説明

プラスチック材料、該プラスチック材料を用いた製品および該プラスチック材料の使用

本発明は、少なくとも1のポリマー、少なくとも1の有機出発化合物、少なくとも1のセラミック材料およびガラスおよび/またはガラスの原料を含有し、セラミック材料と共にガラスセラミックスを形成するための少なくとも1のガラス材料を含有するプラスチック材料において、ガラスがほぼ有機出発化合物の分解温度Tzに相応するガラス転移点Tgを有することを特徴とする、プラスチック材料に関する。有利には有機出発化合物はポリオルガノシロキサンである。ポリオルガノシロキサンの熱分解により、二酸化ケイ素からなる多孔質の基本骨格が形成され、ここに分解温度で液状のガラスが浸潤する。さらに、ガラスセラミックからなる緻密で機械的に安定した層が形成される。該層は電気絶縁性であり、従って火災の場合でもケーブルの機能が維持される。従って火災の危険がある製品、たとえばケーブルまたは家庭用電気製品の電気的な絶縁のために該プラスチック材料が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1のポリマー、少なくとも1の有機出発化合物、少なくとも1のセラミック材料およびガラスおよび/またはガラスの原料を含有し、セラミック材料と共にガラスセラミックスを形成するための少なくとも1のガラス材料を含有するプラスチック材料に関する。該プラスチック材料とならんで該プラスチック材料を含有する製品および該プラスチック材料の使用を記載する。
【0002】
前記の種類のプラスチック材料、該プラスチック材料を含有する製品および該プラスチック材料の使用はWO01/85634A1から公知である。該プラスチック材料はセラミック化することができる。つまり該プラスチック材料は熱による分解(熱分解)によりセラミック材料へと変えることができる。該プラスチック材料のポリマーは、プラスチック材料を主として構成するベース材料である。プラスチック材料のベース材料はたとえばポリオルガノシロキサン(ポリシロキサン、シリコーン、[R(SiO)])である。ポリオルガノシロキサン、たとえばポリ(ジメチルシロキサン)([(CH(SiO)])は、プラスチック材料のベース材料であるのみでなく、プラスチック材料のセラミック材料の有機出発化合物でもある。該プラスチック材料はポリオルガノシロキサン以外にセラミック材料の無機原料、たとえば酸化アルミニウム(Al)を含有している。ガラスセラミックを形成するためのガラス材料はたとえばホウケイ酸ガラスである。プラスチック材料の熱分解により、セラミック相とガラス相とを有するガラスセラミックが形成される。
【0003】
空気中でのポリオルガノシロキサンの熱分解(約500℃の分解温度Tz)の際にまず、二酸化ケイ素(SiO)からなる多少なりとも多孔質で非晶質の基本骨格(マトリックス)が生じる。該二酸化ケイ素は比較的高い温度(1000℃〜1200℃)で酸化アルミニウムと反応してアルミノケイ酸塩またはケイ酸アルミニウムの形のセラミック材料を生じる。該セラミック材料はたとえばケイ酸アルミニウムのムライト(Al×SiO)である。
【0004】
ホウケイ酸ガラスの存在によりセラミック材料と共にガラスセラミックが形成される。ホウケイ酸ガラスは約560℃のガラス転移点を有する。ホウケイ酸ガラスはすでにセラミック材料の形成温度より低い温度で、粘性流により出発化合物の、および/またはセラミック材料の中間生成物の緻密化につながる。このことにより二酸化ケイ素からなる最初は多孔質の基本骨格から高密度のガラスセラミックが生じる。
【0005】
プラスチック材料はたとえばケーブルの電気的な絶縁のためのFRNC(Flame Retardant Non Corrosive:難燃性非腐食性)ケーブル外被として使用される。ケーブルの火災の際に、プラスチック材料の熱分解が生じる。その際、該ケーブル外被から、ガラスセラミックスからなる緻密で、機械的に負荷をかけることができる電気絶縁性の層が形成される。ケーブルの機能は火災の際にも少なくとも一定の時間にわたり維持される。ケーブルの火災に基づいたケーブルの機能の破壊は遅延される。
【0006】
プラスチック材料は、極めて迅速な温度上昇と結びついた、時間に依存した熱分解の際に極めて緻密なガラスセラミックへと反応する。ガラスセラミックスからなる緻密な電気絶縁性の層が生じる。しかし問題は、比較的緩慢な温度上昇と結びついているプラスチック材料の熱分解である。その際にまず、二酸化ケイ素からなる多孔質の基本骨格が形成さるが、ホウケイ酸ガラスにより緻密化を生じることはできなかった。その結果、緻密なガラスセラミックスは得られない。ケーブルの火災から生じるガラスセラミックスからなる層は緻密ではない。ケーブルの機能を火災の際に比較的長い時間にわたって保証することができない。
【0007】
本発明の課題は、比較的緩慢な温度上昇に伴う熱分解の際にも緻密なガラスセラミックスを生じるプラスチック材料を提供することである。
【0008】
前記課題を解決するために、少なくとも1のポリマー、少なくとも1のセラミック材料の少なくとも1の有機出発化合物およびガラスおよび/またはガラスの原料を含有し、セラミック材料と共にガラスセラミックスを形成する少なくとも1のガラス材料を含有するプラスチック材料を提供する。該プラスチック材料はガラスが有機出発化合物の分解温度Tzにほぼ相応するガラス転移点Tgを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の第二の実施態様によれば、製品の少なくとも1の部材を化学的および/または電気的に分離するための該プラスチック材料を有する製品である。
【0010】
本発明のもう1つの実施態様によれば該プラスチック材料を、プラスチック材料の熱分解によりガラスセラミックスを製造するために使用する。
【0011】
プラスチック材料の熱分解によりセラミック材料の有機出発化合物が分解される。有機出発化合物は特にポリオルガノシロキサンである。該ポリオルガノシロキサンはたとえばポリ(ジメチルシロキサン)である。ポリオルガノシロキサンは500℃より低い分解温度Tzを有する。その際、二酸化ケイ素または酸炭化ケイ素からなる多孔質の基本骨格が形成される。次いでこの多孔質の基本骨格に比較的低い温度でガラスが浸潤する。これは、使用されるガラスが有機出発化合物の分解温度Tzで低い粘度を有することにより行われる。毛管力に基づいて程度の差はあるものの、二酸化ケイ素から形成される多孔質の基本骨格中に液状のガラスが浸潤する。従ってガラスセラミックスの出発材料もしくはガラスセラミックスの中間物質の緻密化は、比較的緩慢な温度上昇に伴う熱分解により保証される。高い密度を有するガラスセラミック材料が生じる。迅速な温度上昇の場合でも固体の緻密な灰層が得られる。ガラスセラミックス組成物の動力学的に制限を受けないガラス相形成が行われ、これは迅速な燃焼の場合でも緩慢な燃焼の場合でも、もしくは異なった燃焼温度でも不動態化につながる。
【0012】
有機出発化合物として任意の有機化合物もしくは有機金属化合物が考えられる。有利にはポリマー自体が有機出発化合物である。たとえば有機出発化合物は有機ケイ素ポリマー、たとえばポリシラン、ポリカーボシラン、ポリシラザンまたはポリオルガノシロキサンである。異なった有機金属モノマーおよび非有機金属モノマーからなる種々のポリマーまたはコポリマーの混合物もまた考えられる。有機出発化合物は重合するか、またはモノマーとして存在していてもよい。モノマーとは、有機出発化合物が架橋しないで、かつ重合しており、有機出発化合物が部分的にもしくは完全に架橋していることを意味する。有機出発化合物はプラスチック材料の基本材料を形成することができる。有機出発化合物がプラスチック材料の基本材料の混合物であることもまた考えられる。混合物として特に、有機出発化合物が有機金属塩であるか、または有機金属錯体であることも考えられる。前記の有機出発化合物に関してガラスは特に500℃より低いガラス転移点Tgを有する。有機出発化合物がより高い温度で初めて分解する場合には、500℃を上回るガラス転移点を有するガラスを使用することもできる。
【0013】
セラミック材料および/またはセラミック材料を含有するガラスセラミックスは特に、アルミニウム、ホウ素、バリウム、ビスマス、カルシウム、マグネシウム、窒素、酸素、ケイ素、チタン、亜鉛および/またはジルコニウムの群から選択される少なくとも1の元素を含有する。特にセラミック材料はケイ酸塩である。有利にはケイ酸塩はアルミノケイ酸塩またはケイ酸アルミニウムである。このようなケイ酸塩はたとえばムライト、シリマナイトまたはカイヤナイトである。
【0014】
特別な実施態様ではプラスチック材料のポリマーおよび/またはセラミック材料の有機出発化合物は、1モル%より低いハロゲン割合を有する。通常はケーブルの火災保護のために、ハロゲンを含有するポリマーからなるケーブル外被を使用する。通常の難燃性ポリマーはたとえばポリ塩化ビニル(PVC)である。これらのハロゲン含有ポリマーは熱分解の際にハロゲンもしくはハロゲン化合物を分離する。該ハロゲンまたはハロゲン化合物は、プラスチック材料の燃焼の抑制につながる。しかし遊離されたハロゲンおよびハロゲン化合物は環境の高い負荷につながりうる。従ってたとえばポリ塩化ビニルの熱分解の際に塩酸(HCl)が形成される。これに対して該プラスチック材料はほぼハロゲン不含であるので、ハロゲンもしくはハロゲンの酸がプラスチック材料の燃焼の際に遊離することはない。プラスチック材料を使用する際にハロゲンもしくはハロゲン化合物が存在しなくても、燃焼の抑制もしくは火災にあった製品の電気的な部材の機能の維持が保証される。
【0015】
低いガラス転移点Tgを有するガラスが公知である。このようなガラスは特にアルカリ金属、鉛および/またはリン酸のイオンを有するガラスである。これらのガラスは健康を損なう反応生成物を放出しうる。たとえばリン酸イオンを含有するガラスからは亜リン酸が生じる。鉛イオンを含有するガラスは単に鉛が存在することに基づいて環境の負荷となる。さらに鉛イオンを含有するガラスも、アルカリ金属イオンを含有するガラスも比較的高い導電性により優れている。良好な電気絶縁性を鑑みて、および高い環境相容性を鑑みて、本発明の特別な実施態様では、ガラスはアルカリ金属イオン割合および/または鉛イオン割合および/またはリン酸イオン割合を、そのつど1モル%未満で含有する。このことにより、プラスチック材料の熱分解によって生じるガラスセラミックは低い導電性を有することが保証される。このことはプラスチック材料の熱分解の際に生じるガラスセラミックの電気絶縁作用との関連において重要である。さらにプラスチック材料もしくはプラスチック材料の反応生成物は環境相容性である。特に鉛イオンはほとんど含有されていない。さらに熱分解の際にも亜リン酸は生じない。亜リン酸は、塩酸と同様に、PVCの熱分解の際に遊離し、プラスチック材料の燃焼の際に環境の直接的な健康の危険となる。
【0016】
もう1つの実施態様では、セラミック材料の少なくとも1の無機原料が存在している。無機原料は塩として存在していても、またはセラミック材料として存在していてもよい。特に無機原料は酸化アルミニウムである。別の無機原料、たとえば炭化ケイ素(SiC)もまた考えられる。これらの原料はすでに反応性の形で存在していてもよい。つまり、原料は、有機原料の熱分解により生じる基本骨格と、もしくは基本骨格の材料と直接反応することを意味している。その際にセラミック材料が生じる。1もしくは複数の無機原料は有利には酸化物として存在している。反応性の無機原料がプラスチック材料の熱分解において本質的に基本骨格の材料に対して反応性であり、無機原料が形成されることもまた考えられる。このような無機原料は特に炭酸塩または水酸化物である。エネルギーの供給(火災の際の温度上昇の結果として)により、これらの出発化合物は反応性の酸化物の形に変換される。反応はエネルギーの供給により促進される。その際、同時に全ての系からエネルギーが取り出され、このことは燃焼の速度低下に貢献しうる。従ってたとえば水酸化アルミニウム((Al(OH))から水を分離することによって酸化アルミニウムが生じる。
【0017】
炭酸塩はさらに、低い温度範囲で、つまりセラミック材料が形成される温度よりも低い範囲で、二酸化炭素(CO)の放出によりプラスチック材料の燃焼性を低減するという利点を有する。
【0018】
特別な実施態様では、無機原料および/またはガラス材料は、3μmより小さい、および特に1.5μmより小さい平均粉末粒径D50を有する粉末粒子を含有する粉末である。無機出発化合物は特に酸化アルミニウムである。酸化アルミニウムは微粒子状の、プラスチック材料中に均一に分散した粉末として存在している。
【0019】
この形で、酸化アルミニウムは2つの機能を担う。酸化アルミニウムは有機出発化合物の熱分解生成物と反応してセラミック材料を生じる。酸化アルミニウムからなる微細な粉末粒子は大きい表面積を有するので、高い反応性により優れている。このことによりセラミック材料が形成される温度は低下する。さらに、酸化アルミニウムからなる微細な粉末粒子はガラスセラミックスを形成するための結晶核として働く。このことは、セラミック材料のみでなく、ガラスセラミックスもまた比較的低い温度で形成されることにつながる。
【0020】
プラスチック材料のガラスの体積割合および/またはプラスチック材料のガラスの原料の体積割合が1体積%〜30体積%の範囲から、および特に5体積%〜15体積%の範囲から選択されることが有利である。この比較的少ないガラスの体積割合は、プラスチック材料の熱分解の際に緻密なガラスセラミックスを得るために十分である。その際、低い融点のガラスロットを使用することができる。ガラスロットは安価である。さらにガラスロットのガラス転移点は広い範囲で変化することができるので、ガラスロットの粘度を有機出発化合物の分解温度Tzに容易に適合させることができる。
【0021】
有利にはガラス材料は高反応性のガラスを含有する。このようなガラスは特に酸化ホウ素(B)、酸化ビスマス(Bi)、酸化亜鉛(ZnO)およびわずかな割合の二酸化ケイ素を含有するガラスである。これらの高反応性ガラスは、緻密化、つまりガラスセラミックスの形成がすでに比較的低い温度で行われることにつながる。その際、緻密化は実質的に、ホウケイ酸ガラスの場合のように粘性流によるのではなく、反応性の液相焼結により行われる。
【0022】
プラスチック材料は特に製品の少なくとも1の部材の化学的および/または電気的な絶縁のために適切である。該製品は耐火性の製品である。その際に任意の製品が考えられる。特に製品は家庭用電気製品であり、かつ部材が該家庭用電気製品の電気部材である。プラスチック材料はたとえば防火板または耐火性のゴムシーラントへと加工されるので、家庭用電気製品の部材は火災から保護される。防火板への加工またはゴムシーラントへの加工はプレス法または射出成形法により行うことができる。
【0023】
特別な実施態様では製品の部材はプラスチック材料を含有する外被を有する。このような製品は特に光学的な導体またはケーブルである。このような製品の部材はケーブルのケーブル心線である。外被はケーブル心線のケーブル外被である。ケーブル外被はケーブル心線の電気的な絶縁のために役立つ。ケーブルの火災はケーブル外被のプラスチック材料の熱分解につながり、その際に緻密で、機械的に負荷をかけることができ、かつ電気絶縁性のガラスセラミックスが生じ、これは本来存在するケーブル外被の機能を担う。プラスチック材料のこの特性に基づいてケーブル外被はFRNC−ケーブル外被として使用することができる。ケーブル外被を製造するためにたとえば押出成形法が使用される。
【0024】
プラスチック材料は火災の際に、製品もしくは製品の部材の電気的な絶縁を維持することにつながる。さらにプラスチック材料の熱分解の際に生じるガラスセラミックスは、該部材を化学的に絶縁することにつながる。緻密な、化学薬品に対してほぼ非透過性の部材の被覆が形成される。被覆は化学薬品のためのバリアとして働く。従って部材の成分は、部材の周囲の成分と接触することはなく、かつ相応して反応することはない。ケーブルはたとえば外側および内側のケーブル外被を有していてもよい。プラスチック材料を含有するケーブル外被は外側のケーブル外被を形成する。内側のケーブル外被はプラスチック材料を含有する外側のケーブル外被とケーブル心線との間に配置されており、かつ安価で、容易に燃焼可能なプラスチックからなる。ケーブルの火災が発生した場合、プラスチック材料を含有する外側のケーブル外被はガラスセラミックからなる緻密な層を形成し、該層はたとえば酸素が内側のケーブル外被の容易に燃焼可能なプラスチックに到達しないようにする。内側のケーブル外被は燃焼せず、かつ損傷されないままであるので、火災の際にもケーブル心線の電気絶縁性は確保される。外側のケーブル外被はたとえば架橋していないか、または部分的に架橋したポリマーを含有するプラスチック材料からなる薄い層を塗布もしくは噴霧することによって、施与される内側のケーブル外被上に製造される。その後、ポリマーの架橋が開始される。セラミック化することができるプラスチックからなる耐火性の被覆が形成される。
【0025】
製品の部材の外被がプラスチック材料以外に別の、たとえば容易に燃焼可能な、およびセラミック化することができないプラスチック材料を含有することもまた考えられる。セラミック化可能なプラスチック材料と、セラミック化することができないが、容易に燃焼することができるプラスチック材料とからなる混合物が存在する。その際、セラミック化可能なプラスチック材料の充填度は、火災の場合に緻密なガラスセラミック層が形成されるように選択する。火災の際に形成される緻密なガラスセラミック層により、環境との物質交換はほぼ行われ得ない。従って酸素は容易に燃焼可能なプラスチック材料へ到達しない。ケーブルの燃焼を抑制することができる。
【0026】
要約するならば、本発明により次の本質的な利点が生じる:
− プラスチック材料中で使用され、実質的にセラミック材料の有機原料の分解温度Tzに相応するガラス転移点Tgを有するガラスもしくはガラスの出発化合物に基づいて、ガラスはプラスチック材料の熱分解により生じる多孔質の構造へ浸潤する。これはガラスセラミックの構造の安定化に貢献する。
【0027】
− 高反応性のガラスを使用することによりガラスセラミックの緻密化は反応性の液相焼結により行われれる。このことはガラスセラミックからなる高密度の層を生じる。
【0028】
− プラスチック材料は熱分解により生じたガラスセラミックスの化学的、電気的および機械的安定性に基づいて効率的なFRNCケーブル外被として使用することができる。
【0029】
複数の実施例およびこれらに属する図面に基づいて、プラスチック材料および該プラスチック材料を含有する製品を以下に詳細に記載する。図面は略図であり、かつ縮尺に忠実な図面ではない。
【0030】
図1は、プラスチック材料を含有する電気工学的な製品の断面図を示す。
【0031】
図2は、プラスチック材料を含有する別の電気工学的な製品の断面図を示す。
【0032】
電気工学的な製品1は導電性の材料からなるケーブル心線2およびプラスチック材料を含有するケーブル外被3を有するケーブルである。プラスチック材料はベース材料としてポリ(ジメチルシロキサン)からなるポリマーを含有する。ポリ(ジメチルシロキサン)は、少なくとも1のセラミック材料の有機出発化合物として働く。さらに該プラスチック材料中にはセラミック材料の無機出発化合物および該セラミック材料と共にガラスセラミックを形成するためのガラス材料が含有されている。無機出発化合物は粉末状の酸化アルミニウムである。粉末粒子は約1μmの平均粉末粒径D50を有する。ガラス材料は同様に約1μmの粉末粒径D50を有する粉末状で存在する。
【0033】
ガラス材料は次の組成を有するガラス粉末混合物である:酸化ホウ素27.5モル%、酸化ビスマス34.8モル%、酸化亜鉛32.5モル%および二酸化ケイ素6モル%。ガラス粉末混合物は該プラスチック材料中に約10体積%まで含有されている。
【0034】
第一の実施態様によれば、ケーブル外被は実質的にプラスチック材料のみからなる(図1)。ケーブル火災の際には、電気絶縁性のプラスチック材料からガラスセラミックからなる電気絶縁性の保護層が形成される。
【0035】
第二の実施態様によればケーブル外被はセラミック化可能なプラスチック材料のみからなるのではない。該ケーブル外被はさらに、容易に燃焼可能なエラストマーも含有する。ケーブル外被のセラミック化可能なプラスチック材料の割合はこの場合、火災の際にガラスセラミックからなる化学的に絶縁性の保護層が形成されるように選択する。この保護層は容易に燃焼可能なエラストマーを酸素による攻撃から十分に保護するものである。ケーブル火災は停止される。
【0036】
もう1つの実施態様によれば、ケーブルは内側のケーブル外被4および外側のケーブル外被3を有する(図2)。外側のケーブル外被3はセラミック化可能なプラスチック材料からなる。内側のケーブル外被4は容易に燃焼可能なポリマーからなる。火災の際には外側のケーブル外被から、ガラスセラミックスからなる緻密で、化学的および電気的に分離する保護層が形成される。電気絶縁性の、内側のケーブル外被は十分に維持される。ケーブルの機能は確保される。
【0037】
セラミック化可能なプラスチック材料からなるケーブル外被3を有するケーブル1を製造するために、部分的に架橋した有機ケイ素ポリマーをガラス粉末混合物および酸化アルミニウム粉末と一緒に二軸スクリュー混練機中で混合し、かつ均質化する。ケーブルのケーブル心線の被覆は押出機中で行い、その際、押出機のヘッド中でダイヘッド(Pinolenkopf)を用いてケーブル心線を形成する予熱されたワイヤをプラスチック材料の溶融液により被覆する。同時にポリマーの架橋を促進し、その際、ケーブル外被が形成される。
【0038】
プラスチック材料はたとえば次の特性により優れている:平均発熱量:80kW/m;発火時間:117s;燃焼性能指数(Flammenentwicklungsindex):0.98ms/kW;煤煙パラメータ(Rauchentwicklung):121(MW/kg);高い灰安定性(Aschestabilitaet)。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】プラスチック材料を含有する電気工学的な製品の断面を示す図
【図2】プラスチック材料を含有する別の電気工学的な製品の断面を示す図
【符号の説明】
【0040】
1 ケーブル、 2 ケーブル心線、 3 ケーブル外被、 4 ケーブル外被

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1のポリマー、
少なくとも1の有機出発化合物、
少なくとも1のセラミック材料および
ガラスおよび/またはガラスの原料を含有し、セラミック材料と共にガラスセラミックスを形成するための少なくとも1のガラス材料
を含有するプラスチック材料において、
ガラスがほぼ有機出発化合物の分解温度Tzに相応するガラス転移点Tgを有することを特徴とする、プラスチック材料。
【請求項2】
有機出発化合物がポリオルガノシロキサンである、請求項1記載のプラスチック材料。
【請求項3】
ガラスのガラス転移点Tgが500℃より低い、請求項1または2記載のプラスチック材料。
【請求項4】
ガラス材料が酸化ビスマスおよび/または酸化ホウ素および/または二酸化ケイ素および/または酸化亜鉛を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のプラスチック材料。
【請求項5】
セラミック材料および/またはセラミック材料を含有するガラスセラミックスが、Al、B、Ba、Bi、Ca、Mg、N、O、Si、Ti、Znおよび/またはZrの群から選択される少なくとも1の元素を含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のプラスチック材料。
【請求項6】
プラスチック材料のガラスの体積割合および/またはプラスチック材料のガラスの原料の体積割合が、1体積%〜30体積%の範囲から、および特に5体積%〜15体積%の範囲から選択されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のプラスチック材料。
【請求項7】
ポリマーおよび/またはセラミック材料の有機出発化合物が1モル%より少ないハロゲン割合を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のプラスチック材料。
【請求項8】
ガラスがそのつど1モル%より少ないアルカリ金属イオン割合および/または鉛イオン割合および/またはリン酸イオン割合を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載のプラスチック材料。
【請求項9】
セラミック材料の少なくとも1の無機原料が存在する、請求項1から8までのいずれか1項記載のプラスチック材料。
【請求項10】
無機原料が酸化アルミニウムである、請求項9記載のプラスチック材料。
【請求項11】
無機原料および/またはガラス材料が、3μmより小さい、および特に1.5μmより小さい平均粉末粒径D50を有する粉末粒子を有する粉末を含有する、請求項9または10記載のプラスチック材料。
【請求項12】
製品の少なくとも1の部材を化学的および/または電気的に分離するための請求項1から11までのいずれか1項記載のプラスチック材料を有する製品(1)。
【請求項13】
製品(1)の部材(2)がプラスチック材料を含有する外被(3)を有する、請求項12記載の製品。
【請求項14】
部材の外被が部材の被覆である、請求項13記載の製品。
【請求項15】
製品がケーブルであり、部材がケーブルのケーブル心線であり、かつプラスチック材料を含有する外被がケーブルのケーブル外被である、請求項13または14記載の製品。
【請求項16】
製品が家庭用電気製品であり、かつ部材が家庭用電気製品の電気的な部材である、請求項12から14までのいずれか1項記載の製品。
【請求項17】
プラスチック材料を熱分解することによりガラスセラミックスを製造するための、請求項1から11までのいずれか1項記載のプラスチック材料の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−526866(P2007−526866A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516194(P2006−516194)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051267
【国際公開番号】WO2005/000757
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(390040578)ベーエスハー ボッシュ ウント ジーメンス ハウスゲレーテ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (71)
【氏名又は名称原語表記】BSH Bosch und Siemens Hausgeraete GmbH
【住所又は居所原語表記】Carl−Wery−Strasse 34、 D−81739 Muenchen、 Germany
【Fターム(参考)】