説明

プラスチックダンボール製の板状部材及びその製造方法

【課題】プラスチックダンボールの端部よりも内側に円形状や矩形状など所望形状の開口部を開けたりする場合に、当該開口部や凹部の端面に隙間を生じることなく閉塞することが可能なプラスチックダンボール製の板状部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチックダンボールの表面に所定の断面形状に形成された加熱板22を押圧して加熱することにより溶融される前記プラスチックダンボールの少なくとも表面側に位置する前記プラスチック製平板9及びリブ11からなる溶融部と、複数に分割された構成部材が前記プラスチックダンボールの表面に沿った方向の外側に向けて拡張したときの断面形状が、挿入時の断面形状よりも拡大する拡張部材を、前記加熱板によって溶融された前記プラスチックダンボールの裏面側から挿入することにより起立される前記裏面側に位置するプラスチック製平板からなる起立部とを備えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱可塑性樹脂からなるプラスチックダンボール製の板状部材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプラスチックダンボールは、熱可塑性樹脂からなるため、加熱することで比較的加工が容易であり、しかも挨や塵等によって汚損され難く清浄であって、また軽量且つ耐水性や機械的に十分な強度を有するなど、工業製品や食料品、あるいは日用品、医療品などの収納保管や運搬などを始め、広い用途で用いられている。
【0003】
ところで、上記プラスチックダンボールとしては、様々な種類があるが、表裏一対のプラスチック製平板を、これら一対のプラスチック製平板間に一定間隔の間隙を形成するように多数配置された平板状や円柱形状、円錐台形状あるいは蜂の巣状などの所定の形状に形成された多数のリブ(連結部)によって互いに連結したものが用いられる。
【0004】
そのため、上記プラスチックダンボールを用いて工業製品や食料品、あるいは日用品、医療品などの収納保管や運搬などに使用される部材を製造するにあたっては、プラスチックダンボールを正方形や矩形状など、所定の形状及び大きさに切断した後、更に切断されたプラスチックダンボールに加工を施す必要がある。
【0005】
その際、上記プラスチックダンボールを正方形や矩形状など、所定の形状及び大きさに切断した場合には、当該プラスチックダンボールを構成するプラスチック製平板の端部や、表裏のプラスチック製平板間に位置する平板状や円柱形状、円錐台形状あるいは蜂の巣状などの所定形状に形成されたリブ、更には当該リブによって形成される中間中空部が切断面に露出することになり、端部が強度的に弱くなったり、外見上見栄えが悪い、あるいは端部に露出した中間中空部から異物が混入するなど、様々な問題が生じる。
【0006】
そこで、所定の形状に切断されたプラスチックダンボールの端面に閉塞処理を施す技術としては、例えば、特許第3150665号公報、特開平5−124140号公報、特開2000−190384号公報、実開平5−56425号公報、特開平3−86521号公報、特開2004−82428号公報などに開示されたものが既に種々提案されている。
【0007】
上記特許第3150665号公報に係るプラスチック段ボール板は、梱包される物品の上に載置される天板、保管または搬送される物品を支持するための中板や敷板に用いられる、熱可塑性樹脂からなるプラスチック段ボール板であって、互いに対向する第1と第2の主面壁部分と、その第1と第2の主面壁部分の間を連結し、1つの方向に延びる複数の空洞を形成する側面壁部分とを備え、前記第1と第2の主面壁部分間の距離によって前記プラスチック段ボール板の厚みが規定されており、前記空洞の開口部が位置する第1の端部と、前記側面壁部分が位置する第2の端部とを有し、前記第1の端部は、前記第1の主面壁部分に断面V字形状の溝を形成し、その断面V字形状の溝の内角を狭めるようにして前記第2の主面壁部分を折り曲げ、前記断面V字形状の溝を形成する2つの傾斜面を溶着する工程を2回行なうことによって前記第2の主面壁部分が前記空洞の開口部を塞ぐように形成されており、かつ、前記折り曲げられた前記第2の主面壁部分が互いに熱溶着することにより、前記プラスチック段ボール板の厚みとほぼ同じ厚みを有するように形成したものである。
【0008】
また、上記特開平5−124140号公報に係るプラスチック中空板は、エンボスシートの両面にプラスチックシートを溶着したプラスチック中空板において、先端がブレード形状のヒートバーで溶断し熱融させた前記プラスチック中空板の端末を前記プラスチック中空板の端面側に溶着するように構成したものである。
【0009】
さらに、上記特開2000−190384号公報に係る中空体合成樹脂板は、表壁と裏壁間に複数のウェブが等間隔に一体成形されてなる中空体合成樹脂板であって、前記ウェブ間の開口溝が面している端面部の少なくとも裏壁を含む所定厚さ部分が開口溝を塞ぐように直角に屈曲した第1折曲部と、該第1折曲部からさらに中空体合成樹脂板の板厚の位置で直角に屈曲した第2折曲部を有し、該第2折曲部の裏壁面が中空体合成樹脂板の表壁面と略面一となるように折曲して表壁に接続して溶着されてなるように構成したものである。
【0010】
又、上記実開平5−56425号公報に融着函の製造に用いる溶融用熱刃は、融着函を製造する熱可塑性樹脂製の板材に折曲V溝を設けるため先端部が左右対称のV形状に形成された溶融用熱刃において、上記溶融用熱刃は、先端部のすぐ上の先端上部が先端部より鋭角に形成したものである。
【0011】
更に、上記特開平3−86521号公報に係る折り目線入りプラスチックシートの製造方法は、成形台上に置かれた熱可塑性プラスチックシートの表面近傍に、この熱可塑性プラスチックシートの軟化温度よりも高く溶融温度よりも低い温度に維持された成形工具を配し、これにより前記熱可塑性プラスチックシートの成形工具近傍部のみを、成形工具と同じ温度になるまで加熱した後、成形工具を移動させて前記シート面に溝を刻むように構成したものである。
【0012】
また、上記特開2004−82428号公報に係るプラスチックダンボール板は、対向する第1および第2のプラスチック板と前記第1および第2のプラスチック板を連結する複数のリブとを有するプラスチックダンボール板において、前記プラスチックダンボール板の端面に露出するリブ間の空間を前記第1および第2のプラスチック板のいずれか一方で閉塞したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3150665号公報
【特許文献2】特開平5−124140号公報
【特許文献3】特開2000−190384号公報
【特許文献4】実開平5−56425号公報
【特許文献5】特開平3−86521号公報
【特許文献6】特開2004−82428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。すなわち、上記特許第3150665号公報、特開平5−124140号公報、特開2000−190384号公報、実開平5−56425号公報、特開平3−86521号公報、特開2004−82428号公報などに開示された技術は、いずれも、プラスチックダンボールの端部に閉塞する処理を施すものであり、プラスチックダンボールの端部よりも内側あるいは端部に連続して円形状や矩形状などの開口部や凹部を設ける場合には、当該開口部の端部に閉塞処理を施すことができないという技術的課題を有していた。
【0015】
そこで、この発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、プラスチックダンボールの端部よりも内側に端面を閉塞した円形状や矩形状など所望形状の開口部を開けたり、端部に連続した位置に端面を閉塞した所望形状の凹部を設けたりすることが可能なプラスチックダンボール製の板状部材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、請求項1に記載された発明は、表裏一対のプラスチック製平板をリブによって互いに連結したプラスチックダンボールからなり、当該プラスチックダンボールの端部よりも内側又は端部に連続した位置に、所定形状の開口部又は凹部を有するプラスチックダンボール製の板状部材において、
前記プラスチックダンボールの表面に所定の断面形状に形成された加熱板を押圧して加熱することにより溶融される前記プラスチックダンボールの少なくとも表面側に位置する前記プラスチック製平板及びリブからなる溶融部と、
複数に分割された構成部材が前記プラスチックダンボールの表面に沿った方向の外側に向けて拡張したときの断面形状が、挿入時の断面形状よりも拡大する拡張部材を、前記加熱板によって溶融された前記プラスチックダンボールの裏面側から挿入することにより起立される前記裏面側に位置するプラスチック製平板からなる起立部とを備え、
前記拡張部材の複数の構成部材を所定の断面形状に拡張させることで前記起立部を前記溶融部を介して前記プラスチックダンボールに形成された所定形状の開口部又は凹部の端面に溶着させたことを特徴とするプラスチックダンボール製の板状部材である。
【0017】
また、請求項2に記載された発明は、前記プラスチックダンボールには、前記加熱板によって加熱溶融される以前に、前記所定形状の開口部又は凹部よりも断面形状の小さな予備の開口部又は凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックダンボール製の板状部材である。
【0018】
さらに、請求項3に記載された発明は、前記加熱板の先端面には、前記開口部又は凹部の外周端から内周側に向けて深くなるように傾斜した傾斜溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチックダンボール製の板状部材である。
【0019】
又、請求項4に記載された発明は、前記拡張部材は、所定の断面形状の部材を前記プラスチックダンボールの表面に直交する方向の軸を中心にして複数に分割された構成部材を有し、前記複数の分割部材は、前記プラスチックダンボールの表面に沿った方向の外側に移動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプラスチックダンボール製の板状部材である。
【0020】
更に、請求項5に記載された発明は、表裏一対のプラスチック製平板をリブによって互いに連結したプラスチックダンボールからなり、当該プラスチックダンボールの端部よりも内側又は端部に連続した位置に、所定形状の開口部又は凹部を有するプラスチックダンボール製の板状部材の製造方法において、
前記プラスチックダンボールの表面に所定の断面形状に形成された加熱板を押圧して加熱することにより前記プラスチックダンボールの少なくとも表面側に位置する前記プラスチック製平板及びリブを溶融させる溶融工程と、
複数に分割された構成部材が前記プラスチックダンボールの表面に沿った方向の外側に向けて拡張したときの断面形状が、挿入時の断面形状よりも拡大する拡張部材を、前記加熱板によって溶融された前記プラスチックダンボールの裏面側から挿入することにより前記裏面側に位置するプラスチック製平板を起立させるとともに、前記拡張部材の複数の構成部材を所定の断面形状に拡張させることで起立した前記裏面側に位置するプラスチック製平板を前記溶融部を介して前記プラスチックダンボールに形成された所定形状の開口部又は凹部の端面に溶着させる溶着工程とを備えたことを特徴とするプラスチックダンボール製の板状部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、プラスチックダンボールの端部よりも内側に端面を閉塞した円形状や矩形状など所望形状の開口部を開けたり、端部に連続した位置に端面を閉塞した所望形状の凹部を設けたりすることが可能なプラスチックダンボール製の板状部材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態1に係るプラスチックダンボール製の板状部材の製造方法を示す断面構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るプラスチックダンボール製の板状部材を示す平面図である。
【図3】プラスチックダンボール製の板状部材の使用状態を示す説明図である。
【図4】プラスチックダンボール製の板状部材の他の例を示す説明図である。
【図5】プラスチックダンボールを示す斜視構成図である。
【図6】プラスチックダンボールを示す斜視構成図である。
【図7】プラスチックダンボールを示す断面構成図である。
【図8】プラスチックダンボールの要部を示す平面構成図である。
【図9】プラスチックダンボール製の板状部材の素材を示す平面構成図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係るプラスチックダンボール製の板状部材の製造方法を示す断面構成図である。
【図11】この発明の実施の形態1に係るプラスチックダンボール製の板状部材の製造方法を示す断面構成図である。
【図12】この発明の実施の形態1に係るプラスチックダンボール製の板状部材の製造方法を示す断面構成図である。
【図13】この発明の実施の形態1に係るプラスチックダンボール製の板状部材の製造方法を示す断面構成図である。
【図14】この発明の実施の形態1に係るプラスチックダンボール製の板状部材の製造方法を示す断面構成図である。
【図15】この発明の実施の形態1に係るプラスチックダンボール製の板状部材の製造方法を示す断面構成図である。
【図16】この発明の実施の形態1に係るプラスチックダンボール製の板状部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
実施の形態1
図1及び図2はこの発明の実施の形態1に係るプラスチックダンボール製の板状部材の製造方法によって製造されるプラスチックダンボール製の板状部材を示すものである。
【0025】
このプラスチックダンボール製の板状部材1は、図2に示すように、プラスチックダンボール2によって平面正方形状に形成されており、その端部よりも内側の位置である図示例では中央部には、所定の直径D(内径)に設定された平面円形状の開口部3が設けられている。なお、開口部3を設ける位置は、板状部材1の中央部である必要はなく、一辺側に寄った位置など任意であることは勿論である。上記プラスチックダンボール製の板状部材1は、図3(a)に示すように、例えば、その中央部に設けられた円形状の開口部3に、合成樹脂製のシート4を所定の長さだけ巻き取った円筒形状の紙管5の両端部を挿通した状態で、図3(b)に示すように、搬送用の箱体6の内部に収容するために用いられる。上記板状部材1は、合成樹脂の射出成型等によっても製造可能であるが、板状部材1は、円筒形状の紙管5に巻き取る合成樹脂製のシート4の長さ等によって、その一辺の長さが変動したりするため、当該板状部材1は、その一辺の長さLや形状、あるいは開口部3の直径Dや位置などを任意に変更可能とする必要がある。この点、プラスチックダンボール製の板状部材1は、その一辺の長さLや形状、あるいは開口部3の直径Dや位置などを任意に変更することができる点で望ましい。
【0026】
上記プラスチックダンボール製の板状部材1としては、上記の形状に限定されるものではなく、平面矩形状や円形状、あるいは三角形状など任意の形状に形成可能なことは勿論のこと、開口部3の形状も円形状に限らず、楕円形状、矩形状や三角形状など任意の形状であっても良いことは勿論である。また、上記開口部3は、必ずしもプラスチックダンボール製の板状部材1の端部よりも内側に設ける必要はなく、図4に示すように、プラスチックダンボール製の板状部材1の端部に連続した内側の位置に、半円形状や矩形状などの任意形状の凹部7として設けても良い。
【0027】
上記プラスチックダンボール製の板状部材1を製造するために使用されるプラスチックダンボール2としては、特に限定されるものではなく、種々のプラスチックダンボール2を使用することができる。このプラスチックダンボールとしては、プラダン又はダンプラと略称されることもあるが、プラパール(川上産業株式会社製商品名)、ツインコーン(宇部日東化成株式会社製商品名)、テクセル(岐阜プラスチック工業株式会社製商品名)などの商品名で種々のメーカーから販売されているものを使用することができ、これらのいずれであっても良く、あるいは他のプラスチックダンボールであっても良い。
【0028】
例えば、上記プラスチックダンボール2として、図5に示すように、表裏一対のプラスチック製平板9、10を、これらのプラスチック製平板9、10に直交するように表面に沿って一定の間隔で平行に立設された多数のリブ(連結部)11により互いに連結したものが用いられる。また、このプラスチックダンボール2は、例えば、ポリプロピレン等の熱可塑性を有するプラスチック(合成樹脂)を押出し成型機によって一体的に成型することで製造される。なお、上記プラスチックダンボール2としては、これに限定されるものではなく、図6に示すように、小さな円筒形状に形成されたリブ11を縦方向及び横方向に一定の間隔で配置したものや、図7に示すように、上下方向から略半楕円体形状に膨出した形状に形成されたリブ11によって、表裏一対のプラスチック製平板9、10を連結したもの、あるいは図8に示すように表裏一対のプラスチック製平板9、10を最密の平面正六角形状(ハニカム形状)に立設された多数のリブ11により互いに連結したものなど、任意のものを用いてもよいことは勿論である。
【0029】
上記プラスチックダンボール2は、例えば、原反として所定の大きさのものが提供される。プラスチックダンボール製の板状部材1は、図9に示すように、原反となるプラスチックダンボール2から、その外周に折り代12を設けた大きさの平面正方形状の板状部材13に切断された後、当該板状部材13の外周に位置する4つの端面14には、特開2004−82428号公報等に開示された公知の端面処理法によって端面処理が施されており、外周端面14は、図16に示すように、同じプラスチックダンボール2の一部によって隙間のない平面として閉塞されている。
【0030】
また、上記プラスチックダンボール製の板状部材1は、図2に示すように、上述したごとく、その中央部に所定の内径に設定された平面円形状の開口部3を有している。
【0031】
この中央部に平面円形状の開口部3を有するプラスチックダンボール製の板状部材1は、例えば、次のようにして製造される。
【0032】
裁断工程
まず、図9に示すように、プラスチックダンボール2のシートから製造すべきプラスチックダンボール製の板状部材1に対応した所定の形状及び大きさの板状部材13を裁断(切断)する。この板状部材13は、例えば、製造すべきプラスチックダンボール製の板状部材1に対して、折り代12等を考慮した形状及び大きさに設定されている。
【0033】
また、上記板状部材13の所定位置、図示例では、中央部に形成すべき平面円形状の開口部3よりも直径Dの小さい平面円形状の予備の開口部15がエンドミル等を用いて形成される。この予備の開口部15は、エンドミル以外に、板状部材13の裁断と同時にプレス裁断機等によって形成しても良いし、ナイフ等の切断部材を用いてカットすることによって形成しても良い。なお、上記予備の開口部15の直径dは、プラスチック製ダンボール2の厚さや開口部3の大きさ等を考慮して適宜設定されるが、プラスチック製ダンボール2の厚さを20mmとした場合、形成すべき開口部3の直径Dよりも例えば30〜50mm程度小さい値に設定される。ただし、予備の開口部の直径dは、これに限定されるものではなく、この値よりも大きくても小さくても良く、後述する拡張部材41が挿入可能な大きさであれば良い。
【0034】
なお、上記のごとく所定の形状及び大きさに切断されたプラスチックダンボール2からなる板状部材13には、その外周に位置する4つの端面14に対して、特開2004−82428号公報等に開示された公知の端面処理が施される。
【0035】
溶融工程
次に、上記のごとく所定の形状及び大きさに切断されたプラスチックダンボール2からなる板状部材13は、図1に示すように、溶着装置20の第1の作業テーブル21上に載置され、図示しないクランプ部材で固定された後、当該板状部材13表面の開口部3及び予備の開口部15に対応した位置に、開口部3に対応した所定の断面形状(図示例では、断面円形状)に形成された円柱状の加熱板22を所定の圧力で押圧して加熱することにより、プラスチック製ダンボール2の少なくとも表面側に位置するプラスチック製平板9及びリブ11を溶融させる溶融工程が施される。上記加熱板22の断面形状は、例えば、開口部3の断面形状と等しいか又は若干小さい断面形状に形成されるが、その後の加熱押圧時に、図10に示すように、加熱板22の外周面からの熱伝導によってプラスチック製ダンボール2の表面側に位置するプラスチック製平板9やリブ11が、開口部3の断面形状よりも広い範囲26で溶融される場合があるため、若干小さい断面形状に形成するのが望ましい。なお、この図1に示す溶融工程によって、プラスチック製ダンボール2の裏面側に位置するプラスチック製平板10が溶融又は軟化しても良い。
【0036】
また、上記加熱板22の先端面(下端面)23には、開口部3の外周端から内周側に向けて深くなるように、図示例では上向きに傾斜した傾斜溝24が全周にわたって環状に形成されている。
【0037】
また、上記加熱板22の温度は、図示しないヒーターによってポリプロピレン等の熱可塑性を有するプラスチック(合成樹脂)の溶融温度以上である、所定の温度(例えば、200〜350℃)に設定される。この加熱板22の温度、当該加熱板22によるプラスチック製ダンボール2の加熱時間、押圧する圧力は、プラスチック製ダンボール2の厚さ、開口部3及び予備の開口部15の断面積等を考慮して適宜設定される。
【0038】
上記溶融工程によって、上記プラスチック製ダンボール2からなる板状部材13は、図1に示すように、表面側に位置するプラスチック製平板9及びリブ11が加熱板22の熱によって溶融される。その後、所定時間が経過すると、上記加熱板22は、図10に示すように、図示しないエアーシリンダ等からなる昇降機構によって所定の距離だけ下降され、溶融された表面側に位置するプラスチック製平板9及びリブ11が裏面側に位置するプラスチック製平板10の内面に付着した状態となる。このとき、溶融された表面側に位置するプラスチック製平板9及びリブ11には、図10に示すように、開口部3に相当する凹部が形成されるとともに、加熱板22の下端面23に設けられた傾斜溝24の内部に流れ込み、当該傾斜溝24の形状に対応した溶融部25を形成する。また、このとき、裏面側に位置するプラスチック製平板10は、少なくとも軟化した状態となっている。上記加熱板22を押し下げたときの温度や時間は、適宜設定される。この加熱板押下時の温度や時間は、図1に示す表面溶融時と同じであっても良いし、異なる値に設定しても良い。
【0039】
なお、プラスチック製ダンボール2として、図8に示すように表裏一対のプラスチック製平板9、10を最密の平面正六角形状(ハニカム形状)に立設された多数のリブ11により互いに連結したものを用いた場合には、表裏一対のプラスチック製平板9、10の厚さにもよるが、リブ11を構成する樹脂量が比較的多いため、溶融部25を形成する樹脂量も比較的多く望ましい。
【0040】
溶着工程
次に、上記の如く表面側に位置するプラスチック製平板9及びリブ11が溶融され、少なくとも裏面側に位置するプラスチック製平板10が軟化した板状部材13からは、加熱板22が図示しないエアーシリンダ等からなる昇降機構によって上昇され、板状部材13から待避される。
【0041】
そして、上記の如く表面側に位置するプラスチック製平板9及びリブ11が溶融された板状部材13は、図11に示すように、溶着装置20の第2の作業テーブル30上に移動される。
【0042】
この溶着装置20の第2の作業テーブル30には、図11に示すように、板状部材1の開口部3に対応した位置に、開口部3と略同形状の平面円形状の開口部31が設けられており、当該開口部31には、必要に応じて円板状の熱板32が取り外し可能に配置されている。なお、円板状の熱板32の代わりに、上記の如く表面側に位置するプラスチック製平板9及びリブ11が溶融され、裏面側に位置するプラスチック製平板10が軟化した板状部材13が冷やされるのを防止する図示しない円板状の断熱部材を配置しても良い。
【0043】
次に、この溶着工程では、図12に示すように、溶着装置20の第2の作業テーブル30から円板状の熱板32が取り外され、当該円板状の熱板32の代わりに拡張装置40が装着される。
【0044】
この拡張装置40は、図13に示すように、円柱形状に形成された拡張部材41を備えており、この拡張部材41は、中心を通る中心線を線対称にして周方向に沿って90度ずつ4つの平面扇形状の構成部材42に分割されている。上記拡張部材41は、図12に示すように、当該上記拡張部材41の下端部に連結されたチャックシリンダ43を回転させつつ上昇させるか、回転に伴う上昇動作、あるいは回転とは別個のシリンダ等による上昇動作によって、旋盤のチャックやドリルのチャック等と同様の原理により、4つの構成部材42が半径方向の外方向、プラスチック製ダンボール2の表面に沿った方向の外側に向けて移動して断面形状44が開口部3と等しいか略等しい外径となるように拡張するように構成されている。
【0045】
そして、上記拡張装置40は、図14に示すように、拡張部材41をチャックシリンダ43によって上昇させて、拡張する前のあるいは拡張しつつある拡張部材41により、板状部材13の裏面側に位置するプラスチック製平板10を表面側、図12中の上側に折り曲げるとともに、拡張部材41の4つの構成部材42を半径方向外方向に移動させて、拡張部材41の断面形状44を開口部3と等しいか略等しい外径となるように拡張させることにより、裏面側に位置するプラスチック製平板10を略垂直に立設させるようになっている。
【0046】
その際、上記裏面側に位置するプラスチック製平板10上には、図15に示すように、表面側に位置するプラスチック製平板9及びリブ11が溶融された溶融部25が存在するため、この溶融部25を介して裏面側に位置するプラスチック製平板10が表面側に位置する溶融していないプラスチック製平板9に溶着される。その後、上記溶融部25は、強制冷却又は自然冷却され、溶融部25を形成していた樹脂が固化するとともに、溶融部25を介して裏面側に位置するプラスチック製平板10と表面側に位置するプラスチック製平板9とが隙間なく固着される。
【0047】
その後、溶融部25を構成する樹脂が冷却されて固化した状態で、図15に示すように、表面側に位置するプラスチック製平板9の表面に突出した部分を、当該表面側に位置するプラスチック製平板9の表面と面一となるようにカットすることにより、上記板状部材13には、図16に示すように、所定の位置である中央部に平面円形状の開口部3が形成されたプラスチックダンボール製の板状部材1が製造される。
【0048】
これに対して、前記特開2004−82428号公報などに開示された技術を応用し、プラスチックダンボールの端部よりも内側に開口部を設けて当該開口部の端面を閉塞する処理を施した場合には、当該プラスチックダンボールの表面に熱板を押し当てて、プラスチックダンボールの表面を溶融する際に、熱板の周囲に位置するプラスチックダンボールが溶融してしまい、熱板の形状よりも広い範囲の開口部が形成されてしまい、開口部の内側に位置する領域を起立させることによって開口部の端面を閉塞しようとしても、起立する部分とプラスチックダンボールに設けられた開口部との間に隙間が生じてしまう、あるいは開口部の端面が傾くなどという技術的課題を有している。
【0049】
さらに、前記特開2004−82428号公報などに開示された技術を応用してプラスチックダンボールの端部よりも内側に円形状の開口部を設けた場合には、開口部の内周に位置するプラスチックダンボールを内側から立ち上げる必要があるが、開口部の内周に位置するプラスチックダンボールに半径方向に沿った切り込みを入れて立ち上げた場合など、開口部の端面に切り込みによる隙間が生じてしまうという新たな技術的課題を有している。
【符号の説明】
【0050】
1:プラスチックダンボール製の板状部材、2:プラスチックダンボール、3:開口部、9:表面側に位置するプラスチック製平板、10:裏面側に位置するプラスチック製平板、11:リブ、25:溶融部25。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏一対のプラスチック製平板をリブによって互いに連結したプラスチックダンボールからなり、当該プラスチックダンボールの端部よりも内側又は端部に連続した位置に、所定形状の開口部又は凹部を有するプラスチックダンボール製の板状部材において、
前記プラスチックダンボールの表面に所定の断面形状に形成された加熱板を押圧して加熱することにより溶融される前記プラスチックダンボールの少なくとも表面側に位置する前記プラスチック製平板及びリブからなる溶融部と、
複数に分割された構成部材が前記プラスチックダンボールの表面に沿った方向の外側に向けて拡張したときの断面形状が、挿入時の断面形状よりも拡大する拡張部材を、前記加熱板によって溶融された前記プラスチックダンボールの裏面側から挿入することにより起立される前記裏面側に位置するプラスチック製平板からなる起立部とを備え、
前記拡張部材の複数の構成部材を所定の断面形状に拡張させることで前記起立部を前記溶融部を介して前記プラスチックダンボールに形成された所定形状の開口部又は凹部の端面に溶着させたことを特徴とするプラスチックダンボール製の板状部材。
【請求項2】
前記プラスチックダンボールには、前記加熱板によって加熱溶融される以前に、前記所定形状の開口部又は凹部よりも断面形状の小さな予備の開口部又は凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックダンボール製の板状部材。
【請求項3】
前記加熱板の先端面には、前記開口部又は凹部の外周端から内周側に向けて深くなるように傾斜した傾斜溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチックダンボール製の板状部材。
【請求項4】
前記拡張部材は、所定の断面形状の部材を前記プラスチックダンボールの表面に直交する方向の軸を中心にして複数に分割された構成部材を有し、前記複数の分割部材は、前記プラスチックダンボールの表面に沿った方向の外側に移動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプラスチックダンボール製の板状部材。
【請求項5】
表裏一対のプラスチック製平板をリブによって互いに連結したプラスチックダンボールからなり、当該プラスチックダンボールの端部よりも内側又は端部に連続した位置に、所定形状の開口部又は凹部を有するプラスチックダンボール製の板状部材の製造方法において、
前記プラスチックダンボールの表面に所定の断面形状に形成された加熱板を押圧して加熱することにより前記プラスチックダンボールの少なくとも表面側に位置する前記プラスチック製平板及びリブを溶融させる溶融工程と、
複数に分割された構成部材が前記プラスチックダンボールの表面に沿った方向の外側に向けて拡張したときの断面形状が、挿入時の断面形状よりも拡大する拡張部材を、前記加熱板によって溶融された前記プラスチックダンボールの裏面側から挿入することにより前記裏面側に位置するプラスチック製平板を起立させるとともに、前記拡張部材の複数の構成部材を所定の断面形状に拡張させることで起立した前記裏面側に位置するプラスチック製平板を前記溶融部を介して前記プラスチックダンボールに形成された所定形状の開口部又は凹部の端面に溶着させる溶着工程とを備えたことを特徴とするプラスチックダンボール製の板状部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−196797(P2012−196797A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61144(P2011−61144)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(505220860)有限会社 テクノ世紀 (5)
【Fターム(参考)】