説明

プラスチック光ファイバ

【課題】プラスチック光ファイバの通信状態を目視で確認できるようにする。
【解決手段】プラスチック光ファイバの端面から、伝達する光信号としての視認光を入射する。クラッド22は、視認光を散乱して周面からプラスチック光ファイバの外部に射出する散乱構造を備える。この散乱構造とは、クラッド22中の位置によって密度が異なる構造である。この構造は、ポリマーの結晶構造を部分的に変えたこと等により形成する。これにより、コア21は視認光の大半を伝達し、視認光の一部はクラッド22内を散乱して、プラスチック光ファイバ11の外周面から外部へ射出される。したがって、第2波長の光を目視で確認することができ、通信中か否か、あるいはプラスチック光ファイバ11が途中で断線しているか否か及び断線個所を判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光ファイバは、石英系光ファイバに比べて、成型加工性、部材の軽量化、低コスト化、可撓性、耐衝撃性等において優位性がある。例えばプラスチック光ファイバは、石英系光ファイバと較べると、光の伝送損失が大きいために長距離の光伝送には向いていないが、上記のプラスチックの性質により、光ファイバのコア部を数10μm以上とするようないわゆる大口径化を図ることができる。この大口径化により、光ファイバの分岐や接続に用いる各種周辺部品や機器の、光ファイバとの接続精度を上げる必要がなくなる。そのため、プラスチック光ファイバは、周辺部品や機器との接続容易性、端末加工容易性、高精度の調芯が不要になるメリットがある。その他にもプラスチック光ファイバは、上記のようなコネクタ部分の低コスト化の他に、上記のプラスチックの性質により、人体への突き刺し災害等の危険性の低さ、高い柔軟性による易加工性や易敷設性や耐振動性、そして低価格等のメリットがある。上記のような特長により、プラスチック光ファイバは、家庭内やオフィス内等における構内通信手段として特に有効であるとして需要が大きくなっている。
【0003】
ところで、通信状況は、電気通信用のケーブルでは誘電効果を利用してケーブル外部から検知可能であるが、光ファイバでは外部からの検知が未だ可能とはなっていない。しかし、通信状況の検知は、単なる通信中か否かのみならず、断線しているか否かを把握する上で重要である。例えば、敷設した直後等に行う通信テストや、通信不能時における検査等ではプラスチック光ファイバの状態を把握する必要がある。そこで、通信状況を知るために、プラスチック光ファイバに入射した光の一部をプラスチック光ファイバの外周面から外に漏らす手段を本発明者らは検討した。
【0004】
光ファイバに入射した光を外周面から外へ漏らす(光漏洩)例としては、光ファイバを光源として使用する場合が挙げられ、次の各提案がなされている。例えば、特許文献1では、光ファイバを光源とした光源装置であって、光ファイバの一方の端面から入射した光を側面から取り出すために、光ファイバのコア内に散乱体を含有させて、これにより入射された光を散乱させる光ファイバが提案されている。また、特許文献2では、避難誘導灯等として利用するものとして、光漏洩型光ファイバ(光ファイバ素線)をスペーサに螺旋状に配置することにより側面への光漏洩を可能にしたケーブル、特許文献3では、光反射性の外表面を持つ管を中心部に設けることで光を外側に導く、横照明用としての光ファイバケーブル、特許文献4では、多数の光ファイバを束ねてこれを透明外皮で覆い、光ファイバの端部から光が出るようにした夜間警告灯が提案されている。さらにまた、特許文献5では、クラッドに散乱体であるシリカエアロゲルを含有させることにより光漏洩する側面発光型光ファイバが提案されており、特許文献6では、通信状況を把握するための光増幅器のモニタ構造が提案されている。
【特許文献1】特開平5−27121号公報
【特許文献2】実開平7−10702号公報
【特許文献3】特表平8−510847号公報
【特許文献4】特開平11−119706号公報
【特許文献5】特開2000−137119号公報
【特許文献6】特開平9−26379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜5の提案は、いずれも光ファイバを用いた光源に関するものであって、上記のような通信状況を把握するためのものではないとともにその効果を併せ持つものでもなく、また、示唆する記載もない。さらに、光ファイバ側面から光漏洩するために、光ファイバへの散乱体の導入あるいは螺旋構造の付与等、通信性能を悪化させるものであり、これらの提案は通信状況を把握する目的には適さないものである。特許文献6のモニタ構造によると、通信状況を把握することは可能であるが、希土類ドープ光ファイバ増幅器の構造を工夫することによりそれを実現しているものであり、簡便に通信状況を把握する目的を満足するものではない。また、この特許文献6に提案されるモニタ構造は、プラスチック光ファイバにおける通信波長には必ずしも適用できるものではないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明では、このような背景に鑑みて、通信状況を外部から容易に検知するためのプラスチック光ファイバを提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記課題を解決するために、断面円形の径方向における屈折率が変化している線状部材と、この線状部材の外周に設けられ、屈折率が前記線状部材の屈折率以下である外周部材とを有するプラスチック光ファイバにおいて、外周部材は、プラスチック光ファイバの端面から入射された光の一部を散乱して周面から外部に射出する散乱構造を有することを特徴として構成されている。
【0008】
さらに、前記散乱構造は、前記外周部材中の位置によって屈折率が異なる屈折率不均一構造であることが好ましく、この屈折率不均一構造は、外周部材中の位置によって密度が異なる密度不均一構造であることが好ましい。
【0009】
そして、上記の本発明のプラスチック光ファイバでは、(1)外周部材は、ポリマーを含み、このポリマーの結晶構造が部分的に異なることにより前記密度不均一構造とされたこと、(2)外周部材は、ポリマーを含み、このポリマーの分子量揺らぎにより前記密度不均一構造とされたこと、(3)外周部材は、第1成分としてのポリマーとこの第1成分とは異なる第2成分とを含み、第1成分と第2成分との組成比揺らぎにより前記密度不均一構造とされたこと、の少なくともいずれかひとつであることが好ましい。
【0010】
また、本発明では、断面円形の径方向における屈折率が変化している線状部材と、この線状部材の外周に設けられ、屈折率が線状部材の屈折率以下である外周部材とを有するプラスチック光ファイバにおいて、外周部材は、断面における内側の第1層と、この第1層の外周に備えられ前記第1層よりも屈折率が低い第2層とを同心円状に備え、第1層と第2層との少なくともいずれか1層は、プラスチック光ファイバの端面から入射された光の一部を散乱して外周面から層外に射出する散乱構造を有し、第1層のみが散乱構造を有するときには、第2層は前記光を透過する透過材料により構成されることを特徴として構成されている。
【0011】
さらにまた、本発明は、断面円形の径方向における屈折率が変化している線状部材と、この線状部材の外周に設けられ、屈折率が線状部材の屈折率以下である外周部材とを有するプラスチック光ファイバにおいて、線状部材と外周部材とは、プラスチック光ファイバの端面から入射された光の一部を互いの界面で散乱して外周部材の外周面から外部に射出する散乱構造を有することを特徴として含む。その他にも、本発明は、断面円形の径方向における屈折率が変化している線状部材と、この線状部材の外周に設けられ、屈折率が線状部材の屈折率以下である外周部材とを有するプラスチック光ファイバにおいて、外周部材は、断面における内側の第1層と、この第1層の外周に備えられ前記第1層よりも屈折率が低い第2層とを同心円状に備え、第1層と第2層とは、プラスチック光ファイバの端面から入射された光の一部を互いの界面で散乱して第2層の外周面から外部に射出する散乱構造を有することを特徴として含んでいる。そしてまた、本発明は、断面円形の径方向における屈折率が変化している線状部材と、この線状部材の外周に設けられ、屈折率が線状部材の屈折率以下である外周部材とを有するプラスチック光ファイバにおいて、外周部材は、断面における内側の第1層と、この第1層の外周に備えられ前記第1層よりも屈折率が低い第2層とを同心円状に備え、第2層の外周にはプラスチック光ファイバの端面から入射された光の一部を乱反射する凹凸が形成され、凹凸は、乱反射により第2層内を散乱した光を前記外周から層外に射出する粗さとされることを特徴として含んで構成されている。
【0012】
さらに、本発明は、上記のいずれかひとつのプラスチック光ファイバと、このプラスチック光ファイバの外周を覆い、散乱した光を透過する被覆部材とを備えたことを特徴とするプラスチック光ファイバコードを含んで構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、通信状況を外部から容易に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明を実施した一様態としてのプラスチック光ファイバコードを製造するフロー図である。本発明のプラスチック光ファイバコードの製造工程は、プラスチック光ファイバ11を構成する材料によりプリフォーム12を作製するためのプリフォーム作製工程13と、プリフォーム12を加熱して所定外径となるように延伸することによりプラスチック光ファイバ11を作製する加熱延伸工程16と、プラスチック光ファイバ11に所定の被覆材を設けてプラスチック光ファイバコード(以下、単にコードと称することもある。)17を得る被覆工程18とを有している。
【0015】
図2は、プラスチック光ファイバ11の断面図、図3は、図2に示すプラスチック光ファイバ11の断面径方向における屈折率を示すグラフである。なお、図3において、横軸はプラスチック光ファイバの断面径方向を示し、縦軸は屈折率を示しており、上にいくほど高い値であることを意味している。プラスチック光ファイバ11は、図2に示すように、光信号を伝達するコア21と、このコア21の外周に設けられ、入射された光の一部を散乱してプラスチック光ファイバ11の外周から射出するためのクラッド22とを有し、このクラッド22は、外径及び内径が長手方向にそれぞれ一定で、厚みが均一の管形状となっている。したがって、コア21の直径とクラッド22の内径とは等しい。
【0016】
図3において、横軸の符号(A)で示される範囲は、図2におけるクラッド22の屈折率であり、符号(B)で示される範囲は図2におけるコア21の屈折率である。コア21は、図3に示されるように、クラッド22との境界から中心に向けて屈折率が連続的に高くなっており、クラッド22の屈折率はコア21の屈折率以下となっている。なお、断面円形の径方向において、屈折率の最大値と最小値との差が0.001以上0.3以下であることが好ましい。上記のような構造によりプラスチック光ファイバ11は、GI(グレイデッドインデックス)型光伝送体としての機能を発現する。また、クラッド22は、図3に示すように屈折率が概ね一定となっているが、コア21に近づくほど屈折率が大きくなっていてもよく、この屈折率の変化はコア21に近づくほど段階的に大きくなってもよいし連続的に大きくなってもよい。
【0017】
図2ではコア21とクラッド22との境界を、説明の便宜上、示してはいるが、コア21及びクラッド22の材料や製造条件等により境界の明確さは異なり、この境界線で示される位置は必ずしも屈折率のグラフにおける屈曲点を示す位置でなくともよい。なお、プリフォーム12(図1参照)は、プラスチック光ファイバ11よりもクラッド及びコアの径がそれぞれ大きいが、基本的構造はプラスチック光ファイバ11と同じであるので図示は略すが、製法により、断面中心部に空間(中空部)を有する場合がある。そして、コア21が同心円状の複層構造であっても本発明は適用される。
【0018】
[コア21の材料]
コア21は、ポリマーをその主たる成分としており、上記のような屈折率分布を発現させる、あるいは屈折率分布の状態を調整する等の目的でその他の物質を添加することもある。添加する物質としては、例えば屈折率調整剤(ドーパント)がある。ポリマーとしては、プラスチック光ファイバとして好ましい周知のものを用いることができる。特に好ましく用いられるものとしては、有機材料として光透過性が高いものであり、光散乱を生じないように、非晶性のポリマーとすることが好ましい。
【0019】
ポリマーの例としては、(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a),含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b)),スチレン系化合物(c),ビニルエステル類(d)、ポリカーボネート類の原料であるビスフェノールA等を重合性化合物として重合させたものがある。これらを原料として、各々を重合させたホモポリマー、あるいはこれらのうち2種以上を組み合わせて重合させた共重合体、および上記のホモポリマーや共重合体の各種組み合わせによる混合物も例として挙げることができる。そして、これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル類または含フッ素ポリマーを成分として含むものが光伝送体を構成する上でより好ましい。次に、上記の例について、より詳細に示す。
【0020】
上記の(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6 ]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボニルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
【0021】
また、(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1 −トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。
【0022】
さらに、(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらには、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。もちろん、これらに限定されるものではなく、重合性化合物の単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率が、光伝送体に成型されたときに所定の屈折率分布を成型体のなかで有するように、種類や組成比を決定することが好ましい。
【0023】
なお、コア21及びクラッド22のポリマーが水素原子(H)を含んでいる場合には、その水素原子が重水素原子(D)に置換されていることが好ましく、これにより伝送損失の低減、特に近赤外領域の波長における伝送損失の低減を図ることができる。
【0024】
さらに、プラスチック光ファイバを近赤外光用途に用いるためには、ポリマーを構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、特許3332922号公報や特開2003−192708号公報などに記載されているような、C−H結合の水素原子を重水素原子やフッ素などで置換したポリマーを用いることで、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。このようなポリマーとしては、例えば、重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などを例示することができる。なお、原料となる化合物は、重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に十分に除去されることが望ましい。
【0025】
また、コア21を形成するポリマーは、線状体に押出成型して後述のように好適に延伸できるという観点から、重量平均分子量が1万〜100万であることが好ましく、より好ましくは3万〜50万である。さらに、延伸に対する適性は、分子量分布(MWD:重量平均分子量/数平均分子量)にも関係している。例えば、MWDが大きすぎる場合には、極端に分子量の大きい成分が混在しているときに延伸性が悪くなり、延伸が不可能となることもある。本発明において好ましいMWDの範囲は4以下であり、より好ましい範囲は3以下である。
【0026】
さらに、ポリマーは、上記の中でも、フッ素含有ポリマーが特に好ましい。フッ素含有ポリマーは、耐熱性,耐湿性,耐薬品性が高く、また紫外光から近赤外光までの波長帯の光の透過性が他のポリマーに比べて非常に高いため、多種多様な波長の光システムに有効利用が可能になるという効果がある。
【0027】
重合性化合物を重合させてポリマーとする場合においては、重合開始剤を使用する場合がある。重合開始剤としては、例えば、ラジカルを生成するものが各種ある。例えばラジカルを生成するものとして、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は、これらに限定されるものではなく、また、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
ポリマーとしたときの機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために、重合度の調整を行うことが好ましい。重合度の調整のためには、連鎖移動剤を使うことができる。連鎖移動剤については、併用する重合性化合物の種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各重合性化合物に対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0029】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
【0030】
前述した重合開始剤や連鎖移動剤、屈折率調整剤の各添加量については、用いるコア用の重合性化合物の種類等に応じて、好ましい範囲を適宜決定することができる。本実施形態においては、重合開始剤は、コア用の重合性化合物に対して、0.005〜0.050質量%となるように添加しており、この添加率を0.010〜0.020質量%とすることがより好ましい。また、前記連鎖移動剤は、コア用の重合性化合物に対して、0.10〜0.40質量%となるように添加しており、この添加率を0.15〜0.30質量%とすることがより好ましい。
【0031】
上記ポリマーには、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料となる各種重合性化合物に添加した後、重合することによって、コアのポリマーに含有させることができる。
【0032】
さらに、コア21には図3に示すような屈折率分布を発現させるために、屈折率調整剤(ドーパント)を各所定量混合する。このドーパントとしては、非重合性の化合物が好ましい。インナーコア部25のみにドーパントを添加する場合には、この添加率は、インナーコア部25の主成分となるポリマーに対して0.01重量%以上25重量%以下とすることが好ましく、1重量%以上20重量%以下とすることがより好ましい。これにより、断面円形の径方向における屈折率分布係数を上記のような好ましい範囲により制御しやすくなる。
【0033】
本実施形態においては、ドーパントとしては高屈折率で分子体積が大きく、重合に関与せず、溶融状態のポリマー中で所定の拡散速度を有する低分子化合物を用い、これを添加することによりコアの径方向における屈折率を変化させている。ドーパントは、モノマーに限定されず、オリゴマー(ダイマー、トリマー等含む)であってもよい。したがって、モノマーの状態ではインナーコア用重合性化合物やインナーコアとの重合反応性を有していても、これがオリゴマーとなったときにはこれらと重合しないものであればこのようなオリゴマーをドーパントとすることができる。
【0034】
そして、ドーパントとしての具体的な例としては、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ジフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。ドーパントの、コア21における濃度および分布を調整することによって、POF11の屈折率を所望の値に変化させることができる。
【0035】
[クラッド22の材料]
クラッド22も、コア21と同様にポリマーを有し、このポリマー及びその他の材料としては、コアの上記材料のうち、ドーパントを除いたものを用いることができる。これに加えて、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)も好ましい。ただし、本発明では、さらに、次段落以降で説明するような組成や配合としている。また、水分がコア21に侵入することをできるだけ防ぐために、吸水率が低いものとすることが好ましい。例えば、クラッド22が、飽和吸水率が1.8%未満のポリマーを主たる成分とすることが好ましい。そして、より好ましくは、アウターコア部24が1.5%未満の飽和吸水率、さらに好ましくは1.0%未満の飽和吸水率であるポリマーにより形成されることである。なお、ここでの飽和吸水率は、ASTMによるD570により基づく値であり、具体的には、23℃の水中にサンプルを1週間浸漬したときの吸水率を測定した値である。
【0036】
後述するように、本発明のプラスチック光ファイバは、伝達すべき光信号であって視認可能な波長の光(視認光と称する。)が一端面から入射したときに、クラッド22では視認光の一部が散乱されて外周面から外部に出る散乱構造を有する。この散乱構造とは、クラッドを構成している材料が屈折率揺らぎ、特には密度揺らぎを示している構造である。本発明でいう揺らぎとは、マクロには均一構造でありながら、光が散乱するには十分な大きさのミクロな領域で観察すると、部分的に屈折率が異なり、特には密度が異なる不均一な構造を有する状態を意味する。光が散乱するには十分な大きさのミクロな領域とは、具体的には、光の波長と同じスケール以上の大きさ、つまり、可視光の場合には0.1μm×0.1μm〜100μm×100μm程度の領域を示す。また、屈折率の揺らぎの大きさとしては、互いに異なる領域同士の屈折率の差が0.0005〜0.05である程度が好ましい。
【0037】
具体的には、(1)構成するポリマーが、部分的に異なる結晶構造を示している構造、(2)分子量に揺らぎがある、つまり、分子量が不均一であるポリマーを備える構造、(3)互いに異なる第1ポリマーと第2ポリマーとを備え、これら第1ポリマーと第2ポリマーとの組成比に揺らぎがある、つまり、ミクロなエリア毎に第1ポリマー/第2ポリマーで示される前記組成比が異なっている構造、(4)第1成分としてのポリマーがこのポリマーとは異なる第2成分を含み、ポリマーと第2成分との組成比の揺らぎ、つまり、ミクロなエリア毎に前記第2成分の存在比率が異なっている構造、(5)不純物や、コア21等から移行してきたいわゆる移行物質等がクラッド22中に存在するときに、それらの存在比に揺らぎがある構造、(6)クラッド22とコア21との界面が乱れている構造、または、クラッド22が第1層と第2層との複層構造を備えるときには第1層と第2層との界面が乱れている構造、(7)クラッド22の外表面に凹凸がある構造、等である。なお、このうち、(6)は、厳密な意味ではクラッド22のみの構造ではなく、クラッド22とコア21との両方に関わる構造といえる。また、(7)の凹凸は、視認光の波長と凹凸面に対する視認光の入射角度とに応じてその光を乱反射したり外部へ透過したりする。
【0038】
(1)の場合には、クラッド22のポリマーは、結晶構造部と無定型構造部(アモルファス部)とを備える分子構造を有する。このようなポリマーとしては、結晶構造部と無定型構造部とをそれぞれ形成するホモポリマーであってもよいし、あるいは、結晶構造単位と無定型構造単位とが共重合されたコポリマーであってもよい。また、このように分子中に結晶構造部と無定型構造部との両方があるものに代えて、無定型構造を発現するポリマーの中に結晶性ポリマーを分散させたものをクラッド22の主成分としてもよい。
【0039】
このようにポリマーを結晶構造部と無定型構造部とを備える分子構造のものとすることにより、プラスチック光ファイバに入射し、無定型構造部を透過した視認光が結晶構造部で反射してクラッド内を散乱し、無定型構造部を再び透過して外部へ出るので、光を視覚等で検知することができるようになる。光がプラスチック光ファイバの途中までしか視認されないときには、視認できる終端部でプラスチック光ファイバが断線している可能性がある、ということを知ることができる。クラッド22のポリマー全重量に対する結晶構造部の割合は、1〜100%であることが好ましい。
【0040】
また、(1)の散乱構造により光を良好に散乱させるためには、光の波長に応じて結晶構造部の大きさを決定することが好ましい。すなわち、その大きさとは、光の波長と同じスケールの大きさ、具体的には0.1μm以上である。つまり、結晶構造部が、光の波長に対して求められる所定の値以上の大きさであると、光が散乱されずに本発明の目的が達せられない。また、波長が違いに異なる通信用の光と視認光との両方をプラスチック光ファイバに入射し、通信用の光の波長が視認光の波長よりも長波である場合には、結晶構造部の大きさを両波長の中間とすることにより、視認性と通信性能との両立をより図ることが期待できる。
【0041】
上記(2)の場合、例えば海島状の海部分と島部分とのように、分子量が互いに異なる領域が存在する場合には、光の屈折率が各領域により異なるので、光が散乱され、外部に光を漏らすことができる。しがたって、目視で通信状態及び断線有無の確認をすることができる。このような部分的な分子量の揺らぎは、(I)分子の構造単位は同一であるが互いに分子量が異なる第1ポリマーと第2ポリマーとを混合することにより、あるいは、(II)重合時における部分的な反応性の違いにより、形成することができる。
【0042】
上記(3)の場合としては、分子の構造単位が異なる第1ポリマーと第2ポリマーとを混合して、これをクラッドの主たる成分とする場合、あるいは、2種以上のモノマーを重合し、エリア毎にその構成単位の比が異なるポリマーを形成してこのポリマーをクラッドの主たる成分とする場合がある。これにより、部分的に屈折率が異なる領域が形成されるので、光を良好に散乱して外部へ出し、目視で通信状態及び断線有無の確認をすることができる。
【0043】
また、上記(4)の場合、つまり、クラッド22の中に、第1成分としてのポリマーと、第2成分としての他の物質とを含み、第1成分と第2成分との体積比が互いに異なる領域が存在する場合には、領域毎に屈折率が異なるので、前述の形態と同様に、視認光を良好に散乱して外部へ出し、目視で通信状態及び断線有無の確認をすることができる。
【0044】
そして、上記(5)の場合には、クラッド22の中のポリマーと不純物あるいは移行物質とが共存するので、上記(2),(4)の場合と同様に、屈折率が領域毎に異なり、視認光を良好に散乱して外部へ出し、目視で通信状態及び断線有無の確認をすることができる。
【0045】
さらに、上記(6)および(7)の場合は、クラッド22の内面と、クラッドとコアとの界面と、クラッド22の外表面と、クラッド22が2層以上の複層構造である場合のいずれか1層とそれに接する他の1層との界面と、の少なくともいずれかひとつを、視認光の波長に応じて所定の粗さとするものである。粗さは、視認可能な光の波長と同じスケール以上の大きさ、具体的には0.1μm以上である。この粗さを表面粗さRaで求めるとすると、好ましいRa値は0.1μm以上100μm以下である。なお、Ra値は、JIS B601:2001およびJIS B651:2001にしたがって求めることができる。なお、上記(1)〜(7)の構造の他に、クラッド部に蛍光体や色素を含有させることにより、入射した光と異なる波長の光を外部に出して、外部から通信状態等を目視で観察することもできる。
【0046】
次に、上記のプラスチック光ファイバを製造する方法を説明する。前述の通り、プラスチック光ファイバは、これよりも外径が大きいプリフォーム12(図1参照)を長手方向に延伸することにより製造するので、まずプリフォームの製造方法について説明する。また、製造方法は、クラッドを上記(1)〜(7)のいずれとするかにより異なるので、それぞれの場合について説明する。
【0047】
プリフォームのクラッド(以下、プリフォームクラッドと称する)を製造する方法を説明する。上記(1)のうち、1種類のホモポリマーを用いて結晶構造部と無定型構造部とをそれぞれ形成させる場合において、最も簡便な製造方法としては、結晶性ポリマーの溶融押出成型がある。なお、この場合には、プリフォームのコア(以下、プリフォームコアと称する。)は予め作られたプリフォームクラッドの中空部に形成される方法とすることが好ましい。溶融押出成型においては、周知の溶融押出成型機を用いて、溶融温度やダイからの引き抜き速度、引き取られた後の冷却温度及び冷却速度等を適宜制御する。結晶性ポリマーを押し出して冷却することにより成型する場合には、冷却速度を遅くすると結晶構造部を形成しやすくなり、除冷、つまり冷却速度を遅くすると、無定型構造部を形成しやすくなる。したがって、冷却速度を制御することにより、ポリマー全体積に対する結晶構造部の重量比率と結晶構造部の大きさとをコントロールすることができる。例えば、ポリマーとして結晶化温度がTcであるPVDFを用いた場合には、(Tc+30)℃から(Tc−30)℃にクラッド内面が冷却されるまでの時間を6秒以上とすると結晶化が促進され、6秒未満とすると結晶構造を小さくすることができる。
【0048】
結晶構造部と無定型構造部とが共に形成されているか否かについては、例えば顕微鏡観察により確認することができる。
【0049】
上記(1)のうち、プラスチック光ファイバのクラッドのポリマーを結晶構造単位と非晶構造単位とが共重合されたものとするときには、プリフォームクラッドを製造するためのコポリマーを予め製造してからこれを溶融押出機により押出成型する方法が最も簡便であるが、これに限定されず、後述するような回転重合方法により複数の重合性化合物を重合しながら管状のプリフォームクラッドを製造する方法もある。なお、プリフォームコアは、予め管状に形成された原糸クラッドの中空部に形成されることが好ましい。溶融押出成型するためのコポリマーは、結晶性ホモポリマーを形成するモノマーと非晶性ホモポリマーを形成するモノマーとを共重合することによって生成させることができる。また、両モノマーにより2種のポリマーを一旦つくってから、それらをさらに重合することで海島構造のコポリマーを生成することもできる。このようなコポリマーの溶融押出では、前述のホモポリマー押出成型の場合とは異なり、分子そのものを結晶化しやすい部分としにくい部分とで構成しているので、溶融押出条件については精緻な制御が必要ではない。したがって、一般的な溶融押出成型方法と同様に、使用するコポリマーに応じて溶融押出条件を設定すればよい。
【0050】
一方、上記コポリマーで構成されるプリフォームクラッドを回転重合方法により製造するときには、後述のプリフォームコア生成方法における回転重合装置及び回転重合方法を適用するとよい。ただし、上記コポリマーの生成においては、重合反応性がより近い傾向を示すモノマー同士を組合せると、生成するポリマー成形体がより均一のものとなる傾向にある。したがって、光を適度に散乱させるためには、モノマー同士の反応性を考慮して各モノマーを組み合わせる。
【0051】
上記(1)のうち、非晶性ポリマーの中に結晶性ポリマー分散させたものでクラッドを形成する場合には、例えば溶融混練により非晶性ポリマーと結晶性ポリマーとを混合したポリマーブレンドを予め製造してからこれを押出成型してプリフォームクラッドとすることが好ましい。そして、得られるポリマーブレンドでは、島部分が結晶性ポリマーで海部分が非晶性ポリマーの海島構造とすることが好ましい。このような海島構造のポリマーブレンドとすることにより、好適な散乱状態を示すクラッドが得られる。
【0052】
上記(2)とするためのプリフォームクラッドを製造する場合には、ポリマーを押出成型する場合と回転重合法により重合形成する場合とのいずれであっても、ポリマーを生成するための重合反応における反応速度を高めるとよい。これにより分子量分布が大きくなり、散乱構造を形成することができる。重合の反応速度を大きくする方法としては、(I)重合温度を高くする。(II)重合開始剤を多くする、等があげられる。
【0053】
上記(3)とするためのプリフォームクラッドは、前述の(1)におけるプリフォームクラッド製造方法における2種以上の共重合用モノマーを用いることにより製造することができる。また、上記(4)とするためのプリフォームクラッドは、同様に、ポリマー重合生成時にモノマー以外の第2成分物質を添加することにより製造することができる。さらに、上記(5)とするためのプリフォームクラッドは、同様に、ポリマー重合生成時における不純物やコア等の他の構成要素の形成時の条件により製造することができる。
【0054】
上記の各種方法により予め作られたプリフォームクラッドの中空部に、プリフォームコアを形成する方法を以下に説明する。ただし、本発明はプリフォームコアの形成方法に依存するものではなく、周知の各種方法を適用することができる。本実施形態では、プラスチック光ファイバのコアが前述の屈折率分布(図3参照)を発現するために、プリフォームコアの製造方法には回転ゲル重合法を適用する。この回転ゲル重合法は、プリフォームクラッドの製造方法に適用することができる。
【0055】
図4は重合容器の断面図であり、図5は、回転重合装置の概略斜視図であり、図6は重合装置による重合反応についての説明図である。ただし、本発明は図4〜図6に示す重合装置及び重合容器に依存するものではなく、また、本実施形態は、本発明の一様態としての例示である。
【0056】
所定の材料からなる栓37によりプリフォームクラッド32の片端部を塞ぐ。この栓37はプリフォームコアを生成するための重合性化合物に溶解しない素材からなり、可塑剤等を溶出させるような物質も含まないものとする。このような素材としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等があげられる。片端部を栓37で塞いだあとに、重合性化合物をはじめとするプリフォームコア用原料31をプリフォームクラッド32の中に注入する。そして、他方の端部も栓37で塞いだ後、回転させながら重合性化合物を重合させてプリフォームコアを生成する。このプリフォームコア生成時においては、プリフォームクラッド32は、図4に示されるような重合容器38の中に収容される。重合容器38は、円管状の容器本体38aとこの容器本体38aの両端をそれぞれ塞ぐ蓋38bとを有し、本実施形態においてはSUS製とされている。重合容器38は、図10に示すように、その内径がプリフォームクラッド32の外径よりもわずかに大きいものであり、後に述べるような重合容器38の回転に同期してプリフォームクラッド32が回転することができるようにされている。なお、プリフォームクラッド32が重合容器38の回転に上記のように応じることができるように、重合容器38の内面等にプリフォームクラッド32を支持する支持部材等を設けてもよい。
【0057】
プリフォームコアの生成は、上記のような重合容器38が回転重合装置41にセットされて実施される。回転重合装置41は、図11に示すように、装置本体42の中に複数の回転部材43と、装置本体42の外側に駆動部46と、装置本体42内の温度を検知してその検知結果に応じて内部温度を制御するための温度コントローラ47とを有している。
【0058】
回転部材43は、円柱形状であり、2本の周面で少なくともひとつの重合容器38を支持することができるように、長手方向が互いに概ね平行かつ略水平となっている。各回転部材43は、その一端が装置本体42の側面に回動自在に取り付けられており、駆動部46によりそれぞれ独立した条件で回転駆動される。駆動部46にはコントローラ(図示なし)が備えられており、このコントローラにより駆動部46の駆動が制御される。そして、所定の重合反応時においては、図6に示すように、隣り合う回転部材43の周面により形成される谷部に重合容器38は載せられて回転部材43の回転に応じて回転する。図6においては、回転部材43の回転軸を符号43aで示している。このように、ここに例示される本実施形態においては、重合容器38の回転はサーフェスドライブ式としているが、この回転方式については限定されるものではない。
【0059】
なお、本実施形態では、図6に示すように、重合容器38の両端の蓋38bには磁石38cがそれぞれ備えられているとともに、隣り合う2本の回転部材43の間の下方にも磁石45が備えられている。これにより、回転時において重合容器38が回転部材43から浮くことを防止している。重合容器38の回転部材43からの浮きを防止する方法としては磁石を用いる上記方法に加えて、回転部材43と同様な回転手段を、セットされた重合容器38の上部に接するようにさらに設けて、同様に回転させ、これにより重合容器38の浮きを防止することもある。またこの方法の他に、例えば重合容器38に上方に押さえ手段等を設けて、重合容器38に所定の荷重をかける方法等もあるが、本発明は浮き防止方法に依存するものではない。
【0060】
続いて、プリフォームコアの生成方法について説明する。使用するプリフォームコア用原料31はろ過や蒸留等により、重合禁止剤や水分、不純物等を予め十分除去してから用いることが好ましい。重合性化合物や重合開始剤を混合した後には、さらに、この混合物を超音波処理して溶存気体や揮発成分を除去することが好ましい。なお、プリフォームコア用原料31を注入する前後では、必要に応じて、公知の減圧装置により、プリフォームクラッド32やプリフォームコア用原料31を減圧処理してもよい。
【0061】
その後、プリフォームクラッド32を装填した重合容器38を、その長手方向を略水平状態にして回転(水平回転)させながら重合を生起進行させるとプリフォームコアが生成する。このように、プリフォームコアは、プリフォームクラッド32の円管軸を回転中心にしながら重合する回転重合により生成される。なお、回転重合の前には、プリフォームクラッド32を立てた状態で予備重合をしてもよく、この予備重合の際には必要に応じて所定の回転機構により、プリフォームクラッド32の円管軸を回転中心として回転させる。このような回転重合においては、プリフォームクラッド32の長手方向を概ね水平に保ちながら回転させるために、プリフォームクラッド32の内面全体にプリフォームコアが生成しやすくなる。なお、本発明では、プリフォームコアの重合時においては、プリフォームクラッド32の長手方向を水平とすることが、プリフォームクラッド32の内面全体にプリフォームコアを形成する上で最も好ましいが、略水平であれば好適であり、回転軸の許容される角度は水平に対して概ね5°以内である。
【0062】
そして、このように作られたプリフォームを周知の加熱延伸方法により延伸してプラスチック光ファイバとする。
【0063】
本発明は、クラッドが上記の実施形態のような単層構造の場合に限定されず、例えば同心円状に2層以上の複層構造を有するものも含む。ここで、本発明の第2の実施形態を説明する。図7は、クラッドを同心円状の2層構造とする場合のプラスチック光ファイバ71の製造フロー図である。なお、以降の説明において、クラッドの2層のうち、外側の層をアウタークラッド部、内側の層をインナークラッド部と称する。プラスチック光ファイバ71は、第1の実施形態と同様に、プリフォーム72をまず作ってから、これを加熱延伸工程73により加熱延伸して製造される。プリフォーム72は、同心円状の2層構造であって管状のプリフォームクラッドと、プリフォームコアとを有しており、まず、プリフォームクラッドを作ってからプリフォームコアを形成する。プリフォームクラッドの2層構造のうちの外側層となるプリフォームアウタークラッドパイプ75がパイプ作製工程76により製造されて、このプリフォームアウタークラッドパイプ75の中に、2層構造のうちの内側層となるプリフォームインナークラッド部がプリフォームインナークラッド部形成工程77により形成され、次にプリフォームコア形成工程78によりプリフォームコアが形成されてプリフォーム72が得られる。
【0064】
図8は、プラスチック光ファイバ71の断面図であり、図9は、プラスチック光ファイバ71の断面径方向における屈折率を示すグラフである。なお、図9において、横軸はプラスチック光ファイバ71の断面径方向を示し、縦軸は屈折率を示しており、上にいくほど高い値であることを意味している。プラスチック光ファイバ71は、図8に示すように、光信号を伝達するコア81と、このコア81の外周に設けられ、入射された光の一部を散乱してプラスチック光ファイバ11の外周から出すためのクラッド82とを有する。このクラッド82は、同心円状の2層構造であり、コア81の外周に接するインナーコア部83とこのインナーコア部83の外周のアウターコア部84とを有する。インナーコア部83及びアウターコア部84は、外径及び内径が長手方向にそれぞれ一定で、厚みが均一の管形状となっている。コア81の断面円形の直径とインナークラッド部83の内径とは等しい。
【0065】
図9において、横軸の符号(C)で示される範囲は、図8におけるアウタークラッド部84の屈折率であり、符号(D)で示される範囲は図8におけるインナークラッド部83の屈折率であり、符号(E)で示される範囲は図8におけるコア81の屈折率である。コア81は、図9に示されるように、インナークラッド部との境界から中心に向けて屈折率が連続的に高くなっており、インナークラッド部の屈折率はコアの屈折率以下となっている。また、ここに例示するアウタークラッド部の屈折率はインナークラッドの屈折率よりも小さいが、両者は同じ値であってもよい。また、本実施形態のインナークラッド部83とアウタークラッド部84とは、共に、図3に示すように屈折率が概ね一定となっているが、コア21に近づくほど屈折率が大きくなっていてもよく、この屈折率の変化はコア21に近づくほど段階的に大きくなってもよいし連続的に大きくなってもよい。
【0066】
なお、プリフォーム72(図7参照)は、プラスチック光ファイバ71よりもクラッド及びコアの径がそれぞれ大きいが、基本的構造はプラスチック光ファイバ71と同じであるので図示は略す。また、なお、コア81が同心円状の複層構造であっても本発明は適用される。
【0067】
本実施形態のコア81は第1の実施形態のコアと同様の構成であって、また、アウタークラッド部84は、第1の実施形態のクラッドと同様に入射された視認光を散乱させて外部へ出すものであり、その材料は前記第1実施形態のクラッドと同様である。インナークラッド83は、第1の実施形態のクラッドの構成のうち、光散乱させるための構成をのぞいたものとしている。
【0068】
この構成により、本実施形態のプラスチック光ファイバは、一端から入射された光の大部分をコア81とインナークラッド部83との境界で反射してコア81がその光信号を伝達することができるとともに、入射された光の一部をアウタークラッド部84で散乱して外部へ出すので、外部からこのプラスチック光ファイバの通信状況を目視で確認することができる。また、本実施形態では、アウタークラッドの屈折率とインナークラッドの屈折率とをそれぞれ異なる値とすることにより、アウタークラッド部84で散乱した光がコア内に入り込まないようにしているので、散乱した光を上記目視確認用として効果的に利用することができる。
【0069】
そして、本実施形態のプラスチック光ファイバ81の製造方法は以下である。すなわち、プリフォームアウタークラッド部となるアウタークラッドパイプは、第1の実施形態のクラッドと同様に作製される。そして、回転ゲル重合法によりプリフォームインナークラッド部が形成された後で、同じく回転ゲル重合法によりプリフォームコアは形成される。
【0070】
そして、プリフォーム72は、加熱延伸されてプラスチック光ファイバ71となる。なお、視認光を散乱させるための層を、本実施形態のアウタークラッド部84に代えて、あるいは加えて、インナークラッド部83としてもよい。また、クラッド82が3層以上の複層構造であって、そのうちのいずれか1層が、第1の実施形態のクラッドと同様に、入射された視認光を散乱させて外部へ出すプラスチック光ファイバも本発明には含まれる。
【0071】
上記の2つの実施形態により得られた各プラスチック光ファイバ11,71は、公知の各種被覆方法により被覆材料で被覆されてコードとなる。なお、このときの被覆材料は、クラッドで散乱した光を外部に通過させることができるような透明材料とされる。次に、このコードの使用方法を説明する。
【0072】
得られたプラスチック光コードは、前述の通り、伝達すべき光信号としての光を射出する光源と一端面が接続される。そして、他端面は伝達されてきた光を受光する受光素子に接続される。
【0073】
なお、受光素子がコアから射出される光とクラッドからの散乱光とを区別して受光することができないものであって、伝達すべき光と散乱すべき視認光とを互いに異なる波長とするときには、受光素子とプラスチック光コードとの間に、散乱光を通すことなく伝達すべき光のみを通過させる光フィルタ部材を設けるとよい。これにより、通信状態を確認しながら良好な通信を実施することができる。このような光フィルタ部材を用いることにより、伝送すべき通信用の光と視認光とが別の光源から独立して射出される必要が無くなり、同一箇所から2つの光を一緒に射出することができる。
【実施例1】
【0074】
PVDFとPMMAとのポリマー混合物を溶融押出成型して、プリフォームクラッド32となる管状部材を作製した。このとき、ポリマー混合物における(PVDFの重量)/(PMMAの重量)で表されるポリマー比を2通りに変えて、結晶構造部と無定型構造部との比率が互いに異なる2種類のプリフォームクラッド32用部材を作製し、実験1と実験2とした。実験1では、前記ポリマー比が10/0であって、この値とすることにより、プリフォームクラッド32における結晶構造部と無定型構造部との比率をおよそ8/2とした。実験2では、前記ポリマー比が8/2であって、この値とすることにより、プリフォームクラッド32における結晶構造部の比率をほぼゼロとした。
【0075】
次に、MMAと重合開始剤と連鎖移動剤とMMAよりも屈折率が高いドーパントとの混合物からなるプリフォームコア用原料31を予め得られたプリフォームクラッド32用部材の中空部に注入し、重合容器38の内部を窒素置換して回転ゲル重合を実施した。これにより原糸コアを形成して、プリフォーム12を得た。このプリフォーム12を加熱延伸してプラスチック光ファイバ11とした。このプラスチック光ファイバ11の一端面に、赤色レーザダイオード(LD)を用いて650nmの光を入射した。そして、実験1及び実験2とにおける通信状態の確認評価を実施した。
【0076】
本実施例1の結果、実験1で光が散乱し、光が散乱している様子を目視で外部から確認することができた。これに対し、実験2では、クラッド22で散乱している光が弱く、通信状態を目視で確認することができなかった。
【実施例2】
【0077】
プリフォームアウタークラッドパイプ75を溶融押出成型により作製した。押出ダイより押し出されて出てきたプリフォームアウタークラッドパイプ75の冷却速度を変えてプリフォームアウタークラッドパイプ75の内面の表面粗さを制御し、これを実験3及び4とした。実験3では、前述の冷却速度を5秒/60℃とし、実験4では冷却速度を10秒/60℃とした。
【0078】
プリフォームアウタークラッドパイプ75の中空部に、MMAと重合開始剤と連鎖移動剤との混合物であるプリフォームインナークラッド用原料を注入してから、重合容器38にプリフォームアウタークラッドパイプ75を入れて窒素置換を行い、回転及び加熱をしながら重合反応を生起進行させた。
【0079】
生成されたプリフォームインナークラッド部の中空部にプリフォームコア用原料を充填して、窒素置換、加熱下における回転ゲル重合によりプリフォームコアを形成した。プリフォームコア用原料は、MMAと重合開始剤と連鎖移動剤とドーパントとの混合物である。そして。得られたプリフォーム72を加熱延伸してプラスチック光ファイバ71とし、実施例1と同様に通信状態の確認評価を実施した。
【0080】
実施例2の結果、実験3ではクラッドで光が散乱せず、光を目視で外部から確認することができなかった。これに対し、実験4では、入射した光の一部をクラッド22で散乱させることができ、通信状態を目視で確認することができた。
【実施例3】
【0081】
プリフォームアウタークラッドパイプ75を溶融押出成型により作製した。押出ダイより押し出されて出てきたプリフォームアウタークラッドパイプ75の前述の冷却速度を5秒/60℃とすることにより、プリフォームアウタークラッドパイプ75の内面を平滑性の高いものとした。このときの内面の表面粗さはRa=0.11である。
【0082】
プリフォームアウタークラッドパイプ75の中空部に、MMAと重合開始剤と連鎖移動剤との混合物であるプリフォームインナークラッド用原料を注入してから、重合容器38にプリフォームアウタークラッドパイプ75を入れて窒素置換を行い、回転と加熱とを行いながら重合反応を生起進行させた。
【0083】
生成されたプリフォームインナークラッド部の中空部にプリフォームコア用原料を充填して、窒素置換、加熱下における回転ゲル重合により原糸コアを形成した。コア用原料は、MMAと重合開始剤と連鎖移動剤とドーパントとの混合物である。この回転ゲル重合の条件を変えて、これを実験5及び6とした。具体的には、実験5では、コアの重合生成反応が2時間以内に終了するように、重合開始剤の量および重合温度を調整した。一方、実験6では、コアの重合生成反応の終了までに10時間かかるように、重合開始剤の量および重合温度を調整した。これにより、プリフォームアウタークラッドとプリフォームインナークラッドとに対するプリフォームコア用原料(MMA)の浸透性が、実験5と実験6とで互いに異なるようにした。具体的には、実験6における前記浸透量は、実験5におけるそれの9倍であり、クラッドのポリマー全重量に対する1.15wt%であった。そして、得られたプリフォーム72を加熱延伸してプラスチック光ファイバ71とし、実施例1と同様に通信状態の確認評価を実施した。
【0084】
実施例3の結果、実験5では光を散乱させて外部へ多く出すことができ、光を目視で外部から確認することができた。これに対し、実験6では、光がクラッド22で散乱せず、通信状態を目視で確認することができなかった。
【実施例4】
【0085】
プリフォームアウタークラッドパイプ75を溶融押出成型により作製した。押出ダイより押し出されて出てきたプリフォームアウタークラッドパイプ75を5秒/60℃の前記冷却速度で冷却することにより、プリフォームアウタークラッドパイプ75の内面を平滑性の高いものとした。このときの内面の表面粗さはRa=0.11であった。
【0086】
プリフォームアウタークラッドパイプ75の中空部に、MMAと重合開始剤と連鎖移動剤との混合物であるインナークラッド用原料を注入してから、重合容器38にプリフォームアウタークラッドパイプ75を入れて窒素置換を行い、回転と加熱とを行いながら重合反応を生起進行させた。本実施例4では、この重合反応の際の重合時間が互いに異なる実験7と実験8とを実施した。これにより、実験7では、重合時間を短くすることにより転化率が80%であるプリフォームインナークラッド部を形成し、実験8では重合時間を長くすることにより転化率が97%であるプリフォームインナークラッド部を形成した。
【0087】
次に、プリフォームインナークラッド部の中空部にコア用原料を充填して、窒素置換、加熱下における回転ゲル重合によりプリフォームコアを形成した。プリフォームコア用原料は、MMAと重合開始剤と連鎖移動剤とドーパントとの混合物である。実験7では、プリフォームインナークラッド部とプリフォームコアとの各材料が両者の界面において混合したものとなり、一方、実験8ではプリフォームインナークラッド部とプリフォームコアとの各材料が両者の界面において混合することはほとんど確認できなかった。そして、得られたプリフォーム72を加熱延伸してプラスチック光ファイバとし、実施例1と同様に通信状態の確認評価を実施した。
【0088】
実施例4の結果、実験7で光を散乱させて外部へ多く出すことができ、光を目視で外部から確認することができた。これに対し、実験8では、光がクラッド22で散乱せず、通信状態を目視で確認することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明のプラスチック光ファイバを用いたプラスチック光ケーブルを製造する製造フロー図である。
【図2】プラスチック光ファイバの断面図である。
【図3】図2に示すプラスチック光ファイバの断面径方向における屈折率を示すグラフである。
【図4】重合容器の断面概略図である。
【図5】回転重合装置の概略図である。
【図6】重合反応方法の説明図である。
【図7】別の実施形態としてのプラスチック光ファイバの製造フロー図である。
【図8】プラスチック光ファイバの断面図である。
【図9】図8に示すプラスチック光ファイバの断面径方向における屈折率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0090】
11,71 プラスチック光ファイバ
21,81 コア
22,82 クラッド
83 インナークラッド部
84 アウタークラッド部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形の径方向における屈折率が変化している線状部材と、この線状部材の外周に設けられ、屈折率が前記線状部材の屈折率以下である外周部材とを有するプラスチック光ファイバにおいて、
前記外周部材は、前記プラスチック光ファイバの端面から入射された光の一部を散乱して周面から外部に射出する散乱構造を有することを特徴とするプラスチック光ファイバ。
【請求項2】
前記散乱構造は、前記外周部材中の位置によって屈折率が異なる屈折率不均一構造であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック光ファイバ。
【請求項3】
前記屈折率不均一構造は、前記外周部材中の位置によって密度が異なる密度不均一構造であることを特徴とする請求項2記載のプラスチック光ファイバ。
【請求項4】
前記外周部材は、ポリマーを含み、このポリマーの結晶構造が部分的に異なることにより前記密度不均一構造とされたことを特徴とする請求項3記載のプラスチック光ファイバ。
【請求項5】
前記外周部材は、ポリマーを含み、このポリマーの分子量揺らぎにより前記密度不均一構造とされたことを特徴とする請求項3記載のプラスチック光ファイバ。
【請求項6】
前記外周部材は、第1成分としてのポリマーとこの第1成分とは異なる第2成分とを含み、前記第1成分と前記第2成分との組成比揺らぎにより前記密度不均一構造とされたことを特徴とする請求項3記載のプラスチック光ファイバ。
【請求項7】
断面円形の径方向における屈折率が変化している線状部材と、この線状部材の外周に設けられ、屈折率が前記線状部材の屈折率以下である外周部材とを有するプラスチック光ファイバにおいて、
前記外周部材は、断面における内側の第1層と、この第1層の外周に備えられ前記第1層よりも屈折率が低い第2層とを同心円状に備え、
前記第1層と前記第2層との少なくともいずれか1層は、前記プラスチック光ファイバの端面から入射された光の一部を散乱して外周面から層外に射出する散乱構造を有し、
前記第1層のみが散乱構造を有するときには、前記第2層は前記光を透過する透過材料により構成されることを特徴とするプラスチック光ファイバ。
【請求項8】
断面円形の径方向における屈折率が変化している線状部材と、この線状部材の外周に設けられ、屈折率が前記線状部材の屈折率以下である外周部材とを有するプラスチック光ファイバにおいて、
前記線状部材と前記外周部材とは、前記プラスチック光ファイバの端面から入射された光の一部を互いの界面で散乱して前記外周部材の外周面から外部に射出する散乱構造を有することを特徴とするプラスチック光ファイバ。
【請求項9】
断面円形の径方向における屈折率が変化している線状部材と、この線状部材の外周に設けられ、屈折率が前記線状部材の屈折率以下である外周部材とを有するプラスチック光ファイバにおいて、
前記外周部材は、断面における内側の第1層と、この第1層の外周に備えられ前記第1層よりも屈折率が低い第2層とを同心円状に備え、
前記第1層と前記第2層とは、前記プラスチック光ファイバの端面から入射された光の一部を互いの界面で散乱して前記第2層の外周面から外部に射出する散乱構造を有することを特徴とするプラスチック光ファイバ。
【請求項10】
断面円形の径方向における屈折率が変化している線状部材と、この線状部材の外周に設けられ、屈折率が前記線状部材の屈折率以下である外周部材とを有するプラスチック光ファイバにおいて、
前記外周部材は、断面における内側の第1層と、この第1層の外周に備えられ前記第1層よりも屈折率が低い第2層とを同心円状に備え、
前記第2層の外周には前記プラスチック光ファイバの端面から入射された光の一部を乱反射する凹凸が形成され、
前記凹凸は、前記乱反射により前記第2層内を散乱した光を前記外周から層外に射出する粗さとされることを特徴とするプラスチック光ファイバ。
【請求項11】
請求項1ないし10いずれか1項記載のプラスチック光ファイバと、
前記プラスチック光ファイバの外周を覆い、前記散乱した光を透過する被覆部材と、
を備えたことを特徴とするプラスチック光ファイバコード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−276335(P2006−276335A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93724(P2005−93724)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】