説明

プラスチック製中空二重壁構造体

【課題】 切込部から補強材を挿入する過程で切込部の舌片が補強材の面に沿って折り込まれて補強材が強固に支持固定されるプラスチック製中空二重壁構造体を提供する。
【解決手段】 プラスチック製中空二重壁構造体であるデッキボード1は、表壁2、裏壁3およびこれら両壁の周囲を周囲壁4で閉じて中空部を形成している。周囲壁4に切り込みを入れた切込部9を設けて切込部9から補強材7を中空部に挿入することにより補強する。周囲壁4に形成する切込部9の切り込みは一部を周囲壁4と連なる舌片状に形成して補強材7の挿入により舌片10が中空部側に折り込まれるようにしてある。舌片10の周囲壁4と連なる基端縁と周囲壁4との境には、舌片10の折り込みに起因する歪みが周囲壁方向に波及するのを阻止するための凹状曲折規制部12を形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空部に補強材を挿入して補強したプラスチック製中空二重壁構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性合成樹脂のブロー成形により一対の対向壁を離隔してその周囲壁を互いに溶着して中空部を形成し、内部に補強材を挿入した合成樹脂製中空体は、実用新案登録第2538513号公報に記載されており、直線状に連続する空洞部を成形品本体と一体にブロー成形するとともに、成形品本体を補強するため補強用のパイプ材を空洞部の内部に挿通固定するブロー成形品の補強構造は、特許第3472460号公報に記載されている。また、補強材の挿入口とする切り込みによる切削粉や打ち抜きによる破片の処理を必要とせず、しかも補強材の挿入にともなって補強材の挿入口にめり込み部が形成されて補強材が支持固定される合成樹脂製中空体は、特開2006−205686公報に記載されている。
【特許文献1】実用新案登録第2538513号公報
【特許文献2】特許第3472460号公報
【特許文献3】特開2006−205686公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前掲の特開2006−205686公報に紹介されている技術によれば、補強材の挿入口を削り加工や打ち抜き加工によらず切り込みで施すことにより、切削粉や打ち抜きによる破片の処理が必要なく、しかも図6に示すように、補強材の挿入口を周囲壁に切り込みによって開けることにより、補強材の挿入にともなって補強材の挿入口にめり込み部が形成されて補強材が支持固定されるが、補強材の挿入過程で挿入口内にめり込む部分aの基端縁bに変形歪みが生じて補強材cの支持固定状態が不安定になるほか、基端縁b部分に変形歪みに起因する白化が生じてめり込み部aの強度が低下するなどの問題がある。また、めり込み部aの基端縁bの形状が平坦面とならず、補強材cの挿入部分の目隠し片dを取付ける場合にもめり込み部aの基端縁b側の取付け状態が不確実になるという問題もある。
【0004】
そこで本発明は、周囲壁に形成する切込部の舌片が周囲壁と連なる基端縁と周囲壁との境に、舌片の折り込みに起因する歪みが周囲壁方向に波及するのを阻止するための凹状曲折規制部を形成したことにより、切込部から補強材を挿入する過程で切込部の舌片が補強材の面に沿って折り込まれて補強材が強固に支持固定されるとともに舌片の基端縁部分に白化が生ぜず、また、これにより周囲壁には切込部を囲む凹状の段差部を形成して切込部の周囲を平坦面な目隠し片取付け代とすることができ、周囲壁の切込部に補強材の挿入により生じた挿入口を隠す不織布シールを確実に貼着することができるプラスチック製中空二重壁構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための請求項1に係るプラスチック製中空二重壁構造体は、表壁、裏壁およびこれら両壁の周囲を周囲壁で閉じて中空部を形成し、その周囲壁に切り込みを入れた切込部を設けて切込部から補強材を中空部に挿入することにより補強したプラスチック製中空体であって、前記周囲壁に形成する切込部の切り込みは一部を周囲壁と連なる舌片状に形成して、補強材の挿入により舌片が中空部側に折り込まれるようにしてあるとともに、舌片が周囲壁と連なる基端縁と周囲壁との境には、舌片の折り込みに起因する歪みが周囲壁方向に波及するのを阻止するための凹状曲折規制部を形成してあることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2係るプラスチック製中空二重壁構造体は、請求項1記載の構成において、周囲壁には切込部を囲む凹状の段差部を形成して切込部の周囲を平坦面な目隠し片取付け代としたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項3係るプラスチック製中空二重壁構造体は、請求項2記載の構成において、目隠し片取り付け代に取り付ける目隠し片は、周囲壁の切込部に補強材の挿入により生じた挿入口を隠す目隠し片であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、周囲壁に形成する切込部の舌片が周囲壁と連なる基端縁と周囲壁との境に、舌片の折り込みに起因する歪みが周囲壁方向に波及するのを阻止するための凹状曲折規制部を形成したことにより、切込部から補強材を挿入する過程で切込部の舌片が補強材の面に沿って折り込まれて補強材が強固に支持固定されるとともに舌片の基端縁部分に白化が生ぜず、また、これにより周囲壁には切込部を囲む凹状の段差部を形成して切込部の周囲を平坦面な目隠し片取付け代とすることができ、周囲壁の切込部に補強材の挿入により生じた挿入口を隠す目隠し片を確実に取付けることができるものである。
【0009】
凹状の曲折規制部を周囲壁と舌片の間に設けたことにより、補強材として角筒状の補強材だけでなく、円筒状の補強材も用いることが出来る。特許公開2006−205686公報においては、角筒状の補強剤の使用を規定しているが、凹状曲折規制部が無いことにより、切込み部の舌片を補強材が押し込む際に、切込み部の端まで充分に押え込まねばならないために角筒状の補強材が必要とした。円筒状の補強材では、角筒状の補強材よりも舌片に起因する歪みが周囲壁に及ぼす範囲が大きくなり、形状も不安定となり、補強材を舌片が支持固定する効果も不安定になる。然るに、本件の様に、舌片と周囲壁の間に曲折規制部を設けることにより、円筒状の補強材であっても舌片を折り曲げる位置が規制を受け、押し込み時に発生する前記の歪は阻止出来る。さらに、補強材を角筒状から円筒状にすると、補強材の厚みを減らすことも可能となり、周囲の長さの分に加えて、角筒状に比べて円筒状の補強材はその使用する材料の絶対量を節減することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図面は本発明に係るプラスチック製中空二重壁構造体として自動車荷室のデッキボードを例示している。1はデッキボードであり、このデッキボード1は、表壁2に対して裏壁3を間隔をおいて対向させ、かつ周囲壁4で閉じて表壁2および裏壁3との間に中空部5を形成してなるものである。6は自動車荷室である。
【0011】
デッキボード1は、周囲壁4の一方の端面から他方の端面方向に補強材7が挿入されている。この補強材7は真っ直ぐな筒状の金属パイプである。すなわち、デッキボード1の周囲壁4には切り込み8を入れた切込部9を設けてあって、この切込部9から補強材7を中空部5に挿入することにより補強したデッキボード1を構成している。
【0012】
前記周囲壁4に形成する切込部9の切り込みはコ字状にして一部が周囲壁4と連なる舌片状に形成してあり、その舌片10は補強材7の挿入により中空部5側に折り込まれるようにしてあるとともに、舌片10が周囲壁4と連なる基端縁11と周囲壁4との境には、舌片10の折り込みに起因する歪みが周囲壁方向に波及するのを阻止するための凹状曲折規制部12を形成してある。また、周囲壁4には切込部9を囲む凹状の段差部13を形成して、切込部9の周囲を平坦面な目隠し片取付け代14となしている。周囲壁4の切込部9に補強材7の挿入により生じた挿入口は、不織布シール15を目隠し片取付け代14に貼着して外部から見えないように目隠ししている。前記段差部13は不織布シール15の厚みと同じかやや深い程度の浅い凹部をなしており、また前記目隠し片取付け代14は舌片10の基端縁11側を含めて平坦面であるから、目隠し片取付け代14に取付けた不織布シール15は確実に貼着保持されるうえ、その周囲が段差部13に囲まれて不用意に剥がれることが確実に防止される。
【0013】
目隠し片は不織布シールでも、織布シールや紙シールであっても良い。また、特開平11−115688公報のキャップ9若しくは前記特開平11−115688公報の0003項に記載されているキャップ18の様なプラスチック製のキャップであっても良い。
【0014】
デッキボード1の周囲壁4に形成する切込部9の切り込み8は前記コ字状のほか、エ字状、斜交い状のバツ(×)形の切り込みによるものであってもよく、これらの切込部によれば複数の舌片が形成されるが、そのいずれの形状の切込部であっても、一部が周囲壁と連なる各舌片の基端縁と周囲壁との境には、前記のように、舌片の折り込みに起因する歪みが周囲壁方向に波及するのを阻止するための凹状曲折規制部が形成される。
【0015】
本発明に係るプラスチック製中空体であるデッキボード1は、ABS樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等、ブロー成形可能な熱可塑性樹脂で構成される。また、補強材6は金属製であり、必要に応じて表面の滑り性を良くするため、メッキなどの表面処理を施すものとする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るプラスチック製中空二重壁構造体からなるデッキボードの一部を示す斜視図である。
【図2】同上デッキボードの一部を示す斜視図である。
【図3】デッキボードに補強材を挿入する過程の態様を示す一部の断面図である。
【図4】図2の過程からデッキボードに補強材を挿入した後の態様を示す一部の断面図である。
【図5】デッキボードを自動車荷室に備えた例を示す斜視図である。
【図6】従来のデッキボードの問題点を説明する一部の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 デッキボード
2 表壁
3 裏壁
4 周囲壁
5 中空部
6 自動車荷室
7 補強材
8 切り込み
9 切込部
10 舌片
11 基端縁
12 凹状曲折規制部
13 凹状の段差部
14 目隠し片取付け代
15 不織布シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表壁、裏壁およびこれら両壁の周囲を周囲壁で閉じて中空部を形成し、その周囲壁に切り込みを入れた切込部を設けて、切込部から補強材を中空部に挿入することにより補強したプラスチック製中空体であって、
前記周囲壁に形成する切込部の切り込みは一部を周囲壁と連なる舌片状に形成して、補強材の挿入により舌片が中空部側に折り込まれるようにしてあるとともに、
舌片が周囲壁と連なる基端縁と周囲壁との境には、舌片の折り込みに起因する歪みが周囲壁方向に波及するのを阻止するための凹状曲折規制部を形成してある
ことを特徴とするプラスチック製中空二重壁構造体。
【請求項2】
周囲壁には切込部を囲む凹状の段差部を形成して切込部の周囲を平坦面な目隠し片取り付け代としたことを特徴とする請求項1記載のプラスチック製中空二重壁構造体。
【請求項3】
目隠し片取り付け代に取り付ける目隠し片は、周囲壁の切込部に補強材の挿入により生じた挿入口を隠す不織布シールであることを特徴とする請求項2記載のプラスチック製中空二重壁構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−56979(P2009−56979A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227133(P2007−227133)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】