説明

プラズマ処理の異常動作を検知するための方法

【課題】クリーニング処理において発生する異常条件を、一種類の信号を非連続的に検出することにより、プロセスの異常を的確にかつ簡便に診断する技術を提供する。
【解決手段】プラズマ処理の異常動作を検知する方法は、(i)反応チャンバ内でプラズマ処理が開始された後の時刻T1において、反応チャンバ内で互いに平行に配置された上部電極と下部電極との間のポテンシャルVpp1を検出する工程と、(ii)T1後の時刻T2において、上部電極と下部電極との間のポテンシャルVpp2を検出する工程と、(iii)演算値を得るために、Vpp1とVpp2とを比較する工程と、(iv)演算値が所定範囲内にあるか否かで異常動作を判定する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどに成膜処理を施すプラズマ処理装置および洗浄プロセス診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学気相堆積(以下CVD)処理は半導体産業において広く用いられている処理方法である。CVDプロセスでは種々の気体を処理容器中で化学反応させて、半導体ウエハの基板上に成膜する。処理容器内において、低温でしかも高速に基板上の膜として堆積させるのに、堆積工程中に気体のプラズマを生成させる方法がある。このようなプロセスをプラズマ励起CVDプロセス(以下PECVD)と呼ぶ。
【0003】
堆積処理中に処理容器の壁面やその他の部品においても膜が堆積し、粒子が発生する。この粒子は基板上に載ると、微細な半導体製造工程において大きなダメージを与えるので、汚染粒子として取り除かれるべきものである。
【0004】
よって、PECVDプロセスでは処理容器を定期的にクリーニングして、前の堆積工程での膜の蓄積を取り除く必要がある。クリーニング処理は通常NF3などのフッ化ガスを処理容器に流すことでなされる。
【0005】
しかし、クリーニング処理が常に正常に実施されるとは限らず、何らかの原因(例えば、チャンバ内に堆積した膜が、通常より厚かった、または薄かった場合等)によりクリーニング処理が遅れたり、速くなり過ぎる場合がある。その場合は、所定の時間内ではクリーニング処理が終了しなかったり(アンダークリーニング)、過剰になったり(オーバークリーニング)する可能性がある。アンダークリーニングの場合はクリーニングが不十分であるため反応器内壁、シャワーヘッド等の不要な成膜が排除し切れずに残り以後の成膜処理に影響を及ぼし、生成した膜質の低下を招く。
【0006】
そこで、この問題に備え、予めレシピのクリーニングステップ時間を長くしておくという問題解決方法が考えられるが、そのようにして、クリーニングが正常に終了した場合、過剰クリーニングとなり、反応器内部の部品にダメージを与えることになる。また、レシピの実行時間が長くなれば、単位時間当たりのウエハ処理枚数(スループット)が低くなってしまう。さらにクリーニングに使用されるフッ化ガスはコストが高いという問題もある。
【0007】
上記のような問題に対して、エッチングやクリーニング処理の自動的な終点検出の形態が、例えば特表2003-521807で開示されている。
【特許文献1】特表2003-521807明細書
【0008】
これには、エッチングやクリーニングの終点検出を、電源、順方向RF電力、RF反射電力、RFマッチ成分、RFピークツーピーク電圧と電流および位相成分、直流バイアス、チャンバ圧力、などから選ばれる少なくとも一つ、好適には二つまたは三つの処理条件を連続して同時に監視することによりエッチングの終点を検出する方法が開示されている。またこの方法では、2つの処理条件(第1処理条件および第2処理条件)を使い、終点の判断をしている。
【0009】
この方法では、第1処理条件を継続的にモニタし、第一処理条件により終点を検出したときに、もう一つの処理条件である第2処理条件によってその検出が正しいかどうかを確認することで、終点判断の精度を向上させている。即ち、第一処理条件が検出した終点を終点と判断してよいかを、第二処理条件が事前決定値に対応するか、または事前決定値の範囲内にあるかどうかにより決定している。第2処理条件が事前決定値に対応または範囲内に含まれない場合は、「誤りフラグ」を立てて異常を検出する。
【0010】
しかし、この技術では、エッチングレートまたはクリーニングレートが遅く、第一処理条件が終了を検出しない場合、第二処理条件は「誤りフラグ」を発行しないので、外部から停止されるまで処理が続けられるが、この場合は、アンダーエッチングまたはアンダークリーニングとなる。一方、エッチングレートまたはクリーニングレートが正常であっても何らかの理由で第一処理条件が終了を検出しなかった場合は、第二処理条件は「誤りフラグ」を発行しないので、外部から停止されるまで処理が続けられ、この場合は、オーバーエッチングまたはオーバークリーニングとなり、部品ダメージ、スループットの問題が発生し得る。
【0011】
また、制御ソフトウエアで各信号を監視する場合、オンライン運用では監視のためのコマンドを連続的に出し続けることにより、ホストコンピュータおよび装置コントローラPCの負荷が大きくなるという問題がある。
【0012】
更に、終点条件は対象となる膜毎に異なり得るので、第一処理条件、第二処理条件は対象となる膜毎に事前に決定しておく必要があり、対象となる膜の種類が変われば、設定をやり直す必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、ある態様では、クリーニングプロセスまたは成膜プロセスにおいて発生する異常条件を、一種類の信号を非連続的に検出することにより、クリーニングプロセスまたは成膜プロセスの異常を的確にかつ簡便に診断する技術を提供することを目的とする。
【0014】
本発明のある態様では、対象となる膜の種類に拘わらず、あるいは多種類の膜に適用できる汎用性のあるクリーニングプロセスまたは成膜プロセスの異常診断技術を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明のある態様では、異常と診断された場合は、警告を発してその時点でクリーニングプロセスおよびウエハのロット処理を中断することにより、それ以上の不良ウエハを製造しないようにする技術を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明のある態様では、従来技術に付加的に追加し、従来技術システムを実質的に変更することなく適用することができる異常診断技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的の一つ以上を実現する本発明の態様によれば、プラズマ処理装置のクリーニングプロセスまたは成膜処理において、処理容器内の電極間にかかる電圧値を測定する。プロセス中の時系列における2点(態様により3点以上の非連続点、間欠点でもよい)の電圧値を比較することにより、クリーニングプロセスまたは成膜プロセスが正常に行われたのかどうかを判断する。ある態様では、問題が発生した場合は、警告を発してその時点でクリーニングプロセス、成膜プロセス、およびウエハのロット処理を中断することにより、それ以上の不良ウエハを製造しないようにする。
【0018】
ここで、クリーニング処理および成膜処理のプラズマ励起の際に処理容器の電極間にかかる電圧をVppと呼ぶが、クリーニング処理が正常になされた場合のVppの時間変化は例えば図1の実線Aに示すようなものとなる。
【0019】
しかし、ここで何らかの原因によりVppの時間変化が図1の点線Bに示すような曲線になることがある。これは実線の正常パターンと比べて、明らかにVppのピークがずれている。すなわち、この場合、クリーニングレートが遅延しており、図1に示す時間内ではクリーニング処理が終了しなかった(クリーニング処理異常時)ことを意味する。
【0020】
ある態様における本発明のプラズマ処理装置は、図1の点線に見られるようなクリーニングレート遅延の問題が発生したときに、レシピのクリーニングステップの時系列の2点のVpp電圧を測定し、それぞれの電圧値の関係よりクリーニング処理が正常に行われたかどうかを判定し、正常に行われていないと判定された場合は、すぐさま処理を停止する。
【0021】
上記の手法により、クリーニング処理中に処理容器内の異常を検知し、その時点で処理を中止することにより、それ以上の不良品ウエハを製造しないことが可能になる。
【0022】
また測定は連続ではなく時系列の2点でのみ実施するので、ホストコンピュータおよび装置コントローラPCの負荷を低減することが可能となる。
【0023】
処理が正常に行われたかどうかの判断は、Vpp電力の測定値の比較のみで行われるため、制御ソフトを簡略化することも可能となる。
【0024】
成膜処理に関してもクリーニング処理と同様にVpp電力の測定により異常を検知することができ、同様の制御を実施することができる。
【0025】
本発明及び従来技術に対する利点を要約するために、本発明のある目的及び利点が説明されてきた。もちろん、このすべての目的または利点は、本発明の特定の実施例によって、必ずしも達成されない。よって、発明はここに教示または示唆された他の目的または利点を必ずしも達成することなく、ここに教示されるような利点または利点の集合を達成または最適化するような方法で実施または実行されることは当業者の知るところである。
【0026】
本発明の他の態様、特徴及び利点は以下の好適実施例の詳細な説明から明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、これに限定されないが、上記目的のひとつまたはそれ以上を達成する以下の実施例を含む。
【0028】
プラズマ処理の異常動作を検知する方法は、(i) 反応チャンバ内でプラズマ処理後の時刻T1において、反応チャンバ内で互いに平行に配置された上部電極と下部電極との間の電圧Vpp1を検出する工程と、(ii)T1後の時刻T2において、上部電極と下部電極との間の電圧Vpp2を検出する工程と、(iii)演算値を取得するために、Vpp1とVpp2を比較する工程と、(iv)演算値が所定範囲内にあるか否かで異常動作を判定する工程と、から成る。
【0029】
上記実施例はさらに、以下の実施例を含む。
【0030】
プラズマ処理はクリーニング処理であってもよい。反応チャンバの内壁は成膜処理中プラズマに曝され、特に上部電極表面に不所望な粒子が蓄積する。蓄積された粒子はクリーニング処理により除去される。上部電極の表面のクリーニングは堆積される膜質に関して特に重要である。ひとつの実施例において、上部電極と下部電極との間に電圧を印加しかつVppを測定することにより、特に上部電極の表面のクリーニング処理の経過を判定することができる。
【0031】
上記したように、クリーニング中のVppの時間変化の様子が図1に示されている。クリーニング開始時には、上部電極面は堆積した絶縁膜で覆われ、Vppは低い。クリーニングが進行するに従い、絶縁膜がそのほとんどの表面から除去され、Vppが増加する。絶縁膜の厚さは薄くなっていく。上部電極の周辺近傍のプラズマ密度(インサイチュ・クリーニングの場合)またはガス(すなわち、ラジカル)密度(遠隔プラズマクリーニングの場合)は中心部より低いため、中心部のエッチング速度は周辺部より大きい。絶縁膜が薄くなり中心部から除去されると、Vppは最高点(ピーク)に達する。その後、絶縁膜の除去は中心部から周辺部方向へ広がり、Vppは減少する。絶縁膜が完全に除去されると、Vppは一定になる。上記は仮説であり、本発明を限定するものではない。
【0032】
堆積膜の予期せぬ厚さなどの理由のために、エッチング速度が低くなれば、ピークが移動し、クリーニングは所定時間T内に完了しないかもしれない。よって、ピークの前後のVppを比較することにより、クリーニング処理動作が通常か異常かを判定することが可能となる。実施例において、T1は、クリーニング処理の中間点またはその付近であり(時刻m)、T2はクリーニング処理の終了点またはその付近(時刻T-n)である。図1において、時刻mでのVppはVa(Vpp1)であり、時刻T-nでのVppはVb(Vpp2)である。
【0033】
上記実施例において、Vpp2<Vpp1なら、クリーニング動作は正常と判定されるが、Vpp2>≧Vpp1であれば、クリーニング動作は異常と判定される。T、m、及びnは、実験を通じて予め決定される。ひとつの実施例において、nはTの約0%から約20%であり、(他の実施例において、Tの約5%から約15%)これはVppの第2プラトーに対応する。代わりに、他の実施例において、Vpp2とVpp1との間の差の絶対値(|Vpp2−Vpp1|)は動作条件を決定するのに使用される。例えば、|Vpp2−Vpp1|≦閾値であれば、動作は異常であると判定される。閾値は実験を通じて予め決定される。他の実施例において、Vpp1に対するVpp2の比率(Vpp2/Vpp1)は動作条件を決定するのに使用される。
【0034】
クリーニング中のVppの上記した時間変化の様子は、上部電極表面に堆積するさまざまな種類の絶縁膜に共通である。よって、上記判定処理を実行するようにプログラムされたソフトウエアが汎用的に使用できる。
【0035】
上記実施例において、上部電極はシャワーヘッドであり、下部電極はサセプタであり、クリーニング処理は遠隔プラズマクリーニングである。結果的に、遠隔プラズマクリーニング中、上部電極表面へのダメージを避けるために、上部電極と下部電極との間には電圧は印加されない。ある実施例では、遠隔プラズマクリーニング中であっても、Vpp1及びVpp2を検出するために、上部電極と下部電極との間に電圧が印加される。クリーニングがインサイチュ・クリーニングである場合、クリーニング用に上部電極と下部電極との間に印加される電圧は、異常動作を検知するために利用される。ある実施例において、上部電極と下部電極は、膜堆積用には使用されないが異常動作の検知には使用される反応チャンバ内に、付加的に与えられる。
【0036】
ある実施例において、上部電極と下部電極との間に印加される電圧は約500W/m2(上部電極表面)から約2000W/cm2、好ましくは約800W/cm2から約1500W/cm2の範囲にある。ある実施例において、上部電極と下部電極との間の距離は約5mmから30mm、好ましくは約10mmから25mmの範囲である。上記原理は、プラズマCVDに関連するあらゆる種類の反応チャンバに適応可能である。
【0037】
また、ある実施例において、Vppが連続的に測定されない限り、2箇所以上のVpp検出ポイントが選択されてもよい。間欠的にVppを検出することにより、システムの負荷は最小化される。Vppを検出する時間を除き、タイマーのみが動作する。他の機能はタイマーによりコールされるまで動作する必要がない。
【0038】
他の実施例において、プラズマ処理は膜堆積処理である。異常動作を検知する上記原理は膜堆積処理に応用される。図4は、膜堆積処理中のVppの時間変化の様子の例を示したものである。図4において、Vppは上部電極と基板が載置される下部電極との間のポテンシャルである。膜堆積の開始において、Vppはアナログ応答により急激に増加し、残留効果のために最高点(ピーク)に到達する。その後、Vppは降下し、一定となる。堆積中の異常プラズマ放電などの理由により動作が異常になると、Vppは所定の時間間隔(T)の終了点付近で降下する。よって、降下の前後のVppを比較することにより、膜堆積処理が正常か異常かを判定することが可能である。ある実施例において、T1は膜堆積処理の中間点またはその付近(時刻m)であり、T2は膜堆積処理の終了点またはその付近(時刻T-n)である。図4において、時刻mでのVppはVa(Vpp1)であり、時刻T-nでのVppはVb(Vpp2)である。
【0039】
上記実施例において、Vpp2≒Vpp1(電気的ノイズにより生じる違いのような通常の誤差を許容する程度の実際的意味で等しい)ならば、膜堆積動作は正常であると判定され、Vpp2<Vpp1ならば、膜堆積動作は異常であると判定される。ある実施例において、Vpp2とVpp1との間の差の絶対値(|Vpp2−Vpp1|)は動作条件を判定するのに使用される。例えば、|Vpp2−Vpp1|≧閾値であれば、動作は異常であると判定される。閾値は、実験を通じて予め決定される。T、m、及びnは実験を通じて予め決定される。他の実施例において、Vpp1に対するVpp2の比率(Vpp2/Vpp1)は動作条件を決定するのに使用される。膜堆積のために上部電極と下部電極との間に印加される電圧は異常動作を検知するためにも使用可能であるが、別に、クリーニングの異常動作を検知するのに使用された上記電圧が使用されてもよい。
【0040】
膜堆積中のVppの上記変化の様子は、基板上に堆積するさまざまな種類の膜について共通である。よって、上記判定処理を実行するようにプログラムされたソフトウエアが汎用的に使用可能である。
【0041】
ある実施例において、プラズマ処理がクリーニング処理か堆積処理かに拘わらず、当該方法はさらに、異常動作を検知したとき、プラズマ処理を停止する工程を含む。それは、ソフトウエアが異常動作を判定した際、プラズマ処理を実行するホストコンピュータへ信号を送信することにより、実行される。ソフトウエアはホストコンピュータと別個にインストールされる。他に、異常動作はホストコンピュータにより判定されてもよい。
【0042】
図6は、クラスタ型プラズマCVD装置用の制御システムのある実施例を略示したものである。この図において、スレーブ#1から#5は各装置を制御するためのCPUボードである。スレーブ#1から#3はリアクタ#1から#3用にインストールされ、スレーブ#4は大気ロボット用にインストールされ、スレーブ#5はウエハ搬送室内の真空ロボット用にインストールされる。VはVpp検出装置である(以下で説明する図3を参照)。Vsはスレーブ#1から#3にそれぞれ接続される。iTronは、クリーニング及び膜堆積を含むすべてのプラズマ動作(例えば、レシピ動作制御)を制御するメインコントローラのCPUボードである。DeはVppに基づいて異常動作を検知し、iTronにより異常動作を停止させるためのソフトウエアである。Deはクリーニング処理及び膜堆積処理の両方を制御することができる。MMI PCは、ホストコンピュータに接続されるマン・マシン・インタフェース用のPCである。OS9はMMI PCと連結するためのCPUボードである。例えば、T1、T2及び|Vpp2−Vpp1|の閾値は、MMI PCを使って設定されかつ入力される。この図において、DeはiTron内にインストールされているが、ホストコンピュータに付加的にインストールされてもよい。よって、異常動作検知システムを制御することは、メインコンピュータの容量を実質的に減少させない。この図において、点線で囲まれた装置は、ユーザーのホストコンピュータと接続可能なプラズマCVDシステムを構成する。上記において、接続の語は、個々の応用に応じて、物理的、電気的、機能的、直接または間接的接続を含む。
【0043】
他の態様において、本発明はプラズマCVD装置を与え、当該装置は(i)互いに平行に配置された上部電極及び下部電極を具備するプラズマCVD用の反応チャンバと、(ii)該反応チャンバ内でプラズマ処理の異常動作を検知するためのシステムであって、当該システムが(a)プラズマ処理が反応チャンバ内で開始された後の時刻T1において上部電極と下部電極との間のポテンシャルVpp1を検出し、(b)T1後の時刻T2において上部電極と下部電極との間のポテンシャルVpp2を検出し、(c)演算値を得るためにVpp1とVpp2とを比較する工程と、(d)演算値が所定範囲内にあるか否かにより異常動作を判定するようにプログラムされている、ところのシステムから成る。上記方法に関して説明した構成要件は装置についても同様に適用できる。
【0044】
方法及び装置を含む上記すべての実施例において、ひとつの実施例で使用された任意の構成要件は他の実施例でも交換可能であり、そうすることで効果が削減または劣ることはない。
【0045】
図2、図3は本発明の実施の形態におけるプラズマ処理装置のクリーニング制御処理の一例を示す。本発明はこれら図面、実施形態に限定されるものではない。
【0046】
図2において制御処理は以下に説明する10個のステップから構成されている。ステップ1で処理を開始し、ステップ2では現在実行中のレシピがクリーニングステップであるかどうかの判定を行う。ここで、レシピは堆積やクリーニングなどの特殊なステップにのみ、そうと分かるソフトウエア的なフラグを持っており、そのステップに入るとフラグが立つ(変数がONになる)と仮定する。ステップ2においてクリーニングステップのフラグが立っていなければ、それ以降のステップには進まず、フラグが立つのを待ち続ける。フラグが立っていれば次のステップ3に進む。ステップ3では予め指定されているm秒、n秒を測定するためのタイマを開始させる。ここで、指定されるm秒とn秒の値は実験データから定められる典型的な時間値でよい。ステップ4でタイマがm秒経過したかどうかの判定を行う。ここでm秒経過していなければ、m秒経過するまでステップ4にとどまる。m秒経過した時点でステップ5に進み、この時点のVpp電圧を変数Vaに代入する。
【0047】
ここでVpp電圧を制御ソフトウエアに取り込むのは例えば図3のような装置構成により実施することができる。図3の説明は後に行う。次にステップ6ではステップの終点からn秒の電圧値を取り込むため、ステップ3で開始したタイマが(T-n)秒経過したかどうかの判定を行う。ここでTはレシピのクリーニングステップのステップ時間である。(T-n)秒経過していなければ、(T-n)秒経過するまでステップ6にとどまる。(T-n)秒経過した時点でステップ7に進み、この時点のVpp電圧を変数Vbに代入する。次にステップ8でVaとVbの比較を行いVa > Vbならばそのまま終了ステップ10に進み処理を終了する。ここでVa £ Vbならば、クリーニングレートの遅延が発生していると判断し、ステップ9に進み、ステップ9では警告(アラーム)を発生させ、レシピおよびウエハロットの処理を終了させる。その後ステップ10に進み、処理を終了する。なお、本制御処理はプラズマ処理装置のメインの制御処理からコールされるサブルーチン処理であり、本制御処理のステップ1の開始ステップは、メインの制御でレシピ処理が開始されるタイミングでコールされるのが望ましい。
【0048】
図3は本発明の実施の形態におけるプラズマ処理装置の構成の一例である。規定の周波数で交流電圧1を処理容器2内の上部電極3にかける。下部電極4は接地されている。ここで電極間に実際にかかった電圧をアナログ−デジタル変換器5を通してデジタル信号とし、制御ソフトウエア6に取り込む。ここでは、処理容器2内の上部下部電極3,4は平行平板電極を仮定しているが、本発明はそれに限定されない。
【0049】
なお、これまで本発明でのクリーニング処理の異常検知について説明してきたが、この手法は堆積処理に応用することも可能である。図4に典型的な堆積時のVpp電圧の時間変化の様子を示す(本発明はこの図に限定されるものではない)。図中の実線Cが堆積処理正常時のVpp電圧の時間変化である。ここで、何らかの原因により、図4の点線Dのような電圧値の変化が発生することがある(堆積処理異常時)。この場合は図2の制御処理フローチャートのステップ2の「クリーニングステップ」を「堆積ステップ」に置き換え、ステップ8の判定を「Va > Vb」から「|Va - Vb| < しきい値」(VaとVbの差の絶対値がしきい値よりも小さいか)とすれば良い。ここで、しきい値は実験データから定められる電圧値の許容誤差範囲である。この堆積処理の制御処理フローチャートを図5に示す。ステップ8以外のステップは図2の流れと同様である。
【0050】
ここで、一例として、Va, Vbの値はクリーニングの場合は正常時Va = 180 [V], Vb = 170 [V]、異常時Va = 180 [V], Vb = 200 [V]、堆積時の場合は正常時Va = Vb = 260 [V]、異常時はVa = 260 [V], Vb = 250 [V]である。
【0051】
以上より、プラズマ処理装置のレシピ処理中のクリーニングステップにおいて、ステップ中の時系列の任意の2点のVpp電圧を測定し、2点の電圧値を比較することにより、クリーニング処理が正常に行われたかどうかの判定を行うことができ、クリーニング処理が正常に行われなかったと判定された場合については、その時点で警告を発してレシピ処理およびウエハのロット処理を中断することで、それ以上の不良ウエハを製造することなく、装置の点検保守を行い、問題を発見して正常状態に戻すことができる。
【0052】
また、本発明はレシピ処理のクリーニングステップにのみ限定されるものではなく、レシピ処理の堆積ステップにおいても、同様の制御処理により、処理容器の異常を検知しウエハのロット処理を中断することができるのは既に述べたとおりである。
【0053】
上述の実施の形態では、プラズマ処理装置単体でクリーニングおよび堆積処理の診断および停止する例を記述したが、実際の製造現場では半導体製造装置はホストコンピュータと接続し、運用されるケースが多い。その場合、図2あるいは図5のような判断処理を装置制御ソフトウエアではなく、ホストコンピュータで行うことも出来る。その際には、装置でA-D変換されたVaとVbの値をホストコンピュータに通信転送し、ホストコンピュータは、ホストコンピュータが持つ判断基準によりVaとVbの値を比較して、必要に応じて、プラズマ処理装置に停止命令を通信転送する。この場合には、プラズマ処理装置自体には、判断機能は不要であり、ホストコンピュータにVpp電圧値を転送できるような通信環境を整えるだけでよい。
【0054】
また、本発明はクリーニングガスのFラジカルを別ユニットで生成してから処理容器に流すリモートプラズマあるいは処理容器内でFラジカルを生成するIn-situプロセスのどちらにも適用可能である。
【0055】
上述の実施の形態では、処理容器2内の電極3,4は平行平板を仮定したが、本発明は平行平板を使用した半導体製造装置に限定されるものではなく、高密度プラズマ(HDP)や誘電結合プラズマ(ICP)などの半導体製造装置の処理容器に診断用の平行平板電極を取り付けて、適用することも可能である。
【0056】
以上より、本発明のクリーニング処理中に時系列の2点のVpp電圧を比較して処理容器の異常を検知するプラズマ処理装置では、速やかに処理中の装置の異常を発見でき、また処理の中断が行われるため、それ以上の不良ウエハを製造することなく、装置の点検保守により問題の解決を図ることができる。
【0057】
本発明は、上記した実施例に加え、以下に示す他のさまざまな実施例を含む。
【0058】
1)半導体ウエハ製造処理中の異常を検知するソフトウエアを備えたプラズマ処理装置であって、前記ソフトウエアは、クリーニング処理中の時系列の任意の2点の電極間の電圧値の比較により処理容器の異常を検知することを特徴とするプラズマ処理装置。
【0059】
2)上記1に記載のプラズマ処理装置において、前記ソフトウエアは、クリーニング処理中の時系列の任意の2点の電極間の電圧値の比較により処理容器の異常を検知し、処理を停止することを特徴とするプラズマ処理装置。
【0060】
3)半導体ウエハ製造処理中の異常を検知するソフトウエアを備えたプラズマ処理装置であって、前記ソフトウエアは、堆積処理中の処理容器の異常を検知することを特徴とするプラズマ処理装置。
【0061】
4)上記3に記載のプラズマ処理装置において、前記ソフトウエアは、堆積処理中の電極間の電圧変化により処理容器の異常を検知することを特徴とするプラズマ処理装置。
【0062】
5)上記3に記載のプラズマ処理装置において、前記ソフトウエアは、堆積処理中の時系列の任意の2点の電極間の電圧値の比較により処理容器の異常を検知することを特徴とするプラズマ処理装置。
【0063】
6)上記1に記載のプラズマ処理装置において、前記ソフトウエアは、堆積処理中の時系列の任意の2点の電極間の電圧値の比較により処理容器の異常を検知し、処理を停止することを特徴とするプラズマ処理装置。
【0064】
7)上記1に記載のプラズマ処理装置において、半導体ウエハ製造処理のクリーニング処理中の時系列の任意の2点の電極間の電圧値をホストコンピュータに転送することを特徴とするプラズマ処理装置。
【0065】
8)上記3に記載のプラズマ処理装置において、半導体ウエハ製造処理の堆積処理中の時系列の任意の2点の電極間の電圧値をホストコンピュータに転送することを特徴とするプラズマ処理装置。
【0066】
本発明の思想から離れることなくさまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。したがって、本発明の形式は例示に過ぎず、本発明の態様を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、プラズマ処理装置のクリーニング処理中の典型的なVpp電圧値の時間変化および処理容器に異常がある場合のVpp電圧の時間変化を示す図である。
【図2】図2は、本発明のある実施形態におけるプラズマ処理装置のクリーニング処理中の異常検知の機能を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明のある実施形態におけるプラズマ処理装置の構成を示す図である。
【図4】図4は、プラズマ処理装置の堆積処理中の典型的なVpp電圧値の時間変化および処理容器に異常がある場合のVpp電圧の時間変化を示す図である。
【図5】図5は、本発明のある実施形態におけるプラズマ処理装置の堆積処理中の異常検知の機能を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明のある実施形態におけるプラズマ処理装置の制御系の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理の異常動作を検知する方法であって、
反応チャンバ内でプラズマ処理が開始された後の時刻T1において、反応チャンバ内で互いに平行に配置された上部電極と下部電極との間のポテンシャルVpp1を検出する工程と、
時刻T1後の時刻T2において、上部電極と下部電極との間のポテンシャルVpp2を検出する工程と、
演算値を得るためにVpp1とVpp2とを比較する工程と、
前記演算値が所定範囲内にあるか否かで異常動作を判定する工程と、
から成る方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、プラズマ処理はクリーニング処理である、ところの方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記演算値の所定範囲はVpp2≧Vpp1を満たす、ところの方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、プラズマ処理は膜堆積処理である、ところの方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記演算値の所定範囲は、|Vpp2−Vpp1|≧閾値、を満たすところの方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、T1はプラズマ処理の中間点またはその近傍である、ところの方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、T2はプラズマ処理の終了点またはその近傍である、ところの方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、上部電極はシャワーヘッドであり、下部電極はサセプタである、ところの方法。
【請求項9】
請求項2に記載の方法であって、上部電極はシャワーヘッドであり、下部電極はサセプタであり、プラズマ処理は遠隔プラズマクリーニングであって、さらに、Vpp1及びVpp2を検出するために上部電極と下部電極との間に電圧を印加する工程を含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、反応チャンバはPECVD反応チャンバである、ところの方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、さらに、異常動作が検知された際、プラズマ処理を停止させる工程を含む、ところの方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、さらに、比較する工程及び判定する工程が実行されるホストコンピュータへ、検出されたVpp1及びVpp2を送信する工程を含む方法。
【請求項13】
プラズマCVD装置であって、
(i)互いに平行に配置された上部電極及び下部電極を具備するプラズマCVD用の反応チャンバと、
(ii)反応チャンバ内でプラズマ処理の異常動作を検知するためのシステムであって、反応チャンバ内でプラズマ処理が開始された後の時刻T1において、上部電極と下部電極との間のポテンシャルVpp1を検出し、T1後の時刻T2において、上部電極と下部電極との間のポテンシャルVpp2を検出し、演算値を得るべくVpp1とVpp2とを比較し、演算値が所定範囲内にあるか否かで異常動作を判定するようにプログラムされている、ところのシステムと、
から成る装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置であって、プラズマ処理はクリーニング処理である、ところの装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、前記演算値の所定範囲はVpp2≧Vpp1を満たす、
【請求項16】
請求項13に記載の装置であって、プラズマ処理は膜堆積処理である、ところの装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置であって、前記演算値の所定範囲は、|Vpp2−Vpp1|≧閾値、を満たすところの装置。
【請求項18】
請求項13に記載の装置であって、T1はプラズマ処理の中間点またはその近傍である、ところの装置。
【請求項19】
請求項13に記載の装置であって、T2はプラズマ処理の終了点またはその近傍である、ところの装置。
【請求項20】
請求項13に記載の装置であって、上部電極はシャワーヘッドであり、下部電極はサセプタである、ところの装置。
【請求項21】
請求項14に記載の装置であって、上部電極はシャワーヘッドであり、下部電極はサセプタであり、プラズマ処理は遠隔プラズマクリーニングであって、前記システムはさらに、Vpp1及びVpp2を検出するために上部電極と下部電極との間に電圧を印加するようプログラムされている、ところの装置。
【請求項22】
請求項13に記載の装置であって、反応チャンバはPECVD反応チャンバである、ところの装置。
【請求項23】
請求項13に記載の装置であって、前記システムはさらに、異常動作が検知された際、プラズマ処理を停止させるようプログラムされている、ところの装置。
【請求項24】
請求項13に記載の装置であって、さらに、比較及び検知を実行するホストコンピュータへ、検出されたVpp1及びVpp2を送信するインターフェースを含む装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−332658(P2006−332658A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140998(P2006−140998)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000227973)日本エー・エス・エム株式会社 (68)
【Fターム(参考)】