説明

ブローチ研削装置及びブローチ研削方法

【課題】ブローチの研削開始位置に対する研削砥石の位置合せ、いわゆる刃合せを効率的且つ安全に実施することが可能なブローチ研削装置及びブローチ研削方法を提供する。
【解決手段】ブローチ測定プログラムを実行してブローチ測定装置17の測定子30をブローチに接触させると共に、研削砥石測定プログラムを実行して研削砥石測定装置32の測定子35を研削砥石14に接触させる。これにより、ブローチの研削開始位置及びピッチ、並びに研削砥石14の位置を、自動で迅速、安全、且つ高い精度で測定してNC制御装置に教示する。したがって、NC制御装置に教示したブローチの研削開始位置及び研削砥石の位置に基き、ブローチ11の研削開始位置に対する研削砥石14の位置合せ、いわゆる刃合せを自動で迅速、安全、且つ高い精度で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローチ研削装置及びブローチ研削方法に関するもので、特に、NC制御装置を備えるブローチ研削装置及びその装置を用いるブローチ研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、丸型ブローチ(以下、単にブローチと称する)は、歯車等の金属部品の穴加工に用いられる。ブローチは、切刃が摩耗するため、ブローチ研削盤によって切刃を研削、すなわち刃付けを行う必要がある。例えば、特許文献1には、回転する研削砥石がブローチのすくい面に接触した瞬間をAE(Acoustic Emission)センサによって検出することで、当該研削砥石の切刃の位置を認知するブローチ自動研削方法が開示されている。この従来のブローチ自動研削方法によれば、研削砥石の摩耗、経時による砥石軸の熱変形、あるいは研削時におけるブローチの昇温による熱変形の影響を排除することができる。しかしながら、上記従来のブローチ自動研削方法では、回転させた研削砥石をブローチの切刃のすくい面に接触させるので、研削砥石を極めて低速で軸送りする必要があり、すべての切刃の位置を認知するのに多大な時間を必要とする。さらに、上記従来のブローチ自動研削方法では、予めブローチ研削装置に研削砥石の位置を教示する、いわゆる刃合せを実施する必要がある。刃合せに際して、高い速度で回転させた研削砥石を手動操作してブローチの切刃に接触させる必要があり、この作業は危険を伴う。
【特許文献1】特開昭62−107947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ブローチの研削開始位置に対する研削砥石の位置合せ、いわゆる刃合せを効率的且つ安全に実施することが可能なブローチ研削装置及びブローチ研削方法を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明のブローチ研削装置は、NC制御装置を備えるブローチ研削装置であって、ブローチを心出しして軸心の回りに位置決め可能に支持する心出し手段と、研削砥石を回転駆動可能に支持する研削砥石ヘッドと、測定子を心出し手段によって支持されたブローチの所定位置に接触させてブローチの研削開始位置及びピッチを測定するブローチ測定手段と、測定子を研削砥石に接触させて研削砥石の位置を測定する研削砥石測定手段と、を具備し、ブローチ測定手段によって測定されたブローチの研削開始位置と研削砥石測定手段によって測定された研削砥石の位置に基き、研削砥石がブローチの研削開始位置に位置合せされることを特徴とする。
本発明のブローチ研削装置によれば、ブローチ測定手段の測定子をブローチに接触させることにより、当該ブローチの研削開始位置(座標)及びピッチを自動で迅速、安全、且つ高い精度で測定してNC制御手段に教示することができる。また、研削砥石測定手段の測定子を研削砥石に接触させることにより、当該研削砥石の位置(座標)を自動で迅速、安全、且つ高い精度で測定してNC制御手段に教示することができる。これにより、測定されたブローチの研削開始位置及び研削砥石の位置に基き、ブローチの研削開始位置に対する研削砥石の位置合せ、いわゆる刃合せを自動で迅速、安全、且つ高い精度で行うことができる。
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のブローチ研削方法は、NC制御装置を備えるブローチ研削装置を用いるブローチ研削方法であって、ブローチ測定プログラムを実行して、ブローチ測定装置の測定子を心出しされたブローチに接触させることによりブローチの研削開始位置及びピッチを測定するブローチ測定ステップと、研削砥石測定プログラムを実行して、研削砥石測定装置の測定子を研削砥石に接触させることにより研削砥石の位置を測定する研削砥石測定ステップと、を含み、ブローチ測定ステップによって測定されたブローチの研削開始位置と研削砥石測定ステップによって測定された研削砥石の位置とに基き、研削砥石をブローチの研削開始位置に位置合せさせることを特徴とする。
本発明のブローチ研削方法によれば、NC制御装置に格納されたブローチ測定プログラムを実行して、ブローチ測定装置の測定子をブローチに接触させることにより、当該ブローチの研削開始位置(座標)及びピッチを自動で迅速、安全、且つ高い精度で測定してNC制御装置に教示することができる。また、NC制御装置に格納された研削砥石測定プログラムを実行して、研削砥石測定装置の測定子を研削砥石に接触させることにより、当該研削砥石の位置(座標)を自動で迅速、安全、且つ高い精度で測定してNC制御装置に教示することができる。これにより、ブローチの研削開始位置及び研削砥石の位置に基き、ブローチの研削開始位置に対する研削砥石の位置合せ、いわゆる刃合せを自動で迅速、安全、且つ高い精度で行うことができる。
【0006】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、請求可能発明と称する)の態様を例示し、例示された各態様について説明する。ここでは、各態様を、特許請求の範囲と同様に、項に区分すると共に各項に番号を付し、必要に応じて他の項の記載を引用する形式で記載する。これは、請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得る。
なお、以下の各項において、(1)、(2)項の各々が、請求項1、2の各々に相当する。
【0007】
(1)NC制御装置を備えるブローチ研削装置であって、ブローチを心出しして軸心の回りに位置決め可能に支持する心出し手段と、研削砥石を回転駆動可能に支持する研削砥石ヘッドと、測定子を心出し手段によって支持されたブローチの所定位置に接触させてブローチの研削開始位置及びピッチを測定するブローチ測定手段と、測定子を研削砥石に接触させて研削砥石の位置を測定する研削砥石測定手段と、を具備し、ブローチ測定手段によって測定されたブローチの研削開始位置と研削砥石測定手段によって測定された研削砥石の位置に基き、研削砥石がブローチの研削開始位置に位置合せされることを特徴とするブローチ研削装置。
本項に記載の態様によれば、ブローチ測定手段の測定子をブローチに接触させることにより、当該ブローチの研削開始位置(座標)及びピッチを自動で迅速、安全、且つ高い精度で測定してNC制御手段に教示することができる。また、研削砥石測定手段の測定子を研削砥石に接触させることにより、当該研削砥石の位置(座標)を自動で迅速、安全、且つ高い精度で測定してNC制御手段に教示することができる。したがって、本項の態様によれば、NC制御手段に教示されたブローチの研削開始位置及び研削砥石の位置に基き、ブローチの研削開始位置に対する研削砥石の位置合せ、いわゆる刃合せを自動で迅速、安全、且つ高い精度で行うことができる。
本項の態様において、心出し手段は、例えば、テーブル上に配設される主軸台と心押し台とによって構成され、主軸台の主軸及び心押し台の心押し軸の先端の円錐形の各センタをブローチの両端部の各心出し穴にそれぞれ係合させることにより、ブローチを支持すると同時に心出しすることができる。したがって、NC制御手段の制御に基き主軸を回転駆動することにより、ブローチを軸心回りに回転及び位置決めすることができる。なお、心出し手段、延いては該心出し手段によって支持されたブローチは、例えば、テーブルをブローチ軸心に対して平行方向へ移動させることにより、当該軸心に対して平行方向へ移動及び位置決めすることができる。
本項の態様において、研削砥石ヘッドは、例えば、研削砥石が装着される回転軸、及び該回転軸を回転駆動する回転駆動部(例えば、電動モータ)を備え、鉛直方向へ移動及び位置決め可能であると共に回転軸と直交する旋回軸の回りに旋回可能である。
本項の態様において、ブローチ測定手段は、例えば、測定子を測定対象であるブローチに対して水平方向(ブローチ軸心に対して平行方向)へ相対移動させて測定子をブローチの切刃の各刃付け面に接触させることにより、当該ブローチの各切刃のブローチ軸心に対して平行方向の位置を測定することができると共に、測定子をブローチに対して鉛直方向(ブローチ軸心に対して垂直方向)へ相対移動させて測定子をブローチの刃底に接触させることにより、当該ブローチの刃底径を測定することができる。
本項の態様において、研削砥石測定手段の測定子は、例えば、研削砥石の水平方向(ブローチ軸心に対して平行方向)の位置を測定する第1測定子と、研削砥石の鉛直方向(ブローチ軸心に対して垂直方向)の位置を測定する第2測定子と、によって構成される。そして、第1測定子を研削砥石に対して水平方向へ相対移動させて第1測定子を研削砥石に接触させることにより、当該研削砥石の水平方向の位置を測定することができると共に、第2測定子を研削砥石に対して鉛直方向へ相対移動させて第2測定子を研削砥石に接触させることにより、当該研削砥石の鉛直方向の位置を測定することができる。
したがって、本項の態様によれば、研削対象であるブローチと研削砥石との相対的な位置関係を極めて高い精度でNC制御装置に教示することができ、ブローチの研削開始位置に対する研削砥石の位置合せ、いわゆる刃合せを、極めて高い精度で行うことができる。これにより、刃合せを効率化することができると共にブローチの精度、延いては該ブローチによって加工される製品の品質を高めることができる。
【0008】
(2)NC制御装置を備えるブローチ研削装置を用いるブローチ研削方法であって、ブローチ測定プログラムを実行して、ブローチ測定装置の測定子を心出しされたブローチに接触させることによりブローチの研削開始位置及びピッチを測定するブローチ測定ステップと、研削砥石測定プログラムを実行して、研削砥石測定装置の測定子を研削砥石に接触させることにより研削砥石の位置を測定する研削砥石測定ステップと、を含み、ブローチ測定ステップによって測定されたブローチの研削開始位置と研削砥石測定ステップによって測定された研削砥石の位置とに基き、研削砥石をブローチの研削開始位置に位置合せさせることを特徴とするブローチ研削方法。
本項に記載の態様によれば、ブローチ測定プログラムを実行してブローチ測定装置の測定子をブローチに接触させることにより、ブローチの研削開始位置(座標)及びピッチを自動で迅速、安全、且つ高い精度で測定してNC制御手段に教示することができる。また、研削砥石測定プログラムを実行して研削砥石測定装置の測定子を研削砥石に接触させることにより、研削砥石の位置(座標)を自動で迅速、安全、且つ高い精度で測定してNC制御装置に教示することができる。したがって、本項の態様によれば、NC制御装置に教示されたブローチの研削開始位置及び研削砥石の位置に基き、ブローチの研削開始位置に対する研削砥石の位置合せ、いわゆる刃合せを自動で迅速、安全、且つ高い精度で行うことができる。
本項の態様において、ブローチ測定プログラム及び研削砥石測定プログラムはNC制御装置に格納される。
本項の態様において、心出し装置は、(1)の心出し手段でも説明したように、例えば、テーブル上に配設される主軸台と心押し台とによって構成され、主軸台の主軸及び心押し台の心押し軸の先端の円錐形の各センタをブローチの両端部の各心出し穴にそれぞれ係合させることにより、ブローチを支持すると同時に心出しすることができる。したがって、NC制御手段の制御に基き主軸を回転駆動することにより、ブローチを軸心回りに回転及び位置決めすることができる。なお、心出し手段、延いては該心出し手段によって支持されたブローチは、テーブルをブローチ軸心に対して平行方向へ移動させることにより当該軸心に対して平行方向へ移動及び位置決めすることができる。
本項の態様において、研削砥石は、(1)の研削砥石ヘッドでも説明したように、例えば、研削砥石が装着される回転軸、及び該回転軸を回転駆動する電動モータ等の回転駆動部を備える研削砥石ヘッドによって支持されて、鉛直方向へ移動及び位置決め可能であると共に回転軸と直交する旋回軸の回りに旋回可能である。
本項の態様において、ブローチ測定装置は、(1)のブローチ測定手段でも説明したように、例えば、測定子を測定対象であるブローチに対して水平方向(ブローチ軸心に対して平行方向)へ相対移動させて測定子をブローチの切刃の各刃付け面に接触させることにより、当該ブローチの各切刃のブローチ軸心に対して平行方向の位置を測定することができると共に、測定子をブローチに対して鉛直方向(ブローチ軸心に対して垂直方向)へ相対移動させて測定子をブローチの刃底に接触させることにより、当該ブローチの刃底径を測定することができる。
本項の態様において、研削砥石測定装置の測定子は、(1)の研削砥石測定手段の測定子で説明したように、例えば、研削砥石の水平方向(ブローチ軸心に対して平行方向)の位置を測定する第1測定子と、研削砥石の鉛直方向(ブローチ軸心に対して垂直方向)の位置を測定する第2測定子と、によって構成される。そして、第1測定子を研削砥石に対して水平方向へ相対移動させて第1測定子を研削砥石に接触させることにより、当該研削砥石の水平方向の位置を測定することができると共に、第2測定子を研削砥石に対して鉛直方向へ相対移動させて第2測定子を研削砥石に接触させることにより、当該研削砥石の鉛直方向の位置を測定することができる。
したがって、本項の態様によれば、研削対象であるブローチと研削砥石との相対的な位置関係を極めて高い精度でNC制御装置に教示することができ、ブローチの研削開始位置に対する研削砥石の位置合せ、いわゆる刃合せを極めて高い精度で行うことができる。これにより、刃合せを効率化することができると共にブローチの精度、延いては該ブローチによって加工される製品の品質を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
ブローチの研削開始位置に対する研削砥石の位置合せ、いわゆる刃合せを効率的且つ安全に実施することが可能なブローチ研削装置及びブローチ研削方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態を図1〜図5に基いて説明する。図1及び図2に示されるように、本実施形態のブローチ研削装置1は、メインフレームに支持される移動テーブル2を備える。該移動テーブル2上には、主軸台3と心押し台4とによって構成される心出し装置(心出し手段)が設けられる。主軸台3は、移動テーブル2上に固定される台本体5と、台本体5によって回転可能に支持される主軸6と、主軸6をNC制御装置(NC制御手段)の制御に基き軸心回りに回転駆動するための例えばサーボモータ等の電動モータ7と、によって構成される。主軸6の端面には、円錐形に形成されたセンタ8が当該主軸6に対して同軸上に設けられる。心押し台4は、油圧シリンダ等のアクチュエータの駆動によって軸心方向(図6及び図7における左右方向)へ前進後退される心押し軸9を備える。心押し軸9の端面には、円錐形に形成されたセンタ10が主軸台3の主軸6のセンタ8に対して同軸上に設けられる。
【0011】
これにより、心出し装置は、心押し台4の心押し軸9を前進させて主軸6側のセンタ8及び心押し軸9側のセンタ10を、ブローチ11の両端面の各センタ穴に係合させることにより、当該ブローチ11を心出しさせて支持する。この状態で、NC制御装置の制御に基き主軸6が軸心回りに回転駆動されることにより、心出しされたブローチ11が軸心回りに回転及び位置決めされる。ブローチ研削装置1は、メインフレームに移動テーブル2よりも高い高さで立設された研削砥石台12を備える。研削砥石台12には、鉛直方向(図1における上下方向)へ移動及び位置決め可能な研削砥石ヘッド13が設けられる。該研削砥石ヘッド13は、NC制御装置の制御に基き、旋回軸P(図1参照)の回りに0°〜45°(図3に示される研削砥石の軸線が水平方向、すなわちブローチ11の軸線に対して平行方向を向いた状態〜図1に示される状態)の範囲内で、旋回及び位置決め可能に構成される。
【0012】
研削砥石ヘッド13には、回転軸15に装着された研削砥石14を回転駆動するための回転駆動部16が取付けられる。これにより、回転駆動部16の回転軸15と研削砥石ヘッド13の旋回軸Pとは相互に直交する。また、研削砥石ヘッド13には、ブローチ測定装置17(ブローチ測定手段)が設けられる。該ブローチ測定装置17は、研削砥石ヘッド13に取付けられる支持台18と、図3に示される研削砥石ヘッド13が旋回軸Pの回りに0°の角度位相である状態で鉛直方向(図3における上下方向)へスライド可能に支持台18に設けられるスライダ19と、ブラケット36を介してスライダ19に取付けられるセンサ20と、によって構成される。図4に示されるように、センサ20は、フランジ21が形成されたフィンガ22の基端部がハウジング23の内部空間に挿入され、該フィンガ22の基端部がハウジング23に嵌着されたガイドブッシュ24によって軸線方向(図4における上下方向)へ摺動可能に支持されたロッド25にピン26を介して連結される。
【0013】
センサ20は、フィンガ22の基端部端面とガイドブッシュ24との間に介装された圧縮コイルばね27のばね力によってフィンガ22が図4における下方向へ付勢される。これにより、フィンガ22の基端部に外力が作用されない状態では、フィンガ22のフランジ21に設けられてフィンガ22の軸心の回りに等配された複数個(例えば3個)の可動接点28がハウジング23の内部空間に配設された固定接点29に当接される。また、センサ20は、ハウジング23から突出したフィンガ22の先端部に矩形の板体によって形成された測定子30が設けられる。そして、図3に示されるように、ブローチ測定装置17は、研削砥石ヘッド13を下方へ移動させてセンサ20の測定子30を心出しされたブローチ11の刃溝に挿入し、該測定子30がブローチ11の刃溝の底部(以下、刃底と称する)に当接された時の可動接点28と固定接点29との接点のON/OFFを検出することにより、当該ブローチ11の刃溝の外径(以下、刃底径と称する)が測定される。
【0014】
また、ブローチ測定装置17では、ブローチ11の刃底に当接させた直後の測定子30が所定距離だけ上方へ移動され、続いて、図3に示されるように、移動テーブル2が水平方向へ移動、すなわち測定子30とブローチ11とがブローチ11の軸心方向(図3における左右方向)へ近接するように相対移動される。そして、測定子30がブローチ11の刃付け面31(すくい面)に当接された時の可動接点28と固定接点29との接点のON/OFFを検出することにより、当該ブローチ11の刃付け面31の位置が測定される。このようにして、刃付け面31の位置がブローチ11の最初の切刃から最終の切刃にかけて順次測定される。これにより、ブローチ11の研削開始位置及び切刃のピッチがNC制御装置によって算出され、該算出結果に基き、NC制御装置に格納された動作プログラムが編集、すなわちブローチ11に係る位置データが入力される。
【0015】
図1及び図2に示されるように、主軸台3には、研削砥石測定装置32(研削砥石測定手段)が設けられる。研削砥石測定装置32は、主軸台3から延出するアーム33と、該アーム33の先端部に取付けられたセンサ34とによって構成される。センサ34は、研削砥石14の水平方向の位置(ブローチ11の軸心に対して平行方向の位置)を測定するための第1測定子35aと、研削砥石14の鉛直方向の位置(ブローチ11の軸心に対して垂直方向の位置)を測定するための第2測定子35bと、がL字形をなすように形成される。図5に示されるように、研削砥石測定装置32では、研削砥石ヘッド13が旋回軸Pの回りに45°の角度位相であり、この状態で研削砥石14が測定子35に対して位置決めされる。さらにこの状態で、移動テーブル2が移動、すなわち研削砥石14と測定子35とが水平方向(図5における左右方向)へ相対移動され、測定子35aが研削砥石14の下端部14aに当接されることにより、当該研削砥石14の下端部14aの水平方向の位置(ブローチ11の軸心に対して平行方向の位置)が測定される。
【0016】
また、研削砥石測定装置32では、研削砥石ヘッド13を鉛直方向(下方)へ移動させて測定子35bが研削砥石14の下端部14aに当接されることにより、当該研削砥石14の下端部14aの鉛直方向の位置(ブローチ11の軸心に対して垂直方向の位置)が測定される。そして、研削砥石14の位置の測定結果に基き、NC制御装置に格納された動作プログラムが編集、すなわち研削砥石14に係る位置データが入力される。
【0017】
次に、本実施形態の作用を説明する。まず、研削対象であるブローチ11を心出し装置の主軸台3と心押し台4との間に介在させ、心押し台4の心押し軸9を前進させてセンタ8,10をブローチ11の両端面の各センタ穴に係合させる。これにより、心出し装置によってブローチ11を心出して支持する。次に、ブローチ研削装置1を手動操作してブローチ測定装置17のセンサ20をブローチ測定開始位置(本実施形態では、第1切刃と第2切刃との間の刃溝直上の位置)に位置決めさせる。位置決め完了後、NC制御装置に格納されたブローチ測定プログラム(ブローチ測定ステップ)を実行させると、センサ20が下降して測定子30がブローチ11の第1切刃と第2切刃との間の刃底に接触する。これにより、当該ブローチ11の刃底径が測定される。センサ20は、測定子30がブローチ11の刃底に接触すると指定された所定距離だけ上昇して、図3に示されるように、測定子30がブローチ11の第1切刃の刃付け面31(すくい面)に対向された状態となる。
【0018】
この状態で、センサ20を水平方向(ブローチ11の軸心に対して平行方向)へ移動させ(実際にはブローチ11が移動する)、測定子30をブローチ11の第1切刃の刃付け面31に接触させることにより、当該刃付け面31の水平方向の位置が測定される。同様に、すべての切刃の刃付け面31の水平方向の位置がセンサ20によって測定されることにより、NC制御装置によってブローチ11の切刃のピッチが算出される。そして、NC制御装置は、ブローチ測定装置17によるブローチ11の測定結果に基き、当該NC制御装置に格納された研削砥石研削プログラムを編集する(ブローチ11に係る位置データが入力される)。
【0019】
ブローチ11の測定が完了した後、ブローチ研削装置1を手動操作して研削砥石14の下端部14aを研削砥石測定装置32のセンサ34に対して図5に示されるように位置決めさせる。位置決め完了後、NC制御装置に格納された研削砥石測定プログラム(研削砥石測定ステップ)を実行させると、センサ34が水平方向(図5における左方向)へ移動される。そして、測定子35aが研削砥石14の下端部14aに接触することにより、研削砥石14の下端部14aの水平方向の位置(研削面側の位置)が測定される。センサ34は、測定子35aが研削砥石14の下端部14aに接触すると指定された所定距離だけ後退(図5において右方向へ移動)する。この状態で、研削砥石14を下降させて当該研削砥石14の下端部14aを測定子35bに接触させることにより、当該研削砥石14の下端部14aの鉛直方向の位置が測定される。
【0020】
そして、NC制御装置は、研削砥石測定装置32による研削砥石14の測定結果に基き、当該NC制御装置に格納された研削砥石研削プログラムを編集する(研削砥石14に係る位置データが入力される)。ブローチ11の測定と研削砥石14の測定とが完了した後、必要な位置データが入力(編集)されたブローチ研削プログラムを実行することにより、ブローチ研削装置1によるブローチ11の研削が開始される。これにより、まず、研削砥石14がブローチ11に対して研削開始位置に位置決めされ、当該研削砥石14によって第1切刃の刃付け面31の研削(刃付け)が行われる。同様にして各切刃の研削が順次実施され、すべての切刃の研削が完了した時点でブローチ研削プログラムが終了する。
【0021】
この実施形態では以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、ブローチ測定プログラム(ブローチ測定ステップ)を実行してブローチ測定装置17の測定子30をブローチ11に接触させることにより、当該ブローチ11の研削開始位置及びピッチを自動で迅速、安全、且つ高い精度で測定してNC制御手段に教示することができる。また、研削砥石測定プログラム(研削砥石測定ステップ)を実行して研削砥石測定装置32の測定子35を研削砥石14の下端部14aに接触させることにより、当該研削砥石14の下端部14aの位置を自動で迅速、安全、且つ高い精度で測定してNC制御装置に教示することができる。
したがって、本実施形態によれば、NC制御装置に教示されたブローチの研削開始位置及び研削砥石の位置に基き、ブローチ11の研削開始位置に対する研削砥石14の位置合せ、いわゆる刃合せを自動で迅速、安全、且つ高い精度で行うことができる。
また、本実施形態によれば、研削対象であるブローチと研削砥石との相対的な位置関係を極めて高い精度でNC制御装置に教示することができ、ブローチの研削開始位置に対する研削砥石の位置合せ、いわゆる刃合せを、極めて高い精度で行うことができる。これにより、刃合せを効率化することができると共にブローチ11の精度、延いては該ブローチ11によって加工される歯車等の製品の品質を高めることができる。
【0022】
なお、実施形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
本実施形態は、NC制御装置を備えるブローチ研削装置であれば、例えば、制御される軸数が異なるブローチ研削装置であっても適用される。
ブローチ測定装置(ブローチ測定手段)並びに研削砥石測定装置(研削砥石測定手段)は、設計上等の必要に応じて設置位置を選択することができる。また、使用されるセンサも必要な性能を備えたものを随時選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態のブローチ研削装置の主要部の正面図である。
【図2】本実施形態のブローチ研削装置の主要部の平面図である。
【図3】本実施形態の説明図であって、ブローチ測定装置によるブローチの測定の様子を示す図である。
【図4】本実施形態の説明図であって、ハウジングを断面で示したブローチ測定装置のセンサの正面図である。
【図5】本実施形態の説明図であって、研削砥石測定装置による研削砥石の測定の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ブローチ測定装置、3 主軸台(心出し装置)、4 心押し台(心出し装置)、11 ブローチ、17 ブローチ測定装置(ブローチ測定手段)、30 測定子(ブローチ測定手段)、32 研削砥石測定装置(研削砥石測定手段)、35 測定子(研削砥石測定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NC制御装置を備えるブローチ研削装置であって、
ブローチを心出しして軸心の回りに位置決め可能に支持する心出し手段と、
研削砥石を回転駆動可能に支持する研削砥石ヘッドと、
測定子を前記心出し手段によって支持された前記ブローチの所定位置に接触させて前記ブローチの研削開始位置及びピッチを測定するブローチ測定手段と、
測定子を前記研削砥石に接触させて前記研削砥石の位置を測定する研削砥石測定手段と、
を具備し、前記ブローチ測定手段によって測定された前記ブローチの研削開始位置と前記研削砥石測定手段によって測定された前記研削砥石の位置に基き、前記研削砥石が前記ブローチの研削開始位置に位置合せされることを特徴とするブローチ研削装置。
【請求項2】
NC制御装置を備えるブローチ研削装置を用いるブローチ研削方法であって、
ブローチ測定プログラムを実行して、ブローチ測定装置の測定子を心出しされたブローチに接触させることにより前記ブローチの研削開始位置及びピッチを測定するブローチ測定ステップと、
研削砥石測定プログラムを実行して、研削砥石測定装置の測定子を研削砥石に接触させることにより前記研削砥石の位置を測定する研削砥石測定ステップと、
を含み、前記ブローチ測定ステップによって測定された前記ブローチの研削開始位置と前記研削砥石測定ステップによって測定された前記研削砥石の位置とに基き、前記研削砥石を前記ブローチの研削開始位置に位置合せさせることを特徴とするブローチ研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−213050(P2008−213050A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49643(P2007−49643)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(596018757)三和精機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】