説明

プラスチック中の水分の検出方法及びプラスチック材料の水分除去システム

【課題】プラスチック中の水分含量を正確かつ迅速に測定できるプラスチック中の水分の検出方法及びプラスチック材料の水分除去システムを提供すること。
【解決手段】含水状態が明確なプラスチック13に対して発振装置11から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、前記プラスチック13に吸収されなかった残余の前記電磁波を受信機12によって受信し測定して前もって第1の測定値を取得する。そして、含水状態が明確ではない前記プラスチック13に発振装置から前記帯域の電磁波を照射し、プラスチック13に吸収されなかった残余の前記電磁波を受信機12によって受信し測定して第2の測定値を取得する。そして、第1の測定値と前記第2の測定値とを比較して含水状態が明確ではない前記プラスチックの含水状態を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の帯域の電磁波を使用してプラスチック中の水分を検出する検出方法及びそのような検出方法を有するプラスチック材料の水分除去システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に吸湿性の高いプラスチック成形用のプラスチック材料では成形に際してはなるべく空気に触れさせないように取り扱い、なおかつ投入前工程において加熱処理を行って既に含有されている水分を除去するようにしている。吸湿したままのプラスチック材料を使用して成型品を成形すると加熱に伴う水分の蒸発作用によって製品外面が粗くなったり鬆が入ったりする原因になるからである。一方でプラスチックはある程度の水分量を含有することが製品の品質上必要である場合もある。つまりプラスチックは材料の段階から製品の段階において好ましい含水状態で管理することが重要である。
ところで、プラスチック中の水分量の測定は従来から一般にカール・フィッシャー法で行われている。カール・フィッシャー法は水分を揮発させることによる重量変化を測定する乾燥減量法に比べて水分に特化して検出できるため、水分量測定としてより正確である。カール・フィッシャー法による水分測定の技術として特許文献1及び2を挙げる。
【特許文献1】特開平5−4716号公報
【特許文献2】特開平9−33484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、カール・フィッシャー法とはヨウ素、二酸化硫黄、アルコール等を用いて電量又は容量滴定によって試料中の水分を測定する古典的な方法であって、測定値の正確性は高いが、時間と手間がかかり、リアルタイムで測定できる方法ではなかった。そのため、プラスチック中の水分含量を正確かつ迅速に測定できる手段が求められていた。
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであり、その目的は、プラスチック中の水分含量を正確かつ迅速に測定できるプラスチック中の水分の検出方法及びプラスチック材料の水分除去システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、含水状態が明確なプラスチックに対して発振装置から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、前記プラスチックに吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して前もって第1の測定値を取得するとともに、含水状態が明確ではない前記プラスチック又は前記プラスチックとは異なるプラスチック(以下、これらを測定対象プラスチックとする)に発振装置から前記帯域の前記電磁波を照射し、前記測定対象プラスチックに吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して第2の測定値を取得し、前記第1の測定値と前記第2の測定値とを比較して含水状態が明確ではない前記プラスチックの含水状態を算出するようにしたことをその要旨とする。
【0005】
また、請求項2に記載の発明では、含水状態が明確でかつ少なくとも2種類の異なる含水状態の同種のプラスチックに対して各々発振装置から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、前記プラスチックに吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して前もって複数の第1の測定値を取得し、得られた複数の前記第1の測定値と複数の含水状態との関係から関数を導きだし、含水状態が明確ではない前記プラスチック又は前記プラスチックとは異なるプラスチック(以下、これらを測定対象プラスチックとする)に発振装置から前記帯域の前記電磁波を照射し、前記測定対象プラスチックに吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して第2の測定値を取得し、前記第2の測定値を前記関数に適用して含水状態が明確ではない前記プラスチックの対応した含水状態を算出するようにしたことをその要旨とする。
【0006】
また、請求項3に記載の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記発振装置から発振された前記電磁波を前記プラスチックを透過して同プラスチックの後方に配置した受信装置に受信させて前記第1又は第2の測定値を測定するようにしたことをその要旨とする。
また、請求項4に記載の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記発振装置から発振された前記電磁波は前記プラスチック内で反射させ、その反射波を受信装置に受信させて前記第1又は第2の測定値を測定するようにしたことをその要旨とする。
また、請求項5に記載の発明では請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記発振装置から発振された前記電磁波は前記プラスチック内で散乱させ、その散乱波を受信装置に受信させて前記第1又は第2の測定値を測定するようにしたことをその要旨とする。
【0007】
上記請求項1のような構成では、まず含水状態が明確なプラスチック(以下、このプラスチックを基準プラスチックとする)に対して発振装置から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、プラスチックに吸収されなかった残余の電磁波を測定することで、その含水状態に対応する第1の測定値を取得することができる。この範囲はテラヘルツ波及びミリ波が属する波長帯域である。含水状態は通常、含水率、含水量等の数値で表すことが可能である。この第1の測定値は基準値として前もって取得しておく。含水状態が明確かどうかはプラスチックの水分の定量が可能な例えばカールフィッシャー法を使用して実現することが考えられる。例えば、あるロットの含水状態がほぼ均一である一群の含水状態が不明なプラスチックがあるとする。そして、その一部を採取してカールフィッシャー法によって水分量を測定することで、その一群のプラスチックの含水状態を把握することができる。この含水状態が明確になったプラスチック(基準プラスチック)に対して上記電磁波を照射して残余の電磁波を測定することで、水分量と残余の電磁波(第1の測定値)との関係が得られる。
次いで、基準プラスチックと同じ材質であるが含水状態が明確ではないプラスチック又は基準プラスチックとは異なる材質のプラスチック(以下、このプラスチックを測定対象プラスチックとする)に発振装置から上記帯域の電磁波を照射し、前記プラスチックに吸収されなかった残余の電磁波を測定し、同様に第2の測定値を得る。そして、第2の測定値と第1の測定値とを比較する。つまり第1の測定値を基準に第2の測定値に基づいて含水状態不明なプラスチックの含水状態を想定する。データ化する場合には一般に差分を得ることとなる。
このとき、第2の測定値を第1の測定値と同条件で測定して第1の測定値と同じであればこの測定対象プラスチックは基準プラスチックと同じ含水状態であると言える。また、誤差に含まれる程度であれば使用目的にもよるが、基準プラスチックに準じて取り扱うこともできる。異なる組成のプラスチックであっても第1の測定値を使用できるような係数を与えることで測定可能である。更に、測定値から基準プラスチックよりも含水率が少ない、又は逆に含水率が多いことがわかるため、製品のチェックを行うことが可能となる。
【0008】
上記請求項2のような構成では、まず少なくとも2種類の異なる基準プラスチックに対して各々発振装置から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、プラスチックに吸収されなかった残余の電磁波を測定することで、その含水状態に対応する複数の第1の測定値を取得することができ、複数の第1の測定値と複数の含水状態との関係から関数を導きだすことができる。複数の第1の測定値を得る手段としては例えば上記のようなカールフィッシャー法が考えられる。
次いで、測定対象プラスチックに発振装置から前記と同じ帯域の電磁波を照射し、前記プラスチックに吸収されなかった残余の電磁波を測定し、同様に第2の測定値を得る。そして、第2の測定値を関数に適用して測定対象プラスチックの対応した含水状態を算出する。つまり、第2の測定値の関数上の位置に基づいて、あるいは関数上の任意の点を基準値として第2の測定値のその基準点に対する関係に基づいて測定対象プラスチックがどのような含水状態であるかを判断することが可能となる。
例えば、複数の第1の測定値に基づいてf(x)=ax+bで表される一次関数が導かれたとする。第2の測定値をxに代入することで含水状態が明確ではないプラスチックの含水状態であるf(x)が求められることとなる。また、第1の測定値ではないf(x)上の基準値に対して第2の測定値の大小を判断することで基準値に対して含水率が少ない、又は逆に含水率が多いことがわかるため、製品のチェックを行うことが可能となる。
【0009】
上記請求項1及び請求項2において、発振装置から発振された50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波をプラスチックを透過して同プラスチックの後方に配置した受信装置に受信させるようにして残余の電磁波を測定する手法が考えられる。これは前方と後方にスペースがある場合に発振装置と受信装置をそれぞれ配置できる。また、発振装置から発振された50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波をプラスチック内で反射させ、その反射波を受信装置に受信させるようにしたり、電磁波をプラスチック内で散乱させ、その散乱波を受信装置に受信させるようにしてもよい。特にスペース的な制約がある場合に有利である。
また、適宜電磁波を集約させるためにレンズを経路上に配置したり、経路を変更させるために反射鏡を配置したりすることも自由である。
また、本発明において対象となるプラスチックは熱可塑性、熱硬化性のいずれをも含み、更にエラストマーも含む概念である。
【0010】
また、請求項6に記載の発明では、一定量ごとのプラスチック材料の供給を受けて、処理容器内でプラスチック材料の加熱処理を行いそのプラスチック材料内の水分を除去して処理単位ごとに下流に搬送するプラスチック材料の水分除去システムであって、前記処理容器の下流位置に配置された測定用通路に含水状態が明確なプラスチック材料を収容し、発振装置から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、前記プラスチック材料に吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して前もって第1の測定値を取得し、測定用通路に含水状態が明確ではない前記プラスチック又は前記プラスチックとは異なるプラスチック材料(以下、これらを測定対象プラスチック材料とする)に発振装置から前記帯域の前記電磁波を照射し、前記測定対象プラスチック材料に吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して第2の測定値を取得し、前記第1の測定値と前記第2の測定値とを比較して含水状態が明確ではない前記プラスチック材料の含水状態を算出するようにしたことをその要旨とする。
【0011】
また、請求項7に記載の発明では、一定量ごとのプラスチック材料の供給を受けて、処理容器内でプラスチック材料の加熱処理を行いそのプラスチック材料内の水分を除去して処理単位ごとに下流に搬送するプラスチック材料の水分除去システムであって、 前記処理容器の下流位置に配置された測定用通路において含水状態が明確でかつ少なくとも2種類の異なる含水状態の同種のプラスチックに対して各々発振装置から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、前記プラスチックに吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して前もって複数の第1の測定値を取得し、得られた複数の前記第1の測定値と複数の含水状態との関係から関数を導きだす一方、測定用通路に含水状態が明確ではない前記プラスチック又は前記プラスチックとは異なるプラスチック材料(以下、これらを測定対象プラスチック材料とする)に発振装置から前記帯域の前記電磁波を照射し、前記測定対象プラスチック材料に吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して第2の測定値を取得し、前記第2の測定値を前記関数に適用して含水状態が明確ではない前記プラスチックの対応した含水状態を算出するようにしたことをその要旨とする。
【0012】
また、請求項8に記載の発明では請求項6に記載の発明の構成に加え、前記第1の測定値と前記第2の測定値との比較に基づいて得られた含水状態が、前記測定対象プラスチック材料の所定の含水状態以下に達していないと判断した場合には下流に搬送させないように制御することをその要旨とする。
また、請求項9に記載の発明では請求項6に記載の発明の構成に加え、前記第1の測定値と前記第2の測定値との比較に基づいて得られた含水状態が、前記測定対象プラスチック材料の所定の含水状態以下に達していないと判断した場合には前記プラスチック材料を再び前記処理容器の上流に移送するように制御することをその要旨とする。
また、請求項10に記載の発明では請求項6、8〜9のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記第1の測定値と前記第2の測定値との比較に基づいて得られた含水状態が、前記測定対象プラスチック材料の所定の含水状態以下に達していないと判断した場合にはその旨を外部に報知する報知手段を備えていることをその要旨とする。
【0013】
また、請求項11に記載の発明では請求項7に記載の発明の構成に加え、前記関数に適用した第2の測定値に対応する含水状態が前記測定対象プラスチック材料の所定の含水状態以下に達していないと判断した場合には下流に搬送させないように制御することをその要旨とする。
また、請求項12に記載の発明では請求項7に記載の発明の構成に加え、前記関数に適用した第2の測定値に対応する含水状態が前記測定対象プラスチック材料の所定の含水状態以下に達していないと判断した場合には前記プラスチック材料を再び前記処理容器の上流に移送するように制御することをその要旨とする。
また、請求項13に記載の発明では請求項7、11〜12に記載の発明の構成に加え、前記関数に適用した第2の測定値に対応する含水状態が前記測定対象プラスチック材料の所定の含水状態以下に達していないと判断した場合にはその旨を外部に報知する報知手段を備えていることをその要旨とする。
また、請求項14に記載の発明では請求項6〜13に記載の発明の構成に加え、前記処理容器内での前記測定対象プラスチック材料の加熱処理は真空引き処理を伴うことをその要旨とする。
【0014】
上記請求項6のような構成では、測定用通路においてまず含水状態が明確なプラスチック材料(以下、このプラスチックを基準プラスチック材料とする)に対して発振装置から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、プラスチックに吸収されなかった残余の電磁波を測定することで、その含水状態に対応する第1の測定値を取得することができる。第1の測定値を得る手段としては例えば上記のようなカールフィッシャー法が考えられる。
次いで、測定用通路において基準プラスチックと同じ材質であるが含水状態が明確ではないプラスチック又は基準プラスチックとは異なる材質のプラスチック材料(以下、このプラスチックを測定対象プラスチック材料とする)に発振装置から前記と同じ帯域の電磁波を照射し、前記プラスチックに吸収されなかった残余の電磁波を測定し、同様に第2の測定値を得る。そして、第2の測定値と第1の測定値とを比較する。つまり第1の測定値を基準に第2の測定値に基づいて測定対象プラスチック材料の含水状態を想定する。データ化する場合には一般に差分を得ることとなる。
このとき、第2の測定値を第1の測定値と同条件で測定して第1の測定値と同じであればこの測定対象プラスチック材料は基準プラスチックと同じ含水状態であると言える。また、誤差に含まれる程度であれば使用目的にもよるが、基準プラスチックに準じて取り扱うこともできる。異なる組成のプラスチックであっても第1の測定値を使用できるような係数を与えることで測定可能である。更に、測定値から基準プラスチックよりも含水率が少ない、又は逆に含水率が多いことがわかり、製品のチェックを行うことが可能となる。
【0015】
上記請求項7のような構成では、測定用通路においてまず少なくとも2種類の異なる基準プラスチック材料に対して各々発振装置から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、プラスチックに吸収されなかった残余の電磁波を測定することで、その含水状態に対応する複数の第1の測定値を取得することができ、複数の第1の測定値と複数の含水状態との関係から関数を導きだすことができる。複数の第1の測定値を得る手段としては例えば上記のようなカールフィッシャー法が考えられる。
次いで、測定用通路において測定対象プラスチック材料に発振装置から前記と同じ帯域の電磁波を照射し、前記プラスチックに吸収されなかった残余の電磁波を測定し、同様に第2の測定値を得る。そして、第2の測定値を関数に適用して測定対象プラスチック材料の対応した含水状態を算出する。
つまり、第2の測定値の関数上の位置に基づいて、あるいは関数上の任意の点を基準値として第2の測定値のその基準点に対する関係に基づいて測定対象プラスチックがどのような含水状態であるかを判断することが可能となる。
例えば、複数の第1の測定値に基づいてf(x)=ax+bで表される一次関数が導かれたとする。第2の測定値をxに代入することで含水状態が明確ではないプラスチックの含水状態であるf(x)が求められることとなる。また、第1の測定値ではないf(x)上の基準値に対して第2の測定値の大小を判断することで基準値に対して含水率が少ない、又は逆に含水率が多いことがわかるため、製品のチェックを行うことが可能となる。
これによって、処理容器内で加熱処理を行った測定対象プラスチック材料が所定の乾燥状態にあるかどうかを迅速に測定することが可能である。
【0016】
また、上記において第2の測定値に基づいて得られた測定対象プラスチック材料の含水状態が所定の含水状態以下に達していないと判断した場合には下流に搬送させないように制御することが好ましい。乾燥度合いが十分ではないプラスチックを使用しないようにするためである。
また、上記において第2の測定値に基づいて得られた測定対象プラスチック材料の含水状態が所定の含水状態以下に達していないと判断した場合には処理容器の上流に移送することが好ましい。再度乾燥工程に還流させるためである。
また、上記において第2の測定値に基づいて得られた測定対象プラスチック材料の含水状態が所定の含水状態以下に達していないと判断した場合にはその旨を報知手段によって外部に報知することが好ましい。これによって十分な乾燥がされなかったことを作業者が容易に認識できる。
また、上記において処理容器内での前記プラスチック材料の加熱処理は真空引き処理を伴うことが乾燥速度や乾燥度の向上から好ましい。
【0017】
上記において第1の測定値を取得した測定条件は第2の測定値を得た測定条件と同じであることが、計算の単純化や数値の正確さから好ましいが、測定条件の違いを何らかの関数値で第2の測定値に与えることができるのであれば、両測定値を得るための測定条件は違っていても構わない。
このように50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波をプラスチックに照射した、残余の電磁波を含水状態のパラメータとするのは、50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波(つまりテラヘルツ波とミリ波)が水分に吸収される性質があり、なおかつ水分が沸騰することもなく、プラスチックに照射してもプラスチックの物理的性質に影響がないためである。吸収量はプラスチック中の水分含量と正の相関関係、つまりプラスチック中の水分が多いとそれだけ、電波が多く吸収される性質に基づいている。従って、吸収後の残余の電磁波はプラスチック中の水分含量と負の相関関係となる。
プラスチックとしては水分吸収特性があれば熱硬化性でも熱可塑性でもどちらも測定可能である。また、プラスチックの形状は問わない。材料としてはペレット形状が考えられるが、製品化したプラスチックであれば種々の形状が考えられる。
【発明の効果】
【0018】
上記請求項1〜5に記載の発明によれば、含水状態が明確ではないプラスチック材料についてその含水状態を迅速に測定できることとなる。
また請求項6〜14に記載の発明によれば上記効果に加え、乾燥させたプラスチック材料の含水状態を迅速に測定でき、乾燥が十分ではないプラスチック材料を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1の模式図。
【図2】実施例2の模式図。
【図3】実施例3の模式図。
【図4】実施例4の模式図。
【図5】実施例5の供給ユニットの模式図。
【図6】実施例5の乾燥装置の内部構成を説明する模式図。
【図7】実施例5の供給ユニットの電気的構成を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例を図面に基づいて説明する。
(実施例1)
図1は本実施例に使用する装置の模式図である。
発振機11と受信機12の経路上に測定対象となるプラスチック13が配置される。プラスチック13はその形状が粒状や粉状である場合には電波が透過可能で水分の吸収のない例えばステンレス製のトレイ等に収容し、大型の自立できる外形を有するものであればそのまま安定したベース上に載置する。発振機11は図示しない発振回路、増幅回路、制御部、操作部等から構成されており、所定の周波数のテラヘルツ波を指向性のあるホーンアンテナ14から照射する。受信機12は図示しない受信回路、増幅回路、制御部、操作部等から構成されており、指向性のあるホーンアンテナ15から電波を受信する。この実施例1では発振機11から発振されたテラヘルツ波をプラスチック13に照射し、プラスチック13に吸収させるとともに吸収されずに透過された残余のテラヘルツ波を受信機12で受信して測定するというものである。
【0021】
次に、このような構成の装置によって実行されるプラスチック中の水分の検出方法について説明する。
1.デフォルト状態での測定
まず、プラスチック13を間に配置しない状態で発振機11からのテラヘルツ波を受信機12に受信させ、プラスチック13によるテラヘルツ波の吸収がないデフォルトの状態の受信量を念のため測定する。
2.基準プラスチックの測定
カール・フィッシャー法によってプラスチック13の含水率を測定し、この含水率が明確なプラスチック13を基準プラスチックとして発振機11からテラヘルツ波を照射し、プラスチック13に吸収させてその残余のテラヘルツ波を受信機12で受信して第1の測定値を測定する。測定値は透過強度として得られる。
尚、デフォルト状態での測定値からこの測定された残余のテラヘルツ波の測定値を減じることで吸収されたテラヘルツ波の吸収量が算出される。
3.測定対象プラスチックの測定
次いで、含水率が不明確なプラスチック13を測定対象プラスチックとして発振機11からテラヘルツ波を照射し、プラスチック13に吸収させてその残余のテラヘルツ波を受信機12で受信して第2測定値を測定し、基準プラスチックの第1の測定値と照合する。例えば、基準プラスチックの測定値と同じ、あるいは一定の誤差内であれば基準プラスチックと同じ含水率として取り扱うことが可能である。あるいは、数値から基準プラスチックよりも含水率が少ない、又は逆に含水率が多いことがわかり、製品のチェックを行うことが可能である。
また、基準プラスチックと測定対象プラスチックは同じ組成(材質)であっても、組成が異なっていても構わない。例えば、比較的性質の似ているプラスチックであれば、同じプラスチックとして取り扱うことは可能であり、異なっていてもその異なっている方向(ベクトル)を修正するような係数を与えることで基準プラスチックに値に適用することは可能であるからである。以下の実施例でも同様である。
【0022】
(実施例2)
図2は実施例1の装置のバリエーションである。実施例2では発振機11と受信機12を隣接配置し、発振機11及び受信機12のホーンアンテナ14,15の前方方向の所定位置にプラスチック13を配置する構成とされている。ホーンアンテナ14,15は反射角に応じて多少内向きの角度に調整されている。実施例2の装置では、テラヘルツ波をプラスチック13に照射した際の反射波はテラヘルツ波のプラスチック13への吸収率との負の相関関係があり、プラスチック13の含水率が上がると反射波は減り、含水率が下がると反射波も相対的に増えるという傾向となるためである。
このような装置でも実施例1と同様の測定が可能である。
(実施例3)
図3は実施例1及び2の装置のバリエーションである。実施例3では発振機11と受信機12を隣接配置し、発振機11及び受信機12のホーンアンテナ14,15の前方方向の所定位置にプラスチック13を配置する構成とされている。プラスチック13の側方には散乱板16が配設されている。実施例3の装置では、前記プラスチック内でテラヘルツ波を散乱させ、その散乱波を散乱板16で反射させて受信機12のホーンアンテナ15方向に指向させるという構成である。散乱波も反射波と同様にテラヘルツ波のプラスチック13への吸収率との負の相関関係があり、プラスチック13の含水率が上がると散乱波は減り、含水率が下がると散乱波も相対的に増えるという傾向となるためである。
このような装置でも実施例1と同様の測定が可能である。
【0023】
(実施例4)
次に、上記実施例1をより具体化した実施例4について説明する。
図4は本実施例に使用する装置の模式図である。テラヘルツ波を照射する発振機21の照射経路上には第1のレンズ22、放物面鏡23、試料ケース24、第2のレンズ25及び受信機26が直列に配置されている。
発振機21は図示しない発振回路、増幅回路、制御部、操作部等から構成されており、所定の周波数のテラヘルツ波を指向性のあるホーンアンテナ26から照射する。第1のレンズ22はホーンアンテナ26から照射された放射状に拡散するテラヘルツ波を平行な射出方向に修正する。放物面鏡23はテラヘルツ波の減衰を抑制しつつ射出方向を(ここでは90度)変化させる。放物面鏡は必要に応じて複数配置することも可能である。
試料ケース24内には測定対象の粒状のプラスチックが封入されるようになっている。
【0024】
次に、このような構成の装置によって実行されるプラスチック中の水分の検出方法について説明する。
本実施例4では含水率のみ異なる3種類の粒状のアクリル樹脂A〜Cを用意した。2種類あるいは4種類以上とすることも自由である。これらアクリル樹脂A〜Cはカール・フィッシャー法によってその含水率が測定されている。これらアクリル樹脂A〜Cに対して上記実施例1と同様の操作で発振機21から94GHzの波長のテラヘルツ波を照射してアクリル樹脂A〜Cについてそれぞれ第1の測定値(透過強度)を得た。その結果を表1に示す。表1において吸収量はブランク値から透過強度を減じることで得られる。
また、表1の結果に基づいて、表2のようにこのアクリル樹脂についてテラヘルツ波の透過強度と当該アクリル樹脂の含水率との関係に相関関係が得られる。透過強度と含水率とは概ねきれいな相関関係にある。これらの値について標準偏差を求め、ばらつきを調整すべく正規化を実行して
一次関数:f(x)=ax+b
を導くことができる。表2における破線が一次関数のイメージである。ここに、a,bは対象となるプラスチックやテラヘルツ波の波長等の測定条件によって定まる固有の変数である。
そして、同様の条件で含水率のみ異なる他の粒状のアクリル樹脂について第2の測定値(透過強度)を求め、f(x)に適用することでその含水率の不明なアクリル樹脂の含水率を正確に算出することが可能である。また、ある基準とする含水率を設定したい場合に、このf(x)の任意の点をそれに設定することで、同時に含水率に対応した透過強度、つまり測定値を得ることができる。また、f(x)の任意の点を基準値としてその基準値に対して第2の測定値の大小を判断することもできる。
このような構成であれば単にある含水率よりも低いか高いかという判断だけではなく、所定の範囲の含水率内に入っていなければならないような場合を測定する場合であっても迅速かつ正確なプラスチックの含水率の測定が可能となる。また、実際に測定していない一次関数上の任意の点を基準値として不明なアクリル樹脂の含水率を算出することも可能となる。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
(実施例5)
次に、上記実施例1〜実施例4をより具体化した実施例5について説明する。
図5は本実施例5のプラスチック材料の供給システム(以下、供給システムとする)を簡略化した模式図である。水分除去システムはペレット形状のプラスチック材料を収容するタンク装置31と、同タンク装置31からプラスチック材料の供給を受けてプラスチック材料の加熱乾燥を行う水分除去システムとしての乾燥装置32と、乾燥後のプラスチック材料の供給を受けて成型品を成形する成形機33から構成されている。
タンク装置31は基本的に外気が導入されないようにプラスチック材料が収容され、フレキシブルホース35を介してブロア装置36の駆動によってプラスチック材料を乾燥装置32に供給する。
【0028】
図6に示すように、乾燥装置32は筐体38内部における上部位置にホッパ39を備えている。ホッパ39にはタンク装置31からフレキシブルホース35が接続されている。ホッパ39の下部位置には第1のシャッタ装置40が配設されており、併設された図示しないエアシリンダによってシャッタが開閉可能とされている。第1のシャッタ装置40の一定時間の開放によって一定量のプラスチック材料を下方に放出することとなる。ホッパ39にはプラスチック材料の貯留状態を検出するレベルセンサ42が併設されている。ホッパ39の下方位置には処理容器としての加熱用ホッパ43が配設されている。加熱用ホッパ43内にはヒータ及びブロアから構成される熱風出力部44に接続された熱風誘導管45のヘッド45aが配置されており、加熱用ホッパ43内に収容されたプラスチック材料を加熱する。加熱用ホッパ43の下部位置には第2のシャッタ装置46が配設されており、併設された図示しないエアシリンダによってシャッタが開閉可能とされている。第2のシャッタ装置46に隣接した下方位置にはアキュムレータ47が形成されている。アキュムレータ47の下部位置には第3のシャッタ装置48が配設されており、併設された図示しないエアシリンダによってシャッタが開閉可能とされている。アキュムレータ47は加熱用ホッパ43内で加熱乾燥されたプラスチック材料の通過通路を構成すると同時に第3のシャッタ装置48が閉鎖された状態で一旦加熱用ホッパ43から供給されたプラスチック材料を貯留する。アキュムレータ47の上部位置には本発明の発振機と受信機をアセンブリーで備えた第1の水分検出装置51が配設されている。アキュムレータ47の下端には筐体38外部に連通するフレキシブルホース52の基端が接続されている。
【0029】
成形機33は基本的に外気が導入されないように密閉されたホッパ55と成形機本体56から構成されている。ホッパ55にはプラスチック材料の貯留状態を検出するレベルセンサ57が併設されている。ホッパ55の下部位置(図示しない通路位置)には本発明の発振機と受信機をアセンブリーで備えた第2の水分検出装置59が配設されている。
フレキシブルホース52は筐体38外部において第1及び第2の分岐ホース52A.52Bに分岐され、第1の分岐ホース52Aはホッパ51に接続され、第2の分岐ホース52Bは前記タンク装置31に接続されている。フレキシブルホース52の分岐付近には分岐点を挟んで第4及び第5のシャッタ装置54、55がそれぞれ配設されている。アキュムレータ47内のプラスチック材料はブロア装置58の駆動によって第1又は第2の分岐ホース52A,52Bのいずれかの方向に送出される。本実施例5では第4及び第5のシャッタ装置54、55は図示しないリミットスイッチの入切によってそれぞれの分岐ホース52A,52Bに面した位置にシャッタを進出させプラスチック材料の通過を規制する。そのため、第4のシャッタ装置54が開放され、第5のシャッタ装置55が閉鎖されている状態ではプラスチック材料は成形機33方向に送出され、逆に第4のシャッタ装置54が閉鎖され、第5のシャッタ装置55が開放されている状態ではプラスチック材料はタンク装置31方向に送出される。
【0030】
次にこのように構成される供給システムの制御に関する電気的構成について説明する。供給システムは制御装置であるコントローラ61を備えている。コントローラ61には上記第1及び第2の水分検出装置52,59、ブロア装置36,58、エアシリンダ41,45,49、レベルセンサ42,57、第1〜第5のシャッタ装置40,46,48,54,55、熱風出力部44、報知手段としてのブザー59が接続されている。コントローラ61は基本的にレベルセンサ42,57の検出値に基づいてメモリに記憶されているプログラムに基づいて制御を実行する。
また、本発明に特化してコントローラ61内のメモリには水分検出装置52,59についてそれぞれの測定条件下での各種プラスチック材料とその材料ごとのテラヘルツ波の吸収特性と当該プラスチック材料の含水率との関係が記憶されている。具体的には上記実施例4のような一次関数上のしきい値となるある含水率に対応した透過強度を基準値とし、その基準値よりも大きな値かどうかを判断することが考えられる。また、上記実施例1〜3のようなある含水率が明確なプラスチック材料の透過強度を基準値とし、その基準値よりも大きな値かどうかを判断することが考えられる。本実施例5では各水分検出装置52,59においてそれぞれ受信側で基準値以上を検出できない場合には所定の乾燥度に達していないと判断するものとする。
以下に、コントローラ61の実行する制御の概要について供給システムの動作とともに説明する。
【0031】
タンク装置〜乾燥装置間の制御
乾燥装置32側のレベルセンサ42の検出信号に基づいて、乾燥装置32内のホッパ39に貯留されたプラスチック材料が少ないと判断すると、コントローラ61はこれを補充すべくタンク装置31側を制御する。
コントローラ61はブロア装置36を一定時間駆動させてタンク装置31からプラスチック材料をホッパ39に供給させる。
【0032】
乾燥装置〜成形機間の制御
成形機33側のレベルセンサ57の検出信号に基づいて、成形機33内のホッパ55に貯留されたプラスチック材料が少ないと判断すると判断すると、コントローラ61はこれを補充すべく乾燥装置32側を制御する。
A)まず、コントローラ61は過去の第2のシャッタ装置46の開放の履歴と第4及び第5のシャッタ装置54,55の状態からアキュムレータ47内にプラスチック材料があると判断すると、第3のシャッタ装置48の開放及び閉鎖を実行させ、アキュムレータ47内のすべてのプラスチック材料をフレキシブルホース52方向に流下させる。同時に第4のシャッタ装置54側を開放させ、第5のシャッタ装置55側を閉鎖させるとともにブロア装置58を一定時間駆動させてプラスチック材料をすべて第1の分岐ホース52A側に送出させる。
B)そして、次のロット分のプラスチック材料を乾燥させるためにコントローラ61は設定されたタイミングで第1のシャッタ装置40の開放及び閉鎖を実行させ、一定量のプラスチック材料をホッパ39から加熱用ホッパ43内に落下させる。そして、前もって設定された時間及び温度条件で熱風出力部44を駆動させてプラスチック材料を乾燥させる。そして乾燥時間が経過した段階でコントローラ61は第2のシャッタ装置46の開放及び閉鎖を実行させ乾燥の終了したプラスチック材料をアキュムレータ47内に落下させる。
【0033】
C)次いで、その落下タイミングに併せてコントローラ61は第1の水分検出装置52を駆動させてアキュムレータ47を通過するプラスチック材料の水分検出を実行させる。
ここで、アキュムレータ47内のプラスチック材料が所定の含水率以下ではない、つまり乾燥装置32での乾燥が成形機33で使用できるほどには十分ではないという検出結果の場合にはブザーからその旨を報知するとともに、第2のシャッタ装置46の閉鎖後に第3のシャッタ装置48の開放及び閉鎖を実行させ、アキュムレータ47内のすべてのプラスチック材料をフレキシブルホース52に流下させる。同時に第5のシャッタ装置55を開放させ、第4のシャッタ装置54を閉鎖させるとともにブロア装置58を一定時間駆動させてプラスチック材料をすべてタンク装置31側に送出させる(戻す)。
D)これに対して、第1の水分検出装置52の水分検出の結果、乾燥装置32での乾燥が十分であると判断した場合には次の2つのいずれかの処理がなされる。
i)レベルセンサ57からの検出信号に基づいて、成形機33内のホッパ55に貯留されたプラスチック材料が依然として少ないと判断されている場合には、上記A)と同様にプラスチック材料をすべて第1の分岐ホース52A側に送出させ、続いてB)に移行させる。
ii)レベルセンサ57からの検出信号がなければ一旦アキュムレータ47内に貯留状態で待機させる。
【0034】
E)一方、A)においてコントローラ61は前回の第2のシャッタ装置46の開放の履歴と第4及び第5のシャッタ装置54,55の状態からアキュムレータ47内にプラスチック材料がない、つまり前回乾燥が十分ではなく、そのロットがタンク装置31に戻されたと判断すると、第1のシャッタ装置40の開放及び閉鎖を実行させ、一定量のプラスチック材料を加熱用ホッパ43内に落下させる。そして、直前の乾燥工程における加熱時間よりも長い時間(例えば自動的に前回より120%の時間延長)で熱風出力部44を駆動させてプラスチック材料を乾燥させる。そしてその新たに設定された時間が経過した段階でコントローラ61は第2のシャッタ装置46の開放及び閉鎖を実行させ乾燥の終了したプラスチック材料をアキュムレータ47内に落下させる。尚、このような自動的な乾燥時間の延長は行わず、新たに入力手段から時間や加熱温度の設定をするようにしてもよい。アキュムレータ47内に落下させる際にコントローラ61は上記C)D)の処理を実行する。
F)また、A)において第1の分岐ホース52Aを経由して成形機33のホッパ55に貯留されたプラスチック材料に対してコントローラ61は所定タイミング(例えば5分ごと)に第1の水分検出装置52を駆動させて成形機本体56方向に導かれるプラスチック材料の水分検出を実行させる。これによって最終段階でもプラスチック材料が所定の乾燥状態にあるかどうかをチェックすることができる。
【0035】
上記のように構成したことにより本実施例5の供給システムでは次のような効果が奏される。
(1)実機においてリアルタイムにプラスチック材料の含水量を測定して、製品に反映できるため不良品率が非常に下がることとなる。
(2)成形材料としてプラスチック材料の含水量が一定以下にあるかどうかをタンク装置31、乾燥装置32及び成形機33の各段階でチェックでき、成形材料として不適格なプラスチック材料を確実に排除できる。
(3)従来では、製品を見てその仕上がりからプラスチック材料の含水量が高かったという判断をしても、どの段階で不適格な材料となったかはわからないため、原因となるプラスチック材料はすべて不良と判定しなければならなかった。しかし、このように数値に基づいて、あるロットの含水量が不適格であると言い切れるため、無駄に原料を廃棄する必要もなく、原因を早期につきとめて、対策をとることも迅速に行うことができる。
(4)カールフィッシャー法とは異なり測定に供したプラスチック材料はそのまま実際の材料として使用できるため、測定のためにプラスチック材料を無駄にすることがない。
【0036】
尚、本発明は次のように具体化してもよい。
・実施例4では実測値に基づいて一次関数を正規化して求めるようにしていたが、正規化を実行するまでもなければ平均値をとることで一次関数を算出するようにしてもよい。2点のみを測定した場合には平均値をとる必要もない。
・実施例5ではとにかくプラスチック材料は乾燥していることがよい、ということでコントローラ61は第1の水分検出装置52の水分検出においてもある基準値よりも測定値が大きければ含水率が低いということである基準値をしきい値と考えているが、「ある所定の含水率が好ましい」場合には実施例4のような一次関数を得てその直線上の2つの基準値間に測定値があることする制御であっても構わない。
・実施例5においてタンク装置31にも水分検出装置を設けるようにしてもよい。この場合においてある値よりも乾燥していると判断した場合には乾燥装置32にプラスチック材料を送出せずに、直接成形機33に送出するような設計とすることが可能である。
・上記実施例5ではプラスチック材料をブロア装置36,58で送るような構造であってが、エアポンプ装置を使用した真空吸引方式で送ることも可能である。
・プラスチック材料を送出するさいにはフレキシブルホース35,52以外に溶接配管を使用してもよい。
・上記実施例5ではプラスチック材料の含水量が高い場合にタンク装置31還流させていたが、還流させずに(もちろん成形機33側には送出せず)アキュムレータ47から外部に排出させるような構成でもよい。
・上記実施例5ではプラスチック材料の含水量が高い場合にタンク装置31還流させていたが、これはホッパ39に戻すように構成してもよい。
・上記実施例5の供給システムの構成や制御は一例であって、他の構成で実現することも可能である。
・上記実施例5では加熱乾燥器を一例として挙げたが、乾燥装置32を加熱と同時に真空引きをして乾燥度を向上させる方式の水分除去システムとして構成するようにしてもよい。
その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において変更した態様で実施することは構わない。
【符号の説明】
【0037】
11…発振装置としての発振機、12…受信装置としての受信機、35…測定用通路としてのフレキシブルホース、52,57…発振装置及び受信装置としての水分検出装置、43…処理容器としてのホッパ型収容皿、47…測定用通路としてのアキュムレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水状態が明確なプラスチックに対して発振装置から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、前記プラスチックに吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して前もって第1の測定値を取得するとともに、含水状態が明確ではない前記プラスチック又は前記プラスチックとは異なるプラスチック(以下、これらを測定対象プラスチックとする)に発振装置から前記帯域の前記電磁波を照射し、前記測定対象プラスチックに吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して第2の測定値を取得し、前記第1の測定値と前記第2の測定値とを比較して含水状態が明確ではない前記プラスチックの含水状態を算出するプラスチック中の水分の検出方法。
【請求項2】
含水状態が明確でかつ少なくとも2種類の異なる含水状態の同種のプラスチックに対して各々発振装置から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、前記プラスチックに吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して前もって複数の第1の測定値を取得し、得られた複数の前記第1の測定値と複数の含水状態との関係から関数を導きだし、含水状態が明確ではない前記プラスチック又は前記プラスチックとは異なるプラスチック(以下、これらを測定対象プラスチックとする)に発振装置から前記帯域の前記電磁波を照射、前記測定対象プラスチックに吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して第2の測定値を取得し、前記第2の測定値を前記関数に適用して含水状態が明確ではない前記プラスチックに対応した含水状態を算出するプラスチック中の水分の検出方法。
【請求項3】
前記発振装置から発振された前記電磁波を前記プラスチックを透過して同プラスチックの後方に配置した受信装置に受信させて前記第1又は第2の測定値を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック中の水分の検出方法。
【請求項4】
前記発振装置から発振された前電磁波は前記プラスチック内で反射させ、その反射波を受信装置に受信させて前記第1又は第2の測定値を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック中の水分の検出方法。
【請求項5】
前記発振装置から発振された前記電磁波は前記プラスチック内で散乱させ、その散乱波を受信装置に受信させて前記第1又は第2の測定値を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック中の水分の検出方法。
【請求項6】
一定量ごとのプラスチック材料の供給を受けて、処理容器内でプラスチック材料の加熱処理を行いそのプラスチック材料内の水分を除去して処理単位ごとに下流に搬送するプラスチック材料の水分除去システムであって、
前記処理容器の下流位置に配置された測定用通路に含水状態が明確なプラスチック材料を収容し、発振装置から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、前記プラスチック材料に吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して前もって第1の測定値を取得し、測定用通路に含水状態が明確ではない前記プラスチック又は前記プラスチックとは異なるプラスチック材料(以下、これらを測定対象プラスチック材料とする)に発振装置から前記帯域の前記電磁波を照射し、前記測定対象プラスチック材料に吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して第2の測定値を取得し、前記第1の測定値と前記第2の測定値とを比較して含水状態が明確ではない前記プラスチック材料の含水状態を算出するようにしたプラスチック材料の水分除去システム。
【請求項7】
一定量ごとのプラスチック材料の供給を受けて、処理容器内でプラスチック材料の加熱処理を行いそのプラスチック材料内の水分を除去して処理単位ごとに下流に搬送するプラスチック材料の水分除去システムであって、
前記処理容器の下流位置に配置された測定用通路において含水状態が明確でかつ少なくとも2種類の異なる含水状態の同種のプラスチックに対して各々発振装置から50GHz〜1000GHzの帯域の電磁波を照射し、前記プラスチックに吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して前もって複数の第1の測定値を取得し、得られた複数の前記第1の測定値と複数の含水状態との関係から関数を導きだす一方、測定用通路に含水状態が明確ではない前記プラスチック又は前記プラスチックとは異なるプラスチック材料(以下、これらを測定対象プラスチック材料とする)に発振装置から前記帯域の前記電磁波を照射し、前記測定対象プラスチック材料に吸収されなかった残余の前記電磁波を測定して第2の測定値を取得し、前記第2の測定値を前記関数に適用して含水状態が明確ではない前記プラスチックの対応した含水状態を算出するようにしたプラスチック材料の水分除去システム。
【請求項8】
前記第1の測定値と前記第2の測定値との比較に基づいて得られた含水状態が、前記測定対象プラスチック材料の所定の含水状態以下に達していないと判断した場合には下流に搬送させないように制御することを特徴とする請求項6に記載のプラスチック材料の水分除去システム。
【請求項9】
前記第1の測定値と前記第2の測定値との比較に基づいて得られた含水状態が、前記測定対象プラスチック材料の所定の含水状態以下に達していないと判断した場合には前記プラスチック材料を再び前記処理容器の上流に移送するように制御することを特徴とする請求項6に記載のプラスチック材料の水分除去システム。
【請求項10】
前記第1の測定値と前記第2の測定値との比較に基づいて得られた含水状態が、前記測定対象プラスチック材料の所定の含水状態以下に達していないと判断した場合にはその旨を外部に報知する報知手段を備えていることを特徴とする請求項6、8〜9のいずれかに記載のプラスチック材料の水分除去システム。
【請求項11】
前記関数に適用した第2の測定値に対応する含水状態が前記測定対象プラスチック材料の所定の含水状態以下に達していないと判断した場合には下流に搬送させないように制御することを特徴とする請求項7に記載のプラスチック材料の水分除去システム。
【請求項12】
前記関数に適用した第2の測定値に対応する含水状態が前記測定対象プラスチック材料の所定の含水状態以下に達していないと判断した場合には前記プラスチック材料を再び前記処理容器の上流に移送するように制御することを特徴とする請求項7に記載のプラスチック材料の水分除去システム。
【請求項13】
前記関数に適用した第2の測定値に対応する含水状態が前記測定対象プラスチック材料の所定の含水状態以下に達していないと判断した場合にはその旨を外部に報知する報知手段を備えていることを特徴とする請求項7、11〜12のいずれかに記載のプラスチック材料の水分除去システム。
【請求項14】
前記処理容器内での前記測定対象プラスチック材料の加熱処理は真空引き処理を伴うことを特徴とする請求項6〜13のいずれかに記載のプラスチック材料の水分除去システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−78304(P2012−78304A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226249(P2010−226249)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(597033384)中村科学工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】