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ブーツ取付構造
説明

ブーツ取付構造

【課題】安定したシール性能を低コストに確保し得るブーツ取付構造を提供する。
【解決手段】樹脂製の等速自在継手用ブーツ1の筒状開口部2(3)が金属製取付部材17(11)の被取付部18(19)に外嵌されて、レーザー光照射によって、被取付部18(19)に筒状開口部2(3)が固着されるブーツ取付構造である。金属製取付部材17(11)の被取付部18(19)の面粗さRaを0.05μm以上6.0μm以下とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブーツ取付構造に関し、特に等速自在継手用ブーツの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車や各種産業機械の動力伝達機構に組み込まれる等速自在継手には、継手内部への塵埃などの異物侵入防止や継手内部に封入されたグリースの漏洩防止を目的として、ブーツ(等速自在継手用ブーツ)が装着される。
【0003】
この種のブーツ100は、例えば図6に示すように、円筒状の小径部101および大径端部102を有する。小径部101は、山部104と谷部105とが交互に形成された蛇腹部106を介して大径端部102に接続される。ブーツ100の小径部101および大径端部102は、その外周をブーツバンド108で締め付けることにより、それぞれ第1の相手部材および第2の相手部材に固定される。図示例において、第1の相手部材は等速自在継手110の内輪111から延びるシャフト112であり、第2の相手部材は等速自在継手110の外輪115である。
【0004】
ブーツ100の小径部101および大径端部102の外周面には環状の凹溝107がそれぞれ設けられ、各凹溝107にブーツバンド108が嵌合される。一方、シャフト112の外周面のうち、小径部101の固定部には二条の環状突起113,114が設けられている。ところで、ブーツ100は樹脂材料で形成されるのが一般的で、小径部101および大径端部102のうち、特に小径部101におけるシール性は、ブーツバンド108を締め付けてシャフト112に設けた環状突起113,114を小径部101の内径面に食い込ませることによって確保される仕様となっている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−128536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構造で安定したシール性を確保するには、ブーツバンド108を所定の締め代で精度良く締め付ける必要があるが、かかる高精度な締め付けを簡便にかつ個体間でのばらつきを生じさせることなく行うのは困難である。特に上記のようにシール性向上を目的として、第1の相手部材(シャフト112)の外周面に環状突起を設けた場合には、ブーツバンド108を精度良く締め付けることが一層難しくなる。そして、かかるブーツバンド締め付けの困難性とブーツバンド108を用いることによる部品点数増とから、等速自在継手のコスト増が避けられないものとなっている。
【0007】
また、樹脂ブーツは一般に型成形されるが、上記のように小径部101および大径端部102の外周面に凹溝107を設ける場合、ブーツ100の成形型が複雑化する。さらに、上記構造においては、シャフト112に環状突起113,114を設ける分、シャフト112形状が複雑化している。これら成形型や部材形状の複雑化は等速自在継手のコスト高を招く。
【0008】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、安定したシール性能を低コストに確保し得る等速自在継手用ブーツの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のブーツ取付構造は、樹脂製の等速自在継手用ブーツの筒状開口部が金属製取付部材の被取付部に外嵌されて、レーザー光照射によって、被取付部に筒状開口部が固着されるブーツ取付構造であって、金属製取付部材の被取付部の面粗さRaを0.05μm以上6.0μm以下としたものである。この場合、金属材料と樹脂材料を合わせた状態で接合部の樹脂材料に気泡を発生させる温度まで接合部を加熱することになる。
【0010】
筒状開口部が金属製取付部材の被取付部に外嵌された状態で、レーザー光を照射して、その接合部の金属材料および樹脂材料に対し、樹脂材料内部から熱分解されたガスが膨らみ、樹脂内部に気泡を発生させる程度まで加熱する。この時、マイクロサイズ領域ではあるが、気泡発生に伴う爆発的な圧力が接合部にかかり、接合部の金属材料及び樹脂材料の温度が高くなっていることと相まって、気泡周辺部の樹脂材料と金属材料が、アンカー効果などの物理的な接合又は金属酸化物を通じた化学的な接合を可能にする条件を満たし接合する。さらに、樹脂材料が冷え固まる際には、気泡の温度も減少するため、気泡内部の圧力が低下し、吸着力が発生する。特に、加熱源としてレーザー光を用いることによって、局所的な急激な冷却が可能となり、気泡発生にともなう圧力・吸着力を増加させることができ、金属材料と樹脂材料の接合を促進させることができる。
【0011】
すなわち、レーザー溶着接合法は、金属とプラスチックとを重ねて、そこにレーザー光を照射するだけで接合できる手法である。原理は、プラスチックのレーザー透過性や金属でも局所的に十分に過熱できるレーザー光の高パワー密度を利用し、プラスチック側、金属側のどちらかからレーザー光を照射し、金属材料と接している境界部のプラスチックを選択的に、溶融させて分解温度以上に急速に加熱し、その分解によって泡を発生させる。泡周辺部の高温の融液と金属表面に対して、高温・高圧の条件が実現され、ミクロンオーダで接合(ファンデルワールス力)された接合部が得られる。このため、レーザー溶着接合法は、金属材料と樹脂材料とを、樹脂材料表面側からレーザー光を照射することで生じる物理的相互作用により、接合するものである。ここで、物理的相互作用とは分子間(引)力といわれるもので、あらゆる分子の間の引き合う力(ファンデルワールス力)をいい、二次結合力ともいう。
【0012】
しかも、金属製取付部材の被取付部の面粗さRaを0.05μm以上6.0μm以下としたので、その接合力の向上を図ることができる。すなわち、面粗さRaが0.05μm未満では、面粗さが小さすぎて大きな接合力を得ることができず、逆に面粗さRaが6.0μmを越えると、面粗さが大きすぎて剥離しやすくなる。ここで、面粗さRaとは、JIS B 0601-2001において規定する表面粗さパラメータの「高さ方向の振幅平均パラメータ」における算術平均粗さRaである。
【0013】
外側継手部材と、内側継手部材と、外側継手部材と内側継手部材との間に配設されるトルク伝達部材とを備えた等速自在継手に用いられ、前記金属製取付部材が外側継手部材である場合がある。また、外側継手部材と、内側継手部材と、外側継手部材と内側継手部材との間に配設されるトルク伝達部材とを備えた等速自在継手に用いられ、前記金属製取付部材が前記内側継手部材に嵌入されるシャフトである場合がある。
【0014】
使用する前記樹脂がレーザー透過性の熱可塑性エラストマーであるのが好ましい。このようにレーザー透過性のものを使用すれば、この樹脂に対してレーザー光を照射することによって、レーザー光が透過して接合部を加熱することができる。
【0015】
前記筒状開口部と金属製取付部材の被取付部との締代を0.05mm以上0.5mm以下とするのが好ましい。このような締代とすることによって、接合時に、最適な高温・高圧の条件を実現することができる。
【0016】
レーザーとして半導体レーザー又はファイバーレーザーを使用することができ、既存のレーザー光照射装置を用いることができる。また、レーザーの照射方式を連続式とすることができる。レーザーのスポットが直径2mm以上の円形であっても、長辺が2mm以上の矩形形状であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のブーツ取付構造では、金属製取付部材の被取付部の面粗さRaを0.05μm以上6.0μm以下としたので、その接合力の向上を図ることができる。このため、ブーツバンドを使用することなく、筒状開口部と被取付部とは安定した固定状態を維持することができ、しかも、高精度のシール機能を発揮する。
【0018】
また、ブーツバンドを省略することができ、等速自在継手への組み付け時の部品点数を減少させることができるとともに、ブーツ端部の外周面形状を簡略化することができる。このため、ブーツの生産性及び組み付け性の向上を図ることができるとともに、低コスト化を達成できる。
【0019】
樹脂をレーザー透過性の熱可塑性エラストマーを使用すれば、この樹脂に対してレーザー光を照射することによって、レーザー光が透過して接合部を加熱することができ、短時間に効率よく接合できる。
【0020】
筒状開口部と金属製取付部材の被取付部との締代を0.05mm以上0.5mm以下とすることによって、接合時に最適な高温・高圧の条件を実現することができ、より安定した接合力で接合することができる。
【0021】
既存のレーザー光照射装置を用いることができ、コストの低減を図ることができる。また、レーザーの照射方式を連続式とすることができ、効率のよいレーザー照射を行うことができる。レーザーのスポットが直径2mm以上の円形であっても、長辺が2mm以上の矩形形状であっても、接合部の加熱が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、ブーツを装着した状態の等速自在継手の断面図である。
【図2】前記ブーツを接合方法を説明する断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示し、ブーツを装着した状態の等速自在継手の断面図である。
【図4】実施例のサンプルを示し、(a)は接合前の斜視図であり、(b)は接合状態の斜視図である。
【図5】接合強度を示すグラフ図である。
【図6】従来のブーツ取付構造を用いた等速自在継手の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明のブーツ取付構造を用いて等速自在継手用ブーツを取り付けた状態の等速自在継手を示している。この場合の等速自在継手10は、内周面に複数のトラック溝12を形成した外側継手部材としての外輪11と、外周面に複数のトラック溝14を形成した内側継手部材としての内輪13と、外輪11のトラック溝12と内輪13のトラック溝14とで協働して形成されるボールトラックに配された複数のボール15と、ボール15を収容するためのポケット16aを有するケージ16とで主要部が構成されている。内輪13の内周には、セレーションやスプライン等のトルク伝達手段を介してシャフト17が連結される。なお、この等速自在継手10は外側継手部材と内側継手部材とが相対的な角度変位のみを許容する、いわゆる固定型等速自在継手である。
【0025】
シャフト17は、例えば、S40C−HM、SBM40C等に代表される炭素鋼、特に高周波焼入れ等の焼入れ処理が施された炭素鋼を用いて中空軸あるいは中実軸に形成されている。シャフト17には、外輪11から所定量突出した位置に平滑な円筒面状をなす被取付部(ブーツ取付部)18が設けられている。なお、シャフト表面に防錆のためにリン酸塩処理を施してもよい。
【0026】
また、外輪11はS53C等に代表される炭素鋼、特に高周波焼入れ等の焼入れ処理が施された炭素鋼を用いてカップ状に形成される。外輪11の開口部外周面には平滑な円筒面状をなす被取付部(ブーツ取付部)19が設けられる。外輪表面防錆のためにリン酸塩処理を施してもよい。
【0027】
シャフト17の被取付部18及び外輪11の被取付部19は、面粗さRaを0.05μm以上6.0μm以下としている。面粗さRaとは、JIS B 0601-2001において規定する表面粗さパラメータの「高さ方向の振幅平均パラメータ」における算術平均粗さRaである。このような面粗さRaは、旋削や研削加工等の機械加工、酸洗処理や化学研磨などの化学加工、もしくは電着塗装などの化学的に強固にシャフトに密着した表面塗装を施す塗装加工等で仕上げることができる。
【0028】
ブーツ1は、小径部2と、大径部3と、小径部2と大径部3とを連結する蛇腹部4とを備える。蛇腹部4は、軸方向に沿って交互に配設される山部5および谷部6と、両部を接続する傾斜部8とからなる。小径部2がシャフト17に固定され、大径部3が外輪11に固定される。すなわち、ブーツ1は、筒状開口部としての小径部2と大径部3を有し、一方の筒状開口部(小径部2)が、金属製取付部材(この場合、シャフト17)の被取付部18に外嵌さて、レーザー光照射によって、被取付部18に筒状開口部である小径部2が固着される。また、他方の筒状開口部(大径部3)が、金属製取付部材(この場合、外輪11)の被取付部19(外輪11の開口部側の外径面)に外嵌さて、レーザー光照射によって、被取付部19に筒状開口部である大径部3が固着される。
【0029】
ブーツ1は熱可塑性ポリエステルエラストマーからなる。熱可塑性ポリエステルエラストマーは、高融点結晶性ポリエステル重合体セグメント(a)と低融点重合体セグメント(b)からなるポリエステルブロック共重合体を主体とするものである。
【0030】
熱可塑性ポリエステルエラストマーを構成するポリエステルブロック共重合体の高融点結晶性ポリエステル重合体セグメント(a)は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールから形成されるポリエステルであり、好ましくはテレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートである。この他に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシ−p−タ−フェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオ−タ−フェニルなどの芳香族ジオールなどから誘導されるポリエステル、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであっても良い。また、アジピン酸やセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸を共重合しても良い。さらに、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分および多官能ヒドロキシ成分などを5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
【0031】
熱可塑性ポリエステルエラストマーを構成するポリエステルブロック共重合体の低融点重合体セグメント(b)は、脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルである。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリカプロラクトン、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルのなかで、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性からポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましい。また、これらの低融点重合体セグメントの数平均分子量としては共重合された状態において300〜6000程度であることが好ましい。ポリエステルブロック共重合体における低融点重合体セグメント(b)の共重合量は、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは15〜75重量%である。
【0032】
特に、ブーツ1としては、擦過音抑制用添加剤が添加された熱可塑性エラストマーとするとともに、少なくとも前記筒状開口部(この場合小径部2及び大径部3)の内径部への擦過音抑制用添加剤の添加を省略したものが好ましい。すなわち、ブーツ1としては、擦過音抑制用添加剤が添加されていない内層と、擦過音抑制用添加剤が添加されている外層とを備えたものとできる。外層の過音抑制用添加剤の添加率(含有率)としては、添加する添加剤によって相違するが、0.05〜5.0重量%程度とされる。含有率0.05重量%未満では、過音抑制効果が発揮されにくく、含有率5.0重量%を越えると、添加剤の表面析出量が増大し外観不良を起こす。
【0033】
このブーツ1の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、押出ブロー、射出ブロー、プレスブロー等のブロー成形法や射出成形法などがある。しかしながら、ブーツ1としては、前記したように、擦過音抑制用添加剤が添加されていない内層と、擦過音抑制用添加剤が添加されている外層とを備えたものとできる。このため、多層ブロー成形法又は2色成形法によって成形されてなるのが好ましい。ここで、多層ブロー成形法とは、多層押出ブロー成形機を用いて、擦過音抑制用添加剤が添加されていない内層と、擦過音抑制用添加剤が添加されている外層とを備えたブーツを成形するものである。2色成形法とは、一次側となる部分を成形してから同一金型内で二次側となる部分を一次側と一体で成形させる成形法であり、擦過音抑制用添加剤が添加されていない内層を一次側とし、擦過音抑制用添加剤が添加されている外層を二次側としたり、逆に、擦過音抑制用添加剤が添加されていない内層を二次側とし、擦過音抑制用添加剤が添加されている外層を一次側としたりできる。
【0034】
ここで、擦過音抑制用添加剤とは、擦過音抑制に効果のみられる添加剤であって、この添加剤としては、効果の大小があるものの、一般的に潤滑作用をもたらす物質として知られる物質なら何でもよい。例えば、パラフィンワックス、ミクロクロスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸アミド、エステル系ワックス、脂肪アルコール、アルコールエステル、脂肪酸エステル、ポリエーテル化合物、鉱油、合成油、植物油など、ゴムや樹脂等に広く利用されているものや、その他の用途、例えば、潤滑油関連等に使用されているものなどが挙げられる。
【0035】
また、このブーツ1には、前記擦過音抑制用添加剤以外に、公知の酸化防止剤、耐光剤、耐加水分解防止剤、染料等の着色剤、難燃剤等を任意に含有させることができる。
【0036】
次に、等速自在継手用ブーツの金属製取付部材の被取付部への取り付け方法を説明する。この場合、まず、小径部2をシャフト17の被取付部18への取り付け方法について述べる。また、図2に示すようなレーザー光照射装置30を用いることになる。レーザー光照射装置30は、放電ランプや半導体レーザー等の励起源を備え、その先端部からブーツ1の小径部2に向けて所定パワーのレーザー光31を照射するものである。レーザーとしては、ランプレーザー励起のYAGレーザーや同じ近赤外線レーザーである半導体レーザー,ファイバレーザーを使用することが可能であるが、本実施形態では、Laser Line(株)社製の半導体レーザーLDL160(波長:808nm+904nm)用いることができる。
【0037】
図2に示すように、小径部2をシャフト17の被取付部18に外嵌した衝合状態とする。この状態では、筒状開口部(小径部2)と金属製取付部材(シャフト17)の被取付部18との締代を0.05mm以上0.5mm以下とする。小径部2の外径側からレーザー光照射装置30のレーザー光照射ノズル33を介して小径部2にレーザー光を照射する。この場合、接合範囲H全体を照射することになる。照射に際しては、レーザー光照射装置30側を移動させても、シャフト17側を移動させても、レーザー光照射装置30側及びシャフト17側を移動させてもよい。レーザー光の照射方式を連続式とするのが好ましいが、間欠的(パルス的)に照射するものであってもよい。また、照射するレーザー光のパワーは任意に調整可能できるものが好ましい。
【0038】
レーザー光を照射すれば、その接合部の金属材料および樹脂材料に対し、樹脂材料内部から熱分解されたガスが膨らみ、樹脂内部に気泡を発生させる程度まで加熱する。この時、マイクロサイズ領域ではあるが、気泡発生に伴う爆発的な圧力が接合部にかかり、接合部の金属材料及び樹脂材料の温度が高くなっていることと相まって、気泡周辺部の樹脂材料と金属材料が、アンカー効果などの物理的な接合又は金属酸化物を通じた化学的な接合を可能にする条件を満たし接合する。さらに、樹脂材料が冷え固まる際には、気泡の温度も減少するため、気泡内部の圧力が低下し、吸着力が発生する。特に、加熱源としてレーザー光を用いることによって、局所的な急激な冷却が可能となり、気泡発生にともなう圧力・吸着力を増加させることができる。このため、金属材料であるシャフト17と樹脂材料である小径部2の接合を促進させることができ、小径部2とシャフト17の被取付部18とは接合することになる。このため、レーザー溶着接合法は、金属材料と樹脂材料とを、樹脂材料表面側からレーザー光を照射することで生じる物理的相互作用により、接合するものである。ここで、物理的相互作用とは分子間(引)力といわれるもので、あらゆる分子の間の引き合う力(ファンデルワールス力)をいい、二次結合力ともいう。
【0039】
すなわち、レーザー溶着接合法は、金属とプラスチックとを重ねて、そこにレーザーを照射するだけで接合できる手法である。原理は、プラスチックのレーザー透過性や金属でも局所的に十分に過熱できるレーザーの高パワー密度を利用し、プラスチック側、金属側のどちらかからレーザーを照射し、金属材料と接している境界部のプラスチックを選択的に、溶融させて分解温度以上に急速に加熱し、その分解によって泡を発生させる。泡周辺部の高温の融液と金属表面に対して、高温・高圧の条件が実現され、ミクロンオーダで接合(ファンデルワールス力)された接合部が得られる。
【0040】
また、大径部3においても、同様にレーザー光を照射することによって、外輪11の被取付部19に接合することができる。すなわち、大径部3を外輪11の被取付部19に外嵌した衝合状態とする。この状態では、筒状開口部(大径部3)と金属製取付部材(外輪11)の被取付部18との締代を0.05mm以上0.5mm以下とする。大径部3の外径側からレーザー光照射装置30のレーザー光照射ノズル33を介して大径部3にレーザー光を照射する。このため、大径部3においても、大径部3にレーザ光を照射することによる作用が生じ、大径部3と外輪11の被取付部19とは接合することになる。
【0041】
特に、金属製取付部材の被取付部(シャフト17の被取付部18及び外輪11の被取付部19)の面粗さRaを0.05μm以上6.0μm以下としたので、その接合力の向上を図ることができる。このため、金属製取付部材の被取付部18(19)にブーツ1を安定した接合力で接合することになる。面粗さRaが0.05μm未満では、面粗さが小さすぎて大きな接合力を得ることができず、逆に面粗さRaが6.0μmを越えると、面粗さが大きすぎて剥離しやすくなる。
【0042】
ところで、本発明では、前記筒状開口部(小径部2及び大径部3)の内径部への擦過音抑制用添加剤の添加を省略したものである。このため、接合部において、接合強度の低下を招く添加剤の膜が形成されないので、添加剤の膜が形成による接合強度の低下を招くことを防止できる。すなわち、筒状開口部と金属製取付部材の被取付部とは安定した接合力で、接合することになる。したがって、ブーツバンドを使用することなく、筒状開口部と被取付部とは安定した固定状態を維持することができ、しかも、高精度のシール機能を発揮する。
【0043】
また、ブーツバンドを省略することができ、等速自在継手への組み付け時の部品点数を減少させることができるとともに、ブーツ端部の外周面形状を簡略化することができる。このため、ブーツの生産性及び組み付け性の向上を図ることができるとともに、低コスト化を達成できる。
【0044】
しかも、筒状開口部の内径部以外は擦過音抑制用添加剤が添加された熱可塑性エラストマーにて構成され、擦過音の発生を抑制することができ、高品質のブーツを提供することができる。
【0045】
また、ブーツ1としては、多層ブロー成形法又は2色成形法によって成形することができる。これによって、擦過音抑制用添加剤が添加されていない内層と、擦過音抑制用添加剤が添加されている外層とを備えたブーツを安定して成形することができる。
【0046】
前記筒状開口部(小径部2及び大径部3)と金属製取付部材(シャフト17及び外輪11)の被取付部18との締代を0.05mm以上0.5mm以下とするのが好ましい。このような締代とすることによって、接合時に、最適な高温・高圧の条件を実現することができる。レーザー光を照射する際に、図示省略のクランプ機構等により接合部に対して加圧力を付加するようにしてもよい。このように、クランプ機構等により加圧力を付加するようにすれば、筒状開口部(小径部2及び大径部3)と金属製取付部材(シャフト17及び外輪11)の被取付部18との締代を、前記のように設定することなく、最適な高温・高圧の条件で接合できる。
【0047】
レーザーとして半導体レーザー又はファイバーレーザーを使用することができるので、既存のレーザー光照射装置を用いることができ、コスト低減を図ることができる。また、レーザーの照射方式を連続式とすることができる。このように連続式とすることによって、高精度かつ高強度な接合部を形成でき、効率のよいレーザー照射を行うことができる。また、レーザーのスポットが直径2mm以上の円形であっても、長辺が2mm以上の矩形形状であってもよく、接合部の加熱が安定する。
【0048】
ところで、使用する樹脂がレーザー透過性の熱可塑性エラストマーであるのが好ましい。このようにレーザー透過性のものを使用すれば、この樹脂に対してレーザー光を照射することによって、レーザー光が透過して接合部を加熱することができ、短時間に効率よく接合できる。
【0049】
図3は、本発明に係る取付構造を採用した等速自在継手と等速自在継手用ブーツの第2実施形態を示すものである。この等速自在継手は、摺動式等速自在継手の一つであるクロスグルーブ式等速自在継手である。等速自在継手は、外周面に複数の直線状トラック溝54を軸線に対して傾斜させた状態で軸方向に形成した内側継手部材としての内輪53と、内周面に複数の直線状トラック溝52を軸線に対して前記内側継手部材のトラック溝54と反対方向に傾斜させた状態で軸方向に形成した外側継手部材としての外輪51と、前記内輪53のトラック溝54と外輪51のトラック溝52との交叉部に組み込まれたボール55と、内輪53の外周面と外輪51の内周面との間に配されて前記ボール55を内輪53のトラック溝54と外輪51のトラック溝52との間で保持するケージとを備える。なお、内輪53の内周には、セレーションやスプライン等のトルク伝達手段を介して金属製のシャフト57がトルク伝達可能に連結される。外輪51の一端はエンドキャップ59によって封止される一方、他端はブーツ40およびブーツアダプタ44からなる密封装置によって封止され、これにより継手内部への塵埃などの異物侵入防止や継手内部に封入されたグリースの漏洩防止が図られる。
【0050】
ブーツ40は小径部41、大径部42、および小径部41と大径部42を接続する中間部43を有する。このブーツ40は、図1に示すブーツ1と同様に、熱可塑性エラストマーで形成されている。しかも、このブーツ40も、擦過音抑制用添加剤が添加されていない内層と、擦過音抑制用添加剤が添加されている外層とを備えたものであって、小径部41である筒状開口部の内径部には、擦過音抑制用添加剤が添加されていない。
【0051】
一方、ブーツアダプタ44は、例えば金属材料で略円筒状に形成され、その一端に外輪51の外周面に加締め等の適宜の手段で固定されたフランジ44aを有する。また、シャフト57には、外輪51から所定量突出した位置に平滑な円筒面状をなすブーツ取付部(被取付部)58が設けられる。ブーツ40の大径部42は、ブーツアダプタ44の反フランジ側の端部44bに加締固定されている。
【0052】
シャフト57の被取付部58の面粗さRaを0.05μm以上6.0μm以下としている。この小径部41においても、同様にレーザー光を照射することによって、シャフト57の被取付部58に接合することになる。すなわち、小径部41をシャフト57の被取付部19に外嵌した衝合状態とする。この状態では、筒状開口部(小径部41)と金属製取付部材(シャフト57)の被取付部58との締代を0.05mm以上0.5mm以下とする。小径部41の外径側からレーザー光照射装置30のレーザー光照射ノズル33を介して小径部41にレーザー光を照射する。
【0053】
このため、このブーツ40の小径部41においても、小径部41にレーザー光を照射することによる作用が生じ、大径部3と外輪11の被取付部19とは安定した接合力で、接合することになる。すなわち、この等速自在継手用ブーツであっても、前記図1に示すブーツ1と同様の作用効果を奏する。
【0054】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、図1に示す実施形態においては、小径部2側及び大径部3側がレーザー光照射による金属樹脂接合法によって接合されているが、いずれか一方のみを金属樹脂接合法によって接合するようにしてもよい。この場合、金属樹脂接合法によって接合しない方においては、ブーツバンドによる締め付けによって、固定することになる。このように、一方のみを金属樹脂接合法によって接合する場合であっても、両者をブーツバンドにて締め付け従来のものに比べても十分低コスト化を図ることができる。
【0055】
また、前記各実施形態では、ブーツ1、40を、擦過音抑制用添加剤が添加されていない内層と、擦過音抑制用添加剤が添加されている外層とを備えたものとしたが、筒状開口部(小径部2、大径部3等)の内径部のみが擦過音抑制用添加剤が添加されていなければよい。
【0056】
レーザー光照射装置30と、筒状開口部(小径部2、大径部3等)との間に、レーザー光のビーム径(スポット径)を調整するための凸レンズや凹レンズを有するビーム径調整手段を配設することも可能である。また、接合作業中にレーザーの照射部位近傍を冷却するためのアルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス、あるいはこれらの混合ガス等を吹き付けるシールドガス噴射装置を配設することも可能である。
【0057】
前記実施形態では、図1においてはバーフィールド型の固定式等速自在継手を示し、図3では、クロスグルーブ型の摺動式等速自在継手を示しているが、等速自在継手として、アンダーカットフリー型等の他の固定式等速自在継手であっても、ダブルオフセット型の他の摺動式等速自在継手であってもよい。
【実施例】
【0058】
図4(a)に示すような金属短円柱体70と樹脂円筒体71を成形して、図4(b)に示すように、樹脂円筒体71に金属短円柱体70の一部を嵌入し、この重なり部にレーザー光を照射することによって、これらを接合した。
【0059】
金属短円柱体70は、SBM40製(外径20.2mm)であって、表面にリン酸マンガン処理を施している。すなわち、リン酸マンガン系の不溶解性皮膜を生成させ、防錆性及び耐摩耗性の向上等を図っている。また、樹脂円筒体71としては、熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン(株)製のハイトレル)を用い、外径をφ22mmとし、内径をφ20mmとした。
【0060】
この際、表1に示すように、発明品A〜Gと、比較品A、Bとをそれぞれ4サンプル製作した。発明品Aは金属短円柱体70の接合範囲Hの面粗さRaを0.05μmとし、発明品Bは金属短円柱体70の接合範囲Hの面粗さRaを0.73μmとし、発明品Cは金属短円柱体70の接合範囲Hの面粗さRaを1.02μmとし、発明品Dは金属短円柱体70の接合範囲Hの面粗さRaを2.75μmとし、発明品Eは金属短円柱体70の接合範囲Hの面粗さRaを4.21μmとし、発明品Fは金属短円柱体70の接合範囲Hの面粗さRaを5.38μmとし、発明品Gは金属短円柱体70の接合範囲Hの面粗さRaを5.98μmとした。比較品Aは金属短円柱体70の接合範囲Hの面粗さRaを6.22μmとした。また、比較品Bは金属短円柱体70の接合範囲Hの面粗さRaを7.70μmとし、比較品Cは金属短円柱体70の接合範囲Hの面粗さRaを8.49μmとした。表1と図5に発明品A〜Gと比較品A、Bの接合強度を示した。
【表1】

【0061】
レーザー光照射装置としては、Laser Line(株)社製の半導体レーザーLDL160(波長808nm+904nm)を用いた。この場合出力800Wで金属短円柱体70と樹脂円筒体71との接合境界面を焦点とするように、レーザー光を照射した。この照射の際には、20rpmで金属短円柱体70と樹脂円筒体71とをその軸心廻りに回転させ、3秒間のレーザー照射であった。なお、図4(b)のHは接合範囲を示している。
【0062】
接合強度600Nを閾値とし、600N以上を合格とし、600N未満を不合格として判定を行った。この結果、AからGの全ての発明品が合格であったのに対して、比較品は、Aの1サンプルのみが合格であったが、他のすべての比較品は不合格であった。このように不合格になった原因は、表面粗さが大きくなるにつれ、ブーツと金属製取付部材の被取付部との間の隙間が生じ、接合していない領域が発生する。このため、接合面積が小さくなったことによる。
【符号の説明】
【0063】
2 小径部(筒状開口部)
3 大径部(筒状開口部)
11 外輪(外側継手部材)
13 内輪(内側継手部材)
15 ボール(トルク伝達部材)
17 シャフト
18 被取付部
19 被取付部
41 小径部(筒状開口部)
51 外輪(外側継手部材)
53 内輪(内側継手部材)
55 ボール(トルク伝達部材)
57 シャフト
58 被取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の等速自在継手用ブーツの筒状開口部が金属製取付部材の被取付部に外嵌されて、レーザー光照射によって、被取付部に筒状開口部が固着されるブーツ取付構造であって、
金属製取付部材の被取付部の面粗さRaを0.05μm以上6.0μm以下としたことを特徴とするブーツ取付構造。
【請求項2】
外側継手部材と、内側継手部材と、外側継手部材と内側継手部材との間に配設されるトルク伝達部材とを備えた等速自在継手に用いられ、前記金属製取付部材が外側継手部材であることを特徴とする請求項1に記載のブーツ取付構造。
【請求項3】
外側継手部材と、内側継手部材と、外側継手部材と内側継手部材との間に配設されるトルク伝達部材とを備えた等速自在継手に用いられ、前記金属製取付部材が前記内側継手部材に嵌入されるシャフトであることを特徴とする請求項1に記載のブーツ取付構造。
【請求項4】
使用する前記樹脂がレーザー透過性の熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のブーツ取付構造。
【請求項5】
前記筒状開口部と金属製取付部材の被取付部との締代を0.05mm以上0.5mm以下としたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のブーツ取付構造。
【請求項6】
レーザー光として半導体レーザー又はファイバーレーザーを使用したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の等速自在継手用ブーツ。
【請求項7】
レーザー光の照射方式を連続式としたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のブーツ取付構造。
【請求項8】
レーザー光のスポットが直径2mm以上の円形であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のブーツ取付構造。
【請求項9】
レーザー光のスポットがその長辺が2mm以上の矩形形状であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のブーツ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−208775(P2011−208775A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78953(P2010−78953)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】