説明

プラズマディスプレイ装置

【課題】蛍光体を用いて構成されるPDP装置において、緑色の残光特性を改善し、動画表示性能を向上させる。
【解決手段】緑蛍光体として発光中心にEu2+を用い、残光特性の改善された高輝度のEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca1−xM12−e・M2・Si:Euを使用してプラズマディスプレイパネル及びそれを用いたPDP装置を構成する。前記式中において、M1はSrとBaとからなる群から選択された一種以上の元素であり、M2はMgとZnとからなる群から選択された一種以上の元素であり、成分M1の組成比を示すx及びEuの組成比を示すeは、それぞれ0<x<1及び0.001≦e≦0.2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ装置に関し、紫外線、特に真空紫外領域の紫外線により励起され発光する蛍光体、特にEu(ユーロピウム)賦活珪酸塩系緑蛍光体を構成材に用いるプラズマディスプレイパネルを発光装置として構成されたプラズマディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビやパソコンモニターに代表される表示装置に対し、設置スペースを大きく取る必要がない薄型化への要望が高まりを見せている。そして、薄型化への対応の可能な装置としてプラズマディスプレイ装置(PDP(Plasma Display Panel)装置)や電界放射型ディスプレイ(FED;Field Emission Display)装置、バックライトと薄い液晶パネルとを組み合わせて表示装置を構成した液晶表示(LCD;Liquid Crystal Display)装置などの開発が盛んに行われている。
【0003】
その中でPDP装置は、発光装置としてプラズマディスプレイパネル(PDP)を使用した表示装置である。PDPは、希ガスを含む微小放電空間での負グロー領域で発生する紫外線(希ガスとしてXe(キセノン)を使用した場合は、146nm及び172nmの波長域にある)を励起源としてその微小放電空間内に配設した蛍光体層中の蛍光体を励起し、その蛍光体から発光を促すことにより可視領域での発光を得る。PDP装置では、この発光の量と色とを制御して表示に使用する。従って、蛍光体はPDP装置を構成する上で非常に重要な主要構成部材となる。
【0004】
この種の材料及び技術に関する文献としては、例えば、特開2002−332481号公報(特許文献1)及び特開2003−142004号公報(特許文献2)、ならびに「蛍光体同学会編「蛍光体ハンドブック」、オーム社1987年、III編、第7章、330−335頁(非特許文献1)」及び「G. Blasse, W. L. Wanmaker, J. W. ter Vrugt and A. Bril, Philips Res. Repts. 23, p189〜200(1968)(非特許文献2)」が挙げられる。
【特許文献1】特開2002−332481号公報
【特許文献2】特開2003−142004号公報
【非特許文献1】蛍光体同学会編「蛍光体ハンドブック」、オーム社1987年、III編、第7章、330−335頁
【非特許文献2】G. Blasse, W. L. Wanmaker, J. W. ter Vrugt and A. Bril, Philips Res. Repts. 23, p189〜200(1968)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、PDP装置はその高い性能が認められ、ブラウン管を使用するタイプのモニターやテレビ(TV(TeleVision))を代替し、大型のフラットパネルディスプレイ及び薄型TVとしての用途が急速に拡大している。その結果、さらなる性能の向上が求められるようになっている。具体的には、TVとしての表示機能を満足するための高輝度化、そして高輝度化を達成するための高発光効率化、映像を美しく忠実に再現するための色再現範囲、映画など動画コンテンツを視聴者が心地よく鑑賞するための動画特性の向上が求められている。
【0006】
PDP装置の高性能化を進めるにあたり、その特性の改善には装置の設計、構造及びそれらを構成する部材、特に使用される蛍光体の性能向上の果たす役割が大きい。従って、蛍光体に対しては、発光効率の向上、及び発光における応答特性の向上が求められる。
【0007】
従来、面放電型カラー表示AC−PDP装置の蛍光体には、赤色、緑色及び青色の各色の発光に対応する、赤(R)、緑(G)及び青(B)の各色の蛍光体が使用されているが、緑蛍光体としては一般にマンガンイオン(Mn2+)で賦活された珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnが用いられている。このMn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnは、輝度及び発光効率に優れているのが特徴であるが、残光特性が他の色の蛍光体に比べ劣るという課題を有し、そのことが最近問題点として指摘されるようになっている。
【0008】
残光特性が良くないとは、すなわち残光の時間が長いことを意味しており、そのような蛍光体を表示装置に使用すると、表示を切り替えているにもかかわらず前の画像、その色が表示画面上残ってしまう現象の発生を意味する。よって、TV用途を射程に入れ、動画性能の向上が強く求められるようになると、このような表示品位を低下させる残光の問題は大きな懸念となる可能性がある。
【0009】
また、現在、蛍光体材料の高性能化検討と併行してPDP装置の技術分野においては、高性能のTV装置としてPDP装置の高発光効率化を目的とするPDP構造の改善検討が進められている。
【0010】
その一つの方法として、Ne(ネオン)を主成分とする放電ガス中のXeガスの組成比を増加させ、放電により発生するXe分子線(波長172nm)を積極的に利用しようとする検討が盛んになされている。いわゆるPDPにおける高キセノン濃度化の技術トレンドであるが、通常、放電ガス中のXeガス組成比(4%程度)より多い組成比領域でこうしたPDPの発光高効率化を達成する検討がなされている。なお、Xe分子線については当業者間において波長173nmと表現される場合も散見されるが、何れも同じXe分子線の波長特性を示すものとして一般に認められている。本願明細書においては、Xe分子線について波長172nmとして統一的に表記するものとする。
【0011】
このような技術開発の結果により高効率化が可能となったPDP装置は、単なる薄型の表示装置から、ブラウン管使用によるTV装置を代替するフラットTV装置としての使用形態がますます拡大することとなる。そして画質、特に動画性能向上に対する要求がますます高レベルになっており、従来はそれほど問題視がされなかった蛍光体の残光特性が着目されるようになり、特に前述した緑蛍光体における残光性能改善が強く求められる状況となっている。
【0012】
その結果として、PDPにおける高キセノン濃度化の技術トレンド、PDP装置のTV用途拡大のトレンドにおいては、残光特性に劣るMn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnに代替する、もしくはそれと混合して使用することによりMn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnの一部を置換可能である短残光の新しい緑蛍光体が強く求められるようになっている。
【0013】
その場合、新しい緑蛍光体は、放電により発生する波長146nmの紫外線に加え、PDPを高キセノン濃度化した場合に、主要な蛍光体励起光源となるXe分子線、すなわち波長172nmの紫外線によって効率良く励起され、発光する蛍光体であることが必要となる。なお、Xe発光について、当業者間において波長147nmと表現される場合も散見されるが、何れも同じXe発光の波長特性を示すものとして一般に認められている。本願明細書においては、Xe発光について波長146nmとして統一的に表記するものとする。
【0014】
以上のことから、本発明が解決しようとする課題の一つは、PDP装置において、Mn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnなどに代表される、使用可能な緑蛍光体の残光特性の改善をすることである。そして特に、172nm波長励起帯において緑蛍光体の残光特性と他の発光特性との両立が可能なように緑蛍光体の特性の向上を実現し、PDPの高効率化技術トレンドに対応して高キセノン濃度化されたPDP装置の性能向上を実現可能とすることである。
【0015】
本発明の目的は、従来の緑蛍光体であるMn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnに代替可能な優れた残光特性の緑蛍光体を提供し、それを利用して残光性能の改善が可能なPDP装置を提供することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、使用する蛍光体の残光特性、発光の色特性などが改善可能で、PDPにおける高効率化のための高キセノン濃度化の技術トレンドにも対応可能なPDP装置を提供することにある。
【0017】
本発明の解決しようとする前記及びその他の課題、ならびに前記及びその他の目的、そして新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願において開示される発明のうち、一実施の形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0019】
本実施の形態によるプラズマディスプレイ装置は、間隔をあけて対向配置された一対の基板と、一対の基板間に設けられ、一対の基板間に空間を形成する隔壁と、一対の基板の対向面の少なくとも一方の上に配置される電極対と、隔壁によって形成される空間内に封入され、電極対に印加された電圧による放電により紫外線を発生する放電ガスと、空間内の一対の基板の対向面と隔壁の壁面上との少なくとも一方に形成され、紫外線により励起されて発光する蛍光体を含有する蛍光体層とから構成され、蛍光体は、(Ca1−xM12−e・M2・Si:Euで表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を含み、前記式中、M1はSrとBaとからなる群から選択された一種以上の元素であり、M2はMgとZnとからなる群から選択された一種以上の元素であり、成分M1の組成比を示すx及びEuの組成比を示すeは、それぞれ0<x<1及び0.001≦e≦0.2である。
【0020】
また、本実施の形態によるプラズマディスプレイ装置は、間隔をあけて対向配置された一対の基板と、一対の基板間に設けられ、一対の基板間に空間を形成する隔壁と、一対の基板の対向面の少なくとも一方の上に配置される電極対と、隔壁によって形成される空間内に封入され、電極対に印加された電圧による放電により紫外線を発生する放電ガスと、空間内の一対の基板の対向面と隔壁の壁面上との少なくとも一方に形成され、紫外線により励起されて発光する蛍光体を含有する蛍光体層とから構成され、蛍光体は、Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を含み、Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体は、(Ca1−xM12−e・M2・Si:Eu)で表されるとともに、紫外線により励起されてCIEのXYZ表色系における色度(x,y)のx値が0.15≦x値≦0.35であり、y値が0.45≦y値≦0.75ある色の光を発光するEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体であり、前記式中、M1はSrとBaとからなる群から選択された一種以上の元素であり、M2はMgとZnとからなる群から選択された一種以上の元素であり、成分M1の組成比を示すx及びEuの組成比を示すeは、それぞれ0<x<1及び0<e<1である。
【発明の効果】
【0021】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0022】
本実施の形態に係るPDP装置は、残光特性に劣るMn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnに代替、もしくはそれと混合して一部を置換する使用の形態で、残光の短い新しい緑蛍光体であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を用いているため、優れた残光特性を達成できる。
【0023】
また、本実施の形態に係るPDP装置は、波長146nmの紫外線励起条件に加え、高キセノン濃度化されたPDPにおいて励起源として主要な役割を果たす波長172nmの紫外線による光励起条件でも発光効率が良好なEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を用いているため、優れた発光特性を得ることができる。
【0024】
また、本実施の形態に係るPDP装置は、構成するPDPが残光特性に優れ良好な発光特性のEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を用いているため、優れた動画表示を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0026】
従来のPDP用緑蛍光体は、Mn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnを使用している。そのため、PDP装置において、緑蛍光体の残光特性が他の色の蛍光体に比べて劣っており、蛍光体発光強度が1/10に低下するまでの時間として定義される残光時間は、Mn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnの性能である10ms程度ととても長い。その結果、Mn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnを使用するPDP装置は、放電ガスを高キセノン濃度化して高効率化し、動画表示をメインとするTV用途を射程に入れるようになると、残光特性に懸念が生じることになる。そのため、Mn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnを使用するPDPを用いたPDP装置の動画表示性能は十分なものではなくなる恐れがある。
【0027】
一方、他の色の蛍光体については、例えば通常の青蛍光体では残光時間が1ms程度と短く、短残光であり、Mn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnである緑蛍光体と同様の残光の問題は指摘されていない。
【0028】
このような蛍光体による残光の違いは、その組成、特に発光中心に起因している。つまり、Mn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnでは発光中心がMn2+であり、この発光中心Mn2+の特性として残光時間が長く、残光特性が劣ることになってしまう。
【0029】
それに対し、一般的なPDP用青蛍光体であるEu2+賦活のアルミン酸塩系蛍光体、例えばBaMgAl1017:Eu2+(以下、BAMと称する)では発光中心がEu2+であり、この発光中心Eu2+の特性として残光時間が短く、残光特性に特に問題は生じていない。
【0030】
よって、緑蛍光体においても発光中心をMn2+から他の元素に変える改善ができれば、残光の問題は低減可能であることがわかる。具体的には青蛍光体と同様、Eu2+を発光中心として使用することができれば、残光問題は低減可能であることがわかる。
【0031】
しかしながら、真空紫外線で励起されて緑色の発光をするEu2+を発光中心とした蛍光体のPDP用途としての具体例は極めて少ない。例えば、波長254nmの紫外領域の光励起条件によっては残光が短いという特性を備えるEu2+賦活の珪酸塩蛍光体CaMgSi:Eu2+があるが(非特許文献2)、波長254nmでの紫外線励起による発光色は緑色というよりも黄色に近く、真空紫外線励起条件下においても同様な発光の色特性を示すこととなれば、色調、色味の点でPDP用途としては問題がある。すなわち、真空紫外線励起条件下においても同様な発光の色特性を示すならば、美しい発色のPDP装置を構成することができない。
【0032】
そこで、本発明者は、改めてEu2+賦活の珪酸塩蛍光体CaMgSi:Eu2+に着目し、PDP装置用途を射程に入れて真空紫外線励起条件下での発光特性、特に発光の色特性を評価するとともに、それをベースとする組成の改善、及び新規な組成の蛍光体材料の合成に努めた。
【0033】
その結果、本発明者は、真空紫外線、特に波長172nmの光励起条件でより高輝度の得られる珪酸塩系緑蛍光体を実現し、それを使用して高輝度のPDP、ひいては高輝度表示の可能なPDP装置を実現した。
【0034】
また、本発明者は、真空紫外線、特に波長172nmの光励起条件で良好な色の緑色発光の得られる珪酸塩系緑蛍光体を実現し、それを使用して発光色の優れたPDP、ひいては高性能なPDP装置を実現した。
【0035】
新規に実現したEu2+を賦活剤とする珪酸塩系緑蛍光体は、下記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体である。

(Ca1−xM12−e・M2・Si:Eu (1)

一般式(1)中において、M1はSrとBaとからなる群から選択された一種以上の元素であり、M2はMgとZnとからなる群から選択された一種以上の元素であり、成分M1の組成比を示すx及びEuの組成比を示すeは、それぞれ0<x<1及び0.001≦e≦0.2である。
【0036】
本発明者は、前記一般式(1)の成分M2がMgである蛍光体として、Eu2+を賦活剤とする珪酸塩蛍光体CaMgSi:Eu2+をベースにし、その母体骨格成分であるCa元素の一部をSr及びBaのうちの少なくとも一方で置換することにより、母体組成の改良された蛍光体を開発した。そして、その結果、主要な蛍光体発光特性である、真空紫外線励起による発光スペクトルを低波長側にシフトさせることに成功し、さらにその結果、真空紫外線励起した場合の発光の色が緑色としてより高色純度化させることができることを見出した。以下に、その検討と考察について、より詳細に説明する。
【0037】
本発明者は、本発明の一実施の形態であるEu2+を賦活剤とする珪酸塩系緑蛍光体の例として(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02と(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02とを新規に合成した。そして、それらを用いて、ベースとなる組成を有するEu2+を賦活剤とする珪酸塩蛍光体CaMgSi:Eu2+と比較するよう、定法に従い中心発光波長172nmの真空紫外線エキシマランプを励起光源に用いて発光スペクトルの測定、及び発光の色特性、他の発光特性の評価を行った。
【0038】
図1は、本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体[(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02及び(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02]とベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の波長172nm真空紫外線励起条件での発光スペクトルの説明図である。
【0039】
結果を検討することにより、図1に示すように、取得した、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu2+0.02の発光スペクトルに比べ、本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体[(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02及び(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02]は、いずれも発光スペクトル全体が低波長側にシフトしていることがわかる。
【0040】
また、評価の結果、後に結果を図2としてまとめて示すが、蛍光体の発光色を表すCIE(International Commission on Illumination)のXYZ表色系における色度(x,y)は、x値及びy値がそれぞれベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02において色度(x,y)=(0.64,0.58)であり、x値が著しく大きく、黄色っぽい発光色を示している。これに対し、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02の色度は色度(x,y)=(0.34,0.58)となり、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02の色度(x,y)は(x,y)=(0.33,0.59)となる。
【0041】
すなわち、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02と比較して、本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体[(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02及び(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02]は色度(x,y)のx値が大きく低下していることがわかる。このとき、色度(x,y)のy値の変化は大きくないこともわかる。
【0042】
従って、本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体[(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02及び(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02]は、波長172nmの励起条件で黄色っぽい発光を示す、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02と比較して、発光する光の色が緑色として高色純度化していることが確認可能である。
【0043】
また、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02の発光ピーク強度は、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の発光ピーク強度より大きく、発光効率が向上していることがわかる。そして、輝度特性についても、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の輝度を基準とすると、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02の輝度は1.2倍となることがわかった。
【0044】
よって、ベースとなる蛍光体の母体組成Caの一部をSr又はBaにて置換した、本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体は、PDP用緑蛍光体としてより好ましい。そして、輝度特性も考慮すると、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体は、ベースとなる蛍光体の母体組成であるCaの一部をSrにて置換した場合がPDP用緑蛍光体としてさらに好ましいことがわかる。
【0045】
次に、中心発光波長146nmの真空紫外線エキシマランプを光源に用いて同様に発光スペクトルを測定し、さらに発光の色特性、他の発光特性の評価を行っている。その結果、やはり本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体は、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02と比較して、いずれも発光スペクトル全体が低波長側にシフトしていることがわかる(後に説明する図2の発光ピークの波長欄を参照)。
【0046】
そして、蛍光体の発光色を表すCIEのXYZ表色系における色度(x,y)は、x値及びy値がそれぞれベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02において色度(x,y)=(0.36,0.58)であるのに対し、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02の色度は色度(x,y)=(0.28,0.42)となり、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02の色度(x,y)は(x,y)=(0.32,0.58)となる。
【0047】
すなわち、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02と比較して、本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体[(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02及び(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02]は色度(x,y)のx値が明確に低下している。
【0048】
そしてこのとき、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02では色度(x,y)において、x値は、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02と比して大きく低下し、同時にy値の低下も発生している。一方、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02では色度(x,y)において、y値は、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02と比して、それほどの低下はしていないことがわかる。
【0049】
従って、本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体[(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02及び(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02]は、波長146nmの励起条件で、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02と比較して、発光する光の色が緑色として高色純度化し、特に、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02においてより好ましい高色純度化が実現可能であることが確認できる。
【0050】
また、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02の発光ピーク強度は、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の発光ピーク強度より大きく、発光効率が向上していることがわかる。そして、輝度特性についても、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の輝度を基準とすると、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02の輝度は1.2倍となることがわかった。
【0051】
よって、ベースとなる蛍光体の母体組成Caの一部をSr又はBaにて置換した、本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体は、波長146nmの励起条件下の評価においても、PDP用緑蛍光体として好ましい蛍光体であることがわかる。
【0052】
そして、波長146nmの励起条件での評価結果から、色特性の改善状況及び輝度特性も考慮すると、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体は、ベースとなる蛍光体の母体組成であるCaの一部をSrにて置換した場合がPDP用緑蛍光体としてより好ましいことがわかる。
【0053】
以上の本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体及びベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の発光スペクトルの解析結果及び発光特性の評価結果を、図2にまとめる。図2は、本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体[(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02及び(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02]とベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02とにおける発光特性及び発光スペクトルを解析したデータをまとめた説明図である。
【0054】
次に、前述した評価結果をさらに詳細に検討する。具体的には、本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体[(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02及び(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02]について、真空紫外領域における波長172nm励起条件下での発光特性と波長146nm励起条件下での発光特性の差異について着目し、検討を行う。
【0055】
その検討の結果、各発光スペクトルにおいて、その低波長側へのシフト量については、蛍光体を励起する真空紫外線の波長により違いがあり、波長146nmの真空紫外線で励起した場合に比べて波長172nmの真空紫外線で励起した場合の方が、低波長側へのシフト量が大きいことが確認できる。
【0056】
具体的には、波長146nm真空紫外線励起におけるベースとなるEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の発光ピーク波長は536nmであり、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02の発光ピーク波長は532nmであって、4nm低波側にシフトしている。それに対し、波長172nm真空紫外線励起におけるベースとなるEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の発光ピーク波長は536nmであり、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02の同条件の発光ピーク波長は528nmであって、より大きく、8nm低波側にシフトしていることがわかる。
【0057】
なお、このとき、同様の方法で評価した波長172nm真空紫外線励起におけるMn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnの発光ピーク波長は528nmであり、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体は、特にベースとなる蛍光体の母体組成であるCaの一部をSrにて置換した場合の例である(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02において、同等レベルを達成していることがわかる。
【0058】
その結果、本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体、特にベースとなる蛍光体の母体組成であるCaの一部をSrにて置換した例である(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02は、波長146nmの真空紫外線で励起した場合に比べ、波長172nmの真空紫外線で励起した場合の方が、ベース組成を有する蛍光体に比べて発光スペクトルのより低波長側へのシフト、ひいてはより高色純度化が可能であることがわかる。
【0059】
また、新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02の発光色の色度(x,y)のy値は、波長172nm励起条件でy値=0.59であり、波長146nm励起条件でy値=0.58である。従って、本発明の一実施の形態である新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体、特にベースとなる蛍光体の母体組成であるCaの一部をSrにて置換した例である(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02は、波長146nmの真空紫外線で励起した場合に比べ、波長172nmの真空紫外線で励起した場合の方が発光する光の色のy値が大きく、色特性に優れ、表色範囲を拡大することが可能となる。
【0060】
以上の結果については、Eu2+賦活の珪酸塩蛍光体CaMgSi:Eu2+をベースとし、その母体骨格成分であるCa元素の一部を、Caよりイオン半径の大きいSr及びBaのうちの少なくとも一方で置換することにより生じると本発明者は考察する。すなわち、蛍光体母体結晶内の本来あるべき位置に、あるべき大きさのイオンより大きなイオンが置換する状況が母体結晶内の一部で発生することになり、結果として蛍光体母体結晶内に新たな歪みが発生する。そして、その母体結晶内の新たな歪みが発光中心であるEu2+に影響を与え、その結果、蛍光体の発光特性に影響し、(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02における発光効率の向上もしくは(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02及び(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02における発光スペクトル全体の低波長側へのシフトをもたらしたものと本発明者は考察している。
【0061】
そして、蛍光体母体結晶内で発生した新たな歪みの発生量が適当であり、発光効率の向上もしくはより良好な緑色の発光をもたらしたものと本発明者は考察している。
【0062】
従って、Eu2+賦活の珪酸塩蛍光体CaMgSi:Eu2+において、特に真空紫外線励起による発光スペクトルを低波長側にシフトさせる方法として、母体骨格成分であるCa元素をSr及びBaのうちの少なくとも一方で置換する方法が好ましいことがわかる。
【0063】
また、この母体骨格成分であるCa元素をSr及びBaのうちの少なくとも一方で置換する方法については、前述したように、母体結晶内に適当な歪みを発生させることを目的としており、Ca元素の一部のみをSr及びBaのうちの少なくとも一方で置換することが好ましいと考察する。Ca元素に対するSr及びBaのうちの少なくとも一方による置換量があまりに多くなった場合、発生する歪みの効果が希薄になる懸念があるからである。また、例えばSrでCa元素を置換すると仮定した場合、Sr元素の置換量がもともとのCa組成量の半分を大きく超え、得られる蛍光体におけるSr成分の組成比がCa成分より大きくなると、その蛍光体は、もはやCaMgSi:Eu2+の特性を喪失してしまう可能性があると推察する。
【0064】
よって、CaMgSi:Eu2+の特性を維持し、より良好な緑発光を達成する上で、成分Caに対するSr及びBaのうちの少なくとも一方の置換量については、前記一般式(1)の表記に従うと、成分M1の組成比xとして表され、x≦0.7であることがより好ましいと考察する。
【0065】
なお、前記一般式(1)に示される蛍光体について、本発明の一実施の形態として、そのM2成分がMgである蛍光体について説明してきたが、M2成分については、MgとZnとからなる群から選択された一種以上の元素を用いることが可能であり、例えばM2成分としてZnのみ、もしくはMgとZnとの両成分を含んで組成化することも可能である。成分Znは成分Mgとイオン半径が異なっており、それを蛍光体中に組成化することにより、Mg成分のみを組成化している蛍光体と異なる結晶構造を形成する効果が期待できる。その結果、Zn成分含有の蛍光体からの発光特性、特に輝度と発光の色特性を調整することが可能となって、PDP用途として所望の発光特性を示す蛍光体を得ることが可能となる。
【0066】
また、Ca成分に対するSr及びBaのうちの少なくとも一方の置換量の下限については、意図しないCa組成の含有、すなわち不純物として蛍光体中にCa成分が含まれる場合と、発光性能の改善を目的としてCa成分の含有を明確に意図する場合とを区別するように規定するべきと考察する。
【0067】
よって、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、例えば純度99.9%以上の高純度の合成原料を使用した場合、不純物としてSrやBaなどの目的組成元素が含有されうる量は多くとも数ppmから数十ppm(1000g中、数mg〜数十mg)のオーダーであると考えられ、また10g程度のいわゆる実験室レベルでの少量の蛍光体合成時においても実質的に制御し得る量の下限が0.1mg程度(10ppm)であること、そしてMg化合物と対応する類似のSrもしくはBa化合物とでは分子量に大きくとも2倍程度の差しか無いことなども併せて考慮してCa成分の含有量の下限を改めて設定することとする。
【0068】
すなわち、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体においては、SrもしくはBa成分の含有量を100ppm程度もしくはそれ以上とすることを想定し、前記一般式(1)の表記に従うと蛍光体成分Sr及びBaのうちの少なくとも一方の組成比を示すxを用いて、xの下限は、x=0.0001とすることが可能となる。
【0069】
そして、意図しないで含有されてしまう場合と明確に区別し、またより純度の低い蛍光体原料を使用した場合にも対応しての排除可能とすることも考慮すると、明確な区別を実現するためには、Sr及びBaのうちの少なくとも一方の含有量の下限を上記値の10倍程度とし、前記一般式(1)の表記に従うと、Sr及びBaのうちの少なくとも一方の組成比を示すxを用いて、xの下限はx=0.001とすることが好ましい。
【0070】
そしてさらに、より純度の低い蛍光体原料を使用した場合に意図しないで含有されうる量を考慮すると、明確な区別を実現するためには、Sr及びBaのうちの少なくとも一方の含有量の下限を上記の100倍程度とし、前記一般式(1)の表記に従うとSr及びBaのうちの少なくとも一方の組成比を示すxを用いて、xの下限はx=0.01とすることが好ましい。
【0071】
また、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体における賦活剤であるEuの組成比については、発光中心としての効果が十分発揮される量を下限とし、濃度消光による発光効率の低下を回避できる量を上限とした。すなわち、Euの組成比については、前記一般式(1)の表記に従うと、Euの組成比を示すeは0.001≦e≦0.2であることが好ましい。
【0072】
次に、PDPにおける高キセノン濃度化の効果と本願発明との関係について説明する。前述したように、PDPにおいては、放電ガス中におけるXe組成比の増大に従って、発生する真空紫外線量全体が増大するとともに、発生真空紫外線に含まれる波長146nmの紫外線成分と172nmの紫外線(Xe分子線)成分との強度比率(I172/I146)が大きくなることが分かっている。
【0073】
図3は、AC型PDPにおける放電ガス中のXe組成比(%)と強度比率(I172/I146)の関係を示すグラフ図である。
【0074】
検討の結果、AC型PDPでは、Xe組成比4%ではI172/I146(4%)=1.2であり、Xe組成比が1〜4%である通常仕様のPDPでは、放電によって発生する真空紫外線に含まれる波長146nmの紫外線成分と172nmの紫外線成分との強度比率は172nm成分の強度が若干大きい程度から同等もしくはむしろ172nm成分の強度が小さい傾向にあることがわかった。
【0075】
そして、さらなる検討の結果、Xe組成比6%では放電によって発生する真空紫外線強度全体が増大するとともに、I172とI146の比は、I172/I146(6%)=1.9と大幅に大きくなる。そして、Xe組成比が10%においては、放電によって発生する真空紫外線強度がさらに増大するとともに、I172/I146(10%)=3.1と大幅に大きくなる。また、Xe組成比が12%においては、放電によって発生する真空紫外線強度がより増大するとともに、I172/I146(12%)=3.8と著しく大きくなることがわかった。
【0076】
従って、放電ガス中のXe組成比が通常仕様のPDPよりも大きい、例えば6%のXe組成比を持つ高キセノン化対応仕様のPDPにおいては、使用蛍光体の172nmの真空紫外線に対する特性の寄与が大きくなる。よって、波長172nmの紫外線に対してより高い輝度など、より良い特性の発光を示す蛍光体の使用が好ましい。
【0077】
さらに、Xe組成比をより高い10%以上とし、より高効率の発光を求める場合においては、波長172nmの紫外線に対してより高い輝度など、より良い特性の発光を示すという蛍光体の性能に対する要求は、より大きなものとなる。また、Xe組成比をより高い12%以上とし、より高効率の発光を求める場合においては、I172/I146(12%)=3.8と著しく大きくなるため、波長172nmの紫外線に対してより高い輝度など、より良い特性の発光を示すという蛍光体の性能に対する要求は、さらに大きなものとなる。
【0078】
よって、前述したように、前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を、Xe組成を含む放電ガスを用いたPDPに使用した場合、波長146nmの真空紫外光の励起に加え、波長172nmの真空紫外光の励起によって、蛍光体においてより良好な発光特性が得られることから、発生するXe分子線を有効に利用できることになり、高性能のPDP装置の提供が可能となる。
【0079】
さらに、前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体は、例えばXe組成比が6%以上、より好ましくはさらに146nmの紫外線成分に対する172nmの紫外線成分の強度比が強い(Xe分子線を積極的に利用する)Xe組成比が10%以上、さらに好ましくはI172/I146(12%)=3.8と著しく大きいXe組成比が12%以上となる量でXeガスを含んで構成された放電ガスを使用する、いわゆる高キセノン濃度化対応のPDPの技術にもよく適合する。そして、高キセノン濃度化された放電ガスを使用した高性能のPDPを構成することが可能となる。
【0080】
そして、前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体は、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02に対する色性能、特に色純度の改善効果が見られるが、特に、母体組成であるCaの一部をSrで置換した場合の例である(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02において顕著なように、波長146nmの紫外線励起の場合に比べ、波長172nmの紫外線励起の場合に、より好ましい改善効果が見られる。
【0081】
従って、波長172nmの真空紫外線により励起されることが主要となる条件下では、色特性の改善などの点において、より有意な効果及び顕著な特徴が現れることになる。
【0082】
よって、前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を、組成比が6%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは12%以上となる量でXe組成を含む放電ガスを用いたPDPに使用した場合、PDP内で発生するXe分子線をより有効に利用して優れた発光特性を示すようになるので、高性能のPDPの提供が可能となり、ひいては高性能のPDP装置の提供が可能となる。
【0083】
以上の結果に基づき、前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を使用した本発明の一実施の形態であるPDPを以下のように構成できる。
【0084】
図4は本発明の一実施の形態であるPDPの構造を示す要部分解斜視図である。図5、図6及び図7は本発明の一実施の形態であるPDPの構造を示す要部断面図である。
【0085】
本発明の一実施の形態であるPDP100は、いわゆる面放電に対応するための面放電型AC−PDP構造を有している。そして、離間して対向配置された一対の基板1,6と、その基板6の対向面に設けられ、その一対の基板1,6が重ね合わされた時に基板1と基板6との間隔を保持し、基板1,6間に空間を形成する隔壁7と、一対の基板1,6のそれぞれの対向面に配設された電極2,9と、一対の基板1,6の間に形成された空間内に封入され、電極2もしくは電極2,9に印加された電圧による放電により紫外線を発生する放電ガス(図示せず)とを備えている。なお、図5は電極2の延在する方向に沿った一断面を示したものであり、図6は電極2の延在する方向に沿った他の断面を示したものであり、図7は電極9の延在する方向に沿った一断面を示したものである。
【0086】
そして、一対の基板1,6の対向面のうちの一方(基板6側)の上及び隔壁7の壁面上には、前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩蛍光体を含む蛍光体層10が形成されている。蛍光体層10は、通常、赤、青、緑の3色の発光に対応する蛍光体、すなわち、赤蛍光体、青蛍光体または緑蛍光体からなり、放電によって放電ガスから発生する波長146nm及び172nmの真空紫外線によって、蛍光体層10における緑色を構成する前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩蛍光体を含む蛍光体と、他の色(赤及び青)を構成する蛍光体とが励起され、可視光を発光するよう構成されている。
【0087】
なお、図4等に示された符合3のラインは、電極2と一体となって電極抵抗を低下させるために設けられたAgまたはCu−Crからなるバスラインであり、符合4、8の各層は、誘電体層であり、符合5の層は、電極保護のために設けられた保護膜である。
【0088】
前述したように、前記一般式(1)で表される本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、特にベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の母体成分であるCaの一部をSrにて置換した例である(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02は、波長146nmの真空紫外線で励起した場合に比べ、波長172nmの真空紫外線で励起した場合の方が、ベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02に比べて発光スペクトルのより低波長側へのシフトが大きく、ひいてはより高色純度化が可能であることを確認している。
【0089】
そこでその結果を基に、前述したように波長172nmの真空紫外線による蛍光体励起が主となる高キセノン濃度化されたPDPへの適用を考慮し、新規な組成の蛍光体合成を含む、さらに詳細な検討を行うこととし、PDP用途として、より高い発光性能を得られるよう検討を行うこととした。
【0090】
すなわち、前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体であって、前記一般式(1)中のM1成分がSrである蛍光体に着目をした。具体的には、下記一般式(2)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を新規に開発し、評価した。
【0091】
その結果、ここで着目する蛍光体発光特性である波長172nm真空紫外線励起条件下での発光の色特性を制御すること、特に、波長172nm真空紫外線励起による発光スペクトルをある波長範囲内で系統的にシフトさせること、そして、それを制御可能とすることに成功した。その結果、波長172nm真空紫外線励起した場合の発光の色をより好ましい緑色として調整、制御することができることを見出した。以下に、その検討と考察、さらにPDPへの適用について、詳細に説明する。

(Ca1−xSr2−e・M3・Si:Eu (2)

ここで、前記一般式(2)中において、M3はMgとZnとからなる群から選択された一種以上の元素であり、成分Srの組成比を示すx及びEuの組成比を示すeは、それぞれ0<x<1及び0.001≦e≦0.2である。
【0092】
本発明者は、前記一般式(2)の蛍光体として、成分M3がMgであるEu2+賦活珪酸塩蛍光体CaMgSi:Eu2+をベースにし、その母体骨格成分であるCa成分の一部もしくは全部を成分Srにより、その組成比が系統的に変化するよう置換する合成検討を新たに行った。そして、前記一般式(2)の例であって、成分Srの組成比が系統的に変化して異なるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を複数開発した。そして、これらを用い、波長172nmの真空紫外線励起による発光特性、特に色特性の比較評価を検討した。
【0093】
なお、前述したG. Blasse, W. L. Wanmaker, J. W. ter Vrugt and A. Brilによる論文である Philips Res. Repts. 23, p189〜200(1968)(非特許文献2)では、SrMgSi:Eu2+、BaMgSi:Eu2+、及び(Sr0.5Ba1.5MgSi:Eu2+などについて、波長254nmの紫外線によって励起し、発光スペクトル評価や他の評価を行った検討結果が報告されている。そして、上記の三の蛍光体例における賦活剤Eu2+は0.02モルが蛍光体中に含有されていると報告されている。
【0094】
前述した文献によると、SrMgSi:Eu2+の波長254nm励起条件による発光スペクトルでは、発光ピーク波長が470nmであり、BaMgSi:Eu2+の同条件の発光スペクトルでは、発光ピーク波長が500nmであり、より長波長側に現れることが報告されている。そして、BaMgSi:Eu2+の母体骨格成分Baの一部を成分Srで置換した(Sr0.5Ba1.5MgSi:Eu2+では、波長254nm励起条件による発光スペクトルにおいて、発光ピーク波長が440nmであり、発光スペクトル全体がSrMgSi:Eu2+及びBaMgSi:Eu2+の何れよりも大幅に低波長側に現れることが報告されている。
【0095】
すなわち、SrMgSi:Eu2+の系における、その母体骨格の一部をBa成分で置換した(Sr0.5Ba1.5MgSi:Eu2+の場合、波長254nm励起条件での評価では、得られる蛍光体試料の発光スペクトル、すなわち発光の色特性を表す発光スペクトルが、ベースとなるSrMgSi:Eu2+とは大きく異なり、より低波長側に現れている。そして、SrMgSi:Eu2+の系においてその成分Srの全部を成分Baで置換したものに相当し、同様にベース組成と見なすことのできるBaMgSi:Eu2+の場合と比較しても、その発光スペクトルは、やはり大幅に低波長側に現れることが報告されている。
【0096】
そして、本発明に係る検討においては、さらに前述した文献とは異なり、励起条件としては波長254nm励起条件ではなく、真空紫外領域の波長146nmもしくは172nm励起条件という低波長の光による励起条件下での評価を検討している。
【0097】
従って、Eu2+を賦活剤として含有する珪酸塩蛍光体CaMgSi:Eu2+をベースにし、その母体骨格成分であるCa元素の一部もしくは全部を成分Srで、その組成比が系統的に変化するよう置換して発光特性を評価する本発明に係る検討において、評価対象の蛍光体の発光特性、特に色特性が、ベースとなる蛍光体CaMgSi:Eu2+、さらにはSrMgSi:Eu2+に対しどの程度の異なる特性となるのかを前述した文献の結果から事前に予測することは、困難な状況にある。
【0098】
そこで、具体的に前述した詳細検討を実際に進める事が重要となる。その結果、種々検討によって、前記一般式(2)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、成分Caに対する成分Srの組成比が徐々に増大するに従い、さらにはその全部が成分Srで置換されることにより、対応して発光の色特性が変化することを新たに見出した。そのため、PDP用として適当な発光の色特性を示す蛍光体組成、特に、前記一般式(2)の蛍光体において含有される成分Srの組成比のより適当な範囲を明らかにすることが可能となる。以下に、その行った検討と考察について、さらに詳細に説明する。
【0099】
本発明者は、まずベースとなる組成を有する蛍光体を選択した。具体的には、Ca1.97MgSi:Eu0.03をベース組成の蛍光体として選択した。
【0100】
なお、前記一般式(2)において、Eu2+のモル組成比が0.03である蛍光体の系を選択することについて、前述した(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02と次に説明する(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03の色度(x,y)を比較すると、波長172nm励起条件下で、同等の値を有し、何れも色度(x,y)=(0.33,0.59)である。よって、前記一般式(2)に示される成分Srを含有している蛍光体の系においては、含有される賦活剤Eu2+のモル組成比の違いは、蛍光体の発光の色に対し、大きな影響を与えておらず、同等として扱えることがわかる。
【0101】
また、輝度特性についても、波長172nm励起条件下で、前述した(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02がベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の1.2倍の輝度を示すのに対し、(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03は、対応するベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の1.16倍を示しており、ベース組成の蛍光体に対して同等の輝度向上効果を示していることがわかる。
【0102】
また、ベース組成の蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03に対し、その成分Caの全部を成分Srで置換した蛍光体に相当するSr1.97MgSi:Eu0.03も、ベース組成の蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03に対するもう一方の極のベース組成の蛍光体とみなして、比較評価検討の対象としていくこととする。
【0103】
以上のことから、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体として新規に合成し、得たのは、(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03である。
【0104】
そして、それらを用いて、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03及びSr1.97MgSi:Eu0.03と比較するよう、定法に従い中心発光波長172nmの真空紫外線エキシマランプを励起光源に用いて発光スペクトルの測定、発光の色特性、及びCa1.97MgSi:Eu0.03の輝度を基準とする相対輝度の評価を行った。
【0105】
図8は、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03と、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03及びSr1.97MgSi:Eu0.03の波長172nm真空紫外線励起条件での発光スペクトルの説明図である。
【0106】
そして、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03と、ベースとなる組成を有するEu2+賦活珪酸塩系蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03及びSr1.97MgSi:Eu0.03の発光特性、具体的には、Ca1.97MgSi:Eu0.03を基準とする相対輝度(Ca1.97MgSi:Eu0.03の輝度値を基準値=100とする)と、波長172nm励起発光スペクトルにおける発光ピークの波長値と、CIEのXYZ表色系における色度(x,y)、そのx値とy値とを評価した。図9に示す説明図に、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体とベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体の波長172nm励起条件下での発光特性の評価結果をまとめる。
【0107】
なお、図9に示す説明図中、「成分Sr組成比」と記された列における例えば「0%Sr」なる記載は、成分Caに対して蛍光体中に含まれる成分Srの組成比を%表示して示すものであり、具体的には前記蛍光体のうちのCa1.97MgSi:Eu0.03のことを指し示している。同様に、「100%Sr」の記載は前記蛍光体のうちのSr1.97MgSi:Eu0.03のことを指し示し、「50%Sr」の記載は前記蛍光体のうちの(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03を指し示している。その他の蛍光体についても同様である。
【0108】
図8及び図9に示す結果を検討することにより、ベースとなる組成を有する蛍光体であるCa1.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルは、同様にベースとなる組成を有する蛍光体であるSr1.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルと比較して長波長側に現れることがわかる。そして、図8中に示されたEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03と同様に、本発明の一実施の形態である各Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体の発光スペクトルは、ベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルに比べ、いずれも発光スペクトル全体が低波長側にシフトしていることがわかった。そして同時に、本発明の一実施の形態である各Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体の発光スペクトルは、取得した、ベースとなる組成を有する蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルに比べ、いずれも発光スペクトル全体が長波長側にシフトしていることがわかった。
【0109】
その結果、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03の波長172nm真空紫外線励起条件での各発光スペクトルにおいて、それぞれの発光ピークは、ベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03が示す発光ピークと、それより短波長側に現れるベースとなる組成を有する蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03が示す発光ピークとの間の波長域内に存在している。
【0110】
さらに、前記の各Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体においては、蛍光体内に含有される成分Srの組成が大きくなるに従い、対応してその発光スペクトルにおける発光ピークの波長値が小さくなることがわかった。その結果、前記の各Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体とそのベースとなる組成を有する上記二の蛍光体とを含んで考察しても、蛍光体内に含有される成分Srの組成が大きくなるに従い、対応してその発光スペクトルにおける発光ピークの波長値が小さくなることがわかった。
【0111】
図10は、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03と、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03及びSr1.97MgSi:Eu0.03とにおいて、それぞれに含有される成分Srの成分Caに対する組成比(%/Ca)に対して、各蛍光体の示す発光スペクトルの発光ピークの波長値をプロットしたグラフ図である。なお、図10においては、各蛍光体における成分Caに対する成分Srの組成比をパーセント(%)表示している。従って、Ca1.97MgSi:Eu0.03の成分Sr組成比は「0%」、Sr1.97MgSi:Eu0.03においては「100%」、そして、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03においては、成分Sr組成比は「50%」と記述している。
【0112】
図10に示すように、ベースとなる組成を有する上記二の蛍光体も含み、前記の各Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体においては、含有される成分Srの組成比と波長172nm励起条件での発光スペクトルの現れる位置、すなわち、発光ピークの位置(その波長値)と非常に良好な直線的な相関関係があることがわかる。
【0113】
従って、前記一般式(2)で表される本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、含有される成分Srの組成比を制御することにより、波長172nm励起条件における発光スペクトルの出現する位置、その波長特性を、ベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルと、それより短波長側にシフトして現れるベースとなる組成を有する蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03の示す発光スペクトルとの間の波長域内で望みのように制御できることがわかった。
【0114】
すなわち、前記一般式(2)で表される本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、含有される成分Srの組成比を制御することにより、波長172nm励起条件における発光スペクトルの発光ピーク位置、その波長値を、ベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルの発光ピークと、それより短波長側にシフトして現れるベースとなる組成を有する蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03の示す発光スペクトルの発光ピークとの間の波長域内で望みのように制御できることがわかった。
【0115】
以上の知見から、前記一般式(2)で表される本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、含有される成分Srの組成比を制御することにより、波長172nm励起条件における発光の色特性を、ベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の発光の色特性とベースとなる組成を有する蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03の発光の色特性との間で望みのように制御可能であることがわかる。
【0116】
図11は、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03と、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03及びSr1.97MgSi:Eu0.03とにおける波長172nm励起条件下での発光の色特性、すなわち色度(x,y)をXYZ色度図座標上にプロットした図である。
【0117】
なお、図11中、各プロットが何れの蛍光体の色度データをプロットしたものかわかるように、対応するポイントの近傍に、例えば「Sr:0%」等と記載して図中に示した。すなわち、(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03については「Sr:10%」と図中に示し、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03については「Sr:20%」と示し、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03については「Sr:30%」と示し、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03については「Sr:40%」と示し、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03については「Sr:50%」と示し、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03については「Sr:60%」と示し、及び(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03については「Sr:70%」と示した。そして、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03については「Sr:0%」と図11中に示し、ベースとなる組成を有する蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03については「Sr:100%」と示した。
【0118】
図11に示す結果より、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03は、それぞれの示す色が、含有する成分Srの組成比に従い、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の示す色とCa成分のすべてが成分Srに置換された場合に該当するSr1.97MgSi:Eu0.03の示す色との間で徐々に変化することがわかった。
【0119】
すなわち、前記一般式(2)で表される本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体においては、含有Sr量と色特性との間に相関があることがわかった。
【0120】
従って、前記一般式(2)で表される本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体においては、含有される成分Srの組成比を制御することにより、波長172nm励起条件における発光の色を、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の示す色とCa成分のすべてが成分Srに置換された場合に該当するSr1.97MgSi:Eu0.03の示す色との間で、図11に示すプロットに従い、望みのように制御できることがわかった。
【0121】
そこで次に、図11を用い、前記一般式(2)で表される本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体について、PDP用途を考慮し、172nm励起条件における好ましい発光の色を選択すること、すなわち、好ましい組成を選択することについて考察をする。
【0122】
PDP装置をフラットパネルディスプレイの主要な用途であるTV、特にカラーTV用途として使用する場合、放送方式ごとのR(赤),G(緑),B(青)各色の色度を考慮し対応可能な、ディスプレイとしての色特性、表色範囲が求められる。
【0123】
現状では、従来放送方式であるNTSC(National Television System Committee)規定への対応が求められるが、今後主流となっていくことが予想される方式であるHDTV(High Definition TeleVision)規格への対応がより重要な要件となる。
【0124】
そして、HDTV規格においては、定められた緑色の色度(x,y)がx値=0.30、y値=0.60であり、表色範囲としてHDTV規格比100%もしくはそれ以上の確保など、忠実な色再現や好ましい色の表現、より広い色再現性を実現することが望まれる。その結果、PDP装置においてG(緑)表示を担う緑蛍光体では、発光色の色度(x,y)のx値とy値において、x値では0.30に近い値か、より深い色を表現できる0.3より若干小さな値、y値では0.60に近い値か、より色再現範囲を広げることのできる0.6以上の値を示すことが求められる。
【0125】
よって、前記一般式(2)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、カラーTV用途にも使用可能なPDP装置用として使用可能となるようにするためには、色性能、特に色度(x,y)のx値が0.30近傍もしくはそれ以下の値、y値が0.60近傍もしくはそれ以上の値であることが好ましい。
【0126】
以上より、前述した発光の色特性の評価結果と、得られた図11に基づいて好ましい蛍光体組成の選択について考察を行う。まず図11から、前記一般式(2)で示される本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体においては、含有する成分Srの組成比が増大するに従い、対応する蛍光体の波長172nm励起条件下での発光色の色度(x,y)のx値が、ベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の示すx値=0.37とベースとなる組成を有する蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03の示すx値=0.13との間で、徐々に小さくなることがわかる。
【0127】
一方、波長172nm励起条件下での発光色の色度(x,y)のy値においては、ベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03から、成分Srを成分Caに対し10%含有する(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03へと成分Srの含有量が増大するに従い、発光色の色度(x,y)のy値は0.59前後まで増大する。そして、その後、成分Srの組成比の増大に対し、成分Srを成分Caに対し30%含有する(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03まで発光色の色度(x,y)のy値は0.59とほぼ一定の値を示す。そしてさらに、Caに対し成分Srの含有量が30%を超え、成分Srの含有量が増大するに従い、対応する蛍光体においては、発光色の色度(x,y)のy値が0.59から低下し始め、ベースとなる組成を有する蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03の示す色度(x,y)のy値=0.17まで低下する。
【0128】
なおこのとき、より詳細に発光色の色度特性を解析すると、前記した色度(x,y)のy値が0.59を示した、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03のうちでは、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03が、y値=0.593と当該三蛍光体のうち最も大きなy値を示す。
【0129】
よって、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体においては、波長172nm励起条件下での発光の色度(x,y)のy値の特性は、ベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03及びSr1.97MgSi:Eu0.03も含めて考慮すると、成分Srの組成比増大に従い増大し、(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03で0.59を示して(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03までほぼ一定となり((Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03でピークを示す)、それ以降、低下を始めるという組成依存性を示すことがわかった。
【0130】
従って、本発明の一実施の形態である前記一般式(2)で示されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体の備える前述の色特性、すなわち、その発光色の蛍光体組成依存性に従い、PDP装置用として好ましい組成範囲を選択することが可能となる。
【0131】
すなわち、前記一般式(2)で示されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体について組成を選択して用い、紫外線により励起されて発光する光の色が、CIEのXYZ表色系における色度(x,y)のx値が0.15≦x値≦0.35であり、かつy値が0.45≦y値≦0.75ある緑蛍光体として使用し、その結果、HDTV規格TV用途への対応が可能で、高い発光特性を示すことが可能なPDP装置の提供が可能となる。
【0132】
このとき、x値の範囲は、0.30に近い値か、より深みのある緑色を表現可能な0.15程度までの小さな値を範囲内に含むよう設定する。そして、y値の範囲は、表色範囲を考慮して0.60近傍の値を考慮して下限を設定し、より色再現範囲を広げることのできる0.6以上の値であって、通常、蛍光体で実現可能なレベルを考慮して上限を設定する。
【0133】
そして、より望ましい緑色と表色範囲を考慮すると、XYZ表色系における色度(x,y)のx値の下限を0.20、y値の下限を0.50とし、x値が0.20≦x値≦0.35であり、かつy値が0.50≦y値≦0.75であり、それに対応するよう、蛍光体組成を選択、調整することがより好ましい。
【0134】
すなわち、本発明の一実施の形態である前記一般式(2)で示されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を使用した本発明に係るPDP装置をフラットパネルディスプレイの主要な用途であるTV、特にHDTV方式のカラーTV用途として使用することを考慮すると、発光の色性能、特に色度(x,y)の当該x値とy値において、x値では0.30に近い値か、より深みのある緑色を表現可能な0.2程度までのより小さな値を実現可能な蛍光体組成が好ましい。そして、当該y値では0.60近傍の値か、より色再現範囲を広げることのできる、0.6以上の値を実現可能な蛍光体組成が好ましい。
【0135】
従って、図11に示すグラフ図及び図9の表にまとめられた評価データから、前記一般式(2)で示されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、成分Srの組成比を示すxは、HDTV規格の緑色から、より深みのある緑色までを表現可能な、0.1≦x≦0.5であることが好ましい。
【0136】
そして、前記一般式(2)で示されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、発光の色の色度(x,y)のx値をより小さいものとし、発光色である緑色をより深みのある、より高色純度のものとすることを考慮すると、成分Srの組成比を示すxは、0.2≦x≦0.5であることがより好ましい。
【0137】
そしてさらに、前記一般式(2)で示されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、発光の色の色度(x,y)のy値をより大きいものとし、表色範囲をより広くすることを可能とすることを考慮すると、成分Srの組成比を示すxは、0.2≦x≦0.4であることがさらに好ましい。
【0138】
次に、本発明に係るPDP装置をフラットパネルディスプレイの主要な用途であるTV、特にカラーTV用途として使用することを考慮し、その場合に重要となる蛍光体の輝度特性の観点から、本発明の一実施の形態である前記一般式(2)で示されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体について、好ましい組成を選択することについて考察をする。
【0139】
図9に示す説明図から、本発明の一実施の形態であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03においては、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03を基準とすると、成分Srの含有により波長172nm励起条件下での発光の輝度はCa1.97MgSi:Eu0.03より高くなる。
【0140】
そして、さらに含有する成分Srの組成比の増大に従い輝度が増大し、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03で輝度のピーク値を示した後、それを越える成分Sr組成比の範囲では、輝度は徐々に低下を始める。そして、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03で輝度は、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03と同等となり、(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03においては、より低くなる。そして、成分Caのすべてを成分Srで置き換えたSr1.97MgSi:Eu0.03で最も輝度が低くなるという組成依存性を示している。
【0141】
従って、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03を基準とすると、前記一般式(2)で示されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、波長172nm励起条件下での発光輝度が、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03と同等もしくはより高くなり、本発明に係るPDP装置の高輝度化が可能となることを考慮すると、成分Srの組成比を示すxは、0.1≦x≦0.6であることが好ましい。
【0142】
そして、前述したように、前記一般式(2)で示されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、発光の色の特性までも考慮し、発光色の色度(x,y)のx値をより小さいものとし、発光色である緑色をより深みのある、より高色純度のものとすることを考慮すると、成分Srの組成比を示すxは、0.2≦x≦0.6であることがより好ましい。
【0143】
そして、前記一般式(2)で示されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体において、波長172nm励起条件下での発光輝度が、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03より高くなることを考慮すると、本発明に係るPDP装置のより高輝度化が可能となることから、成分Srの組成比を示すxは、0.2≦x≦0.5であることがさらに好ましい。
【0144】
なお、前記一般式(2)に示される蛍光体について、本発明の一実施の形態として、そのM3成分がMgである蛍光体について説明してきたが、M3成分については、MgとZnとからなる群から選択された一種以上の元素を用いることが可能であり、例えばM3成分としてZnのみ、もしくはMgとZnとの両成分を含んで組成化とすることも可能である。成分Znは前述した成分Mgとイオン半径が異なっており、それを蛍光体中に組成化することにより、Mg成分のみを組成化している蛍光体と異なる結晶構造を形成する効果が期待できる。その結果、Zn成分含有の蛍光体からの発光特性、特に輝度と発光の色特性を調整することが可能となって、PDP用途として所望の発光特性を示す蛍光体を得ることが可能となる。
【0145】
以上に基づき、前記一般式(2)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を使用した本発明の第二の実施の形態であるPDPを構成できる。具体的には、前述した前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を使用した本発明の一実施の形態である、図4〜図7に示したPDP100と同様に構成できる。
【0146】
すなわち、対応する図4等に示されるPDP100の一対の基板1,6の対向面のうちの一方(基板6側)の上及び隔壁7の壁面上には、前述した前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体で表されるEu2+賦活珪酸塩蛍光体を含む蛍光体層10が形成されるが、前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体と同様に前記一般式(2)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を用いて蛍光体層10を構成することが可能である。
【0147】
そしてその場合、蛍光体層10は、同様に、通常、赤、青、緑の3色の発光に対応する蛍光体、すなわち、赤蛍光体、青蛍光体または緑蛍光体からなり、放電によって放電ガスから発生する波長146nm及び172nmの真空紫外線によって、蛍光体層10における緑色を構成する、前記一般式(2)で表されたEu2+賦活珪酸塩蛍光体を含む緑蛍光体と、他の色(赤及び青)を構成する蛍光体とが励起され、可視光を発光するよう構成される。
【0148】
以下、本発明を実施するための最良の形態に対応する実施例を説明する。
【0149】
(実施例1)
本発明に係る実施例であるPDPを製作するために、初めに本発明の主要な構成部材であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体の合成を行った。
【0150】
第一に合成したEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体の組成式は(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02である。
【0151】
合成は、まず、CaCOを1.784g(17.82mmol)、SrCOを0.292g(1.98mmol)、MgCOを0.962g(10.00mmol)、SiOを1.322g(22.00mmol)、Euを0.0352g(0.100mmol)、そして熔融助剤としてNHClを0.0160g(0.300mmol)、それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。
【0152】
その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中600℃で2時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気下1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物は粉砕後、水洗及び乾燥を行うことで上記組成の珪酸塩蛍光体を得た。
【0153】
次に、Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02を合成した。
【0154】
合成方法は前記のものと同様であり、CaCOを1.784g(17.82mmol)、BaCOを0.391g(1.98mmol)、MgCOを0.962g(10.00mmol)、SiOを1.322g(22.00mmol)、Euを0.0352g(0.100mmol)、そして熔融助剤としてNHClを0.0160g(0.300mmol)、それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。
【0155】
その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中600℃で2時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気下1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物は粉砕後、水洗及び乾燥を行うことで上記組成の珪酸塩蛍光体を得た。
【0156】
次に比較のため前記蛍光体のベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02を合成した。
【0157】
合成方法は前記のものと同様であり、CaCOを1.982g(19.80mmol)、MgCOを0.962g(10.00mmol)、SiOを1.322g(22.00mmol)、Euを0.0352g(0.100mmol)、そして熔融助剤としてNHClを0.0160g(0.300mmol)、それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。
【0158】
その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中600℃で2時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気下1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物は粉砕後、水洗及び乾燥を行うことで比較例である上記組成の珪酸塩蛍光体を得た。
【0159】
次に、定法に従い中心発光波長172nmの真空紫外線エキシマランプを光源に用いて、合成した蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02及び蛍光体(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02の発光スペクトルを測定した。比較のためベース組成の蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の発光スペクトルも併せて測定した。結果は図1に示した。
【0160】
前述したように、図1に示した蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02及び蛍光体(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02の発光スペクトルは、蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の発光スペクトルに比べて、いずれも発光スペクトル全体が低波長側にシフトしていることがわかった。
【0161】
なお、同時に、購入により入手可能な従来緑蛍光体であるMn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnを用い、同様の方法で波長172nm真空紫外線励起における発光スペクトルを測定した。その結果、Mn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnの発光ピーク波長は528nmであった。
【0162】
次に、同様に、中心発光波長146nmの真空紫外線エキシマランプを光源に用いて、定法に従い蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02、蛍光体(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02、及び蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02の発光スペクトルを測定した。
【0163】
発光特性の評価、及び解析結果は図2に示した。発光波長146nm及び172nmの真空紫外線を用いて発光スペクトルを測定したところ、Eu2+賦活珪酸塩緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02及びEu2+賦活珪酸塩緑蛍光体(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02は、いずれも発光スペクトル全体が、ベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.98MgSi:Eu0.02に比べて低波長側にシフトしていることがわかった。
【0164】
そして、発光スペクトルの低波長側へのシフトについては、蛍光体試料を励起する真空紫外線の波長により違いがあり、波長146nmの真空紫外線より波長172nmの真空紫外線で励起した場合の方が低波長側へのシフトが大きいこともわかった。
【0165】
以上より、Eu2+賦活珪酸塩緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02及びEu2+賦活珪酸塩緑蛍光体(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02を、Xe組成を含む放電ガスを用いたPDPに使用した場合、波長146nm及び172nmの紫外光の励起で高い発光が得られることから、放電によるXe分子線も高効率で利用できることになり、高輝度のPDP装置が可能となることがわかった。
【0166】
さらに、Eu2+賦活珪酸塩緑蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02及びEu2+賦活珪酸塩緑蛍光体(Ca0.9Ba0.11.98MgSi:Eu0.02は、例えば組成比が6%以上、より好ましくはさらにXe分子線を積極的に利用する組成比10%以上となる量でXeガスを含んで構成された放電ガスを使用する、いわゆる高キセノン化対応のPDPの技術にもよく適合し、高キセノン化された放電ガスを使用したPDPにおいても良好な緑色を発光可能な発光装置を構成することができることがわかった。
【0167】
次に、緑の蛍光体層を構成する緑蛍光体として前述したEu2+賦活珪酸塩蛍光体(Ca0.9Sr0.11.98MgSi:Eu0.02を用い、図4に示す発光装置であるPDP100を作製した。
【0168】
本実施例1のような面放電型カラーPDP装置のPDP100では、例えば一対の表示電極(電極2)のうちの一方(一般に、走査電極と呼ぶ)に負の電圧を,アドレス電極(電極9)ともう一方の残りの表示電極(電極2)に正の電圧(前記表示電極に印加される電圧に比して正の電圧)を印加することにより放電が発生し、これにより、一対の表示電極の間で放電を開始するための補助となる壁電荷が形成される(これを書き込みと称する)。この状態で一対の表示電極の間に、適当な逆の電圧を印加すると、誘電体層4(及び保護膜5)を介して、両電極2の間の放電空間で放電が発生する。
【0169】
放電終了後、前記一対の表示電極(電極2)に印加する電圧を逆にすると、新たに放電が発生する。これを繰り返すことにより継続的に放電が発生する(これを維持放電又は表示放電と呼ぶ)。
【0170】
本実施例1であるPDP100は,背面基板(基板6)上に、銀などで構成されているアドレス電極(電極9)と、ガラス系の材料で構成される誘電体層4を形成した後,同じくガラス系の材料で構成される隔壁材を厚膜印刷し、ブラストマスクを用いたブラスト除去により、隔壁7を形成する。
【0171】
次に、この隔壁7上に,赤、緑及び青の各蛍光体層10を該当する隔壁7間の溝面を被覆する形で、順次ストライプ状に形成する。
【0172】
ここで、各蛍光体層10は、赤、緑及び青に対応し、赤蛍光体粒子を40重量部(ビヒクルを60重量部)、緑蛍光体粒子を40重量部(ビヒクルを60重量部)、青蛍光体粒子を35重量部(ビヒクルを65重量部)とし、それぞれビヒクルと混ぜて蛍光体ペーストとし、スクリーン印刷により塗布した後、乾燥及び焼成工程により蛍光体ペースト内の揮発成分の蒸発と有機物の燃焼除去を行って形成する。なお、本実施例1で用いた蛍光体層10は、中央粒径が3μm程度の各蛍光体粒子で構成されている。
【0173】
また、緑色以外の各蛍光体の材料については,赤蛍光体は(Y,Gd)BO:Eu蛍光体とY:Eu蛍光体1:1の混合物であり、青蛍光体はBAM(BaMgAl1017:Eu2+)蛍光体である。
【0174】
次に、表示電極(電極2)、バスライン3、誘電体層4、及び保護膜5を形成した前面基板(基板1)と、背面基板(基板6)をフリット封着し、パネル内を真空排気した後に放電ガスを注入し封止する。その放電ガスは、組成比が10%となる量でXeガスを含んで構成されたガスである。本実施例1に係るPDP100は、そのサイズが3型で一画素のピッチが1000μm×1000μmである。
【0175】
次に、本発明に係る実施例1であるEu2+賦活珪酸塩蛍光体を用いたPDPを使用し、PDPを駆動する駆動回路と組み合わせて画像表示を行うよう構成された表示装置であるプラズマディスプレイ装置を作製した。
【0176】
このプラズマディスプレイ装置は、高輝度で表示性能に優れ、高輝度表示が可能であった。そして、緑色の残光特性を評価したところ、残光の時間は1ms程度と短く、同じプラズマディスプレイ装置に用いた青蛍光体(BAM)の特性と同等であった。
【0177】
その結果、従来のMn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnを使用した従来プラズマディスプレイ装置では問題であった、表示を切り替えているにもかかわらず前の画像、その緑色が表示画面上残ってしまう現象の発生を十分に抑制することができ、優れた動画表示を実現できた。
【0178】
なお、本発明に係るPDPにおいては、本発明を構成する新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を使用し、残光特性に劣るMn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnと混合して緑蛍光体の一部を置換する使用の形態で、優れた残光特性のPDPを構成することも可能である。
【0179】
その場合、混合比率を(新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体)/(ZnSiO:Mn)≧1、すなわち、本発明を構成する新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を半分以上とする混合比で使用することが望ましい。蛍光体ZnSiO:Mnの残光時間が10ms程度であり、本発明を構成する新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体が1ms程度であることから、係る組成比にすることにより、残光時間は5ms程度もしくはそれ以下に抑制でき、前述した表示切り替え後に緑色が表示画面上残ってしまう現象を視認者が気にならない程度に低減することができる。
【0180】
また、Mn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnに代えて、本発明を構成する新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体に、(Y,Gd,Sc)SiO:Tb、(Y,Gd)(Al,Ga)12:Tb、(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ce、(Y,Gd)B:Tb及び(Y,Gd)PO:Tbのいずれか一種以上の蛍光体を混合して、PDPを作製することができる。
【0181】
また、本実施例1では赤及び青の蛍光体に関して、詳細な検討結果を示していないが、以下に示す各組成の蛍光体でも同様にPDPを作製することができる。
【0182】
赤蛍光体では、(Y,Gd)BO:Eu、(Y,Gd):Eu、及び(Y,Gd)(P,V)O:Euのいずれか一種以上の蛍光体を含む場合が可能である。また、青蛍光体では、CaMgSi:Eu、CaMgSi:Eu、BaMgSi:Eu、及びSrMgSi:Euからなる群から選ばれた一種以上の青蛍光体を含む場合が可能である。さらに、ここに示していない蛍光体との組合せも適用できる。
【0183】
(実施例2)
本発明に係る別の実施例であって、使用する緑蛍光体が実施例1の場合と異なるPDPを製作するため、まず初めに本発明の主要な構成部材であるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体の合成を行った。
【0184】
第一に合成したEu2+賦活珪酸塩緑蛍光体の組成式は(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03である。
【0185】
合成は、まず、CaCOを0.887g(8.86mmol)、SrCOを0.146g(0.99mmol)、MgCOを0.481g(5.00mmol)、SiOを0.601g(10.00mmol)、Euを0.0264g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNHBrを0.196g(2.00mmol)、それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。
【0186】
その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中600℃で2時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気下1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物は粉砕後、水洗及び乾燥を行うことで上記組成の珪酸塩蛍光体粉を得た。
【0187】
次に、蛍光体(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03を合成した。合成方法は前記のものと同様であり、CaCOを0.789g(7.88mmol)、SrCOを0.291g(1.97mmol)、MgCOを0.481g(5.00mmol)、SiOを0.601g(10.00mmol)、Euを0.0264g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNHBrを0.196g(2.00mmol)それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。
【0188】
その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中600℃で2時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気下1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物は粉砕後、水洗及び乾燥を行うことで上記組成の珪酸塩蛍光体粉を得た。
【0189】
次に、蛍光体(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03を合成した。合成方法は前記のものと同様であり、CaCOを0.690g(6.89mmol)、SrCOを0.436g(2.95mmol)、MgCOを0.481g(5.00mmol)、SiOを0.601g(10.00mmol)、Euを0.0264g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNHBrを0.196g(2.00mmol)それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。
【0190】
その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中600℃で2時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気下1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物は粉砕後、水洗及び乾燥を行うことで上記組成の珪酸塩蛍光体粉を得た。
【0191】
次に、蛍光体(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03を合成した。合成方法は前記のものと同様であり、CaCOを0.591g(5.90mmol)、SrCOを0.582g(3.94mmol)、MgCOを0.481g(5.00mmol)、SiOを0.601g(10.00mmol)、Euを0.0264g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNHBrを0.196g(2.00mmol)それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。
【0192】
その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中600℃で2時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気下1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物は粉砕後、水洗及び乾燥を行うことで上記組成の珪酸塩蛍光体粉を得た。
【0193】
次に、蛍光体(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03を合成した。合成方法は前記のものと同様であり、CaCOを0.493g(4.93mmol)、SrCOを0.727g(4.92mmol)、MgCOを0.481g(5.00mmol)、SiOを0.601g(10.00mmol)、Euを0.0264g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNHBrを0.196g(2.00mmol)それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。
【0194】
その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中600℃で2時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気下1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物は粉砕後、水洗及び乾燥を行うことで上記組成の珪酸塩蛍光体粉を得た。
【0195】
次に、蛍光体(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03を合成した。合成方法は前記のものと同様であり、CaCOを0.394g(3.94mmol)、SrCOを0.873g(5.91mmol)、MgCOを0.481g(5.00mmol)、SiOを0.601g(10.00mmol)、Euを0.0264g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNHBrを0.196g(2.00mmol)それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。
【0196】
その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中600℃で2時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気下1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物は粉砕後、水洗及び乾燥を行うことで上記組成の珪酸塩蛍光体粉を得た。
【0197】
次に、蛍光体(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03を合成した。合成方法は前記のものと同様であり、CaCOを0.296g(2.96mmol)、SrCOを1.018g(6.90mmol)、MgCOを0.481g(5.00mmol)、SiOを0.601g(10.00mmol)、Euを0.0264g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNHBrを0.196g(2.00mmol)それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。
【0198】
その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中600℃で2時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気下1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物は粉砕後、水洗及び乾燥を行うことで上記組成の珪酸塩蛍光体粉を得た。
【0199】
次に、本発明を構成するEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体のベースとなる組成を有する蛍光体の合成を行った。まず、蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03を合成した。合成方法は前記の各蛍光体例と同様であり、CaCOを0.986g(9.85mmol)、MgCOを0.481g(5.00mmol)、SiOを0.601g(10.00mmol)、Euを0.0264g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNHBrを0.196g(2.00mmol)それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。
【0200】
その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中600℃で2時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気下1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物は粉砕後、水洗及び乾燥を行うことで上記組成の珪酸塩蛍光体粉を得た。
【0201】
次に、ベースとなる組成を有する別の蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03を合成した。合成方法は前記のものと同様であり、SrCOを1.454g(9.85mmol)、MgCOを0.481g(5.00mmol)、SiOを0.601g(10.00mmol)、Euを0.0264g(0.075mmol)、そして熔融助剤としてNHBrを0.196g(2.00mmol)それぞれ量り取り、メノウ製の乳鉢中で十分に混合した。
【0202】
その後、得られた混合物を耐熱容器に充填し、大気中600℃で2時間焼成を行い、さらにその後、還元雰囲気下1200℃で3時間焼成を行った。得られた焼成物は粉砕後、水洗及び乾燥を行うことで上記組成の珪酸塩蛍光体粉を得た。
【0203】
次に、定法に従い、実施例1の場合と同様に中心発光波長172nmの真空紫外線エキシマランプを光源に用いて、合成した各蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03と、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03及びSr1.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルを測定した。
【0204】
結果については、発光スペクトルそのものについては、前記Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体の一例である蛍光体(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03と、ベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03及びSr1.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルを図8に示した。
【0205】
図8中、簡便に記するため、便宜上、蛍光体(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルを「(Ca0.5Sr0.5MgSi:Eu」と示し、蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルを「CaMgSi:Eu」と示し、蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルを「SrMgSi:Eu」と示した。何れの蛍光体の発光スペクトルもスペクトル形状は類似しており、一のピークを持ってその両側に裾野が広がる一山タイプの発光スペクトルとなった。
【0206】
それから、前記各蛍光体の発光スペクトルについて、各蛍光体の発光スペクトル全体の位置及び発光ピークの現れる位置がわかるよう、発光ピークの波長値を読み取って評価した。
【0207】
その結果、蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03の発光ピーク波長は532nmであった。(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03の発光ピーク波長は524nmであった。(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03の発光ピーク波長は520nmであった。(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03の発光ピーク波長は512nmであった。(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03の発光ピーク波長は504nmであった。(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03の発光ピーク波長は496nmであった。そして、(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03の発光ピーク波長は492nmであった。また、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の発光ピーク波長は540nmであった。さらに、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03の発光ピーク波長は468nmであった。以上の結果は、図9にまとめた。
【0208】
前述したように、図8に示した蛍光体(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03の結果からもわかるとおり、蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルは、その発光ピークが、ベースとなる組成を有する蛍光体であるCa1.97MgSi:Eu0.03とSr1.97MgSi:Eu0.03の発光スペクトルそれぞれの発光ピークの間の波長領域内にあるように現れた。そして、各蛍光体において含有する成分Sr比が大きくなるに従い、発光スペクトルは対応してより低波長シフトすることがわかった。
【0209】
次に、定法に従い中心発光波長172nmの真空紫外線エキシマランプを励起光源に用いた場合の発光の色特性の評価を行った。
【0210】
その結果、蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03の発光色の色度(x,y)は、(x,y)=(0.335,0.587)であった。(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03の発光色の色度(x,y)は、(x,y)=(0.306,0.593)であった。(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03の発光色の色度(x,y)は、(x,y)=(0.274,0.587)であった。(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03の発光色の色度(x,y)は、(x,y)=(0.245,0.569)であった。(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03の発光色の色度(x,y)は、(x,y)=(0.212,0.531)であった。(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03の発光色の色度(x,y)は、(x,y)=(0.184,0.476)であった。そして、(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03の発光色の色度(x,y)は、(x,y)=(0.161,0.408)であった。また、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の発光色の色度(x,y)は、(x,y)=(0.366,0.581)であった。さらに、Sr1.97MgSi:Eu0.03の発光色の色度(x,y)は、(x,y)=(0.133,0.171)であった。以上の結果は、色度x及び色度yとして、図9に蛍光体ごとにまとめた。そして、図11に示すように、XYZ色度座標上に各蛍光体の色度(x,y)をプロットした。
【0211】
得られた結果より、蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03は、それぞれの示す色が、含有する成分Srの組成比に従い、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の示す色とCa成分のすべてが成分Srに置換された場合に該当するSr1.97MgSi:Eu0.03の示す色との間で徐々に変化していることがわかった。
【0212】
次に、中心発光波長172nmの真空紫外線エキシマランプを励起光源に用いてベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03を基準とする相対輝度の評価を行った。測定は、定法に従って行い、蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の輝度測定値を基準値=100とし、他の蛍光体の相対輝度を評価した。
【0213】
その結果、蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03の相対輝度は116であった。(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03の相対輝度は114であった。(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03の相対輝度は128であった。(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03の相対輝度は103であった。(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03の相対輝度は103であった。(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03の相対輝度は95であった。そして、(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03の相対輝度は83であった。さらに、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03の相対輝度は63であった。
【0214】
以上の結果は、図9および図12に蛍光体ごとにまとめた。よって、図12は、本発明を構成するEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体の例である蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.3Sr0.71.97MgSi:Eu0.03と、ベースとなる組成を有する蛍光体Sr1.97MgSi:Eu0.03とにおいて、各蛍光体の示す発光輝度を、ベースとなる組成を有する蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03の輝度を基準値100として評価し、それぞれに含有される成分Srの成分Caに対する組成比(%/Ca)に対してプロットしたグラフ図である。なお、図12においては、各蛍光体における成分Caに対する成分Srの組成比をパーセント(%)表示している。従って、Ca1.97MgSi:Eu0.03の成分Sr組成比は「0%」、Sr1.97MgSi:Eu0.03においては「100%」、そして、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03においては、成分Sr組成比は「50%」と記している。
【0215】
そして、(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.6Sr0.41.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.5Sr0.51.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.4Sr0.61.97MgSi:Eu0.03において、ベースとなる組成を有するEu2+賦活の珪酸塩蛍光体Ca1.97MgSi:Eu0.03と比較して輝度が同等以上を示し、そのうち、蛍光体(Ca0.9Sr0.11.97MgSi:Eu0.03、(Ca0.8Sr0.21.97MgSi:Eu0.03、及び(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03が顕著に高い輝度を示すことがわかった。そして、蛍光体(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03が最も高い輝度を示した。
【0216】
(実施例3)
次に、緑の蛍光体層を構成する緑蛍光体として実施例2において説明したEu2+賦活の珪酸塩蛍光体(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03を用い、PDPを作製した。
【0217】
その構造と製造方法は、図4〜図7に示す、実施例1におけるPDP100と同様であり、蛍光体層10の緑の蛍光体層に含まれる蛍光体粒子として実施例2において説明した蛍光体(Ca0.7Sr0.31.97MgSi:Eu0.03の粉体を用いた。よって、本実施例3に係るPDP及びPDP装置の構造と製造方法の詳細は省略し、主要な部分についてのみ図4〜図7の対応する部位を参照しながら、以下に簡単に説明する。このとき、PDP構造において対応する同一の部材には原則として図4〜図7の同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0218】
本実施例3であるPDPでは、実施例1と同様、図4等からわかるように、基板1,6、電極2,9、バスライン3、誘電体層4,8、保護膜5、及び隔壁7からなる。そして、隔壁7上に,赤、緑及び青の各蛍光体層10を該当する隔壁7間の溝面を被覆する形で、順次ストライプ状に形成した。
【0219】
各蛍光体層10は、赤、緑及び青に対応し、赤蛍光体粒子を40重量部(ビヒクルを60重量部)、緑蛍光体粒子を40重量部(ビヒクルを60重量部)、青蛍光体粒子を35重量部(ビヒクルを65重量部)とし、それぞれビヒクルと混ぜて蛍光体ペーストとし、スクリーン印刷により塗布した後、乾燥及び焼成工程により蛍光体ペースト内の揮発成分の蒸発と有機物の燃焼除去を行って形成した。なお、本実施例3で用いた蛍光体層10は、実施例1と同様、中央粒径が3μm程度の各蛍光体粒子で構成されている。
【0220】
また、緑色以外の各蛍光体の材料については,実施例1と同様、赤蛍光体は(Y,Gd)BO:Eu蛍光体とY:Eu蛍光体1:1の混合物であり、青蛍光体はBAM(BaMgAl1017:Eu)蛍光体である。
【0221】
次に、放電ガスは、組成比が10%となる量でXeガスを含んで構成されたガスを使用した。本実施例3に係るPDPは、実施例1と同様、そのサイズが3型で一画素のピッチが1000μm×1000μmとした。
【0222】
そして、このPDPを使用し、実施例1と同様、当該PDPを駆動する駆動回路と組み合わせて画像表示を行うよう構成された表示装置であるプラズマディスプレイ装置を作製した。
【0223】
このプラズマディスプレイ装置は、高い輝度を示し、緑色の発色も良好で、実施例1のPDP装置と比較しても、表示性能に優れていた。そして、緑色の残光特性は、残光時間が1ms程度と短く、同じプラズマディスプレイ装置に用いた青蛍光体(BAM)の特性と同等であった。
【0224】
その結果、従来のMn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnを使用した従来プラズマディスプレイ装置では問題であった、表示を切り替えているにもかかわらず前の画像、その緑色が表示画面上残ってしまう現象の発生を十分に抑制することができ、優れた動画表示を実現できた。
【0225】
なお、本実施例3のPDP装置において用いるPDPは、構成する放電ガスに組成比が10%となる量でXeガスを含んで構成されたガスを使用しているが、組成比が6%以上となる量でXeガスを含んで構成されたガスを使用することが好ましい。そして、本実施例3よりXe組成比の多い、組成比が12%以上となる量でXeガスを含んで構成されたガスを使用することにより、より高輝度、高発光効率のPDP装置を提供することが可能となる。
【0226】
また、本発明に係る本実施例3のPDPにおいては、実施例1と同様、前述した新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を使用し、残光特性に劣るMn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnと混合して緑蛍光体の一部を置換する使用の形態で、優れた残光特性のPDPを構成することも可能である。
【0227】
その場合、実施例1と同様、混合比率を(新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体)/(ZnSiO:Mn)≧1、すなわち、本発明を構成する新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を半分以上とする混合比で使用することが望ましい。蛍光体ZnSiO:Mnの残光時間が10ms程度であり、本発明を構成する新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体が1ms程度であることから、係る組成比にすることにより、残光時間は5ms程度もしくはそれ以下に抑制でき、前述した表示切り替え後に緑色が表示画面上残ってしまう現象を視認者が気にならない程度に低減することができる。
【0228】
また、Mn2+賦活の珪酸亜鉛蛍光体ZnSiO:Mnに代えて、本発明を構成する新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体に、(Y,Gd,Sc)SiO:Tb、(Y,Gd)(Al,Ga)12:Tb、(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ce、(Y,Gd)B:Tb及び(Y,Gd)PO:Tbのいずれか一種以上の蛍光体を混合して、PDPを作製することができる。
【0229】
また、本実施例3では赤及び青の蛍光体に関して、詳細な検討結果を示していないが、以下に示す各組成の蛍光体でも同様にPDPを作製することができる。
【0230】
赤蛍光体では、(Y,Gd)BO:Eu、(Y,Gd):Eu、及び(Y,Gd)(P,V)O:Euのいずれか一種以上の蛍光体を含む場合が可能である。また、青蛍光体では、CaMgSi:Eu、CaMgSi:Eu、BaMgSi:Eu、及びSrMgSi:Euからなる群から選ばれた一種以上の青蛍光体を含む場合が可能である。さらに、ここに示していない蛍光体との組合せも適用できる。
【0231】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態及び実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0232】
本発明のPDP装置は、高輝度で短残光の蛍光体材料に基づいて、高性能の動画表示が可能であり、より大型のPDP装置を構成することにより、高輝度が必要かつ優れた動画特性が不可欠な大型の家庭用平面表示装置用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】本発明の一実施の形態である発光装置の新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体とベースとなる組成の蛍光体とにおける波長172nm真空紫外線励起条件での発光スペクトルを示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態である発光装置の新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体とベースとなる組成の蛍光体とにおける発光特性及び発光スペクトルを解析したデータをまとめた説明図である。
【図3】AC型PDPにおける放電ガス中のXe組成比(%)と強度比率(I172/I146)の関係を示すグラフ図である。
【図4】本発明の一実施の形態であるPDP装置を構成するプラズマディスプレイパネルの構造を示す要部分解斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態であるPDP装置を構成するプラズマディスプレイパネルの構造を示す要部分解断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態であるPDP装置を構成するプラズマディスプレイパネルの構造を示す要部分解断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態であるPDP装置を構成するプラズマディスプレイパネルの構造を示す要部分解断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態であるPDP装置を構成する新規蛍光体とベースとなる組成を有する蛍光体の波長172nm真空紫外線励起条件での発光スペクトルの説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態であるPDP装置を構成する新規蛍光体とそのベースとなる組成を有する蛍光体の波長172nm励起条件下での発光特性の評価結果をまとめた説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態であるPDP装置を構成する新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体とそのベースとなる組成の蛍光体とが示す発光スペクトルの発光ピークの波長値をそれぞれに含有される成分Srの組成比(%/Ca)に対してプロットしたグラフ図である。
【図11】本発明の一実施の形態であるPDP装置を構成するEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体とそのベースとなる組成を有する蛍光体とにおける波長172nm励起条件下での発光の色度(x,y)をXYZ色度図座標上にプロットしたグラフ図である。
【図12】本発明の一実施の形態であるPDP装置を構成する新規Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体とそのベースとなる組成の蛍光体とにおける相対発光輝度をそれぞれに含有される成分Srの組成比(%/Ca)に対してプロットしたグラフ図である。
【符号の説明】
【0234】
1,6 基板
2,9 電極
3 バスライン
4,8 誘電体層
5 保護膜
7 隔壁
10 蛍光体層
100 PDP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて対向配置された一対の基板と、
前記一対の基板間に設けられ、前記一対の基板間に空間を形成する隔壁と、
前記一対の基板の対向面の少なくとも一方の上に配置される電極対と、
前記隔壁によって形成される空間内に封入され、前記電極対に印加された電圧による放電により紫外線を発生する放電ガスと、
前記空間内の前記一対の基板の対向面と前記隔壁の壁面上との少なくとも一方に形成され、前記紫外線により励起されて発光する蛍光体を含有する蛍光体層とから構成され、
前記蛍光体は、下記の一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を含むことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
(Ca1−xM12−e・M2・Si:Eu (1)
(式中、M1はSrとBaとからなる群から選択された一種以上の元素であり、M2はMgとZnとからなる群から選択された一種以上の元素であり、成分M1の組成比を示すx及びEuの組成比を示すeは、それぞれ0<x<1及び0.001≦e≦0.2である)
【請求項2】
請求項1記載のプラズマディスプレイ装置において、前記放電ガスは、組成比が6%以上となる量でXeガスを含んで構成されたガスであることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1記載のプラズマディスプレイ装置において、前記放電ガスは、組成比が10%以上となる量でXeガスを含んで構成されたガスであることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項1記載のプラズマディスプレイ装置において、前記放電ガスは、組成比が12%以上となる量でXeガスを含んで構成されたガスであることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項1記載のプラズマディスプレイ装置において、前記空間毎に赤蛍光体、緑蛍光体または青蛍光体のいずれかからなる蛍光体層が形成されており、前記緑蛍光体は、前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩緑蛍光体を含むことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項6】
請求項5記載のプラズマディスプレイ装置において、前記緑蛍光体は、前記一般式(1)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体とともに、ZnSiO:Mn、(Y,Gd,Sc)SiO:Tb、(Y,Gd)(Al,Ga)12:Tb、(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ce、(Y,Gd)B:Tb及び(Y,Gd)PO:Tbからなる群より選択された一種以上の蛍光体を含むことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項7】
請求項5記載のプラズマディスプレイ装置において、前記赤蛍光体は、(Y,Gd)BO:Eu、Y:Eu、(Y,Gd):Eu及び(Y,Gd)(P,V)O:Euからなる群より選択された一種以上の蛍光体からなり、前記青蛍光体は、BaMgAl1017:Eu、CaMgSi:Eu及びSrMgSi:Euからなる群より選択された一種以上の蛍光体からなることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項8】
請求項1記載のプラズマディスプレイ装置において、前記蛍光体は、下記の一般式(2)で表されるEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を含むことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
(Ca1−xSr2−e・M3・Si:Eu (2)
(式中、M3はMgとZnとからなる群から選択された一種以上の元素であり、成分Srの組成比を示すx及びEuの組成比を示すeは、それぞれ0.1≦x≦0.6及び0.001≦e≦0.2である)
【請求項9】
請求項8記載のプラズマディスプレイ装置において、前記一般式(2)で表されるEu2+賦活珪酸塩系蛍光体の成分Srの組成比を示すxは、0.2≦x≦0.6であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項10】
請求項8記載のプラズマディスプレイ装置において、前記一般式(2)で表されるEu2+賦活珪酸塩系蛍光体の成分Srの組成比を示すxは、0.2≦x≦0.5であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項11】
請求項8記載のプラズマディスプレイ装置において、前記一般式(2)で表されるEu2+賦活珪酸塩系蛍光体の成分Srの組成比を示すxは、0.2≦x≦0.4であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項12】
間隔をあけて対向配置された一対の基板と、
前記一対の基板間に設けられ、前記一対の基板間に空間を形成する隔壁と、
前記一対の基板の対向面の少なくとも一方の上に配置される電極対と、
前記隔壁によって形成される空間内に封入され、前記電極対に印加された電圧による放電により紫外線を発生する放電ガスと、
前記空間内の前記一対の基板の対向面と前記隔壁の壁面上との少なくとも一方に形成され、前記紫外線により励起されて発光する蛍光体を含有する蛍光体層とから構成され、
前記蛍光体は、Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体を含み、前記Eu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体は、下記の一般式(3)で表されるとともに、前記紫外線により励起されてCIEのXYZ表色系における色度(x,y)の当該x値が0.15≦x値≦0.35であり、当該y値が0.45≦y値≦0.75ある色の光を発光するEu2+賦活珪酸塩系緑蛍光体であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
(Ca1−xM12−e・M2・Si:Eu (3)
(式中、M1はSrとBaとからなる群から選択された一種以上の元素であり、M2はMgとZnとからなる群から選択された一種以上の元素であり、成分M1の組成比を示すx及びEuの組成比を示すeは、それぞれ0<x<1及び0<e<1である)
【請求項13】
請求項12記載のプラズマディスプレイ装置において、前記放電ガスは、組成比が6%以上となる量でXeガスを含んで構成されたガスであることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項14】
請求項12記載のプラズマディスプレイ装置において、前記放電ガスは、組成比が10%以上となる量でXeガスを含んで構成されたガスであることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項15】
請求項12記載のプラズマディスプレイ装置において、前記放電ガスは、組成比が12%以上となる量でXeガスを含んで構成されたガスであることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−59608(P2009−59608A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226642(P2007−226642)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】