プラスチック成形品の製造方法、プラスチック成形装置及びプラスチック成形品
【課題】 本発明は、樹脂供給通路の閉止のための駆動装置等複雑な装置を用いず、確実に樹脂流入口を閉止し、かつ成形品内の歪みの発生を防ぎ、転写面を高精度に転写することができる。
【解決手段】 本発明のプラスチック成形装置は、樹脂供給通路を構成する射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる移動手段を有し、キャビティ内及び樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、樹脂供給通路内の充填樹脂内であってキャビティと、樹脂供給通路の一部に設けられ、樹脂供給通路内で移動可能な可動部材との間に挿入するように、樹脂供給通路用入子を移動手段によって移動させて樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、可動部材をキャビティ側と反対側の開口部に押圧させて樹脂供給通路を閉止する。
【解決手段】 本発明のプラスチック成形装置は、樹脂供給通路を構成する射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる移動手段を有し、キャビティ内及び樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、樹脂供給通路内の充填樹脂内であってキャビティと、樹脂供給通路の一部に設けられ、樹脂供給通路内で移動可能な可動部材との間に挿入するように、樹脂供給通路用入子を移動手段によって移動させて樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、可動部材をキャビティ側と反対側の開口部に押圧させて樹脂供給通路を閉止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック成形品の製造方法、プラスチック成形装置及びプラスチック成形品に関し、詳細には樹脂供給通路を閉止してキャビティからの樹脂の逆流を防止し、高精度な光学鏡面や微細パターンを有するプラスチック成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズや導光板等の高精度な鏡面転写や微細な凹凸面への転写が必要なプラスチック部品やシート状薄肉成形体の製造方法の一つとして、射出圧縮成形法が知られている。この方法は、樹脂の充填中は一時的にわずかにキャビティを拡大し、充填を無理なく行った後、型締め機構や金型内に組み込まれた油圧シリンダーなどを利用して、成形品の一部あるいは全面を加圧、圧縮して所定の形状を付与する方法であり、分子配向が起こり難く、残留応力が減少し、変形なども少なくなる。また、導光板のように転写面に微細な凹凸を有するものを作製する場合、この凹凸と直行方向に圧力を負荷させることができるため、その充填率(転写率)を高めることができる。しかし、このような射出圧縮成形方法においては、圧縮時にキャビティ内の樹脂が樹脂流入口(ゲート)から逆流し、所望の圧力をキャビティ内の樹脂の負荷することができなくなるといった問題が生じるため、上述の樹脂の逆流を防止する必要がある。
【0003】
この逆流を防止する方法としては、最も簡易的な方法はゲートが固化してから圧縮することである。しかし、この場合ゲートが固化するまでの時間で、キャビティ内樹脂の固化も進むため、その後に圧縮しても、かえって樹脂に歪みを発生させる原因となる。特に、微細な凹凸面への充填においては、樹脂の固化が進んでから加圧しても微細な凹凸への充填は促進されない。また、ゲートを極力小さく、キャビティ内樹脂より速く固化させることも考えられるが、この場合レンズのような肉厚品の場合には、樹脂充填時にジェッティング等の不具合が生じる。また、シートのような薄肉品の場合は、樹脂が端部まで十分に充填しないといった問題がある。
【0004】
このような問題に対して、図11に示すように、ゲート部81を封止するためのカットパンチピン82を突出させることで、樹脂流入口83を閉止する方法がある。この場合には、カットパンチピン82の先端部が成形毎に金型84の内壁に突き当たるため、磨耗や変形が生じて、十分な閉止効果を得ることができなくなるといった問題がある。また、カットパンチピン82を摺動するための駆動装置(図示せず)が別途必要になる上に、樹脂を遮断するといった機能を発揮するためにはある程度の圧力が必要であり、摺動面の齧りやバリの発生といった問題が生じる。
【0005】
そこで、これらのカットパンチピンの磨耗や変形の問題点を解決するために従来よりいくつか提案されている。例えば特許文献1〜3には、図12に示すようにゲート封止ピン85がゲート部81を横断する開閉機構を設けることが提案されている。また、特許文献4には、図13に示すように、キャビティに連通する樹脂供給経路の一部に設けられた可動部材87を、キャビティとキャビティとは反対側の差圧によって駆動させることで樹脂供給経通路を閉止することが提案されている。これによると複雑な機構を必要とせず、小型で簡素な閉止構造とすることができる。
【特許文献1】特許第3,457,261号明細書
【特許文献2】特開平11−227008号公報
【特許文献3】特開2000−94484号公報
【特許文献4】特公平07−12631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜3によれば、磨耗や変形の問題は解決されても、駆動装置(図示せず)の必要性による金型構造の複雑化、コスト増加や摺動面の齧りやバリの発生といった問題を改善することはできない。更には、図12のゲート封止ピン85がゲート部81を横断する際にゲート部81の樹脂を押し込む結果、開閉機構に残留した樹脂86を取り除くことができず、次ショット時に樹脂の充填を阻害し、残留した樹脂86が異物となって成形品内に混入するといった問題が生じる。また、上記特許文献4によれば、図13の可動部材87の駆動は樹脂を高圧でキャビティ内に充填したときのバックプレッシャーを利用したもので、可動部材87の駆動は、充填時の圧力に依存しており、成形品形状(例えば薄肉品)によっては、樹脂を充填後直に冷却が進むため、可動部材87を駆動するに十分な圧力を得ることができないといった問題が生じる。また、確実に樹脂供給通路を閉止するために高圧が必要となり、それに伴って成形品内に歪みが生じるといった問題も生じる。更には、樹脂供給通路の閉止と転写面の転写のための圧力発生のタイミングを個々に制御することはできず、転写のための細かな制御をすることができない。
【0007】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、樹脂供給通路の閉止のための駆動装置等複雑な装置を用いず、確実に樹脂流入口を閉止し、かつ成形品内の歪みの発生を防ぎ、転写面を高精度に転写することのできるプラスチック成形品の製造方法、プラスチック成形装置及びプラスチック成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するために、本発明のプラスチック成形装置は、少なくとも1つ以上の転写面を有するキャビティと該キャビティに連通する樹脂供給通路とを構成する射出成形金型と、該樹脂供給通路の一部に設けられ、該樹脂供給通路内で移動可能な可動部材を有し、該可動部材が樹脂供給通路内のキャビティ側と反対側に設けられた樹脂供給用の開口部を閉止する閉止機構部とを具備している。そして、本発明のプラスチック成形装置は、樹脂供給通路を構成する射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる移動手段を有し、キャビティ内及び樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、樹脂供給通路内の充填樹脂内であってキャビティと可動部材との間に挿入するように、樹脂供給通路用入子を移動手段によって移動させて樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、可動部材をキャビティ側と反対側の開口部に押圧させて樹脂供給通路を閉止する。よって、非常に簡易な構造で、バリの発生や駆動に伴う齧りの発生なく、かつ充填時の樹脂圧力に左右されることなく、確実に閉止機構部を駆動させることができる。
【0009】
更に、本発明のプラスチック成形装置は、キャビティを構成する射出成形金型におけるキャビティ用入子の一部と樹脂供給通路を構成する射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる移動手段を有し、キャビティ内及び樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、キャビティ内及び樹脂供給通路内の充填樹脂の容積が減少する方向にキャビティ用入子を移動手段によって移動させると同時に、樹脂供給通路内の充填樹脂内であってキャビティと可動部材との間に挿入するように、樹脂供給通路用入子を移動手段によって移動させて樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、キャビティへの樹脂供給方向におけるキャビティ側の樹脂供給路内の圧力とキャビティと反対側の樹脂供給路内の圧力との差圧によって可動部材を開口部に押圧させて樹脂供給通路を閉止する。よって、面転写のための圧力発生と、樹脂供給通路閉止のための圧力発生を同時に実現することができると共に、非常に簡易な構造で、バリの発生や駆動に伴う齧りの発生なく、かつ充填時の樹脂圧力に左右されることなく、確実に閉止機構部を駆動させることができる。
【0010】
また、本発明のプラスチック成形装置は、キャビティを構成する射出成形金型におけるキャビティ用入子の一部を移動させる第1の移動手段と、樹脂供給通路を構成する射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる第2の移動手段とを有し、キャビティ内及び樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、キャビティ内及び樹脂供給通路内の充填樹脂の容積が減少する方向にキャビティ用入子を第1の移動手段によって移動させた後、樹脂供給通路内の充填樹脂内であってキャビティと可動部材との間に挿入するように、樹脂供給通路用入子を第2の移動手段によって移動させて樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、キャビティへの樹脂供給方向におけるキャビティ側の樹脂供給路内の圧力とキャビティと反対側の樹脂供給路内の圧力との差圧によって可動部材を開口部に押圧させて樹脂供給通路を閉止する。よって、転写性向上のためと樹脂供給路閉止のために各々最適なタイミングで圧力を発生させ、より確実な閉止と面転写を実現することができると共に、非常に簡易な構造で、バリの発生や駆動に伴う齧りの発生なく、かつ充填時の樹脂圧力に左右されることなく、確実に閉止機構部を駆動させることができる。
【0011】
また、樹脂供給通路用入子の先端部は、可動部材側に対して傾斜する面を有することにより、確実に可動部材を移動させるための駆動圧力を発生させることができ、キャビティ側への樹脂移動を少なくし、歪みの発生を少なくすることができる。
【0012】
更に、別の発明としてのプラスチック成形品は、上記プラスチック成形品の製造方法を用いて又は上記プラスチック成形装置によって製造される。よって、高精度、低歪み、低コストでプラスチック成形品を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、樹脂供給通路に樹脂圧力によって移動可能な可動部材を備え、樹脂をキャビティ内の充填後、樹脂供給通路を構成する入子の少なくとも1つ以上を樹脂供給通路の容積が小さくなる方向に移動させることによって圧力を発生させ、この発生圧力によって可動部材を移動させ、樹脂供給通路を閉止させる。よって、非常に簡易な構造で、バリの発生や駆動に伴う齧りの発生なく、かつ充填時の樹脂圧力に左右されることなく、確実に閉止機構部を駆動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
はじめに、本発明の原理について、プラスチック成形装置の構成を示す断面図である図1を用いて以下に説明する。なお、同図に示すプラスチック成形装置によって作製するプラスチック成形品は、図2に示すような光ピックアップ装置用回折レンズ1である。図2に示すように、光ピックアップ装置用回折レンズ1のレンズ面の一方は凸面の高精度な光学鏡面2を有している。他方は複数の輪帯構造を有する微細な回折パターン3が形成されている。樹脂素材としては、軟化温度145℃のポリカーボネート樹脂を使用した。
【0015】
図1に示すプラスチック成形装置10において、開閉可能な固定金型11と可動金型12から構成される金型13には、樹脂を充填するための装置である図示しない射出成形機から供給される樹脂の通路となるスプル孔14及び第1のランナー溝15が形成されている。第1のランナー溝15は、第1のゲート16を介して第2のランナー溝17と連通されている。スプル孔14、第1のランナー溝15、第1のゲート16、第2のランナー溝17は、第2のゲート18を介して、所定容積が形成されたキャビティ19への樹脂供給経路が形成されている。なお、キャビティ19を形成する可動入子20には、図2の回折パターン3が加工された転写面21が形成されている。ここで、転写面21を有する可動入子20は移動可能なようになっており、それを移動させるための圧力制御装置22と連結されている。この圧力制御装置22は図示していない制御部からの駆動制御信号によって制御される。一方、第2のランナー溝17は、樹脂供給通路を閉止するための移動部材である球状弁体23が収納される場所であり、第1のランナー溝15と第2のランナー溝17の間の第1のゲート16は、球状弁体23に対抗する弁座として、球状弁体23より小さい径の内周縁24を有している。なお、第2のランナー溝17には、その溝部に突出するように支持されたストップピン25が設けられている。なお、金型13は図示しないヒータ、温調媒体等によって、ポリカーボネート樹脂の軟化温度以下である140℃に加熱維持されている。
【0016】
次に、図1のプラスチック成形装置を用いて図2のプラスチック成形品を製造する工程について図3に基づいて説明する。図3は図1のプラスチック成形装置の一部を拡大した図である。
【0017】
先ず、図3の(a)に示すように、固定金型11と可動金型12が分割した状態時(型開き時)に、第2のランナー溝17上に球状弁体23を配置する。そして、図3の(b)に示すように、固定金型11と可動金型12を閉じ(型締めし)、密閉空間であるキャビティ19が形成され、次いで図示しない射出成形機から樹脂26の充填を開始する。その後、図3の(c)に示すように、樹脂26が第2のランナー溝17を通過するとき、樹脂26の流動圧力によって、球状弁体23は樹脂26の流動方向、つまりキャビティ19側の方向に移動して、ストップピン25に突き当たって係止される。これによって、第1のゲート16は開放状態となり、樹脂26はキャビティ19内へ充填される。なお、この時転写面21に形成されている回折パターンは樹脂26の流動方向と直行する方向に形成されているため、パターン方向への圧力は小さく、回折パターンの末端までの十分な転写はされない。そこで、図3の(d)に示すように、図示していない制御部からの駆動制御信号に基づいて圧力制御装置22によって転写面21を有する可動入子20がキャビティ19の容積が減少する方向に移動することで、樹脂に圧力が付加され、転写面21が樹脂表面に転写される。この時キャビティ19内に発生する圧力によって、第2のランナー溝17に配置され、ストップピン25に突き当たっていた球状弁体23が、樹脂供給方向とは逆の方向に移動し、第1のゲート16の内周縁24に圧接して着座し、第1のゲート16は閉止される。そして、図3の(e)に示すように、樹脂26が金型13の温度まで冷却した後、作製された回折レンズ1を離型させる。
【0018】
このように、樹脂流動時には、流動圧力によって球状弁体23がストップピン25に突き当たって係止されることによって、十分な樹脂供給路が確保される。また、可動入子20を移動させ、キャビティ19内に圧力を発生さることによって、逆に球状弁体23が第1のゲート16の内周縁24に圧接して着座させ、第1のゲート16を確実に閉止し、樹脂の逆流を防止する。この時、可動入子20が移動するため、転写面21に加工された回折パターンと直行方向に、確実に圧力を付加することができ、高精度に回折パターン3を転写させることができる。第1のゲート16を閉止するための球状弁体23の移動には、樹脂の圧力を利用しているため、特別な駆動装置等を金型13内に設ける必要もなく、非常に簡素な構造でコンパクト、かつ低コストな金型を実現することができる。また、球状弁体23は、樹脂の通路となる第2のランナー溝17内を移動するだけのため、バリの発生や齧りといった問題も生じない。
【0019】
また、可動入子20をキャビティ19の容積が減少する方向に動かすことによって発生する圧力によって、球状弁体23を駆動し樹脂供給通路を閉止している。従って、樹脂を充填する圧力に依存することなく確実に樹脂供給通路を閉止できるため、充填時の圧力が発生しずらい、例えば、薄肉の成形品に対しても確実な閉止と転写を実現することができる。従来では、樹脂16をキャビティ19内に充填したときに生じるバックプレッシャーを利用して球状弁体23を移動し、樹脂供給通路を閉止させたため、確実な閉止を実現するためには、高圧充填が必要で、特にゲート近傍での製品部に歪みが発生するといった問題が生じていたが、本発明の原理によれば、キャビティ19の容積を小さくすることによって発生する圧力を利用しているため樹脂26充填時の圧力を必要以上に大きくする必要はなく、上述した歪みの発生といった問題を防ぐことができる。
【0020】
更に、転写面21に微細なパターンを有するものを成形する場合、微細部の先端まで樹脂を充填するためになるべく充填後早い時間(樹脂温度が高い状態)で圧力を発生させることが望ましい。従来では完全にキャビティ19内に樹脂を充填してから圧力が発生し、可動部材である球状弁体を駆動させていたが、本発明の原理によれば、キャビティ19内に樹脂が充填する途中でも可動入子を移動させることで圧力を発生させ、閉止と転写を実施することができるため、確実に微細パターンへの転写を実現できる。
【0021】
なお、ゲート閉止のための移動部材は上述の実施の形態のような球状弁体23に限定されるものではなく、例えば図4の(a)、(b)に示すように、円筒(矩形)形状や楕円形状の移動部材を用いても構わないが、球状とすることで、内周縁24やストップピン25への移動が容易となる上に、第1のゲート16の内周縁24との接触部位が線接触(円筒(矩形)形状の場合は内周縁と線接触する)となるため、移動部材と内周縁24との間の樹脂を押しつぶしやすくなり、より確実にゲート部を閉止することができる。
【0022】
また、図3の(e)に示す成形品離型時では、製品部分である回折レンズ1と成形品のランナー部27、スプル部は、球状弁体23で分離されて取り出される。すなわち、金型内で自動的にゲートがカットされるため、成形品取り出し後のゲートカットが不要、かつそのための装置も必要ない。また、製品部分の先端に球状弁体23が一体となるため、成形品取り出しと同時に球状弁体23も可動金型12から取り出すことが可能である。従って、成形終了後、使用済みの球状弁体23を金型13に挟んだり、金型13を傷つけたりすることを防ぐことができる。なお、球状弁体23は、金型13内に固定される必要がなく、成形毎に、型開きされた時に、第2のランナー溝17上にのせるだけでよい。そのため、球状弁体23を使用することによる複雑な装置や固定手段等も必要なく、成形毎に球状弁体23を金型内に挿入させても、そのために工程(成形時間)が長くなることもない。
【0023】
次に、以上説明した本発明の原理を基に本発明の一実施の形態に係るプラスチック成形装置について説明する。図5は本発明の第1の実施の形態例に係るプラスチック成形装置の構成を示す断面図である。同図において、図1と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。なお、図5に示す本実施の形態のプラスチック成形装置40によって作製するプラスチック成形品は、図6に示すようなレーザビームプリンタの光走査に用いられるfθレンズ50である。レンズ面の両面には、高精度な光学鏡面51を有している。樹脂素材としては、軟化温度135℃のアモルファスポリオレフィン樹脂を使用した。基本的な構造は第1の実施の形態と同様であり、ここでは相違のみを説明する。第2のランナー溝17の球状弁体23よりキャビティ19側の部位に、移動可能な圧縮ピン28が配置されており、この圧縮ピン28を移動させるための圧力制御装置29と連結されている。この圧力制御装置29は図示していない制御部からの駆動制御信号によって制御される。また、圧縮ピン28の先端には、球状弁体23のある側が大きくなるような傾斜30が形成されている。なお、金型13は図示しないヒータ、温調媒体等によって、アモルファスポリオレフィン樹脂の軟化温度以下である130℃に加熱維持されている。
【0024】
次に、本実施の形態のプラスチック成形装置を用いて図6のプラスチック成形品を製造する工程について図7に基づいて説明する。図7は図5のプラスチック成形装置の一部を拡大した図である。
【0025】
先ず、図7の(a)に示すように、固定金型11と可動金型12が分割した状態時(型開き時)に、第2のランナー溝17上に球状弁体23を配置する。そして、図7の(b)に示すように、固定金型11と可動金型12を閉じ(型締めし)、図示しない射出成形機から樹脂26の充填を開始する。その後、図7の(c)に示すように、樹脂26が第2のランナー溝17を通過するとき、樹脂26の流動圧力によって、球状弁体23は樹脂26の流動方向、つまりキャビティ19側の方向に移動して、ストップピン25に突き当たって係止される。これによって、第1のゲート16は開放状態となり、樹脂26はキャビティ19内へ充填される。これによって、第1のゲート16は開放状態となり、樹脂26はキャビティ19内へ充填され、その後充填圧力が発生し、転写面21が転写される。次に、図7の(d)に示すように、図示していない制御部からの駆動制御信号に基づいて圧力制御装置29によって圧縮ピン28を第2のランナー溝17の容積が減少する方向に移動させる。これによって、第2のランナー溝17内に圧力が発生し、そこに配置され、ストップピン25に突き当たっていた球状弁体23が樹脂供給方向とは逆の方向に移動し、第1のゲート16の内周縁24に圧接して着座し、第1のゲート16は閉止される。そして、図7の(e)に示すように、樹脂26が金型13の温度まで冷却した後、作製されたfθレンズ40を離型させる。
【0026】
このように、本実施の形態によれば、fθレンズ40のように転写面21が平坦な(微細パターンのない)鏡面形状であり、転写面21を圧縮する必要の場合は、本実施の形態のように第2のランナー溝17に移動可能な圧縮ピン28を設け、非常に簡易な構造で圧縮ピン28のみを移動させることで、球状弁体23を駆動し樹脂供給通路を確実に閉止することができる。この場合、本実施の形態のように圧縮ピン28は転写面21より可動部材に近い位置に設けられればよく、必ずしも第2のランナー溝17に形成される必要はない。
【0027】
また、圧縮ピン28の先端部には球状弁体23側の面積が大きくなる方向に傾斜30が形成されている。これによって、図7の(b)に示すように、圧縮ピン28を移動させたとき、樹脂26は球状弁体23側に向かって優先的に移動するため、確実に球状弁体23を移動させるための駆動圧力を発生させることができる。一方、部分的に容積を小さくして圧力を発生させるとその部分で応力が発生し、歪みが生じるが、傾斜構造を設けることで、キャビティ19側への樹脂移動が少なくなり、その結果、歪みが生じるのは球状弁体側だけで、製品部側には殆ど発生しない。
【0028】
図8は本発明の第2の実施の形態例に係るプラスチック成形装置の構成を示す断面図である。図9は本発明の第3の実施の形態例に係るプラスチック成形装置の構成を示す断面図である。両図において、図1及び図5と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。なお、図8及び図9に示す各実施の形態のプラスチック成形装置60によって作製するプラスチック成形品は、図10に示すような導光板70である。この導光板70の表面には微細なプリズムパターン71が形成されている。
【0029】
図8に示す第2の実施の形態のプラスチック成形装置60によれば、図示していない制御部からの駆動制御信号に基づいて圧力制御装置31によって可動入子20と圧縮ピン28を同時に可動させる。このように可動入子20と圧縮ピン28を同時に動かすようにしても、第1,第2の実施の形態で説明した効果を得ることができるが、この場合は特に、転写のための圧縮と樹脂供給通路閉止のための圧縮を別々の可動部材、つまり可動入子20と圧縮ピン28で実施するため、転写と閉止をより確実に行うことができる。
【0030】
一方、図9に示す第3の実施の形態のプラスチック成形装置60によれば、図示していない制御部からのそれぞれの駆動制御信号に基づいて、可動入子20を圧力制御装置22で、また圧縮ピン28を圧力制御装置29で別々のタイミングで可動させることも可能である。この場合は、それぞれを別個に制御するため、転写性向上のためと樹脂供給路閉止のために各々最適なタイミングで圧力を発生させ、より確実な閉止と面転写を実現することができる。例えば、転写面への圧力の負可はなるべく早いタイミングで樹脂粘度が低い状態のときに実施することで転写面への転写は向上する。従って、図9の(b)に示すように、充填途中(樹脂供給通路を確保した状態)で、圧力制御装置22によって可動入子20を駆動し、転写面に圧力を発生させ、充填終了後、図9の(c)に示すように逆流を防ぐため圧力制御装置29によって圧縮ピン28を駆動して樹脂供給通路を閉止するといったことで、より転写性の高い成形品を得ることができる。これは、第2、第3の実施の形態で成形した導光板70のように転写面に微細なパターンを有する成形品に対してはそのパターンへの充填を促進する方法として特に有効となる。
【0031】
なお、上述した各実施の形態において、適用できる樹脂は、各実施の形態に用いたものに限定されるものではないことは言うまでもない。また、本発明の適用は各実施の形態で述べたfθレンズ、回折レンズ、導光板等に限定されるものでもなく、導波路、光ディスクといった微細な凹凸を有する光学素子やプリズム等非常に光学鏡面を有する光学素子、更には光学素子以外の精密部品の成形においても適用可能である。
【0032】
また、本発明は上記実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の原理を説明するためのプラスチック成形装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1のプラスチック成形装置によって作製する光ピックアップ装置用回折レンズを示す図である。
【図3】図1のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【図4】樹脂供給通路を閉止するための移動部材の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態例に係るプラスチック成形装置の構成を示す断面図である。
【図6】第1の実施の形態のプラスチック成形装置によって作製するfθレンズを示す図である。
【図7】第1の実施の形態のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【図8】第2の実施の形態のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【図9】第3の実施の形態のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【図10】第2、第3の実施の形態のプラスチック成形装置によって作製する導光板を示す図である。
【図11】従来のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【図12】別の従来のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【図13】別の従来のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1;回折レンズ、2,51;光学鏡面、3;回折パターン、
10,40,60;プラスチック成形装置、11;固定金型、
12;可動金型、13;金型、14;スプル孔、
15;第1のランナー溝、16;第1のゲート、
17;第2のランナー溝、18;;第2ゲート、
19;キャビティ、20;可動入子、21;転写面、
22,29,31;圧力制御装置、23;球状弁体、
24;内周縁、25;ストップピン、26;樹脂、27;ランナー部、
28;圧縮ピン、30;傾斜、50;fθレンズ、70;導光板、
71;プリズムパターン。
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック成形品の製造方法、プラスチック成形装置及びプラスチック成形品に関し、詳細には樹脂供給通路を閉止してキャビティからの樹脂の逆流を防止し、高精度な光学鏡面や微細パターンを有するプラスチック成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズや導光板等の高精度な鏡面転写や微細な凹凸面への転写が必要なプラスチック部品やシート状薄肉成形体の製造方法の一つとして、射出圧縮成形法が知られている。この方法は、樹脂の充填中は一時的にわずかにキャビティを拡大し、充填を無理なく行った後、型締め機構や金型内に組み込まれた油圧シリンダーなどを利用して、成形品の一部あるいは全面を加圧、圧縮して所定の形状を付与する方法であり、分子配向が起こり難く、残留応力が減少し、変形なども少なくなる。また、導光板のように転写面に微細な凹凸を有するものを作製する場合、この凹凸と直行方向に圧力を負荷させることができるため、その充填率(転写率)を高めることができる。しかし、このような射出圧縮成形方法においては、圧縮時にキャビティ内の樹脂が樹脂流入口(ゲート)から逆流し、所望の圧力をキャビティ内の樹脂の負荷することができなくなるといった問題が生じるため、上述の樹脂の逆流を防止する必要がある。
【0003】
この逆流を防止する方法としては、最も簡易的な方法はゲートが固化してから圧縮することである。しかし、この場合ゲートが固化するまでの時間で、キャビティ内樹脂の固化も進むため、その後に圧縮しても、かえって樹脂に歪みを発生させる原因となる。特に、微細な凹凸面への充填においては、樹脂の固化が進んでから加圧しても微細な凹凸への充填は促進されない。また、ゲートを極力小さく、キャビティ内樹脂より速く固化させることも考えられるが、この場合レンズのような肉厚品の場合には、樹脂充填時にジェッティング等の不具合が生じる。また、シートのような薄肉品の場合は、樹脂が端部まで十分に充填しないといった問題がある。
【0004】
このような問題に対して、図11に示すように、ゲート部81を封止するためのカットパンチピン82を突出させることで、樹脂流入口83を閉止する方法がある。この場合には、カットパンチピン82の先端部が成形毎に金型84の内壁に突き当たるため、磨耗や変形が生じて、十分な閉止効果を得ることができなくなるといった問題がある。また、カットパンチピン82を摺動するための駆動装置(図示せず)が別途必要になる上に、樹脂を遮断するといった機能を発揮するためにはある程度の圧力が必要であり、摺動面の齧りやバリの発生といった問題が生じる。
【0005】
そこで、これらのカットパンチピンの磨耗や変形の問題点を解決するために従来よりいくつか提案されている。例えば特許文献1〜3には、図12に示すようにゲート封止ピン85がゲート部81を横断する開閉機構を設けることが提案されている。また、特許文献4には、図13に示すように、キャビティに連通する樹脂供給経路の一部に設けられた可動部材87を、キャビティとキャビティとは反対側の差圧によって駆動させることで樹脂供給経通路を閉止することが提案されている。これによると複雑な機構を必要とせず、小型で簡素な閉止構造とすることができる。
【特許文献1】特許第3,457,261号明細書
【特許文献2】特開平11−227008号公報
【特許文献3】特開2000−94484号公報
【特許文献4】特公平07−12631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜3によれば、磨耗や変形の問題は解決されても、駆動装置(図示せず)の必要性による金型構造の複雑化、コスト増加や摺動面の齧りやバリの発生といった問題を改善することはできない。更には、図12のゲート封止ピン85がゲート部81を横断する際にゲート部81の樹脂を押し込む結果、開閉機構に残留した樹脂86を取り除くことができず、次ショット時に樹脂の充填を阻害し、残留した樹脂86が異物となって成形品内に混入するといった問題が生じる。また、上記特許文献4によれば、図13の可動部材87の駆動は樹脂を高圧でキャビティ内に充填したときのバックプレッシャーを利用したもので、可動部材87の駆動は、充填時の圧力に依存しており、成形品形状(例えば薄肉品)によっては、樹脂を充填後直に冷却が進むため、可動部材87を駆動するに十分な圧力を得ることができないといった問題が生じる。また、確実に樹脂供給通路を閉止するために高圧が必要となり、それに伴って成形品内に歪みが生じるといった問題も生じる。更には、樹脂供給通路の閉止と転写面の転写のための圧力発生のタイミングを個々に制御することはできず、転写のための細かな制御をすることができない。
【0007】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、樹脂供給通路の閉止のための駆動装置等複雑な装置を用いず、確実に樹脂流入口を閉止し、かつ成形品内の歪みの発生を防ぎ、転写面を高精度に転写することのできるプラスチック成形品の製造方法、プラスチック成形装置及びプラスチック成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するために、本発明のプラスチック成形装置は、少なくとも1つ以上の転写面を有するキャビティと該キャビティに連通する樹脂供給通路とを構成する射出成形金型と、該樹脂供給通路の一部に設けられ、該樹脂供給通路内で移動可能な可動部材を有し、該可動部材が樹脂供給通路内のキャビティ側と反対側に設けられた樹脂供給用の開口部を閉止する閉止機構部とを具備している。そして、本発明のプラスチック成形装置は、樹脂供給通路を構成する射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる移動手段を有し、キャビティ内及び樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、樹脂供給通路内の充填樹脂内であってキャビティと可動部材との間に挿入するように、樹脂供給通路用入子を移動手段によって移動させて樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、可動部材をキャビティ側と反対側の開口部に押圧させて樹脂供給通路を閉止する。よって、非常に簡易な構造で、バリの発生や駆動に伴う齧りの発生なく、かつ充填時の樹脂圧力に左右されることなく、確実に閉止機構部を駆動させることができる。
【0009】
更に、本発明のプラスチック成形装置は、キャビティを構成する射出成形金型におけるキャビティ用入子の一部と樹脂供給通路を構成する射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる移動手段を有し、キャビティ内及び樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、キャビティ内及び樹脂供給通路内の充填樹脂の容積が減少する方向にキャビティ用入子を移動手段によって移動させると同時に、樹脂供給通路内の充填樹脂内であってキャビティと可動部材との間に挿入するように、樹脂供給通路用入子を移動手段によって移動させて樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、キャビティへの樹脂供給方向におけるキャビティ側の樹脂供給路内の圧力とキャビティと反対側の樹脂供給路内の圧力との差圧によって可動部材を開口部に押圧させて樹脂供給通路を閉止する。よって、面転写のための圧力発生と、樹脂供給通路閉止のための圧力発生を同時に実現することができると共に、非常に簡易な構造で、バリの発生や駆動に伴う齧りの発生なく、かつ充填時の樹脂圧力に左右されることなく、確実に閉止機構部を駆動させることができる。
【0010】
また、本発明のプラスチック成形装置は、キャビティを構成する射出成形金型におけるキャビティ用入子の一部を移動させる第1の移動手段と、樹脂供給通路を構成する射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる第2の移動手段とを有し、キャビティ内及び樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、キャビティ内及び樹脂供給通路内の充填樹脂の容積が減少する方向にキャビティ用入子を第1の移動手段によって移動させた後、樹脂供給通路内の充填樹脂内であってキャビティと可動部材との間に挿入するように、樹脂供給通路用入子を第2の移動手段によって移動させて樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、キャビティへの樹脂供給方向におけるキャビティ側の樹脂供給路内の圧力とキャビティと反対側の樹脂供給路内の圧力との差圧によって可動部材を開口部に押圧させて樹脂供給通路を閉止する。よって、転写性向上のためと樹脂供給路閉止のために各々最適なタイミングで圧力を発生させ、より確実な閉止と面転写を実現することができると共に、非常に簡易な構造で、バリの発生や駆動に伴う齧りの発生なく、かつ充填時の樹脂圧力に左右されることなく、確実に閉止機構部を駆動させることができる。
【0011】
また、樹脂供給通路用入子の先端部は、可動部材側に対して傾斜する面を有することにより、確実に可動部材を移動させるための駆動圧力を発生させることができ、キャビティ側への樹脂移動を少なくし、歪みの発生を少なくすることができる。
【0012】
更に、別の発明としてのプラスチック成形品は、上記プラスチック成形品の製造方法を用いて又は上記プラスチック成形装置によって製造される。よって、高精度、低歪み、低コストでプラスチック成形品を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、樹脂供給通路に樹脂圧力によって移動可能な可動部材を備え、樹脂をキャビティ内の充填後、樹脂供給通路を構成する入子の少なくとも1つ以上を樹脂供給通路の容積が小さくなる方向に移動させることによって圧力を発生させ、この発生圧力によって可動部材を移動させ、樹脂供給通路を閉止させる。よって、非常に簡易な構造で、バリの発生や駆動に伴う齧りの発生なく、かつ充填時の樹脂圧力に左右されることなく、確実に閉止機構部を駆動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
はじめに、本発明の原理について、プラスチック成形装置の構成を示す断面図である図1を用いて以下に説明する。なお、同図に示すプラスチック成形装置によって作製するプラスチック成形品は、図2に示すような光ピックアップ装置用回折レンズ1である。図2に示すように、光ピックアップ装置用回折レンズ1のレンズ面の一方は凸面の高精度な光学鏡面2を有している。他方は複数の輪帯構造を有する微細な回折パターン3が形成されている。樹脂素材としては、軟化温度145℃のポリカーボネート樹脂を使用した。
【0015】
図1に示すプラスチック成形装置10において、開閉可能な固定金型11と可動金型12から構成される金型13には、樹脂を充填するための装置である図示しない射出成形機から供給される樹脂の通路となるスプル孔14及び第1のランナー溝15が形成されている。第1のランナー溝15は、第1のゲート16を介して第2のランナー溝17と連通されている。スプル孔14、第1のランナー溝15、第1のゲート16、第2のランナー溝17は、第2のゲート18を介して、所定容積が形成されたキャビティ19への樹脂供給経路が形成されている。なお、キャビティ19を形成する可動入子20には、図2の回折パターン3が加工された転写面21が形成されている。ここで、転写面21を有する可動入子20は移動可能なようになっており、それを移動させるための圧力制御装置22と連結されている。この圧力制御装置22は図示していない制御部からの駆動制御信号によって制御される。一方、第2のランナー溝17は、樹脂供給通路を閉止するための移動部材である球状弁体23が収納される場所であり、第1のランナー溝15と第2のランナー溝17の間の第1のゲート16は、球状弁体23に対抗する弁座として、球状弁体23より小さい径の内周縁24を有している。なお、第2のランナー溝17には、その溝部に突出するように支持されたストップピン25が設けられている。なお、金型13は図示しないヒータ、温調媒体等によって、ポリカーボネート樹脂の軟化温度以下である140℃に加熱維持されている。
【0016】
次に、図1のプラスチック成形装置を用いて図2のプラスチック成形品を製造する工程について図3に基づいて説明する。図3は図1のプラスチック成形装置の一部を拡大した図である。
【0017】
先ず、図3の(a)に示すように、固定金型11と可動金型12が分割した状態時(型開き時)に、第2のランナー溝17上に球状弁体23を配置する。そして、図3の(b)に示すように、固定金型11と可動金型12を閉じ(型締めし)、密閉空間であるキャビティ19が形成され、次いで図示しない射出成形機から樹脂26の充填を開始する。その後、図3の(c)に示すように、樹脂26が第2のランナー溝17を通過するとき、樹脂26の流動圧力によって、球状弁体23は樹脂26の流動方向、つまりキャビティ19側の方向に移動して、ストップピン25に突き当たって係止される。これによって、第1のゲート16は開放状態となり、樹脂26はキャビティ19内へ充填される。なお、この時転写面21に形成されている回折パターンは樹脂26の流動方向と直行する方向に形成されているため、パターン方向への圧力は小さく、回折パターンの末端までの十分な転写はされない。そこで、図3の(d)に示すように、図示していない制御部からの駆動制御信号に基づいて圧力制御装置22によって転写面21を有する可動入子20がキャビティ19の容積が減少する方向に移動することで、樹脂に圧力が付加され、転写面21が樹脂表面に転写される。この時キャビティ19内に発生する圧力によって、第2のランナー溝17に配置され、ストップピン25に突き当たっていた球状弁体23が、樹脂供給方向とは逆の方向に移動し、第1のゲート16の内周縁24に圧接して着座し、第1のゲート16は閉止される。そして、図3の(e)に示すように、樹脂26が金型13の温度まで冷却した後、作製された回折レンズ1を離型させる。
【0018】
このように、樹脂流動時には、流動圧力によって球状弁体23がストップピン25に突き当たって係止されることによって、十分な樹脂供給路が確保される。また、可動入子20を移動させ、キャビティ19内に圧力を発生さることによって、逆に球状弁体23が第1のゲート16の内周縁24に圧接して着座させ、第1のゲート16を確実に閉止し、樹脂の逆流を防止する。この時、可動入子20が移動するため、転写面21に加工された回折パターンと直行方向に、確実に圧力を付加することができ、高精度に回折パターン3を転写させることができる。第1のゲート16を閉止するための球状弁体23の移動には、樹脂の圧力を利用しているため、特別な駆動装置等を金型13内に設ける必要もなく、非常に簡素な構造でコンパクト、かつ低コストな金型を実現することができる。また、球状弁体23は、樹脂の通路となる第2のランナー溝17内を移動するだけのため、バリの発生や齧りといった問題も生じない。
【0019】
また、可動入子20をキャビティ19の容積が減少する方向に動かすことによって発生する圧力によって、球状弁体23を駆動し樹脂供給通路を閉止している。従って、樹脂を充填する圧力に依存することなく確実に樹脂供給通路を閉止できるため、充填時の圧力が発生しずらい、例えば、薄肉の成形品に対しても確実な閉止と転写を実現することができる。従来では、樹脂16をキャビティ19内に充填したときに生じるバックプレッシャーを利用して球状弁体23を移動し、樹脂供給通路を閉止させたため、確実な閉止を実現するためには、高圧充填が必要で、特にゲート近傍での製品部に歪みが発生するといった問題が生じていたが、本発明の原理によれば、キャビティ19の容積を小さくすることによって発生する圧力を利用しているため樹脂26充填時の圧力を必要以上に大きくする必要はなく、上述した歪みの発生といった問題を防ぐことができる。
【0020】
更に、転写面21に微細なパターンを有するものを成形する場合、微細部の先端まで樹脂を充填するためになるべく充填後早い時間(樹脂温度が高い状態)で圧力を発生させることが望ましい。従来では完全にキャビティ19内に樹脂を充填してから圧力が発生し、可動部材である球状弁体を駆動させていたが、本発明の原理によれば、キャビティ19内に樹脂が充填する途中でも可動入子を移動させることで圧力を発生させ、閉止と転写を実施することができるため、確実に微細パターンへの転写を実現できる。
【0021】
なお、ゲート閉止のための移動部材は上述の実施の形態のような球状弁体23に限定されるものではなく、例えば図4の(a)、(b)に示すように、円筒(矩形)形状や楕円形状の移動部材を用いても構わないが、球状とすることで、内周縁24やストップピン25への移動が容易となる上に、第1のゲート16の内周縁24との接触部位が線接触(円筒(矩形)形状の場合は内周縁と線接触する)となるため、移動部材と内周縁24との間の樹脂を押しつぶしやすくなり、より確実にゲート部を閉止することができる。
【0022】
また、図3の(e)に示す成形品離型時では、製品部分である回折レンズ1と成形品のランナー部27、スプル部は、球状弁体23で分離されて取り出される。すなわち、金型内で自動的にゲートがカットされるため、成形品取り出し後のゲートカットが不要、かつそのための装置も必要ない。また、製品部分の先端に球状弁体23が一体となるため、成形品取り出しと同時に球状弁体23も可動金型12から取り出すことが可能である。従って、成形終了後、使用済みの球状弁体23を金型13に挟んだり、金型13を傷つけたりすることを防ぐことができる。なお、球状弁体23は、金型13内に固定される必要がなく、成形毎に、型開きされた時に、第2のランナー溝17上にのせるだけでよい。そのため、球状弁体23を使用することによる複雑な装置や固定手段等も必要なく、成形毎に球状弁体23を金型内に挿入させても、そのために工程(成形時間)が長くなることもない。
【0023】
次に、以上説明した本発明の原理を基に本発明の一実施の形態に係るプラスチック成形装置について説明する。図5は本発明の第1の実施の形態例に係るプラスチック成形装置の構成を示す断面図である。同図において、図1と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。なお、図5に示す本実施の形態のプラスチック成形装置40によって作製するプラスチック成形品は、図6に示すようなレーザビームプリンタの光走査に用いられるfθレンズ50である。レンズ面の両面には、高精度な光学鏡面51を有している。樹脂素材としては、軟化温度135℃のアモルファスポリオレフィン樹脂を使用した。基本的な構造は第1の実施の形態と同様であり、ここでは相違のみを説明する。第2のランナー溝17の球状弁体23よりキャビティ19側の部位に、移動可能な圧縮ピン28が配置されており、この圧縮ピン28を移動させるための圧力制御装置29と連結されている。この圧力制御装置29は図示していない制御部からの駆動制御信号によって制御される。また、圧縮ピン28の先端には、球状弁体23のある側が大きくなるような傾斜30が形成されている。なお、金型13は図示しないヒータ、温調媒体等によって、アモルファスポリオレフィン樹脂の軟化温度以下である130℃に加熱維持されている。
【0024】
次に、本実施の形態のプラスチック成形装置を用いて図6のプラスチック成形品を製造する工程について図7に基づいて説明する。図7は図5のプラスチック成形装置の一部を拡大した図である。
【0025】
先ず、図7の(a)に示すように、固定金型11と可動金型12が分割した状態時(型開き時)に、第2のランナー溝17上に球状弁体23を配置する。そして、図7の(b)に示すように、固定金型11と可動金型12を閉じ(型締めし)、図示しない射出成形機から樹脂26の充填を開始する。その後、図7の(c)に示すように、樹脂26が第2のランナー溝17を通過するとき、樹脂26の流動圧力によって、球状弁体23は樹脂26の流動方向、つまりキャビティ19側の方向に移動して、ストップピン25に突き当たって係止される。これによって、第1のゲート16は開放状態となり、樹脂26はキャビティ19内へ充填される。これによって、第1のゲート16は開放状態となり、樹脂26はキャビティ19内へ充填され、その後充填圧力が発生し、転写面21が転写される。次に、図7の(d)に示すように、図示していない制御部からの駆動制御信号に基づいて圧力制御装置29によって圧縮ピン28を第2のランナー溝17の容積が減少する方向に移動させる。これによって、第2のランナー溝17内に圧力が発生し、そこに配置され、ストップピン25に突き当たっていた球状弁体23が樹脂供給方向とは逆の方向に移動し、第1のゲート16の内周縁24に圧接して着座し、第1のゲート16は閉止される。そして、図7の(e)に示すように、樹脂26が金型13の温度まで冷却した後、作製されたfθレンズ40を離型させる。
【0026】
このように、本実施の形態によれば、fθレンズ40のように転写面21が平坦な(微細パターンのない)鏡面形状であり、転写面21を圧縮する必要の場合は、本実施の形態のように第2のランナー溝17に移動可能な圧縮ピン28を設け、非常に簡易な構造で圧縮ピン28のみを移動させることで、球状弁体23を駆動し樹脂供給通路を確実に閉止することができる。この場合、本実施の形態のように圧縮ピン28は転写面21より可動部材に近い位置に設けられればよく、必ずしも第2のランナー溝17に形成される必要はない。
【0027】
また、圧縮ピン28の先端部には球状弁体23側の面積が大きくなる方向に傾斜30が形成されている。これによって、図7の(b)に示すように、圧縮ピン28を移動させたとき、樹脂26は球状弁体23側に向かって優先的に移動するため、確実に球状弁体23を移動させるための駆動圧力を発生させることができる。一方、部分的に容積を小さくして圧力を発生させるとその部分で応力が発生し、歪みが生じるが、傾斜構造を設けることで、キャビティ19側への樹脂移動が少なくなり、その結果、歪みが生じるのは球状弁体側だけで、製品部側には殆ど発生しない。
【0028】
図8は本発明の第2の実施の形態例に係るプラスチック成形装置の構成を示す断面図である。図9は本発明の第3の実施の形態例に係るプラスチック成形装置の構成を示す断面図である。両図において、図1及び図5と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。なお、図8及び図9に示す各実施の形態のプラスチック成形装置60によって作製するプラスチック成形品は、図10に示すような導光板70である。この導光板70の表面には微細なプリズムパターン71が形成されている。
【0029】
図8に示す第2の実施の形態のプラスチック成形装置60によれば、図示していない制御部からの駆動制御信号に基づいて圧力制御装置31によって可動入子20と圧縮ピン28を同時に可動させる。このように可動入子20と圧縮ピン28を同時に動かすようにしても、第1,第2の実施の形態で説明した効果を得ることができるが、この場合は特に、転写のための圧縮と樹脂供給通路閉止のための圧縮を別々の可動部材、つまり可動入子20と圧縮ピン28で実施するため、転写と閉止をより確実に行うことができる。
【0030】
一方、図9に示す第3の実施の形態のプラスチック成形装置60によれば、図示していない制御部からのそれぞれの駆動制御信号に基づいて、可動入子20を圧力制御装置22で、また圧縮ピン28を圧力制御装置29で別々のタイミングで可動させることも可能である。この場合は、それぞれを別個に制御するため、転写性向上のためと樹脂供給路閉止のために各々最適なタイミングで圧力を発生させ、より確実な閉止と面転写を実現することができる。例えば、転写面への圧力の負可はなるべく早いタイミングで樹脂粘度が低い状態のときに実施することで転写面への転写は向上する。従って、図9の(b)に示すように、充填途中(樹脂供給通路を確保した状態)で、圧力制御装置22によって可動入子20を駆動し、転写面に圧力を発生させ、充填終了後、図9の(c)に示すように逆流を防ぐため圧力制御装置29によって圧縮ピン28を駆動して樹脂供給通路を閉止するといったことで、より転写性の高い成形品を得ることができる。これは、第2、第3の実施の形態で成形した導光板70のように転写面に微細なパターンを有する成形品に対してはそのパターンへの充填を促進する方法として特に有効となる。
【0031】
なお、上述した各実施の形態において、適用できる樹脂は、各実施の形態に用いたものに限定されるものではないことは言うまでもない。また、本発明の適用は各実施の形態で述べたfθレンズ、回折レンズ、導光板等に限定されるものでもなく、導波路、光ディスクといった微細な凹凸を有する光学素子やプリズム等非常に光学鏡面を有する光学素子、更には光学素子以外の精密部品の成形においても適用可能である。
【0032】
また、本発明は上記実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の原理を説明するためのプラスチック成形装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1のプラスチック成形装置によって作製する光ピックアップ装置用回折レンズを示す図である。
【図3】図1のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【図4】樹脂供給通路を閉止するための移動部材の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態例に係るプラスチック成形装置の構成を示す断面図である。
【図6】第1の実施の形態のプラスチック成形装置によって作製するfθレンズを示す図である。
【図7】第1の実施の形態のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【図8】第2の実施の形態のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【図9】第3の実施の形態のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【図10】第2、第3の実施の形態のプラスチック成形装置によって作製する導光板を示す図である。
【図11】従来のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【図12】別の従来のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【図13】別の従来のプラスチック成形装置を用いてプラスチック成形品を製造する工程を示す工程断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1;回折レンズ、2,51;光学鏡面、3;回折パターン、
10,40,60;プラスチック成形装置、11;固定金型、
12;可動金型、13;金型、14;スプル孔、
15;第1のランナー溝、16;第1のゲート、
17;第2のランナー溝、18;;第2ゲート、
19;キャビティ、20;可動入子、21;転写面、
22,29,31;圧力制御装置、23;球状弁体、
24;内周縁、25;ストップピン、26;樹脂、27;ランナー部、
28;圧縮ピン、30;傾斜、50;fθレンズ、70;導光板、
71;プリズムパターン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上の転写面を有するキャビティと該キャビティに連通する樹脂供給通路とを構成する射出成形金型と、該樹脂供給通路の一部に設けられ、該樹脂供給通路内で移動可能な可動部材を有し、該可動部材が前記樹脂供給通路内の前記キャビティ側と反対側に設けられた樹脂供給用の開口部を閉止する閉止機構部とを具備するプラスチック成形装置であって、
前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積が減少するように前記樹脂供給通路内の充填樹脂に圧力を加え、前記キャビティへの樹脂供給方向におけるキャビティ側の前記樹脂供給路内の圧力と前記キャビティと反対側の前記樹脂供給路内の圧力との差圧によって前記可動部材を前記開口部に押圧させて前記樹脂供給通路を閉止することを特徴とするプラスチック成形品の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂供給通路を構成する前記射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動可能とし、前記樹脂供給通路内の充填樹脂内であって前記キャビティと前記可動部材との間に移動可能な前記樹脂供給通路用入子を挿入するように移動させて前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、前記可動部材を前記キャビティ側と反対側の開口部に押圧させて前記樹脂供給通路を閉止することを特徴とする請求項1記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項3】
前記キャビティを構成する前記射出成形金型におけるキャビティ用入子の一部を移動可能とし、当該移動可能なキャビティ用入子を前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積が減少する方向に移動させる第1の工程と、
前記樹脂供給通路を構成する前記射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動可能とし、前記樹脂供給通路内の充填樹脂内であって前記キャビティと前記可動部材との間に移動可能な前記樹脂供給通路用入子を挿入するように移動させて前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させる第2の工程とを有し、
前記可動部材を前記キャビティ側と反対側の開口部に押圧させて前記樹脂供給通路を閉止することを特徴とする請求項1記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程と前記第2の工程を同時に行うことを特徴とする請求項3記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程と前記第2の工程を個別に行うことを特徴とする請求項3記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂供給通路用入子の先端部は、前記可動部材側に対して傾斜する面を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項7】
少なくとも1つ以上の転写面を有するキャビティと該キャビティに連通する樹脂供給通路とを構成する射出成形金型と、該樹脂供給通路の一部に設けられ、該樹脂供給通路内で移動可能な可動部材を有し、該可動部材が前記樹脂供給通路内の前記キャビティ側と反対側に設けられた樹脂供給用の開口部を閉止する閉止機構部とを具備するプラスチック成形装置において、
前記樹脂供給通路を構成する前記射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる移動手段を有し、
前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、前記樹脂供給通路内の充填樹脂内であって前記キャビティと前記可動部材との間に挿入するように、前記樹脂供給通路用入子を前記移動手段によって移動させて前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、前記可動部材を前記キャビティ側と反対側の開口部に押圧させて前記樹脂供給通路を閉止することを特徴とするプラスチック成形装置。
【請求項8】
少なくとも1つ以上の転写面を有するキャビティと該キャビティに連通する樹脂供給通路とを構成する射出成形金型と、該樹脂供給通路の一部に設けられ、該樹脂供給通路内で移動可能な可動部材を有し、該可動部材が前記樹脂供給通路内の前記キャビティ側と反対側に設けられた樹脂供給用の開口部を閉止する閉止機構部とを具備するプラスチック成形装置において、
前記キャビティを構成する前記射出成形金型におけるキャビティ用入子の一部と前記樹脂供給通路を構成する前記射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる移動手段を有し、
前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積が減少する方向に前記キャビティ用入子を前記移動手段によって移動させると同時に、前記樹脂供給通路内の充填樹脂内であって前記キャビティと前記可動部材との間に挿入するように、前記樹脂供給通路用入子を前記移動手段によって移動させて前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、前記キャビティへの樹脂供給方向におけるキャビティ側の前記樹脂供給路内の圧力と前記キャビティと反対側の前記樹脂供給路内の圧力との差圧によって前記可動部材を前記開口部に押圧させて前記樹脂供給通路を閉止することを特徴とするプラスチック成形装置。
【請求項9】
少なくとも1つ以上の転写面を有するキャビティと該キャビティに連通する樹脂供給通路とを構成する射出成形金型と、該樹脂供給通路の一部に設けられ、該樹脂供給通路内で移動可能な可動部材を有し、該可動部材が前記樹脂供給通路内の前記キャビティ側と反対側に設けられた樹脂供給用の開口部を閉止する閉止機構部とを具備するプラスチック成形装置において、
前記キャビティを構成する前記射出成形金型におけるキャビティ用入子の一部を移動させる第1の移動手段と、
前記樹脂供給通路を構成する前記射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる第2の移動手段とを有し、
前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積が減少する方向に前記キャビティ用入子を前記第1の移動手段によって移動させた後、前記樹脂供給通路内の充填樹脂内であって前記キャビティと前記可動部材との間に挿入するように、前記樹脂供給通路用入子を前記第2の移動手段によって移動させて前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、前記キャビティへの樹脂供給方向におけるキャビティ側の前記樹脂供給路内の圧力と前記キャビティと反対側の前記樹脂供給路内の圧力との差圧によって前記可動部材を前記開口部に押圧させて前記樹脂供給通路を閉止することを特徴とするプラスチック成形装置。
【請求項10】
前記樹脂供給通路用入子の先端部は、前記可動部材側に対して傾斜する面を有することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のプラスチック成形装置。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラスチック成形品の製造方法を用いて又は請求項7〜10のいずれか1項に記載のプラスチック成形装置によって製造されたことを特徴とするプラスチック成形品。
【請求項1】
少なくとも1つ以上の転写面を有するキャビティと該キャビティに連通する樹脂供給通路とを構成する射出成形金型と、該樹脂供給通路の一部に設けられ、該樹脂供給通路内で移動可能な可動部材を有し、該可動部材が前記樹脂供給通路内の前記キャビティ側と反対側に設けられた樹脂供給用の開口部を閉止する閉止機構部とを具備するプラスチック成形装置であって、
前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積が減少するように前記樹脂供給通路内の充填樹脂に圧力を加え、前記キャビティへの樹脂供給方向におけるキャビティ側の前記樹脂供給路内の圧力と前記キャビティと反対側の前記樹脂供給路内の圧力との差圧によって前記可動部材を前記開口部に押圧させて前記樹脂供給通路を閉止することを特徴とするプラスチック成形品の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂供給通路を構成する前記射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動可能とし、前記樹脂供給通路内の充填樹脂内であって前記キャビティと前記可動部材との間に移動可能な前記樹脂供給通路用入子を挿入するように移動させて前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、前記可動部材を前記キャビティ側と反対側の開口部に押圧させて前記樹脂供給通路を閉止することを特徴とする請求項1記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項3】
前記キャビティを構成する前記射出成形金型におけるキャビティ用入子の一部を移動可能とし、当該移動可能なキャビティ用入子を前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積が減少する方向に移動させる第1の工程と、
前記樹脂供給通路を構成する前記射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動可能とし、前記樹脂供給通路内の充填樹脂内であって前記キャビティと前記可動部材との間に移動可能な前記樹脂供給通路用入子を挿入するように移動させて前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させる第2の工程とを有し、
前記可動部材を前記キャビティ側と反対側の開口部に押圧させて前記樹脂供給通路を閉止することを特徴とする請求項1記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程と前記第2の工程を同時に行うことを特徴とする請求項3記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程と前記第2の工程を個別に行うことを特徴とする請求項3記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂供給通路用入子の先端部は、前記可動部材側に対して傾斜する面を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のプラスチック成形品の製造方法。
【請求項7】
少なくとも1つ以上の転写面を有するキャビティと該キャビティに連通する樹脂供給通路とを構成する射出成形金型と、該樹脂供給通路の一部に設けられ、該樹脂供給通路内で移動可能な可動部材を有し、該可動部材が前記樹脂供給通路内の前記キャビティ側と反対側に設けられた樹脂供給用の開口部を閉止する閉止機構部とを具備するプラスチック成形装置において、
前記樹脂供給通路を構成する前記射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる移動手段を有し、
前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、前記樹脂供給通路内の充填樹脂内であって前記キャビティと前記可動部材との間に挿入するように、前記樹脂供給通路用入子を前記移動手段によって移動させて前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、前記可動部材を前記キャビティ側と反対側の開口部に押圧させて前記樹脂供給通路を閉止することを特徴とするプラスチック成形装置。
【請求項8】
少なくとも1つ以上の転写面を有するキャビティと該キャビティに連通する樹脂供給通路とを構成する射出成形金型と、該樹脂供給通路の一部に設けられ、該樹脂供給通路内で移動可能な可動部材を有し、該可動部材が前記樹脂供給通路内の前記キャビティ側と反対側に設けられた樹脂供給用の開口部を閉止する閉止機構部とを具備するプラスチック成形装置において、
前記キャビティを構成する前記射出成形金型におけるキャビティ用入子の一部と前記樹脂供給通路を構成する前記射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる移動手段を有し、
前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積が減少する方向に前記キャビティ用入子を前記移動手段によって移動させると同時に、前記樹脂供給通路内の充填樹脂内であって前記キャビティと前記可動部材との間に挿入するように、前記樹脂供給通路用入子を前記移動手段によって移動させて前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、前記キャビティへの樹脂供給方向におけるキャビティ側の前記樹脂供給路内の圧力と前記キャビティと反対側の前記樹脂供給路内の圧力との差圧によって前記可動部材を前記開口部に押圧させて前記樹脂供給通路を閉止することを特徴とするプラスチック成形装置。
【請求項9】
少なくとも1つ以上の転写面を有するキャビティと該キャビティに連通する樹脂供給通路とを構成する射出成形金型と、該樹脂供給通路の一部に設けられ、該樹脂供給通路内で移動可能な可動部材を有し、該可動部材が前記樹脂供給通路内の前記キャビティ側と反対側に設けられた樹脂供給用の開口部を閉止する閉止機構部とを具備するプラスチック成形装置において、
前記キャビティを構成する前記射出成形金型におけるキャビティ用入子の一部を移動させる第1の移動手段と、
前記樹脂供給通路を構成する前記射出成形金型における樹脂供給通路用入子の一部を移動させる第2の移動手段とを有し、
前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内に樹脂を充填した後、前記キャビティ内及び前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積が減少する方向に前記キャビティ用入子を前記第1の移動手段によって移動させた後、前記樹脂供給通路内の充填樹脂内であって前記キャビティと前記可動部材との間に挿入するように、前記樹脂供給通路用入子を前記第2の移動手段によって移動させて前記樹脂供給通路内の充填樹脂の容積を減少させ、前記キャビティへの樹脂供給方向におけるキャビティ側の前記樹脂供給路内の圧力と前記キャビティと反対側の前記樹脂供給路内の圧力との差圧によって前記可動部材を前記開口部に押圧させて前記樹脂供給通路を閉止することを特徴とするプラスチック成形装置。
【請求項10】
前記樹脂供給通路用入子の先端部は、前記可動部材側に対して傾斜する面を有することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のプラスチック成形装置。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラスチック成形品の製造方法を用いて又は請求項7〜10のいずれか1項に記載のプラスチック成形装置によって製造されたことを特徴とするプラスチック成形品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−113227(P2009−113227A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285820(P2007−285820)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]