説明

プラズマアーク溶接用トーチの清掃装置及び清掃方法

【課題】パイロットアークを発生させた状態においてノズルの先端部に堆積した堆積物Xを除去し回収することができ、プラズマアーク溶接を行う製品の生産性を向上させることができるプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置を提供すること。
【解決手段】清掃装置1は、ノズル62の先端部621を嵌入してノズル62の先端部621を閉塞する嵌入口22と、吹付間隙21を介してノズル62の先端部621の全周へ外周側から不活性ガスG3を吹き付けるための不活性ガス流路2と、ノズル62の先端部621に設けた動作ガス噴出口622に対向する側から不活性ガスG3を吸引する吸引流路3とを備えている。清掃装置1は、パイロットアークPを発生させた状態において、吹付間隙21からノズル62の先端部621の全周へ外周側から吹き付けた不活性ガスG3を吸引流路3へ吸引することにより、ノズル62の先端部621に堆積した堆積物Tを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマアーク溶接用トーチの清掃装置及び清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマアーク溶接は、アルゴンガス等の動作ガス中において、中心電極とこれに対向して配置した母材との間に溶接用アークを発生させて母材の溶接を行う。この溶接を行う際には、高熱によって溶加材、母材等が溶けた飛散物が、アルゴンガスを噴出させるノズルの先端部に付着して堆積する。また、高熱によって蒸気化した母材がアルゴンガスを噴出する又は噴出していない状態のノズルの先端部に再凝固して堆積する(ノズルの先端部は、その内部がシールドガスで冷却されているので他部位と比べて低温となって凝固し易い。)。この堆積物は、溶接を行う母材に落下して製品の品質を悪化させるおそれがあるため、所定時間の溶接を行った後に清掃している。
【0003】
例えば、特許文献1のプラズマトーチ清掃装置は、上方のトーチ本体先端部分のガス用通路内と下方の加圧パット上部内周を清掃する清掃用ドリルと、加圧パット下部を清掃する清掃用ブラシとを備えている。このプラズマトーチ清掃装置によれば、ガス用通路の奥に付着したスパッタを除去することができる。
また、例えば、特許文献2のアーク溶接ロボット用トーチのスパッタ除去方法においては、真空発生装置のバキュームノズルを溶接トーチノズルに配置し、バキュームノズルの内面と溶接トーチノズルの外周面とに形成された空隙に空気流を発生させて、溶接トーチノズルの外周面に付着したスパッタを吸引除去する方法が開示されている。これによれば、溶接トーチノズル及びノズル内部品を損傷させることなく、スパッタを剥離吸引して除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−105149号公報
【特許文献2】特開平7−124747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のスパッタの清掃装置又は除去方法においては、いずれも溶接用アークを発生させる際の種火となるパイロットアークを消して、溶接による製品の量産を中断したときに清掃を行っている。そのため、トーチに付着したスパッタを除去する度に、溶接による製品の量産を中断して、パイロットアークの消灯・点灯を行う必要があり、溶接による製品の生産性を悪化させる要因になる。また、パイロットアークの消灯・点灯を頻繁に行うと、パイロットアークを発生させるための高周波電源の寿命に影響を与えることも懸念される。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、パイロットアークを発生させた状態においてノズルの先端部に堆積した堆積物を除去し回収することができ、プラズマアーク溶接を行う製品の生産性を向上させることができるプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、動作ガスが噴出されるノズルの中心部内に中心電極を設け、該中心電極と上記ノズルとの間に発生させておくパイロットアークによって、上記中心電極とこれに対向して配置した母材との間に溶接用アークを発生させて溶接を行うために用いるプラズマアーク溶接用トーチを清掃する装置であって、
上記ノズルの先端部を嵌入して該ノズルの先端部の外周を閉塞する嵌入口と、吹付間隙を介して上記ノズルの先端部の全周に外周側から不活性ガスを吹き付けるための不活性ガス流路と、上記ノズルの先端部の中心部分に設けた動作ガス噴出口に対向する側から上記不活性ガスを吸引する吸引流路とを備え、
上記パイロットアークを発生させた状態において、上記吹付間隙から上記ノズルの先端部の全周へ外周側から吹き付けた不活性ガスを上記吸引流路へ吸引することにより、上記ノズルの先端部に堆積した堆積物を除去するよう構成したことを特徴とするプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置は、嵌入口、不活性ガス流路及び吸引流路を設けた構成により、中心電極とノズルとの間にパイロットアークを発生させた状態において、ノズルの先端部に堆積した堆積物を除去することができるものである。
本発明においては、ノズルの先端部を嵌入口に嵌入した状態において、不活性ガス流路の端部に微小な環状の吹付間隙が形成されている。この吹付間隙は、ノズルの先端部が嵌入口に嵌入されていない状態で不活性ガス流路の開口端部によって予め形成することができ、ノズルの先端部を嵌入口に嵌入したときに、不活性ガス流路の開口端部とノズルの先端部との間に形成することもできる。
【0009】
そして、不活性ガス流路に流入した不活性ガスを吹付間隙からノズルの先端部の全周へ外周側から高速で吹き付けると共に、ノズルの先端部に吹き付けられた不活性ガスを吸引流路へ吸引する。
これにより、ノズルの先端部に堆積した堆積物を高速で吹き付けられた不活性ガスによって剥離させると共に、この剥離した堆積物を吸引流路へ回収することができる。そのため、剥離した堆積物を清掃装置の周辺に飛散させることなく、安定して回収することができる。
【0010】
また、吹付間隙における不活性ガスは、ノズルの先端部の外周側から内周側へと流れ、ノズルの先端部の中心部分における動作ガス噴出口に対向する側へ吸引される。これにより、ノズルの先端部に吹き付けられた不活性ガス及びノズルの先端部から剥離した堆積物が、動作ガス噴出口へ流入してしまうことを防止することができる。そのため、中心電極とノズルとの間にパイロットアークを発生させた状態において、ノズルの先端部に堆積した堆積物を除去し回収することができる。
【0011】
そして、本発明においては、プラズマアーク溶接を行う製品の生産を停止することなく、パイロットアークを保持したままでトーチの清掃を行うことができ、清掃を行った後には直ちに次の母材に対してプラズマアーク溶接を開始することができる。そのため、プラズマアーク溶接を行う製品の生産性を向上させることができる。
【0012】
それ故、本発明のプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置によれば、パイロットアークを発生させた状態においてノズルの先端部に堆積した堆積物を除去し回収することができ、プラズマアーク溶接を行う製品の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例における、トーチの清掃を行う清掃装置の一部を拡大して示す断面説明図。
【図2】実施例における、清掃装置の吹付間隙の周辺を拡大して示す断面説明図。
【図3】実施例における、不活性ガス流路に対する不活性ガスの流入口の形成状態を示す断面説明図。
【図4】実施例における、トーチに対して清掃装置を移動させる状態を示す断面説明図。
【図5】実施例における、トーチによってプラズマアーク溶接を行う状態を示す説明図。
【図6】実施例における、清掃装置の他の吹付間隙の周辺を拡大して示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述した本発明のプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記不活性ガス流路は、上記ノズルの先端部を中心とする円環形状に形成されており、該円環形状の不活性ガス流路における外周部には、その接線方向から不活性ガスを流入させる流入口が形成してあり、該流入口から上記不活性ガス流路内に不活性ガスを流入させることにより、該不活性ガスを上記不活性ガス流路内で旋回させ、該旋回する不活性ガスを上記吹付間隙から上記ノズルの先端部へ吹き付けるよう構成することが好ましい(請求項2)。
この場合には、不活性ガスの旋回流によってノズルの先端部に堆積した堆積物を剥離させることができる。そのため、堆積物の除去をより効果的に行うことができる。
【0015】
また、上記流入口は、上記不活性ガス流路の周方向一方側へ不活性ガスを旋回させるための一方側流入口と、上記不活性ガス流路の周方向他方側へ不活性ガスを旋回させるための他方側流入口とがあり、上記一方側流入口から上記不活性ガス流路へ不活性ガスを流入させることにより、周方向一方側に旋回する不活性ガスの流れを発生させて、周方向一方側に旋回する不活性ガスを上記吹付間隙から上記ノズルの先端部へ上記吹き付ける一方側吹付動作と、上記他方側流入口から上記不活性ガス流路へ不活性ガスを流入させることにより、周方向他方側に旋回する不活性ガスの流れを発生させて、周方向他方側に旋回する不活性ガスを上記吹付間隙から上記ノズルの先端部へ上記吹き付ける他方側吹付動作とを繰り返すよう構成することが好ましい(請求項3)。
この場合には、ノズルの先端部に堆積した堆積物に対して、周方向一方側と周方向他方側とから交互に不活性ガスの旋回流を衝突させることができ、この堆積物を剥離させる力を効果的に発生させることができる。そのため、上記堆積物をさらに効果的に除去することができる。
【0016】
また、上記円環形状の不活性ガス流路は、上記吹付間隙に向かうに連れて徐々に幅が縮小して形成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、ノズルの先端部に対して不活性ガスの高速の旋回流を容易に発生させることができる。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明のプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置に係る実施例につき、図面を参照して説明する。
本例のプラズマアーク溶接用トーチ6の清掃装置1は、図1に示すごとく、プラズマアーク溶接に用いるトーチ6を清掃するものである。このトーチ6は、動作ガスG1が噴出されるノズル62の中心部内に中心電極61を設け、中心電極61とノズル62との間に発生させておくパイロットアークPによって、図5に示すごとく、中心電極61とこれに対向して配置した母材8との間に溶接用アークWを発生させて溶接を行うものである。
【0018】
清掃装置1は、図1、図2に示すごとく、ノズル62の先端部621を嵌入してノズル62の先端部621を閉塞する嵌入口22と、吹付間隙21を介してノズル62の先端部621の全周へ外周側から不活性ガスG3を吹き付けるための不活性ガス流路2と、ノズル62の先端部621の中心部分に設けた動作ガス噴出口622に対向する側から不活性ガスG3を吸引する吸引流路3とを備えている。清掃装置1は、パイロットアークPを発生させた状態において、吹付間隙21からノズル62の先端部621の全周へ外周側からへ吹き付けた不活性ガスG3を吸引流路3へ吸引することにより、ノズル62の先端部621に堆積した堆積物Tを除去するよう構成されている。
【0019】
以下に、本例の清掃装置1につき、図1〜図6を参照して詳説する。
図4に示すごとく、清掃装置1は、テーブル上に母材8を載置してプラズマアーク溶接を行うための溶接装置5に設置されている。トーチ6は、溶接装置5における可動部の下部において、動作ガス噴出口622を下方に向けて配設されている。
また、清掃装置1は、昇降装置51を介して昇降可能に、溶接装置5のテーブル上に設置してある。そして、トーチ6をテーブルの上方における所定の清掃位置601に移動させたときに昇降装置51によって清掃装置1を上昇させ、トーチ6におけるノズル62の先端部621を嵌入口22に嵌入させるよう構成されている。
【0020】
中心電極61とノズル62との間に発生させるパイロットアークPは、溶接装置5における高周波発生器によって発生させる。
図1に示すごとく、本例の中心電極61は、タングステン電極であり、ノズル62内には、冷却水が流入する水冷流路が形成されている。動作ガスG1は、ノズル62内において中心電極61の周辺を流れ、動作ガス噴出口622から噴出される。また、ノズル62の外周には、溶接用アークWを大気と遮断するためのシールドガスG2を流すシールドガスキャップ63が装着されている。そして、シールドガスキャップ63の開口先端部からシールドガスG2が噴出される(図5参照)。
【0021】
本例の動作ガスG1、シールドガスG2及び不活性ガスG3は、いずれもアルゴンガスである。また、不活性ガスG3としては、アルゴンガス以外のものを用いることもできる。ただし、不活性ガスG3の露点が高い場合、トーチ6の清掃中に不活性ガスG3内の水分がトーチ6内へ侵入し、動作ガスG1の露点を上昇させ、溶接品質を悪化させるおそれがあるため、不活性ガスG3は、露点の十分低い乾燥したガスを用いることが好ましい。
【0022】
図2に示すごとく、ノズル62の先端部621は、円錐状に縮径しており、平坦状に形成された先端中心部分において動作ガス噴出口622が形成されている。本例の不活性ガス流路2は、ノズル62の先端部621を中心とする円環形状に形成されている。嵌入口22は、ノズル62の円錐状の先端部621に沿ったテーパ状の穴として形成されている。
本例の吹付間隙21は、ノズル62の先端部621が嵌入口22に嵌入されていない状態において不活性ガス流路2の開口端部によって予め形成した。吹付間隙21は、ノズル62の先端部621の外周角部の近傍において開口している。
【0023】
これに対し、図6に示すごとく、吹付間隙21は、ノズル62の先端部621を嵌入口22に嵌入したときに、不活性ガス流路2の開口端部とノズル62の先端部621との間に形成することもできる。この場合には、吹付間隙21は、ノズル62の先端部621の外周角部の中心側部分に開口している。
【0024】
図1、図2に示すごとく、不活性ガス流路2は、内周側に吸引流路3を有する形状に形成された一方の流路形成部材4Aに対して、ノズル62の先端部621を嵌入する嵌入口22を有する他方の流路形成部材4Bを組み付けて形成されている。他方の流路形成部材4Bは、板形状の中心部に嵌入口22を形成してなる。一方の流路形成部材4Aには、先端に向かうに連れて円錐状に縮径する突起部41が形成されており、この突起部41の先端中心部に吸引流路3の吸引口31が形成されている。不活性ガス流路2の吹付間隙21は、一方の流路形成部材4Aにおける嵌入口22の外縁部と他方の流路形成部材4Bにおける吸引口31の外縁部との間に円環状に内周側に開口して形成されている。
【0025】
不活性ガス流路2の開口端部は、吹付隙間として嵌入口22及び吸引口31に連通されている。
また、円環形状の不活性ガス流路2の中心側部分は、一方の流路形成部材4Aの円錐状の突起部41の傾斜外周面411と、他方の流路形成部材4Bの裏面42とによって、吹付間隙21(中心先端部)に向かうに連れて徐々に幅が縮小して形成されている。
【0026】
吸引口31の直径は、動作ガス噴出口622の直径よりも大きくなっており、吹付間隙21は、動作ガス噴出口622の回りに円環状に形成される。
図3に示すごとく、円環形状の不活性ガス流路2における外周部には、その接線方向から不活性ガスG3を流入させる流入口23が形成してある。本例の流入口23は、円環形状の不活性ガス流路2の外周部に描かれる互いに平行な接線上の両側において、互いに平行に一対に形成してある。
【0027】
不活性ガスG3の流入口23には、不活性ガス流路2の周方向一方側へ不活性ガスG3を旋回させるための一方側流入口23Aと、不活性ガス流路2の周方向他方側へ不活性ガスG3を旋回させるための他方側流入口23Bとがある。一方の接線の一端側に形成した流入口23と他方の接線の他端側に形成した流入口23とが、図3において、不活性ガス流路2の時計回りに旋回する不活性ガスG3の旋回流を形成するための一方側流入口23Aとして機能し、一方の接線の他端側に形成した流入口23と他方の接線の一端側に形成した流入口23とが、図3において、不活性ガス流路2の反時計回りに旋回する不活性ガスG3の旋回流を形成するための他方側流入口23Bとして機能する。
【0028】
本例の清掃装置1は、吹付隙間から不活性ガスG3の旋回流をノズル62の先端部621に吹き付けるよう構成されている。清掃装置1は、ノズル62の先端部621に対して吹付間隙21から周方向一方側に旋回する旋回流を吹き付ける一方側吹付動作と、ノズル62の先端部621に対して吹付間隙21から周方向他方側に旋回する旋回流を吹き付ける他方側吹付動作とを交互に繰り返すよう構成されている。
一方側吹付動作においては、2つの一方側流入口23Aから不活性ガス流路2へ不活性ガスG3を流入させることにより、不活性ガス流路2において周方向一方側に旋回する不活性ガスG3の流れを発生させる。また、他方側吹付動作においては、2つの他方側流入口23Bから不活性ガス流路2へ不活性ガスG3を流入させることにより、不活性ガス流路2において周方向他方側に旋回する不活性ガスG3の流れを発生させる。
【0029】
図示は省略するが、清掃装置1には、大気圧よりも高い所定の圧力に加圧した不活性ガスG3を不活性ガス流路2に供給する不活性ガスG3の供給源が接続されている。また、清掃装置1には、吸引流路3から吸引を行う真空ポンプ等の吸引装置が接続されている。そして、一方側吹付動作と他方側吹付動作とは、不活性ガス流路3へ不活性ガスG3を供給する供給源に設けたバルブの切替動作によって行うことができる。
【0030】
本例のプラズマアーク溶接用トーチ6の清掃装置1は、嵌入口22、不活性ガス流路2及び吸引流路3を設けた構成により、中心電極61とノズル62との間にパイロットアークPを発生させた状態において、ノズル62の先端部621に堆積した堆積物Tを除去することができるものである。
本例においては、不活性ガス流路2の開口端部に、嵌入口22に嵌入したノズル62の先端部621へ不活性ガスG3を高速で吹き付けるための微小な円環状の吹付間隙21を形成している。そして、不活性ガス流路2に流入した不活性ガスG3を吹付間隙21からノズル62の先端部621の全周へ外周側から旋回させながら高速で吹き付けると共に、ノズル62の先端部621に吹き付けられた不活性ガスG3を吸引流路3へ吸引する。
【0031】
また、吹付間隙21からノズル62の先端部621へは、周方向一方側へ旋回する不活性ガスG3の高速旋回流と、周方向他方側へ旋回する不活性ガスG3の高速旋回流とを交互に繰り返し吹き付ける。これにより、ノズル62の先端部621に堆積した堆積物Tに対して、周方向一方側と周方向他方側とから交互に不活性ガスG3の旋回流を衝突させることができ、この堆積物Tを剥離させる力を効果的に発生させることができる。そのため、ノズル62の先端部621に堆積した堆積物Tを効果的に剥離させることができ、剥離した堆積物Tを吸引流路3へ回収することができる。また、剥離した堆積物Tを清掃装置1の周辺に飛散させることなく、安定して回収することができる。
【0032】
また、吹付間隙21における不活性ガスG3は、周方向一方側又は周方向他方側に旋回しながらノズル62の先端部621の外周側から内周側へと流れ、ノズル62の先端部621の中心部分における動作ガス噴出口622に対向する側へ吸引される。これにより、ノズル62の先端部621に吹き付けられた不活性ガスG3及びノズル62の先端部621から剥離した堆積物Tが、動作ガス噴出口622へ流入してしまうことを防止することができる。そのため、中心電極61とノズル62との間にパイロットアークPを発生させた状態において、ノズル62の先端部621に堆積した堆積物Tを除去し回収することができる。
【0033】
そして、本例においては、プラズマアーク溶接を行う製品の生産を停止することなく、パイロットアークPを保持したままでトーチ6の清掃を行うことができ、清掃を行った後には直ちに次の母材8に対してプラズマアーク溶接を開始することができる。そのため、プラズマアーク溶接を行う製品の生産性を向上させることができる。
【0034】
それ故、本例のプラズマアーク溶接用トーチ6の清掃装置1によれば、パイロットアークPを発生させた状態においてノズル62の先端部621に堆積した堆積物Tを除去し回収することができ、プラズマアーク溶接を行う製品の生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 清掃装置
2 不活性ガス流路
21 吹付間隙
22 嵌入口
23 流入口
23A 一方側流入口
23B 他方側流入口
3 吸引流路
31 吸引口
6 プラズマアーク溶接用トーチ
61 中心電極
62 ノズル
621 先端部
622 動作ガス噴出口
8 母材
P パイロットアーク
W 溶接用アーク
T 堆積物
G1 動作ガス
G2 シールドガス
G3 不活性ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作ガスが噴出されるノズルの中心部内に中心電極を設け、該中心電極と上記ノズルとの間に発生させておくパイロットアークによって、上記中心電極とこれに対向して配置した母材との間に溶接用アークを発生させて溶接を行うために用いるプラズマアーク溶接用トーチを清掃する装置であって、
上記ノズルの先端部を嵌入して該ノズルの先端部の外周を閉塞する嵌入口と、吹付間隙を介して上記ノズルの先端部の全周に外周側から不活性ガスを吹き付けるための不活性ガス流路と、上記ノズルの先端部の中心部分に設けた動作ガス噴出口に対向する側から上記不活性ガスを吸引する吸引流路とを備え、
上記パイロットアークを発生させた状態において、上記吹付間隙から上記ノズルの先端部の全周へ外周側から吹き付けた不活性ガスを上記吸引流路へ吸引することにより、上記ノズルの先端部に堆積した堆積物を除去するよう構成したことを特徴とするプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置において、上記不活性ガス流路は、上記ノズルの先端部を中心とする円環形状に形成されており、
該円環形状の不活性ガス流路における外周部には、その接線方向から不活性ガスを流入させる流入口が形成してあり、
該流入口から上記不活性ガス流路内に不活性ガスを流入させることにより、該不活性ガスを上記不活性ガス流路内で旋回させ、該旋回する不活性ガスを上記吹付間隙から上記ノズルの先端部へ吹き付けるよう構成したことを特徴とするプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置において、上記流入口は、上記不活性ガス流路の周方向一方側へ不活性ガスを旋回させるための一方側流入口と、上記不活性ガス流路の周方向他方側へ不活性ガスを旋回させるための他方側流入口とがあり、
上記一方側流入口から上記不活性ガス流路へ不活性ガスを流入させることにより、周方向一方側に旋回する不活性ガスの流れを発生させて、周方向一方側に旋回する不活性ガスを上記吹付間隙から上記ノズルの先端部へ上記吹き付ける一方側吹付動作と、上記他方側流入口から上記不活性ガス流路へ不活性ガスを流入させることにより、周方向他方側に旋回する不活性ガスの流れを発生させて、周方向他方側に旋回する不活性ガスを上記吹付間隙から上記ノズルの先端部へ上記吹き付ける他方側吹付動作とを繰り返すよう構成したことを特徴とするプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置において、上記円環形状の不活性ガス流路は、上記吹付間隙に向かうに連れて徐々に幅が縮小して形成されていることを特徴とするプラズマアーク溶接用トーチの清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−212689(P2011−212689A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80297(P2010−80297)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(503158017)株式会社シーヴイテック (11)
【Fターム(参考)】