説明

ブレードラバーの製造方法およびワイパブレード

【課題】払拭性に優れ、かつセミドライ状態での摩擦上昇を抑制可能なブレードラバーを製造できるようにする。
【解決手段】成形した一対のブレードラバー成形体に照射処理を行い生成したラジカル活性点を起点としてグラフト重合により性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる。また、性質の異なる2種類以上のモノマーは、ラジカル活性点の生成の前後いずれかで、ブレードラバー表面にモノマーを付着させる。性質の異なる2種類以上のモノマーとして疎水性モノマーと親水性モノマーとを用いると、疎水性モノマーにより疎水化処理を行うとともに、親水性モノマーにより親水化処理を行うことができる。これにより、製造されたブレードラバーは、ウエット状態ではウインドガラスとの密着性が向上して優れた払拭性が得られ、セミドライ状態では摩擦上昇を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドガラスを払拭するワイパブレードに設けられるブレードラバーの技術に関し、特に、親水処理されたブレードラバーに適用して有効なものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車、バス、トラック等の車両では、フロントウインドガラス、リアウインドガラス等のウインドガラスに付着した雨、雪、虫、前方を走行する車両により跳ね上げられた泥水等の付着物を払拭して運転者の視界を確保するためにワイパブレードが用いられる。
【0003】
このワイパブレードに設けられるブレードラバーは通常、ブレードラバーとガラスの摺動面との摩擦を配慮してブレードラバーを塩素処理し、ブレードラバーの表面を硬化させてガラス面との摩擦係数を下げている。
【0004】
しかし、塩素処理では初期の摩擦係数は低減するが、長時間使用すると硬化した部分が剥離してガラスとの摩擦係数が高くなって摺動性が悪化する問題があった。つまり、塩素処理は塩素によりゴムを劣化させてゴム表面を改質する方法である。そのため、改質されたゴム表面がガラスとの摺接を繰り返すことにより徐々に欠落して、払拭性が低下してしまうとともに、摩擦係数が高くなってしまい、低減された摩擦係数を長期にわたって維持できなくなることがあった。また、塩素処理ではハロゲンにより環境に負荷をかける問題があった。
【0005】
そのため、長期にわたってブレードラバー表面の低摩擦性を維持できるようにするために様々な技術が提案されている。例えば特許文献1では、天然ゴム組成物からなるワイパブレード本体やそのリップ部表面に形成したコーティング層に、撥水性成分を含む担持体を混練することにより、撥水性成分をワイパブレードから徐々に析出させて長期にわたって撥水性を維持できるワイパブレードが提案されている。
【0006】
また、イソシアネート処理液に含浸してラバー表面を硬化させたワイパブレード(例えば特許文献2参照)や、照射処理により生成されたラジカル活性点を起点に疎水性モノマーをグラフト重合して表面改質を行ったブレードラバー(例えば特許文献3参照)のように、塩素処理に代わる処理を行うことが提案されている。
【特許文献1】特開2004−50974号公報
【特許文献2】特開2002−161154号公報
【特許文献3】特開2008−24091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の提案では、ラバー表面を劣化させるという点では塩素処理と同様であるため、ブレードラバー表面の長期にわたる低摩擦性の維持が十分ではない。特許文献1および3の提案では、疎水化処理を行うことから雨滴払拭時のウエット状態でガラスと密着しにくく、ガラスに払拭ムラが生じやすい問題がある。
【0008】
一方、ブレードラバー表面に親水化処理を行うと、ウエット状態でガラスとの密着が良く払拭性が向上する。また、表面硬度が向上して晴天時や曇天時のようにガラスに水滴のないドライ状態での低摩擦化を図れる。
【0009】
しかし、親水化処理のみでは、ウエット状態とドライ状態との間の状態のときに摩擦が高くなる問題がある。つまり、ワイパブレードは、雨天時のウエット状態から雨が上がってガラスが乾き始めたときや霧雨時のように、ガラスの一部のみが濡れたセミドライと呼ばれる状態で最も摩擦抵抗が高くなる。ラバー表面の親水性が高いと、このセミドライ状態でガラスとの密着が強くなり、摩擦抵抗が上昇してしまう。
【0010】
本発明の目的は、払拭性に優れ、かつセミドライ状態での摩擦上昇を抑制可能なブレードラバーを製造できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のブレードラバーの製造方法は、断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、前記ブレードラバーを成形する工程と、成形された前記ブレードラバーの少なくとも前記リップ部に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着する工程と、前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着された部分に照射処理をして当該部分の表面にラジカル活性点を生成する工程と、生成された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明のブレードラバーの製造方法は、断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、前記ブレードラバーを成形する工程と、成形された前記ブレードラバーの少なくとも前記リップ部に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着する工程と、前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着された部分に照射処理をして当該部分の表面にラジカル活性点を生成するとともに、生成された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明のブレードラバーの製造方法は、断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、前記ブレードラバーを成形する工程と、成形された前記ブレードラバーの少なくとも前記リップ部に照射処理をして前記照射処理がされた部分の表面にラジカル活性点を生成する工程と、前記ラジカル活性点が生成された部分に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着する工程と、生成された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明のブレードラバーの製造方法は、断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、前記ブレードラバーを成形する工程と、成形された前記ブレードラバーの少なくともリップ部に照射処理をしてリップ部の表面にラジカル活性点を生成する工程と、前記ラジカル活性点が生成された部分に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着し、前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明のブレードラバーの製造方法は、断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、一対の前記リップ部が向き合うブレードラバー中間体を成形する工程と、成形された前記ブレードラバー中間体の少なくとも前記リップ部に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着する工程と、前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着された部分に照射処理をして当該部分の表面にラジカル活性点を生成する工程と、生成された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、前記ブレードラバー中間体を前記リップ部で切断することによって分離する工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明のブレードラバーの製造方法は、断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、一対の前記リップ部が向き合うブレードラバー中間体を成形する工程と、成形された前記ブレードラバー中間体の少なくとも前記リップ部に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着する工程と、前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着された部分に照射処理をして当該部分の表面にラジカル活性点を生成するとともに、生成された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、前記ブレードラバー中間体を前記リップ部で切断することによって分離する工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明のブレードラバーの製造方法は、断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、一対の前記リップ部が向き合うブレードラバー中間体を成形する工程と、成形された前記ブレードラバー中間体の少なくとも前記リップ部に照射処理をして当該部分の表面にラジカル活性点を生成する工程と、前記ラジカル活性点が生成された部分に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着する工程と、生成された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、前記ブレードラバー中間体を前記リップ部で切断することによって分離する工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明のブレードラバーの製造方法は、断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、一対の前記リップ部が向き合うブレードラバー中間体を成形する工程と、成形された前記ブレードラバー中間体の少なくとも前記リップ部に照射処理をして当該部分の表面にラジカル活性点を生成する工程と、前記ラジカル活性点が生成された部分に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着し、前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、前記ブレードラバー中間体を前記リップ部で切断することによって分離する工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明のワイパブレードは、車両のウインドガラスを払拭するワイパブレードであって、断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部とを結合するネック部とを有するブレードラバーと、前記ブレードラバーのリップ部表面上に付着されるとともに、前記ブレードラバーに照射処理がされることによって前記ブレードラバーの表面に形成されたラジカル活性点にグラフト重合によって結合された性質の異なる2種類以上のモノマーとを有していることを特徴とする。
【0020】
本発明のワイパブレードは、車両のウインドガラスを払拭するワイパブレードであって、断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーと、前記ブレードラバーのリップ部の表面の両側面に付着されるとともに、前記ブレードラバーに照射処理がされることによって前記ブレードラバーの表面に形成されたラジカル活性点にグラフト重合によって結合された性質の異なる2種類以上のモノマーとを含むことを特徴とする。
【0021】
本発明のワイパブレードは、前記性質の異なる2種類以上のモノマーは、疎水性モノマーと親水性モノマーとを含むことを特徴とする。
【0022】
本発明のワイパブレードは、前記疎水性モノマーは、分子中にビニル基(CH=CH−)、イソプロペニル基(CH=C(CH)−)およびアリル基(CH=CHCH−)の少なくともいずれかを有する重合性モノマーであることを特徴とする。
【0023】
本発明のワイパブレードは、前記疎水性モノマーは、分子末端に炭化水素、有機ケイ素または炭化フッ素の疎水性構造を有するか、またはグラフト重合後に2次反応によって疎水性を付与できる官能基を有する化合物からなることを特徴とする。
【0024】
本発明のワイパブレードは、前記疎水性モノマーは、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ビニル、スチレン、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸エチル、アクリル酸ビニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリメチルシリル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、アクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、3−(アクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリル酸1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチル、アクリル酸1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルおよびメタアクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチルおよびこれらの誘導体の少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
【0025】
本発明のワイパブレードは、前記親水性モノマーは、ヒドロキシエチルメタアクリレート(2−Hydroxyethyl methacrylate:HEMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(2−Hydroxyethyl acrylate:HEA)、グリシジルメタアクリレート(Glycidyl methacrylate:GMA)、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸およびこれらの金属塩の少なくともいずれかを有する重合性モノマーであることを特徴とする。
【0026】
本発明のワイパブレードは、前記ブレードラバーのリップ部の先端面には、前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ブレードラバーの少なくともリップ部に電子線照射処理により生成されたラジカル活性点を起点としてグラフト重合により性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させるので、ブレードラバー表面に親水化処理と疎水化処理とを行うことにより両方の処理の利点を付与することができる。つまり、ウエット状態ではウインドガラスとの密着性が向上して優れた払拭性が得られ、セミドライ状態ではブレードラバー表面が撥水性(疎水性)を示すことにより摩擦上昇を抑制できる。
【0028】
これにより、払拭性に優れ、かつセミドライ状態での摩擦上昇を抑制可能なブレードラバーを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0030】
図1は本発明の一実施の形態であるブレードラバーが設けられたワイパブレードを示す斜視図であり、図2は図1のA−A線に沿う断面図であり、図3(a)、(b)はそれぞれ図1に示す保持部の詳細を示す説明図である。
【0031】
図1に示すように、ワイパブレード11は車両12のワイパアーム13の先端に取り付けられ、図示しないワイパモータの駆動によりワイパアーム13が揺動すると、ワイパアーム13とともに揺動して車両12のフロントウインドガラス14(以下、ウインドガラス14とする。)を払拭する。
【0032】
このワイパブレード11は、ウインドガラス14の面上に直接接触するブレードラバー15とブレードラバー15を保持するラバーホルダ16とを有し、ラバーホルダ16の長手方向の両側には一対のカバー17が設けられている。
【0033】
図2に示すように、ブレードラバー15は、断面矩形のヘッド部21とリップ部22およびネック部23とを備えた長手方向に略一様断面の棒状に形成されており、リップ部22にてウインドガラス14の面上に接触するようになっている。ネック部23はヘッド部21やリップ部22に対して払拭方向の幅が狭く形成されており、これによりリップ部22はヘッド部21に対して払拭方向に傾動自在に結合されている。
【0034】
ヘッド部21とネック部23との間にはそれぞれ払拭方向の両側面に開口するとともに長手方向に延びる保持溝24が形成され、また、ヘッド部21の両側面にはそれぞれ装着溝21aが長手方向に延びて形成されている。そして、これらの装着溝21aにはそれぞれ板ばね部材25が装着されている。
【0035】
板ばね部材25は鋼板等の板材を打ち抜き加工することによりブレードラバー15と同程度の長さ寸法の平板状に形成され、ウインドガラス14に垂直な方向に弾性変形自在となっている。つまり、板ばね部材25が装着されたブレードラバー15は板ばね部材25と一体的にウインドガラス14に垂直な方向つまりその湾曲度合いを変化させる方向に弾性変形自在となっている。また、板ばね部材25は自然状態では、その弾性変形自在な方向に向けてウインドガラス14の曲率より強く湾曲しており、これにより、板ばね部材25が装着されたブレードラバー15もウインドガラス14から離れた状態ではウインドガラス14よりも強く湾曲している。
【0036】
なお、図示する場合では、板ばね部材25は鋼板により形成されているが、これに限らず、例えば硬質の樹脂等により形成するなど、ウインドガラス14に垂直な方向に弾性変形自在なものであればよい。
【0037】
ラバーホルダ16は、樹脂材料により長手方向に延びる天壁部16aと天壁部16aの両側部からウインドガラス14に向けて延びる一対の側壁部16bとを備えた断面コの字形状に形成され、その長さはブレードラバー15のほぼ半分程度に形成されている。ブレードラバー15はその中間部分がラバーホルダ16の内部に配置されてラバーホルダ16により覆われており、リップ部22のみが外部に露出する状態となっている。また、図1に示すように、一方の側壁部16bの長手方向のほぼ中間部には取付部26が固定されており、ラバーホルダ16はこの取付部26においてワイパアーム13の先端に取り付けられている。さらに、天壁部16aにはフィン27が一体に形成されており、このフィン27によりワイパブレード11の空力特性を向上させるようになっている。
【0038】
図1に示すように、ラバーホルダ16の長手方向の一端(ワイパブレード11をワイパアーム13に取り付けたときにワイパアーム13の揺動中心に近い側となる側)には保持部31が設けられている。図3(a)に示すように、保持部31は一対の保持爪32(図中は一方側のみを示すが他方側も同様の保持爪が設けられる。)を備えている。これらの保持爪32は、ブレードラバー15の長手方向に直交し且つ払拭方向に平行な方向に向けて側壁部16bから突出する断面矩形の突起状に形成され、それぞれ保持溝24に係合してブレードラバー15を保持している。また、ブレードラバー15には各保持爪32を長手方向から挟む一対のストッパ部33a,33bが設けられており、これらのストッパ部33a,33bにより保持爪32はブレードラバー15に対して保持溝24に沿う方向への移動が規制されている。つまり、ブレードラバー15は保持部31においては長手方向への位置決めが成された状態でラバーホルダ16に保持されている。
【0039】
同様に、ラバーホルダ16の長手方向の他端には保持部34が設けられており、図3(b)に示すように、この保持部34は、それぞれ断面矩形に形成される一対の保持爪35(図中は一方側のみを示すが他方側も同様の保持爪が設けられる。)を備え、これらの保持爪35は保持溝24に係合し、これによりブレードラバー15を保持している。また、保持爪35が係合する部分ではブレードラバー15にはストッパ部は設けられておらず、保持爪35は保持溝24に沿って移動自在となっている。つまり、ブレードラバー15は保持部34においてはラバーホルダ16に対して軸方向に移動自在に保持されている。
【0040】
このように、このワイパブレード11では、ラバーホルダ16の長手方向の両端に一対の保持部31,34を設け、これらの保持部31,34の2点においてブレードラバー15を保持するようにしている。したがって、ワイパアーム13からの押え力が取付部26を介してラバーホルダ16に加えられると、その押え力はラバーホルダ16の両端の2点、つまり各保持部31,34からブレードラバー15に加えられ、これによりブレードラバー15は弾力的にウインドガラス14に接触する。
【0041】
次に、本発明のブレードラバーの製造方法について説明する。図4(a)〜(d)は、本発明のブレードラバーの製造方法の手順を概略的に示す概略手順図である。図4(a)〜(d)に示すように、上述のブレードラバー15は、このブレードラバーを成形する工程、ブレードラバーに照射処理によりラジカル活性点を生成する工程、ラジカル活性点を起点としてグラフト重合によりモノマーを結合させる工程およびブレードラバーのリップ部を長手方向に切断する工程を経て製造される。
【0042】
図4(a)に示す工程でブレードラバーを成形するために用いるゴムとしては、通常知られたゴムのいずれであってもよい。例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、フッ素ゴム(FKM)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、水素化ニトリルゴム(水素化NBR)、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、多硫化ゴム(T)、ウレタンゴム(U)などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
これらのゴム材は、加硫剤(架橋剤)、加硫促進助剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、シランカップリング剤、シリカ、カーボンブラック等の通常知られた添加剤を配合してプレス成形等の従来公知の方法によりブレートラバーに成形することができる。
【0044】
図4(b)に示す工程で成形したブレードラバーにラジカル活性点を生成するための照射処理としては、例えば、電子線照射処理、紫外線照射処理、プラズマ照射処理、放射線(α線、β線、γ線、X線)照射処理、レーザ線照射処理、イオンビーム照射処理、コロナ放電照射処理等の活性化を誘引する線源による照射処理が挙げられ、これらの中でも処理効率が高い等の観点から、電子線照射処理が特に好ましい。このような照射処理を施すことにより、ブレードラバーにラジカル活性点が生成され、図4(c)に示す工程でラジカル活性点が起点となってグラフト重合反応が進行する。
【0045】
図5(a)、(b)は、それぞれ照射処理の反応形態を示す説明図である。なお、図5(a)、(b)では、ブレードラバーが切断される前、つまり一対のブレードラバーのリップ部が向き合うように成形されたブレードラバーのリップ部のみを図示している。図5(a)、(b)に示すように、生成するラジカル活性点を起点としてグラフト重合反応を促進させる照射処理としては2つの手法が挙げられる。
【0046】
図5(a)に示す処理は、ゴムに電子線等を照射してラジカル活性点を生成した後、ブレードラバー表面にモノマーを付着させる工程を経て、グラフト重合により反応物質(モノマー)を結合させる、つまり予め照射処理をしてラジカル活性点を生成する前照射処理である。前照射処理では、照射処理およびグラフト重合反応いずれも窒素雰囲気中で行うことが好ましい。前照射処理の吸収線量は脱酸素状態で50〜500kGyが好ましい。なお、図5(a)では、ラジカル活性点を生成した後、モノマーを付着させているが、これに限らず、ブレードラバーにモノマーを付着させた後、ラジカル活性点を生成してもよい。
【0047】
図5(b)に示す処理は、ラジカル活性点の生成とグラフト重合とを同時に行う同時照射処理である。同時照射処理では、例えばグラフト重合に用いる反応物質を塗布や浸漬等によりブレードラバーの表面に付着させた状態で、上述のラジカル活性点を生成するための電子線等による照射を行っている。同時照射処理の吸収線量は10〜100kGyが好ましい。なお、本発明では、前照射処理および同時照射処理のいずれの処理によってもブレードラバーを製造することができる。なお、図5(b)では、ブレードラバーの表面にモノマーを付着させた後、ラジカル活性点を生成しているが、これに限らず、ラジカル活性点を生成した後、モノマーを付着させてもよい。
【0048】
図4(c)に示す工程でグラフト重合は、通常知られた方法により行うことができるが、グラフト重合に用いる重合性モノマーとしては、性質の異なる2種類以上のモノマーを用いる。この性質の異なる2種類以上のモノマーとしては、例えば疎水性モノマーと親水性モノマーとが挙げられる。つまり、ブレードラバーの表面に、疎水性モノマーにより疎水化処理を行うとともに、親水性モノマーにより親水化処理を行う。
【0049】
疎水性モノマーとしては、分子中にビニル基(CH=CH−)、イソプロペニル基(CH=C(CH)−)およびアリル基(CH=CHCH−)の少なくともいずれかを有する重合性モノマーであって、分子末端に炭化水素、有機ケイ素または炭化フッ素の疎水性構造を有するか、グラフト重合後に2次反応によって疎水性を付与できる官能基を有する化合物が挙げられる。
【0050】
このような疎水性モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ビニル、スチレン、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸エチル、アクリル酸ビニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリメチルシリル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、アクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、3−(アクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリル酸1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチル、アクリル酸1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタアクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチル、これらの誘導体などが挙げられる。これらの疎水性モノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
親水性モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルメタアクリレート(2−Hydroxyethyl methacrylate:HEMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(2−Hydroxyethyl acrylate:HEA)、グリシジルメタアクリレート(Glycidyl methacrylate:GMA)、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、これらの金属塩などが挙げられる。これらの親水性モノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
疎水化処理および親水化処理の順序としては、いずれを先に行ってもよいが、親水化処理を先に行った後に疎水化処理を行うことが、ラバー表面が反応溶液や水を弾かずに容易に親水化処理がしやすいために好ましい。また、処理効率の観点からは、疎水化処理と親水化処理とを同時に行うことが好ましい。
【0053】
ここで、親水化処理と疎水化処理とを別々に行う場合には、図4(b)に示す工程を経てラジカル活性点を生成した後、図4(c)に示す工程により一方の処理を行ったならば、再度図4(b)に示す工程に戻ってラジカル活性点を生成した後に図4(c)に示す工程で他方の処理を行う。親水化処理と疎水化処理とを同時に行う場合には、一回の図4(b)および(c)に示す工程により双方の処理を行う。
【0054】
以上説明したブレードラバーはリップ部が互いに向き合うようにして形成された一対のブレードラバー成形体(ブレードラバー中間体)として製造される。そして、一対のブレードラバー成形体は、図4(d)に示す工程でリップ部において長手方向に切断されることによりブレードラバーが形成される。
【0055】
図6(a)は図2のリップ部のみにモノマーが結合された状態を示す拡大図であり、図6(b)は図2のブレードラバー全体にモノマーが結合された状態を示す拡大図である。なお、図6(a)、(b)ではモノマーが結合している部分を斜線で表している。一対のラバー成形体はグラフト重合されたモノマーが付着した状態で切断されるため、図6(a)、(b)に示すように、ブレードラバーの切断面(先端面)36にはモノマーが付着していない。通常ブレードラバー15は、リップ部22の両側面37a、37bと切断面36との境界となるエッジ部分でウインドガラスを払拭するため、モノマーが結合している両側面37a、37bによりウインドガラスを払拭することができ、モノマーが付着していない切断面36でウインドガラスを払拭することがない。また、ブレードラバー成形体のヘッド部などのウインドガラスに接触しない部分には、上述した電子線等のラジカル活性点を生成するための照射およびグラフト重合処理を行わなくてよい。したがって、電子線等を照射しない部分は予めマスキングを行い、図6(a)、(b)に示す例のようにブレードラバー成形体のリップ部22などの必要な部分のみに電子線等の照射を行ってもよい。
【0056】
このように、本発明では、ブレードラバー表面に照射処理により生成したラジカル活性点を起点としてグラフト重合により性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させるので、例えば親水化処理と疎水化処理とのように複数の表面改質処理を行うことにより、ブレードラバーに双方の処理の利点を付与することができる。
【0057】
つまり、親水化処理によりブレードラバー表面に吸水性が付与され、雨滴払拭時のウエット状態で水を吸って軟化するので、ウインドガラスとの密着性が増して払拭ムラの少ない緻密な払拭ができる。また、晴天時や曇天時のようにガラスに水滴のないドライ状態ではブレードラバー表面が乾燥して硬度が高くなり、ウインドガラスとの摩擦を低減することができる。
【0058】
そして、疎水化処理により水との接触角が大幅に上昇して高い撥水性を示すので、雨が上がってガラスが乾き始めたときや霧雨時のような、ウインドガラスの一部のみが濡れて摩擦抵抗が最も高くなるセミドライ状態での吸水を防ぎやすくなる。すなわち、セミドライ状態で吸水があると、ブレードラバー表面がウインドガラスと密着して摩擦が高くなるが、高い撥水性によりセミドライ状態での吸水を防ぐことでブレードラバー表面のウインドガラスに対する摩擦上昇を抑制できるのである。
【0059】
さらに、ブレードラバー表面に照射処理により生成したラジカル活性点を起点としてグラフト重合によりモノマーを結合させるので、表面処理層がブレードラバーの成形に用いられたゴムと剥離し難く、耐久性に優れたブレードラバーが得られる。
【0060】
さらに、照射処理によりハロゲンを使用せずに表面処理ができるので、環境に負荷をかけずにブレードラバーを製造することができる。
【0061】
以上、本発明者によってなされた発明を、実施の形態及び実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0062】
例えば、本実施の形態においては、ブレードラバー15はリップ部22が互いに向き合うようにして形成された一対のブレードラバー成形体として製造され、リップ部22において長手方向に切断されることによりブレードラバー15が形成されるが、これに限らず、当初から別々にブレードラバー15を成形して、切断工程を省略してもよい。
【0063】
また、本実施の形態においては、ワイパブレード11は車両12のフロントウインドガラス14を払拭するものとされているが、これに限らず、車両12のリアウインドガラスなどを払拭するものであってもよい。
【0064】
さらに、本実施の形態においては、板ばね部材25はブレードラバー15の装着溝21aに装着されているが、これに限らず、板ばね部材25を接着等によりブレードラバー15に直接固定する構造としてもよい。
【0065】
さらに、本発明は、タンデム式、対向払拭式等、様々な形式のワイパ装置に用いられるワイパブレードに適用することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
〔実験1〕吸水性の確認
EPDM100phrに加硫剤5phr、酸化亜鉛5phr、ステアリン酸2phr、加硫促進助剤1phr、カーボンブラック50phrを配合してプレス成形により一対のブレードラバー成形体を成形した。
【0067】
このブレードラバー成形体を親水性モノマーとしてのHEMA濃度50重量%の水溶液に浸漬させ、25℃温度下で電子線20kGyの図5(b)に示した同時照射処理により、電子線照射によるラジカル活性点の生成とHEMAのグラフト重合とを同時に行うことで、ブレードラバー成形体の表面に親水化処理をした。次に、ブレードラバー成形体を疎水性モノマーとしてのメタクリル酸トリメトキシシリルプロピル(MPTS)50重量%のメタノール溶液に浸漬させた。このメタノール溶液に、25℃温度下で電子線10kGyの図5(b)に示した同時照射により、電子線照射によるラジカル活性点の生成とMPTSのグラフト重合とを同時に行うことで、ブレードラバー成形体の表面に疎水化処理をした。
【0068】
親水化処理前の未処理段階、親水化処理のみを行った段階および親水化処理と疎水化処理との双方を行った段階のそれぞれのブレードラバー成形体について、表面に全く水滴がないドライ状態と、表面が十分に湿潤したウエット状態とにおけるブレードラバー表面の表面硬度を、高分子計器株式会社製マイクロ硬度計により測定した。結果を表1および図7のグラフに示す。
【0069】
【表1】

表1および図7の結果より、親水化処理を行ったブレードラバー成形体の表面にさらに疎水化処理を行っても、ドライ状態およびウエット状態の双方で未処理段階からの表面硬度変化がおこることがわかった。つまり、親水化処理を行ったブレードラバー成形体の表面上に疎水化処理を行っても、表面処理層の吸水性が維持されてウエット状態で水を吸って軟化する。これにより、降雨時にブレードラバーが軟化して払拭対象のガラスに対する追従性が向上し、高い払拭性を示すことが期待できる。
【0070】
〔実験2〕撥水性の確認
上記実験1の未処理、親水化処理後、疎水化処理後の各ブレードラバー成形体について、マイクロビュレットにて2μlのイオン交換水を表面処理面に滴下し、液滴の形状から接触角を実測した。結果を表2および図8に示す。
【0071】
【表2】

表2および図8の結果より、ブレードラバー成形体表面の水の接触角は、親水化処理により大きく低下するが、さらに疎水化処理を行うと大幅に上昇して高い撥水性を示すことがわかった。このことよりセミドライ状態での摩擦上昇抑制が期待できる。
【0072】
〔実験3〕払拭性評価
上記実験1で親水化処理および疎水化処理をしたブレードラバー成形体を切断してブレードラバーを製造した。また、親水化処理をしなかったことのみが異なるブレードラバー成形体でも、同様にしてブレードラバーを製造した。それぞれのブレードラバーについて、図1に示したワイパブレードを組み立てJIS D5710に準じて払拭性を評価した。
【0073】
つまり、ブレードラバーの摺動面積のうち中心点から両端への4分の1ずつ部分の摺動面積(Mゾーン)およびMゾーン以外の摺動面積(Sゾーン)における、各種幅の拭き残しの数値を測定した。各種幅の拭き残しは、幅0.5mm以下の極めて細かい筋状の拭き残し(ヘアライン)、幅1mm以下の細かい筋状の拭き残し(ヘビアライン)および幅1〜20mm程度の帯状の拭き残し(ワイドライン)である。
【0074】
その結果、親水化処理および疎水化処理をしたブレードラバー成形体を切断して製造した本発明のブレードラバーの方が、親水化処理をしなかったブレードラバーに比して各種拭き残しが少なく、払拭性が優れることがわかった。
【0075】
また、親水性モノマー、疎水性モノマーをそれぞれ代えた以外は同様にして製造したブレードラバーについても、親水化処理および疎水化処理をした場合と親水化処理をしなかった場合とで上述の払拭性の評価を行った。いずれも親水化処理および疎水化処理の双方を行った本発明のブレードラバーの方が、親水化処理をしなかったブレードラバーに比して、各種拭き残しが少なく払拭性に優れることがわかった。
【0076】
〔実験4〕セミドライ状態での摩擦抑制上昇評価
上記実験1で払拭性評価した、親水化処理および疎水化処理の双方を行った本発明の各ブレードラバーについて、下記条件で摺動させながら摩擦抵抗の経時変化を調べた。また、それぞれのブレードラバーに対して疎水化処理をしなかったことのみが異なるブレードラバーを製造し、同様にして摩擦係数の経時変化を調べた。
【0077】
試料幅:10mm
荷重:15gf
摺動半径:70mm
回転数:173.5rpm
摺動速度:1.3m/s
摺動状態:ウエット→ドライ
湿度:25℃70%
相手材:ガラス板
その結果、親水化処理および疎水化処理をした本発明のブレードラバーは、ウエット状態からドライ状態になるまでの間のセミドライ状態でも、摩擦抵抗の上昇が極めて少なかった。一方、疎水化処理をしなかったブレードラバーは、セミドライ状態での摩擦抵抗の上昇が大きかった。このことより、親水化処理および疎水化処理をした本発明のブレードラバーは、セミドライ状態での摩擦上昇の抑制効果に極めて優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、車両のウインドガラスを払拭するワイパブレードに設けられるブレードラバーに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施の形態であるブレードラバーが設けられたワイパブレードを示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ図1に示す保持部の詳細を示す説明図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明のブレードラバーの製造方法の手順を概略的に示す概略手順図である。
【図5】(a)、(b)は、それぞれ照射処理の反応形態を示す説明図である。
【図6】(a)は図2のリップ部のみにモノマーが結合された状態を示す拡大図であり、(b)は図2のブレードラバー全体にモノマーが結合された状態を示す拡大図である。
【図7】実験1の吸水性の確認結果を示すグラフである。
【図8】実験2の撥水性の確認結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0080】
11 ワイパブレード
12 車両
13 ワイパアーム
14 フロントウインドガラス
15 ブレードラバー
16 ラバーホルダ
16a 天壁部
16b 側壁部
17 カバー
21 ヘッド部
21a 装着溝
22 リップ部
23 ネック部
24 保持溝
25 板ばね部材
26 取付部
27 フィン
31 保持部
32 保持爪
33a,33b ストッパ部
34 保持部
35 保持爪
36 切断面(先端面)
37a 両側面
37b 両側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、
前記ブレードラバーを成形する工程と、
成形された前記ブレードラバーの少なくとも前記リップ部に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着する工程と、
前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着された部分に照射処理をして当該部分の表面にラジカル活性点を生成する工程と、
生成された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、
を有することを特徴とするブレードラバーの製造方法。
【請求項2】
断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、
前記ブレードラバーを成形する工程と、
成形された前記ブレードラバーの少なくとも前記リップ部に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着する工程と、
前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着された部分に照射処理をして当該部分の表面にラジカル活性点を生成するとともに、生成された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、
を有することを特徴とするブレードラバーの製造方法。
【請求項3】
断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、
前記ブレードラバーを成形する工程と、
成形された前記ブレードラバーの少なくとも前記リップ部に照射処理をして前記照射処理がされた部分の表面にラジカル活性点を生成する工程と、
前記ラジカル活性点が生成された部分に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着する工程と、
生成された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、
を有することを特徴とするブレードラバーの製造方法。
【請求項4】
断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、
前記ブレードラバーを成形する工程と、
成形された前記ブレードラバーの少なくともリップ部に照射処理をしてリップ部の表面にラジカル活性点を生成する工程と、
前記ラジカル活性点が生成された部分に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着し、前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、
を有することを特徴とするブレードラバーの製造方法。
【請求項5】
断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、
一対の前記リップ部が向き合うブレードラバー中間体を成形する工程と、
成形された前記ブレードラバー中間体の少なくとも前記リップ部に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着する工程と、
前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着された部分に照射処理をして当該部分の表面にラジカル活性点を生成する工程と、
生成された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、
前記ブレードラバー中間体を前記リップ部で切断することによって分離する工程と、
を有することを特徴とするブレードラバーの製造方法。
【請求項6】
断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、
一対の前記リップ部が向き合うブレードラバー中間体を成形する工程と、
成形された前記ブレードラバー中間体の少なくとも前記リップ部に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着する工程と、
前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着された部分に照射処理をして当該部分の表面にラジカル活性点を生成するとともに、生成された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、
前記ブレードラバー中間体を前記リップ部で切断することによって分離する工程と、
を有することを特徴とするブレードラバーの製造方法。
【請求項7】
断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、
一対の前記リップ部が向き合うブレードラバー中間体を成形する工程と、
成形された前記ブレードラバー中間体の少なくとも前記リップ部に照射処理をして当該部分の表面にラジカル活性点を生成する工程と、
前記ラジカル活性点が生成された部分に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着する工程と、
生成された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、
前記ブレードラバー中間体を前記リップ部で切断することによって分離する工程と、
を有することを特徴とするブレードラバーの製造方法。
【請求項8】
断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーの製造方法であって、
一対の前記リップ部が向き合うブレードラバー中間体を成形する工程と、
成形された前記ブレードラバー中間体の少なくとも前記リップ部に照射処理をして当該部分の表面にラジカル活性点を生成する工程と、
前記ラジカル活性点が生成された部分に性質の異なる2種類以上のモノマーを付着し、前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着された前記ラジカル活性点にグラフト重合により前記性質の異なる2種類以上のモノマーを結合させる工程と、
前記ブレードラバー中間体を前記リップ部で切断することによって分離する工程と、
を有することを特徴とするブレードラバーの製造方法。
【請求項9】
車両のウインドガラスを払拭するワイパブレードであって、断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部とを結合するネック部とを有するブレードラバーと、
前記ブレードラバーのリップ部表面上に付着されるとともに、前記ブレードラバーに照射処理がされることによって前記ブレードラバーの表面に形成されたラジカル活性点にグラフト重合によって結合された性質の異なる2種類以上のモノマーとを有していることを特徴とするワイパブレード。
【請求項10】
車両のウインドガラスを払拭するワイパブレードであって、断面矩形に形成されたヘッド部と、車両のウインドガラスの面上に接するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部を結合するネック部とを有するブレードラバーと、
前記ブレードラバーのリップ部の表面の両側面に付着されるとともに、前記ブレードラバーに照射処理がされることによって前記ブレードラバーの表面に形成されたラジカル活性点にグラフト重合によって結合された性質の異なる2種類以上のモノマーとを含むことを特徴とするワイパブレード。
【請求項11】
請求項9または10に記載のワイパブレードにおいて、前記性質の異なる2種類以上のモノマーは、疎水性モノマーと親水性モノマーとを含むことを特徴とするワイパブレード。
【請求項12】
請求項11に記載のワイパブレードにおいて、前記疎水性モノマーは、分子中にビニル基(CH=CH−)、イソプロペニル基(CH=C(CH)−)およびアリル基(CH=CHCH−)の少なくともいずれかを有する重合性モノマーであることを特徴とするワイパブレード。
【請求項13】
請求項11または12に記載のワイパブレードにおいて、前記疎水性モノマーは、分子末端に炭化水素、有機ケイ素または炭化フッ素の疎水性構造を有するか、またはグラフト重合後に2次反応によって疎水性を付与できる官能基を有する化合物からなることを特徴とするワイパブレード。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、前記疎水性モノマーは、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ビニル、スチレン、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸エチル、アクリル酸ビニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリメチルシリル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、アクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、3−(アクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリル酸1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチル、アクリル酸1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルおよびメタアクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチルおよびこれらの誘導体の少なくともいずれかを含むことを特徴とするワイパブレード。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、前記親水性モノマーは、ヒドロキシエチルメタアクリレート(2−Hydroxyethyl methacrylate:HEMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(2−Hydroxyethyl acrylate:HEA)、グリシジルメタアクリレート(Glycidyl methacrylate:GMA)、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸およびこれらの金属塩の少なくともいずれかを有する重合性モノマーであることを特徴とするワイパブレード。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれか1項に記載のワイパブレードにおいて、前記ブレードラバーのリップ部の先端面には、前記性質の異なる2種類以上のモノマーが付着されていないことを特徴とするワイパブレード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−23710(P2010−23710A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188547(P2008−188547)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】