説明

プラスチック成型体用アクリロイル原料

本発明は、1つの局面において、以下の構造を有する化合物を、
【化1】


A-H(ここで、Aがシロキサニル基を含む)の構造を有する化合物によりヒドロシリル化することにより、以下の構造を有する化合物
【化2】


を得ることを含む、アクリロイル化合物の合成方法に関する。このようにして生成された化合物及び組成物では、不所望の不純物を許容可能な程度に低い濃度に留めると同時に、高い酸素透過性と親水性の良好なバランスを効果的に得ることが可能である。本要約は、特定の技術分野での調査のための検索ツールとして意図されるものであり、本発明を制限することを意図するものではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2006年6月30日に出願された米国特許出願第60/818,016号、及び2006年12月12日に提出された米国特許出願第11/609,724号に基づく、優先権を主張するものであり、これらの文献は、参照により、その全文が本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
アクリロイル基で官能化された直鎖状のポリジメチルシロキサンは、十分な酸素透過性を有するが、疎水性の問題を有する場合があり、これにより水をはじいて、角膜ステイニングの発生率を増加させている。即ち、酸素透過性を増加させる目的でシロキサニル基を導入すると、組成物の他の特性に負の影響を及ぼす可能性がある。更に、親水性を増加させるために、アクリロイル官能化ポリジメチルシロキサンを親水性のモノマー(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)と共重合させた際には、極性を有するヒドロキシル基と無極性のシロキサニル基との間で、静電的反発による相分離が起こり、それによって、透明なポリマーが得られなくなる可能性がある。従って、このような組成物は、非常に乏しい光学的品質を有するであろう。
【0003】
更に、シロキサニル基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により作り出されるいくつかのアクリロイル官能化ポリジメチルシロキサン組成物は、例えば、この組成物を、例えば、コンタクトレンズや眼内レンズとして用いた場合に刺激性を示すであろうエポキシド成分又はジオール成分といった不所望の不純物を、不具合な濃度で含有する可能性がある。
【0004】
従って、これらの欠点を克服し、不所望な不純物を許容可能な程度の低い濃度に抑えると同時に、酸素透過性の向上と親水性の向上の良好なバランスを効果的に達成する方法と組成物に対する需要が未だ存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、本明細書に具体化され、広く記載されるように、その1つの局面において、以下の構造を有する第1の化合物
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R1は、水素、炭素数1ないし18のアルキル又はフェニルを表し、Xは、水素又は加水分解性基を表す)
を、A-H(ここで、Aは、シロキサニル基を含む)の構造を有する第2の化合物によりヒドロシリル化させて、以下の構造を有する第3の化合物
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、Xは、水素又は加水分解性基であり、Aは、シロキサニル基である)
を得る工程を含む、アクリロイル化合物の合成方法に関する。
【0010】
この方法で作製された化合物及び組成物は、不所望な不純物を許容可能な程度の低い濃度に抑えると同時に、酸素透過性と親水性の良好なバランスを効果的に達成できる。
【0011】
更なる局面では、本発明は、前記の開示された方法による生成物に関する。例えば、1つの局面では、本発明は、以下の構造を含むアクリロイル化合物、
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R1は、水素、炭素数1ないし18のアルキル又はフェニルであり;Xは、水素又は加水分解性基であり;Aは、水素で、---は、二重結合であるか、又は、Aは、シロキサニル基を含み、---は、単結合であり;そして、XとAは同時に水素ではない)
並びに、これらから製造される組成物に関する。
【0014】
このような組成物は、コンタクトレンズや眼内レンズ等の眼用に適切なように、レンズ成形品の製造に適し、良好な透明度、親水性、機械的特性及び酸素透過性を有し、そして低い弾性率及び/又は良好な光学的品質を有することが可能である。
【0015】
本発明の更なる利点ついては、本明細書の以下においてその一部を説明し、そして、部分的に、本明細書から自明であるか、又は本発明の実施により理解されるであろう。本発明の利点は、特に添付する請求項に指摘される要素及び組み合わせにより、理解され、達成されるだろう。上記の一般的な記載及び下記の詳細な記載は、単に代表的に説明するためだけのものであり、請求項に係る発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書に取り込まれ、その一部を構成する添付図面は、複数の態様を図示し、記載と共に開示される組成物及び方法を図示するものである。
【図1】図1は、R(1/Q)対厚さ(lm)のプロットを示す。
【図2】図2は、酸素透過性測定用の装置を示す。
【図3】図3は、酸素透過性の測定に用いられる電極ユニットの構造を示す。
【図4】図4は、酸素透過性測定用装置の模式図である。
【図5】図5は、log Powと実施例64ないし91の純度との相関関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、以下の発明の詳細な説明とこれに含まれる実施例を参照することにより、更に容易に理解できる。
【0018】
本発明の化合物、組成物、製品、装置及び/又は方法を開示して説明する前に、これらは、他に特定されてない場合、特定の合成方法に限定されるものではなく、又は他に特定されてない場合、特定の試薬に限定されるものではなく、無論のこと、それ自体として変化してもよいことが理解されなければならない。また、本明細書で用いる用語は、単に特定の態様を説明することのみを目的としており、何らかの制限を意図するものではない。本明細書に説明する方法及び原料と類似するか又は同等のいかなる方法及び原料を本発明の実施又は試験に用いることも可能であるが、これより例示的な方法と原料を説明する。
【0019】
本明細書で言及する全ての文献は、これらの文献を引用して開示及び説明する方法及び/又は原料を参照することにより、本明細書に組み込まれるものとする。本明細書で議論する文献は、本発明の出願日よりも先の開示だけを提示するものとする。しかしながら、これら文献のいずれも、先行発明によって、本発明が、このような文献に先行していないことを容認するものとして解釈すべきではない。更に、本発明の明細書に提示する文献の日付は、実際の発行日と異なっているかもしれないが、実際の発行日については個別に確認する必要があるだろう。
【0020】
定義
本明細書及び添付する請求項で用いる場合、単数形の「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「該(the)」には、その文に明確な指摘のない限り、複数形の指示対象も含まれる。従って、例えば、「1つの成分(a component)」、「1つのポリマー(a polymer)」又は「1つの残基(a residue)」には、2つ以上のこれらの成分、ポリマー又は残基等の混合物が含まれる。
【0021】
範囲については、本明細書では、「約」1つの特定の値から、そして/又は「約」別の特定値と表す場合がある。このような範囲が表現された場合、別の態様には、1つの特定の値からそして/又は他の特定の値までが含まれる。同様に、値が近似値で表される場合、「約」という先行詞を用いることで、この特定の値が、別の態様を形成することが理解されるであろう。また更に、これらの範囲の各終点は、もう一方の終点との関連においても有意であるし、そしてもう一方の終点とは無関係に有意でもあることが理解されるであろう。また、本明細書には数多くの数値が開示されており、各数値は、ここにおいて、その数値自体に加えて、その数値の「約」としても開示されていることが理解される。例えば、「10」という数値が開示されている場合、「約10」も開示されていることになる。また、2つの特定の構成単位間の各構成単位も開示されていることが理解される。例えば、10及び15が開示されている場合、11、12、13及び14も開示されていることになる。
【0022】
化学種の残基は、本明細書及び結びの請求項で用いる場合、特定の反応スキームにおける化学種の生成物、又はこれから得られる処方(formulation)若しくは化学製品である成分を指し、このことは、この成分が実際に前記化学種から得られたかどうかに関係ない。従って、ポリエステル中のエチレングリコール残基は、エチレングリコールを用いてポリエステルを調製したかどうかに関係なく、該ポリエチレン中の1つ以上の-OCH2CH2O-ユニットを指す。同様に、ポリエステル中のセバシン酸残基は、この残基が、ポリエステルを得るためにセバシン酸又はこのエステルを反応させることで得られたかどうかに関係なく、該ポリエチレン中の1つ以上の-CO(CH2)8CO-部分を指す。
【0023】
本明細書で用いる場合、「随意の(optional)」又は「随意に(optionally)」という用語は、続いて記載される現象又は状況が、起こっても起こらなくてもよく、この記載に、前記現象若しくは状況が起こる場合と起こらない場合が含まれることを意味する。
【0024】
本明細書で用いる場合、「共重合体」という用語は、2種類以上の異なる繰り返し単位(モノマー残基)から形成されるポリマーを指す。例としては、共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体であってもよいが、これらに限定されるわけではない。
【0025】
本明細書で用いる場合、「シロキサニル」という用語は、少なくとも1つのSi-O-Si結合を有する構造体を指す。従って、例えば、シロキサニル基は、少なくとも1つのSi-O-Si基を有する基を意味し、シロキサニル化合物は、少なくとも1つのSi-O-Si基を有する化合物を指す。
【0026】
本明細書で用いる場合、「シロキサニルモノマー」という用語は、少なくとも1つの重合可能な炭素−炭素の不飽和結合を有するシロキサニル化合物を指す。1つの局面では、前記重合可能な炭素−炭素の不飽和結合は、アルキルアクリロイル部分の一部(例えば、アクリロイル部分又はメタアクリロイル部分)であってもよい。
【0027】
本明細書で用いる場合、「アルキルアクリル酸」という用語は、アクリル酸、アルキル置換アクリル酸、その塩及びその誘導体を指す。1つの局面では、アルキルアクリル酸は、更に置換されていてもよい。更なる局面では、アルキルアクリル酸は、メタクリル酸である。
【0028】
本明細書で用いる場合、「加水分解性基」とは、加水分解又は加溶媒分解により水素へと変換可能な基又は部分を指す。1つの局面では、加水分解性基は、周囲温度で又は周囲温度前後で、大気圧で又は大気圧前後で、水又はプロトン性溶媒に暴露することにより加水分解できる(即ち、水素基に変換できる)。更なる局面では、加水分解性基は、高温又は高圧下で水又はプロトン性溶媒に暴露することで加水分解できる。更なる局面では、加水分解性基は、酸性水若しくはアルカリ水又は酸性プロトン性溶媒若しくはアルカリ性プロトン性溶媒に暴露することにより加水分解できる。適切な加水分解性基には、これらに限定されるものではないが、ジヒドロピラン残基、ハロゲン化アルキル残基、トシルオキシアルカン残基、ジアゾアルカン残基、硫酸ジアルキル残基、酸無水物残基、酸ハロゲン化物残基、ハロゲン化シラン残基、及びシラザン残基が含まれる。
【0029】
本明細書で用いる場合、「減圧蒸留」という用語は、約大気圧(即ち、約1000 mbarないし約760 Torr)よりも低い圧力で蒸発又は沸騰させ、ガス状の蒸気を純粋な液体へと濃縮することにより液体を精製する行為を指す。汚染物質及び混入物質は、典型的には、濃縮された残留物中に残る。圧力は、例えば、約100 mbar未満、約10 mbar未満、約1 mbar未満、約0.1 mbar未満、約0.05 mbar未満、又は約0.02 mbar未満であってよい。蒸留装置は、典型的には、蒸留容器(加熱中に蒸留前の原料を保持する)、濃縮器(蒸留された原料を冷却する)、及び受取容器(留出物を回収する)を含む。1つの局面では、蒸留には、化学蒸着は含まれない。
【0030】
本明細書で用いる場合、「薄膜蒸留」という用語は、作業圧力を低下させることにより沸点を大いに低下させた、短経路蒸留を指す。これにより、従来の減圧蒸留(ポットスチル又は蒸留塔)では、必要とされる高温及び長い滞留時間が理由で破壊されるであろう生成物の熱分離が可能になる。1つの局面では、この用語は、液体の薄層を蒸留させる蒸留作業を指す。従って、一般的に薄膜蒸留、分子蒸留、短経路蒸留等と呼ばれる作業は、「薄膜蒸留」の範囲に含まれる。
【0031】
本明細書で用いる場合、「重合禁止剤」という用語は、場合によっては「ラジカル阻害剤」又は「ラジカル捕捉剤」とも呼ばれ、重合過程を妨げるか又は遅らせる物質を指す。典型的には、このような阻害剤は、重合を開始できるラジカルの形成を遅らせるか又は妨げる。これに代わる場合には、このような阻害剤は、形成されたいずれかのラジカルと、重合開始工程及び/又は成長工程よりも大きな速度で反応することができる。適切な重合禁止剤の例には、アルキルヒドロキノン及びヒドロキシナフタレンが含まれる。
【0032】
1つの局面では、重合禁止剤は、開示される原料の蒸留の間存在していてもよい。更なる局面では、重合禁止剤は、蒸留の蒸留容器中に存在していてもよい。更なる局面では、重合禁止剤は、蒸留工程において揮発するように選択できる。また更なる局面では、重合禁止剤は、蒸留工程において揮発しないように選択できる。更なる局面では、重合禁止剤は、蒸留の受取容器中に存在していてもよい。
【0033】
「POW」という用語は、n-オクタノールと水からなる2相系に溶解した物質の平衡濃度の比率である分配係数を指す。2つの濃度の比率又は2相中の試験物質の比率に一定の体積比を乗じた値である分配係数は、無次元であり、通常は、常用対数として示される。本明細書で用いる場合、log Powは、コンピューターソフトウェア「ChemDraw Ultra」バージョン7.0.1(Cambridge Soft Corporation製)の機能「Show Chemical Properties」を用いて計算した値「Log P」として定義される。
【0034】
本明細書で用いる場合、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むことを意図している。広い局面では、許容可能な置換基には、有機化合物の非環式及び環式、分枝及び非分枝、炭素環式及び複素環式、並びに芳香族及び非芳香族置換基が含まれる。例示的な置換基には、例えば、以下に記載するものが含まれる。許容可能な置換基は、適切な有機化合物に対して、1つ若しくは複数であっても、又は同一若しくは異なっていてもよい。この開示の目的において、窒素等のヘテロ原子は、水素原子置換基及び/又は本明細書に記載される有機化合物のいずれかの許容可能な置換基であって、このヘテロ原子の原子価を満たす置換基を有していてもよい。明示的に開示された場合を除き、本開示は、有機化合物の許容可能な置換基によって、いかなる形でも制限を受けることを意図していない。また、「置換」又は「〜で置換された」という用語には、このような置換が、置換された原子及び置換基の許容できる原子価数に一致するものであり、そして該置換が、安定な化合物、自発的に、例えば、転位、環化、脱離等により変化しない化合物を生じるという明確な条件が含まれる。
【0035】
種々の用語を定義するにおいて、「A1」、「A2」、「A3」及び「A4」は、ここでは、種々の特定の置換基を表す包括的記号として用いられる。これらの記号は、いずれの置換基であってもよく、本明細書に開示される置換基に限定されるものではない。そして、これらの記号が、1つの例において特定の置換基として定義される場合であっても、別の例では、別の置換基として定義される場合がある。
【0036】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、1ないし24個の炭素原子、例えば、1ないし12個の炭素原子、又は1ないし6個の炭素原子から成る分枝状又は非分枝状の飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等である。アルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アルキル基は、本明細書に記載される、置換又は非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよいが、これらの基に限定されるものではない。「低級アルキル」基とは、1ないし6個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0037】
「アルキル」とは、明細書を通して、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を指すものとして用いられる;しかしながら、本明細書では、置換アルキル基は、該アルキル基上の具体的な置換基を特定することにより、具体的に言及される場合もある。例えば、「ハロゲン化アルキル」という用語は、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素等のハロゲン化合物の1つ又は複数で置換されたアルキル基を具体的に指す。「アルコキシアルキル」という用語は、例えば、以下に記載されるアルコキシ基の1つ又は複数で置換されたアルキル基を具体的に指す。「アルキルアミノ」という用語は、例えば、以下に記載されるアミノ基等の1つ又は複数で置換されたアルキル基を具体的に指す。1つの例で「アルキル」を用いて、そして、別の例で「アルキルアルコール」等の具体的な用語を用いた場合でも、「アルキル」という用語が、「アルキルアルコール」等の具体的な用語も指さないことを意味するものではない。
【0038】
この慣行は、本明細書に記載する他の基についても用いられる。即ち、「シクロアルキル」等の用語は、非置換シクロアルキル部分及び置換シクロアルキル部分の両方を指し、同時に、本明細書では、該置換部分は、これに加えて、具体的に定義される場合がある;例えば、特定の置換シクロアルキルが、「アルキルシクロアルキル」等と呼ばれる場合もある。同様に、置換アルコキシは、例えば「ハロゲン化アルコキシ」等を具体的に指す場合があり、特定の置換アルキルが、例えば「アルケニルアルコール」等となる場合もある。繰り返しになるが、「シクロアルキル」等の一般名と「アルキルシクロアルキル」等の具体的用語を用いる慣行は、該一般名が、該具体的用語を含まないことを暗示するものではない。
【0039】
本明細書で用いる「シクロアルキル」という用語は、少なくとも3個の炭素原子から構成される非芳香族炭素系環である。シクロアルキル基の例は、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、上記で定義されるシクロアルキル基の一種であり、「シクロアルキル」という用語の意味に含まれ、環の少なくとも1つの炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリン等のヘテロ原子で置換されたものである。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載するように、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0040】
本明細書で用いる「ポリアルキレン基」という用語は、相互に結合したCH2基を複数有する基である。ポリアルキレン基は、式-(CH2)a-で表される場合もあり、ここで、「a」は、2ないし500の整数である。
【0041】
本明細書で用いる「アルコキシ」及び「アルコキシル」という用語は、エーテル結合を介して結合したアルキル又はシクロアルキルを指す;即ち、「アルコキシ」基は、-OA1として定義でき、ここで、A1は、上記に定義されるアルキル又はシクロアルキルである。「アルコキシ」には、直ぐ上に記載するアルコキシ基から成るポリマーを含む;即ち、アルコキシは、-OA1-OA2又は-OA1-(OA2)a-OA3等のポリエーテルであってもよく、ここで、「a」は、1ないし200の整数であり、かつA1、A2及びA3は、アルキル基及び/又はシクロアルキル基である。
【0042】
本明細書で用いる「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する構造式を有する2ないし24個の炭素原子から成る炭化水素基である。(A1A2)C=C(A3A4)等の非対称構造体は、E異性体とZ異性体の両方を含むことを意図している。このことは、本明細書において、非対称アルケンが存在する構造式において適用されてもよく、又は、結合記号C=Cで明確に示してもよい。アルケニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載するように、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0043】
本明細書で用いる「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも3個の炭素原子から構成され、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合、即ち、C=Cを含む非芳香族炭素系環である。シクロアルケニル基の例としては、これらに限定されないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、ノルボルネニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、上記で定義されるシクロアルケニル基の一種であり、「シクロアルケニル」という用語の意味に含まれ、環の少なくとも1つの炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリン等のヘテロ原子で置換されたものである。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載するように、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0044】
本明細書で用いる「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む構造式を有する、2ないし24個の炭素原子の炭化水素基である。アルキニル基は、置換されていなくてもよく、又は、これらに限定されないが、本明細書に記載するように、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0045】
本明細書で用いる「シクロアルキニル」という用語は、少なくとも7個の炭素原子から構成され、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む非芳香族炭素系環である。シクロアルキニル基の例としては、これらに限定されないが、シクロヘプチニル、シクロオクチニル、シクロノニニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルキニル」という用語は、上記で定義されるシクロアルキニル基の一種であり、「シクロアルキニル」という用語の意味に含まれ、環の少なくとも1つの炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリン等のヘテロ原子で置換されたものである。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載するように、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0046】
本明細書で用いる「アリール」という用語は、これらに限定されないが、ベンゼン、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、フェノキシベンゼン等を含む、いずれかの炭素系芳香族基を含有する基である。「アリール」という用語には、芳香族基であって、少なくと1つのヘテロ原子を該芳香族基の環内に組み込まれた状態で有する芳香族基を含有する基として定義される「ヘテロアリール」も含まれる。ヘテロ原子の例としては、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄及びリンが挙げられる。同様に、「アリール」の用語にも含まれる「非ヘテロアリール」という用語は、ヘテロ原子を含まない芳香族基を含有する基を定義する。アリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アリール基は、これらに限定されないが、本明細書に記載するように、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。「ビアリール」という用語は、特定の種類のアリール基であり、「アリール」の定義に含まれる。ビアリールは、ナフタレンのような縮合環式構造を介して共に結合した2つのアリール基、又はビフェニルのように1つ以上の炭素−炭素結合を介して結合した2つのアリール基を指す。
【0047】
本明細書で用いる「アルデヒド」という用語は、式-C(O)Hで表される。この明細書を通して、「C(O)」はカルボニル基、即ち、C=Oの略式表記である。
【0048】
本明細書で用いる「アミン」又は「アミノ」という用語は、式NA1A2A3で表され、ここで、A1、A2及びA3は、本明細書に記載するように、独立して、水素又は置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0049】
本明細書で用いる「カルボン酸」という用語は、式-C(O)OHにより表される。
【0050】
本明細書で用いる「エステル」という用語は、式-OC(O)A1又は-C(O)OA1により表され、ここで、A1は、本明細書に記載するように、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「ポリエステル」という用語は、式-(A1O(O)C-A2-C(O)O)a-または-(A1O(O)C-A2-OC(O))a-により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載する、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよく、そして「a」は1ないし500の整数である。「ポリエステル」とは、少なくとも2つのカルボン酸基を有する化合物と少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物との反応により生成する基を記載するために用いられる用語である。
【0051】
本明細書で用いる「エーテル」という用語は、式A1OA2により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載する、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「ポリエーテル」という用語は、式-(A1O-A2O)a-により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載する、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよく、そして「a」は1ないし500の整数である。ポリエーテル基の例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリブチレンオキシドが挙げられる。
【0052】
本明細書で用いる「ハライド」及び「ハロ」という用語は、ハロゲン類、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0053】
本明細書で用いる「ヒドロキシル」及び「ヒドロキシル」という用語は、式-OHにより表される。
【0054】
本明細書で用いる「ケトン」及び「ケト」という用語は、式A1C(O)A2により表され、ここで、A1及びA2は、本明細書に記載するように、独立して、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0055】
本明細書で用いる「アジド」という用語は、式-N3により表される。
【0056】
本明細書で用いる「ニトロ」という用語は、式-NO2により表される。
【0057】
本明細書で用いる「ニトリル」及び「シアノ」という用語は、式-CNにより表される。
【0058】
本明細書で用いる「シリル」という用語は、式-SiA1A2A3で表され、ここで、A1、A2及びA3は、本明細書に記載するように、独立して、水素又は置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0059】
本明細書で用いる「スルホ-オキソ(sulfo-oxo)」という用語は、式-S(O)A1、-S(O)2A1、 -OS(O)2A1、又は-OS(O)2 OA1で表され、ここで、A1は、本明細書に記載するように、水素又は置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書を通じて、「S(O)」とは、S=Oの略式表記である。本明細書で用いる「スルホニル」という用語は、式-S(O)2A1で表されるスルホ-オキソ基を指し、ここで、A1は、本明細書に記載するように、水素又は置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「スルホン」という用語は、式A1S(O)2A2により表され、ここで、A1及びA2は、本明細書に記載するように、独立して、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「スルホキシド」という用語は、式A1S(O)A2により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載する、置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0060】
本明細書で用いる「チオール」という用語は、式- SHにより表される。
【0061】
他に記載のない限り、くさび又は破線ではなく実線のみで示される化学結合を有する式は、それぞれの可能な異性体、例えば、各エナンチオマー及びジアステレオマー並びにラセミ混合物又はスケールミック(scalemic)混合物等の異性体の混合物を意図している。
【0062】
本発明の組成物の調製に用いられる成分、並びに本発明の方法で用いられる組成物自体が開示される。これらと他の原料が本明細書に開示されており、これら原料の組合せ、サブセット、相互作用、グループ等が開示される場合は、これら化合物の個々の種々の組合せ及び集合的な組み合わせ及び順序が明確に開示されていないかもしれないがその場合にも、それぞれは、本明細書において、具体的に意図されて記載されているものと理解される。例えば、特定の化合物が開示されて議論され、該化合物を含む数多くの分子に施すことが可能な数々の修飾が議論される場合、特に表示のない限り、該化合物と可能な修飾のそれぞれ及び全ての組合せと順序が具体的に意図されている。従って、あるクラスの分子A、B及びCが、あるクラスの分子D、E及びFと共に開示され、そして組合せ分子A-Dの例が開示されている場合には、それぞれが個別に記載されていなくても、それぞれが、個別かつ集合的に意図されており、組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E及びC-Fが開示されているものと見なされることを意味している。同様に、これらのあらゆるサブセット又は組み合わせも開示されているものとする。従って、例えば、A-E、B-F及びC-Eのサブグループも開示されているものとみなされることになる。この概念は、これらに限定されないが、本発明の組成物を作成する方法における工程及び使用する方法における工程を含む、本出願の全ての局面にあてはまる。従って、実施可能な種々の更なる工程が存在する場合には、これらの更なる工程のそれぞれが、本発明の方法のいずれかの具体的な態様又は態様の組合せで実施できるものと理解される。
【0063】
本明細書に開示する組成物が、一定の機能を有することが理解される。本明細書には、開示される機能を実行するための特定の構造上の要件が開示されており、開示される構造に関する機能と同一の機能を実行可能な種々の構造が存在すること、そしてこれらの構造が、典型的には同一の結果を達成するであろうことが理解される。
【0064】
B. 化合物
1つの局面では、本発明は、以下の構造を含むアクリロイル化合物に関する。
【0065】
【化4】

【0066】
(式中、R1は、水素、炭素数1ないし18のアルキル又はフェニルであり;Xは、水素又は加水分解性基であり;Aは、水素で、---は、二重結合であるか、又は、Aはシロキサニル基を含み、---は、単結合であり;そしてX及びAが同時に水素ではない)。
【0067】
更なる局面では、R1、X及びAは、それぞれ同時にメチル、水素及び水素ではない。また更なる局面では、Xは、水素ではない。更なる局面では、Xは、加水分解性基であり、アルキル、アシル又はシリルを含む。更なる局面では、R1は、水素又はメチルである。
【0068】
1つの局面では、Xは、ジヒドロピラン残基、ハロゲン化アルキル残基、トシルオキシアルカン残基、ジアゾアルカン残基及び硫酸ジアルキル残基から選択される加水分解性のアルキル基である。更なる局面では、Xは、酸無水物残基及び酸ハロゲン化物残基から選択される、加水分解性のアシル基である。更なる局面では、Xは、ハロゲン化シラン残基及びシラザン残基から選択される加水分解性のシリル基である。
【0069】
「A」は、典型的にはシロキサニル基又は部分である;しかしながら、1つの局面において、本発明の化合物及び組成物中では、A部分は、必ずしも特定のシロキサニル基に限定されるものではなく、式A-Hを有する化合物から誘導され、加水分解反応を起こすことが可能な、いずれかのシロキサン基であってもよい。即ち、1つの局面では、加水分解反応を起こすことが可能なシラン化合物(即ち、少なくとも1つのシリコン-水素結合を有する化合物)は、反応によって、「A」部分又は残基を提供できる。
【0070】
1つの局面では、プラスチック成型体用原料が提供され、この原料には、下記の式(A1-1)又は(A1-2)で表される化合物を含む。
【0071】
【化5】

【0072】
(式中、R1は、水素又はメチルを表し;Xは、加水分解性基を表す)。
【0073】
式(A1-1)及び(A1-2)において、R1は、水素又はメチル基を表すが、化学的安定性の点からより好ましくはメチル基である。Xは水素または加水分解性基を表すが、好適な例は水素;ピラニル基;メチル基、t−ブチル基などのアルキル基;アセチル基、ホルミル基、プロピオニル基などのアシル基;トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などのシリル基である。Xが加水分解性基である場合、加水分解あるいは加溶媒分解によって容易に水酸基に変換できるという観点から好ましくはアシル基またはシリル基であり、最も好ましくはシリル基である。
【0074】
本発明のプラスチック成型体の製造用の原料に含まれる式(A1-2)又は(A1-2)で表される化合物は、その分子中にアリル基と保護された水酸基を有することを特徴とする。該化合物はアリル基と(メタ)アクリロイル基を有するために架橋剤としての機能を有する。しかも水酸基が保護基で保護されているために疎水性のシロキサニルモノマーとも良好な親和性を有するものである。
【0075】
本発明のプラスチック成型体の製造用の原料に含まれる式(A1-2)又は(A1-2)で表される化合物は、その分子中に加水分解性基Xで保護された水酸基を有するので、Xを加水分解や加溶媒分解によって水素に変換し、それによって水酸基を有するシロキサニル化合物を作製することが好ましい。このXの水素への変換は、プラスチック成型体を調製してから行うこともできるし、プラスチック成型体を調製するための重合前の段階で行うこともできる。他の親水性重合原料との相溶性が向上するという点では後者が好ましい。
【0076】
式(B1-1)及び(B1-2)において、R1は、水素又はメチルを表し;Xは加水分解性基を表す。R1とXの好ましい例は、それぞれ、上記の式(A1-1)または(A1-2)中の好ましい例と同様である。「A」は、シロキサニル基を表し、これらの好ましい例は、以下の式(C1)又は(C2)に表されるものである。
【0077】
【化6】

【0078】
(式中、Q1ないしQ11は、独立して、水素、置換されていてもよい炭素数1ないし20のアルキル、又は置換されていてもよい炭素数6ないし20のアリールを表し;kは、0ないし200の整数を表し;そして、a、b及びcは、独立して、0ないし20の整数を表すが、ただし、k、a、b及びcの全てが同時に0となることはない)。
【0079】
【化7】

【0080】
(式中、Q21ないしQ27は、独立して、水素、炭素数1ないし18のアルキル又はフェニルを表し;そしてnは、2ないし12の整数を表す)。
【0081】
上記の式(C1)において、Q1ないしQ11は、独立して、水素、置換されていてもよい炭素数1ないし20のアルキル、又は置換されていてもよい炭素数6ないし20のアリールを表すが、これらの具体的な例としては、水素;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、2-エチルヘキシル及びオクチル等のアルキル基;そしてフェニル及びナフチル等のアリール基である。これらのうち、メチル基が最も好ましい。
【0082】
kは、0ないし200の整数を表すが、好ましくは0である。
【0083】
a、b及びcは、独立して、0ないし20の整数を表すが、ただし、k、a、b及びcの全てが同時に0となることはなく、好ましくは、a、b及びcは、独立して、0又は1の整数を表す。
【0084】
上記の式(C2)において、Q21ないしQ27は、独立して、水素、炭素数1ないし18のアルキル又はフェニルを表す。
【0085】
Q21は、好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル等である。得られるプラスチック成型体の化学安定性の観点から、メチル、エチル、プロピル及びブチルが特に好ましい。
【0086】
Q22ないしQ27は、好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル等である。得られるプラスチック成型体の酸素透過性、親水性及び耐破損性の観点から、メチル基が最も好ましい。
【0087】
nは、2ないし12の整数を表すが、得られるプラスチック成型体の酸素透過性、親水性及び耐破損性の観点から、nは、好ましくは、2ないし8の整数であり、より好ましくは、3ないし6の整数である。
【0088】
上記の式(C1)又は(C2)に示される基のうち、特に好ましいシロキサニル基Aは、トリス(トリメチルシロキシ)シリル基、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル基、トリメチルシロキシジメチルシリル基及び下記の式(C2-1)により表される基である。
【0089】
【化8】

【0090】
(式中、Q21は、上記の式(C2)のQ21と同様の意味を表す)。
【0091】
Aが上記の式(C2)に表される基、即ち、下記の式(D1)により表される化合物である場合にA-Hにより表されるシロキサニル化合物を生成するための好ましい方法について説明する。
【0092】
【化9】

【0093】
最初に、式Q21Liで表される化合物と下記の式(E1)で表される化合物を、非プロトン性溶媒中で反応させる(工程1)。
【0094】
【化10】

【0095】
式(E1)で表される化合物に対する式Q21Liで表される化合物のモル比は、好ましくは、約0.1:1ないし約5:1であり、より好ましくは、約0.2:1ないし約3.5:1である。反応温度は、好ましくは、約-50℃ないし約50℃であり、より好ましくは、約-20℃ないし約40℃であり、さらにより好ましくは、約-10℃ないし約30℃である。反応溶媒は、非プロトン性溶媒であり、その好ましい例としては、ヘキサン、ヘプタン及び石油ベンジンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;そしてテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル及びジエチレングリコールジアルキルエーテルなどのエーテル溶媒が挙げられる。これらの溶媒の複数を組み合わせて用いることもできる。反応時間は、好ましくは、約10分ないし約10時間であり、より好ましくは、約30分ないし約6時間である。
【0096】
次に、下記の式(E2)により表される化合物を、反応系に添加して、更に反応させる(工程2)。しかしながら、工程2は省略してもよい。工程2を省略する場合、上記の式(D1)において、Q24 は、Q22と同一の置換基を表し、Q25は、Q23と同一の置換基を表す。
【0097】
【化11】

【0098】
工程2において、式(E2)で表される化合物に対する、工程1で用いた式Q21Liで表される化合物のモル比は、好ましくは、0.1:1ないし5:1であり、より好ましくは0.2:1ないし3.5:1である。式(E3)で表される化合物は、非プロトン性溶媒に溶解した溶液の状態で添加してもよい。このために用いられる溶媒の好ましい例は、工程1で用いる反応溶媒と同じである。反応温度は、好ましくは、約-50℃ないし約50℃であり、好ましくは、約-20℃ないし約40℃であり、さらにより好ましくは、約-10℃ないし約30℃である。反応時間は、約10分ないし約10時間であり、より好ましくは、約30分ないし約6時間である。
【0099】
この後に、式(E3)で表される化合物を反応系に添加して、更に反応させる(工程3)。
【0100】
【化12】

【0101】
工程3において、式(E3)で表される化合物に対する、工程1で用いた式Q21Liで表される化合物のモル比は、好ましくは、約0.2:1ないし約5:1であり、より好ましくは、約0.5:1ないし約2:1である。、式(E3)で表される化合物は、非プロトン性溶媒に溶解した溶液の状態で添加してもよい。このために用いられる溶媒の好ましい例は、工程1で用いる反応溶媒と同じである。反応温度は、好ましくは、約-50℃ないし約50℃であり、より好ましくは、約-10℃ないし約40℃であり、さらにより好ましくは、約0℃ないし約30℃である。反応時間は、好ましくは、約10分ないし約10時間であり、より好ましくは、約30分ないし約6時間である。
【0102】
上記の操作により、式(D1)により表される粗製の化合物が得られる。次いで、この化合物を、蒸留法又はカラムクロマトグラフィー法等の精製方法によって精製する。精製方法については、蒸留法が最も好ましい。
【0103】
上記の式(D1)、(E1)、(E2)及び(E3)中の記号は、上記の式(A1-1)、(A1-2)、(B1-1)及び(B1-2)中の対応する記号と同一の意味を表す。
【0104】
1. 分枝シロキサニル基
1つの局面において、Aは、以下の構造を含むシロキサニル基を含む。
【0105】
【化13】

【0106】
(式中、---は、単結合であり、式中、Q1ないしQ11は、独立して、水素、置換されているか炭素数1ないし20の置換若しくは非置換アルキル、又は炭素数6ないし20の置換若しくは非置換アリールを表し;kは、0ないし200の整数を表し;そして、a、b及びcは、独立して、0ないし20の整数を表すが、ただし、k、a、b及びcの全てが同時に0となることはない)。
【0107】
更なる局面では、kは、0ないし100、0ないし50、0ないし20、0ないし10、1ないし100、1ないし50、1ないし20、1ないし10、100未満、50未満、20未満、10未満、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は0であってもよい。1つの局面では、kは、0である。
【0108】
特定の局面では、Q1ないしQ11は、独立して、メチルである。更なる局面では、Q1ないしQ11は、同時にメチルである。
【0109】
特定の局面では、a、b及びcは、独立して、整数0又は1を表す。更なる局面では、a、b及びcは、同時に整数0を表す。更なる局面では、a、b及びcは、同時に整数1を表す。
【0110】
2. 直鎖シロキサニル基
1つの局面において、Aは、以下の構造を含むシロキサニル基を含み:
【0111】
【化14】

【0112】
(式中、---は、単結合であり、式中、Q21ないしQ27は、独立して、水素、炭素数1ないし18のアルキル又はフェニルを表し;そしてnは、2ないし12の整数を表す)。
【0113】
特定の局面では、Q21は、メチル、エチル、プロピル又はブチルである。更なる局面では、Q22ないしQ27は、独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル等である。
【0114】
種々の更なる局面では、nは、2ないし8、2ないし6、4ないし8、2、3、4、5、6、7又は8である。
【0115】
C. 組成物
1つの局面において、本発明は、本発明の化合物又はその加水分解生成物を含む組成物に関する。更なる局面では、本発明の組成物は、本発明の化合物又はその加水分解生成物の残基を含むポリマーを含んでいてもよい。更なる局面では、該ポリマーは、少なくとも1種類の親水性モノマーの残基を含む共重合体である。例えば、該共重合体は、1つ以上の2-ヒドロキシエチルメタクリレート残基を含んでいてもよい。
【0116】
更なる局面では、前記組成物は、少なくとも2種類のシロキサニル化合物を含んでおり、該化合物の少なくとも一部分が架橋されている。更なる局面では、該架橋された化合物は、ポリマーを形成する。
【0117】
1.最頻値
例えば、ポリマー又はオリゴマーなどの異なる数の残基を含む化合物を含有する組成物は、異なる数の個々の分子から生じる分子量の分布を有数る場合があることが理解される。即ち、この組成物中の化合物の個々の分子は、異なる重合度(DP)を有している場合がある。このような分布は、平均値、中央値又は最頻値により記載可能な、残基の平均数値を有する。
【0118】
例えば、本発明のアクリロイル化合物において、残基数は、0以上の整数を表す「n」により記載できる。本発明の組成物では、例えば、前記化合物の個々の分子が最頻値を有する場合もある。例えば、その最頻値は、約2ないし約9、約3ないし約6、約4ないし約8、約2ないし約5、約3ないし約7、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8又は約9となるであろう。
【0119】
2.純度
1つの局面において、前記組成物は、高純度を有することも可能である。即ち、該組成物は、比較的低濃度の不所望な不純物を有することが可能である。不所望な不純物としては、例えば、この組成物をコンタクトレンズや眼内レンズとして用いた場合に刺激性を有する可能性のあるエポキシドやジオール部分が挙げられる。
【0120】
特定の局面では、例えば、エポキシド部分やジオール部分などの不所望の不純物は、約100 ppm未満、約80 ppm未満、約60 ppm未満、約40 ppm未満、約20 ppm未満又は約10 ppm未満の濃度で存在する。更なる局面では、例えば、エポキシド部分やジオール部分などの不所望の不純物は、組成物中に、実質的に存在しない。
【0121】
理論に束縛されることを望まないのであれば、最終調製工程においてエポキシド官能性試薬を用いないことにより、不所望のエポキシド不純物やジオール不純物の量や濃度を最小限に留めるか、組成物から除くことも可能になると考えられる。
【0122】
C.組成物の用途
本発明は、これを重合することにより、良好な酸素透過性、良好な親水性及び良好な耐破損性を有するプラスチック成型体を製造可能な原料を提供する。このプラスチック成型体は、ドラッグデリバリーに用いられる薬物吸着剤、そしてコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜及び眼鏡レンズ等の眼用レンズとして有用である。これらのなかでも、特にコンタクトレンズに適している。
【0123】
1つの局面では、前記組成物は、プラスチック成型体の製造用の原料であって、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等の親水性モノマーと良好な適合性を示し、該原料を重合することにより良好な酸素透過性、良好な親水性、低い弾性率並びに良好な光学品質を有するプラスチック成型体を生成可能な原料を提供できる。
【0124】
本発明によれば、プラスチック成型体の製造用の原料であって、これらに限定されないが、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、これらの組み合せ等の親水性モノマーと良好な適合性を示し、該原料を重合することにより良好な酸素透過性、良好な親水性、低い弾性率並びに良好な光学品質を有するプラスチック成型体を生成可能な原料を提供できる。
【0125】
1つの局面では、本発明の化合物及び組成物を用いることで、本発明の組成物を少なくとも1種類含む成型品を提供できる。更なる局面では、本発明の化合物及び組成物を用いることで、本発明の組成物を少なくとも1種類含む眼用レンズを提供できる。また更なる局面では、本発明の化合物及び組成物を用いることで、本発明の組成物を少なくとも1種類含むコンタクトレンズを提供できる。
【0126】
D. 組成物の製造方法
1つの局面において、本発明は、以下の構造を有する第1の化合物
【0127】
【化15】

【0128】
(式中、R1は、水素、炭素数1ないし18のアルキル又はフェニルを表し、Xは、水素又は加水分解性基を表す)
を、A-H(ここで、Aは、シロキサニル基を含む)の構造を有する第2の化合物によりヒドロシリル化させて、以下の構造を有する第3の化合物
【0129】
【化16】

【0130】
(式中、Xは、水素又は加水分解性基であり、そして、Aは、シロキサニル基である)
を得る工程を含む、アクリロイル化合物の合成方法に関する。
【0131】
開示する方法は、所望により、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。例えば、雰囲気は、窒素、ヘリウム又はアルゴンであってもよい。
【0132】
1つの局面では、本発明の方法において、A部分が、必ずしも特定のシロキサニル基に限定されておらず、A-Hの化合物から誘導され、加水分解反応を生じさせることが可能ないずれのシロキサニル基でもよいことが理解される。
【0133】
1つの局面では、プラスチック成型体を製造するための原料の製造方法が提供され、この方法は、上記の式(A1-1)又は(A1-2)により表される化合物を、分子内に少なくとも1つの水素-シリコン結合を有するシロキサニル化合物と反応させて、以下の式(B1-1)又は(B1-2)で表される、プラスチック成型体製造用の原料を得ることを含む。
【0134】
【化17】

【0135】
(式中、R1は、水素又はメチルを表し;Xは加水分解性基を表し;そして、Aは、シロキサニル基を表す)。
【0136】
典型的には、最終調製工程でエポキシド官能化試薬を用いる方法は、回避され、これによって、組成物中の不所望のエポキシド不純物やジオール不純物の量や濃度を最小限に留めるか、取り除くことができる。
【0137】
ある局面では、ヒドロシリル化工程は、重合禁止剤又はラジカル捕捉剤の存在下で行われる。
【0138】
更なる局面では、前記シロキサニル基は、以下の構造を含む。
【0139】
【化18】

【0140】
(式中、Q1ないしQ11は、独立して、水素、炭素数1ないし20の置換若しくは非置換アルキル、又は炭素数6ないし20の置換若しくは非置換アリールを表し;kは、0ないし200の整数を表し;そして、a、b及びcは、独立して、0ないし20の整数を表すが、ただし、k、a、b及びcの全てが同時に0となることはない)。
【0141】
更なる局面では、前記シロキサニル基は、以下の構造を含む。
【0142】
【化19】

【0143】
(式中、Q21ないしQ27は、独立して、水素、炭素数1ないし18のアルキル又はフェニルを表し;そしてnは、2ないし12の整数を表す)。
【0144】
更なる局面では、Xは、加水分解性基であり、前記方法は、更に、第3の化合物を加水分解又は加溶媒分解して、以下の構造を有する第4の化合物を得る工程を含む。
【0145】
【化20】

【0146】
1つの局面では、プラスチック成型体を製造するための原料の製造方法が提供され、この方法は、上記の式(B1-1)又は(B1-2)により表される化合物を加水分解又は加溶媒分解して、以下の式(B2-1)又は(B2-2)で表される、プラスチック成型体製造用の原料を得ることを含む:
【0147】
【化21】

【0148】
(式中、R1は、水素又はメチルを表し;Aは、シロキサニル基を表す)。
【0149】
更なる局面では、前記方法は、所望により、重合禁止剤又はラジカル捕捉剤の存在下で、アリルグリシジルエーテルをアルキルアクリル酸で処理することで、以下の構造
【0150】
【化22】

【0151】
(式中、R1は、水素、炭素数1ないし18のアルキル又はフェニルを表す)
を有する出発化合物を得ること、及び所望によりヒドロキシル基を保護試薬で保護して、以下の構造
【0152】
【化23】

【0153】
(式中、Xは、加水分解性基である)
を有する第2の化合物を得ることを含む。
【0154】
更なる局面では、R1は、水素又はメチルである。
【0155】
また更なる局面では、前記保護試薬は、アルキル化剤、アシル化剤又はシリル化剤である。1つの局面では、Xは、ジヒドロピラン残基、ハロゲン化アルキル残基、トシルオキシアルカン残基、ジアゾアルカン残基及び硫酸ジアルキル残基から選択される加水分解性のアルキル基である。更なる局面では、Xは、酸無水物残基及び酸ハライド残基から選択される加水分解性のアシル基である。更なる局面では、Xは、ハロゲン化シラン残基及びシラザン残基から選択される加水分解性のシリル基である。
【0156】
式(B1-1)又は(B1-2)により表される化合物を含むプラスチック成型体の製造用の原料は、上記の式(A1-1)又は(A1-2)により表される化合物を、ヒドロシリル化反応用の触媒の存在下で式H-Aで表される化合物を反応させることにより、生成できる(工程#1)。
【0157】
工程#1において、式H-Aで表される化合物に対する式(A1-1)又は(A1-2)により表される化合物(これらの式で表される化合物が含有されている場合には、その総量)のモル比は、好ましくは、約0.5:1ないし約10:1であり、より好ましくは、約0.8:1ないし約5:1であり、更により好ましくは、約1:1ないし約3:1である。工程#1では、貴金属系のヒドロシリル化触媒を用いることが好ましい。貴金属系ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応に通常用いられる既知の触媒を用いることができる。この触媒の例としては、白金粒子、炭素粉に担持される白金粒子、塩化白金酸、アルコール修飾塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とビニルシロキサンとの配位化合物、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体及び白金テトラビニルテトラメチルテトラシクロシロキサン等の白金(0)ビニルシロキサン錯体、白金黒、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウム黒及びロジウム触媒が挙げられる。生成物の純度の観点から、均一触媒がより好ましく、白金(0)ビニルシロキサン錯体がさらにより好ましく、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が最も好ましい。均一触媒の場合、この触媒の量は、好ましくは、式(A1-1)又は(A1-2)により表される化合物及び式H-Aの化合物の総重量に対する貴金属の重量として約0.1 ppmないし約100 ppmであり、不均一触媒の場合、この触媒の量は、好ましくは、式(A1-1)又は(A1-2)により表される化合物及び式H-Aの化合物の総重量に対する貴金属の重量として約20 ppmないし約2000 ppmである。反応は、溶媒中で行ってもよく、溶媒無しで行ってもよい。溶媒の好ましい例は、工程1で用いた反応溶媒と同じ溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、エステル系溶媒及びカーボネート系溶媒である。これら溶媒の好ましい例としては、ヘキサン、ヘプタン及び石油ベンジン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル及びジエチレングリコールジアルキルエーテルなどのエーテル系溶媒;アセトン、2-ブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ペンタノン、4-メチル-2-ペンタノン及び3-ペンタノン等のケトン系溶媒;アセトニトリル及びプロピオニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、安息香酸メチル、γ-バレロラクトン及びγ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;そしてジメチルカーボネート、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。生成物の純度の観点から、反応溶媒のlog Powは、好ましくは、-0.40ないし1.80であり、より好ましくは、-0.25ないし1.60である。生成物の純度の観点から、エーテル系溶媒及びケトン系溶媒がより好ましい。ケトン系溶媒は、高純度の生成物を生じさせ、メタクリル(又はアクリル)二重結合への水素付加物等の不純物を低濃度に抑えることから、最も好ましい。均一触媒の場合、反応温度は、好ましくは、約-20℃ないし約60℃であり、より好ましくは、約-10℃ないし約20℃である。不均一触媒の場合、反応温度は、好ましくは、約-10℃ないし約150℃であり、より好ましくは、約20℃ないし約120℃である。反応時間は、好ましくは、約10分ないし約10時間であり、より好ましくは約30分ないし約6時間である。
【0158】
上記の操作により、式(B1-1)又は(B1-2)により表される化合物の少なくとも1種類である、プラスチック成型体の製造用の原料が得られる。Xが水素の場合、式(B1-1)及び(B1-2)により表される化合物は、式(B2-1)及び(B2-2)により表される化合物である。不均一触媒を用いると、この段階で触媒をろ過により取り除けるので、好ましい。
【0159】
必要な場合には、この段階で、生成物を減圧下で加熱することにより残留原料と低沸点不純物を取り除くことが好ましい。これらの原料の除去の効率と生成物の純度の観点から、前記加熱は、好ましくは、約60℃ないし約160℃の温度で行ってもよい。
【0160】
更に、必要であれば、生成物は、蒸留法又はカラムクロマトグラフィー法等の精製方法により精製してもよい。精製方法としては、カラムクロマトグラフィー法が好ましい。カラムクロマトグラフィーは、好ましくは、多孔質粒子を用いて行うことができる。この多孔質粒子は、1種類の粒子であってもよく、又は2種類以上の粒子を組み合わせて用いてもよい。精製においては、溶媒を用いてもよい。このような溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びグリセリン等の種々のアルコール;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の種々の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン及びパラフィン等の種々の脂肪族炭化水素; アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等の種々のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル及びフタル酸ジオクチル等の種々のエステル;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル及びポリエチレングリコールジアルキルエーテル等の種々のエーテル; ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド及びジメチルスルホキシド等の種々の非プロトン性極性溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン及びトリクロロエチレン等のハロゲン系溶媒;並びにフロン系溶媒が挙げられる。溶媒は、個別に用いてもよく、又は2つ以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。
【0161】
以下において、プラスチック成型体の製造用の原料であって、式(B2-1)又は(B2-2)により表される化合物を含む原料の製造方法を説明する。
【0162】
プラスチック成型体の製造用の原料に含有される式(B2-1)又は(B2-2)により表される化合物は、式(B1-1)又は(B1-2)により表される化合物を加水分解又は加溶媒分解することで、ヒドロキシル基の保護基であるXを取り除き、それによって、該保護器をヒドロキシル基に変換することにより、合成することができる(工程#2)。
【0163】
工程#2において、加水分解又は加溶媒分解は、水又は活性水素含有有機溶媒を、保護基Xとほぼ等量又は過剰量で添加することにより行うことが可能である。好ましい活性水素含有有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール及びt-アミルアルコール等の種々のアルコール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸及びテレフタル酸等の種々のカルボン酸類;種々のチオール類;並びに種々のアミン類が挙げられる。これらの中でも、アルコール類とカルボン酸類がより好ましい。
【0164】
工程#2では、触媒を添加することにより反応を促進してもよい。このような触媒の好ましい例としては、塩酸及び硫酸等の種々の無機酸類;p-トルエンスルホン酸, メタンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸等の種々のスルホン酸類;ギ酸, 酢酸及びプロピオン酸等の種々のカルボン酸類;水酸化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム等の種々の無機塩基類;酢酸ナトリウム及び酢酸カリウム等の種々の塩;並びにトリエチルアミン等の種々の有機塩基類が挙げられる。これらの中でも、無機酸類、カルボン酸類及びスルホン酸類がより好ましい。
【0165】
反応効率と純度の維持の観点から、反応温度は、好ましくは、約-20℃ないし約120℃であり、より好ましくは、約10℃ないし約100℃であり、さらにより好ましくは、約20℃ないし約70℃である。反応時間は、好ましくは、約1分ないし約10時間であり、より好ましくは約10分ないし約6時間である。
【0166】
上記の操作により、少なくとも1種類の、式(B2-1)又は(B2-2)により表される化合物を含む、プラスチック成型体の製造用の原料が得られる。
【0167】
次いで、好ましくは、水性試薬と不純物が、洗浄とこれに続く分離により除去される。水による洗浄は、塩基性水溶液、酸性水溶液、中性水溶液及び水から成る群から適宜選択される水溶液又は水を用いて行うことができる。
【0168】
必要な場合には、この段階で、生成物を減圧下で加熱することにより、残留原料と低沸点不純物を取り除くことが好ましい。これらの原料の除去の効率と生成物の純度の観点から、前記加熱は、好ましくは、約0℃ないし約100℃の温度で行ってもよい。
【0169】
化合物は、好ましくは、カラムクロマトグラフィー又は減圧蒸留法により精製してもよいが、後者が好ましい。カラムクロマトグラフィーは、好ましくは、多孔質粒子を用いて行うことができる。1種類の多孔質粒子を用いてもよく、又は2種類以上の多孔質粒子を組み合わせて用いてもよい。精製においては、溶媒を用いてもよい。このような溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びグリセリン等の種々のアルコール類;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の種々の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン及びパラフィン等の種々の脂肪族炭化水素類; アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等の種々のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル及びフタル酸ジオクチル等の種々のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル及びポリエチレングリコールジアルキルエーテル等の種々のエーテル類; ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド及びジメチルスルホキシド等の種々の非プロトン性極性溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン及びトリクロロエチレン等のハロゲン系溶媒;並びにフロン系溶媒が挙げられる。溶媒は、個別に用いてもよく、又は2つ以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。
【0170】
更なる局面では、本発明は、以下の構造を含むシロキサニルモノマーの製造方法
【0171】
【化24】

【0172】
(式中、R1は、少なくとも1つの不飽和結合を有する炭素数1ないし20の置換基を表し、R3は、炭素数1ないし7の2価の置換基を表し、Aは、シロキサニル基を表し、Xは、水素又は加水分解性基を表す)
であって、該方法が、以下の構造を有する不飽和化合物
【0173】
【化25】

【0174】
(式中、R1は、少なくとも1つの不飽和結合を有する炭素数1ないし20の置換基を表し、R2は、少なくとも1つの不飽和結合を有する炭素数1ないし7の置換基を表し、Xは、水素又は加水分解性基を表す)
を、金属触媒の存在下で、A-H(ここで、Aは、シロキサニル基を表す)の構造を有するシロキサニル化合物と反応させることにより、シロキサニルモノマーを含む反応混合物を生成する工程を含み、ここで、前記反応工程における、前記シロキサニル化合物に対する前記不飽和化合物のモル比が約1.15:1ないし約10:1である、方法に関する。
【0175】
ある局面では、反応は、約-0.40ないし約1.80、例えば、約-0.25ないし約1.60、約-0.10ないし約1.50、約0ないし約1.2、又は約0ないし約1.0のlog Pow値を有する溶媒中で行われる。
【0176】
ある局面では、反応工程は、ケトン溶媒、エーテル溶媒又はニトリル溶媒の少なくとも1種類を含む溶媒中で行われる。更なる局面では、前記溶媒は、少なくとも1種類のケトン溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノンの少なくとも1種類
を含んでいてもよい。
【0177】
更なる局面では、前記金属触媒は、少なくとも1種類の白金(0)ビニルシロキサン錯体を含む。
【0178】
1. モル比
更なる局面では、開示される方法で用いられる種々の試薬は、得られる生成物の純度と収率を向上させる量で提供及び使用してもよい。即ち、ある局面では、本発明は、生成物の純度と収率を最適化する試薬の化学量論の選択に関する。例えば、前記シロキサニル化合物に対する前記不飽和化合物のモル比は、前記反応工程において、約1.15:1ないし約10:1、約1.2:1ないし約5:1、約1.5:1ないし約3:1、約2:1又は約2.5:1となるであろう。
【0179】
2. 不飽和化合物
ある局面では、開示される方法は、以下の構造
【0180】
【化26】

【0181】
(式中、R4は、水素であるか又は炭素数1ないし18のアルキル及びフェニルから選択される置換基であり;Xは、水素又は加水分解性基である)
を有する不飽和化合物を用いることも可能であり、ここで、前記シロキサニルモノマーは、以下の構造を有する。
【0182】
【化27】

【0183】
(式中、R4は、水素であるか又は炭素数1ないし18のアルキル及びフェニルから選択される置換基であり;Aは、シロキサニル基であり;Xは、水素又は加水分解性基である)。
【0184】
3. シロキサニル化合物
ある局面では、開示される方法は、以下の構造を有するシロキサニル化合物を用いることも可能である。
【0185】
【化28】

【0186】
(式中、Q1ないしQ11は、独立して、水素を表すか、又は随意に置換されていてもよい炭素数1ないし20のアルキル、又は随意に置換されていてもよい炭素数6ないし20のアリールから選択される置換基を表し;kは、0ないし200の整数、例えば、0ないし100、0ないし50、0ないし20、0ないし10、1ないし100、1ないし50、1ないし20、1ないし10を表し;そして、a、b及びcは、独立して、0ないし20の整数、例えば、0ないし10、1ないし10、0ないし6、または1ないし6を表すが、ただし、k、a、b及びcは、同時に0となることはない)。
【0187】
更なる局面では、前記シロキサニル化合物は、以下の構造を有していてもよい。
【0188】
【化29】

【0189】
(式中、Q21ないしQ27は、独立して、水素を表すか、又は炭素数1ないし18のアルキル及びフェニルから選択される置換基を表し;そしてnは、0ないし12の整数、例えば、0ないし10、1ないし10、0ないし6、又は1ないし6を表す)。また更なる局面では、前記シロキサニル化合物は、以下の構造を有していてもよい。
【0190】
【化30】

【0191】
(式中、Q31は、炭素数1ないし7のアルキル及びフェニルから選択される置換基を表し;そしてnは、1ないし10の整数、例えば、1ないし8、1ないし6、又は1ないし4を表す)。
【0192】
また、開示される方法の生成物も開示される。この生成物は、粗製の反応生成物であってもよく、更なる局面では、精製されて単離された生成物を提供するものであってもよい。
【0193】
E. 精製
ある局面では、開示される方法及び開示される化合物について、出発原料の反応モル比を適切に選択することにより不純物の精製を調節及び抑制することで、多大な精製工程を最小限にすることが可能である。即ち、出発原料(例えば、不飽和化合物とシロキサニル化合物)の相対量を選択して、不純物の精製を最小限に留め、そして/又は未反応の出発原料の残留量を最小限に留めることが可能である。例えば、反応モル比が、開示される比率よりも小さければ、所望の生成物の純度及び/又は収率が低下する場合がある。同様に、反応モル比が、開示される比率よりも大きい場合にも、所望の生成物の純度及び/又は収率が低下する可能性がある。
【0194】
従来のシロキサニルモノマーの製造方法では、得られるシロキサニルモノマーが不十分な純度を有する場合がある。結果として、抽出及び蒸留を含む精製工程を用いることになるであろう。
【0195】
ある局面では、開示される方法は、更に、前記反応混合物を炭化水素溶媒及び親水性溶媒と混合する工程;該混合物に2層を形成させる工程;そして前記2層を分離して、該反応混合物から不飽和化合物を除去する工程を含んでいてもよい。即ち、所望の反応生成物とは異なる溶解度特性を有する不純物を取り除く抽出工程を用いてもよい。
【0196】
ある局面では、前記炭化水素溶媒は、炭素数5ないし25の脂肪族炭化水素溶媒であり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン及びドデカン等である。前記溶媒は、分枝状であっても非分枝状であってもよく、そして、前記溶媒は、環状であっても非環状であってもよい。また、炭化水素溶媒の混合物を用いてもよいことが意図される。
【0197】
ある局面では、前記親水性溶媒は、炭素数1ないし5のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又はペンタノールである。前記溶媒は、分枝状であっても非分枝状であってもよく、そして、前記溶媒は、環状であっても非環状であってもよい。また、親水性溶媒の混合物を用いてもよいことが意図される。更なる局面では、前記親水性溶媒は、水である。特定の局面では、前記親水性溶媒は、酸性pH又は塩基性pHで提供することもできる。
【0198】
特定の局面では、前記炭化水素溶媒及び前記親水性溶媒は、非混和性であり、それによって、混合後の2層の形成が促進される。更なる局面では、前記2種類の溶媒は、部分的に混和性である。
【0199】
抽出により、反応生成物の重合のリスクを最小限に抑えながら、イオン性不純物又は極性不純物から反応生成物を精製することは可能ではあるが、従来技術では、非イオン性不純物及び非極性不純物からの反応生成物の分離を効率的に行えないであろう。対照的に、蒸留では、イオン性不純物又は極性不純物からでも、非イオン性不純物及び非極性不純物からでも反応生成物を分離することができる;しかしながら、従来の蒸留技術は、典型的に、原料の分子量が大きい場合には、比較的高い温度を必要とし、従って、反応生成物の重合のリスクを最小限に留めることができない可能性がある。
【0200】
別の局面では、開示される方法は、蒸留法、例えば、短経路蒸留又は薄膜蒸留により、反応混合物から不飽和化合物を取り出す工程を更に含んでいてもよい。特定の局面では、このような蒸留工程は、生成物を取り出す工程において、50 ppmないし10,000 ppm、例えば、約50 ppmないし約1,000 ppm、約50 ppmないし約500 ppm、約500 ppmないし約10,000 ppm又は約500 ppmないし約1,000 ppmの量で、重合禁止剤を用いてもよい。
【0201】
適切な重合禁止剤としては、ヒドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4'-チオビス (3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)及びN-ニトロソフェニルヒドロキシアミンセリウム (III)塩が挙げられる。また、適切な重合禁止剤としては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピぺリジン-1-オキシル、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、N-ニトロソ-N-(1-ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N-ニトロソフェニルアミン及びN-ニトロソ-N-メチルアニリンも挙げられる。適切な重合禁止剤としては、ニトロソナフトール、p-ニトロソフェノール及びN,N'-ジメチル-p-ニトロソアニリン等のニトロソ化合物;フェノチアジン、メチレンブルー及び2-メルカプトベンズイミダゾール等の硫黄含有化合物;N,N'-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N'-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、4-ヒドロキシジフェニルアミン及びアミノフェノールなどのアミン類;ヒドロキシキノリン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン及びヒドロキノンモノメチルエーテル等のキノン化合物;メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、カテコール、3-s-ブチルカテコール及び2,2-メチレンビス-(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)等のフェノール化合物;N-ヒドロキシフタールイミド等のイミド類;シクロヘキサンオキシム及びp-キノンジオキシム等のオキシム類;並びにジアルキルチオジプロピオネート類も挙げられる。
【0202】
更なる局面では、重合禁止剤は、ヒドロキシナフタレンであってもよい。このヒドロキシナフタレンは、例えば、アルコキシナフトール、ジヒドロキシナフトール又はジアルコキシナフトールであってもよい。ある局面では、ヒドロキシナフタレンは、4-メトキシ-1-ナフトールである。更なる局面では、少なくとも1種類の重合禁止剤が、アルキルヒドロキノンを含む。アルキルヒドロキノンは、例えば、2-t-ブチルヒドロキノン又は2,6-ジ-tブチルヒドロキノンであってもよい。ある局面では、アルキルヒドロキノンは、2-t-ブチルヒドロキノンである。アルキル基は、例えば、炭素数1ないし12の置換又は非置換アルキル基を含む場合がある。ある局面では、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルから選択される。更なる局面では、アルキル基は、第3級アルキル基である。
【0203】
F. プラスチック成型体の調製
プラスチック成型体は、本発明のアクリロイル化合物(例えば、式(A1-1)又は(A1-2)により表される化合物を含む原料、以下において「原料A1」と呼ぶ;式(B1-1)又は(B1-2)により表される化合物を含む原料、以下において「原料B1」と呼ぶ;
式(B2-1)又は(B2-2)により表される化合物を含む原料、以下において「原料B2」と呼ぶ)を、単体で、又は1種類以上の本明細書に記載するコモノマー若しくは原料と共に重合することにより調製できる。
【0204】
共重合に使用可能な重合性原料としては、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリル基又はビニル基等の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有するモノマーを用いることができる。
【0205】
このようなモノマーの好ましい例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ビニル安息香酸、メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールビス(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート、両端に(メタ)アクリルオキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン,一端に(メタ)アクリルオキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン及び側鎖に複数の(メタ)アクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン等の多官能性(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピルアクリルアミド、N,N-ジイソプロピルアクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチルアクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピぺリジン、N-アクリロイルピロリジン及びN-メチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、芳香族ビニルモノマー類、例えば、スチレン、α-メチルスチレン及びビニルピリジン;マレイミド類;N-ビニルピロリドン等の複素環式ビニルモノマー類;3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3-[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3-[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリレート、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]メチル(メタ)アクリレート、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]スチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]スチレン、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]スチレン、一端に(メタ)アクリルオキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン、並びに下記の式(C1-1)ないし(C6-1)及び(C1-2)ないし(C6-2)により表される化合物が挙げられる。
【0206】
【化31】

【0207】
【化32】

【0208】
【化33】

【0209】
【化34】

【0210】
本発明での使用に適した他のシリコン含有成分としては、ポリシロキサン基、ポリアルキレンエーテル基、ジイソシアネート基、ポリフッ素化炭化水素基、ポリフッ素化エーテル基及び多糖基を含有するマクロマーといった、国際公開公報第WO 96/31792号に記載される成分が挙げられる。米国特許第5,321,108号;同第5,387,662号及び同第5,539,016号には、極性を有するフッ素化グラフト又は2つのフッ素で置換された末端炭素原子に結合した水素原子を有する側鎖を有するポリシロキサンが記載されている。米国特許出願第2002/0016383号には、エーテル及びシロキサン結合を含有する親水性のシロキサニルメタクリレート並びにポリエーテル及びポリシロキサニル基を含有する架橋性モノマーが記載されている。
【0211】
ある態様では、コモノマーとして、(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、化合物C1-1、C2-1、C3-1、C4-1、C5-1、C6-1、C1-2、C2-2、C3-2、C4-2、C5-2、C6-2、ポリシロキサンマクロマー、エーテル及びシロキサン結合を含む親水性シロキサニルメタクリレート並びにこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0212】
このようなモノマーの更に好ましい例としては、2-プロペン酸, 2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ] プロピルエステル(SiGMA);末端にモノメタクリロオキシプロピルとモノ-n-ブチルを有するポリジメチルシロキサン(mPDMS;分子量(MW)800-1000(数平均分子量(Mn)));ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(acPDMS)(MW 1000及び2000, それぞれ、Gelest製及びDegussa製のアクリル化ポリジメチルシロキサン);Gelest製の末端にメタクリロオキシプロピルを有するポリジメチルシロキサン(MW 550-700)(maPDMS);並びに末端にモノ-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルとモノ-ブチルを有するポリジメチルシロキサン(mPDMS-OH)が挙げられる。
【0213】
プラスチック成型体、特に眼用レンズの調製のためには、前記重合混合物に、更なる原料を含ませてもよい。例えば、分子内に複数の重合性炭素−炭素不飽和結合を有する架橋剤を含ませることで、良好な機械的特性と消毒液や洗浄液に対する良好な耐久性を得ることができる。共重合されるモノマーの総量に対する架橋剤の割合は、好ましくは、約0.01重量%以上であり、より好ましくは、約0.05重量%ないし約15重量%、更により好ましくは、約0.1重量%ないし約5重量%である。
【0214】
良好な酸素透過性と良好な親水性を同時に得るという観点から、本発明のプラスチック成型体の製造用の原料の調製後のプラスチック成型体中での割合は、他のシロキサニル基含有重合性原料が共重合されていない場合には、好ましくは、約30重量%ないし約100重量%、より好ましくは、約50重量%ないし約99重量%、更により好ましくは、約60重量%ないし約95重量%である。1種類以上の他のシロキサニル基含有重合性原料が共重合されている場合には、本発明の原料と前記他のシロキサニル基含有重合性原料の総量の調製後のプラスチック成型体中での割合は、好ましくは、約30重量%ないし約100重量%、より好ましくは、約50重量%ないし約99重量%、更により好ましくは、約60重量%ないし約95重量%である。
【0215】
前記プラスチック成型体は、更なる成分を含んでいてもよく、これらに限定されないが、UV吸収剤、着色剤、色素剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬成分及び栄養補助成分、相溶化成分(compatibilizing component)、抗菌化合物、離型剤及びこれらの組み合せ等を含んでいてもよい。前述のいずれも、非反応性の形態、重合可能な形態、そして/又は共重合された形態で組み込むことができる。
【0216】
プラスチック成型体の調製のための(共)重合においては、容易に重合を行うために、過酸化物及びアゾ化合物に代表される熱重合開始剤又は光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合、好適な反応温度で最大の分解特性を示す熱重合開始剤を選択する。一般的に、アゾ開始剤及び過酸化物開始剤は、10時間の半減期を有し、約40℃ないし約120℃の温度が好ましい。光開始剤の例としては、カルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化化合物及び金属塩が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で又は組み合わせで用いることができる。重合開始剤の量は、重合混合物に対して約1重量%以下となるであろう。
【0217】
本発明のプラスチック成型体の調製のための(共)重合においては、重合溶媒を用いることができる。この溶媒としては、種々の有機溶媒及び無機溶媒を用いることができる。この溶媒の例としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリエチレングリコールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル及びポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル及び安息香酸メチル等のエステル系溶媒;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン及びノルマルオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン及びエチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;並びに石油系溶媒。これらの溶媒は、個別に用いてもよく、又はこれらの溶媒の複数を組み合わせて用いてもよい。
【0218】
本発明のプラスチック成型体製造用の原料の重合方法、及びプラスチックの成形方法については、既知の方法を用いることができる。例えば、原料を一度重合させて、丸い棒又はプレートの形状に成形し、次いで、得られた丸い棒又はプレートを切断などにより所望の形状へ加工する方法、モールド重合法及びスピンキャスト重合法を用いることができる。
【0219】
例として、本発明のプラスチック成型体を製造するための原料を含有する原料組成物をモールド重合法により重合させることで眼用レンズを作製する方法について説明する。
【0220】
最初に、2つのモールドパーツ間の所定の形状を有する空隙を原料組成物で満たし、光重合又は熱重合を行って、前記組成物を、モールド間の空隙の形状へ成形する。モールドは、樹脂製、ガラス製、セラミック製、金属製等である。光重合の場合、光透過性の原料が用いられ、通常は樹脂又はガラスが用いられる。眼用レンズを作製する場合、相互に向かい合う2つのモールドパーツの間に空隙が形成され、この空隙が、原料組成物で充填される。空隙の形状と原料組成物の特性にもよるが、眼用レンズに所定の厚さを与えて、空隙間に充填された原料組成物の漏出を防ぐため、ガスケットを用いてもよい。次いで、空隙に充填された原料組成物を含むモールドに、紫外線、可視光線又はこれらの組合せ等の化学線を照射するか、又は前記モールドをオーブン若しくは恒温槽内に静置して原料組成物を加熱することで重合を行う。前記の2種類の重合方法は、組み合わせで用いてもよい。即ち、光重合の後に熱重合を行ってもよく、熱重合の後に光重合を行ってもよい。光重合の態様では、水銀ランプ又はUVランプ(例えば、東芝製のFL15BL)から発せられる光線等の紫外線を含む光線を短時間(通常は1時間以内)照射する。熱重合を行う場合、眼用レンズの光学的均一性、高い品質及び高い再現性の観点から、前記組成物が、数時間ないし数十時間の時間をかけて、ゆっくりと室温から約60℃ないし約200℃の温度へと加熱される条件を用いることが好ましい。
【0221】
本発明の原料から作製されたプラスチック成型体は、好ましくは、130°以下、より好ましくは、120°以下、更により好ましくは、100°以下の動的接触角(前進時、浸漬速度0.1 mm/秒)を有することが好ましい。含水率は約3%ないし約50%が好ましく、約5%ないし約50%がより好ましく、約7%ないし約50%が更により好ましい。前記眼用レンズがコンタクトレンズとして使用される場合の着用者の観点から、酸素透過性が高い程好ましい。酸素透過性については、酸素透過係数[×10-11 (cm2/秒) mLO2 / (mL・hPa)]が約50以上であることが好ましく、約60以上がより好ましく、約65以上が更により好ましい。引張弾性率は、約0.01ないし約30 MPaが好ましく、約0.1ないし約7 MPaがより好ましい。引張伸びは50%以上が好ましく、100%以上がより好ましい。引張伸びが大きいとプラスチック成型体が破れにくくなるため、プラスチック成型体は、高い引張伸びを有していることが好ましい。これらの特性は、国際公開公報第WO 03/022321号に開示される試験方法を用いて測定できる。
【0222】
このプラスチック成型体は、ドラッグデリバリーに用いられる薬物担体や、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜及び眼鏡レンズ等の眼用レンズとして好適である。これらのうち、前記プラスチック成型体は、コンタクトレンズ、眼内レンズ及び人工角膜などの眼用レンズに特に適している。これらのうち、前記プラスチック成型体は、眼用レンズ、特にコンタクトレンズに適している。
【0223】
G. 実験
下記の実施例は、当業者に、本出願の請求項に係る化合物、組成物、製品、装置及び/又は方法を作製して評価する方法について完全な開示と記載を提供するために示されるものであり、単に本発明の例示として意図されているに過ぎず、本発明者らが彼らの発明と見なす範囲を制限することを意図するものではない。数値(例えば、量、温度等)については、正確を期するために尽力したが、誤差や偏差も考慮すべきである。特に他に表示のない限り、部(parts)は重量部であり、温度は℃であるか又は周囲温度であり、圧力は、大気圧であるか又はその前後である。
【0224】
1.アクリロイル官能化化合物の合成
まず、アクリル酸又は(メタ)アクリル酸とアリルグリシジルエーテルを反応させて下記式(A2-1)または(A2-2)で表される化合物を合成する(工程#1)。
【0225】
【化35】

【0226】
(式中、R1は水素又はメチルを表す)。
【0227】
工程#1においては、反応液が合成反応中にゲル化、固化してしまわないように、重合禁止剤やラジカル捕捉剤を加えるのが好ましい。
【0228】
重合禁止剤の好適な例としてはハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4-t-ブチルカテコール等のフェノール化合物及びN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム等を挙げることができる。また、重合禁止剤の量は(メタ)アクリル酸量に対して0.0005ないし30モル%が好ましく、0.001ないし25モル%がより好ましく、0.005ないし20モル%が最も好ましい。
【0229】
ラジカル捕捉剤の好適な例としてはヨウ素、酸素、一酸化窒素、ヨウ化水素、塩化鉄(III)、アントラセン、α,α'-ジフェニルピクリルヒドラジル等が挙げられる。1種類以上の重合禁止剤および1種類以上のラジカル捕捉剤の併用も好ましい。
【0230】
工程#1におけるラジカル捕捉剤の使用量は、ラジカル捕捉剤が固体、液体の場合は出発原料の(メタ)アクリル酸の重量に対して5ないし50000 ppmが好ましく、50ないし40000 ppmがより好ましく、100ないし30000 ppmが最も好ましい。ラジカル捕捉剤が気体の場合は、捕捉剤を0.1ないし100%含む気体を反応液中にバブリングする、もしくは該気体雰囲気下で合成反応を行うのが好ましい。捕捉剤気体として酸素を用いる場合の酸素濃度は0.1ないし100%が好ましく、防爆と捕捉剤としての効果のバランスから0.1ないし80%がより好ましく、0.1ないし60%が更により好ましい。空気は酸素を含むことから、空気バブリング下もしくは空気雰囲気下で反応を行ってもよい。
【0231】
工程#1に用いられる(メタ)アクリル酸の量はアリルグリシジルエーテルに対して1ないし20当量が好ましく、2ないし12当量がより好ましく、4ないし10当量が更により好ましい。工程#1では反応を速やかに進行させるために触媒を加えてもよい。用いる触媒の例としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ(土類)金属水酸化物;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン類;炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩;(メタ)アクリル酸リチウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸カルシウム等のメタクリル酸のアルカリ(土類)金属塩等が挙げられる。これらの触媒の添加量は、アリルグリシジルエーテルに対して、0.01ないし50モル%が好ましく、0.05ないし40モル%がより好ましく、0.1ないし30モル%が更により好ましい。
【0232】
工程#1における反応温度は50ないし180℃が好ましく、60ないし170℃がより好ましく、70ないし160℃が更により好ましい。
【0233】
工程#1に用いたラジカル捕捉剤が固体又は液体の場合、製造したシロキサニルモノマーを用いて重合を行うときに影響を及ぼす恐れがあることから、反応終了後に適切な方法で除去されることが好ましい。
【0234】
次に水洗及び分液操作を行うことにより、水溶性の出発原料および不純物を除くことが好ましい。水洗は、反応混合物を水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液又は炭酸水素ナトリウム水溶液等の塩基性水溶液で数回行い、その後、各種緩衝液、塩化ナトリウム水溶液等の中性の水溶液又は水で洗浄することが好ましい。
【0235】
工程#1で得られた式(A2-1)または(A2-2)で表される化合物は、カラムクロマトグラフィー法や、減圧蒸留法で精製することが好ましいが、減圧蒸留法がより好ましい。カラムクロマトグラフィーは多孔質粒子を用いて行うことが好ましい。本明細書における多孔質粒子とは表面に多数の細孔を有する粒子をさす。具体例としてはシリカゲル、活性炭、アルミナ、ゼオライト、モレキュラーシーブ等が挙げられる。多孔質粒子は1種類で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。精製を行う際には溶媒を用いてもよい。溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の各種アルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の各種芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィン等の各種脂肪族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の各種ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル等の各種エステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル等の各種エーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ジメチルスルホキシド等の各種非プロトン性極性溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン系溶媒;及びフロン系溶媒等である。これらの溶媒は1種類で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0236】
式(A2-1)または(A2-2)で表される化合物(ただし式中のXは水素である。)のヒドロキシル基は、適当な試薬と反応させれば、加水分解性基Xで保護することができ、これによって、式(A1-1)または(A1-2)で表される化合物が得られる(工程#2)。
【0237】
工程#2で使用できる試薬としては、ジヒドロピラン、ハロゲン化アルキル、トシルオキシアルカン、ジアゾアルカン、ジアルキル硫酸等のアルキル化剤;各種酸無水物、各種酸ハライド等のアシル化剤;ハロゲン化シラン、シラザン等のシリル化剤が好適である。
【実施例】
【0238】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【0239】
a. 分析
本実施例における各種測定は、以下に示す方法で行った:
【0240】
ガスクロマトグラフィー(GC)は、以下の条件で行った:
装置と各種パラメータ:装置:ヒューレットパッカード製GC6890型又はこの同等物。検出器:水素炎イオン化検出器(FID)。カラム:Restek DB-1HT (30 m x 0.25 mm x 0.1 μm又はこの均等物)。キャリアガス:ヘリウム。一定流量:1.0 mL/分。サンプル注入量:2.0 μL。スプリット比:30:1。注入口温度:300℃。検出器温度:350℃。オートサンプラー洗浄溶媒:2-プロパノール。注入口セプタム:Alltech 7/16" HT-X-11又はこの均等物。温度プログラム:開始温度100℃。開始時間:2分間。勾配:15℃/分;終了時温度:200℃;保持時間:0分間。勾配:5℃/分;終了時温度:350℃;保持時間:0分。勾配:15℃/分;終了時温度:400℃;保持時間:15分。サンプル調製:約50μL のサンプルを 1.0 mL の2-プロパノールに溶解する。サンプルと2-プロパノールはGC用バイアル瓶に直接入れて混合する。純度の計算:純度は、GCクロマトグラムのピーク面積から計算した。
【0241】
GC-MS分析は、GCを上記の条件で行い、JOEL製の質量分析器JMS-DX303を用いることで行った。
【0242】
以下の条件でGPCを行った:カラム:昭光通商社製のShodex GPC K-801及びShodex GPC K-802(各カラムは、8.0 mmの内径と30 cmの長さを有する)。これら2つのカラムを連結させた。溶媒:クロロホルム。カラム温度:40℃。流速:1.0 mL/分。装置:東ソー製のHLC-8022GPC(UV検出器と別の屈折計を組み合わせた一体型装置)。
【0243】
MALDI-TOFMS:島津製作所製のAXIMA-CFRプラスを用いた。
【0244】
理化精機工業社製の製科研式フィルム酸素透過率計を用いて、試料の酸素透過係数を測定した。フィルム状の試料の酸素透過係数は、35℃にて水中で測定した(温度調節器は、図面に非開示)。3 mmの8角形MAGMIXマグネチックスターラー(三田村理研工業株式会社)を用いて、800 rpmの速度で撹拌を行った。異なる厚さを有する4種類のフィルムサンプルを調製した(0.1 mm、0.2 mm、0.3 mm及び0.4 mm;直径16 mm)。これらの異なる厚さを有する4種類のサンプルを測定して、各例におけるPmを決定した(図1参照);使用したダイヤル式縦型ゲージ(dial upright gauge)の目盛りは、0.001 mmであった;約±0.003 mmの精度。このサンプルの一つを、電極に接続した。0.5 NのKCl(水溶液)を、電解液として電極に注入した(図2ないし4参照)。電極を、蒸留水中に設置した(pH = 7、体積 = 800ml)。最初に、零点補正を行うため、窒素バブリング下での電流(流速 = 100mL/分;平衡に達した後に電流iを測定する)を測定した。次いで、酸素バブリング下での電流を測定した。以下の式により、Rを計算した:
【0245】
R = (Ps x N x F xA)/i[cm2秒mmHg/mL (STP)]
【0246】
(ここで、Ps = 760 mmHg(大気圧)、N = 4(電極での反応に関与する電子数)、F = 96500クーロン/mol(ファラデー係数)、A = 電極の面積(cm2)、i = 測定電流(uA))。Rは、定常(非比例)部分を伴うので、Pmの決定には、複数の測定とプロッティングが必要である(図1参照)。R対サンプルの厚さをプロットした。傾きの逆数が、酸素透過係数(Pm)である。
【0247】
酸素透過試験において、材料の酸素が透過する面積が、サンプルの一方の表面と他方の表面において異なる場合、典型的には、エッジ補正が考慮される。本測定方法では、フィルムサンプルの隣りに設置されるリング部の開口の面積(図3の左上部を参照)は、白金電極の面積と同じであるため、エッジ補正は不要である。
【0248】
含水率:約10 mm x 10 mm x 0.2 mmのサイズのフィルム状のサンプルを用いた。サンプルを、真空乾燥機中で40℃にて16時間かけて乾燥させ、このサンプルの重量(Wd)を測定した。その後、得られたサンプルをサーモスタット恒温槽中の40℃の純水に一晩浸漬させ、表面の水分をキムワイプでふき取って、重量(Ww)を測定した。含水率は、以下の式により計算した:
【0249】
含水率(%)= 100 x (Ww-Wd)/Ww
【0250】
引張試験:約19.5 mm x 15 mm x 0.2 mmのサイズのフィルム状のサンプルを用いた。引張弾性率は、ORIENTEC社製のTensilon RTM-100型を用いて測定した。引張速度は、100 mm/分で、グリップ間の距離は、5 mmであった。
【0251】
プラスチック成型体の光学的不均一性:コンタクトレンズの形状に成形したサンプルに、写真フィルム用プロジェクターを用いて光を照射し、スクリーン上にその像を投影させ、スクリーン上に投影された像を肉眼で観察して、光学的不均一度を評価した。評価は、以下の3段階に分類することで行った:
A: 歪み又は濁りは、全く観察されない。
B: 歪み又は濁りは、殆ど観察されない。
C: 歪み又は濁りが、観察される。
【0252】
b. 参考例1
1L三口丸底フラスコにメタクリル酸(241.2 g)、アリルグリシジルエーテル(80.3 g)、メタクリル酸ナトリウム(22.7 g)、4-メトキシフェノール(1.14 g)を投入し、メカニカルスターラーで撹拌した。これをオイルバスに浸漬し、100℃に昇温し、ガスクロマトグラフィー(GC)分析で反応を追跡しながら4時間加熱撹拌した。空冷後、トルエン(300 mL)を加えて1L分液ロートに移した。この混合物を、0.5N水酸化ナトリウム水溶液(300 mL)で7回、飽和食塩水(300mL)で3回、この順に分液洗浄した。有機層を採取し、無水硫酸ナトリウムを加えて一晩乾燥した。ろ過により固形分を除去し、濾液を1Lナス型フラスコに回収し、溶媒をエバポレートした。これを500 mLナス型フラスコに移し、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(0.23 g)を加え、更に濃縮した(収量:226.74 g)。これにN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウムを(0.23 g)加え、減圧蒸留することで、下記式(F1-1)又は(F1-2)で表される化合物を含むことを特徴とするプラスチック成型体製造用の原料を得た。
【0253】
【化36】

【0254】
c. 実施例1
窒素ラインにつないだジムロート冷却管を連結した200 mL三口丸底フラスコに参考例1で得た式(F1-1)および(F1-2)で表される化合物の混合物(50 g)、ヘキサメチルジシラザン(24.34 g)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(0.161 g)、サッカリン(0.148 g)を投入し、オイルバスに浸漬し、マグネチックスターラーで撹拌しながら100℃に加熱した。昇温中、アンモニアガスが発生した。45分後加熱撹拌を止め、室温に空冷し、その後、反応溶液をいったんろ過して固形分を除いた。これに2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(0.32 g)とN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム(0.32 g)を加え、減圧蒸留することで、下記式(F2-1)又は(F2-2)で表される化合物を含むことを特徴とするプラスチック成型体製造用原料を得た。GC分析の結果、この化合物の含有率は97%であった。
【0255】
【化37】

【0256】
d. 参考例2
1L三口丸底フラスコに200 mL滴下ロートと三方コックを接続し、三方コックは真空ポンプと窒素ラインに接続した。真空ポンプで器具内を減圧しながらヒートガンを用いて器具を加熱した後、窒素を吹き込み常圧に戻した。この操作を3回繰り返し、器具内の水分を除去した。このフラスコにヘキサメチルシクロトリシロキサン(22.25 g、0.1 mol)とトルエン(25.7 mL)を投入し、マグネチックスターラーで撹拌した。ヘキサメチルシクロトリシロキサンが完全に溶解した後、フラスコをウォーターバス(室温)に浸漬し、1.6 mol/Lブチルリチウム/ヘキサン溶液169 ml(0.27 mol)を34分間かけて滴下し、1時間室温で撹拌した。フラスコを氷・食塩浴で冷却し、無水テトラヒドロフラン(165 mL)にヘキサメチルシクロトリシロキサン(66.75 g、0.3 mol)を溶解し、この溶液を60分かけて滴下した。冷却した状態で150分間、その後室温で45分間撹拌した。ジメチルクロロシラン(39 mL)をテトラヒドロフラン(100 mL)に溶解し、この溶液を45分間かけて滴下し、その後1時間撹拌した。この溶液を約400 mLの水で4回(計約1.6 Lの水)分液洗浄し、有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。ひだ折り濾紙ろ過にて固形分を除去し、濾液をナス型フラスコに回収して溶媒をエバポレートした。セミミクロ精留装置(相互理化学硝子製作所製、カタログ番号2004)を用いて精製し、下記式(F3)で表される化合物を得た(GC純度99%)。
【0257】
【化38】

【0258】
e. 実施例2
200 mLナスフラスコに実施例1で得た式(F2-1)および(F2-2)で表される化合物の混合物(3.96 g)、トルエン(4 mL)、5%白金担持活性炭触媒(和光純薬工業、308 mg)及びマグネットバーを入れ、上部に塩化カルシウム管を接続したジムロート冷却管を接続した。冷却水を流し、窒素雰囲気下、80℃まで撹拌しながら昇温させた。80℃に到達したら、参考例2で得た式(F3)で表される化合物(4.0 g)をパスツールピペットでナスフラスコ内の反応液に少しずつ滴下していった。反応終了後、触媒を取り除くためにセライト濾過を行った。簡潔に述べると、桐山ロートに濾紙を敷き、セライト-535をロート半分の深さまで入れ、その上から反応液をヘキサンで流しながら減圧濾過を行った。濾過後、ロータリーエバポレータにて濃縮した(水浴:40℃)。濃縮後の反応液を広口の(100 mL)ナスフラスコに移し、重合禁止剤としてN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウムを反応液の約0.1重量%添加した。次いで、マグネチックバーを入れてスタンドに固定した。常温で真空ポンプで吸引しはじめ、泡がほとんど出なくなるまで引き続けた。真空ポンプの上部弁を全開にしたら、反応液の入ったナスフラスコをオイルバスに浸し、140℃に昇温した。140℃になった時点から1時間撹拌しながら真空ポンプで吸引し続けて低沸点物を除去した。下記式(F4-1)または(F4-2)で表される化合物を含むことを特徴とするプラスチック成型体製造用原料を得た。GC分析の結果、式(F4-1)で表される化合物と式(F4-2)で表される化合物の合計が全体に占める割合(純度)は96%であった。GCで観測されたピークの数は全部で18であり、得られた原料には不純物が非常に少なかった。
【0259】
【化39】

【0260】
f. 実施例3
式(F4-1)または(F4-2)で表される化合物を含むことを特徴とするプラスチック成型体製造用原料(6.34 g)に対し、メタノール(19.02 g)と酢酸(3.17 g)を混合し、均一になるように軽く振り混ぜた後、常温で30分間放置した。その後、メタノールをロータリーエバポレータにて除去した。
【0261】
濃縮液(6.34 g)にヘキサン(25.36 g)を混合した後、分液ロートを用いて純水(25.36 g)で3回洗浄を行った。次に同量の飽和炭酸水素ナトリウム溶液(25.36 g)で2回洗浄し、最後に同量の純水(25.36 g)で3回洗浄を行った。ヘキサン層のみをエルレンマイアーフラスコにとり、無水硫酸ナトリウム上で脱水し、ロータリーエバポレータで濃縮した。
【0262】
次に濃縮後の生成物のうち2.0 gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。シリカゲル(9 g)を使用し、展開溶媒はヘキサン:酢酸エチルの混合溶媒を用いて行うことで、下記式(F5-1)または(F5-2)で表される化合物を含むことを特徴とするプラスチック成型体製造用原料を得た。カラムクロマトグラフィーの収率は68%であった。GC分析の結果、式(F5-1)で表される化合物と式(F5-2)で表される化合物の合計が全体に占める割合(純度)は96%であった。GCで観測されたピークの数は全部で15であり、得られた原料には不純物数が非常に少なかった。
【0263】
【化40】

【0264】
g. 参考例3
1L三口丸底フラスコに200 mL滴下ロートと三方コックを接続し、三方コックは真空ポンプと窒素ラインに接続した。真空ポンプで器具内を減圧しながらヒートガンを用いて器具を加熱した後、窒素を吹き込み常圧に戻した。この操作を3回繰り返し、器具内の水分を除去した。これにヘキサメチルシクロトリシロキサン(22.25 g、0.1 mol)とトルエン(25.7 mL)を投入し、マグネチックスターラーで撹拌した。ヘキサメチルシクロトリシロキサンが完全に溶解した後、フラスコをウォーターバス(室温)に浸漬し、1.6 mol/Lブチルのリチウム/ヘキサン溶液169 ml(0.27 mol)を35分間かけて滴下し、1時間室温で撹拌した。フラスコを氷・食塩浴で冷却し、無水テトラヒドロフラン(165 mL)にヘキサメチルシクロトリシロキサン(133.5 g、0.6 mol)を溶解し、この溶液を60分かけて滴下した。冷却した状態で150分間、その後室温で45分間撹拌した。ジメチルクロロシラン(39 mL)をテトラヒドロフラン(100 mL)に溶解し、この溶液を45分間かけて滴下し、その後1時間撹拌した。この溶液を約400 mLの水で4回(計約1.6 Lの水)で分液洗浄し、有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。ひだ折り濾紙ろ過にて固形分を除去し、濾液をナス型フラスコに回収し、溶媒をエバポレートした。セミミクロ精留装置(相互理化学硝子製作所製、カタログ番号2004)を用いて精製し、下記式(F6)で表される化合物を得た(GC純度98%)。
【0265】
【化41】

【0266】
h. 実施例4
式(F3)で表される化合物(4.0 g)の代わりに、参考例3で得た式(F6)で表される化合物(5.7 g)を使用した以外は実施例2と同様に行って、下記式(F7-1)または(F7-2)で表される化合物を含むことを特徴とするプラスチック成型体製造用原料を得た。GC分析の結果、式(F7-1)で表される化合物と式(F7-2)で表される化合物の合計が全体に占める割合(純度)は95%であった。GCで観測されたピークの数は全部で19であり、得られた原料には不純物数が非常に少なかった。
【0267】
【化42】

【0268】
i. 実施例5
式(F4-1)または(F4-2)で表される化合物を含むことを特徴とするプラスチック成型体製造用原料(6.34 g)の代わりに、実施例4で得た式(F7-1)または(F7-2)で表される化合物を含むことを特徴とする成型体製造用原料(6.34 g)を使用した以外は実施例3と同様に行って、下記式(F8-1)または(F8-2)で表される化合物を含むことを特徴とするプラスチック成型体製造用原料を得た。カラムクロマトグラフィーの収率は70%であった。GC分析の結果、式(F8-1)で表される化合物と式(F8-2)で表される化合物の合計が全体に占める割合(純度)は95%であった。GCで観測されたピークの数は全部で16であり、得られた原料には不純物数が非常に少なかった。
【0269】
【化43】

【0270】
j. 参考例4
ジムロート冷却管と滴下ロートを接続した200 mL三口丸底フラスコに、アリルグリシジルエーテル(8.47 g)、5%白金担持活性炭触媒(和光純薬工業、153 mg)、トルエン(20 mL)を加え、窒素雰囲気下、オイルバスで80℃に加熱した。その溶液に前記式(F3)で表される化合物(20 g)を滴下した。反応液を加熱しながらマグネチックスターラーで90分間撹拌した。空冷後、メンブレンフィルター(1 μm)で加圧ろ過を行い、触媒を除いた。濾液をエバポレートし、50 mLナス型フラスコに移し、60℃にて加熱撹拌しながら真空ポンプで吸引し、低沸点成分を除去し、下記式(F9)で表される化合物を得た。GC分析の結果、化合物の純度は97.5%であった。
【0271】
【化44】

【0272】
k. 比較例1
温度計とジムロート冷却管を付けた50 mL三口丸底フラスコに、参考例4で得た式(F9)で表される化合物(6.57 g)、メタクリル酸ナトリウム(0.81 g)、メタクリル酸(8.58 g)、4-メトキシフェノール(0.0207 g)、水(0.09 g)を投入し、100℃のオイルバスに浸漬し、マグネチックスターラーで4時間撹拌した。反応溶液にヘキサン(15 mL)を加え1N水酸化ナトリウム水溶液(30 mL)で3回分液洗浄した。有機層を採取し、次いで2.45重量%食塩水(30 mL)で3回分液洗浄した。有機層に4-t-ブチルカテコール(5 mg)を添加し、無水硫酸ナトリウムを加え乾燥した。
【0273】
ろ過で固形分を除去し、濾液をエバポレートした。次に濃縮後の生成物のうち2.0 gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。シリカゲル(9 g)を使用し、展開溶媒はヘキサン:酢酸エチルの混合溶媒を用いて行った。下記式(F5-1)または(F5-2)で表される化合物を含むことを特徴とするプラスチック成型体製造用原料を得た。カラムクロマトグラフィーの収率は69%であった。GC分析の結果、式(F5-1)で表される化合物と式(F5-2)で表される化合物の合計が全体に占める割合(純度)は95%であった。GCで観測されたピークの数は全部で35であり、得られた原料には不純物数が非常に多かった。
【0274】
【化45】

【0275】
l. 実施例6
実施例1で得た式(F2-1)または(F2-2)で表される化合物を含むことを特徴とするプラスチック成型体製造用原料(以下、原料F2)(1 g)と下記式(F10)で表される化合物(平均分子量1000、1 g)を混合したところ完全に相溶し透明であった。原料F2はシロキサニルモノマーとの親和性に優れていた。
【0276】
【化46】

【0277】
m. 比較例2
参考例1で得た式(F1-1)または(F1-2)で表される化合物を含むことを特徴とするプラスチック成型体製造用原料(以下、原料F1)(1 g)と前記式(F10)で表される化合物(平均分子量1000、1.0 g)を混合したところ相分離した。原料F1はシロキサニルモノマーとの親和性に劣っていた。
【0278】
n. 比較例3
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(1 g)と前記式(F10)で表される化合物(平均分子量:1000、1 g)を混合したところ相分離した。2-ヒドロキシエチルメタクリレートはシロキサニルモノマーとの親和性に劣っていた。
【0279】
以下の実施例において、ガスクロマトグラフィー(GC)を、以下の条件で行った:装置と各種パラメータ:装置:ヒューレットパッカード製GC6890型又はこの均等物。検出器:水素炎イオン化検出器(FID)。カラム:Agilent Technologies製/J&W Scientific Ultra-2(25 m x 0.32 mm内径)。キャリアガス:ヘリウム。一定圧力:110 kPa。サンプル注入量:2.0 μL。スプリット比:50:1。注入口温度:325℃。検出器温度:350℃。オートサンプラー洗浄溶媒:2-プロパノール。注入口セプタム:Alltech 7/16" HT-X-11又はこの均等物。温度プログラム:開始温度:100℃。開始時間:1分間。勾配:10℃/分;終了時温度:320℃;保持時間:17分間。サンプル調製:約50μL のサンプルを 1.0 mL の2-プロパノールに溶解する。サンプルと2-プロパノールはGC用バイアル瓶に直接入れて混合する。純度の計算:純度は、GCクロマトグラムのピーク面積から計算した。
【0280】
o. 実施例11
50 mLのナス型フラスコに、上記の式(F1-1)及び(F1-2)により表される化合物の混合物0.5 g(3.0 mmol)、19.6 mgの5% Pt/C触媒及び1 mLのトルエンを添加し、この混合物を窒素雰囲気下で撹拌しながらオイルバス中にフラスコを浸漬した。オイルバスを60℃に昇温させ、上記の式(F3)で表される化合物1.03 g(2.5 mmol)を滴下し、加熱しながら60分間撹拌すると、下記式(F5-1)及び(F5-2)で表されるシロキサニルモノマーの所望の混合物が得られた。反応終了時に、この所望の生成物の純度をガスクロマトグラフィー(GC)で測定した。出発原料が残存する場合、この所望の生成物のGC純度は、出発原料のピーク面積を除外することにより計算した。
【0281】
【化47】

【0282】
p. 実施例12ないし20及び31ないし35
式(F1-1)及び(F1-2)で表される化合物の混合物を表1に示す量で用いて、反応雰囲気を表1に示すものに変更した以外は実施例11と同様の工程を行った。所望の生成物のGC純度を表1に示す。表1において、Xは、使用した上記式(F1-1)及び(F1-2)の混合物のモル数を表し、Yは、使用した上記式(F3)で表す化合物のモル数を表す。
【0283】
【表1】

【0284】
q. 実施例21ないし27及び36ないし39
上記式(F1-1)及び(F1-2)で表される化合物の混合物の代わりに、上記式(F2-1)及び(F2-2)で表される化合物の混合物を表2に示す量で用いて、反応時間を80℃に変更した以外は、実施例11と同様の工程を行って、所望の下記式(F4-1)及び(F4-2)で表されるシロキサニル化合物の混合物を得た。反応終了時に、この所望の生成物の純度をガスクロマトグラフィー(GC)で測定した。出発原料が残存する場合、この所望の生成物のGC純度は、出発原料のピーク面積を除外することにより計算した。
【0285】
【化48】

【0286】
所望の生成物のGC純度を表2に示す。表2において、Xは、使用した上記式(F2-1)及び(F2-2)の混合物のモル数を表し、Yは、使用した上記式(F3)で表す化合物のモル数を表す。
【0287】
【表2】

【0288】
r. 参考例7
1000 mL三口丸底フラスコに、参考例1で得た式(F1-1)および(F1-2)で表される化合物の混合物(0.5 mol)、トルエン(103 mL)、5%白金担持活性炭触媒(和光純薬工業、196 mg)及びマグネットバーを入れ、上部に塩化カルシウム管を接続したジムロート冷却管を接続した。冷却水を流し、窒素雰囲気下、60℃まで撹拌しながら昇温させた。60℃に到達したら、参考例3で得た式(F3)で表される化合物(0.25 mol)を滴下ロートで反応液に少しずつ滴下していった。反応終了後、触媒を取り除くためにセライト濾過を行った。簡潔に述べると、桐山ロートに濾紙を敷き、セライト-535をロート半分の深さまで入れ、その上から反応液をヘキサンで流しながら減圧濾過を行った。濾過後、ロータリーエバポレータにて濃縮することで(水浴:40℃)、下記式(F5-1)または(F5-2)で表される化合物を含むことを特徴とするシロキサニルモノマーを得た。
【0289】
s. 実施例28
参考例7で得たシロキサニルモノマー(粗生成物)200 gに、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(0.4 g)を添加して溶解した。UIC GmbH製のKDL5型薄膜蒸留装置(短経路蒸留装置)を用いて、以下の条件で薄膜蒸留を行い、溶液を蒸留物と非蒸留物(残留溶液)に分離した。
【0290】
非蒸留物(残留溶液)のGC分析を行った。その結果、上記式(F1-1)および(F1-2)で表される化合物の量は、0.1%未満であった。残留溶液の回収率は、理論値の92%であった。GPC分析では、重合生成物は検出されなかった。
【0291】
薄膜蒸留の条件:蒸留温度:100℃;冷却管内部温度:40℃;内圧:完全真空(0.02 mbar以下。数値は、装置に付属の真空計による表示に基づく);ワイパー速度:350 rpm;供給速度:毎時80 g。
【0292】
t. 実施例40
300 mLナス型フラスコに、シロキサニルモノマー(粗生成物)100 gに、重合禁止剤として2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(0.2 g)を添加して溶解した。このフラスコ内に回転子を入れ、フラスコをスタンドに固定して、液体窒素トラップを備えた真空ラインに接続した。殆ど泡が生じなくなるまで、室温で、真空ポンプによりフラスコをアスピレートした。この溶液を含むナス型フラスコを、真空ラインに接続したままオイルバスに浸漬し、温度を140℃まで上昇させた。140℃に達した時点から、真空ポンプによるアスピレーションを継続したまま、混合物を1時間撹拌することで、低沸点化合物を取り除いた。フラスコ内の溶液の粘性が顕著に増加したことから、重合が起こったと判断された。
【0293】
u. 実施例29
参考例7で得られた187 gのシロキサニルモノマー(粗生成物)にヘキサン(281 mL)を添加し、均一に溶解させた。これにメタノール(140 mL)と3重量%の食塩水(140 mL)を添加し、得られた混合物を分液ロートに移して、激しく撹拌した。次いで、この混合液を放置して再びヘキサン層を形成させた。再度、メタノール(140 mL)と3重量%の食塩水(140 mL)を添加し、同様の操作により再びヘキサン層を形成させた。この抽出操作を、全部で6回行った。溶媒をロータリー真空エバポレーターで除去した。得られたシロキサニルモノマーのGC分析では、上記式(F1-1)及び(F1-2)で表される化合物の残存率が0.92%であった。シロキサニルモノマーの回収率は、理論値の96%であった。GPC分析では、重合生成物は検出されなかった。
【0294】
v. 実施例41ないし54
50 mLのナス型フラスコに、上記式(F1-1)及び(F1-2)で表される化合物(純度98.9%)の混合物0.90 g(4.5 mmol)、触媒及び1 mLのテトラヒドロフランを添加し、窒素雰囲気下で混合物を撹拌しながら、このフラスコをオイルバス、水槽又は氷槽に浸漬した。次いで、上記式(F3)で表される化合物1.03 g(2.5 mmol)を滴下し、得られた混合物を撹拌すると、下記式(F5-1)及び(F5-2)で表されるシロキサニルモノマーの所望の混合物が得られた。溶媒をロータリー真空エバポレーターで除去し、シロキサニルモノマーの混合物にヘキサン(1.5 mL)を添加して、均一に溶解させた。これにメタノール(1.5 mL)と3重量%の食塩水(1.5 mL)を添加し、得られた混合物を分液ロートに移して、激しく撹拌した。次いで、この混合液を放置して再びヘキサン層を形成させた。再度、メタノール(1.5 mL)と3重量%の食塩水(1.5 mL)を添加し、同様の操作により再びヘキサン層を形成させた。式(F1-1)及び(F1-2)で表される化合物の混合物の残存率が、溶媒のピーク面積を除外することによるGC分析で0.3%未満になるまで、上記の抽出操作を繰り返した。溶媒をロータリー真空エバポレーターで取り除いた。所望の生成物のGC純度を表3に示す。表3では、触媒Aは、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を表し、触媒Bは、白金テトラビニルテトラメチルテトラシクロシロキサンを表し、そして触媒Cは、5%白金担持活性炭触媒(和光純薬工業)を表す。表3において、触媒の量(ppm)は、上記式(F3)で表す化合物の重量に対する白金の重量である。表3において、不純物1は、下記式(I1-1)及び(I1-2)で表される化合物の混合物であると推定される構造を有する化合物であり、不純物2は、下記式(I2-1)及び(I2-2)で表される化合物の混合物であると推定される構造を有する化合物である。表3では、F3は、上記式(F3)で表される化合物である。
【0295】
【化49】

【0296】
【表3】

【0297】
w. 実施例55ないし63
50 mLのナス型フラスコに、上記式(F1-1)及び(F1-2)で表される化合物(純度98.9%)の混合物、触媒として白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体50 ppm(上記式(F3)で表す化合物の重量に対する白金の重量)及び1 mLのテトラヒドロフランを添加し、窒素雰囲気下で混合物を撹拌しながら、このフラスコを氷水槽に浸漬した。次いで、上記式(F3)で表される化合物(純度99.7%)1.03 g(2.5 mmol)を滴下し、得られた混合物を0℃で120分間撹拌すると、上記式(F5-1)及び(F5-2)で表されるシロキサニルモノマーの所望の混合物が得られた。溶媒をロータリー真空エバポレーターで除去し、シロキサニルモノマーの混合物にヘキサン(1.5 mL)を添加して、均一に溶解させた。これにメタノール(1.5 mL)と3重量%の食塩水(1.5 mL)を添加し、得られた混合物を分液ロートに移して、激しく撹拌した。次いで、この混合液を放置して再びヘキサン層を形成させた。再度、メタノール(1.5 mL)と3重量%の食塩水(1.5 mL)を添加し、同様の操作により再びヘキサン層を形成させた。式(F1-1)及び(F1-2)で表される化合物の混合物の残存率が、溶媒のピーク面積を除外することによるGC分析で0.3%未満になるまで、上記の抽出操作を繰り返した。溶媒をロータリー真空エバポレーターで取り除いた。所望の生成物のGC純度を表4に示す。表4において、Xは、使用した上記式(F1-1)及び(F1-2)の混合物のモル数を表し、Yは、使用した上記式(F3)で表す化合物のモル数を表す。また、表4において、不純物1は、上記式(I1-1)及び(I1-2)で表される化合物の混合物であると推定される構造を有する化合物であり、不純物2は、上記式(I2-1)及び(I2-2)で表される化合物の混合物であると推定される構造を有する化合物である。
【0298】
【表4】

【0299】
x. 実施例64ないし91
50 mLのナス型フラスコに、上記式(F1-1)及び(F1-2)で表される化合物(純度99.4%)の混合物90 g(4.5 mmol)、触媒の白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体50 ppm(上記式(F3)で表す化合物の重量に対する白金の重量)及び1 mLの溶媒を添加し、窒素雰囲気下で混合物を撹拌しながら、このフラスコを氷水槽に浸漬した。次いで、上記式(F3)で表される化合物(純度99.7%)1.03 g(2.5 mmol)を滴下し、得られた混合物を0℃で撹拌すると、上記式(F5-1)及び(F5-2)で表されるシロキサニルモノマーの所望の混合物が得られた。溶媒をロータリー真空エバポレーターで除去し、シロキサニルモノマーの混合物にヘキサン(1.5 mL)を添加して、均一に溶解させた。これにメタノール(1.5 mL)と3重量%の食塩水(1.5 mL)を添加し、得られた混合物を分液ロートに移して、激しく撹拌した。次いで、この混合液を放置して再びヘキサン層を形成させた。再度、メタノール(1.5 mL)と3重量%の食塩水(1.5 mL)を添加し、同様の操作により再びヘキサン層を形成させた。式(F1-1)及び(F1-2)で表される化合物の混合物の残存率が、溶媒のピーク面積を除去することによるGC分析で0.3%未満になるまで、上記の抽出操作を繰り返した。溶媒をロータリー真空エバポレーターで取り除いた。所望の生成物のGC純度を表5に示す。表5では、不純物1は、上記式(I1-1)及び(I1-2)で表される化合物の混合物であると推定される構造を有する化合物であり、不純物2は、上記式(I2-1)及び(I2-2)で表される化合物の混合物であると推定される構造を有する化合物である。Log Powと純度の相関関係を図5に示す。
【0300】
【表5】

【0301】
y. 実施例92
20 L三口丸底フラスコに滴下ロートと三方コックを接続し、三方コックは真空ポンプと窒素ラインに接続した。真空ポンプで器具内を減圧しながら器具を加熱した後、窒素を吹き込み常圧に戻した。この操作を3回繰り返し、器具内の水分を除去した。このフラスコに3318 g(1.58 mol/L、d=0.68、7.71 mol)のn-ブチルリチウムを添加して撹拌した。フラスコを氷水槽に浸漬し、トルエンを溶媒とするヘキサメチルシクロトリシロキサン(572.1 g、2.57 mol)の溶液(650 mL)を40分間かけて滴下し、110分間室温で撹拌した。フラスコをドライアイス・メタノール槽で-12℃に冷却し、無水テトラヒドロフラン(3 L)にヘキサメチルシクロトリシロキサン(1715.7 g、7.71 mol)を溶解した溶液を15分間かけて滴下した。滴下による添加の後、フラスコ内の温度は、-3℃に達した。得られた溶液を、-1℃で1時間撹拌し、次いで、40分間かけて25℃に昇温させ、その後に、約26℃で1時間撹拌した。フラスコを、再度、ドライアイス・メタノール槽で-1℃に冷却し、無水テトラヒドロフラン(3 L)にヘキサメチルシクロトリシロキサン(1715.7 g、7.71 mol)を溶解した溶液を8分間かけて滴下した。得られた溶液を、-1℃で1時間撹拌し、次いで、40分間かけて23℃に昇温させ、その後に、約25℃で1時間撹拌した。フラスコを、再度、ドライアイス・メタノール槽で-12℃に冷却した。ジメチルクロロシラン(839.1 g, 8.87 mol)を30分間かけて滴下した。滴下による添加の後、フラスコ内の温度は、18℃に達した。得られた混合物を周囲温度で15分間撹拌した。この溶液を、30 Lの容器内で、約10 Lの水で4回分液洗浄し、有機層に無水硫酸ナトリウム(1 kg)を加えて乾燥した。フィルターを通して濾過することで固形分を取り除いた後に、濾液を20 Lのフラスコに回収し、溶媒をエバポレートした。生成物を2回蒸留すると、下記式(F6)で表される化合物(GC純度:98%)が得られた。
【0302】
【化50】

【0303】
5000 mLのナス型フラスコに、上記の式(F1-1)及び(F1-2)により表される化合物の混合物284 g(1.42 mol)、6.2 gの5% Pt/C触媒、300 mLのテトラヒドロフラン及び 900 mLのn-ヘプタンを添加し、この混合物を窒素雰囲気下で撹拌しながらオイルバス中にフラスコを浸漬した。オイルバスを60℃に昇温させ、上記の式(F3)で表される化合物500 g(0.79 mol)を滴下し、加熱しながら60分間撹拌すると、下記式(F8-1)及び(F8-2)で表されるシロキサニルモノマーの所望の混合物が得られた。反応終了時に、この混合物をセライトに通して濾過することで触媒を取り除いた。このシロキサニルモノマー混合物にヘプタン(300 mL)を添加し、均一に溶解させた。これにメタノール(500 mL)と3重量%の食塩水(500 mL)を添加し、得られた混合物を分液ロートに移して、激しく撹拌した。次いで、この混合液を放置して再びヘプタン層を形成させた。この抽出操作を、10回行った。シロキサニルモノマーと溶媒の混合物にNa2SO4を加えて乾燥させた。シロキサニルモノマーと溶媒の混合物を濾過し、溶媒をロータリー真空エバポレーターで除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;2000 g、溶離液:ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒)精製を行ったところ、式(F8-1)で表される化合物と式(F8-2)で表される化合物の混合物の収率は、83%(GC純度:94.7%)であった。
【0304】
【化51】

【0305】
本発明の範囲と趣旨を逸脱することなく、本発明に種々の修飾及び変更を施すことが可能なことは、当業者にとって自明であろう。本明細書及び本明細書に開示する本発明の実施態様を検討することにより、本発明のその他の態様も当業者に明らかとなるであろう。本明細書と実施例は、単に例示的なものとしてのみ解釈されることが意図されており、本発明の真の範囲と趣旨は、これに続く各請求項に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を含むアクリロイル化合物
【化1】

(式中、R1は、水素、炭素数1ないし18のアルキル又はフェニルであり;Xは、加水分解性基である)。
【請求項2】
R1が、水素又はメチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xが、ジヒドロピラン残基、ハロゲン化アルキル残基、トシルオキシアルカン残基、ジアゾアルカン残基、硫酸ジアルキル残基、酸無水物残基、酸ハライド残基、ハロゲン化シラン残基、及びシラザン残基から選択される加水分解性基である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
請求項1記載の化合物若しくはその加水分解生成物を含む組成物、又は請求項1記載の化合物若しくはその加水分解生成物の残基を含むポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーが、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの残基を含む共重合体である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
エポキシド部分又はジオール部分が、約100 ppm未満の濃度で存在する、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
請求項4記載の組成物を含む、成型品、眼用レンズ又はコンタクトレンズ。
【請求項8】
以下の構造を有する第1の化合物
【化2】

(式中、R1は、水素、炭素数1ないし18のアルキル又はフェニルを表し、Xは、水素又は加水分解性基を表す)
を、A-H(ここで、Aは、シロキサニル基を含む)の構造を有する第2の化合物によりヒドロシリル化させて、以下の構造を有する第3の化合物
【化3】

(式中、Xは、水素又は加水分解性基であり、Aは、シロキサニル基である)
を得る工程を含む、アクリロイル化合物の合成方法。
【請求項9】
R1が、水素又はメチルである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
Xが、ジヒドロピラン残基、ハロゲン化アルキル残基、トシルオキシアルカン残基、ジアゾアルカン残基、硫酸ジアルキル残基、酸無水物残基、酸ハライド残基、ハロゲン化シラン残基、及びシラザン残基から選択される加水分解性のアルキル基である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記シロキサニル基が、以下の構造を有する、請求項8記載の方法
【化4】

(式中、Q1ないしQ11は、独立して、水素、炭素数1ないし20の置換若しくは非置換アルキル、又は炭素数6ないし20の置換若しくは非置換アリールを表し;kは、0ないし200の整数を表し;そして、a、b及びcは、独立して、0ないし20の整数を表すが、ただし、k、a、b及びcの全てが同時に0となることはない)。
【請求項12】
Xが、加水分解性基であり、前記第3の化合物を加水分解又は加溶媒分解して、以下の構造を有する第4の化合物を得る工程を更に含む、請求項8記載の方法。
【化5】

【請求項13】
随意に重合禁止剤又はラジカル捕捉剤の存在下で、アリルグリシジルエーテルをアルキルアクリル酸で処理することで、以下の構造を有する出発化合物
【化6】

(式中、R1は、水素、炭素数1ないし18のアルキル又はフェニルを表す)
を得ること、及び
随意にヒドロキシル基を保護試薬で保護して、以下の構造を有する第2の化合物
【化7】

(式中、Xは、加水分解性基である)
を得ることを更に含む、請求項8記載の方法。
【請求項14】
請求項8記載の方法の生成物。
【請求項15】
以下の構造を含むシロキサニルモノマーの製造方法
【化8】

(式中、R1は、少なくとも1つの不飽和結合を有する炭素数1ないし20の置換基を表し、R3は、炭素数1ないし7の2価の置換基を表し、
Aは、シロキサニル基を表し、そして
Xは、水素又は加水分解性基を表す)
であって、該方法が、以下の構造を有する不飽和化合物
【化9】

(式中、R1は、少なくとも1つの不飽和結合を有する炭素数1ないし20の置換基を表し、
R2は、少なくとも1つの不飽和結合を有する炭素数1ないし7の置換基を表し、そして
Xは、水素又は加水分解性基を表す)
を、金属触媒の存在下で、A-H(ここで、Aはシロキサニル基を表す)の構造を有するシロキサニル化合物と反応させることにより、
シロキサニルモノマーを含む反応混合物を生成させることを含み、
ここで、前記反応工程における、前記シロキサニル化合物に対する前記不飽和化合物のモル比が約1.15:1ないし約10:1である、方法。
【請求項16】
前記反応が、約-0.40ないし約1.80のlog Pow値を有する溶媒中で行われる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
log Pow値が、約-0.25ないし約1.60である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記溶媒が、ケトン系溶媒又はエーテル系溶媒を少なくとも1種類含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒が、少なくとも1種類のケトン系溶媒を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノンの少なくとも1つを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記金属触媒が、少なくとも1種類の白金(0)ビニルシロキサン錯体を含む、請求項15記載の方法。
【請求項22】
a)前記反応混合物を炭化水素溶媒及び親水性溶媒と混合し;
b)該混合物に2層を形成させ;そして
c)前記2層を分離して、
該反応混合物から不飽和化合物を除去する逐次工程を更に含む、請求項15記載の方法。
【請求項23】
前記不飽和化合物が、薄膜蒸留により、前記反応混合物から除去される、請求項15記載の方法。
【請求項24】
前記不飽和化合物が、以下の構造を有し
【化10】

(式中、R4は、水素であるか又は炭素数1ないし18のアルキル及びフェニルから選択される置換基であり;そして
Xは、水素又は加水分解性基である)、
そして前記シロキサニルモノマーが、以下の構造を有する、請求項15記載の方法。
【化11】

(式中、R4は、水素であるか又は炭素数1ないし18のアルキル及びフェニルから選択される置換基であり;
Aは、シロキサニル基であり;そして
Xは、水素又は加水分解性基である)。
【請求項25】
前記シロキサニル基が、以下の構造を有する、請求項15記載の方法
【化12】

(式中、Q1ないしQ11は、独立して、水素、又は随意に置換されていてもよい炭素数1ないし20のアルキル及び随意に置換されていてもよい炭素数6ないし20のアリールから選択される置換基を表し;
kは、0ないし200の整数を表し;そして、
a、b及びcは、独立して、0ないし20の整数を表すが、ただし、k、a、b及びcは、同時に0となることはない)。
【請求項26】
請求項15記載の方法の生成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−542674(P2009−542674A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518295(P2009−518295)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/015150
【国際公開番号】WO2008/147374
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【Fターム(参考)】