説明

ブロックトポリイソシアネートおよび二段硬化性塗料におけるその使用

【課題】光化学的に開始される架橋のための放射線硬化性基に加えて、熱硬化のためのブロックトNCO基をも含む二段硬化系のためのポリイソシアネートを提供する。
【解決手段】少なくとも一つの放射線硬化性基と、式(II)


[式中、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキル基もしくはシクロアルキル基であり、R4は、C1-C4アルキル基、C6-C10シクロアルキル基またはC7-C14アラルキル基であり、xは1〜5の整数である。]で示される少なくとも一つの構造単位を含む、ブロックトポリイソシアネート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二段硬化系のための新規ポリイソシアネート架橋剤に関し、さらにはその製造および使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
独立した二つのプロセスによって硬化する塗料は、二段硬化系と呼ばれる。現在のバインダー成分には、通常異なる官能基が含まれており、これらは適切な条件下で、一般的には互いに独立して架橋する。従来技術の二段硬化系には、通常、放射線硬化性基および熱硬化性基が含まれており、熱架橋性基としてイソシアネート基およびヒドロキシル基を用いる場合、特に有利な性質が得られる。
【0003】
EP-A 0 928 800号には、放射線硬化性のアクリレート基およびイソシアネート基の両方を含む架橋剤を含有する二段硬化系が記載されており、適切なバインダー、たとえば、OH含有バインダーを用いて熱硬化できる。NCO基およびOH基は室温で互いに反応し合うので、二成分系としてのみ前述の塗料系を採用することができる。この二成分系では、NCO含有成分およびNCO反応性成分を、塗布作業の直前または塗布作業中に互いに混合する。この系の加工寿命が極めて短時間であるという欠点は、遊離NCO基をブロックすることによって解消され得る。ブロックトイソシアネート基を含むこのような放射線硬化性系と熱硬化性系との組み合わせは、たとえばEP-A-126 359、WO-A 01/42329または米国特許第4 961 960に記載されている。
【0004】
従来のブロックトポリイソシアネートの技術の大部分のケースでは、存在するブロッキング剤は架橋反応の間に除去されてその後に放出される。その場合、塗膜の質に悪影響を与えないために、用いるブロッキング剤を、焼付けの後に可能な限り完全に塗料から取り去る必要がある。得られる塗料は耐光性を示し、加熱の際に黄変してはならない。
【0005】
用いるブロッキング剤に依存して、一成分(1K)塗膜の引っかき抵抗性および酸安定性は、二成分(2K)ポリウレタン塗料系の場合よりも一般的に劣っている(たとえば、T. Engbert, E. Koenig, E. Juergens, Farbe & Lack, Curt R. Vincentz Verlag, ハノーバー、 10/1995)。ブロッキング剤が不適当な場合、塗膜から発するブロッキング剤およびそのガス成分を除去することによって、塗料中に泡が生じることがある。
【0006】
ポリイソシアネートをブロックするために用いられる主要な化合物としては、たとえば、EP-A 0 576 952、EP-A 0 566 953、EP-A 0 159 117、US-A 4 482 721、WO 97/12924またはEP-A 0 744 423に記載されたような、ε-カプロラクタム、メチルエーテルケトオキシム(ブタノンオキシム)、マロン酸ジエチル、第二級アミン、トリアゾール誘導体およびピラゾール誘導体である。
【0007】
90〜120℃という特に低い架橋温度については、ごく最近ではマロン酸ジエチルによるブロックトイソシアネートが用いられている(たとえばEP-A 0 947 531)。カプロラクタムまたはブタノンオキシムなどのN-複素環式化合物でブロックすることとは対照的に、この場合においては、すべてのブロッキング剤が除去されるわけではない。その代わりに、硬化の過程でエタノールの除去を伴うマロン酸ジエチルでのエステル交換が起こる。しかしながら、不安定なエステル結合が原因でこのような系は酸との接触に対して極めて影響を受けやすく、そのためにこれらの生成物を応用する可能性に制限があるという不利な点がある。
【0008】
3,5-ジメチルピラゾール(DMP)によるブロックトイソシアネートは極めて多様な利用可能性を有する生成物であり、これは、焼付けおよび過焼付けの際の塗膜の黄変が極めて僅かであり、130℃未満という低温で脱ブロックできるという特徴を有する。
【0009】
第二級アミンブロッキング剤はEP-A 0 096 210に記載されており、明らかに第二級ジアルキルアミンに焦点があてられている。その中で明記されたアミンには、アラルキル置換アミンが確かに含まれているが、EP-A 096 210には、その種類の化合物は何も明記されていない。さらに、第二級アミンのすべてが適切なものではないこと、すなわちEP-A 096 210の発明にのみ適切であることが開示されている。
【0010】
DE-A 3434881およびEP-A 0 787 754では、粉体塗料用の硬化剤として、強固にブロックされたポリイソシアネートが記載されている。明記されたブロッキング剤には、tert-ブチルベンジルアミンなどのアラルキル置換第二級アミンが含まれている。これらの塗料は170℃未満で硬化し、焼付け、過焼付けおよび屋外での放置の際でさえ、変色傾向を示さない。普通に調製し、加工し、好ましくは130℃未満という顕著に低い温度で硬化するような液体塗料または水性塗料において、このようなブロッキング剤を用いることについての言及は存在しない。
【0011】
EP-A 1 375 550、EP-A 1 375 551およびEP-A 1 375 552では、熱硬化性液体塗料への応用のためのポリイソシアネート用ブロッキング剤として、N-tert-ブチル-N-ベンジルアミンなどのアラルキル置換第二級アミンが記載されている。この系は、ブタノンオキシムよりも黄変に対する安定性が改善されたこと、および焼付け温度がより低いことに特徴を有し、そして上記の点に関してDMPによるブロックトポリイソシアネートにほぼ匹敵する特性を有する。
【0012】
相互に別々に進行する二つの架橋メカニズムを経て硬化が起こり、そして一般的に熱硬化操作および光化学的硬化操作を行う二段硬化系については、熱硬化の化学で知られているブロッキング剤のすべてが、塗膜の黄変が少ない塗膜を生じさせることに同等に適しているわけではない。DMPによるブロックトポリイソシアネートが、熱のみによって硬化する塗料における、焼付けおよび過焼付けによる黄変に対する顕著な安定性を示すのに対して、放射線硬化性基に加えてDMPでブロックされたNCO基を含む二段硬化のポリイソシアネートに基づく塗料は、熱硬化操作および光化学的硬化操作を行った後に、特に過焼付けの際に、満足できない程度に強い黄変を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的の一つは、光化学的に開始される架橋のための放射線硬化性基に加えて、熱硬化のためのブロックトNCO基をも含む二段硬化系のためのポリイソシアネートを提供することである。本発明のもう一つの目的は、加熱温度が130℃以下の塗料であって、過焼付けの際でさえ、得られる塗膜の黄変が特に僅かであるという特徴を有する塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、式I)
【化1】

[式中、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキル基またはシクロアルキル基であり、
R4は、C1-C4アルキル基、C6-C10シクロアルキル基またはC7-C14アラルキル基であり、
xは1〜5の整数である。]
で示される第二級アミンでブロックされたNCO基を含む、本発明のポリイソシアネートによって達成できることが分かった。
【0015】
本発明は、少なくとも一つの放射線硬化性基、および少なくとも一つの式II)
【化2】

[式中、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキル基またはシクロアルキル基であり、
R4は、C1-C4アルキル基、C6-C10シクロアルキル基またはC7-C14アラルキル基であり、
xは1〜5の整数である。]
で示される構造単位を含む、ブロックトポリイソシアネートに関する。
【0016】
本発明は、
A1)有機ポリイソシアネートを、
A2)少なくとも一つのイソシアネート反応性基および少なくとも一つの放射線硬化性基を含む化合物、
A3)必要に応じてA2)以外のイソシアネート反応性化合物、および
A4)式I)
【化3】

[式中、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキル基またはシクロアルキル基であり、
R4は、C1-C4アルキル基、C6-C10シクロアルキル基またはC7-C14アラルキル基であり、
xが1〜5の整数である。]
で示されるブロッキング剤
と反応させる工程を含む、上記のブロックトポリイソシアネートを製造するための方法にも関する。
【0017】
本発明は、本発明のポリイソシアネートを含む二段硬化性の塗料、接着剤またはシーリング材にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明によれば、放射線硬化性基とは、化学放射線に曝露されて、エチレン性不飽和化合物と、重合を伴って反応する基である。化学放射線とは、電磁気的な電離放射線、特に電子線、紫外線および可視光線という意味である(Roche Lexikon Medizin, 第四版; Urban & Fischer Verlag, ミュンヘン、1999)。
【0019】
本発明の目的にとって、放射線硬化性基としては、ビニルエーテル基、マレイニル基、フマリル基、マレイミド基、ジシクロペンタジエニル基、アクリルアミド基、アクリル基およびメタクリル基が挙げられることが理解され、ビニルエーテル基、アクリレート基および/またはメタクリレート基が好ましく、アクリレート基がより好ましい。
【0020】
本発明の目的にとって好ましいイソシアネート反応性基は、ヒドロキシル基、アミノ基、アスパラギン酸基またはチオール基であり、ヒドロキシル基がより好ましい。
【0021】
成分A1)として用いるのに適した化合物としては、イソシアネート基を含むすべての有機化合物が挙げられ、NCO官能性が2以上の脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式ポリイソシアネートそれぞれ、または互いの混合物が好ましい。ホスゲン化法、または無ホスゲン法によって調製されたかは、重要ではない。
【0022】
より適したものは、単量体ポリイソシアネートから調製され、ウレトジオン基、カルボジイミド基、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基、ビウレット基、ウレタン基、アロファネート基、オキサジアジントリオン基またはアシル尿素基を含むポリイソシアネート付加物および1を超える平均NCO官能価を有するポリイソシアネートのプレポリマーである。プレポリマーは、モル過剰の上記単量体ポリイソシアネートまたはポリイソシアネート付加物の一つと、少なくとも二つのイソシアネート反応性基、たとえばOH基を含む有機化合物との予備反応によって得ることができる。
【0023】
A1)に存在するまたはそれに基づいて成分A1)のより高分子量のポリイソシアネート付加物またはポリイソシアネートのプレポリマーが調製され得る単量体脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートの例としては、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-および1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(Desmodur(登録商標) W, Bayer AG, レーバークーゼン)、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(トリイソシアナトノナン、TIN)、ω,ω'-ジイソシアナト-1,3-ジメチルシクロヘキサン(H6XDI)、1-イソシアナト-1-メチル-3-イソシアナトメチルシクロヘキサン、1-イソシアナト-1-メチル-4-イソシアナトメチルシクロヘキサンならびにビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンが挙げられる。
【0024】
単量体芳香族イソシアネートの例としては、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,3-および1,4-ビス(2-イソシアナト-プロプ-2-イル)ベンゼン(TMXDI)、2,4-および2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)およびこれら異性体の混合物、2,4'-および4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5-ジイソシアナトナフタレン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(DXI)が挙げられる。
【0025】
本発明の目的にとって、A1)において、数平均分子量が140〜1000g/molであって、脂肪族的に、脂環式に、芳香脂肪族的におよび/または芳香族的に結合したイソシアネート基を含む化合物を用いることが好ましい。成分A1)において用いることがより好ましいものは、脂肪族的におよび/または脂環式に結合したイソシアネート基のみを含むポリイソシアネートまたはポリイソシアネートの混合物であり、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)および/または4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンに基づくものが特に好ましい。
【0026】
成分A2)として用いるのに適したものは、本明細書で規定されたタイプの少なくとも一つのイソシアネート反応性基および少なくとも一つの放射線硬化性基を含む、すべての化合物それぞれまたは互いの混合物である。これらの化合物のうちで最も好ましいものは、ヒドロキシ官能性アクリレートおよびメタクリレートである。
【0027】
適切なヒドロキシ官能性アクリレートまたはメタクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート(メタクリレート)、ポリエチレンオキシドモノアクリレート(メタクリレート)、ポリプロピレンオキシドモノアクリレート(メタクリレート)、ポリアルキレンオキシドモノアクリレート(メタクリレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)モノアクリレート(メタクリレート)(たとえばTone(登録商標)M 100、Union Carbide、米国)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(メタクリレート)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(メタクリレート)、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピルアクリレート(メタクリレート)、多価アルコール(たとえば、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトールもしくはジペンタエリトリトール)のヒドロキシ官能性モノ-、ジ-もしくはテトラアクリレート、エトキシル化、プロポキシル化もしくはアルコキシル化トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトールまたはジペンタエリトリトールなどの化合物、およびこれらの混合物が挙げられる。さらに、適切なものとしては、二重結合を含む酸と、場合により二重結合を含む単量体のエポキシド化合物との反応から得ることができるアルコールであり、たとえば、アクリル酸(メタクリル酸)と、アクリル酸グリシジル(メタクリル酸グリシジル)との反応生成物、またはベルサト酸のグリシジルエステル(Cardura E10, Resolution Nederland BV, part of Shell BV, NL)との反応生成物である。
【0028】
成分A3)として用いることに適したものは、少なくとも一つのイソシアネート反応性基を有する親水性化合物であって、それぞれまたは互いの混合物である。本発明のポリイソシアネートを水または水を含む混合物に分散または溶解させようとする場合、特に親水性化合物を用いる。
【0029】
親水性化合物としては、少なくとも一つのイソシアネート反応性基を有するすべてのイオン性および非イオン性親水性化合物が挙げられる。好ましいイソシアネート反応性基は、ヒドロキシル基および/またはアミノ基である。
【0030】
好ましい親水性のイオン性化合物は、少なくとも一つのイソシアネート反応性基と、さらに少なくとも一つの官能基、たとえば、-COOY、-SO3Yまたは-PO(OY)2(ここで、YはH、NH4+または金属カチオンである)、または-NR2、-NR3+、または-PR3+(ここで、RはH、アルキルまたはアリールである)とを含む化合物であり、この化合物は水性媒体との相互作用によって場合によりpH依存性解離平衡にいたってもよく、その結果、負電荷、正電荷または中性電荷を有してもよい。
【0031】
適切な親水性のイオン性化合物の例としては、モノ−およびジヒドロキシカルボン酸、モノ−およびジアミノカルボン酸、モノ−およびジヒドロキシスルホン酸、モノ−およびジアミノスルホン酸、モノ−およびジヒドロキシホスホン酸またはモノ−およびジアミノホスホン酸ならびにこれらの塩がある。具体例には、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸(HPA)、N-(2-アミノエチル)-β-アラニン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミン-プロピル-またはブチルスルホン酸、1,2-または1,3-プロピレンジアミン-β-エチルスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピオスルホン酸(CAPS)、リシン、3,5-ジアミノ安息香酸、IPDIとアクリル酸との付加物(EP-A 0 916 647、実施例1)およびそれらのアルカリ金属塩および/またはアンモニウム塩、亜硫酸水素ナトリウムのブト-2-エン-1,4-ジオールとの付加物、ポリエーテルスルホネート、2-ブテンジオールのプロポキシル化付加物およびNaHSO3(たとえばDE-A 2 446 440、5-9頁、式I-IIIに記載)、ならびにN-メチルジエタノールアミンなどのカチオン基に変換することができるユニットが含まれる。好ましいイオン性化合物または潜在的イオン性化合物は、カルボキシル基またはカルボキシレート基および/またはスルホネート基および/またはアンモニウム基を含むものである。より好ましいイオン性化合物は、イオン性基または潜在的イオン性基としてカルボキシル基および/またはスルホネート基を含むものであり、特にHPAの塩、CAPSの塩、N-(2-アミノエチル)-β-アラニンの塩、2-(2-アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸の塩、IPDIとアクリル酸との付加物(EP-A 0 916 647、実施例1)の塩およびジメチロールプロピオン酸の塩である。
【0032】
親水性の非イオン性化合物として、ポリエーテル構造を持つ化合物、好ましくはアルキレンオキシドに基づくポリエーテルを用いることが可能であり、それらのイソシアネート反応性基として少なくとも一つのヒドロキシル基またはアミノ基を含んでいる。
【0033】
ポリエーテル構造を持つこれらの化合物としては、1分子あたり平均5〜70の、好ましくは7〜55のエチレンオキシド基を有し、アルキレンオキシドの全モル数を基準として少なくとも30モル%のエチレンオキシドを含む単官能性ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールが挙げられ、たとえば、適切な開始分子を公知の方法でアルコキシル化して得られたものがある(たとえば、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie, 第4版、第19巻、 Verlag Chemie、ワインハイム、31-38頁)。
【0034】
適切な開始分子の例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、ペンタノールの異性体、ヘキサノールの異性体、オクタノールの異性体およびノナノールの異性体、n-デカノール、n-ドデカノール、n-テトラデカノール、n-ヘキサデカノール、n-オクタデカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノールの異性体またはヒドロキシメチルシクロヘキサンの異性体、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、テトラヒドロフルフリルアルコールなどの飽和モノアルコール;ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのジエチレングリコールモノアルキルエーテル;アリルアルコール、1,1-ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコールなどの不飽和アルコール;フェノール、クレゾールの異性体またはメトキシフェノールの異性体などの芳香族アルコール;ベンジルアルコール、アニシルアルコールまたはシンナミルアルコールなどの芳香脂肪族アルコール;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス-(2-エチルヘキシル)アミン、N-メチル-およびN-エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミンなどの第二級モノアミン;ならびにモルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H-ピラゾールなどの複素環式第二級アミンが挙げられる。好ましい開始分子は飽和モノアルコールである。開始分子としてジエチレングリコールモノブチルエーテルを用いることが特に好ましい。
【0035】
アルコキシル化反応に適するアルキレンオキシドは、特にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、これをアルコキシル化反応の間に任意の順序で、連続してまたは混合して用いることができ、これによってブロックポリエーテルまたは混合ポリエーテルが得られる。
【0036】
ポリエーテル構造を有する化合物としては、直鎖ポリエチレンオキシドポリエーテルまたは混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルが好ましく、ここでアルキレンオキシド単位の少なくとも30モル%、好ましくは少なくとも40モル%がエチレンオキシド単位である。特に好ましいものは、少なくとも40モル%のエチレンオキシド単位を含み、プロピレンオキシド単位が60モル%以下の単官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0037】
さらに、成分A3)の化合物として、短鎖(すなわち2〜20の炭素原子を含む)脂肪族、芳香脂肪族または脂環式モノアルコール、ジオール、またはトリオールなどの低分子量のモノ−、ジ−またはポリオールを用いることができる。モノアルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノールの異性体、ブタノールの異性体、ペンタノールの異性体、ジアセトンアルコール、脂肪アルコールまたはたとえばDuPontからZonyl(登録商標)という名称で販売されているフッ素化アルコールが挙げられる。ジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、ジエチルオクタンジオールの位置異性体、1,3-ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)および2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオナートが挙げられる。トリオールの例としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンまたはグリセロールが挙げられる。好ましいアルコールは、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオールおよびトリメトールプロパンである。
【0038】
モノオール、ジオールまたはトリオールは、必要に応じてイソシアネート1当量あたり0.3当量未満の量を用いることが好ましく、0.1当量未満の量を用いることがより好ましい。モノオール、ジオールまたはトリオールを用いないことが最も好ましい。
【0039】
成分A4)として好ましく用いることができるものは、
R1、R2およびR3が水素であり、
R4がメチル基、エチル基、イソプロピル基またはtert-ブチル基、好ましくはtert-ブチル基であり、
xが1〜5の整数である式I)のブロッキング剤である。
【0040】
これらのブロッキング剤の例としては、N-tert-ブチル-N-ベンジルアミン、N-イソプロピル-N-ベンジルアミン、N-エチル-N-ベンジルアミン、N-メチル-N-ベンジルアミンおよびN-イソプロピル-N-(ジメチル)ベンジルアミンが挙げられる。
【0041】
成分A4)として、互いの混合物および他のブロッキング剤との混合物の両者として、必要なアミンを用いることができる。これら他のブロッキング剤の例としては、アルコール、ラクタム、オキシム、マロン酸エステル、アルキルアセトアセテート、トリアゾール、フェノール、イミダゾール、ピラゾールおよびさらなるアミンが挙げられる。具体例としては、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、1,2,4-トリアゾール、ジメチル-1,2,4-トリアゾール、イミダゾール、マロン酸ジエーテル、酢酸エチル、アセトンオキシム、3,4-ジメチルピラゾール、ε-カプロラクタム、N-メチル-、N-エチル-、N-(イソ)プロピル-、N-n-ブチル-、N-イソブチル-または1,1-ジメチルベンジルアミン、N-アルキル-N-1,1-ジメチルメチルフェニルアミン、ベンジルアミンのマロン酸エステルなどの活性化二重結合を有する化合物との付加物、N,N-ジメチルアミノプロピルベンジルアミン、第三級アミノ基を含む任意に置換された他のベンジルアミン、ジベンジルアミン、ならびにこれらのブロッキング剤の混合物が挙げられる。用いられる場合、これら他のブロッキング剤を、成分A4)の重量に基づいて、80wt%までの量、好ましくは60wt%までの量およびより好ましくは20wt%までの量で、用いる。最も好ましくは、成分A4)におけるブロッキング剤としてはN-tert-ブチル-N-ベンジルアミンのみを用いる。
【0042】
A4)に由来するブロッキング剤に対する、ブロックされる遊離イソシアネート基の当量比は1:0.8〜1:1.2であり、1:1が好ましい。A1)におけるNCO1当量あたり、0.2〜0.8当量のA4)を用いることが好ましく、0.3〜0.7当量のA4)を用いることがより好ましい。A1)におけるNCO1当量あたり、0.2〜0.8当量のA2)を用いることが好ましく、0.3〜0.7当量のA2)を用いることがより好ましい。本発明のポリイソシアネートにおける遊離NCO基の量は5%未満であり、0.5wt%未満であることが好ましく、0.1wt%未満であることがより好ましい。
【0043】
成分A1)〜成分A4)の他に、NCOのブロッキングを触媒することが知られているすべての化合物を、単独でまたは互いの混合物として用いることができる。たとえば、ポリウレタン化学に広く用いられる触媒活性ルイス酸または触媒活性アミンが好ましい。ブロッキング反応の触媒として特に好ましいものは、エチルヘキサン酸ビスマスまたはジラウリン酸ジブチルスズ、DBTLなどの有機スズ触媒および無機ビスマス触媒である。亜鉛触媒を用いてもよい。触媒の量は通常、製造されるポリイソシアネートの不揮発性分に基づいて、0.05〜10%、好ましくは0.1〜3%、より好ましくは0.2〜1wt%である。
【0044】
ポリウレタン化学およびエチレン性不飽和塗料化学から知られている添加剤またはそれらの混合物をさらに用いることもできる。早期の重合を避けるために、不飽和基の量に基づいて、0.01wt%〜1wt%の量、好ましくは0.1wt%〜0.5wt%の量の安定剤を用いることが好ましい。たとえば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第四版、第XIV/1巻、Georg Thieme Verlag、シュトゥットガルト、1961、433頁以降に、適切な禁止剤が記載されている。具体例としては、亜ジチオン酸ナトリウム、硫化水素ナトリウム、イオウ、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ヒドラゾベンゼン、N-フェニル−β−ナフチルアミン、N-フェニルエタノールジアミン、ジニトロベンゼン、ピクリン酸、p-ニトロソジメチルアミン、ジフェニルニトロソアミン、フェノール(パラ-メトキシフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、p-tert-ブチル-ピロカテコールまたは2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノンなど)、テトラメチルチウランジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジメチルジチオカルバミン酸、ナトリウム塩、フェノチアジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシド(TEMPO)またはその誘導体の一つなどのN-オキシル化合物が挙げられる。ウレタン基または尿素基を介して化学的に結合した安定剤が構築されるように、これらが遊離脂肪族アルコール基または第一級もしくは第二級アミン基も含む場合、安定剤を化学的に組み込むこともでき、この場合、前記の種類の化合物が特に適している。この目的に特に適したものは、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-N-オキシドである。一つの好ましい変形物において、本発明のポリイソシアネートの製造時に、乾燥した酸素含有ガス、好ましくは空気を通過させる。
【0045】
本発明のポリイソシアネートを(溶媒を含まず)バルクで、または適切な溶媒もしくは反応性希釈剤の存在下で製造することができる。適切な溶媒としては、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、アセトン、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドン、溶媒ナフサ(Exxon-Chemieより芳香族含有溶媒として販売)、およびこれらの溶媒の混合物などの公知の塗料用溶媒が挙げられる。これらの溶媒中で、10%〜90%の好ましい固形分でブロッキングを行うことが好ましい。
【0046】
適切な反応性希釈剤の例は、放射線硬化において公知の化合物(Roempp Lexikon Chemie、491頁、第10版. 1998、Georg-Thieme-Verlag、シュトゥットガルトを参照)であり、特に、30mg KOH未満/g、好ましくは10mg KOH未満/gの低ヒドロキシル含有量のものである。具体例としては、次のアルコールと、アクリル酸またはメタクリル酸とのエステル、好ましくはアクリル酸とのエステルが挙げられる。一価アルコールとしては、ブタノールの異性体、ペンタノールの異性体、ヘキサノールの異性体、ヘプタノールの異性体、オクタノールの異性体、ノナノールの異性体およびデカノールの異性体;イソボルノール、シクロヘキサノールおよびアルキル化シクロヘキサノールまたはジシクロペンタノールなどの脂環式アルコール;フェノキシエタノールおよびノニルフェニルエタノールなどの芳香脂肪族アルコール;ならびにテトラヒドロフルフリルアルコールが挙げられる。これらのアルコールのアルコキシル化誘導体も用いることができる。二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオールの異性体、ネオペンチルグリコール、ヘキサン-1,6-ジオール、2-エチルヘキサンジオール、トリプロピレングリコールおよびこれらのアルコールのアルコキシル化された誘導体が挙げられる。好ましい二価アルコールは、ヘキサン1,6-ジオール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールである。より高官能性のアルコールとしては、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールおよびそれらのアルコキシル化誘導体が挙げられる。
【0047】
本発明のポリイソシアネートは、好ましくは25〜180℃の温度で、より好ましくは30〜90℃の温度で調製される。本発明の一つの態様においては、成分A1)を最初に導入し、30〜150℃の温度でA2)と、必要に応じてA3)およびA4)と、NCO含有量が所望のレベルに低下するまで反応させる。成分A2)〜成分A4)を個別に任意の順序で添加してもよく、混合物として添加してもよい。これらを混合物として添加することが好ましい。記載された成分の反応の間に、乾燥した酸素含有ガス、好ましくは空気を反応媒体に通気させることが好ましい。
【0048】
A2)、A3)およびA4)を最初に導入して、A1)に計量して入れることもできる。最初にA2)、A3)、A4)またはこれらの成分のうちの二つの混合物を導入し、次いでA1)に計量して入れ、最後に残りの成分のA2)、A3)および/またはA4)を添加することもできる。
【0049】
A2)、A3)またはA4)の添加前、添加中または添加後に、任意の添加剤を添加することができる。A4)に続けて直ちに添加剤を添加することが好ましい。溶媒または反応性希釈剤、特に安定剤が存在するのであれば、A2)の添加の前に、これの少なくとも一部を添加する。反応終了の前または後に溶媒を添加することが好ましい。溶媒がイソシアネートと反応する場合、反応が終了するまで、またはNCOの含有量が1wt%以下に低下するまで、溶媒を添加しないことが有利である。
【0050】
本発明のポリイソシアネートを、粉体塗料などの塗布時に固体である塗料の一部とする場合、本発明のポリイソシアネートとしては、好ましくは、ガラス転移温度が20〜90℃、好ましくは30〜65℃のアモルファスか、または融点が30〜130℃、好ましくは60〜120℃の結晶のいずれかであるべきである。本発明のポリイソシアネートの調製の間に脂環式基を有する化合物を利用して、この用途のためのポリイソシアネートを得てもよい。この用途のためには、成分A1)において脂環式ジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0051】
本発明のポリイソシアネートに基づく二段硬化系は、塗料、接着剤およびシーリング材の製造に適している。
【0052】
さらに、本発明に従った使用に適したものは、A4)に規定されたブロッキング剤でブロックされたNCO基を含むがいずれの放射線硬化性基も含まないポリイソシアネートと、少なくとも一つの放射線硬化性基を含むがA4)に規定されたブロッキング剤でブロックされたNCO基を含まないブロックトポリイソシアネートとの混合物を含む二段硬化組成物である。
【0053】
本発明の二段硬化組成物において、放射線硬化性基を含まないブロックトポリイソシアネートが存在する可能性がある。これらのポリイソシアネートは、成分A1)に関して上記で説明したイソシアネートに基づくものであり、A4)に規定されたブロッキング剤でブロックされたものである。これらのポリイソシアネートの製造方法は公知である。
【0054】
本発明の二段硬化組成物において、少なくとも一つのイソシアネート反応性基と、必要に応じて含んでもよい一つ以上の放射線硬化性基とを含む一つ以上の化合物が存在する可能性もある。これらの化合物は単量体でも、オリゴマーでもまたはポリマーでもよく、少なくとも一つ、好ましくは二つ以上のイソシアネート反応性基を含んでもよい。
【0055】
これらの化合物の例としては、低分子量で短鎖の(すなわち2〜20の炭素原子を含む)脂肪族、芳香脂肪族もしくは脂環式ジオールまたはトリオールが挙げられる。ジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、ジエチルオクタンジオールの位置異性体、1,3-ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオナートが挙げられる。適切なトリオールの例としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンまたはグリセロールが挙げられる。官能価がより高い適切なアルコールとしては、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールまたはソルビトールが挙げられる。
【0056】
さらに、適切なものとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ヒドロキシ官能性アクリル樹脂、ヒドロキシ官能性ポリウレタンまたは対応するハイブリッドなどのより高分子量のポリオールがある(Roempp Lexikon Chemie、465-466頁、第10版. 1998、Georg-Thieme-Verlag、シュトゥットガルトを参照)。
【0057】
さらに、適切なものとしては、A2)の下に記載された化合物、さらにはイソシアネート反応性のオリゴマーまたはポリマー、アクリレート基および/またはメタクリレート基を含む不飽和化合物、上記単量体化合物の単独物またはそれらの組み合わせがある。好ましいものは、OH含有量が30〜300mg KOH/gの、好ましくは60〜200mg KOH/gの、より好ましくは70〜120mg KOH/gのヒドロキシ含有ポリエステルアクリレートである。これらのポリエステルアクリレートの調製法は、DE-A 4 040 290(p.3, l.25〜p.6, l.24)、 DE-A-3 316 592(p.5, l.14〜p.11, l.30)およびP.K.T. Oldring (編)、Chemistry & Techology of UV & EB Formulations For Coatings, Inks & Paints、第2巻、1991, SITA Technology、ロンドン、123-135頁に記載されている。
【0058】
OH含有量が20〜300mg KOH/gの、好ましくは100〜280mg KOH/gの、より好ましくは150〜250mg KOH/gの公知ヒドロキシ含有エポキシアクリレート(メタクリレート);OH含有量が20〜300mg KOH/gの、好ましくは40〜150mg KOH/gの、より好ましくは50〜100mg KOH/gのヒドロキシ含有ポリウレタンアクリレート(メタクリレート);およびそれらの互いの混合物、およびヒドロキシ含有不飽和ポリエステルとの混合物、ポリエステルアクリレート(メタクリレート)との混合物またはヒドロキシ含有不飽和ポリエステルのポリエステルアクリレート(メタクリレート)との混合物を用いることもできる。
【0059】
これらの化合物は、P.K.T. Oldring (編)、 Chemistry & Technology of UV & EB Formulations For Coatings, Inks & Paints、第 2巻、1991, SITA Technology、ロンドン、37-56頁に記載されている。ヒドロキシル含有エポキシアクリレート(メタクリレート)は、特にアクリル酸および/またはメタクリル酸と、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ヘキサンジオールおよび/またはブタンジオールの単量体、オリゴマーまたはポリマーのエポキシド(グリシジル化合物)との反応生成物、またはこれらのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体に基づくものである。
【0060】
本発明の硬化組成物は、放射線硬化性基を有するがNCO基もNCO反応性基も含まない化合物を含んでもよい。硬化組成物に基づき75wt%の量まで、好ましくは50wt%未満の量でこれらの化合物を用いることができる。しかしながら、これらの化合物は用いないほうが好ましい。
【0061】
このような化合物の例は、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリシロキサンなどのポリマー、および放射線硬化性基を有する化合物である。このような化合物の例としては、放射線硬化から公知の反応性希釈剤(Roempp Lexikon Chemie、491頁、第10版. 1998、Georg-Thieme-Verlag、シュトゥットガルトを参照)、またはヒドロキシル基の含有量が30mg KOH未満/g、好ましくは20mg KOH未満/g、より好ましくは10mg KOH未満/gという条件で、放射線硬化から公知のバインダー、たとえばポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどが挙げられる。
【0062】
具体例としては、B4)の成分としてのアクリル酸またはメタクリル酸の、好ましくはアクリル酸の、下記アルコールとのエステルが挙げられる。一価アルコールとしては、ブタノールの異性体、ペンタノールの異性体、ヘキサノールの異性体、ヘプタノールの異性体、オクタノールの異性体、ノナノールの異性体およびデカノールの異性体、さらにはイソボルノール、シクロヘキサノールおよびアルキル化シクロヘキサノール、ジシクロペンタノールなどの脂環式アルコール、フェノキシエタノールおよびノニルフェニルエタノールなどの芳香脂肪族アルコール、さらにはテトラヒドロフルフリルアルコールが挙げられる。これらのアルコールのアルコキシル化誘導体を用いることも可能である。二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオールの異性体、ネオペンチルグリコール、ヘキサン-1,6-ジオール、2-エチルヘキサンジオール、トリプロピレングリコールおよびこれらのアルコールのアルコキシル化誘導体などのアルコールが挙げられる。好ましい二価アルコールは、ヘキサン-1,6-ジオール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールである。官能価がより高いアルコールとしては、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールまたはそれらのアルコキシル化された誘導体が挙げられる。
【0063】
本発明の硬化組成物中に存在するNCOのブロッキングを触媒することが知られている化合物を用いることができる。たとえば、ポリウレタン化学に広く用いられる触媒活性ルイス酸または触媒活性アミンが好ましい。ブロッキング反応の触媒として特に好ましいものは、エチルヘキサン酸ビスマスまたはジラウリン酸ジブチルスズ、DBTLなどの有機スズ触媒および無機ビスマス触媒である。亜鉛触媒を用いてもよい。
【0064】
硬化温度を考慮に入れつつ、触媒の量を硬化の要件に適合させることができる。触媒の適切な量は、総固形分に基づき0.01〜2wt%であり、好ましくは0.05〜1wt%であり、より好ましくは0.07〜0.6wt%である。比較的高い焼付け温度で、すなわち約160℃以上で硬化させる場合、触媒無しで実施することもできる。
【0065】
さらに、ニス、塗料、印刷用インク、シーリング材および接着剤用の公知の添加剤も存在していてよい。これらには、化学放射線によって活性化することができ、対応する重合可能な基のフリーラジカル重合を引き起こす重合開始剤が含まれる。紫外線または可視光線で活性化される光開始剤が好ましい。光開始剤は知られており、単分子(I型)重合開始剤および二分子(II型)重合開始剤の両方が挙げられる。適切な(I型)系としては、芳香族ケトン化合物、たとえば第三級アミンと組み合わせたベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、アントロン、ハロゲン化ベンゾフェノンまたはこれらの混合物が挙げられる。また、適切なものとしては、たとえば、ベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシルエステル、カンファーキノン、α-アミノアルキルフェノン、α,α-ジアルコキシアセトフェノンおよびα-ヒドロキシアルキルフェノンなどの(II型)重合開始剤がある。本発明の塗料を、水をベースとして加工する場合、水性塗料内に簡単に組み込むことができる光開始剤を用いることが好ましい。このような製品の例としては、Irgacure(登録商標)500、Irgacure(登録商標)819 DW (Ciba、ランペルトハイム、ドイツ)およびEsacure(登録商標)KIP (Lamberti, Aldizzate,イタリア)が挙げられる。これらの化合物の混合物を用いることもできる。
【0066】
重合可能な成分の硬化を熱によって開始する場合、適切な重合開始剤としては、ジアシルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのペルオキシ化合物、ジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシドなどのアルキルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルベンゾアートなどのアルキル過エステル、ジ-tert-ブチルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド、ジセチルペルオキシドジカルボナートなどのペルオキシジカルボナート、アンモニウムペルオキシ二硫酸またはカリウムペルオキシ二硫酸などの無機ペルオキシド、2,2'-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、1-[(シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2'-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2'-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)プロピオンアミド、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミドなどのアゾ化合物、およびベンズピナコールが挙げられる。水性塗料系にとって好ましいものは、水溶性化合物か、または水性エマルジョンの形態で存在する化合物である。これらのラジカル重合開始剤を、促進剤と公知の方法で組み合わせてもよい。
【0067】
追加的に用いることができる添加剤は、本発明のポリイソシアネートの製造に関連して先に記載した安定剤、UV吸収剤および立体障害アミン(HALS)などの光安定剤、酸化防止剤、充填剤、沈殿防止剤、消泡剤および/または湿潤剤などの塗料用添加剤、流れ調整剤、反応性希釈剤、可塑剤、触媒、補助的な溶媒および/または増粘剤、顔料、染料および/またはつや消し剤である。光安定剤および種々のタイプを使用することは、A. Valet, Lichtschutzmittel fuer Lacke, Vincentz, Verlag、ハノーバー、1996に記載されている。
【0068】
本発明の硬化組成物は通常、-20〜120℃の温度、好ましくは10〜90℃の温度、より好ましくは20〜60℃の温度で、塗料組成物の成分を相互に任意の順序で混合することによって製造される。このケースにおける塗料組成物は室温では固体でも、液体でも溶液でもまたは分散物でもよい。粉体塗料技術からの公知の装置を用いて、特に押出機、ミルおよび分級機を用いて粉体塗料を製造する。液体塗料、溶解塗料または分散塗料については、液体系の塗装技術からの公知の撹拌機メカニズムおよび分散装置が適している。
【0069】
本発明の組成物において、B3)におけるイソシアネート反応性基に対するブロックトイソシアネート基の比は、0.5〜2が好ましく、0.8〜1.5がより好ましく、1:1が最も好ましい。
【0070】
本発明の塗料を、広範囲の基材に、たとえば噴霧、ロール塗り、ナイフコーティング、注入、噴出、はけ塗り、含浸またはディッピングなどの公知の技術によって適用することができる。適切な基材の例としては、木材、特に針金、コイル、缶またはコンテナに用いられる金属を含む金属、さらにはプラスチック、特にABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR-RM、SMC、BMC、PP-EPDMおよびUP(DIN 7728パート1に基づいた略号)、紙、皮、繊維、フェルト、ガラス、電子組立品または鉱物基材が挙げられる。記載したものの中からの種々の材料から構成された基材、または既に塗装された基材を塗装することもできる。シートを作製するために、塗料を基材に一時的にのみ塗布し、次いで部分的にまたは完全に硬化させて再びはがすことも可能である。
【0071】
塗布された膜の(硬化前の)厚さは通常、0.5〜5000μmの間であり、5〜1500μmの間が好ましく、15〜1000μmの間がより好ましい。
【0072】
高エネルギー照射、すなわちたとえば、UV照射または日光、たとえば200〜750nmの波長の光に曝露することによって、または高エネルギー電子(電子線、150〜300keV)の照射によって、放射線硬化を行うことが好ましい。光またはUV光に用いられる線源の例としては、高圧水銀蒸気ランプが挙げられる。ガリウムまたは鉄などの他の元素をドープすることによって、水銀蒸気を改変することも可能である。レーザー、パルスランプ(UV閃光ランプの名称で知られている)、ハロゲンランプまたはエキシマエミッターも適している。機械的な装置を用いて照射される材料を線源の前で移動させるようにランプは静止状態でもよく、または、硬化の過程で照射される材料を静止させたままで、ランプを移動式としてもよい。UV硬化の場合、架橋に通常十分な照射量は80〜5000 mJ/cm2である。
【0073】
酸素が無い状態で、たとえば不活性ガス雰囲気下または酸素を低減した雰囲気下で、照射を行うことができる。適切な不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素、希ガスまたは燃焼ガスが好ましい。照射を透過する媒体で覆われた塗料を用いて照射を行うこともできる。具体例としては、ポリマーフィルム、ガラスまたは水などの液体が挙げられる。
【0074】
用いられる任意の重合開始剤の性質および濃度は、照射量および硬化条件に基づいて、公知の方法で変化させることができる。
【0075】
特に好ましいのは、静止状態で取り付けられた高圧水銀ランプを用いて硬化を行うことである。次いで、光開始剤を、塗料の固形分に基いて0.1〜10wt%の濃度で、好ましくは0.2〜3.0wt%の濃度で用いる。これらの塗料を、200〜600nmの範囲の波長で測定して200〜3000mJ/cm2の照射量を用いて硬化させることが好ましい。
【0076】
本発明の塗料を、熱エネルギーに曝露することによってさらに硬化させる。この熱エネルギーを、照射、熱伝導および/または塗料中への対流によって導入してもよい。塗装技術からの公知のオーブン、近赤外ランプおよび/または赤外ランプを用いることは通常のことである。熱エネルギーを供給することにより、塗料組成物のイソシアネート反応性基によるブロックトイソシアネート基の架橋反応が開始される。
【0077】
化学放射線への曝露、および熱エネルギーの発生により、操作中に二つの独立した化学メカニズムが生じるので、化学放射線/熱エネルギーの順序、従って、メカニズムの展開順序は任意に組み合わせることができる。塗料技術からの公知の方法を用いて、存在するあらゆる有機溶媒および/または水を最初に除去することが好ましい。一つの好ましい方法においては、化学放射線に曝露することによって、完全にまたは部分的に硬化を行う。その直後にまたは後に、同じ場所または他の場所で、熱硬化させることができる。この方法において、たとえば、破損を伴わずに基材の変形に耐えられる柔らかい塗膜を最初に形成させることができ、次いで、これらの塗膜をさらに熱硬化させることができる。従って、コイルとして知られた形状の、既に塗装された金属を塗装し、化学放射線に最初にさらすことによって塗膜を硬化させて柔らかい塗膜を得ることができる。次いで、押し抜き法などの公知の方法によって、塗装されたコイルから特定の部分を取り外すことができ、そして機械的に、塗膜に破損または裂けめが生じないようにして新しい形状を作ることができる。それに続けて、熱エネルギーを利用して、塗料組成物のイソシアネート反応性基とブロックトイソシアネート基との架橋反応を開始させる。それによって、特に車体または車の製造に用いられる部品用のクリアコート物質として適した、抵抗性が強い塗膜が得られる。
【0078】
別の態様においては、最初にポリマーフィルムを塗装し、その塗膜を化学放射線で硬化させて、耐ブロッキング性を有するが弾力性のある層を得る。このフィルムを続けて成形品にかぶせて接着することができる。この熱形成法は、既知のように、温度を高くすることによって行うことが好ましい。塗膜が架橋されて高抵抗性の層となるように、形成操作中または操作後に、温度をブロックトイソシアネート基と塗料のイソシアネート反応性基との架橋が生じるのに必要な温度に到達させる。
【0079】
別の態様においては、最初に熱エネルギーによって架橋し、次いで、0〜300℃の温度、好ましくは23〜200℃の温度、より好ましくは80〜150℃の温度で化学放射線に曝露することによって、さらに得られる塗装済み基材の表面、または本発明の塗料を含む部分の表面をさらに架橋することもできる。特に、インモールドコーティングとして知られる塗膜を熱硬化させる方法を、次に続く金型の外からの化学放射線により架橋させる方法と組み合わせることが有利である。
【0080】
本発明およびその好ましい態様は、以下のとおりである。
(1)少なくとも一つの放射線硬化性基、および少なくとも一つの式II)
【化4】

[式中、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキル基またはシクロアルキル基であり、
R4は、C1-C4アルキル基、C6-C10シクロアルキル基またはC7-C14アラルキル基であり、
xは1〜5の整数である。]
で示される構造単位を含む、ブロックトポリイソシアネート。
(2)
式II)の該構造単位が、イソシアネート基とN-tert-ブチル-N-ベンジルアミン、N-イソプロピル-N-ベンジルアミン、N-エチル-N-ベンジルアミン、N-メチル-N-ベンジルアミンまたはN-イソプロピル-N-(ジメチル)ベンジルアミンとの反応生成物である、前記(1)項に記載のブロックトポリイソシアネート。
(3)式II)の該構造単位が、イソシアネート基とN-tert-ブチル-N-ベンジルアミンとの反応生成物である、前記(1)項に記載のブロックトポリイソシアネート。
(4)該イソシアネート基が、脂肪族的におよび/または脂環式に結合したイソシアネート基のみを含むポリイソシアネートに由来する、前記(2)に記載のブロックトポリイソシアネート。
(5)該イソシアネート基が、脂肪族的におよび/または脂環式に結合したイソシアネート基のみを含むポリイソシアネートに由来する、前記(3)に記載のブロックトポリイソシアネート。
(6)少なくとも一つの放射線硬化性基、ならびに少なくとも一つの式II)
【化5】

[式中、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキル基またはシクロアルキル基であり、
R4は、C1-C4アルキル基、C6-C10シクロアルキル基またはC7-C14アラルキル基であり、
xは1〜5の整数である。]
で示される構造単位を含む、ブロックトポリイソシアネートを製造する方法であって、
A1)有機ポリイソシアネートを、
A2)少なくとも一つのイソシアネート反応性基および少なくとも一つの放射線硬化性基を含む化合物、
A3)必要に応じてA2)以外のイソシアネート反応性化合物、および
A4)式I)
【化6】

[式中、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキル基またはシクロアルキル基であり、
R4は、C1-C4アルキル基、C6-C10シクロアルキル基またはC7-C14アラルキル基であり、
xが1〜5の整数である。]
で示されるブロッキング剤と反応させる工程を含む方法。
(7)成分A1)が、脂肪族的におよび/もしくは脂環式に結合したイソシアネート基のみを含むポリイソシアネートまたはポリイソシアネートの混合物を含む、前記(6)項に記載の方法。
(8)成分A4)が、N-tertブチル-N-ベンジルアミン、N-イソプロピル-N-ベンジルアミン、N-エチル-N-ベンジルアミン、N-メチル-N-ベンジルアミンまたはN-イソプロピル-N-(ジメチル)ベンジルアミンを含む、前記(6)項に記載の方法。
(9)成分A4)が、N-tert-ブチル-N-ベンジルアミン、N-イソプロピル-N-ベンジルアミン、N-エチル-N-ベンジルアミン、N-メチル-N-ベンジルアミンまたはN-イソプロピル-N-(ジメチル)ベンジルアミンを含む、前記(7)に記載の方法。
(10)成分A4)がN-tert-ブチル-N-ベンジルアミンを含む、前記(6)項に記載の方法。
(11)成分A4)がN-tert-ブチル-N-ベンジルアミンを含む、前記(7)に記載の方法。
(12)A1)におけるNCO1当量あたり、0.2〜0.8当量のA4)および0.2〜0.8当量のA2)を用いる、前記(6)項に記載の方法。
(13)A1)におけるNCO1当量あたり、0.2〜0.8当量のA4)および0.2〜0.8当量のA2)を用いる、前記(7)に記載の方法。
(14)A1)におけるNCO1当量あたり、0.2〜0.8当量のA4)および0.2〜0.8当量のA2)を用いる、前記(8)に記載の方法。
(15)A1)におけるNCO1当量あたり、0.2〜0.8当量のA4)および0.2〜0.8当量のA2)を用いる、前記(9)に記載の方法。
(16)A1)におけるNCO1当量あたり、0.2〜0.8当量のA4)および0.2〜0.8当量のA2)を用いる、前記(10)に記載の方法。
(17)A1)におけるNCO1当量あたり、0.2〜0.8当量のA4)および0.2〜0.8当量のA2)を用いる、前記(11)に記載の方法。
(18)前記(1)項に記載のブロックトポリイソシアネートを含む、二段硬化性の塗料、接着剤またはシーリング材。
【0081】
本発明をさらに例により説明するが、下記の実施例によって制限する意図はない。実施例中、特に明示のない限り、すべての部およびパーセンテージは重量基準である。
【0082】
実施例
DIN EN ISO 11909(ジブチルアミンによる滴定)に従った滴定によって、遊離NCO基の含有量を測定した。
【0083】
回転式粘度計(ViscoTester(登録商標) 550およびHaake PK 100、Thermo Haake GmbH、D-76227、カールスルーエ)を用いて、23℃での粘度を測定した。
【0084】
Perkin Elmer Paragon 1000 FT-IR装置で測定を行った。NaClプレートの間で実施した。測定対象の物質はこれ以上希釈しなかった。
【0085】
Desmodur(登録商標)N3300: イソシアヌレート基を有するHDIポリイソシアネート、NCO含有量21.8%、23℃での粘度3000 mPas, Bayer AG、レーバークーゼン、DE。
【0086】
Desmophen(登録商標)A 870: ポリアクリレートポリオール、入手した状態でのOH含有量約2.95%、酢酸ブチル中70%、Bayer AG、レーバークーゼン、 DE。
【0087】
Desmophen(登録商標)VP LS 2089: ポリエステルポリオール、入手した状態でのOH含有量約6%、酢酸ブチル中75%、Bayer AG、レーバークーゼン、 DE。
【0088】
Tinuvin 292:塗料用光安定剤、 Ciba AG、バーゼル、CH。
Tinuvin 400:塗料用光安定剤、 Ciba AG、バーゼル、 CH。
BYK306:シリコン表面添加剤、 BYK-Chemie GmbH、 Wesel、DE。
Irgacure 184/Luc. TPO:Ciba(バーゼル、 CH)の光開始剤、BASF(Ludwigshafen、 DE)のLucirin TPO-光開始剤。
【0089】
比較例1−DMPでブロックされた、アクリレート官能性ポリイソシアネート
還流冷却器および内部温度計を具備する1000mLの四つ口フラスコに、366.7g(1.9eq)のDesmodur(登録商標)N3300 (NCO含有量21.8%、当量192.7g)および162.4gの酢酸ブチルを充填した(最終生成物の固形分:80%)。この混合物に、安定剤として、0.36gの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(イノール)を添加した。混合物を撹拌して均一にし、温度を60℃とした。この温度で、113.2g(1.18eq)の3,5-ジメチルピラゾールを添加し、混合物を、NCO含有量が理論レベルに達するまで撹拌した。この時点で、0.0064gのオクチル酸スズを添加した。さらに、15分かけて、ヒドロキシル価が235mg KOH/gであるメタクリル酸グリシジルとアクリル酸の1:1付加物169.7g(0.72eq)を添加した。混合物の温度を、反応によりNCOの含有量がゼロに達するまで60℃で保持した。IRスペクトルにおける2260cm-1でのバンド(イソシアネート基についてのバンド)の減少を介して検出が可能なIR分光法によって、テストを行った。生成物の色数は約53Aphaであり、23℃での粘度は4470mPasであり、ブロックトNCOの含有量は6.09%であり、ブロックトイソシアネートに基づく当量は689.7g/eqであった。
【0090】
実施例2−本発明によるブロックトアクリレート官能性ポリイソシアネート
還流冷却器および内部温度計を具備する1000mLの四つ口フラスコに、窒素雰囲気で、366.7g(1.90eq)のDesmodur(登録商標)N3300 (NCO含有量21.8%、当量192.7g)および182.2gの酢酸ブチルを充填した(最終生成物の固形分:80%)。安定剤として、それぞれ0.373gのイノールおよびトリフェニルホスフィンを混合物に添加した。混合物を撹拌して均一にし、60分かけて、192.4g(1.18eq)のN-tert-ブチル-N-ベンジルアミン(当量163.3g)を滴下した。滴下の間に、水浴冷却により、反応温度を45℃以下に維持した。アミンの添加を終えた後、NCOの理論含有量に達するまで、混合物を45℃でさらに15分間撹拌した。50ppmのDBTLを、N-tert-ブチル-N-ベンジルアミンによるブロックトポリイソシアネートに添加し、そして15分間かけて、ヒドロキシル数が235mg KOH/gであるメタクリル酸グリシジルとアクリル酸の1:1付加物169.7(0.0.72eq)を添加した。混合物を60℃に加熱し、反応によりNCO含有量がゼロに達するまで、この温度を保持した。IRスペクトルにおける2260cm-1でのバンド(イソシアネート基についてのバンド)の減少を介して検出が可能な分光法によって、テストを行った。生成物の色数は17Aphaであり、23℃での粘度は7780mPasであり、ブロックトNCO含有量は5.43%であり、ブロックトイソシアネートに基づく当量は773.5gであった。
【0091】
使用例:
性能を調べるために、実施例1および実施例2でそれぞれ調製したポリイソシアネートそれぞれから塗膜を形成し、これらの膜を条件を変えて硬化させた。塗料組成物の組成を、以下の表に記載する:
【0092】
【表1】

【0093】
ガラス上、金属コイル−コートシート上および温度勾配オーブン用金属シート上での塗膜の作製
塗膜の一般的な特性を測定するために、骨形100μm手動塗布機を用いて、塗料組成物1および2をガラス板に塗布した。
【0094】
初期の黄変、過焼付けによる黄変および黄変の増加のような塗膜の特性を調べるために、骨形100μm手動塗布機を用いて、金属コイル−コートシート上に塗料組成物1および2を塗布した(溶媒含有白色下塗り「Polarweiss」と共に塗布した)。
【0095】
やに、ブレーキ液Hydraulan400、パンクレアチン、水酸化ナトリウム溶液(NaOH)および硫酸(H2SO4)に対する耐性をテストするために、完成品塗料を鉄製パネル(420mm×98mm)に塗布した。このパネルは、温度勾配オーブンで用いるために特別に作られたものであった(温度勾配オーブンで測定するためのサンプルの調製も参照のこと)。
【0096】
塗膜の測定の全体的な結果を、下記の表に示す。
【0097】
乾燥機で50℃にて15分間かけて、すべての塗膜を溶媒から除去した。用いたUVランプは、IST Strahlentechnik(ヌエルティンゲン、ドイツ)製の装置であり、1500mJ/cm2で照射した(CKランプ、80W/cm)。UV照射および/または熱硬化を終えた後、それぞれのケースにおいて室温で60分間の後に、ケーニッヒ振り子硬度を測定した。
【0098】
塗布後に、完成品塗料を80℃で10分間、脱気した。その後、下記のように、各硬化方法のうちの二つを異なる順序で実施した:
a)UV照射(CK1500mJ/cm2)+17分間で120℃の熱硬化
b)UV照射+17分間で140℃の熱硬化
c)17分間で120℃の熱硬化+UV照射
d)17分間で140℃の熱硬化+UV照射
【0099】
塗膜のテストの結果を下記に示す:
【表2】

【表3】

【0100】
[1]:FAM (Fachausschuss Mineral und Brennstoffnormung)(鉱物および燃料の標準化のための技術委員会)、は自動車産業の用語であり、車体の塗装の抵抗性をテストするために用いられる特定の軽油/溶媒の組み合わせについての用語である。
DIN 51 604 (パート1)の一般的なガイドラインに従ってテストに用いた組成物は、次の組成のFAMテスト燃料である:
50体積%のキシレン
30体積%のイソオクタン
15体積%のジイソブチレン
5体積%のエタノール
【0101】
方法と評価:
テスト用燃料に約10秒間浸した脱脂綿パッドを、サンプルパネル上に置き、直ちに時計皿などで蓋をした。10分後にパッドを取り出し、柔らかい布でその領域を拭きとり、評価した:
【0102】
[2-4]:クリアコート物質を焼付けた後、DIN 6174 (CIELAB)に基づいて黄色値bを測定した。その後、焼付け温度よりも20°K高い温度で塗料を30分間過焼付けした。そして黄色値を再度測定した。二つの黄色値の差(Δb)を、熱による塗料の黄変安定性の指標とした。
[2]:初期の黄変、30μmおよび50μmでのΔb。
[3]:30分間140℃/30分間160℃での過焼付けによる黄変−異なる膜厚でのΔb。
[4]:Δbの合計=二つのΔ値の間の差
[5]:DIN 55668に従って引っかいた前後での、DIN EN ISO 2813に基づいて測定された光沢;ブラシの使用期間:36時間の操作。反射率計を用いた測定;反射率計の原理は、方向づけられた反射の測定に基づく。この目的のために、狭い範囲の反射角内の反射光の強度を測定する。
[8]:相対残留光沢(%)は、DIN 55668に基づいて引っかいた後の光沢[20°の入射角]が、引っかく前の光沢と比べてどれほど高いかを示す(NB:引っかいた方向を横断する測定)。この値が高いほど、耐引っかき性がより優れている。
[10]:耐溶媒性:用いた溶媒:X=キシレン、MPA=酢酸メトキシプロピル、EA=酢酸エチル、Ac=アセトン;接触時間は5分間、次いで目視による評価、および1:変化なしから5:塗膜の剥離までに従った分類。
[11-16]:やに(樹脂)、ブレーキ液、パンクレアチン(鳥の排泄物)、水酸化ナトリウム溶液、硫酸および軽油に対する耐性についてのテストを行った。
【0103】
入射する太陽放射により生じる実際の負荷に対応するために、耐薬品性(軽油を除く;項目5参照)を、種々の温度(36℃〜68℃)で調べた。この目的のために、BYK-Gardner製のモデル2601、温度勾配オーブンを用いた。この装置は、30℃〜250℃の温度を連続的に設定することができる。
【0104】
温度勾配オーブンで調査するためのサンプルの調製
温度勾配オーブンで用いるために特別に作製した鉄製パネル(420 mm x 98 mm x 1 mm)上で、テストを行った。手動塗布機を用いて、再び塗布した。
【0105】
供給会社: Franz Krueppel−Industriebedarf, Postfach 13 04 36, Hoeffgeshofweg 17-19, 47807 Krefeld
【0106】
このパネルをキシレンを用いて十分に洗浄した。
塗料組成物:−表面仕上げ、溶媒含有または水性
−下塗り、溶媒含有または水性(必要に応じて)
−テスト用クリアコート
【0107】
紙片を付けたテスト用パネルは、BYK-Gardnerから提供される。底部端面において、紙片に個々の温度の点/加熱区分の印を付ける(1〜45の番号を付ける)。上部紙片に、温度および測定点/加熱区分を明示することもできる。
【0108】
方法
大気の湿度がテスト結果に与える影響を完全に排除することは不可能であるので、標準的な条件下(23℃、50%RH)でテストを行った。
【0109】
温度勾配を35℃〜80℃に設定
温度差:加熱区分あたり1°K
36℃から一定の勾配が見られる
【0110】
被験化学物質を適用し、次のスキームに基づいて36℃から開始した:
【表4】

【0111】
*) 原パンクレアチンは冷却(製造会社によれば15℃未満で)保存しなければならない。
【0112】
パンクレアチン/水の混合物は常に新鮮なものを準備すべきである。この溶液の使用時間は4時間を超えてはならない。
【0113】
物質の適用には、25μLチップ付きエッペンドルフマルチピペット4780(Eppendorf-COMBITIPS, 1.25 mL)、または25μLチップ付きエッペンドルフマルチピペットプラス4980(Eppendorf-COMBITIPS plus, 2.5mL)を用いて行うのが最適である。
【0114】
適用開始からオーブンでの曝露開始までの時間は10分を超えてはならない。
【0115】
用意ができたパネルに、温度勾配オーブンで、30分間、36℃〜68℃の温度負荷を与える(オーブンの設定は35℃〜80℃)。この時間の最後に、やにおよびブレーキ液を、まず最初に柔らかい布地と揮発油で穏やかにではあるが十分に除去してパネルを清浄にしなければならない。残りの化学物質は温水を用いて洗い流す。
【0116】
評価
標準的な条件(23℃、50%RH)下で、1時間の保存および24時間の保存の後、評価を行った。目視による評価の前に、にじみ出たあらゆる薬剤を布地を用いて除去しなければならない。
【0117】
各化学物質について記載したテストの結果は、(代替手段が無い場合には)最初に目視で破損が認められた時の温度の値で表す。
【0118】
要約すれば、DMPブロックト硬化剤を含む比較塗料組成物(塗料組成物1a〜1d)と比べた場合、本発明によるブロックトポリイソシアネートを含むトップコート組成物(塗料組成物2a〜2d)は、膜の光学的性質、耐引っかき性、耐硫酸性および耐水性がより優れていること、さらにはUV硬化に加えて熱硬化の後の黄変も実質的に少ないことが示されたと言うことができる。
【0119】
以上、説明の目的で本発明を詳細に記載し、このような詳細な事項は単にその目的のためのものであり、当業者であれば、請求の範囲によって制限され得ることを除いて、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、その変形物を作ることができると理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの放射線硬化性基、および少なくとも一つの式II)
【化1】

[式中、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキル基またはシクロアルキル基であり、
R4は、C1-C4アルキル基、C6-C10シクロアルキル基またはC7-C14アラルキル基であり、
xは1〜5の整数である。]
で示される構造単位を含む、ブロックトポリイソシアネート。
【請求項2】
式II)の該構造単位が、イソシアネート基とN-tert-ブチル-N-ベンジルアミン、N-イソプロピル-N-ベンジルアミン、N-エチル-N-ベンジルアミン、N-メチル-N-ベンジルアミンまたはN-イソプロピル-N-(ジメチル)ベンジルアミンとの反応生成物である、請求項1に記載のブロックトポリイソシアネート。
【請求項3】
該イソシアネート基が、脂肪族的におよび/または脂環式に結合したイソシアネート基のみを含むポリイソシアネートに由来する、請求項2に記載のブロックトポリイソシアネート。
【請求項4】
少なくとも一つの放射線硬化性基、ならびに少なくとも一つの式II)
【化2】

[式中、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキル基またはシクロアルキル基であり、
R4は、C1-C4アルキル基、C6-C10シクロアルキル基またはC7-C14アラルキル基であり、
xは1〜5の整数である。]
で示される構造単位を含む、ブロックトポリイソシアネートを製造する方法であって、
A1)有機ポリイソシアネートを、
A2)少なくとも一つのイソシアネート反応性基および少なくとも一つの放射線硬化性基を含む化合物、
A3)必要に応じてA2)以外のイソシアネート反応性化合物、および
A4)式I)
【化3】

[式中、
R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキル基またはシクロアルキル基であり、
R4は、C1-C4アルキル基、C6-C10シクロアルキル基またはC7-C14アラルキル基であり、
xが1〜5の整数である。]
で示されるブロッキング剤と反応させる工程を含む方法。
【請求項5】
A1)におけるNCO1当量あたり、0.2〜0.8当量のA4)および0.2〜0.8当量のA2)を用いる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載のブロックトポリイソシアネートを含む、二段硬化性の塗料、接着剤またはシーリング材。

【公開番号】特開2006−152302(P2006−152302A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343244(P2005−343244)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】