説明

プラスチックワークピースを別のワークピースに接合する方法

【課題】プラスチックワークピースを別のワークピースに接合する方法を提示する。
【解決手段】本方法は、第二当接面が第一当接面上に置かれ、ピンが貫通孔内を通って作業面から突出するように、別のワークピース及びプラスチックワークピースを互いに接触させて載置する工程と、回転駆動されるとともに、回転軸に対して垂直に延在する摩擦面を備える摩擦ピンと、クランプ面を備えるクランプリングとを有する摩擦ツールを別のワークピースに載置する工程であって、載置の際は、摩擦面を端面上に平らに載置し、クランプ面を作業面上に平らに載置する工程と、摩擦ピンを回転して、摩擦面及び端面間の摩擦から発生する摩擦熱によってピンを可塑状態とする工程と、回転している摩擦ピンを回転軸に平行に作業面側に移動して、ピンを可塑的に変形する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックワークピースを別のワークピースに接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車及び航空機業界においては、プラスチックワークピースを金属または複合材料よりなる他のワークピースに確実に接合する必要のある部品がより頻繁に使用されているが、この接合には、プラスチックワークピースの変形性を利用する方法が特に適している。
【0003】
先行技術においては、プラスチックワークピースの変形性を利用してプラスチックワークピースを別のワークピースに接合するための一連の方法が開示されている。例えば、当接面から延在する突起を有するプラスチックワークピースが知られている。当接面上には、貫通孔を有する別のワークピースが載置され、この貫通孔は、突起を収容し、突起が貫通孔を貫通し別のワークピースから突出するように形成されている。プラスチックワークピースを別のワークピースに接合するためには、別のワークピースから突出する突起部分を機械的に変形させる。本方法の最も簡易な実施形態においては、突起を可塑的に変形させるツールを用いて突起に大きな圧力を加える。プラスチックワークピース及び別のワークピースは冷間接合されていると言える。この接合方法はかしめとして知られており、非常にサイクルタイムが短い。
【0004】
しかし、プラスチックの多くは、このような冷間接合中に突起にひび割れが発生し、これにより、別のワークピースとプラスチックワークピースの接合耐久性が制限される。変形による負荷を減らすためには、変形する前にこの突起を可塑状態にすればよい。これは、例えば熱風を吹きつけることにより行うことができる。しかしながら、この場合、プラスチックは熱風で非常に低速で加熱されるため、この方法のサイクルタイムが大幅に長くなってしまう。他の実施形態として、加熱したツールを用いて突起を変形させる方法があるが、この場合ツールは、実施形態に応じて加熱抵抗器や、超音波、赤外線放射、レーザー放射、又は他の手段で加熱される。可塑状態となった突起は、その材料が大きな負荷を受けることなく、可塑的に変形できる。このように行われる「熱間」接合は、前述の「冷間」接合よりはるかに耐久性が高い。
【0005】
しかし、熱間接合による方法はすべて、サイクルタイムを短くするためにツールを非常に高温にしなければならない。そのため、特にエネルギー消費が大きい。さらに、通常これに用いられる超音波及びレーザー加熱器の製造や維持は極めて複雑である。
【0006】
最後に、特許文献1により、プラスチックワークピースと金属性ワークピースの接合時には、金属性ワークピースの表面のプラスチックワークピースの突起が貫通する開口部周囲の領域に、摩擦ツールを接触させることが周知となっている。回転する摩擦ツールがエネルギーを金属性ワークピースに導入して加熱し、次にプラスチックワークピースとその上に設けられた突起もまた加熱される。その結果、突起は可塑状態となり、確実な接合が得られる。
【0007】
また、繰り返しになるが、金属ワークピースとプラスチックワークピース間の熱伝達が必要であり、サイクルタイムが比較的長くなることが問題である。なお、熱伝達にはプラスチックワークピースと金属間のワークピース当接面の性質が決定的に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,497,917号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術に基づき、故に本発明の目的は、複雑な手段が不要で、ほとんどエネルギーを使用せず、かつサイクルタイムが短い、プラスチックワークピースを別のワークピースに確実に接合する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は以下の工程を有する方法によって達成される。
第一当接面を備えるプラスチックワークピースであり、前記第一当接面上に前記第一当接面から延在し、前記第一当接面から見て外側を向く端面を有するピンが設けられる前記プラスチックワークピースを設ける工程と、
第二当接面と前記第二当接面の反対側の作業面とを備える別のワークピースであり、前記ピンの断面に適合し、前記第二当接面から前記作業面へと延在する貫通孔が設けられた前記別のワークピースを設ける工程と、
前記第二当接面が前記第一当接面上に置かれ、前記ピンが前記貫通孔内を通って前記作業面から突出するように、前記別のワークピース及び前記プラスチックワークピースを互いに接触させて載置する工程と、
摩擦ツールを前記別のワークピースに載置する工程であって、
前記摩擦ツールは、周りに回転駆動されるとともに、前記回転軸に対して垂直に延在する摩擦面を備える摩擦ピンと、回転軸に対して垂直に延在するクランプ面を備えるクランプリングとを有し、
前記クランプリングは前記摩擦ピンを取り囲んでおり、前記摩擦ピン及び前記クランプリングは前記回転軸に平行に移動可能であり、
載置の際は、前記摩擦面を前記端面上に平らに載置し、前記クランプ面を前記作業面上に平らに載置する工程と、
前記摩擦ピンを回転して、前記摩擦面及び前記端面間の摩擦から発生する摩擦熱によって前記ピンを可塑状態とする工程と、
前記回転している摩擦ピンを前記回転軸に平行に前記作業面側に移動して、前記ピンを可塑的に変形する工程とを含む方法。
【0011】
本発明に係る方法では、第一当接面を備えるプラスチックワークピースを設ける。当接面上には、第一当接面から延在するとともに、第一当接面からから見て外側を向く端面を有するピンが設けられる。
【0012】
また、金属、合金、セラミック、又は複合材料での形成が好ましい別のワークピースが設けられる。他の好適な実施形態では、別のワークピースはプラスチックで形成されてもよい。別のワークピースは、第二当接面と、第二当接面の反対側の作業面とを備える。ピンの断面に適合されるとともに第二当接面から作業面へと延在する貫通孔が別のワークピースに設けられる。
【0013】
別のワークピースとプラスチックワークピースは、第二当接面が第一当接面上に置かれるように、互いに接触させて載置する。これにより、ピンは貫通孔内を通って作業面から突出する。
【0014】
更なる工程においては、ツールを別のワークピースに載置する。摩擦ツールは摩擦ピンと、クランプリングとを有し、摩擦ピンは回転軸周りに回転駆動されて、回転軸に対して垂直に延在する摩擦面を備え、クランプリングは回転軸に対して垂直に延在するクランプ面を備える。この場合、クランプリングは摩擦ピンを取り囲み、摩擦ピン及びクランプリングは回転軸に平行に移動可能である。摩擦ツールは、摩擦面は端面上に平らに載置して、クランプ面は作業面上に平らに載置するように、載置される。
【0015】
次の工程では、クランプリングを作業面上に固定して動かさない状態で摩擦ピンを回転させると、摩擦面及び端面間のみの摩擦から発生する摩擦熱によってピンが可塑状態となる。その後、回転している摩擦ピンを回転軸に平行に作業面側に移動させると、ピンが可塑的に変形する。
【0016】
特に好適な実施形態においては、回転軸周りにピンが回転する時に、いかなる回転角度であっても端面の全体が摩擦面に平らとなるように、摩擦面の寸法が選択される。これにより、ピンが均一に加熱され、その結果均一に可塑状態になることが保証される。
【0017】
また、ピンは明らかな円筒形状であることが好ましい。こうすることで、単純なドリル加工により貫通孔の内径がピンの外径と合致するように貫通孔を形成することができ、接合強度が向上するため、特に有利である。
【0018】
他の好適な実施形態では、摩擦ツールは、回転軸に対して垂直に延在するスリーブ摩擦面を備えるスリーブを有する。スリーブは回転軸周りに回転駆動されるとともに、回転軸に平行に移動可能であり、摩擦ピンとクランプリングとの間に配置される。
【0019】
第一の代替手段においては、摩擦ピンが回転する時にはスリーブも同様に回転し、摩擦ピンが作業面側に移動する時には、スリーブは作業面から離間するように移動する。摩擦ツールの載置の際は、スリーブ摩擦面を作業面に載置する。
【0020】
この代替手段においてスリーブが回転状態となると、スリーブ摩擦面も最初は別のワークピースを加熱し、熱をピンへと放出する。その結果、ピンはより速く均一に加熱され、それによってサイクルタイムが短縮され、可塑的変形中にピンが受ける負荷が一層小さくなり、接合部の耐久性が向上する。更に、摩擦エネルギーは、端面だけでなく回転軸に平行に延在するピンの外面も経由してピンへと導入される。最後に、スリーブは、摩擦ピンの移動方向とは反対に作業面から離間する側に移動するので、ピンの変形を制御することができる。
【0021】
第二の代替手段においては、摩擦ピンの回転中はスリーブも同様に回転するが、回転する摩擦ピンの移動中は、回転するスリーブも作業面に側に摩擦面に平行に移動する。一方、スリーブ摩擦面は、移動中に摩擦面と同一平面内にあってもよい。
【0022】
その結果本ツールにより、摩擦面よりも寸法が大きな端面を有するピンを加工することもできる。その場合摩擦エネルギーは、摩擦ピンの摩擦面だけでなくスリーブ摩擦面も経由してピンへと導入されるからである。本ツールは、異なる寸法の2本のピンを使用する場合に交換の必要が無いため、同じプラスチックワークピース上で異なるサイズのピンを加工する場合には、特に望ましい。
【0023】
一方、スリーブ摩擦面は移動中に摩擦面の面からずれる配置としてもよい。特に好適な実施形態では、スリーブの内径はピンの外径に合致する。摩擦ツールの載置の際は、摩擦ピンに対向するスリーブの内面もピンに接触するように、スリーブに対して位置決めを行う。この構成においてスリーブも回転状態となると、ピンの外面もまた加熱され、それによってピンは特に速く可塑状態となり、サイクルタイムが短縮され、可塑的変形中にピンが受ける負荷が小さくなる。
【0024】
好適な方法においては、貫通孔は、作業面に向かって貫通孔の寸法が増大していく部位を作業面近傍に設けて形成される。特に円形の貫通孔の場合は、この部位においてその直径を増大可能である。こうした構成では、変形中にピンが貫通孔内で膨張するだけで確実な接合が実現できるという効果がある。これにより接合の強度が増すため、変形させたピンを貫通孔から延在させ、作業面から突出させて作業面上に載置する必要がなくなる。
【0025】
また、貫通孔に対して垂直に延在する一つ以上の間隙を別のワークピースの貫通孔の内壁に設けることが好ましい。ここでも、変形して間隙に入ったピンによって確実に接合ができており、前述の効果が得られる。
【0026】
他の好適な実施形態では、螺旋状に延びる窪みが別のワークピースの貫通孔の内壁に設けられる。尚、螺旋状に延びる窪みに入るピンの変形のみによっても、同様に確実に接合が可能である。この確実な接合においても前述の効果が得られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る方法の効果は、その極めて高い効率である。一方、本方法は摩擦溶接に使用する同様の装置を用いて実施可能である。この場合、運動エネルギーが摩擦によって極めて効率良く熱に変換されるので、先行技術による方法と比較して非常に少ないエネルギー消費量ですむ。特に摩擦熱は、問題のある熱伝導プロセスが発生することなくプラスチックワークピースに直接導入される。
【0028】
また、本発明に係る接合に要するサイクルタイムは、先行技術による方法に要するサイクルタイムより短い。
【0029】
このほか、摩擦ピンを移動させることによってピンの自由端が直接変形するため、信頼性の高いワークピース間接合係合が保証される。
【0030】
更に、使用する摩擦ツールは完全に機械のみによって保持され、複雑な熱生成用システムが不要である。その結果、メインテナンス・製造コストが削減される。
【0031】
最後に、本発明に係る方法の場合は、接合部又はピンを取り囲むクランプリングによりワークピースの材料の漏出が確実に抑えられるので、接合部を囲む領域の材料による汚染が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は本発明に係る方法の第一の好適な実施形態例を示す。
【図2】図2は本発明に係る方法の第二の好適な実施形態例を示す。
【図3】図3は別のワークピース内の貫通孔の本発明に係る方法の実施形態例を拡大して示す。
【図4】図4は別のワークピース内の貫通孔の本発明に係る方法の他の実施形態例を拡大して示す。
【図5】図5は別のワークピース内の貫通孔の本発明に係る方法の他の実施形態例を拡大して示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
好適な実施形態例のみを示す図面に基づいて、本発明を以下に説明する。
【実施例1】
【0034】
図1では、プラスチックワークピース1を別のワークピース3に接合するための、本発明に係る方法の第一実施形態例のいくつかの工程を示す。プラスチックワークピース1は、第一当接面5から延在するとともに端面9を有する円筒形ピン7を設けた第一当接面5を有する。プラスチックワークピース1の下にはカウンタベアリング11が配置されている。
【0035】
好ましくは金属又は複合材料からなる別のワークピース3は、第二当接面13と、第二当接面13と反対側の作業面15とを有している。更に、別のワークピース3には、第二当接面13から作業面15へと延在するとともにピン7の断面に適合させた貫通孔17を設けている。
【0036】
図3に詳細に示すように、貫通孔17は、作業面15に向かって貫通孔17の直径が増大していく部位19を作業面15近傍に有していてもよい。特に、好適には円形に形成されるここで示す貫通孔17の場合は、部位19で貫通孔17の直径が増大していく。
【0037】
図4に詳細に図示する貫通孔17において示すように、作業面15に向かって貫通孔17の寸法が増大していく部位19に加えて、貫通孔17に対して垂直に、従って回転軸37から径方向に離間する側に延在する一つ以上の間隙23を、別のワークピース3の貫通孔17の内壁21に設けてもよい。図5に詳細に示すように、螺旋状に延びる窪み27を貫通孔17の内壁21の部位19の近傍に設けてもよい。また、貫通孔17の内壁21は、部位19は有さず、一つ以上の間隙23のみ又は螺旋状に延びる間隙27のみを有することや、或いは、一つ以上の間隙23と螺旋状の窪み27を組み合わせて有することも考えられる。
【0038】
図1a)では、第二当接面13が第一当接面5上に位置し、かつピン7が貫通孔17内を通って作業面15から突出するように、別のワークピース3をプラスチックワークピース1上に載置している。
【0039】
また、摩擦ツール29を別のワークピース3上に載置している。摩擦ツール29は、それぞれ円筒状に形成された、摩擦ピン31と、スリーブ33と、クランプリング35とを備える。摩擦ピン31は回転軸37周りに回転駆動され、回転軸37に対して垂直に延在するとともにピン7の端面9に対向する摩擦面39を有する。摩擦面39は端面9と同じ寸法を有し、摩擦ピン31が回転軸37周りに回転する場合には、いかなる回転角度であっても端面9が摩擦面39に対して完全に平らとなるように、端面9上に配置される。
【0040】
スリーブ33は摩擦ピン31とクランプリング35の間に配置され、同様に回転軸37周りに回転駆動される。スリーブ33は、回転軸37に対して垂直に延在するスリーブ摩擦面41を有する。スリーブ33の内径はピン7の外径と合致する。摩擦ツール29を別のワークピース3上に載置すると、スリーブ摩擦面41は別のワークピース3の作業面15上に平らに置かれ、摩擦ピン31に対向するスリーブ33の内面43はピン7に接する。
【0041】
スリーブ33を取り囲むクランプリング35は、作業面15上に平らであるとともに回転軸37に対して垂直に延在するクランプ面45を有する。また、クランプリング35内には溶融間隙47が設けられている。溶融間隙47は、スリーブ33に対向するクランプリング35の内面とクランプ面45間で連続しており、回転軸37から離間して作業面15に平行にクランプリング35内へと延在している。摩擦ツール29は、摩擦ピン31、スリーブ33、及びクランプリング35が回転軸37に平行に移動できるように形成される。
【0042】
上述のように摩擦ツール29が別のワークピース3に載置されると、摩擦ピン31及びスリーブ33は回転状態となり、同一の回転軸37の周りを同一の回転方向に回転する。一方、クランプリング35は回転せず、クランプ面45は作業面15に固定されている。これにより摩擦熱が、端面9に接する摩擦面39と、ピン7に接する内面43、及び作業面15に接するスリーブ摩擦面31の摩擦によって生じる。別のワークピース3は熱伝導性の高い材料により形成されることが好ましく、ピン7は均一に加熱されることにより可塑状態となる。
【0043】
図1b)による更なる工程では、回転する摩擦ピン7は回転軸37に平行に作業面15側に移動する一方、回転するスリーブ33は作業面15から離間する。これにより、少なくとも部分的に可塑状態となったピン7を、可塑的な変形により作業面15に沿って溶融間隙47内に入れることができる。
【0044】
図1c)によれば、ピン7が溶融間隙47を完全に埋める程度まで可塑的に変形するまで、回転しているピン7と回転しているスリーブ33を移動させる。摩擦面39及びスリーブ摩擦面41も同一平面内にあり、可塑的に変形したピン7の端面9と同じ高さとなっている。その後、摩擦ツール29はワークピース1,3から取り外すことができる。可塑的に変形したピン7が冷却されると、これら二つのワークピース1,3は確実に接合される。
【0045】
図1に示す本発明に係る実施形態例は、ピン7を可塑状態にする摩擦エネルギーを直接ピン7に導入するという効果を有する。ピン7が端面9及び外面49の両方から加熱されるということは、ピン7が特に速く可塑状態になるということを意味する。このように、非常に短時間でピン7を可塑的に変形することができ、また同時にピン7が受ける機械的負荷を抑制できる。
【実施例2】
【0046】
図2は他の実施形態例を示す。本実施形態では、載置された摩擦ツール29の摩擦ピン31の摩擦面39の寸法が、プラスチックワークピース1のピン7の端面9より大きいという点で第一実施形態例と異なる。その結果、スリーブ33の内径もピン7の外径より大きく、内面43はピン7に接触しない。別のワークピース3に摩擦ツール29を載置した場合、スリーブ摩擦面41は摩擦面39と同一平面内にあるため、作業面15に接触しない。しかしながら、クランプリング35は作業面15面上にある。
【0047】
摩擦ピン31及びスリーブ33が回転状態となると、ここでもクランプリング35は作業面15に固定された状態で、摩擦面39と端面9間の摩擦によってのみ摩擦熱が発生する。従って、ピン7は端面9のみから加熱される。回転している摩擦ピン31及び回転しているスリーブ33は回転軸37に平行に作業面15側に移動すると、摩擦面39及びスリーブ摩擦面41は同一平面内となるか、又は、図2b)に示すように摩擦面39と作業面15との距離がスリーブ摩擦面41と作業面15との距離より短い状態となる。後者の場合では、スリーブ33はずれた状態で、結果的にピン7の変形を制御できる。
【0048】
図2c)によれば、ピン7が溶融間隙47を完全に埋めて摩擦面39とスリーブ摩擦面41が同一平面内になるように、回転している摩擦ピン31と回転しているスリーブ33を、ピン7が可塑的に変形するまで一緒に移動させる。
【0049】
本実施形態例は、ピン7の断面が摩擦面39とスリーブ摩擦面41とを合わせた断面よりも小さい限り、いかなる形態のピン7でも加工できるため、特に有利である。これにより、同じプラスチックワークピース1上のサイズが異なるピン7を別のワークピース3へ接合する際に、時間のかかる摩擦ツール29の交換が不要となる。
【0050】
図3に示すように、貫通孔17に作業面15に向かって寸法が増大していく部位19が設けられている場合、変形中にピン7が貫通孔17内で膨張することのみにより、確実な接合が実現できるという効果が得られる。これにより接合の強度が増すため、変形させたピン7を貫通孔17から延在させ、作業面15から突出させて作業面15上に載置する必要がなくなる。
【0051】
接合強度は、図4に示すように形成された、貫通孔17から垂直に内壁21へと延在する一つ以上の間隙23によって、更に増大できる。尚、変形して間隙23に入るピン7のみでも、同様に確実な接合を実現できる。或いは、図5に示すように貫通孔17の内壁21に螺旋状に延びる間隙27を設けることも可能である。ピン7が変形して螺旋状に延びる間隙27に入ると、同様に確実な接合が行われる。
【0052】
本発明に係る方法によれば、必要な機器を過剰に複雑にすることなく、簡便な方法でプラスチックワークピース1と別のワークピース3を確実に接合することができる。ピン7は可塑的に変形する前に可塑状態になるため、ピンの材料が受ける機械的な負荷は特に小さい。従って、このように行われた接合は特に強度が高い。可塑的変形の前にピン7を同様に可塑状態にする他の方法と比較して、本発明に係る方法は変形させる要素、つまりピン7に摩擦エネルギーを直接導入するので、特にエネルギー消費が少ないという点で卓越している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックワークピース(1)を別のワークピース(3)に接合する方法であって、
第一当接面(5)を備えるプラスチックワークピース(1)であり、前記第一当接面(5)上に前記第一当接面(5)から延在し、前記第一当接面(5)から見て外側を向く端面(9)を有するピン(7)が設けられる前記プラスチックワークピース(1)を設ける工程と、
第二当接面(13)と前記第二当接面(13)の反対側の作業面(15)とを備える別のワークピース(3)であり、前記ピン(7)の断面に適合し、前記第二当接面(13)から前記作業面(15)へと延在する貫通孔(17)が設けられた前記別のワークピース(3)を設ける工程と、
前記第二当接面(13)が前記第一当接面(5)上に置かれ、前記ピン(7)が前記貫通孔(17)内を通って前記作業面(15)から突出するように、前記別のワークピース(3)及び前記プラスチックワークピース(1)を互いに接触させて載置する工程と、
摩擦ツール(29)を前記別のワークピース(3)に載置する工程であって、
前記摩擦ツール(29)は、周りに回転駆動されるとともに、前記回転軸(37)に対して垂直に延在する摩擦面(39)を備える摩擦ピン(31)と、回転軸(37)に対して垂直に延在するクランプ面(45)を備えるクランプリング(35)とを有し、
前記クランプリング(35)は前記摩擦ピン(31)を取り囲んでおり、前記摩擦ピン(31)及び前記クランプリング(35)は前記回転軸(37)に平行に移動可能であり、
載置の際は、前記摩擦面(39)を前記端面(9)上に平らに載置し、前記クランプ面(45)を前記作業面(15)上に平らに載置する工程と、
前記摩擦ピン(31)を回転して、前記摩擦面(39)及び前記端面(9)間の摩擦から発生する摩擦熱によって前記ピン(7)を可塑状態とする工程と、
前記回転している摩擦ピン(31)を前記回転軸(37)に平行に前記作業面(15)側に移動して、前記ピン(7)を可塑的に変形する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記摩擦面(39)は、前記摩擦ピン(31)が前記回転軸(37)周りに回転する時には、いかなる回転角度であっても前記端面(9)が前記摩擦面(39)に対して完全に平らとなるような寸法を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ピン(7)は円筒状に形成される請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記摩擦ピン(31)の外径は前記ピン(7)の外径に合致する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記摩擦ツール(29)は、前記回転軸(37)周りに回転駆動されるとともに、前記回転軸(37)に平行に移動可能であり、前記回転軸(37)に対して垂直に延在するスリーブ摩擦面(41)を備える環状スリーブ(33)を有し、
前記スリーブ(33)は前記摩擦ピン(31)と前記クランプリング(35)との間に配置され、
前記スリーブ(33)は前記摩擦ピン(31)の回転時に回転し、
前記摩擦ピン(31)が前記作業面(15)側に移動する時には、前記スリーブ(33)は前記作業面(15)から離間する側に移動する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記摩擦ツール(29)の載置の際は、前記スリーブ摩擦面(41)を前記作業面(15)に載置する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記摩擦ツール(29)は、前記回転軸(37)周りに回転駆動されるとともに、前記回転軸(37)に平行に移動可能であり、前記回転軸(37)に対して垂直に延在するスリーブ摩擦面(41)を備える環状スリーブ(33)を有し、
前記スリーブ(33)は前記摩擦ピン(31)と前記クランプリング(35)との間に配置され、
前記摩擦ピン(31)の前記回転の間、前記スリーブ(33)は回転し、
前記摩擦ピン(31)の前記移動の間、前記スリーブ(33)もまた前記摩擦面(30)に平行に前記作業面(15)側に移動する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記移動の間、前記スリーブ摩擦面(41)は前記摩擦面(39)の面からずれている請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記移動の間、前記スリーブ摩擦面(41)は前記摩擦面(39)と同一平面内にある請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記スリーブ(33)の内径は前記ピン(7)の外径に合致し、
前記摩擦ツール(29)の載置の際、前記スリーブ(33)は、前記摩擦ピン(31)に対向する前記スリーブ(33)の内面(43)が前記ピン(7)に接触するように位置決めされる、請求項3に従属する請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記別のワークピース(3)は金属、合金、セラミック、又は複合材料で形成される請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記別のワークピース(3)はプラスチックで形成される請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記貫通孔(17)は、前記作業面(15)近傍に、前記作業面(15)に向かって前記貫通孔(17)の寸法が増大していく部位(19)を有する請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記貫通孔(17)に対して垂直に延在する一つ以上の間隙(23)が前記別のワークピース(3)の前記貫通孔(17)の前記内壁(21)に設けられる請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
螺旋状に延びる窪み(27)が前記別のワークピース(3)の貫通孔(17)の前記内壁(21)に設けられる請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91314(P2013−91314A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−234685(P2012−234685)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【出願人】(599036761)ヘルムホルツ−ツェントルム ゲーストハハト ツェントルム フュアー マテリアル ウント キュステンフォルシュンク ゲーエムベーハー (22)
【Fターム(参考)】