説明

プラズマベースのEUV放射線源用のガスカーテンを生成する装置

【課題】ガスカーテンを生成する装置の簡単な配置と構成並びに長い寿命が極端な熱負荷の際にも可能である、放射プラズマの直接的な近傍でガスカーテンを生成する新たな可能性を見い出す。
【解決手段】幅広で平らなガスカーテン(18;19)の生成用の超音波ノズル輪郭部(11)を形成するスリットノズル(1)が複数の部分ボディ(14、15;2)から組み立てられていて、これらの部分ボディが、スリットノズル(1)のガス導入部分(14)及びガス排出部分(15)で熱的な且つ精密機械的な様々な要求を適えるために異なる材料から成ること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマベースの放射線源内で放出される放射線をフィルタリングするためのガス流を生成する装置に関し、それらの放射線源にはデカップル可能な放射線束内でガスカーテンを生成する少なくとも1つの超音波・スリットノズルが設けられている。本発明は好ましくは半導体チップ製造でEUVリソグラフィ用の放射線源において集光光学系(コレクターオプティックス)及びそれに後続する他の光学系をデブリから保護するために適用される。
【0002】
半導体チップの構造化(パターン化)は今日の従来技術では光学リソグラフィを用いて行われる。この際、マスク上に含まれている所望の構造(パターン)が半導体ウェーハ上に転写される。そこには感光層が設けられていて、この感光層が露光により化学的な変化をこうむり、それにより露光面及び非露光面の更なる選択的な加工を可能にしている。
【0003】
この方法で達成可能な空間的な解像度は使用されている光の波長により制限されている。進歩的な極小化は解像度の絶え間ない増加を要求し、そのような解像度は光の波長の減少によってのみ達成することができる。目下使用されている193nmの波長をもつDUVエキシマレーザに代わるものとして13.5nmの波長をもつ極紫外(EUV)放射線の使用が意図されている。この波長を生成するにはプラズマベースの放射線源が起用されなくてはならない。EUV放射線は周知のどの材料内にも強く吸収されるので、全放射線生成は露光に至るまで高真空内で反射光学系の使用のもと行なわれなくはならない。
【0004】
EUV放射線用の高出力放射線源はレーザパルス(LPP laser-produced-plasma)又はガス放電(GDP gas-discharge-plasma)により生成される発光プラズマをベースにしている。この際、例えばキセノンやスズやリチウムのような材料が数十万度の温度に加熱され、EUV領域内の発生プラズマが放出される。この放射線は集光光学系を用いて集められ、隣接する露光モジュールに対する界面を意味する中間焦点へと投光される。13.5nm付近の波長領域内でできるだけ高い放射線出力を達成することに並び、放射線源及び集光光学系のプラズマ生成コンポーネントの寿命が中でも問題である。プラズマは所望の放射線の他に高エネルギーの粒子並びにそれよりも大きなクラスタ、まとめてデブリと称するものを放出する。このデブリ放出は稼動パラメータに応じ反射層の損害や不純物の蓄積や光学表面の荒れをもたらす。これらの全ての過程は光学系の反射率を減少させる。従ってデブリから集光光学系を保護するための装置がEUV高出力源の使用の成功にとって鍵を握っている。
【0005】
集光光学系の保護に関しては以下の基本原理が知られている:
a)機械的に可動のアパーチャ或いはシャッターであり、これらは放射線パルスを通過させ、それよりも低速のデブリ粒子を隔絶する。
b)例えば特許文献1及び特許文献2に開示されているような静止式又は回転式の薄板装置であり、これらの薄板装置は実質的に放出場所に対して放射状に指向された薄板(フィン)を有し、これらの薄板がデブリ粒子を粘着的に捕獲する。
c)例えば特許文献3に記載されているような電場及び/又は磁場(多くの場合、無電荷の粒子用のフィルタとの組み合わせで用いられる)
d)バッファガスで満たされた空間であり、これらの空間内でデブリ粒子がガス粒子との衝突により減速される(例えば特許文献4に記載されているように吸引又は他のフィルタ措置により除去される)。
e)バッファガスから成るガスカーテンであり、これらのガスカーテンが高速で平らな横方向のガス流としてデブリ粒子を減速並びに偏向させる(特許文献5参照)。
【0006】
GDP源及びLPP源に対しては基本的に同じデブリ・フィルタコンセプトが使用されるが、GDP源ではプラズマが電極システムの直接的な空間近傍で発生するので、放出された放射線の極めて制限された空間角度だけが使用可能であるのに対し、LPP源では遥かに大きな放射角度が網羅されなくてはならない。
【0007】
流れるバッファガスは真空にされた室内でプラズマ生成のために、機械的で且つフィールド(電場/磁場)と結合されたデブリフィルタとの組み合わせで以前から使用され、その理由はガス粒子がデブリ粒子との衝突によりそれらの減速及び/又は偏向をもたらし、他のデブリフィルタの作用を明らかに改善したためである。しかしこの際、放出するEUV放射線に対しバッファガスの吸光作用を低く保持するために高性能の真空引きシステムが使用されなくてはならない。
【0008】
デブリフィルタリングの特に有効な形式は前記のeの点に従い、引用文献5に記載されているようなガスカーテンの適用である。そのようなガスカーテンは、超音波ノズルを用いて実現されている場合、むしろより大きなデブリ・クラスタを十分に偏向させることができ、その際、プラズマ生成のために必要な真空を破壊することはない。更にそのようなガスカーテンは僅かな空間要求だけをもち、プラズマの直接的な近傍で使用することができる。
【0009】
しかしガスカーテンの使用の問題点は(平面内での)その広がりが空間的に制限されているということにあり、その結果、EUV放射線の大きな空間角度を網羅するためには生成用のスリットノズルをできるだけプラズマの近傍に近づけなくてはならない。このことはノズルの高い熱負荷を結果としてもたらす。しかし超音波・スリットノズルは極めて精巧な精密機械の形状から成り、これらは冷却が困難であり、高融点の材料(例えばタングステン又はモリブデン)から製造可能ではあるが極めて困難である。
【0010】
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願公開第1274287号明細書
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願公開第1391785号明細書
【特許文献3】米国特許第6881971号明細書
【特許文献4】ドイツ特許出願公開第102005020521号明細書
【特許文献5】国際公開2003/26363号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の基礎を成す課題は、ガスカーテンを生成する装置の簡単な配置と構成並びに長い寿命が極端な熱負荷の際にも可能である、放射プラズマの直接的な近傍でガスカーテンを生成する新たな可能性を見い出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題は、本発明に従い、ガスカーテンを生成する少なくとも1つの超音波スリットノズルがデカップル可能な放射線束内に設けられているプラズマベースの放射線源内で放出された放射線をフィルタリングするためのガス流を生成する装置において、幅広で平らなガスカーテンの生成用の超音波ノズル輪郭部を形成するスリットノズルが複数の部分ボディから組み立てられていて、これらの部分ボディがスリットノズルに対する熱的な且つ精密機械的な様々な要求を適えるために異なる材料から成ることにより解決される。
【0013】
有利にはスリットノズルはノズル輪郭部を形成するガス導入部分とガス排出部分から組み立てられていて、この際、ガス導入部分は精密機械的に良好に加工可能な金属から成り、ガス排出部分は高融点の金属から成る。ここでガス導入部分は好ましくは鋼材又は特殊鋼から製造され、それに対しガス排出部分は合目的にはモリブデン又はタングステンから製造されている。
【0014】
有利にはスリットノズルはガスをノズル輪郭部内へと定義された方向で流入させるガス分配管を含んでいて、この際、このガス分配管は外殻線に沿い、半径方向のガス通過のために縦方向に均等に形成されているガス流入ライン部を有する。
【0015】
そのガス流入ライン部は合目的には等間隔に配置された一列上の円形穴又は長穴として、又は連続する溝穴として形成されている。この際、ガス流入ライン部の円形穴は好ましくは10μmと500μmの間の直径を有する。長穴又は連続する溝穴については幅が好ましくは30μmと300μmの間の値をとり、長穴の長さは好ましくは1mmから10mmの値をとることができる。個々の円形穴間又は長穴間の間隔は合目的には1mmから5mmの範囲内で選択されるべきである。
【0016】
基本的にガス流入ライン部の開口のサイズ決定は以下のことに従って成される:
a)ガス方式(比較的軽いガス用には比較的小さな穴、比較的重いガス用には比較的大きな穴)
b)ガスカーテンの所望の特性(ガス流内の圧力及び密度、ガス流の方向集束及びマッハ数)
c)許容しうる通流量(ガスカーテンの流れ領域内の真空ポンプの容量、及びガス取入部内の実現可能な圧力)
d)形状に関する因子(ガスカーテンの幅、真空室の大きさなど)
【0017】
ガス分配管は金属材料又はセラミック材料から構成され得る。ガスの取り入れ用のガス供給部は好ましくはガス分配管の一方の端面に装着されている。
【0018】
ガス導入部分やガス排出部分やガス分配管のようなスリットノズルの部分ボディは合目的には取外し可能な結合により組み合わされている。この際、ピン、ネジ、リベット、クランプ、又はスリーブも使用され得る。
【0019】
またスリットノズルの部分ボディは、取外し不能な結合、例えば材料拘束的な結合(溶接、ロウ付け、接着など)又は少なくとも1つの取外し可能な結合(例えばガス分配管のため)と少なくとも1つの取外し不能な結合(部分ボディの結合のため)によっても組み合わせられ得る。
【0020】
更に本発明の課題は、ガス放電をベースにEUV放射線を生成する装置であって、真空室内に、ガス放電プラズマを生成する電極装置と、プラズマから放出されたEUV放射線を集める集光光学系とが光学軸線に沿って配置されていて、ガスカーテンを生成するスリットノズルがその光学軸線に対して直角にプラズマと集光光学系の間に配置されている、前記装置において、スリットノズルが高融点の材料から成る少なくとも1つのガス排出部分を有し、ガス導入用の他の部分が精密機械的に良好に加工可能な材料から製造されていること、及び、スリットノズルが少なくとも部分的に、プラズマの生成用に設けられている電極装置の放射線暗部内に固定されていて、集光光学系の光学軸線の反対側でガスカーテン用の吸引装置が同様に放射線暗部内に取り付けられていることにより解決される。
【0021】
この際、集光光学系として好ましくは、入れ子状に配置された集光鏡から成り斜めにかすめるように反射する反射光学系が使用され、この際、スリットノズルと吸引装置から生成されるガスカーテンと集光光学系との間には機械的な薄板装置(フィン装置)が配置されている。
【0022】
スリットノズルと吸引装置の間に生成されるガスカーテンは好ましくはデブリ粒子を減速(制動)させるバッファガスから成り、このガスカーテンは機械的な薄板装置と協働し高いデブリ抑制を達成する。またこのガスカーテンは、プラズマにより生成されたEUV放射線をスペクトルフィルタリングするために設けられている混合ガスからも成り得て、放出されたEUV放射線の要求されるスペクトル純度(アウト・オブ・バンド・ラジエーションの除去)が達成される。
【0023】
更に本発明の課題は、レーザ生成プラズマをベースにEUV放射線を生成する装置であって、真空室内に、ターゲット軌道に沿って供給されるターゲットに対し、EUV放射線を放出するプラズマを生成するレーザ光線が向けられていて、プラズマから放出されたEUV放射線を集める集光光学系が光学軸線に沿って配置されていて、ガスカーテンを生成するスリットノズルがその光学軸線に対して直角にプラズマと集光光学系の間に配置されている、前記装置において、スリットノズルが高融点の材料から成る少なくとも1つのガス排出部分を有し、ガス導入用の他の部分が精密機械的に良好に加工可能な材料から製造されていること、及び、スリットノズルが集束可能な放射線円錐形部の外側に取り付けられていて、集光光学系の光学軸線の反対側でガスカーテン用の吸引装置が同様に集束可能な放射線円錐形部の外側に取り付けられていることにより解決される。
【0024】
この場合、集光光学系として合目的には、反射光学系で垂直な放射線入射のために形成されている集光鏡が使用され、プラズマの背後に配置され、この際、スリットノズルと吸引装置により生成されるガスカーテンと集光光学系との間にはデブリ抑制のために追加的な機械的な薄板装置が配置されている。この際、ノズルと吸引装置の間に生成されるガスカーテンは好ましくはデブリ粒子を減速させるバッファガスから成る。またガスカーテンは、放出されたEUV放射線のスペクトルフィルタリングを同時にもたらす混合ガスからも成り得る。
【0025】
有利には、集光鏡により集束される放射線束の方向で、プラズマに対して後置された他のガスカーテンを生成する追加的なスリットノズルが設けられていて、この際、光学軸線の反対側に吸引装置が配置されている。
【0026】
スリットノズルと吸引装置の間に生成される他のガスカーテンは好ましくは、プラズマからのデブリ粒子を減速させるバッファガスから成り得る、又はプラズマにより生成されたEUV放射線をスペクトルフィルタリングする混合ガスからも成り得る。
【0027】
本発明に従う解決策により、放射プラズマの直接的な近傍でガスカーテンを実現することが可能であり、このガスカーテンは熱負荷が極端な場合でもスリットノズルの簡単な配置と構成並びに長い寿命を可能にしてくれる。更にこの解決策はEUV放出プラズマの様々な生成形式に適し、デブリ抑制の他、生成された放射線のスペクトルフィルタリングを同様に可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
【0029】
本発明に従うスリットノズル1の構造上の構成が図1で横断面及び縦断面として図示されている。
【0030】
スリット形状のノズル輪郭部11を有する超音波ノズルを形成するスリットノズル1は、ガス排出方向で分割され、少なくとも1つのガス導入部分14と少なくとも1つのガス排出部分15から組み立てられている。ガス排出部分15は、プラズマの直接的な近傍に基づき熱負荷が高いため、耐熱性材料(タングステン、モリブデンなど)から製造されている。スリットノズル1のガス導入部分14は材料として完全に耐熱性である必要はないが比較的容易に加工され得る材料(例えば特殊鋼)から成る。ガス導入部分14とガス排出部分15は、ガス流に対する後縁(トレーリングエッジ)を回避するために、できるだけ良好に閉じられた継目16を有するノズル輪郭部11を形成するように互いに適合されなくてはならない。スリットノズル1は流出すべきガス用の導入スリット12を有し、導入スリット12にはノズル中心平面13(切断面B−B)に対して対称であり放物線形状の横断面を有するノズル輪郭部11が続いている。ノズル輪郭部11と導入スリット12により予め定められたノズル中心平面13は同時に、生成すべきガスカーテン18のための(中心の)平面を表わし、この際、ノズル輪郭部11はノズル中心平面13に対して直角のどの平面においても図1の左側の図面(切断面A−A)に描かれている同じ横断面を有する。スリットノズル1のガス導入部分14内でノズル輪郭部11の前方には導入スリット12に沿って円筒状の穴が設けられていて、この穴内にはバッファガスを取り入れるためのガス分配管2が挿入されている。
【0031】
ガス分配管2は片側で閉じた端面27を有し、その反対側ではガス供給部28に接続されている。ガス分配管2は外殻線21に沿ってガス流入ライン部22を有し、ガス流入ライン部22はスリットノズル1の導入スリット12に対して中央に指向されていて、複数の小さな円形穴23(図1参照)又は長穴24(図3a参照)又は連続する溝穴25(図3b参照)から構成され得る。
【0032】
図1に従う円形穴23のサイズは数十マイクロメートルから数百マイクロメートルの範囲内であり得る。長穴24又は溝穴25の幅は30〜300μmのオーダー内に位置する。円形穴23間又は長穴24間では1〜5mm程度の範囲の間隔が有意義である。長穴24のためには好ましくは1〜10mmの長さが選択される。
【0033】
スリットノズル1内のノズル輪郭部11の導入スリット12はその幅に関してガス分配管2のガス流入ライン部22のサイズよりも2倍から10倍の大きさとなっている。このことはガス分配管2の容易な位置合せを保証し、それによりガス流入ライン部22が容易にスリットノズル1の導入スリット12内でセンタリングされ得る。センターの位置決めが成されていないと気流はノズル輪郭部11のエッジで途切れてしまい又は乱流を発生させることになり、これらの乱流は平面的に平行に流れるガスカーテン18の破壊を導くことになる。ガス分配管2は、スリットノズル1のノズル輪郭部11に対してガス流入ライン部22の中央で且つ左右対称の位置調整の後、ネジ26を用いて固定される。このようにして容易な位置調整と並び、ガス分配管2を迅速に且つ容易に交換することが可能である。当然であるが、締付、ロウ付け、溶接などのような別の固定技術も同様に可能である。ガス分配管2内にガスを取り入れるためのガス供給部28は好ましくはガス分配管2の一方の端面27に装着されている。しかしガス供給部28はガス分配管2の外殻面の例えば中央にも装着され得る。
【0034】
図2はスリットノズル1の斜視図を示している。左側の図ではスリットノズル1がガス導入部分14とガス排出部分15とに分解されていて、右側の図ではそれらが組み立てられている。
【0035】
この例でガス導入部分14は特殊鋼から成り、ガス排出部分15はモリブデンから成っている。ガス導入部分14とガス排出部分15はピン17により結合されている。しかし(例えば特殊鋼から成る)金属スリーブ又は締付クランプを用いた力拘束結合や、ロウ付け又は溶接により材料拘束結合などのような別の固定法も可能である。
【0036】
図4にはガス放電EUV源3内での本発明に従うスリットノズル1の使用が図示されている。電極システム31内で適切な作動ガス(例えばキセノン)内のガス放電を用いてプラズマ5が生成され、プラズマ5は優先的にEUV放射線51を放出する。全ての放射線生成コンポーネントは真空室4内にあり、真空室4は真空ポンプシステム41により低圧(数10Pa)に保持され、それによりプラズマ5の生成のための適切な条件と、プラズマ5から放出されたEUV放射線51の吸光の少なさとが保証されている。
【0037】
この際、電極システム31の形状は放出されたEUV放射線51の空間角度を排出円錐形部32に制限している。従って一方ではプラズマ5から放出され他方では電極システム31の熱い表面から飛散される高エネルギー粒子の形状の捕獲すべきデブリはこの排出円錐形部32上に限定されている。真空室4内でEUV放射線51の排出円錐形部32の外側には放射線暗部33がある。
【0038】
真空室4内でスリットノズル1は、少なくともそのガス導入部分14が放射線暗部33内、即ち排出円錐形部32の外側にとどまるように配置される。ガス排出部分15は材料選択に基づきより耐熱性があり、それ故(部分的に)排出円錐形部32内に位置することができる。形状が許すのであればスリットノズル1を当然ながら完全に放射線暗部33内に取り付けることも可能である。
【0039】
スリットノズル1から出てゆく不活性のバッファガス(希ガス)はその超音速により平らなガスカーテン18を生成する。スリットノズル1の反対側には吸引装置42が配置されていて、それにより追加的なガス負荷が真空室4の高真空を妨害することをできるだけ少なくしている。ガスカーテン18は局部的な圧力上昇と、全バッファガス粒子の統一した流れ方向とにより傑出している。
【0040】
真空室4の高真空に対するガスカーテン18内の圧力上昇により、プラズマ5から放出された原子とイオン(デブリ)はバッファガス原子と数多く衝突することになり、このことはそれらの減速(エネルギー放散)及びそれによりそれらの破壊ポテンシャルの減少をもたらす。比較的大きな粒子は、方向付けられたバッファガスとの多くの衝突によりガスカーテン18の流れ方向に追加的な衝撃を受ける。粒子の大きさとエネルギーに応じこれらの粒子は少なくとも、後置されている薄板装置6内で捕まるように偏向される。薄板(フィン)61及びそれらの中間空間62はプラズマ5に対し又は集光光学系7の光学軸線71に対して放射状に指向されている。この実施例では入れ子状にされた複数の集光鏡72から成る集光光学系7は、排出円錐形部32内に放出されたEUV放射線51を中間焦点73(図5でのみ記入)へと結び、中間焦点73は、集束された放射線束74の収束線の界面として光学軸線71の延長上に図4の外に位置している。
【0041】
プラズマ5及び電極システム31から放出された粒子はEUV放射線51の排出円錐形部32内において放射方向で直線的にのみ薄板装置6を横断することができる。ガスカーテン18内のデブリ粒子の方向変更は飛行軌道の変化をもたらし、この飛行軌道によりデブリ粒子は薄板61の1つと接触することになるため、薄板構造体である薄板装置6を通過することはできない。
【0042】
設定されたガスカーテン18は放射状の薄板構造体6との関連で個々の原子とイオンのためにもそれよりも大きな粒子・クラスタのためにもほぼ回避不能な障害部を意味し、従って有害なデブリを最大限に除去する有効な方策である。
【0043】
レーザ生成プラズマ5をベースにしたEUV源8内のスリットノズル1の合目的な装着形式が図5に様式化されて図示されている。プラズマ生成用に必要とされるターゲット流は、一般性の限定を伴うことなく、ターゲット軌道81に沿った個々の滴として選択されている。レーザ光線82の入射方向がターゲット軌道81に対してできるだけ直角に延在することに基づき、ガスカーテン18の流れ方向とは異なるターゲット軌道81の方向も有意義であるが、図面の見易さのためにターゲット軌道81はガスカーテン18の流れの方向と平行に示されている。
【0044】
集光鏡72により集束されない直接的なEUV放射線51から他の結像光学系(非図示)を保護するために他のガスカーテン19が第1ガスカーテン18と平行に配置されていて、そのガスカーテンは同構造のスリットノズル1により生成され、共通の吸引装置42により受け止められる。
【0045】
プラズマ5の生成のためにパルシングされて提供されるレーザ光線82は図面の前面で斜めに示されているが、レーザプラズマ・EUV源8の残りのコンポーネントの配置構成は純粋な側面図(集光鏡72の光学軸線71に沿った断面図)として描かれている。それ故この図面は、レーザ光線82であってターゲット軌道81のように実質的に両方のガスカーテン18及び19と平行に集光鏡72の光学軸線71(焦点)へと向けられるレーザ光線82がターゲット軌道81と180°とは異なる角度を成すことを明確にするために選択されたものである。
【0046】
プラズマ5がEUV放射線51を放出する空間角度は(図4のように)電極システム31により制限されていないので、スリットノズル1の保護された位置決めのために提供することのできる適切な放射線暗部33は最初からない。しかし暗部領域は追加的なスクリーン(非図示)により人工的に生成され得て、それによりスリットノズル1は少なくとも、集束可能な放射線円錐形部83の外側、及び中間焦点73に集束される放射線束74の外側で遮蔽されて配置されている。
【0047】
レーザ生成EUV源8のこの形式においても追加的なデブリフィルタ、例えば(図4で示された)薄板装置6が使用可能であり、それによりデブリが集光光学系及び他の結像光学系に達することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に従うスリットノズルの基本的な構造を横断面(左側)と縦断面(右側)で示す図である。
【図2】ガス導入部分とガス排出部分から成るスリットノズルを分解状態(左側)と組立状態(右側)で示す図である。
【図3】スリットノズルの分配管の他の2つの実施形態を示す図であり、ガス流入ライン部として、aでは長穴が設けられ、bでは連続する溝穴が設けられている。
【図4】ガス放電EUV源における本発明に従うスリットノズルの配置構成を示す図である。
【図5】レーザベースのEUV源における本発明に従うスリットノズルの配置構成を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ノズル
11 ノズル輪郭部
12 導入スリット
13 ノズル中心平面
14 ガス導入部分
15 ガス排出部分
16 継目
17 ピン
18 ガスカーテン
19 他のガスカーテン
2 ガス分配管
21 外殻線
22 ガス流入ライン部
23 円形穴
24 長穴
25 (連続する)溝穴
26 ネジ
27 端面
28 ガス供給部
3 ガス放電EUV源
31 電極システム
32 排出円錐形部
33 放射線暗部
4 真空室
41 真空ポンプ
42 吸引装置
5 プラズマ
51 放出されたEUV放射線
6 薄板装置
61 薄板(フィン)
62 中間空間
7 集光光学系
71 光学軸線
72 集光鏡
73 中間焦点
74 集束された放射線束
8 レーザ放射線EUV源
81 ターゲット軌道
82 レーザ光線
83 集束可能な放射線円錐形部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスカーテンを生成する少なくとも1つの超音波スリットノズルがデカップル可能な放射線束内に設けられているプラズマベースの放射線源内で放出された放射線をフィルタリングするためのガス流を生成する装置において、
幅広で平らなガスカーテン(18)の生成用の超音波ノズル輪郭部(11)を形成するスリットノズル(1)が複数の部分ボディ(14、15;2)から組み立てられていて、これらの部分ボディがスリットノズル(1)に対する熱的な且つ精密機械的な様々な要求を適えるために異なる材料から成ることを特徴とする装置。
【請求項2】
スリットノズル(1)がノズル輪郭部(11)を形成するガス導入部分(14)とガス排出部分(15)から組み立てられていて、ガス導入部分(14)が精密機械的に良好に加工可能な金属から成り、ガス排出部分(15)が高融点の金属から成ることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ガス導入部分(14)が鋼材又は特殊鋼から製造されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
ガス排出部分(15)がモリブデンから製造されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
ガス排出部分(15)がタングステンから製造されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
スリットノズル(1)がバッファガスをノズル輪郭部(11)内へと定義された方向で流入させるガス分配管(2)を含んでいて、このガス分配管(2)が外殻線(21)に沿い、半径方向のガス通過のために縦方向に均等に形成されているガス流入ライン部(22)を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
ガス流入ライン部(22)が等間隔に配置された一列上の円形穴(23)として形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
ガス流入ライン部(22)の円形穴(23)が10μmと500μmの間の直径を有することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
ガス流入ライン部(22)が等間隔に配置された一列上の長穴(24)として形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
ガス流入ライン部(22)が連続する溝穴(25)として形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
ガス流入ライン部(22)の円形穴(23)又は長穴(24)が1mmから5mmの範囲内の間隔を有することを特徴とする、請求項7又は9に記載の装置。
【請求項12】
ガス流入ライン部(22)の長穴(24)又は溝穴(25)が30μmと300μmの間の幅を有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項13】
ガス分配管(2)が金属材料から成ることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項14】
ガス分配管(2)がセラミック材料から成ることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項15】
ガス分配管(2)の一方の端面(27)にガスの取り入れ用のガス供給部(28)が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項16】
スリットノズル(1)の部分ボディ(14、15;2)が取外し可能な結合により組み合わされていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
スリットノズル(1)の部分ボディ(14、15;2)が、ピン(17)、ネジ(26)、リベット、クランプ、スリーブである結合要素の少なくとも1つにより組み合わされていることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
スリットノズル(1)の部分ボディ(14、15;2)が取外し不能な結合により組み合わされていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
スリットノズル(1)の部分ボディ(14、15;2)が、ロウ付け又は溶接又は接着から成る材料拘束的な結合の少なくとも1つにより組み合わされていることを特徴とする、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
スリットノズル(1)の部分ボディ(14、15;2)が少なくとも1つの取外し可能な結合と少なくとも1つの取外し不能な結合により組み合わされていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
ガス放電をベースにEUV放射線を生成する装置であって、真空室内に、ガス放電プラズマを生成する電極装置と、プラズマから放出されたEUV放射線を集める集光光学系とが光学軸線に沿って配置されていて、ガスカーテンを生成するスリットノズルがその光学軸線に対して直角にプラズマと集光光学系の間に配置されている、前記装置において、
スリットノズル(1)が高融点の材料から成る少なくとも1つのガス排出部分(15)を有し、ガス導入用の他の部分(14;2)が精密機械的に良好に加工可能な材料から製造されていること、
スリットノズル(1)が少なくとも部分的に、プラズマ(5)の生成用に設けられている電極装置(31)の放射線暗部(33)内に固定されていること、及び、
集光光学系(7)の光学軸線(71)に対してスリットノズル(1)の反対側でガスカーテン(18)用の吸引装置(42)が同様に放射線暗部(33)内に取り付けられていること
を特徴とする装置。
【請求項22】
集光光学系(7)として、入れ子状に配置された集光鏡(72)から成り斜めにかすめるように反射する反射光学系が使用されていて、スリットノズル(1)と吸引装置(42)から生成されるガスカーテン(18)と集光光学系(7)との間には機械的な薄板装置(6)が配置されていることを特徴とする、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
スリットノズル(1)と吸引装置(42)の間に生成されるガスカーテン(18)がデブリ粒子を減速させるバッファガスから成ることを特徴とする、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
スリットノズル(1)と吸引装置(42)の間に生成されるガスカーテン(18)がプラズマ(5)により生成されたEUV放射線(51)をスペクトルフィルタリングする混合ガスから成ることを特徴とする、請求項21に記載の装置。
【請求項25】
レーザ生成プラズマをベースにEUV放射線を生成する装置であって、真空室内に、ターゲット軌道に沿って供給されるターゲットに対し、EUV放射線を放出するプラズマを生成するレーザ光線が向けられていて、プラズマから放出されたEUV放射線を集める集光光学系が光学軸線に沿って配置されていて、ガスカーテンを生成するスリットノズルがその光学軸線に対して直角にプラズマと集光光学系の間に配置されている、前記装置において、
スリットノズル(1)が高融点の材料から成る少なくとも1つのガス排出部分(15)を有し、ガス導入用の他の部分(14;2)が精密機械的に良好に加工可能な材料から製造されていること、及び、
スリットノズル(1)が集束可能な放射線円錐形部(83)の外側に取り付けられていて、集光光学系(7)の光学軸線(71)の反対側でガスカーテン(18)用の吸引装置(42)が同様に集束可能な放射線円錐形部(83)の外側に取り付けられていること
を特徴とする装置。
【請求項26】
集光光学系(7)として、反射光学系で垂直な放射線入射のために形成されている集光鏡(72)が使用され、プラズマ(5)の背後に配置されていて、スリットノズル(1)と吸引装置(42)により生成されるガスカーテン(18)と集光光学系(7)との間には機械的な薄板装置(6)が配置されていることを特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
集光鏡(72)により集束される放射線束(74)の方向で、プラズマ(5)に対して後置された他のガスカーテン(19)を生成する追加的なスリットノズル(1)が設けられていて、光学軸線の反対側(71)に吸引装置(42)が配置されていることを特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
スリットノズル(1)と吸引装置(42)の間に生成されるガスカーテン(18)がデブリ粒子を減速させるバッファガスから成ることを特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項29】
スリットノズル(1)と吸引装置(42)の間に生成される他のガスカーテン(19)がプラズマ(5)からのデブリ粒子を減速させるバッファガスから成ることを特徴とする、請求項27に記載の装置。
【請求項30】
スリットノズル(1)と吸引装置(42)の間に生成される他のガスカーテン(19)がプラズマ(5)により生成されたEUV放射線(51)をスペクトルフィルタリングする混合ガスから成ることを特徴とする、請求項27に記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−300351(P2008−300351A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−125983(P2008−125983)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(502369126)イクストリーメ テクノロジース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (37)
【Fターム(参考)】