説明

プラズマディスプレイ用ガラス板

【課題】従来よりも低消費電力化が可能なプラズマディスプレイ用ガラス板を創案することにより、プラズマディスプレイの低消費電力化および低コスト化を図ること。
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、ガラス組成中のアルカリ金属酸化物(LiO+NaO+KO:LiO、NaO、KOの合量)の含有量が6.5質量%以下であり、且つ25℃、周波数1MHzにおける誘電率が6.5以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ用ガラス板に関し、具体的には消費電力を低減可能なプラズマディスプレイ用ガラス板に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイは、次のようにして作製される。まず前面ガラス板の表面にITO膜やネサ膜等からなる透明電極を成膜し、その上に誘電体材料を塗布して500〜600℃程度の温度で焼成し、誘電体層を形成する。また、Al、Ag、Ni等からなる電極が形成された背面ガラス板に、背面誘電体材料を塗布して500〜600℃程度の温度で焼成し、誘電体層を形成し、更に誘電体層の上に隔壁材料を塗布して500〜600℃程度の温度で焼成し、隔壁を形成する。次に、前面ガラス板と背面ガラス板を対向させて電極等の位置合わせを行って、500〜600℃程度の温度でガラス板の外周を封着材料により封着する。このようにして作製されたプラズマディスプレイでは、ITO電極に電圧を印加することで真空放電を引き起こし、装置内部に充填されたXeガスから紫外線を発生させて蛍光体を発光させている。
【0003】
従来、プラズマディスプレイ用ガラス板として、25℃、周波数1MHzにおける誘電率が7.6のガラス板(熱膨張係数:約84×10−7/℃、歪点:約580℃、板厚:1.8〜3.0mm)が使用されており、このガラス板は一般的にフロート法で成形されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマディスプレイは、更なる低消費電力化が推進されている。
【0005】
しかし、従来のガラス板は、ITO等の電極に電圧が印加されると、それと相反する電荷がガラス板上に誘起されやすく、この誘起された電荷によって、画素電極にかかるべき電圧が低下し、結果として、駆動電圧が高くなり、プラズマディスプレイの消費電力が上昇する問題があった。また、駆動電圧が高くなると、汎用のドライバーを使用することができず、プラズマディスプレイの製造コストを低廉化し難い問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、従来よりも低消費電力化が可能なプラズマディスプレイ用ガラス板を創案することにより、プラズマディスプレイの低消費電力化および低コスト化を図ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々の実験を繰り返した結果、ガラス組成中のアルカリ金属酸化物の含有量を所定量以下に規制するとともに、ガラス板の誘電率を所定値以下に規制することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、ガラス組成中のアルカリ金属酸化物(LiO+NaO+KO:LiO、NaO、KOの合量)の含有量が6.5質量%以下であり、且つ25℃、周波数1MHzにおける誘電率が6.5以下であることを特徴とする。ここで、「25℃、周波数1MHzにおける誘電率」は、ASTM D150に準拠した方法により測定した値を指す。
【0008】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、25℃、周波数1MHzにおける誘電率を6.5以下に規制している。このようにすれば、プラズマディスプレイの消費電力を低減することが可能になる。
【0009】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、ガラス組成中のアルカリ金属酸化物の含有量を6.5質量%以下に規制している。このようにすれば、ガラス板の誘電率、誘電正接および熱膨張係数を顕著に低下できるとともに、歪点を高めやすくなる。
【0010】
第二に、本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、熱膨張係数が25〜60×10−7/℃であることを特徴とする。従来、プラズマディスプレイ用ガラス板の周辺材料(絶縁層、隔壁、封着材料)の熱膨張係数は、ガラス板の熱膨張係数(約84×10−7/℃)に整合するように、70〜90×10−7/℃に調整されていた。しかし、レーザー光を用いてガラス板を封着する場合、ガラス板の熱膨張係数が高いと、レーザー光の照射時にガラス板が破損する場合がある。そこで、ガラス板の熱膨張係数を上記範囲とすれば、そのような事態を防止しやすくなる。ここで「熱膨張係数」は、30〜380℃の温度範囲において、ディラトメーターで測定した平均値を指す。
【0011】
第三に、本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、歪点が590℃以上であることを特徴とする。従来のプラズマディスプレイ用ガラス板は、歪点が580℃程度であるため、570〜600℃の温度で熱処理すると、熱変形や熱収縮が生じ、結果として、前面ガラス板と背面ガラス板を対向させる際、高精度に電極の位置合わせを行うことが困難になり、プラズマディスプレイを大型化、高精細化する上で障害になっていた。そこで、ガラス板の歪点を上記範囲とすれば、そのような事態を防止することができる。ここで、「歪点」は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値を指す。
【0012】
第四に、本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、25℃、周波数1MHzにおける誘電正接が0.5以下であることを特徴とする。ここで、「25℃、周波数1MHzにおける誘電正接」は、ASTM D150に準拠した方法により測定した値を指す。
【0013】
第五に、本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜80%、Al 0〜20%、B 0〜30%、MgO 0〜15%、CaO 0〜15%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、LiO+NaO+KO 0〜6.5%含有することを特徴とする。
【0014】
第六に、本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 55〜80%、Al 10〜20%、B 3〜19%、MgO 0〜10%、CaO 1〜10%、SrO 0〜8%、BaO 0〜13%、LiO+NaO+KO 0〜6%含有することを特徴とする。
【0015】
第七に、本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 55〜70%、Al 10〜20%、B 7〜19%、MgO 0〜10%、CaO 3〜10%、SrO 0〜8%、BaO 0〜1%、LiO+NaO+KO 0〜0.1%含有することを特徴とする。
【0016】
第八に、本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 55〜70%、Al 10〜20%、B 7〜19%、MgO 0〜3%、CaO 6〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜12%、LiO+NaO+KO 0〜0.1%含有することを特徴とする。
【0017】
第九に、本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、液相粘度が104.0dPa・s以上であることを特徴とする。「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。また、「液相温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値を指す。
【0018】
第十に、本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることを特徴とする。ここで、「オーバーフローダウンドロー法」は、フュージョン法とも称されており、溶融ガラスを耐熱性の樋状構造物の両側から溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス板を製造する方法である。
【0019】
第十一に、本発明のプラズマディスプレイは、上記のプラズマディスプレイ用ガラス板を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、ガラス組成中のLiO+NaO+KOの含有量が6.5質量%以下、好ましくは6質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下であり、理想的には実質的に含有しないことが好ましい。LiO+NaO+KOの含有量が6.5質量%より多いと、誘電率や誘電正接が著しく上昇するとともに、熱膨張係数が高くなり、また歪点が低下しやすくなる。ここで、「実質的にLiO+NaO+KOを含有しない」とは、ガラス組成中のLiO+NaO+KOの含有量が0.1%未満の場合を指す。
【0021】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板において、25℃、周波数1MHzにおける誘電率は6.5以下であり、6以下、5.8以下、5.5以下、5.4以下、5.2以下、5以下、4.9以下、特に4.8以下が好ましい。誘電率が高くなると、画素電極に電圧が印加された際に、誘起される電荷が高くなり、プラズマディスプレイの消費電力が上昇してしまう。
【0022】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板において、25℃、周波数1MHzにおける誘電正接は0.5以下、0.1以下、0.01以下、0.005以下、0.001以下、特に0.0005以下が好ましい。誘電正接が高くなると、画素電極に電圧が印加された際に、ガラス板が発熱して、プラズマディスプレイの動作特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0023】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板において、密度は2.6g/cm以下、2.5g/cm以下、2.45g/cm以下、2.42g/cm以下、2.40g/cm以下、2.38g/cm以下、2.35g/cm以下、特に2.34g/cm以下が好ましい。密度が2.6g/cmより大きいと、ガラス板を軽量化し難くなる。ここで、「密度」は、周知のアルキメデス法で測定した値を指す。
【0024】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板において、熱膨張係数は30〜60×10−7/℃、32〜60×10−7/℃、32〜55×10−7/℃、特に32〜50×10−7/℃が好ましい。熱膨張係数が上記範囲外となると、誘電体層や電極との熱膨張係数差に起因して、ガラス板が反りやすくなるとともに、レーザ光の照射後にガラス板が割れやすくなる。
【0025】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板において、歪点は590℃以上、620℃以上、630℃以上、640℃以上、650℃以上、特に660℃以上が好ましい。歪点が低いと、プラズマディスプレイの製造工程において、熱処理時にガラス板が熱収縮しやすくなるため、高精細なディスプレイを作製し難くなる。
【0026】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板において、102.5dPa・sにおける温度は1620℃以下、1590℃以下、1580℃以下、1570℃以下、1560℃以下、特に1550℃以下が好ましい。高温溶融は、ガラス溶融窯の負担を増加させる。ガラス溶融窯に使用されるアルミナやジルコニア等の耐火物は、高温になる程、溶融ガラスに激しく浸食される。耐火物の浸食量が多くなると、ガラス溶融窯のライフサイクルが短くなり、結果として、ガラス板の製造コストが高騰する。また、高温溶融を行う場合、ガラス溶融窯の構成部材に高耐熱性の構成部材を使用する必要があるため、ガラス溶融窯の構成部材が割高になり、結果として、溶融コストが高騰する。さらに、高温溶融は、ガラス溶融窯の内部を高温に保持する必要があるため、ガラス溶融窯のランニングコストが高騰する。102.5dPa・sにおける温度が1620℃より高いと、低温溶融が困難になり、また泡品位が低下しやすくなり、結果として、ガラス板の製造コストが高騰しやすくなる。ここで、「102.5dPa・sにおける温度」は、溶融温度に相当し、白金球引き上げ法で測定した値を指す。
【0027】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板において、液相温度は1180℃以下、1150℃以下、1110℃以下、特に1070℃以下が好ましい。このようにすれば、失透結晶が発生し難くなるため、オーバーフローダウンドロー法等でガラス板を成形しやすくなる。このため、ガラス板の表面品位を高めつつ、ガラス板の製造コストを低廉化することができる。なお、液相温度は、耐失透性の指標であり、液相温度が低い程、耐失透性に優れる。
【0028】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板において、液相粘度は104.5dPa・s以上、105.0dPa・s以上、105.5dPa・s以上、105.7dPa・s以上、特に105.8dPa・s以上が好ましい。このようにすれば、成形時に失透結晶が発生し難くなるため、オーバーフローダウンドロー法等でガラス板を成形しやすくなり、ガラス板の表面品位を向上しつつ、ガラス板の製造コストを低廉化することができる。なお、液相粘度は、成形性の指標であり、液相粘度が高い程、成形性に優れる。
【0029】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板において、平均表面粗さRaは50Å以下、30Å以下、10Å以下、5Å以下、3Å以下、特に2Å以下が好ましい。平均表面粗さRaが大きくなると、ガラス板の表面に形成される導電膜や誘電体層の品位が低下し、プラズマディスプレイの表示不良を惹起するおそれがある。ここで、「平均表面粗さ(Ra)」は、JIS B0601:2001に準拠した方法により測定した値を指す。
【0030】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板において、ガラス組成中の各成分の含有量を上記のように限定した理由を以下に示す。
【0031】
SiOの含有量は40〜80%、好ましくは50〜70%、より好ましくは55〜70%、更に好ましくは57〜63%、最も好ましくは58〜62%である。SiOの含有量が45%より少ないと、密度を低下させ難くなる。一方、SiOの含有量が75%より多いと、高温粘度が高くなり、溶融性が低下することに加えて、ガラス中に失透結晶(クリストバライト)等の欠陥が生じやすくなる。
【0032】
Alの含有量は0〜20%である。Alの含有量が少ないと、耐熱性を高め難くなったり、高温粘性が高くなり、溶融性が低下しやすくなる。よって、Alの好適な下限範囲は0.1%以上、3%以上、5%以上、10%以上、12%以上、14%以上、14.5%以上、15%以上、特に15.5%以上である。一方、Alの含有量が多いと、液相温度が高くなり、耐失透性が低下しやすくなる。よって、Alの好適な上限範囲は19%以下、18%以下、特に17%以下である。
【0033】
は、誘電率を低下させる成分であり、また融剤として働き、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分であり、その含有量は0〜30%である。Bの含有量が少ないと、誘電率を低下させることが困難になり、また融剤としての働きが不十分になるため、高温粘性が高くなり、泡品位が低下しやすくなり、更には密度が低下し難くなる。よって、Bの好適な下限範囲は0.1%以上、1%以上、3%以上、7%以上、8%以上、11%以上、13%以上、15%以上、特に15.5%以上である。一方、Bの含有量が多いと、耐熱性や耐候性が低下しやすくなる。よって、Bの好適な上限範囲は25%以下、20%以下、19%以下、18%以下、特に17%以下である。
【0034】
MgOは、歪点を低下させずに、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分であり、またアルカリ土類金属酸化物の中では最も密度を下げる効果がある成分であり、その含有量は0〜15%であり、0〜10%、0〜5%、0〜4%、0〜3%、特に0〜0.5%が好ましい。しかし、MgOの含有量が多いと、誘電率や誘電正接が高くなりやすい。また、MgOの含有量が多いと、密度や熱膨張係数が高くなり過ぎ、また液相温度が上昇し、耐失透性が低下しやすくなり、更にはガラスが分相しやすくなり、透明性が損なわれるおそれがある。
【0035】
CaOの含有量は0〜15%である。CaOは、歪点を低下させずに、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高める成分であるとともに、本発明に係るガラス組成系において、失透を抑制する効果が大きい成分である。さらに、アルカリ土類金属酸化物の中で、その含有量を相対的に増加させると、ガラスを低密度化しやすくなる。よって、CaOの好適な下限範囲は1%以上、2%以上、3%以上、6%以上、6.5%以上、特に7%以上である。一方、CaOの含有量が多いと、誘電率や誘電正接が高くなりやすく、また熱膨張係数や密度が高くなり過ぎたり、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、耐失透性が低下しやすくなる。よって、CaOの好適な上限範囲は9.5%以下、9%以下、特に8.5%以下である。
【0036】
SrOの含有量は0〜15%である。SrOは、歪点を低下させずに、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分であるが、SrOの含有量が多くなると、誘電率や誘電正接が上昇しやすくなり、密度や熱膨張係数も上昇しやすくなる。また、SrOの含有量が多くなると、適正な熱膨張係数を維持するために、相対的にCaOやMgOの含有量を低下しなければならず、その含有量の低下に起因して、耐失透性が低下したり、高温粘性が上昇する事態を招きやすくなる。よって、SrOの含有量は0〜10%、0〜7%、0〜5%、0〜3%、0〜1%、特に0〜0.1%が好ましい。
【0037】
BaOの含有量は0〜15%である。BaOは、歪点を低下させずに、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分であるが、BaOの含有量が多くなると、密度や熱膨張係数が上昇しやすくなり、誘電率や誘電正接も上昇しやすくなる。また、BaOの含有量が多くなると、適正な熱膨張係数を維持するために、相対的にCaOやMgOの含有量を低下しなければならず、結果として、耐失透性が低下したり、高温粘性が上昇する事態を招きやすくなる。よって、BaOの含有量は0〜13%、0〜5%、0〜3%、0〜1%、0〜0.5%、特に0〜0.1%未満が好ましい。
【0038】
MgO+CaO+SrO+BaO(MgO、CaO、SrO、BaOの含有量)は、液相温度を下げて、ガラス中に結晶異物を発生させ難くする成分であり、また溶融性や成形性を高める成分であり、その含有量は0〜25%、1〜20%、3〜15%、5〜11%、6.5〜11%、7%〜10%、特に7〜9.5%が好ましい。MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が少ないと、融剤としての働きを十分に発揮できず、溶融性が低下することに加えて、熱膨張係数が低くなり過ぎる。一方、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が多いと、誘電率や誘電正接が高くなるとともに、密度が上昇し、ガラスを軽量化し難くなる。さらに、比ヤング率が低下し、また熱膨張係数が高くなり過ぎる。
【0039】
上記の通り、LiO+NaO+KOの含有量は0〜6.5%であり、0〜6%、0〜3%、0〜1%、特に0〜0.1%が好ましく、理想的には実質的に含有しないことが望ましい。LiO+NaO+KOの含有量が多くなると、誘電率、誘電正接、熱膨張係数が高くなるとともに、歪点が低下しやすくなる。
【0040】
上記成分以外にも、他の成分を例えば25%(好ましくは15%)までガラス組成中に添加することができる。
【0041】
清澄剤は、泡品位を高めるために用いる成分である。従来、清澄剤として、As、Sbが使用されていた。しかし、As、Sbは、環境負荷物質であり、環境的観点から、これらの使用量を削減することが要求されている。本発明は、As、Sbの含有を完全に排除するものではないが、環境的観点から、これらの成分の含有量をそれぞれ0.1%未満、特に0.05%未満に規制することが好ましい。
【0042】
清澄剤としては、SnOが好ましい。SnOは、高温域で良好な清澄作用を発揮する成分であるとともに、高温粘性を低下させる成分であり、その含有量は0〜1%、0.001〜1%、0.01〜0.5%、特に0.05〜0.3%が好ましい。SnOの含有量が1%より多いと、SnOの失透結晶が析出しやすくなる。なお、SnOの含有量が0.001%より少ないと、上記の効果を享受し難くなる。
【0043】
F、Cl等のハロゲンは、溶融温度を低温化するとともに、清澄剤の作用を促進させる効果があり、結果として、溶融コストを低廉化しつつ、ガラス製造窯の長寿命化を図ることができる。しかし、F、Clの含有量が多過ぎると、ガラス上に形成される金属の配線パターンを腐食させる場合がある。よって、F、Clの含有量はそれぞれ1%以下、0.5%以下、0.1%未満、0.05%以下、特に0.01%以下が好ましい。
【0044】
上記の通り、清澄剤としては、SnOが好適であるが、ガラス特性を損なわない限り、清澄剤として、CeO、SO、C、金属粉末(例えばAl、Si等)を5%まで添加することができる。
【0045】
ZnOは、溶融性を高める成分であるが、その含有量が多くなると、誘電率や誘電正接が高くなり、またガラスが失透しやすくなるとともに、歪点が低下する上、密度も上昇しやすくなる。よって、ZnOの含有量は0〜10%、0〜5%、0〜3%、0〜0.5%、特に0〜0.3%が好ましく、理想的には実質的に含有しないことが望ましい。ここで、「実質的にZnOを含有しない」とは、ガラス組成中のZnOの含有量が0.1%以下の場合を指す。
【0046】
ZrOは、耐候性を高める成分であるが、その含有量が多くなると、誘電率や誘電正接が高くなる。よって、ZrOの含有量は0〜5%、0〜3%、0〜0.5%、特に0.01〜0.2%が好ましく、耐失透性を高める観点からは実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「実質的にZrOを含有しない」とは、ガラス組成中のZrOの含有量が0.01%以下の場合を指す。
【0047】
TiOは、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分であるとともに、ソラリゼーションを抑制する成分であるが、ガラス組成中に多く添加すると、誘電率や誘電正接が高くなり、またガラスが着色し、透過率が低下しやすくなる。よって、TiOの含有量は0〜5%、0〜3%、0〜1%、特に0〜0.02%が好ましい。
【0048】
は、耐失透性を高める成分であるが、ガラス組成中に多く添加すると、ガラス中に分相、乳白が生じることに加えて、耐水性が顕著に低下する。よって、Pの含有量は0〜5%、0〜1%、特に0〜0.5%が好ましい。
【0049】
、Nb、Laは、歪点を高める働きがあるが、これらの含有量が多いと、誘電率、誘電正接、密度が上昇しやすくなる。よって、これらの成分の含有量は、それぞれ0〜3%、0〜1%、特に0〜0.1%が好ましい。
【0050】
以下のようにガラス組成範囲を規定すれば、誘電率が低く、且つ熱膨張係数が低いガラスを作製しやすくなる。
(1)ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜70%、Al 10〜20%、B 0〜20%、MgO+CaO+SrO+BaO 5〜25%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、SrO 0〜7%、BaO 0〜15%を含有し、且つLiO+NaO+KOの含有量が6%未満、
(2)ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜70%、Al 12〜18%、B 1〜18%、MgO+CaO+SrO+BaO 5〜25%、MgO 0〜8%、CaO 3〜12%、SrO 0〜6%、BaO 0〜14%含有し、且つLiO+NaO+KOの含有量が5%未満、
(3)ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜65%、Al 13〜18%、B 5〜12%、MgO+CaO+SrO+BaO 7〜25%、MgO 0〜5%、CaO 5〜12%、SrO 0〜4%、BaO 0〜14%含有し、且つLiO+NaO+KOの含有量が1%未満、Asの含有量が0.1%未満、Sbの含有量が0.1%未満、Fの含有量が0.1%未満、Clの含有量が0.1%未満、
(4)ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜65%、Al 13〜18%、B 7〜11%、MgO+CaO+SrO+BaO 10〜25%、MgO 0〜4%、CaO 6.5〜11%、SrO 0〜4%、BaO 1〜13%含有し、且つLiO+NaO+KOの含有量が0.1%未満、Asの含有量が0.05%未満、Sbの含有量が0.05%未満、Fの含有量が0.1%未満、Clの含有量が0.1%未満、
(5)ガラス組成として、質量%で、SiO 50〜65%、Al 13〜18%、B 7〜10%、MgO+CaO+SrO+BaO 14〜25%、MgO 0〜3%、CaO 7〜11%、SrO 0〜3%、BaO 5〜13%含有し、且つLiO+NaO+KOの含有量が0.1%未満、Asの含有量が0.05%未満、Sbの含有量が0.05%未満、Fの含有量が0.1%未満、Clの含有量が0.1%未満。
【0051】
また、以下のようにガラス組成範囲を規定すれば、誘電率が低く、且つ液相粘度が高いガラスを作製しやすくなる。
(6)ガラス組成として、質量%で、SiO 55〜70%、Al 10〜18%、B 10〜19%、MgO+CaO+SrO+BaO 3〜15%、MgO 0〜3%、CaO 6〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜12%含有し、且つLiO+NaO+KOの含有量が0.1%未満、
(7)ガラス組成として、質量%で、SiO 57〜65%、Al 12〜17%、B 13〜19%、MgO+CaO+SrO+BaO 6〜11%、MgO 0〜1%、CaO 7〜9%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、SnO 0.01〜0.6%含有し、且つLiO+NaO+KOの含有量が0.1%未満、Asの含有量が0.05%未満、Sbの含有量が0.05%未満、Fの含有量が0.1%未満、Clの含有量が0.1%未満、
(8)ガラス組成として、質量%で、SiO 57〜63%、Al 15〜17%、B 15〜18%、MgO+CaO+SrO+BaO 7〜9%、MgO 0〜1%、CaO 7〜9%、SrO 0〜0.5%、BaO 0〜0.5%、SnO 0.01〜0.6%含有し、且つLiO+NaO+KOの含有量が0.1%未満、Asの含有量が0.05%未満、Sbの含有量が0.05%未満、Fの含有量が0.1%未満、Clの含有量が0.1%未満。
【0052】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、所定のガラス組成になるように調合したガラスバッチを連続式ガラス溶融窯に投入し、このガラスバッチを加熱溶融した後、得られた溶融ガラスを清澄し、成形装置に供給した上で板状に成形することにより作製することができる。
【0053】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。このようにすれば、未研磨で表面品位が良好なガラス板を作製することができる。その理由は、オーバーフローダウンドロー法の場合、ガラス板の表面となるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されるからである。樋状構造物の構造や材質は、所望の寸法や表面品位を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行うために、ガラスに対して力を印加する方法は、所望の寸法や表面品位を実現できるものであれば、特に限定されない。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。なお、液相温度が低く、液相粘度が高い程、オーバーフローダウンドロー法でガラス板を成形しやすくなる。
【0054】
本発明のプラズマディスプレイ用ガラス板は、オーバーフローダウンドロー法以外にも、種々の方法、例えばフロート法、スロットダウンドロー法、リドロー法等で成形することができる。
【実施例1】
【0055】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【0056】
表1、2は、本発明の実施例(試料No.1〜17)を示している。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
次のようにして、試料No.1〜17を作製した。まず表中のガラス組成になるように調合したガラスバッチを白金坩堝に入れ、1600℃で24時間溶融した後、カーボン板上に流し出して板状に成形した。次に、得られた各試料について、誘電率、誘電正接、密度、熱膨張係数、歪点、徐冷点、軟化点、10dPa・sにおける温度、10dPa・sにおける温度、102.5dPa・sにおける温度、液相温度TL、液相粘度logηTLを評価した。
【0060】
誘電率、誘電正接は、ASTM D150に準拠し、周波数1MHz、25℃における測定値である。
【0061】
密度は、周知のアルキメデス法で測定した値である。
【0062】
熱膨張係数は、ディラトメーターで測定した値であり、30〜380℃の温度範囲における平均値である。
【0063】
歪点、徐冷点、軟化点は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値である。
【0064】
104.0dPa・sにおける温度、103.0dPa・sにおける温度、102.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
【0065】
液相温度TLは、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定した値である。
【0066】
液相粘度logηTLは、液相温度TLにおけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。
【0067】
表1、2から明らかなように、試料No.1〜17は、誘電率が5.9以下、誘電正接が0.0017以下、密度が2.63g/cm以下、熱膨張係数が31〜46×10−7/℃、歪点が626℃以上、102.5dPa・sにおける温度が1612℃以下、液相温度TLが1190℃以下、液相粘度logηTLが104.0dPa・s以上であった。なお、試料No.1〜17は、ガラス組成中にAs、Sbを含有していないが、泡品位が良好であった。
【実施例2】
【0068】
表中に記載の試料No.1〜3、9〜15を試験溶融炉で溶融し、オーバーフローダウンドロー法でガラス板を成形したところ、平均表面粗さ(Ra)は20Å以下であった。なお、成形に際し、引っ張りローラーの速度、冷却ローラーの速度、加熱装置の温度分布、溶融ガラスの温度、溶融ガラスの流量、板引き速度、攪拌スターラーの回転数等を適宜調整することで、ガラス板の表面品位を調節した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成中のアルカリ金属酸化物(LiO+NaO+KO)の含有量が6.5質量%以下であり、且つ25℃、周波数1MHzにおける誘電率が6.5以下であることを特徴とするプラズマディスプレイ用ガラス板。
【請求項2】
熱膨張係数が25〜60×10−7/℃であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ用ガラス板。
【請求項3】
歪点が590℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマディスプレイ用ガラス板。
【請求項4】
25℃、周波数1MHzにおける誘電正接が0.5以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用ガラス板。
【請求項5】
ガラス組成として、質量%で、SiO 40〜80%、Al 0〜20%、B 0〜30%、MgO 0〜15%、CaO 0〜15%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、LiO+NaO+KO 0〜6.5%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用ガラス板。
【請求項6】
ガラス組成として、質量%で、SiO 55〜80%、Al 10〜20%、B 3〜19%、MgO 0〜10%、CaO 1〜10%、SrO 0〜8%、BaO 0〜13%、LiO+NaO+KO 0〜6%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用ガラス板。
【請求項7】
ガラス組成として、質量%で、SiO 55〜70%、Al 10〜20%、B 7〜19%、MgO 0〜10%、CaO 3〜10%、SrO 0〜8%、BaO 0〜1%、LiO+NaO+KO 0〜0.1%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用ガラス板。
【請求項8】
ガラス組成として、質量%で、SiO 55〜70%、Al 10〜20%、B 7〜19%、MgO 0〜3%、CaO 6〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜12%、LiO+NaO+KO 0〜0.1%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用ガラス板。
【請求項9】
液相粘度が104.0dPa・s以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用ガラス板。
【請求項10】
オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用ガラス板。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用ガラス板を備えることを特徴とするプラズマディスプレイ。

【公開番号】特開2011−63464(P2011−63464A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213966(P2009−213966)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】