説明

ブロー成形ボトル用プリフォーム

【課題】ボトル底部の一部に下方に膨出する反転凹入自在の延伸された膨出部を備えたPETボトルに好適に用いることができ、樹脂の使用量を削減してしかも十分な強度を有するPETボトルを形成することができるプリフォームを提供する。
【解決手段】プリフォーム5は、胴部16の重さ(W)とボトル1の容量(V)との関係を示す関係式W=aV+bに基づいて当該関係式における傾きaを0.025〜0.03の範囲とし且つ切片bを1〜4の範囲として、胴部16の重さ(W)を設定し、胴部16の長さ寸法(L)とボトル胴部3乃至膨出状態の膨出部10の最下端の長さ(H)とがL≦H/2.3の関係を満たし、胴部16の長さ寸法(L)とボトル1の容量(V)との関係を示す関係式L=cV+dに基づいて当該関係式における傾きcを0.064とし且つ切片dを21〜31の範囲として、胴部16の長さ寸法(L)を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形によりポリエチレンテレフタレート製ボトル(以下、PETボトルと言う)を製造する際に用いるプリフォームに関し、詳しくは、ボトル底部の一部がボトル胴部の下方に膨出して形成されており、この膨出する部分が胴部内方に反転して凹入可能とされているPETボトルをブロー成形によって得るためのブロー成形ボトル用プリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の液状内容物を収容するPETボトルは、加熱されたポリエチレンテレフタレート製のプリフォームを金型に装着して二軸延伸ブロー成形を行うことにより形成される。プリフォームは、射出成形により形成され、外周にキャップを螺着するためのネジ山が形成された円筒状の口部と、該口部の下縁に連設された有底筒状の胴部とを備えている。また、口部と胴部との境界位置の外周に、鍔状に張り出すサポートリングを備えている。プリフォームの胴部は、ブロー成形によりボトル胴部を成形する胴部形成部と、ボトル底部を成形する底部形成部とによって構成されている。
【0003】
プリフォームによりPETボトルを形成するときには、先ず、プリフォームを加熱し、加熱により軟化されたプリフォームの胴部を、金型の上部に形成された装着孔を介して金型内部に挿入する。このとき、金型の装着孔にはサポートリングが掛止されて口部が金型から露出した状態となってる。次いで、プリフォームの口部からストレッチロッドを挿入し、プリフォームの胴部をその軸線方向に引き伸ばしつつプリフォームの口部から胴部内にブローエアを導入する。これにより、プリフォームの胴部の胴部形成部が延伸されて肉薄のボトル胴部が形成される。一方、プリフォームの胴部の底部形成部は、ボトル内方に凹入状態で金型内面に当接するので、殆ど延伸されず、比較的肉厚のボトル底部が形成される。
【0004】
ところで、この種のPETボトルにおいては、材料コストの低減や軽量化のためにプリフォームに使用するPET樹脂の量を削減することが望まれている。しかし、プリフォームの口部は、ボトルを形成した後にキャップによる封止を行うために十分な強度を確保しなければなず、樹脂の使用量を削減することができない。そこで、プリフォームの胴部の樹脂の使用量を削減することが考えられるが、前述した通りプリフォームの底部形成部は殆ど延伸されないために、ボトル底部の薄肉化が図れない不都合があった。
【0005】
また、この種のPETボトルとして、ボトル底部の一部を外側に膨出させてブロー成形し、この膨出部を内方に凹入可能としたものが知られている(特許文献1参照)。このPETボトルによれば、ボトル底部に形成される膨出部がブロー成形時に延伸されるので、ボトル底部を薄肉化することができ、その分、樹脂の使用量を削減することができる。そして、ボトル底部に薄肉に形成された膨出部は、ボトル胴部内に液状内容物が充填されたときにボトル胴部内方に凹入反転した状態とすることで、肉厚のボトル底部を備えるボトルと同じ容量とすることができる。
【特許文献1】特表2006−501109公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ボトル底部に前記膨出部を形成した場合には、ボトル胴部内に液状内容物を充填して一旦膨出部をボトル胴部内方に反転凹入させた後には、膨出部がボトル胴部内方に凹入した状態を強固に維持する必要がある。このため、プリフォームに用いるPET樹脂の量を削減しただけでは、ブロー成形時にボトル底部の膨出部が過剰に薄肉化されるおそれがあり、ボトル胴部内の液状内容物の荷重や外部からの衝撃によって、凹入状態の膨出部が外方に突出反転してボトルの直立安定性が得られず、また、外観が低下する不都合がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ボトル底部の一部に下方に膨出する反転凹入自在の延伸された膨出部を備えたPETボトルに好適に用いることができ、樹脂の使用量を削減してしかも十分な強度を有するPETボトルを形成することができるプリフォームを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプリフォームは、延伸されたボトル胴部と、該ボトル胴部の上端に連設された未延伸のボトル口部と、ボトル胴部の下端に連設されて該ボトル胴部を閉塞するボトル底部とを備え、該ボトル底部の一部に下方に膨出する反転凹入自在の延伸された膨出部を備えたPETボトルのブロー成形に用いられる。
【0009】
そして、本発明のプリフォームは、筒状の口部と、該口部の下縁に連設された有底筒状の胴部とからなり、該胴部は、前記ボトル胴部を成形する胴部形成部と、前記ボトル底部及び膨出部を成形する底部形成部とからなっており、プリフォームの前記胴部の重さ(W)は、該重さ(W)とボトル底部の膨出部が凹入された状態のボトルの容量(V)との関係を示す関係式W=aV+bに基づいて当該関係式における傾きaを0.025〜0.03の範囲とし且つ切片bを1〜4の範囲とする重さに設定され、プリフォームの前記胴部の長さ寸法(L)とボトル胴部乃至膨出状態の前記膨出部の最下端の長さ(H)とはL≦H/2.3の関係を満たし、プリフォームの前記胴部の長さ寸法(L)は、該長さ寸法(L)とボトル底部の膨出部が凹入された状態のボトルの容量(V)との関係を示す関係式L=cV+dに基づいて当該関係式における傾きcを0.064とし且つ切片dを21〜31の範囲とする寸法に設定されることを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明のプリフォームをブロー成形することによって得られるPETボトルについて説明すれば、該PETボトルは、ボトル底部の一部に下方に膨出する反転凹入自在の延伸された膨出部を備えることにより、ボトル胴部だけでなくボトル底部においても薄肉化が可能なものとなっている。そして、該PETボトルは、膨出部を外側に膨出させた状態でボトル胴部の内部に飲料等の液状内容物を充填し、口部をキャップ等により封止した後、膨出部を内側に反転させて凹入する。これにより、該PETボトルは、ボトル胴部の容量を減少させてボトルの内圧を上昇させることができ、内容物の冷却等に伴う内圧の低下が生じても、胴部の減圧変形を防止することができるものとなっている。
【0011】
本発明のプリフォームは、胴部の重さ(W)及び胴部の長さ寸法(L)が、PETボトルの容量(V)に応じて所定の範囲内で設定されていることにより、ブロー成形により前記PETボトルを形成したとき、ボトル胴部とボトル底部との飛躍的な軽量化が可能となるだけでなく、膨出部の反転凹入が容易であって且つ一旦凹入された膨出部の不用意な突出反転を確実に防止したPETボトルを形成することが可能となる。
【0012】
プリフォームの胴部の重さ(W)についての関係式W=aV+bは、発明者が行った各種試験により得たものであって、ボトルの容量(V)に応じたプリフォームの胴部の重さ(W)の加減を示しており、傾きaと切片bとによりプリフォームの胴部に使用されるPET樹脂の量を好適な範囲に設定することができるものである。即ち、当該関係式における傾きaの範囲(0.025〜0.03)と切片bの範囲(1〜4)によるPET樹脂の使用量の範囲を上回る量を使用してプリフォームの胴部を形成すると、ブロー成形によりPETボトルを形成しボトル底部に膨出部を形成したときのボトル胴部及びボトル底部の薄肉化が不十分となるだけでなく、膨出部の反転凹入が困難となる。逆に、前記傾きaの範囲と切片bの範囲によるPET樹脂の使用量の範囲を下回る量を使用してプリフォームの胴部を形成すると、ブロー成形によりPETボトルを形成しボトル底部に膨出部を形成したときのボトル胴部及びボトル底部の薄肉化が過剰となってボトル胴部及びボトル底部の強度が低下するだけでなく、一旦凹入された膨出部の不用意な突出反転を防止することができない。
【0013】
また、プリフォームの胴部の長さ寸法(L)についての前記関係式L=cV+dは、発明者が行った各種試験によって得たものであり、ボトルの容量(V)に応じたプリフォームの胴部の長さ寸法(L)の長短を示している。即ち、当該関係式における傾きc(0.064)と切片dの範囲(21〜31)による長さ寸法よりも長い胴部のプリフォームを形成すると、ブロー成形によりPETボトルを形成しボトル底部に膨出部を形成したときの引き伸ばし量が不十分となって膨出部を十分に延伸させることができない。逆に、前記傾きcと切片dの範囲による長さ寸法よりも短い胴部のプリフォームを形成すると、ブロー成形によりPETボトルを形成しボトル底部に膨出部を形成したときの引き伸ばし量が過剰となり、ボトル胴部及びボトル底部の強度が低下するだけでなく、一旦凹入された膨出部の不用意な突出反転を防止することができない。
【0014】
更に発明者は、プリフォームを前記各関係式に基づいて設定するとき、プリフォームの胴部の長さ寸法(L)とボトル胴部から膨出状態の膨出部の最下端までの長さ(H)との関係がL≦H/2.3であることを満たす必要があることを各種試験によって知見した。即ち、プリフォームからブロー成形によりPETボトルを形成し、ボトル底部に膨出部を形成したとき、その引き伸ばし量を、プリフォームの胴部の長さ寸法に対して2.3倍以上とする。こうすることによって、ボトル底部の膨出部を良好に延伸させることができる。
【0015】
このように、本発明においては、ボトル容量に応じて好適な胴部の重さと長さ寸法とを備えるプリフォームが提供できるので、樹脂の使用量を削減してしかも十分な強度を有するPETボトルを形成することができる。
【0016】
また、本発明のプリフォームにおいて、前記底部形成部の肉厚寸法(C)は、該肉厚寸法(C)と前記ボトル底部の膨出部が凹入された状態のボトルの容量(V)との関係を示す関係式C=eV+fに基づいて当該関係式における傾きeを0.0006とし且つ切片fを1.38〜2.36の範囲とする寸法に設定されることが好ましい。
【0017】
前記関係式C=eV+fに基づく底部形成部の肉厚寸法(C)の設定は、発明者が各種試験によって得たものである。そして、傾きeを0.0006とし且つ切片fを1.38〜2.36の範囲とした寸法に設定することにより、ボトル底部の膨出部を確実に延伸させて良好に軽量化することでき、しかも、十分な強度を得ることができる。
【0018】
なお、本発明のプリフォームは、具体的には、ボトル底部の膨出部の反転に伴う容量変化がボトルの最大容量に対して1〜10%(好ましくは2〜5%)とされ、膨出部の肉厚が0.3〜0.7mmとされるPETボトルの成形に用いることが好ましい。膨出部の反転による容量変化が1%より小であるような場合、膨出部による反転領域が狭すぎ、薄肉化される領域が狭くなって十分な軽量化が望めない。容量変化が10%を越えているような場合、膨出部が広く薄肉化に伴う著しい軽量化が可能となる反面、膨出部を反転凹入したときのボトル容量変化が極めて大きいため円滑な反転凹入が阻害されるおそれがある。同時に、膨出部の肉厚が0.3より小である膨出部の強度が低く、0.7より大であると、膨出部の反転が困難となり、また、軽量化が不十分となる。従って、本発明のプリフォームを膨出部がボトル底部の1〜10%(好ましくは2〜5%)を占め、膨出部の肉厚が0.3〜0.7mmとされるPETボトルの成形に用いることで、ボトル底部の強度を低下させることなく、飛躍的な軽量化を行うことができる。また、本発明のプリフォームは、飲料を内容物とする200〜1500ミリリットルの容量を有するPETボトルを形成する場合に特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態のプリフォームからブロー成形されるボトルの説明図、図2は本実施形態のプリフォームの概略形状を示す説明的断面図、図3は本実施形態のプリフォームの胴部の重さの設定範囲を示すグラフ、図4は本実施形態のプリフォームの胴部の長さ寸法の設定範囲を示すグラフ、図5は本実施形態のプリフォームの底部形成部の肉厚寸法の設定範囲を示すグラフ、図6は本実施形態のプリフォームを用いたブロー成形の各工程を示す説明図、図7は図6に続くブロー成形の各工程を示す説明図である。
【0020】
本実施形態においてブロー成形されるボトル1は、図1に示すように、ボトル口部2と、該ボトル口部2の下方に連設された筒状のボトル胴部3と、該ボトル胴部3の下部を閉塞するボトル底部4とを備えている。ボトル1は、本実施形態のプリフォーム5から二軸延伸ブロー成形され、これによって、ボトル胴部3及びボトル底部4が二軸延伸された状態で形成されている。プリフォーム5は、射出成形されたポリエチレンテレフタレート樹脂により形成されている。ボトル口部2は、その外周にキャップ(図示しない)を螺着するための螺着部6と、螺着部6から筒状に下方に延びる首部7と、首部7の外周に張り出すサポートリング8とが形成されている。ボトル口部2はプリフォーム5に形成された状態で、プリフォーム5からボトル1がブロー成形されてもその形状は殆ど変化しない。従って、以下の説明では、ボトル口部2、螺着部6、首部7、及びサポートリング8について、プリフォーム5においても同一の符号を付す。
【0021】
ボトル底部4は、ボトル胴部3の下端に連続して形成された脚部9と、該脚部9に包囲された領域に形成された膨出部10とによって構成されている。膨出部10は、反転傾斜部11と、底部中央部12とを備えている。脚部9はボトル胴部3の下方に向かって突出するように湾曲した形状であり、その下方先端に、ボトル1を自立させるときに接地する接地面13を備えている。反転傾斜部11は、その外周縁(脚部9の内周縁との境界)に外周ヒンジ部14を備え、その内周縁(底部中央部12の外周縁との境界)に内周ヒンジ部15を備えている。反転傾斜部11は、外周ヒンジ部14及び内周ヒンジ部15の屈曲により、仮想線で示すようにボトル胴部3の内方に反転凹入可能とされている。膨出部10の反転傾斜部11、外周ヒンジ部14及び内周ヒンジ部15は、共に後述するブロー成形時に二軸延伸される。なお、反転傾斜部11は、外周ヒンジ部14及び内周ヒンジ部15を介して反転するようになっているが、突出又は凹入させた後に不用意に戻り方向に反転しないように、反転傾斜部11の面形状、反転傾斜部11の傾斜角度、及び反転傾斜部11の大きさ等が適切に設定されている。そして、本実施形態において、ボトル1は、膨出部10の反転に伴う容量変化が3%(1〜10%であればよく、好ましくは2〜5%)とされ、膨出部10の肉厚が0.3〜0.7mmとされている。
【0022】
本実施形態のプリフォーム5は、図2に示すように、筒状の口部2と口部2に連設された有底筒状の胴部16とによって構成されている。口部2は前述したボトル1が形成された後にもその形状が略維持され、前述したように、螺着部6、首部7、及びサポートリング8を備えている。胴部16は、ブロー成形により延伸されてボトル胴部3を形成する胴部形成部17と、ブロー成形により延伸されてボトル底部4を形成する底部形成部18とによって構成されている。そして、プリフォーム5は、ブロー成形されるボトル1の容量に応じた好適な形状に設定されている。
【0023】
ここで、本実施形態のプリフォーム5の設定内容を説明する。プリフォーム5の胴部16の重さ(W)は、関係式W=aV+bに基づいて設定される。このとき、傾きaを0.025〜0.03の範囲とし且つ切片bを1〜4の範囲とする。即ち、プリフォーム5の胴部16の重さ(W)は、図3に示すように、ボトル1の容量(V)に応じた設定範囲Wnから選択できる。具体的に設定されるプリフォーム5の胴部16の重さは、容量が280ミリリットルの飲料用ボトルの場合では8g〜12.4gであり、容量が500ミリリットルの飲料用ボトルの場合では13.5g〜19gである。これに基づき、本実施形態においては、前記ボトル1の容量が280ミリリットルであるとき、プリフォーム5の胴部16の重さを11.3gとした。関係式W=aV+bにおける傾きaの範囲及び切片bの範囲は、本発明者が各種試験によって知見したものであり、設定範囲Wnに収まるようにプリフォーム5の胴部16の重さを設定することにより、ボトル底部4を良好に延伸させてその強度を低下させることなく薄肉化が可能となる条件の一つが満たされる。
【0024】
また、プリフォームの胴部16の長さ寸法(L)は、関係式L=cV+dに基づいて設定される。このとき、傾きcを0.064とし且つ切片dを21〜31の範囲とする。即ち、プリフォームの胴部16の長さ寸法(L)は、図4に示すように、ボトル1の容量(V)に応じた設定範囲Lnから選択できる。具体的に設定されるプリフォーム5の胴部16の長さ寸法は、容量が280ミリリットルの飲料用ボトルの場合では38.92mm〜48.92mmであり、容量が500ミリリットルの飲料用ボトルの場合では53mm〜63mmである。これに基づき、本実施形態においては、前記ボトル1の容量(W)が280ミリリットルであるとき、プリフォーム5の長さ寸法(L)を42.6mmとした。関係式L=cV+dにおける傾きc及び切片dの範囲は、本発明者が各種試験によって知見したものであり、設定範囲Lnに収まるようにプリフォーム5の胴部16の長さ寸法を設定することにより、ボトル底部4を良好に延伸させてその強度を低下させることなく薄肉化が可能となる条件の他の一つが満たされる。
【0025】
更に、図1を参照して、プリフォーム5の胴部16の長さ寸法(L)とボトル胴部3乃至膨出状態の膨出部10の最下端(サポートリング8の下縁から下方に突出状態にある膨出部10の下端まで)の長さ(H)との関係をL≦H/2.3(より好ましくはL≦H/2.6)とする。本実施形態においては、前述した関係式L=cV+dに基づく設定値の具体例によりプリフォーム5の長さ寸法(L)を42.6mmとしたが、このとき、本実施形態によるボトル1がサポートリング8の下縁から下方に突出状態にある膨出部10の下端までの長さHを118.4mmとするので、42.6mmと設定されたプリフォーム5の長さ寸法(L)は、L≦H/2.3を同時に満たすものとなっている。これにより、上記の各条件と合わせてボトル底部4を良好に延伸させてその強度を低下させることなく薄肉化が可能となる条件が満たされる。
【0026】
更に好ましくは、図2を参照して、プリフォーム5の胴部16のうち、底部形成部18の肉厚寸法(C)を、関係式C=eV+fに基づいて設定する。このとき、傾きeを0.0006とし且つ切片fを1.38〜2.36の範囲とすればよい。即ち、プリフォーム5の底部形成部18の肉厚寸法(C)は、図5に示すように、ボトル1の容量(V)に応じた設定範囲Cnから選択される。具体的に設定されるプリフォーム5の底部形成部18の肉厚寸法は、容量が280ミリリットルの飲料用ボトルの場合では1.548mm〜2.528mmであり、容量が500ミリリットルの飲料用ボトルの場合では1.68mm〜2.66mmである。これに基づき、本実施形態においては、前記ボトル1の容量(W)が280ミリリットルであるとき、プリフォーム5の底部形成部18の肉厚寸法(C)を2.4mmとした。関係式C=eV+fにおける傾きe及び切片fの範囲は、本発明者が各種試験によって知見したものであり、設定範囲Cnに収まるようにプリフォーム5の底部形成部18の肉厚寸法を設定することにより、一層確実に、ボトル底部4と薄肉化と強度の向上を両立させることができる。
【0027】
なお、プリフォーム5のサポートリング8直下の胴部16外周面の直径は20mm〜40mm(本実施形態においては25.8mm)とされている。
【0028】
以上の条件により各部が設定された本実施形態のプリフォーム5を用いたボトル1のブロー成形は、図6及び図7に模式的に示すように、ブロー成形用金型19により行われる。金型19は、胴部成形部20と底部成形部22とストレッチロッド23とを備えている。胴部成形部21は、ボトル胴部3の外形に対応し、底部成形部22は、膨出部10が下方に突出した状態のボトル底部4の形状(脚部9、底部中央部12及び下方に向かって傾斜した状態の反転傾斜部11)とに対応している。また、底部成形部22の中央部には底部中央部12に対応する形状の突き上げロッド25が設けられている。突き上げロッド25は上方に付勢されており、ストレッチロッド23の下降時の押圧により下方に移動し、ストレッチロッド23の上昇により突き上げ方向に移動する。
【0029】
ブロー成形金型19によるボトル1の成形においては、先ず、図示しない加熱手段を経て約110℃に加熱されたプリフォーム5を、図6(a)に示すように、金型19の上部に形成された装着孔26に装着する。このとき、プリフォーム5のサポートリング8が装着孔26の上縁に掛止され、プリフォーム5の胴部16のみが金型19内部に挿入される。次いで、図6(b)に示すように、プリフォーム5の口部2を介して下降するストレッチロッド23がプリフォーム5の胴部16を底部成形部22に向かって引き伸ばし、その引き伸ばしと同時にプリフォーム5の口部2からのブローエア供給が行われる。更に、ストレッチロッド23は、底部成形部22に向かって下降するとき、突き上げロッド25を押し下げる。これによって、プリフォーム5の胴部16は金型19の胴部成形部21と底部成形部22とに沿ってエアにより伸展し、延伸されたボトル底部4とボトル底部4とを備えるボトル1が形成される。
【0030】
続いて、ストレッチロッド23が上昇し、ボトル1内から抜き取られる。このとき、ストレッチロッド23からの押圧が解除された突き上げロッド25が弾発的に上昇し、図7(a)に示すように、膨出部10を突きあげる。これにより、反転傾斜部11が底部成形部22から離反すると共にボトル胴部3の内方に反転して膨出部10が凹入される。そして、膨出部10が凹入されることにより、金型19内部において、膨出部10が脚部9の接地面13よりも上方位置で脚部9に包囲された内方に収納された状態となる。その後、図7(b)に示すように、金型15が分割され、内部からボトル1が取り出される。
【0031】
以上のようにしてブロー成形されたボトル1は、本実施形態のプリフォーム5がボトル1の容量に応じた好適な形状に設定されていることにより、ボトル胴部3からボトル底部4にかけて十分に軽量化されたものとなり、しかも、膨出部10の反転傾斜部11も確実に延伸されていることにより、ボトル底部4の強度が低下することなく薄肉に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態のプリフォームからブロー成形されるボトルの説明図。
【図2】本実施形態のプリフォームの概略形状を示す説明的断面図。
【図3】本実施形態のプリフォームの胴部の重さの設定範囲を示すグラフ。
【図4】本実施形態のプリフォームの胴部の長さ寸法の設定範囲を示すグラフ。
【図5】本実施形態のプリフォームの底部形成部の肉厚寸法の設定範囲を示すグラフ。
【図6】本実施形態のプリフォームを用いたブロー成形の各工程を示す説明図。
【図7】図6に続くブロー成形の各工程を示す説明図。
【符号の説明】
【0033】
1…ボトル、2…口部、3…ボトル胴部、4…ボトル底部、5…プリフォーム、10…膨出部、16…胴部、17…胴部形成部、18…底部形成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸されたボトル胴部と、該ボトル胴部の上端に連設された未延伸のボトル口部と、ボトル胴部の下端に連設されて該ボトル胴部を閉塞するボトル底部とを備え、該ボトル底部の一部に下方に膨出する反転凹入自在の延伸された膨出部を備えたポリエチレンテレフタレート製ボトルのブロー成形に用いるプリフォームであって、
筒状の口部と、該口部の下縁に連設された有底筒状の胴部とからなり、該胴部は、前記ボトル胴部を成形する胴部形成部と、前記ボトル底部及び膨出部を成形する底部形成部とからなるプリフォームにおいて、
プリフォームの前記胴部の重さ(W)は、該重さ(W)とボトル底部の膨出部が凹入された状態のボトルの容量(V)との関係を示す関係式W=aV+bに基づいて当該関係式における傾きaを0.025〜0.03の範囲とし且つ切片bを1〜4の範囲とする重さに設定され、
プリフォームの前記胴部の長さ寸法(L)とボトル胴部乃至膨出状態の前記膨出部の最下端の長さ(H)とはL≦H/2.3の関係を満たし、
プリフォームの前記胴部の長さ寸法(L)は、該長さ寸法(L)とボトル底部の膨出部が凹入された状態のボトルの容量(V)との関係を示す関係式L=cV+dに基づいて当該関係式における傾きcを0.064とし且つ切片dを21〜31の範囲とする寸法に設定されることを特徴とするブロー成形ボトル用プリフォーム。
【請求項2】
前記底部形成部の肉厚寸法(C)は、該肉厚寸法(C)と前記ボトル底部の膨出部が凹入された状態のボトルの容量(V)との関係を示す関係式C=eV+fに基づいて当該関係式における傾きeを0.0006とし且つ切片fを1.38〜2.36の範囲とする寸法に設定されることを特徴とする請求項1記載のブロー成形ボトル用プリフォーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−142937(P2008−142937A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329791(P2006−329791)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(505440295)北海製罐株式会社 (58)
【Fターム(参考)】