ32の係合孔32cと係合する係合部材35が該ギヤ32の軸方向にのみ移動可能に設けられている。この係合部材35は、スプリング36の付勢力により第1規制ギヤ32側に常に押圧されている。つまり、第1規制ギヤ32は、図5に示す非噛合位置に配置されると係合孔32cに係合部材35が係合し、その位置が保持されるようになっている。尚、係合孔32cと係合部材35との係合力はブレーキ装置1が振動や衝撃を受けた際に第1規制ギヤ32が図5に示す非噛合位置から回動しないような程度であって、切替用モータ31の駆動により第1規制ギヤ32が時計回り方向に回動する際に容易に係合孔32cと係合部材35との係合が外れるように例えばスプリング36の付勢力が設定されている。
【0046】
また第1規制ギヤ32の第1減速ギヤ26とは反対側の側面中央には、六角レンチ等の工具(図示略)が嵌合する六角形状の工具連結穴32dが形成されている。これに対応し、図3に示すように、ハウジング24には外部からその第1規制ギヤ32(工具連結穴32d)まで通じる挿通孔24dが形成されている。尚、挿通孔24dはネジ穴であって、ボルト37が螺入される。このボルト37はその先端が第1規制ギヤ32に略当接して、第1規制ギヤ32のスラスト方向の荷重を受けるようになっている。
【0047】
図7は、ブレーキ装置1を駆動するためのブレーキ制御装置100の構成を示す。ブレーキ制御装置100は、電子制御ユニット(ECU)として構成される。ブレーキ制御装置100は、1つのECUから構成されてもよいが、車両走行時のブレーキ制御を行うECUと、車両駐車時のブレーキ制御を行うECUとから構成されてもよい。ECUは、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMなどを有し、車両内部に搭載される。ECUは、車両に設けられた様々な機器を制御する。
【0048】
ブレーキ制御装置100は、受付手段102、検知手段104、制御手段106および固着判定手段108を備える。またブレーキ制御装置100は、駐車ブレーキ操作スイッチ(以下、「EPBスイッチ」という)200、温度計202、イグニッションキー204、荷重センサ206、Gセンサ208、操作量検出手段210、電流計212および回転角センサ214に接続され、これらから、各種信号または各種検出値を受け取る。
【0049】
ブレーキ装置1において、駆動モータ22は、一対のブレーキシュー4、5をドラム2の内周面2aに押圧させてブレーキを作動する第1駆動手段として動作する。また切替用モータ31は、パーキングブレーキを作動する第2駆動手段として動作する。制御手段106は、駆動モータ22および切替用モータ31を制御する。具体的に制御手段106は、駆動モータ22および切替用モータ31に供給する電流を制御することで、駆動モータ22および切替用モータ31の動作を制御する。
【0050】
操作量検出手段210は、運転者によるブレーキ操作部材の操作量を検出する。ブレーキ操作部材は、たとえばブレーキペダルであり、検出する操作量は、たとえばブレーキペダルのストローク量である。操作量検出手段210は、操作量に応じた操作量検出信号をブレーキ制御装置100に送る。
【0051】
EPBスイッチ200は、車両に装備されている駐車ブレーキ操作レバーの操作に基づいてオン/オフ信号を出力し、そのオン/オフ信号をブレーキ制御装置100に出力する。具体的に、駐車ブレーキ操作レバーを駐車位置に操作すると、EPBスイッチ200はオン信号(パーキングブレーキ作動指令)をブレーキ制御装置100に出力する。また駐車ブレーキ操作レバーを駐車解除位置に操作すると、EPBスイッチ200はオフ信号(パーキングブレーキ解除指令)をブレーキ制御装置100に出力する。ブレーキ制御装置100において、受付手段102が、EPBスイッチ200から出力されるオン信号またはオフ信号を受け付ける。
【0052】
ブレーキ制御装置100は、EPBスイッチ200からのオン/オフ信号に基づいて「パーキングブレーキモード」または「通常ブレーキモード」のいずれかの状態となる。具体的にブレーキ制御装置100は、EPBスイッチ200からオン信号(駐車信号)が出力されると「パーキングブレーキモード」となり、EPBスイッチ200からオフ信号が出力されると「通常ブレーキモード」となる。以下、これらのブレーキモードについて説明する。
【0053】
(通常ブレーキモード)
通常ブレーキモードは、車両走行時及び車両停車時に実行されるモードである。このモードにおいて、制御手段106は、切替用モータ31を制御して第1規制ギヤ32を図5に示すように第2噛合部32bが第2規制ギヤ33と噛合しない非噛合位置に配置させ、出力軸部27aを回転フリーな状態にする。このとき、第1規制ギヤ32の係合孔32cと係合部材35とが係合し、該第1規制ギヤ32がその位置に維持される。ブレーキ装置1に振動や衝撃が加わっても第1規制ギヤ32の回動が規制されるので、第1規制ギヤ32の第2噛合部32bと第2規制ギヤ33との異常噛み合いが防止され、出力軸部27aの回転フリーな状態を妨げないようになっている。
【0054】
そして制御手段106は、操作量検出手段210により検出されるブレーキ操作量が増加すると駆動モータ22を回転させ、ピニオン25、ギヤ26、27を介して出力軸部27aを矢印A方向に回転させて、出力軸21を没入させる。すると、作動レバー11によって各ブレーキシュー4、5がリターンスプリング7、8の付勢力に抗して拡開され、各ブレーキシュー4、5がドラム2の内周面2aに対して押圧される。これによりブレーキ装置1の制動力が増加する。
【0055】
一方、操作量検出手段210により検出されるブレーキ操作量が減少すると、制御手段106は駆動モータ22を回転させ、出力軸部27aを矢印B方向に回転させて、出力軸21を突出させる。すると、作動レバー11によって各ブレーキシュー4、5がリターンスプリング7、8の付勢力によって戻され、各ブレーキシュー4、5がドラム2の内周面2aに対して離間する方向に移動する。これにより、ブレーキ装置1の制動力が減少する。
【0056】
このように制御手段106は、通常ブレーキモードにおいては、ブレーキ操作量に応じた操作量検出信号に基づいて駆動モータ22を制御して、ドラム2に対してブレーキシュー4、5を接離させるとともに、ドラム2に対するブレーキシュー4、5の圧接力を変化させて、ブレーキ装置1の制動力を制御している。
【0057】
(パーキングブレーキモード)
パーキングブレーキモードは、車両駐車時に実行されるモードである。このモードにおいて、制御手段106は、EPBスイッチ200からのオン信号(パーキングブレーキ作動指令)に基づいて、まずドラム2に対するブレーキシュー4、5の押圧力(制動力)が所定値以上、すなわち車両の駐車に必要な制動力を得るまで駆動モータ22を回転させ、出力軸部27aを矢印A方向に回転させる。
【0058】
次に、制御手段106は、切替用モータ31を制御して第1規制ギヤ32を図5に示す状態から時計回り方向に回動させ、図6に示すように第2噛合部32bを第2規制ギヤ33と噛合する噛合位置に配置させる。このとき、第1規制ギヤ32が第1規制面24bに当接した状態になる。そのため、出力軸部27aは矢印B方向の回転が禁止された状態になる。そして、ブレーキ制御装置100は、切替用モータ31への電源供給を停止し、続いて駆動モータ22への電源供給を停止する。
【0059】
このとき、ブレーキシュー4、5がドラム2から離間しようとする反力が作動レバー11を介して出力軸21の突出方向(図1及び図2において左方向)に常に作用する。この反力は、出力軸部27aを矢印B方向に回転させようとする力となる。しかしながら、第1規制ギヤ32の第2噛合部32bと第2規制ギヤ33との噛み合いにより出力軸部27aは矢印B方向の回転が禁止されているので、出力軸部27aがそれ以上矢印B方向に回転しない。従って、出力軸21が突出方向(図1及び図2において左方向)に移動することはなく、ブレーキ装置1は駐車に必要な制動力を発生したまま維持される。
【0060】
この場合、出力軸部27aには常に矢印B方向の回転力が作用するので、第1規制ギヤ32には該第1規制ギヤ32が第1規制面24bを押圧する方向に常に回転力が作用することになる。従って、切替用モータ31への電源供給を停止しても、第1規制ギヤ32は噛合位置に維持され、第2噛合部32bと第2規制ギヤ33との噛合が外れることはない。そのため、駐車時においては、制御手段106が駆動モータ22および切替用モータ31に電源供給しなくても制動力を維持することができ、バッテリの電源消費を抑制することが可能となっている。
【0061】
EPBスイッチ200からオフ信号(パーキングブレーキ解除指令)が発生すると、制御手段106は、まずブレーキシュー4、5の押圧力を増す方向、即ち出力軸部27aが矢印A方向に回転するように駆動モータ22をさせる。これは、ブレーキシュー4、5側(負荷側)からの反力による第1規制ギヤ32の第2噛合部32bと第2規制ギヤ33との噛み合いを外すために行われる。
【0062】
それから制御手段106は、切替用モータ31を制御して第1規制ギヤ32を図6に示す状態から反時計回り方向に回動させ、図5に示すように第2噛合部32bを第2規制ギヤ33との噛合が外れる非噛合位置に配置する。このとき、第1規制ギヤ32は、緩衝部材34を弾性変形させながら第2規制面24cに当接して非噛合位置に配置されるとともに、係合孔32cと係合部材35とが係合してその位置に維持される。そして、ブレーキ制御装置100は、ブレーキペダルの踏み込みがなければ、出力軸部27aが矢印B方向に回転するように駆動モータ22を回転させ、ブレーキシュー4、5をドラム2から離間させる。このようにして、ブレーキ装置1は通常ブレーキモードにおけるブレーキ作動が可能な状態に復帰する。
【0063】
図8は、上記したパーキングブレーキモードにおける駆動手段の基本動作を説明するための説明図である。時間tから時間tまでの間は、駆動モータ22および切替用モータ31が、それぞれパーキングブレーキの作動動作を実行し、時間tから時間tまでの間は、駆動モータ22および切替用モータ31が、それぞれパーキングブレーキの解除動作を実行する。
【0064】
時間tで、EPBスイッチ200からオン信号が生成される。受付手段102がオン信号を受け付けると、時間tで、制御手段106が駆動モータ22に電源を供給し、ブレーキのロック動作を行わせる。ここでブレーキのロック動作とは、一対のブレーキシュー4、5をドラム2の内周面2aに押圧させる動作をいう。駆動モータ22への供給電流が目標値に到達して、駐車に必要な押圧力が発生されると、時間tで、制御手段106は切替用モータ31に電源を供給し、パーキングブレーキのロック動作を行わせる。ここでパーキングブレーキのロック動作とは、第1規制ギヤ32を図5に示す状態から時計回り方向に回動させ、図6に示すように第2噛合部32bを第2規制ギヤ33と噛合する噛合位置に配置させる動作をいう。パーキングブレーキのロック動作が終了すると、時間tで、制御手段106が切替用モータ31への電源供給を停止し、続く時間tで、制御手段106が駆動モータ22への電源供給を停止する。以上が、パーキングブレーキ作動時における駆動モータ22および切替用モータ31の基本動作である。
【0065】
時間tで、EPBスイッチ200からオフ信号が生成される。受付手段102がオフ信号を受け付けると、時間tで、制御手段106が駆動モータ22に電源を供給し、ブレーキのロック動作を行わせる。パーキングブレーキの作動中は、第1規制ギヤ32の第2噛合部32bと第2規制ギヤ33とが噛み合っているため、ブレーキのロック動作を行うことで、この噛み合いを外す。時間tで、制御手段106は切替用モータ31に電源を供給し、パーキングブレーキの解除動作を行わせる。ここでパーキングブレーキの解除動作とは、第1規制ギヤ32を図6に示す状態から反時計回り方向に回動させ、図5に示すように第2噛合部32bを第2規制ギヤ33との噛合が外れる非噛合位置に配置させる動作をいう。パーキングブレーキの解除動作が終了すると、時間tで、制御手段106が切替用モータ31への電源供給を停止し、続く時間tで、制御手段106が駆動モータ22への電源供給を停止する。以上が、パーキングブレーキ解除時における駆動モータ22および切替用モータ31の基本動作である。
【0066】
例えば寒冷地において、パーキングブレーキを作動した状態で洗車すると、ブレーキ装置1周辺に水分が付着して、凍結によりブレーキシュー4、5がドラム2に固着する可能性がある。また、寒冷地でなくても、パーキングブレーキを作動した状態で数ヶ月以上の長期間放置されると、錆びによりブレーキシュー4、5がドラム2に固着する可能性がある。このような場合、時間tで駆動モータ22への電源供給が停止されても、ブレーキシュー4またはブレーキシュー5の少なくとも一方がドラム2に固着されていることで、その後の車両のスムーズな発進が困難となる。
【0067】
そこで本実施形態のブレーキ制御装置100は、ブレーキシュー4、5がドラム2に固着しうる状況のもとでは、固着が生じているとの前提にたって、車両発進前に固着状態を解消するような対策を講じる。また、そのような対策を講じても、なお固着が生じていることが検出される場合には、さらなる対策を講じることで、すみやかに固着状態を解消することが好ましい。
【0068】
図9は、本実施形態のブレーキ制御処理を示すフローチャートである。このフローは、受付手段102がEPBスイッチ200からオフ信号(パーキングブレーキ解除指令)を受け付けることで実行される。図9に関して説明するブレーキ制御は、左右の両輪に設けたブレーキ装置1において同期して実行される。
【0069】
まず制御手段106が、電流目標値設定処理を実行する(S10)。この電流目標値設定処理では、パーキングブレーキ解除時に、検知手段104が、パーキングブレーキの解除時以前の作動状況を検知し、制御手段106が、検知手段104により検知された作動状況に基づいて、駆動モータ22によるブレーキシュー4、5のドラム2に対する押圧力を設定する。具体的に制御手段106は、バッテリから駆動モータ22に供給させる電流目標値を決定することで、ブレーキシュー4、5による目標押圧力を設定する。
【0070】
図10は、図9のS10の電流目標値設定処理を示すフローチャートである。上記したように検知手段104は、パーキングブレーキ解除時以前の作動状況を検知する。まず検知手段104は、イグニッションキー204の操作を監視し、車両のイグニッションオフからイグニッションオンまでの期間(「オフ期間」)を、パーキングブレーキの作動状況として検出し、予め設定した所定期間と比較する(S40)。S40では、オフ期間が長期間にわたることで、ブレーキシュー4、5とドラム2とが錆びで固着している可能性について判定する。検知手段104は、運転者によりイグニッションオフされた日時を記憶しておき、その後運転者によりイグニッションキー204が操作されて、イグニッションオンされた日時にもとづいてオフ期間を算出し、オフ期間と所定期間(たとえば100日)とを比較する。
【0071】
オフ期間が所定期間以内であれば(S40のN)、検知手段104は、錆びによる固着が生じていないことを判定する。つづいて検知手段104は、パーキングブレーキ解除時における気温を温度計202から取得し、パーキングブレーキの作動状況として検出して、所定値と比較する(S42)。S42では、外気温度が低いことで、ブレーキシュー4、5とドラム2とが凍結により固着している可能性について判定する。検知手段104は、外気温度が所定値(たとえば0°)より大きければ(S42のN)、凍結による固着が生じていないことを判定する。
【0072】
S40においてオフ期間が所定期間を超えている場合(S40のY)、検知手段104は、錆びによる固着が生じている可能性が高いことを判定する。またS42において外気温度が所定値以下である場合(S42のY)、検知手段104は、凍結による固着が生じている可能性が高いことを判定する。これらの場合、制御手段106は、第1押圧力を駆動モータ22により発生させることを決定する。一方、S40においてオフ期間が所定期間以内である場合(S40のN)、またS42において外気温度が所定値より大きい場合(S42のN)には、ブレーキシュー4、5とドラムの固着が発生していないと判定されるため、制御手段106は、第1押圧力よりも小さい第2押圧力を駆動モータ22により発生させることを決定する。
【0073】
ここで駆動モータ22により発生される押圧力は、駆動モータ22への供給電流値により定まる。第1押圧力を発生させるための電流値をA、第2押圧力を発生させるための電流値をBとすると、制御手段106は、(S40のY)または(S42のY)の場合に、駆動モータ22に供給する電流の目標値をAと設定し(S44)、また(S40のN)且つ(S42のN)の場合は、駆動モータ22に供給する電流の目標値をBと設定する(S46)。なお、図10に示すフローでは、S40とS42の2つのステップが実行されているが、いずれか一方のステップのみが実行されてもよい。
【0074】
図11は、ブレーキストローク量と、駆動モータ22の電流目標値との関係を示す。制御手段106は、車両走行中の通常ブレーキモードにおいて、ドライバによるブレーキペダル踏み込み操作により生成されるブレーキストローク量に応じて、駆動モータ22に供給する電流目標値を定める。ここで示すブレーキストローク量は、通常のブレーキペダル踏み込み操作により生成されるものを想定している。図11に示す関係では、通常のブレーキペダルの踏み込み操作により生成されるブレーキストローク量の最大値STmaxに対応する電流目標値はDである。
【0075】
一方、電流目標値設定処理においては、制御手段106は、通常のブレーキペダル踏み込み操作に応じて駆動モータ22により発生させる押圧力よりも、大きい押圧力を発生させる。具体的に、制御手段106がS44、S46で設定する電流目標値A、Bは、いずれも最大ブレーキストローク量STmaxに対応する電流目標値Dよりも大きい。
【0076】
制御手段106は、S44において電流目標値をAに設定することで、ブレーキシュー4、5に通常よりも大きな押圧力を発生させる。これにより、ブレーキシュー4、5とドラムとが凍結により固着されている場合には、大きな押圧力を発生させることで、ブレーキシュー4、5とドラム2の間の氷を割るように動作させる。また、これらが錆びにより固着されている場合には、錆びによる固着力よりも大きな押圧力を与えることで、ブレーキシュー4、5とドラム2とを離すように動作させる。なお、制御手段106は、S46において電流目標値をB(>D)に設定しているが、この場合は、固着が生じていないことが予測されるため、電流目標値をDに設定してもよい。制御手段106が電流目標値を設定すると(S44、S46)、電流目標値設定処理が終了する。なお図11に示す電流目標値Cについては後述する。
【0077】
図9に戻り、電流目標値設定処理が終了すると、制御手段106が、駆動モータ22をロック方向に回転させる(S12)。これによりブレーキシュー4、5がドラム2の内周面2aに押圧される。電流計212が、駆動モータ22に供給される電流を測定し、制御手段106は、測定された電流値を監視して、電流目標値設定処理において設定した電流目標値と比較する(S14)。駆動モータ22への供給電流値が目標値に到達しなければ(S14のN)、制御手段106は、バッテリから駆動モータ22に引き続き電源を供給する。このように、本実施形態のブレーキ制御装置100では、受付手段102がEPBスイッチ200からオフ信号(パーキングブレーキ解除指令)を受け付けると、制御手段106が、切替用モータ31にパーキングブレーキの解除動作を行わせる前に、駆動モータ22を作動させる。
【0078】
供給電流値が目標値以上になると(S14のY)、制御手段106は、切替用モータ31を解除方向に回転させる(S16)。これにより、第1規制ギヤ32が図6に示す状態から反時計回り方向に回動され、図5に示すように第2噛合部32bが第2規制ギヤ33との噛合が外れる非噛合位置に配置される。電流計212は、切替用モータ31に供給される電流を測定し、制御手段106は、測定された電流値を監視して、所定の電流値と比較する(S18)。切替用モータ31への供給電流値が目標値に到達しなければ(S18のN)、制御手段106は、バッテリから切替用モータ31に引き続き電源を供給する。
【0079】
供給電流値が所定値以上になると(S18のY)、制御手段106は、切替用モータ31への通電を停止し(S20)、その停止後に、駆動モータ22への通電を停止する(S22)。これにより、駆動モータ22は回転フリーな状態となる。以上により、パーキングブレーキの解除動作が終了する。
【0080】
このパーキングブレーキ解除動作によると、電流目標値設定処理において、ブレーキシュー4、5とドラム2とが固着していることが予測される場合には電流目標値が高く設定されている(電流目標値A)。そのため、実際に固着が生じている場合には、ブレーキシュー4、5に大きな押圧力を発生させることで、パーキングブレーキの解除時には、その固着状態が解消されていることが期待される。
【0081】
続いて、ブレーキ制御装置100は、固着判定処理を実行する。上記したパーキングブレーキの解除動作を行うことで、ブレーキシュー4、5とドラム2との固着状態は解消していることが期待されるが、電流目標値をAとして駆動モータ22を駆動しても、固着力が強い場合には、固着状態が維持されていることも想定される。したがって、本実施形態では、パーキングブレーキの解除動作の終了後に、固着判定処理を実行し、固着状態が維持されている場合には、それを解消する分離処理を実行する。
【0082】
具体的に固着判定処理では、固着判定手段108が、一対のブレーキシュー4、5の少なくとも一つがドラム2の内周面2aに固着しているか否かを判定する(S24)。たとえば固着判定手段108は、駆動モータ22の状態から、一対のブレーキシュー4、5の少なくとも一つがドラム2の内周面2aに固着しているか否かを判定してもよい。
【0083】
回転角センサ214は、S22にて駆動モータ22への通電を停止したときの、回転軸22aの回転角を検知する。このとき、ブレーキシュー4、5の少なくとも一つがドラム2の内周面2aに固着していると、出力軸21は、本来戻るべきホームポジション位置まで戻らないため、回転軸22aの回転角は、出力軸21がホームポジション位置まで戻るときと比べて小さくなる。そこで固着判定手段108は、このときの回転軸22aの回転角が所定角度以下である場合に、ブレーキシュー4、5とドラム2とが固着していることを判定する(S24のY)。
【0084】
また、固着判定処理に駆動モータ22の状態を利用する別の例として、固着判定手段108は、電流計212で検出される逆起電力による電流値をもとに、ブレーキシュー4、5とドラム2とが固着していることを判定してもよい。上記したように、ブレーキシュー4、5の少なくとも一つがドラム2の内周面2aに固着していると、回転軸22aの戻り回転量は、固着していない場合よりも小さくなる。そこで固着判定手段108は、逆起電流が所定値よりも小さい場合に、ブレーキシュー4、5とドラム2とが固着していることを判定してもよい(S24のY)。
【0085】
また、たとえばストラット部として動作する連結バー10に荷重センサ206を設け、荷重センサ206が検出した連結バー10にかかる荷重値を利用してもよい。荷重センサ206は、たとえば歪みセンサとして構成されてもよい。ブレーキシュー4、5の少なくとも一つがドラム2の内周面2aに固着していると、連結バー10は延びた状態となるため、荷重センサ206が検出する連結バー10の荷重値は、固着していない場合と比較すると小さくなる。したがって固着判定手段108は、ストラット部における荷重値が所定値よりも小さい場合に、ブレーキシュー4、5とドラム2とが固着していることを判定してもよい(S24のY)。
【0086】
固着判定手段108により、固着が生じていないことが判定されると(S24のN)、本フローは終了する。一方、固着判定手段108により、固着が生じていることが検出されると(S24のY)、制御手段106は、固着したブレーキシュー4、5とドラム2とを分離する分離処理を実行する(S26)。
【0087】
図12は、図9のS26の分離処理を示すフローチャートである。分離処理では、ブレーキを再作動させて、ブレーキシュー4、5をドラム2に大きな押圧力で押しつけることで、固着したブレーキシュー4、5とドラム2とを分離する制御が行われる。
【0088】
まず繰り返し回数を示すNを0に設定する(S50)。制御手段106は、駆動モータ22をロック方向に回転させる(S52)。このときの電流目標値はAに設定され、これによりブレーキシュー4、5がドラム2の内周面2aを大きな力で押圧する。次に、制御手段106は、駆動モータ22を解除方向に回転させる(S54)。このときの電流目標値はCに設定され、これによりブレーキシュー4、5がドラム2の内周面2aに押圧された状態が維持される。たとえば坂路でこの制御を行う場合、駆動モータ22を完全に解除すると、S52の押圧動作により固着状態が解消された場合には、車両がずり下がることがある。そこで、車両がずり下がらないように、電流目標値をCに設定して、ある程度の制動力を維持しながら、この分離処理を実行する。図11に示すように、電流値Cは、電流値Aよりも小さく、電流値Bよりも大きくなるように設定されてよい。なお電流値Cは、電流値Aより小さければよく、ある程度の制動力を確保できるのであれば、たとえば電流値Bと同等、または電流値Bよりも小さく設定されてもよい。
【0089】
制御手段106は、Nを1インクリメントし(S56)、Nが所定回数に到達しているか判定する(S58)。所定回数は、たとえば3回に設定される。Nが所定回数に到達していなければ(S58のN)、S52、S54、S56のステップを再実行する。これにより、Nが所定回数に到達するまで、駆動モータ22によるブレーキの作動と解除とが複数回実行される。なお、ここでいうブレーキの解除は、制動力を緩めることを意味し、上記したように、必ずしもブレーキ制動力を0まで落とす必要はない。なお、たとえばGセンサ208の検出値により、車両が坂路に駐車されていないことが判定されていれば、S54における電流目標値は0であってもよい。このように、ブレーキの作動と解除を繰り返すことで、たとえばブレーキシュー4、5とドラム2を固着させている氷に強い衝撃を与えることができ、この氷を破壊する可能性を高めることが可能となる。
【0090】
Nが所定回数に到達すると(S58のY)、制御手段106は、駆動モータ22への通電を停止する(S60)。ここで、固着判定手段108は一対のブレーキシュー4、5の少なくとも一つがドラム2の内周面2aに固着しているか否かを再判定する(S62)。このとき、固着が生じていないことが判定されると(S62のN)、分離処理は終了する。一方、固着判定手段108により、まだ固着していることが検出されると(S62のY)、制御手段106は、運転者に、ブレーキ装置1に異常が生じていることを報知し(S64)、分離処理を終了する。この報知は、車載のスピーカやディスプレイを通じて行われてよい。なお、まだ固着していることが検出された場合には、固着状態が解消されるまで、S50から各ステップを再実行してもよい。
【0091】
以上、左右輪のブレーキ装置1を同期して制御する分離処理について説明した。この分離処理では、左右輪のブレーキ装置1を同時に駆動しており、電力消費は若干大きくなる。またブレーキの作動と解除の繰り返し処理において、S54では、完全にブレーキシュー4、5による押圧力を0にするのではなく、電流目標値をCに設定して、ある程度の押圧力を維持していた。この場合、駆動モータ22に電源が供給され続けるため、電力消費は少なくない。以下では、これらの点を改善した分離処理の変形例について説明する。
【0092】
図13は、分離処理の変形例を説明するための説明図である。この分離処理では、左右輪に設けられたブレーキ装置1のブレーキの作動と解除のタイミングがずらされる。この例では、固着判定手段108が固着を検出すると、まず制御手段106が、右輪用の駆動モータ22をロック方向に回転させる。このときの電流目標値はAに設定されており、駆動モータ22への供給電流が電流値Aまで到達するのにT1時間かかるとする。続いて、制御手段106は、右輪用の駆動モータ22の回転開始時からΔt時間遅れて、左輪用の駆動モータ22をロック方向に回転する。ロック動作は、右輪用の駆動モータ22と同じく、T1時間行われる。このように、右輪ブレーキと左輪ブレーキのロック動作を互いに異なる期間に実行することで、消費電力を低減することができる。
【0093】
制御手段106は、Gセンサ208から車両が停止している路面の傾斜角を受け取り、その傾斜角に応じて、期間Δtを設定し、ブレーキの作動と解除のタイミングを定める。たとえばΔt>T1であれば、図13に示されるように、右輪ブレーキのロック動作の終了後、左輪ブレーキのロック動作の開始前に、ブレーキが完全に解除された期間(ブレーキ完全解除期間)が生じる。このとき、路面の傾斜角が大きければ、車両のずり下がりが生じることがある。そのため、ずり下がりを抑制するために、制御手段106は、傾斜角が所定値αよりも大きければ、ΔtをT1以下となるように設定する。
【0094】
図14は、傾斜角と期間Δtの関係を示す。制御手段106は、傾斜角にしたがって、期間Δtを設定する。期間Δtの最大値はT2に設定される。この関係にしたがって、制御手段106は、傾斜角がαよりも大きければ、ΔtをT1に設定する。一方、傾斜角がαよりも小さければ、ΔtをT1より大きく、T2以下の値に設定する。
【0095】
図15は、ΔtをT1以下となるように設定したときの分離処理の変形例を説明するための説明図である。図示の例では、図14に示す関係にしたがって、ΔtがT1に等しく設定されている。ΔtをT1以下に設定することで、車両においては、右輪ブレーキまたは左輪ブレーキの少なくともいずれか一方が、ロック動作した状態となる。これにより、消費電力の増加を抑制しつつ、制動力を確保することができる。
【0096】
一方、制御手段106は、傾斜角が所定値αよりも小さければ、ΔtをT1より大きくなるように設定する。この状態は図13に示される。ここで所定値αは、全てのブレーキを完全に解除しても大きなずり下がりが生じない値に設定される。ブレーキ完全解除期間においては、両輪のブレーキが完全に解除された状態となるため、制御手段106は、このブレーキ完全解除期間を利用して、固着判定手段108に固着判定処理を実行させてもよい。このように、ブレーキ完全解除期間が設定できる場合には、その期間内に固着判定手段108が固着の有無を判定でき、固着状態が解消したことが判定されると、その時点で、制御手段106が、分離処理を中止できるという利点がある。
【0097】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0098】
実施形態では、ブレーキ制御装置100が、電気機械式のブレーキ装置1に搭載される例について説明したが、これに限らず、電気油圧式のブレーキ装置に搭載されてもよい。
【0099】
また、図9において、S24に示す固着判定処理およびS26に示す分離処理が、電流目標値設定処理を含んだパーキングブレーキ解除処理の後に行われるものとして説明したが、固着判定処理および分離処理は、たとえば目標値設定処理を含まないパーキングブレーキ解除処理の後に行われてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1・・・ブレーキ装置、2・・・ドラム、2a・・・内周面、13・・・ブレーキシュー駆動機構、20・・・ブレーキアクチュエータ、21・・・出力軸、22・・・駆動モータ、22a・・・回転軸、23・・・出力部、30・・・空転防止機構、31・・・切替用モータ、100・・・ブレーキ制御装置、102・・・受付手段、104・・・検知手段、106・・・制御手段、108・・・固着判定手段、200・・・EPBスイッチ、202・・・温度計、204・・・イグニッションキー、206・・・荷重センサ、208・・・Gセンサ、210・・・操作量検出手段、212・・・電流計、214・・・回転角センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するドラムと、
ドラムの内周面に押圧されることによって車輪に制動力を与える一対のブレーキシューと、
前記一対のブレーキシューに対し、それぞれが前記ドラムの内周面から離間する方向への付勢力を与える付勢手段と、
前記一対のブレーキシューを前記ドラムの内周面に押圧させてブレーキを作動する第1駆動手段と、
パーキングブレーキを作動する第2駆動手段と、
前記第1駆動手段および第2駆動手段を制御する制御手段と、
パーキングブレーキの解除時以前の作動状況を検知する検知手段と、を備え、
前記制御手段は、前記検知手段により検知された作動状況に基づいて、前記第1駆動手段による前記一対のブレーキシューの押圧力を設定することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記パーキングブレーキの解除指令を受け付ける受付手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記受付手段が解除指令を受け付けると、前記第2駆動手段にパーキングブレーキの解除動作を行わせる前に、前記第1駆動手段を作動させることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、車両走行中における通常のブレーキペダル踏み込み操作に応じて前記第1駆動手段により前記ブレーキシューを前記ドラムの内周面に押圧させる力よりも大きい押圧力を発生させることを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記検知手段は、車両のイグニッションオフからイグニッションオンまでのオフ期間を、前記パーキングブレーキの作動状況として検出し、
前記制御手段は、オフ期間が所定期間を超えていれば、第1押圧力を前記第1駆動手段により発生させ、オフ期間が所定期間以内であれば、第1押圧力よりも小さい第2押圧力を前記第1駆動手段により発生させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記検知手段は、気温を前記パーキングブレーキの作動状況として検出し、
前記制御手段は、気温が所定値以下であれば、第1押圧力を前記第1駆動手段により発生させ、気温が所定値よりも高ければ、第1押圧力よりも小さい第2押圧力を前記第1駆動手段により発生させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記一対のブレーキシューの少なくとも一つが前記ドラムの内周面に固着しているか否かを判定する固着判定手段と、をさらに備え、
前記固着判定手段により固着していることが判定された場合、前記制御手段は、第1押圧力を前記第1駆動手段により発生させることを特徴とする請求項4または5に記載のブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記固着判定手段は、前記第1駆動手段に含まれるモータの状態から、前記一対のブレーキシューの少なくとも一つが前記ドラムの内周面に固着しているか否かを判定することを特徴とする請求項6に記載のブレーキ制御装置。
【請求項8】
前記固着判定手段は、ストラット部における荷重値をもとに、前記一対のブレーキシューの少なくとも一つが前記ドラムの内周面に固着しているか否かを判定することを特徴とする請求項6または7に記載のブレーキ制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記固着判定手段により固着していることが判定された場合、前記第1駆動手段によるブレーキの作動と解除を複数回実行させることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、左右輪のブレーキの作動と解除のタイミングをずらすことを特徴とする請求項9に記載のブレーキ制御装置。
【請求項11】
前記制御手段は、ブレーキの作動と解除のタイミングを、車両が停止している路面の傾斜角に応じて設定することを特徴とする請求項9または10に記載のブレーキ制御装置。
【請求項12】
車輪と共に回転するドラムと、
ドラムの内周面に押圧されることによって車輪に制動力を与える一対のブレーキシューと、
前記一対のブレーキシューに対し、それぞれが前記ドラムの内周面から離間する方向への付勢力を与える付勢手段と、
前記一対のブレーキシューを前記ドラムの内周面に押圧させてブレーキを作動する第1駆動手段と、
パーキングブレーキを作動する第2駆動手段と、
前記第1駆動手段および第2駆動手段を制御する制御手段と、
前記パーキングブレーキの解除指令を受け付ける受付手段と、
前記一対のブレーキシューの少なくとも一つが前記ドラムの内周面に固着しているか否かを判定する固着判定手段と、を備え、
前記制御手段は、前記受付手段が解除指令を受け付けると、前記第2駆動手段にパーキングブレーキの解除動作を行わせる前に、前記第1駆動手段によりブレーキを作動させて、前記第2駆動手段にパーキングブレーキの解除動作を行わせた後に、前記第1駆動手段によりブレーキを解除させるものであって、
前記制御手段は、前記第2駆動手段にパーキングブレーキの解除動作を行わせた後に、前記固着判定手段により固着していることが判定された場合、前記第1駆動手段によりブレーキを再度作動させることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項13】
前記制御手段が、前記第2駆動手段にパーキングブレーキの解除動作を行わせてから、前記第1駆動手段にブレーキを解除させた後に、前記固着判定手段が固着しているか否かを判定することを特徴とする請求項12に記載のブレーキ制御装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記第2駆動手段によるパーキングブレーキの解除動作後に、車両走行中における通常のブレーキペダル踏み込み操作に応じて前記第1駆動手段により前記ブレーキシューを前記ドラムの内周面に押圧させる力よりも大きい押圧力を発生させることを特徴とする請求項12または13に記載のブレーキ制御装置。
【請求項15】
前記固着判定手段は、前記第1駆動手段に含まれるモータの状態から、前記一対のブレーキシューの少なくとも一つが前記ドラムの内周面に固着しているか否かを判定することを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項16】
前記固着判定手段は、ストラット部における荷重値をもとに、前記一対のブレーキシューの少なくとも一つが前記ドラムの内周面に固着しているか否かを判定することを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項17】
前記制御手段は、前記固着判定手段により固着していることが判定された場合、前記第1駆動手段によるブレーキの作動と解除を複数回実行させることを特徴とする請求項12から16のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項18】
前記制御手段は、左右輪のブレーキの作動と解除のタイミングをずらすことを特徴とする請求項17に記載のブレーキ制御装置。
【請求項19】
前記制御手段は、ブレーキの作動と解除のタイミングを、車両が停止している路面の傾斜角に応じて設定することを特徴とする請求項17または18に記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−241271(P2010−241271A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92352(P2009−92352)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】