説明

ブレード製造方法

【課題】第1層、第2層、及び第1層と第2層との間に配置されたメンブレンを超塑性成形し、拡散接合することによってターボマシン用のブレードを製造する製造方法を提供する。
【解決手段】第1層16とメンブレン2との間に拡散接合防止材料を第1の所定のパターンで塗布し、第2層18とメンブレン2との間に拡散接合防止材料を第2の所定のパターンで塗布する。その後拡散接合して一体構造とし、加圧流体を供給して超塑性成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超塑性成形及び拡散接合によってターボマシン用のブレードを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の中空ターボマシンブレード、特にジェットエンジン用ファンブレードを、金属製加工物の超塑性成形及び拡散接合によって製造することは既知である。これらの加工物は、ブレードの圧力面及び吸引面を形成する。金属製加工物は、単体金属、金属合金、及び繊維強化金属(metal matrix composite)を含んでも良い。これらの金属製加工物のうちの少なくとも一方が、超塑性伸長可能であってもよい。一つの既知のプロセスでは、接合されるべき加工物の表面を清浄にし、一つ又はそれ以上の加工物の少なくとも一つの表面の所定の領域を、拡散接合を阻止する拡散接合防止(stop−off:ストップオフ)材料(すなわち、拡散接合防止材又は拡散接合防止剤)でコーティングする。加工物をスタック即ち積み重ねをなして配置し、加工物の縁部を、パイプが加工物に溶接される箇所を除いて互いに溶接し、アッセンブリを形成する。パイプにより、負圧又は不活性ガス圧力をアッセンブリの内部に加えることができる。アッセンブリをオートクレーブに入れて加熱し、バインダーを材料から「ベークアウト(bake out:焼出し)」し、拡散接合を阻止する。次いで、パイプを使用してアッセンブリから気体を除去でき、パイプをシールする。シール済のアッセンブリを圧力容器に入れ、加熱及びプレスによって加工物を互いに拡散接合し、一体の構造を形成する。拡散接合は、マット(艶消し)加工が施された二つの表面を、界面前後の原子相互交換を可能にする温度条件、時間条件、及び圧力条件の下で、互いに押し付けたときに行われる。第1パイプを取り外し、この第1パイプが配置されていた位置で、第2パイプを、拡散接合されたアッセンブリに装着する。一体の構造を適当な形状のダイ間に配置し、オートクレーブに入れる。一体の構造及びダイを加熱し、加圧流体を第2パイプを通して一体の構造の内部に供給し、少なくとも一方の加工物を超塑性成形し、ダイと形状が一致した物品を製造する。
【0003】
上文中に説明した中空構造に加え、上文中に説明したプロセスを行う前に、メンブレン(膜)2を金属製加工物4、6間に挿入することもまた既知である(例えば、図1を参照されたい)。メンブレンと隣接した加工物との間の拡散接合箇所は、メンブレン(又は夫々の加工物)の各側の予め選択された領域に拡散接合防止材料を塗布することによって制御できる。次いで、ブレードを膨張させると、メンブレンは、拡散接合を行うことができる箇所で加工物に付着し、これによって内部構造を提供できる(例えば、図2に示すワーレン桁(Warren girder)型構造を参照されたい)。
【0004】
様々な内部構造が提案されてきた。これらの構造を形成するために拡散接合防止材料の予め選択された様々なパターンが必要とされてきた。例えば、両側の一連の重なっていないドットを除いて、両側に拡散接合防止材料を塗布することによって、卵パック(egg box)型内部構造を提供できる。このような内部構造を備えて製造されたブレードは非常に剛性であるが、この剛性の裏返しとして、これらのブレードは、バードストライクによる破損を被り易い。
【0005】
この問題点を解決するため、米国特許第5、479、705号には、ワーレン桁型断面を持つ内部構造が開示されている。この内部構造は、拡散接合防止材料がない、交互のストリップ10、12からなる、メンブレンの両側に設けられた所定のパターンによって形成される(例えば、図1及び図2を参照されたい)。このようなブレードは、ブレードが割れるのでなくつぶれる(降伏する)ようにできる潰れ(crumple)ゾーンが存在するため、バードストライクに対する耐久性が良好である。しかしながら、ブレードの膨張中、メンブレンは、ブレードのチップ(先端部)と上述のストリップの縁部との間の領域で、圧力面加工物に付着してしまう。これは、拡散接合防止材料が圧力面に固着し、この領域で十分な量のガスをメンブレンの両側に流すことができないためである。この固着により、超塑性プロセス中の膨張が妨げられてしまう。このことは、膨張プロセス中に大きく移動しなければならない圧力面(例えば、図3b(ii)に示す圧力面18を参照されたい)について特に問題である。更に、ファンブレードの圧力面の形状は、空力学的に非常に重要である。
【0006】
メンブレンが圧力面に固着しないようにするため、上文中に言及したストリップ10、12を含むが、追加のドット14が吸引側16に設けられたパターンが提案された(図3a参照)。ストリップ10は吸引側16に設けられており、ストリップ12は圧力側18に設けられている。このような結合パターンでは、ドット14はブレードのチップ領域にあり、メンブレンの吸引側16にプリントされたストリップ10と一直線上にある。
【0007】
ドット14は拡散接合防止材料がない別の領域を形成する。この領域で拡散接合部を形成できる。従って、これらのドットにより、メンブレンは、チップ領域で吸引面に確実に付着し、圧力面の膨張を阻止しないようにメンブレンを圧力面から離した状態に保持する(図3a及び図3b参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5、479、705号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ストリップ−ドットパターンの問題点は、メンブレンの両側の周囲に、特に吸引面とメンブレンとの間に不十分なガスしか流すことができないということである。換言すると、吸引パネルにプリントされたドットのため、メンブレンは、吸引パネルに対して保持され、従って、ガスをチップ領域に亘って捕捉してしまうのである。これが起こったとき、ガス圧の不均等によりメンブレンが歪んでしまい、受け入れることができない構成要素を製造することになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴によれば、第1層、第2層、及び第1層と第2層との間に配置されたメンブレンを超塑性成形し、拡散接合することによってターボマシン用のブレードを製造する方法において、
第1層とメンブレンとの間に拡散接合防止材料を第1の所定のパターンで塗布し、第1層とメンブレンとの間に拡散接合部が第1の所定のパターンと交差して形成されないようにする工程であって、第1パターンは、一つ又はそれ以上の第1ストリップ及び一つ又はそれ以上の第1ドットを形成するように塗布され、第1ストリップ及び第1ドットは拡散接合防止材料の空所であり、第1ストリップはスパン方向に配置されており、
第1ドットは第1ストリップとブレードチップ縁部との間に配置され、第1ドットは第1ストリップの長さ方向軸線から弦方向にずらされている、工程と、
第2層とメンブレンとの間に拡散接合防止材料を第2の所定のパターンで塗布し、第2層とメンブレンとの間に拡散接合部が第2の所定のパターンと交差して形成されないようにする工程であって、
第2パターンは、一つ又はそれ以上の第2ストリップ及び一つ又はそれ以上の第2ドットを形成するように塗布され、第2ストリップ及び第2ドットは拡散接合防止材料の空所であり、第2ストリップはスパン方向に配置されており、第2ドットは第2ストリップとブレードチップ縁部との間に配置され、第2ドットは第2ストリップの長さ方向軸線から弦方向にずらされている、工程とを含み、
第1及び第2の所定のパターンは、メンブレンの両側で第2ストリップが第1ストリップから離間され、第1ドットが第2ドットから離間されるように塗布される、製造方法が提供される。
【0011】
第1の所定のパターンは、一つ又はそれ以上の別個の第1拡散接合防止材料ゾーンを形成することができる。拡散接合防止材料は、前記第1の別個のゾーンで第1層とメンブレンとの間に拡散接合部が形成されないようにする。同様に、第2の所定のパターンは、一つ又はそれ以上の別個の第2拡散接合防止材料ゾーンを形成することができる。拡散接合防止材料は、前記第2の別個のゾーンで第2層とメンブレンとの間に拡散接合部が形成されないようにする。
【0012】
前記方法は、第2ドットが第1ストリップの長さ方向軸線と一直線上にあるように第1及び第2の所定のパターンを塗布する工程を含んでいてもよい。前記方法は、第1ドットが第2ストリップの長さ方向軸線と一直線上にあるように第1及び第2の所定のパターンを塗布する工程を含んでいてもよい。
【0013】
前記方法は、第1ストリップと隣接した第2ドットとの間の間隔が、第1ストリップと隣接した第2ストリップとの間の間隔の関数であるように、第1及び第2の所定のパターンを塗布する工程を含んでいてもよい。第1ストリップと隣接した第2ドットとの間の間隔は、第1ストリップと隣接した第2ストリップとの間の間隔にブレードの伸び率(歪み率)を乗じた値と等しくてもよい。
【0014】
第1又は第2のドットの大きさは、
(a)第1又は第2のドットと隣接した、隣接ストリップ間の間隔、
(b)第1又は第2のドットと隣接した、ストリップの幅、
(c)第1又は第2のドットと隣接した、ストリップの長さ方向軸線間の間隔、及び
(d)ブレードの伸び率
のうちの一つ又はそれ以上の関数であってもよい。
第1又は第2のドットの大きさは、ブレードチップ(ブレード先端部)からの第1又は第2のドットの距離に従って減少してもよい。
【0015】
第1及び第2のストリップは実質的に長円形であってもよく、又は任意の他の所望の形状であってもよく、例えば実質的に矩形であってもよい。第1及び第2のドットは実質的に円形であってもよく、又は任意の他の所望の形状であってもよい。
【0016】
第1及び第2の所定のパターンは、ブレード縁部に沿って拡散接合部を形成できるように配置されていてもよい。
第1層は、ターボマシンブレードの圧力面又は吸引面を形成してもよく、第2層は、圧力面又は吸引面のうちの他方を形成してもよい。ブレードは、コンプレッサファンブレードであってもよい。
【0017】
前記方法は、更に、第1及び第2の層と、メンブレンとを加熱し且つプレスし、第1及び第2の層とメンブレンとを互いに拡散接合し、一体の構造を形成する工程を含んでいてもよい。前記方法は、更に、第1及び第2の層とメンブレンとを適当な形状のダイ間に配置する工程と、第1及び第2の層、メンブレン、及びダイを加熱する工程と、第1及び第2の層間に加圧流体を供給し、第1及び第2の層のうちの少なくとも一方を超塑性成形する工程とを含んでいてもよい。
【0018】
本発明の第2の特徴によれば、第1層、第2層、及びこれらの層間のメンブレンを含む、ターボマシン用ブレードにおいて、メンブレンは、一つ又はそれ以上の第1ストリップ及び一つ又はそれ以上の第1ドットに亘って第1層に接合され、第1ストリップはスパン方向に配置され、第1ドットは、第1ストリップとブレードチップ縁部との間に配置され、第1ドットは第1ストリップの長さ方向軸線から弦方向にずらされており、メンブレンは、一つ又はそれ以上の第2ストリップ及び一つ又はそれ以上の第2ドットに亘って第2層に接合され、第2ストリップはスパン方向に配置され、第2ドットは、第2ストリップとブレードチップ縁部との間に配置され、第2ドットは第2ストリップの長さ方向軸線から弦方向にずらされており、メンブレンの両側で、第2ストリップは第1ストリップから間隔が隔てられており、第1ドットは第2ドットから間隔が隔てられている、ブレードが提供される。
【0019】
次に、本発明を更に良好に理解するため、及び本発明をどのように実施するのかを更に明瞭に示すため、添付図面を例として参照する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、超塑性成形及び拡散接合によってファンブレードを形成した、加工物の従来技術の構成の分解図である。
【図2】図2は、拡散接合及び超塑性膨張後のファンブレードの内部構造の断面図である。
【図3a】図3aは、従来提案された拡散接合防止材料パターンを持つファンブレードのチップ領域の図である。
【図3b】図3bは、図3aに示すファンブレードチップの、(i)超塑性膨張前及び(ii)超塑性膨張後の断面図である。
【図4】図4は、本発明による拡散接合防止材料パターンを備えたファンブレードのチップ領域の図である。
【図5】図5(a)は、図5(b)に示す二つの断面についての超塑性膨張後のファンブレードチップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図4を参照すると、本発明によるターボマシン用ブレード20は、吸引面層16、圧力面層18、及び吸引面層16と圧力面層18との間に配置されたメンブレン2の三つの層を含む。吸引面層16及び圧力面層18をメンブレン2に結合する前に、吸引面層16及び圧力面層18の両方のメンブレン2に近い方の側部に拡散接合防止材料を塗布する。別の態様では、拡散接合防止材料をメンブレン2の夫々の側部に塗布してもよい。拡散接合防止材料の塗布後、層を互いに積み重ね、熱及び圧力を加え、夫々の層間に拡散接合部を形成する。拡散接合防止材料が塗布された場所には拡散接合部は形成されない。次いで、ブレード20を適当な形状のダイ間に配置し、オートクレーブに入れる。ブレード20及びダイを加熱し、加圧流体をブレードの内部に供給し、少なくとも一つの層を超塑性成形し、ダイの形状と一致したブレードを製造する。更に、ブレード20を捩じって所定の形状にしてもよい。
【0022】
図4は、本発明に従って拡散接合防止材料が塗布されるべきブレードチップ(ブレード先端部)の領域の場所を示す(ブレードハブは示してない)。メンブレン2の吸引側では、吸引側内縁部32によって形成された領域内に、拡散接合防止材料が塗布されている。従って、ブレード20の外縁部22と吸引側内縁部32との間には拡散接合防止材料がなく、これによって、メンブレン2と吸引面層16との間にブレード20の縁部に亘って拡散接合部を形成できる。メンブレン2の吸引側では、拡散接合防止材料は、一つ又はそれ以上のストリップ10及び一つ又はそれ以上のドット14が形成する領域に塗布されていない。ストリップ10は、実質的に半径方向に(即ちハブからブレードチップまでスパン方向に)配置され、ストリップ10は、吸引側内縁部32の手前で終端する。ドット14は、ストリップ10のチップに最も近い端部と吸引側内縁部32との間に配置される。これらのドット14は、弦方向で、ストリップ10の長さ方向軸線からずらして配置される。ドット14は必ずしも円形形状でなくてもよく、任意の所望の形状を備えていてもよい。ストリップ10は、長円形(obround)(即ち、二つの半円が、これらの半円に接する平行な線によって連結された形状)であるが、別の態様では、任意の他の所望の形状を備えていてもよく、例えば矩形であってもよい。
【0023】
メンブレン2の圧力側では、圧力側内縁部34によって形成された領域内に拡散接合防止材料が塗布される。従って、ブレード20の外縁部22と圧力側内縁部34との間には拡散接合防止材料がなく、これによって、メンブレン2と圧力面層18との間に、拡散接合部を、ブレード20の縁部に亘って確実に形成できる。
【0024】
圧力側内縁部34は、メンブレン2の圧力側において、圧力側内縁部34によって形成された領域内に拡散接合防止材料が塗布されるという点で、吸引側内縁部32と実質的に同じである。従って、ブレード20の外縁部22と圧力側内縁部34との間には拡散接合防止材料はなく、これにより、メンブレン2と圧力面層18との間に、拡散接合部を、ブレード20の縁部に亘って確実に形成できる。圧力側内縁部34は、ブレードチップのところで吸引側内縁部32と重なるが、圧力側内縁部34は、ブレードの前縁及び後縁のところで吸引側内縁部32からずらされてもよい。
【0025】
メンブレン2の圧力側では、拡散接合防止材料は、更に、一つ又はそれ以上のストリップ12及び一つ又はそれ以上のドット15によって形成された領域にも塗布されていない。ストリップ12は、実質的に半径方向に(即ちハブからブレードチップまでスパン方向に)配置され、ストリップ12は、吸引側内縁部32の手前で、吸引側での吸引側内縁部32からのストリップ10とほぼ同じ離間距離のところで終端する。ドット15は、ストリップ12のチップに最も近い端部と圧力側内縁部34との間に配置される。これらのドット15は、弦方向で、ストリップ12の長さ方向軸線からずらされている。ドット15は必ずしも円形形状でなくてもよく、任意の所望の形状を備えていてもよい。ストリップ12は長円形であるが、別の態様では、任意の他の所望の形状を備えていてもよく、例えば矩形であってもよい。
【0026】
圧力側に設けられたストリップ12は、吸引側に設けられたストリップ10間に交互に配置されている。即ち、ストリップ10、12は、隣接したストリップ10、12間に隙間11があるように配置される。この構成により、ブレード20の膨張時に、メンブレン2がストリップ10のところで吸引面層16に付着し、ストリップ12のところで圧力面層18に付着する。従って、メンブレン2は、隣接したストリップ10、12間のメンブレン2(即ち隙間11と重なるメンブレン2の部分)が、吸引面層16と圧力面層18との間にストラット及びタイを形成した状態の、ワーレン桁型内部構造を形成する。
【0027】
ストリップについて、圧力側に設けられたドット15は、これらのドットが吸引側のドット14間に配置され、隣接したドット14、15間に隙間が形成される。圧力側に設けられたドット15は、好ましくは、吸引側に設けられたストリップ10の長さ方向軸線と一直線上にあるが、必ずしもそのようになっていなくてもよい。同様に、吸引側に設けられたドット14は、好ましくは、圧力側に設けられたストリップ12の長さ方向軸線と一直線上にあるが、必ずしもそのようになっていなくてもよい。このパターンは、メンブレン2の両側に配置されたドット14、15及びストリップ10、12によりチェッカーボード型の効果を発生する。
【0028】
図4に示すように、第1及び第2のドットは、第1又は第2のドットが一直線上に配置された隣接した第1又は第2のストリップの端部から半径方向に距離Sのところに配置されている。ドット14、15と隣接したストリップ10、12との間の距離Sは、隣接したストリップ10、12と問題のストリップとの間の距離S(即ち、局所的隙間11の幅)の関数であってもよい。詳細には、距離Sには、以下の関係が適用可能である。
=pS
ここで、pは伸び率(strain ratio)であり、超塑性膨張プロセス中にブレードに加わる伸びの計測値であり、即ち特定の寸法の増大を元の寸法の比として示す値である。伸び率は、局所的伸び率であってもよいし、ブレード全体の伸び率であってもよい。
【0029】
第1及び第2のドットの大きさもまた、伸び率pによって決定される。図4に示すように、ドットは、円又は任意の他の形状を三本の線の間に当てはめることによって形成されてもよい。第1線は、第1及び第2のストリップの長さ方向軸線に対して垂直であり、第1及び第2のドットはこの線上にあり、前記ストリップから半径方向に距離S2のところに配置されている。第2線及び第3線は、長円形のチップに最も近い端部で該長円形の二つの平行な線と半円が出会う場所で、隣接したストリップ上の夫々の点から延びる線である。第2線及び第3線は、圧力側内縁部34又は吸引側内縁部32と、問題のドットと隣接したストリップの長さ方向軸線の両側に距離Dのところで出会う。距離Dには、以下の関係が適用される。
=p・D/2
ここで、pは、上文中に説明したのと同じ伸び率であり、D1は、隣接したストリップ10、12及び問題のストリップとの間の距離である。従って、ドットは、これらの三本の線によって形成された空間内に当てはめられる。従って、これらの線は、ドットの周囲と接する。かくして、上文中に説明した構成により、ドットがブレードチップに近ければ近い程、ドットを大きくできる。これは、ドットのところで形成される拡散接合部が、メンブレン2を圧力面又は吸引面の夫々に対して保持する上で十分にするのを補助する。
【0030】
図5(a)を参照すると、この図には、ブレード20の二つの断面が示してある。図5(b)に示すように、参照番号AAを付した第1断面は、メンブレン2の圧力側に設けられたストリップ12の長さ方向軸線を通る断面と対応し、参照番号BBを付した第2断面は、メンブレン2の吸引側に設けられたストリップ10の長さ方向軸線を通る断面と対応する。
【0031】
図5(a)は、ドット15がメンブレン2を吸引面層16から離した状態に保持し、これによって、ガスをメンブレン2と吸引面層16との間に更に容易に流すことができ、吸引面層16が所望の形状に膨張されることを示す。更に、ドット14は、メンブレン2を圧力面層18から離した状態に保持し、これによって、ガスをメンブレン2と圧力面層18との間に更に容易に流すことができ、圧力面層18が所望の形状に膨張できることを示す。
【0032】
ストリップ及びドットが交互に配置されているため、一連のサドル点(saddle points)を効果的に提供する。これらのサドル点の両側には、一連のアーチ状のチャンバ(vaulted chambers)が形成される。従って、メンブレン2の吸引側のアーチ状のチャンバは、吸引側のストリップ10及びドット14の間に連続した流路を形成し、これにより、ガスを吸引側のドット14の周囲に流すことができる。同様に、メンブレン2の圧力側のアーチ状のチャンバは、圧力側のストリップ12及びドット15の間に連続した流路を形成し、これにより、ガスを圧力側のドット15の周囲に流すことができる。メンブレン2と、吸引面層16及び圧力面層18との間のガス流路により、ガスは特定のドットの両側に容易に達することができる。換言すると、本発明によるストリップ及びドットのパターンは、ブレードチップの領域で、メンブレン2と、吸引面層16及び圧力面層18との間にガス流路を形成するのに役立つ。これによって、メンブレン2の両側で十分なガス流を可能にする。
【0033】
サドル点は、ドット14、15とストリップ10、12のチップに最も近い端部との間に軌跡40を形成する。軌跡40は、吸引面層16と圧力面層18との間でメンブレン2に沿って弦方向に延びる線であり、この軌跡40は、吸引面層16又は圧力面層18のいずれとも接触しない。更に、ドット14、15及びストリップ10、12が吸引側と圧力側との間で交互になっているため、メンブレン2は、軌跡40の両側に、弦方向に延びる波形の線を形成する。
【0034】
実際には、交互のドット構成は、ストリップ10、12によって形成された第1ワーレン桁型内部構造からずらされた第2ワーレン桁型内部構造を形成する。これらのずらされたワーレン桁構造により、ガスは、ブレードチップの領域でメンブレン2の両側の周囲を流れることができる。
【0035】
ドットが吸引側に設けられた上述の構成は、メンブレン2が圧力面だけに固着しないようにする。これによって、圧力面の膨張が妨げられないようにする。同様に、圧力側にドットが設けられているため、十分な量のガスが吸引面とメンブレンとの間を流れることができ、これによってガス圧力が均等になり、吸引面の変形が最少になる。
【符号の説明】
【0036】
2 メンブレン
4、6 金属製加工物
10、12 ストリップ
14、15 ドット
16 吸引面層
18 圧力面層
20 ターボマシン用ブレード
32 吸引側内縁部
34 圧力側内縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層(16)、第2層(18)、及び前記第1層と前記第2層との間に配置されたメンブレン(2)を超塑性成形し拡散接合することによって、ターボマシン用のブレード(20)を製造する方法において、
前記第1層と前記メンブレンとの間に拡散接合防止材料を第1の所定のパターンで塗布し、前記第1層と前記メンブレンとの間に拡散接合部が前記第1の所定のパターンと交差して形成されないようにする工程であって、前記第1パターンは、一つ又はそれ以上の第1ストリップ(10)及び一つ又はそれ以上の第1ドット(14)を形成するように塗布され、前記第1ストリップ及び前記第1ドットは拡散接合防止材料の空所であり、前記第1ストリップはスパン方向に配置されており、前記第1ドットは前記第1ストリップとブレードチップ縁部との間に配置され、前記第1ドットは前記第1ストリップの長さ方向軸線から弦方向にずらされている、工程と、
前記第2層と前記メンブレンとの間に拡散接合防止材料を第2の所定のパターンで塗布し、前記第2層と前記メンブレンとの間に拡散接合部が前記第2の所定のパターンと交差して形成されないようにする工程であって、前記第2パターンは、一つ又はそれ以上の第2ストリップ(12)及び一つ又はそれ以上の第2ドット(15)を形成するように塗布され、前記第2ストリップ及び前記第2ドットは拡散接合防止材料の空所であり、前記第2ストリップはスパン方向に配置されており、前記第2ドットは前記第2ストリップとブレードチップ縁部との間に配置され、前記第2ドットは前記第2ストリップの長さ方向軸線から弦方向にずらされている、工程とを含み、
前記第1及び第2の所定のパターンは、前記メンブレンの両側で第2ストリップが第1ストリップから離間され、第1ドットが第2ドットから離間されるように塗布される、製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、
前記第2ドットが前記第1ストリップの前記長さ方向軸線と一直線上にあるように前記第1及び第2の所定のパターンを塗布する工程を含む、製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法において、
前記第1ドットが前記第2ストリップの前記長さ方向軸線と一直線上にあるように前記第1及び第2の所定のパターンを塗布する工程を含む、製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法において、
前記第1ストリップと隣接した第2ドットとの間の間隔が、前記第1ストリップと隣接した第2ストリップとの間の間隔の関数であるように、前記第1及び第2の所定のパターンを塗布する工程を含む、製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法において、
前記第1ストリップと隣接した第2ドットとの間の間隔は、前記第1ストリップと隣接した第2ストリップとの間の間隔に前記ブレードの伸び率を乗じた値と等しい、製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の製造方法において、
前記第1又は第2のドットの大きさは、
(a)前記第1又は第2のドットと隣接した、隣接ストリップ間の間隔、
(b)前記第1又は第2のドットと隣接した、前記ストリップの幅、
(c)前記第1又は第2のドットと隣接した、前記ストリップの長さ方向軸線間の間隔、及び
(d)前記ブレードの伸び率
のうちの一つ又はそれ以上の関数である、製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法において、
前記第1又は第2のドットの大きさは、前記ブレードチップからの前記第1又は第2のドットの距離に従って減少する、製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の製造方法において、
前記第1及び第2のストリップは、実質的に長円形である、製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の製造方法において、
前記第1又は第2のドットは実質的に円形である、製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の製造方法において、
前記第1及び第2の所定のパターンは、前記ブレード縁部に沿って拡散接合部を形成できるように配置される、製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の製造方法において、
前記第1層は、ターボマシンブレードの圧力面又は吸引面を形成し、前記第2層は、前記圧力面又は前記吸引面のうちの他方を形成する、製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちのいずれか一項に記載の製造方法において、
前記ブレードは、コンプレッサファンブレードである、製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちのいずれか一項に記載の製造方法において、更に、
前記第1及び第2の層と、前記メンブレンとを加熱し且つプレスし、前記第1及び第2の層と前記メンブレンとを互いに拡散接合し、一体の構造を形成する工程を含む、製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のうちのいずれか一項に記載の製造方法において、更に、
前記第1及び第2の層と、前記メンブレンを、適当な形状のダイ間に配置する工程と、
前記第1及び第2の層、前記メンブレン、及び前記ダイを加熱する工程と、
前記第1及び第2の層間に加圧流体を供給し、前記第1及び第2の層のうちの少なくとも一方を超塑性成形する工程とを含む、製造方法。
【請求項15】
第1層、第2層、及びこれらの層間のメンブレンを含む、ターボマシン用のブレードにおいて、
前記メンブレンは、一つ又はそれ以上の第1ストリップ及び一つ又はそれ以上の第1ドットに亘って前記第1層に接合され、前記第1ストリップはスパン方向に配置され、前記第1ドットは、前記第1ストリップと前記ブレードチップ縁部との間に配置され、前記第1ドットは、前記第1ストリップの長さ方向軸線から弦方向にずらされており、
前記メンブレンは、一つ又はそれ以上の第2ストリップ及び一つ又はそれ以上の第2ドットに亘って前記第2層に接合され、前記第2ストリップはスパン方向に配置され、前記第2ドットは、前記第2ストリップと前記ブレードチップ縁部との間に配置され、前記第2ドットは、前記第2ストリップの長さ方向軸線から弦方向にずらされており、
前記メンブレンの両側で、前記第2ストリップは前記第1ストリップから間隔が隔てられており、前記第1ドットは前記第2ドットから間隔が隔てられている、ブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−207911(P2010−207911A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−40148(P2010−40148)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(591005785)ロールス・ロイス・ピーエルシー (88)
【氏名又は名称原語表記】ROLLS−ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】