説明

プラスチック用臭素系難燃剤組成物

【課題】 可燃性のプラスチック製品を難燃化するために添加される臭素難燃剤の難燃効果を増強し、少ない添加量で所望の難燃効果が得られる臭素系難燃剤の組成物を提供する。
【解決手段】 (a)臭素含有量50wt%以上の臭素系難燃剤、
(b)1,2−ジフェニル−1,1,2,2−テトラ低級アルキルエタンもしくはその環低級アルキル置換体、および
(c)中心金属原子が7族ないし10族の金属元素であるフタロシアニン錯体もしくはナフタロシアニン錯体を含み、(b)および(c)成分は99:1ないし1:99の重量比で存在し、合計して(a)成分100重量部あたり0.01ないし50重量部含まれているプラスチック用難燃剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製品の難燃化に使用する臭素系難燃剤組成物、特に臭素系難燃剤の難燃効果を増強するためにラジカル発生剤および金属フタロシアニン錯体または金属ナフタロシアニン錯体と組み合せた臭素難燃剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは耐水性、機械強度に優れ、しかも、成形加工も容易なことから、家電製品、OA・電気機器、建材用途など多くの用途に使用されている。これらの材料に対して、火災に対する安全性の観点から、それぞれの分野で難燃規格が決められている。しかしながら、プラスチックのほとんどは易燃性であり、難燃化する必要がある。しかも近年さらにその安全性に対する要求が強くなり、より高度の難燃化が要求されている。プラスチックの難燃化は一般的に難燃化効率の高い臭素化合物などのハロゲン系難燃剤と酸化アンチモンを樹脂に配合して難燃化する方法が採用されている。
【0003】
ハロゲン含有難燃剤は、それを含むプラスチック製品の焼却処分に際して発生する発がん性のダイオキシン等による環境汚染が懸念される。そのためリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウムなどのハロゲンを含まない難燃剤で代替しようとする試みがあるが、成形性や成形物の機械的物性が許容し得る限度での配合量では難燃効果は臭素系難燃剤に遥かに及ばない。そのため環境への悪影響を低減することはもとより、プラスチック本来の成形性や機械的物性をできるだけ維持し、さらに成形時発生するスクラップのリサイクルを可能とするために、プラスチックに配合する臭素系難燃剤の量をできるだけ少なくすることが強く要望されている。
【0004】
臭素系難燃剤で難燃化した熱可塑性樹脂組成物に、ラジカル発生剤、典型的には2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを配合して燃焼時のドリップを促進することにより、高度な難燃効果が得られることが特開平11−199784公報に報告されている。2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンは、ジクミルパーオキサイドと組合わせて臭素系難燃剤を含む発泡性スチレン共重合体粒子に(特開2001−181433公報)、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートと組合わせてポリオレフィン樹脂に(特開2002−322322公報)、HBCDおよびリン系難燃剤と組合わせて発泡ポリスチレンに(特表2002−523586公報)、有機スズカルボン酸塩と組合わせて臭素系難燃剤によるポリプロピレン樹脂の難燃化に(特開2003−160705公報)、有機スズ化合物と組合わせてテトラブロモビスフェノールA−ビス(ジブロモプロピル)エーテルによるポリプロピレン樹脂の難燃化に(特開2003−321584公報)それぞれ使用されている。これらの先行技術においては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンに代表されるラジカル発生剤の添加量が比較的多いか、樹脂および/または臭素系難燃剤に関して汎用性に乏しい。
【0005】
フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンに代表される銅フタロシアニンはプラスチックの着色にも使用される顔料である。米国特許No.3,825,520はオクタブロモビフェニルで難燃化したポリスチレンまたはABS樹脂にFe,Cu,Mn,VまたはCoフタロシアニンを併用することによって発煙量が抑制されることを報告している。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、1,2−ジフェニルエタン系ラジカル発生剤と、7〜10族の金属元素を中心原子とするフタロシアニンもしくはナフタロシアニン錯体の組合わせを含む臭素系難燃剤組成物を提供する。本発明はまた、本発明の難燃剤組成物を配合した難燃性プラスチック組成物を提供する。
【0007】
本発明の難燃剤組成物は、(a)臭素含有量50wt%の臭素系難燃剤、(b)1,2−ジフェニル−1,1,2,2−テトラ低級アルキルエタンもしくはその環低級アルキル置換体、および(c)中心金属原子が7族ないし10族の金属元素であるフタロシアニン錯体もしくはナフタロシアニン錯体を含み、(b)および(c)成分は99:1ないし1:99の重量比で存在し、合計して(a)成分100重量部あたり0.01ないし50重量部含まれている。
【0008】
本発明の難燃性プラスチック組成物は、可燃性プラスチック材料100重量部あたり、本発明の難燃剤を臭素系難燃剤(a)が、0.5ないし25重量部となるように配合することによって得られる。
【0009】
本発明の難燃剤組成物は、同じ難燃性レベルを達成するために必要とする臭素系難燃剤単独の添加量に比較して少なくてすみ、そのためプラスチック本来の機械的物性および成形性を大部分維持しながら、これを配合したプラスチック組成物および成形物のリサイクル性を高め、環境汚染の懸念を減らす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
臭素含有量50wt以上の臭素系難燃剤(a)は良く知られており、その例は次のように大別される。
【0011】
臭素化脂環族炭化水素類:
ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、テトラブロモシクロオクタン(TBCO)、モノクロロペンタブロモシクロヘキサンなど。
【0012】
臭素化芳香族炭化水素類:
ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、ブロム化ポリスチレン、オクタブロモトリメチルインダンなど。
【0013】
臭素化フェニルエーテル類:
デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、ポリ(2,6−ジブロモフェニレンオキサイド)など。
【0014】
臭素化ビスフェノールおよびその誘導体
テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールF−ビス(2,3−ジブロモプロビル)エーテル、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモイソブチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモイソブチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールF−ビス(2,3−ジブロモイソブチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールA−ジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールS−ジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールF−ジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールA−ジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールS−ジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールF−ジメタリルエーテルなど。
【0015】
臭素化イソシアヌル酸エステル:
トリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリ(2,3−ジブロモイソブチル)シアヌレートなど:
【0016】
その他:
テトラブロモ無水フタル酸、ブロム化ポリカーボネート、ブロム化エポキシ樹脂、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなど。
【0017】
(b)成分は、1,2−ジフェニルエタンの1位と2位の炭素のそれぞれへ2個のC1−6アルキル基が結合した誘導体である。フェニル基もそれぞれ1−6アルキル基で置換されていても良い。これらの化合物はラジカル発生剤として知られ、その例は2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、4,5−ジメチル−4,5−ジフェニルオクタン、3,4−ジエチル−3,4−ジフェニルヘキサン、4,5−ジエチル−4,5−ジフェニルオクタン、2,3−ジメチル−2,3−ジ−p−トリルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジ−p−トリルヘキサンを含む。2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンが代表的である。
【0018】
(c)成分のフタロシアニン錯体またはナフタロシアニン錯体は、中心金属原子がCuでなく、7族ないし10族の金属元素であることを除き、有機顔料である銅フタロシアニンと同じリガンド構造を持っている。このフタロシアニンリガンドまたはナフタロシアニンリガンドはベンゼン環上に塩素、臭素、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基などの置換基を持つことができるが、典型的にはリガンドはベンゼン環上に置換基を持っていない。本発明に使用し得る錯体の中心原子は、周期律表7族ないし10族の金属元素でなければならない。Mn,Tc,Re,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,PdまたはPtが好ましく、特にFe,Coが好ましい。典型的には塩化物であるハロゲン化物の形の中心金属原子の錯体も含まれる。これに対し中心原子がCu,Ti,Zn,V,Crなどの対応する錯体は、単独でまたはラジカル発生剤との組合わせにおいて臭素系難燃剤の難燃効果を増強する効果はない。
【0019】
(b)成分と(c)成分とは99:1ないし1:99の重量比で組合わされる。好ましくは90:10ないし10:90、最も好ましくは75:25ないし25:75の重量比である。(b)成分と(c)成分の合計の臭素系難燃剤(a)に対する比率は、臭素系難燃剤100重量部に対し、一般に0.01ないし50重量部、好ましくは0.1ないし30重量部、最も好ましくは0.2ないし20重量部である。
【0020】
(a)成分、(b)成分および(c)成分からなる本発明の難燃剤組成物は、可燃性プラスチック材料の難燃化のために使用される。その添加量は所望の難燃性レベル、難燃性組成物を構成する各成分の種類およびそれらの比率、難燃助剤およびリン系難燃剤のような他の難燃剤の併用の有無などによって広範囲に変動し得るが、可燃性プラスチック材料100重量部あたり、臭素系難燃剤(a)が一般に0.5ないし25重量部、好ましくは1.0ないし15重量部の範囲に達する量である。先に述べた諸理由により、所望の難燃性レベルに達成可能である限り、過剰に添加すべきではない。
【0021】
難燃化の対象となるプラスチック材料の多くは熱可塑性プラスチックである。その例は、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HI−PS)、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、液晶性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー、ポリアミドポリエーテルエラストマー、ポリアミドポリエステルエラストマー、これらのポリマーブレンドおよびポリマーアロイなどを含むがこれに限られない。成形用に多用される熱可塑性プラスチックはポリスチレン、HI−PS、ポリプロピレン、ABS、ポリカーボネート、ポリアミドである。本発明の難燃剤組成物は熱硬化性プラスチックの難燃化にも使用することができる。例えば紙を基材とするフェノール樹脂積層板や、ガラスファイバーを基材とするエポキシ樹脂積層板や低圧成形される不飽和ポリエステル樹脂の難燃化などである。
【0022】
臭素系難燃剤の難燃効果は、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウムなどの難燃助剤の併用によって増強することが知られている。三酸化アンチモンが代表的である。併用する場合、難燃助剤は可燃性プラスチック材料100重量部あり、10重量部以下、好ましくは0.5ないし10重量部の範囲内で添加される。
【0023】
難燃性プラスチック組成物およびその成形物に含まれる臭素の量を減らすため、所望の難燃性レベルが得られる限り、本発明の難燃性組成物の一部をリン系難燃剤で代替することも有効である。そのようなリン系難燃剤の例は、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、レゾルシノール−ビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールA−ビス(ジフェニル)ホスフェート、レゾルシノール−ビス(ジクレジル)ホスフェート、ビスフェノールA−ビス(ジクレジル)ホスフェート、レゾルシノール−ビス(ジ−2,6−キシレニル)ホスフェート、ビスフェノールA−ビス(ジ−2,6−キシレニル)ホスフェート、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシホスファゼン、キシレノキシホスファゼン、メトキシホスファゼン、エトキシホスファゼン、プロポキシホスファゼン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムを含むがこれに限らない。リン系難燃剤は一般に本発明の難燃剤組成物に含まれる臭素系難燃剤の半分までを代替しても良い。
【0024】
本発明の難燃性プラスチック組成物は種々の慣用の添加剤を含むことができる。例えばスズ系およびホスファイト系熱安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、エポキシ系および無機系熱安定剤である。個々のこれらの添加剤はプラスチック加工、および成形技術分野においては周知であり、ハンドブックに記載されている。
【0025】
発泡成形体を製造する場合は、発泡剤および発泡核剤(気泡調整剤)が添加される。発泡剤としては例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、モノクロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロパン等の揮発性有機発泡剤、もしくは水、窒素、炭酸ガスなどの無機発泡剤、あるいはアゾ化合物などの化学発泡剤などがある。これらは単独または2種以上を併用して用いることができる。また発泡核剤および気泡調整剤としてはタルクやベントナイトなどが挙げられる。発泡剤の添加量は発泡体に望まれる性能に応じて変動するが、プラスチック材料100重量部あたり、一般に0.005ないし0.7モル、好ましくは0.01ないし0.5モルである。
【0026】
必要に応じ使用される他の慣用添加剤は、例えばベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、ベンゾエート系やヒンダードアミン系などの紫外線安定化剤、ガラス繊維やカーボン繊維などの耐衝撃改良剤、酸化チタンやカーボンブラックや顔料などの着色剤、アエロジル、シリカ粉末、炭酸カルシウム、亜鉛華などの充填剤、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂などの滑剤および滴下防止剤、ベンジリデンソルビトール系や有機酸アルミニウム塩系などの結晶核剤、ポリエーテル系や界面活性剤などの離型剤、滑剤、帯電防止剤、相溶化剤などの各種添加剤などが挙げられる。
【0027】
本発明の難燃性プラスチック組成物は公知の方法で製造することができる。熱可塑性プラスチックの場合は、プラスチック材料と、本発明の難燃剤組成物の(a)、(b)および(c)成分を二軸押出機、バンバリーミキサー、ラボプラストミル、熱ロールで溶融混練し、射出成形機や熱プレスによって所望の成形品に成形することができる。難燃剤組成物および任意の添加剤は一時に、または分割してプラスチック材料と混合することができる。
【0028】
発泡体の場合、発泡剤は押出機内でプラスチックの溶融が完了した時点で押出機に圧入して混合することができる。また難燃剤組成物および任意の慣用添加剤をあらかじめ含んでいるビーズをペンタンのような発泡剤で含浸し、型内で水蒸気で加熱して発泡成形することもできる。
【0029】
フェノール樹脂のような熱硬化性プラスチックの場合、初期縮合物またはワニスに必要に応じて硬化促進剤と共に難燃剤組成物を添加した後、注型または積層成形することができる。架橋剤としてスチレンを含んでいる不飽和ポリエステル樹脂の場合も同様である。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は本発明の例証であり、本発明の限定と考えるべきではない。これらにおいて「部」および「%」は特記しない限り重量基準による。実施例および比較例において使用した原料名は次のとおりである。
A)プラスチック材料
A−1:耐衝撃性ポリスチレン(東洋スチレン(株)トーヨースチロールH450)
A−2:耐衝撃性ポリスチレン(東洋スチレン(株)トーヨースチロールH650)
A−3:ポリプロピレン(住友化学工業(株)ノーブレンY101S)
A−4:ポリカーボネート(出光石油化学工業(株)タフロンA2200:ABS(東レ(株)トヨラック)=70:30のブレンド
A−5:ポリアミド(旭化成工業(株)レオナ1300S)
A−6:高密度ポリエチレン(HDPE)(出光石油化学(株)IDEMITSU HD 130J)
A−7:ポリスチレン(東洋スチレン(株)トーヨースチロールG220)
A−8:フェノール樹脂ワニス
B)臭素系難燃剤
B−1:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル
B−2:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモイソブチル)エーテル
B−3:トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート
B−4:トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート
B−5:2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン
B−6:デカブロモジフェニルエタン
B−7:デカブロモジフェニルエーテル
B−8:ポリ(2,6−ジフェニレンオキサイド)
B−9:ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)
B−10:テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー
C)ラジカル発生剤
2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン
D)フタロシアニン/ナフタロシアニン錯体
D−1:フタロシアニン鉄
D−2:フタロシアニン鉄塩化物
D−3:フタロシアニンコバルト
D−4:ナフタロシアニン鉄
D−5:フタロシアニン銅(比較例用)
D−6:フタロシアニンチタン(比較例用)
E)熱安定剤/酸化防止剤
E−1:ジオクチルスズマレエートポリマー
E−2:ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
E−3:ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
F)難燃助剤
三酸化アンチモン
G)発泡剤
ペンタン
H)発泡核剤(気泡調整剤)
タルク(日本タルク工業)
I)リン系難燃剤
トリフェニルホスフェート
【0031】
実施例1−20および比較例1−19
1.試験片作成方法
表1−表5に示す配合に従い、原料を2軸押出機で混練してペレット化した。このペレットを所定の寸法の試験片に射出成形し、評価試験に用いた。
2軸押出機および射出成形機の加熱シリンダーの温度は以下のように設定した。
【0032】

加熱シリンダー設定温度(℃)
プラスチック 2軸押出機 射出成形機
材 料 入口 出口 入口 出口 金型
A−1,A−3,A−6 80 200 180 200 40
A−4 80 260 240 260 80
A−5 80 300 280 300 80

【0033】
2.難燃性試験
実施例1〜16,比較例1〜15
UL−94垂直燃焼試験に準拠して行った。試験片は長さ125mm,幅12.5mm
,厚さ3.2mmとした。規格外はNR(Not Rating)で表わす。
実施例17〜20,比較例16〜18
JIS K 7201に準拠して酸素指数(LOI)を求めた。
曲げ試験:
ASTM−D790に準拠し、曲げ応力を測定した。
3.リサイクル性評価
上の試験片作成方法において得たペレットを80℃,95%RHの恒温恒湿槽に1週間保管した後、再度同じ条件で2軸押出機を用いてペレットに押出し、射出成形して試験片を作成した。このものについて初回の試験との色差(ΔE)を測定し、初回試験片と同じ方法で難燃試験および曲げ試験を行い、曲げ強度については初回試験片の曲げ強度の保持率(%)で評価した。リサイクル性評価は比較例については行わなかった。結果は表1−表5に示されている。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
【表6】

【0040】
実施例1−20および比較例1−19は、臭素系難燃剤にラジカル発生剤と7ないし10族金属元素のフタロシアニン/ナフタロシアニン錯体を組合わせると、臭素系難燃剤単独、それとラジカル発生剤または錯体のいずれかの組合わせ、およびラジカル発生剤と7ないし10族以外の金属錯体との組合わせに比較して、難燃効果が増強されることを示している。
【0041】
実施例21−26および比較例20−23
1.発泡体の成形方法
表7および表8の配合に従って、発泡剤を除く原料をタンデム型2段押出機へ供給し、口径65mmの第1段押出機で200℃に加熱して溶融混練し、口径90mmの第2段押出機へ供給する。第1段押出機の先端へ別ラインで所定量の発泡剤を供給する。第2段押出機では溶融混練した原料を120℃に冷却し、その先端のダイから幅45mm、厚さ2.5mmの発泡体リボンに押出す。
2.発泡体目視評価
目視により発泡体の状態を次の基準に従って評価した。
○:ワレ、亀裂、ボイドなどのない発泡体が安定して得られた。
×:ダイからのガスの噴出があり、安定して発泡体が得られないか、または発泡体にワレ、亀裂、ボイドなどがあった。
3.難燃性試験
JIS K7201に準拠して酸素指数(LOI)を求めた。
4.自消性
難燃試験において酸素指数が26以上のものを○:自消性ありとし、26未満のものを×:自消性なしとした。
5.リサイクル性評価
上の発泡体成形方法において得た発泡体を粉砕し、80℃,95%RHの恒温恒湿槽に1週間保管した後、再度同じ条件で発泡成形し、発泡体を初回の発泡体と同じ基準で目視評価し、難燃性試験を行って酸素指数および自消性を決定した。比較例についてはリサイクル性の評価は行わなかった。
結果は表7および表8に示されている。
【0042】
【表7】

【0043】
【表8】

【0044】
表7および表8の結果から、実施例21−26の発泡体は難燃性と発泡状態において満足であることがわかる。比較例20−23の発泡体は難燃性が不足して自消性がなく、増量した臭素系難燃剤にリン系難燃剤を併用して難燃性を高めた比較例19の発泡体ではヤケが発生し、亀裂が見られた。
【0045】
実施例27−30および比較例24−26
1.試験片作成方法
表9の配合に従って、フェノール樹脂ワニスにすべての原料を混合し、坪量125g/mのクラフト紙に含浸し、乾燥して含浸量50%のプリプレグを製造した。このプリプレグ8枚を重ね、150kgf/cmの圧力および150℃の温度で1時間加圧成形し、厚さ1.6mmの紙フェノール樹脂積層板を得た。
2.燃焼性試験
UL−94垂直燃焼試験に準拠して行った。試験片は長さ125mm,幅12.5mm,厚さ3.2mmとした。
結果は表9に示されている。
【0046】
【表9】

【0047】
表9の成績は、実施例27−30の積層板は、比較例24−26の積層板に比較して難燃性のレベルが高いことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)臭素含有量50wt%以上の臭素系難燃剤、
(b)1,2−ジフェニル−1,1,2,2−テトラ低級アルキルエタンもしくはその環低級アルキル置換体、および
(c)中心金属原子が7族ないし10族の金属元素であるフタロシアニン錯体もしくはナフタロシアニン錯体を含み、(b)および(c)成分は99:1ないし1:99の重量比で存在し、合計して(a)成分100重量部あたり0.01ないし50重量部含まれているプラスチック用難燃剤組成物。
【請求項2】
前記1,2−ジフェニル−1,1,2,2−テトラアルキルエタンもしくはその環C1−6アルキル置換体は、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、4,5−ジメチル−4,5−ジフェニルオクタン、3,4−ジエチル−3,4−ジフェニルヘキサン、4,5−ジエチル−4,5−ジフェニルオクタン、2,3−ジメチル−2,3−ジ−p−トリルブタン、または3,4−ジメチル−3,4−ジ−p−トリルヘキサンから選ばれる請求項1の難燃剤組成物。
【請求項3】
前記フタロシアニン錯体もしくはナフタロシアニン錯体の中心原子は、Mn,Tc,Re,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,PdまたはPtから選ばれる請求項1の難燃剤組成物。
【請求項4】
(a)臭素含有量50wt%以上の臭素系難燃剤、および
(b)臭素系難燃剤100重量部あたり0.05〜15重量部の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンとフタロシアニン鉄錯体との95:5〜5:95重量比混合物を含んでいるプラスチック用難燃剤組成物。
【請求項5】
可燃性プラスチック材料100重量部あたり、請求項1ないし4のいずれかの難燃剤組成物を臭素系難燃剤として0.5〜25重量部配合してなる難燃性プラスチック組成物。
【請求項6】
前記可燃性プラスチック材料は、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド、またはポリカーボネートである請求項5の難燃性プラスチック組成物。

【公開番号】特開2006−70138(P2006−70138A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254343(P2004−254343)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(502419177)第一エフ・アール株式会社 (2)
【Fターム(参考)】