説明

プラズマ処理チャンバ用の可動接地リング

【課題】非閉じ込めプラズマの点火を防ぐと共に、RFリターンパスを短くできる構成をとる。
【解決手段】可動基板支持アセンブリ310の可動接地リング400を記載する。可動接地リング400は、ギャップ調節可能な容量結合プラズマ処理チャンバ300において、可動基板支持アセンブリ310の固定接地リング340の周囲に嵌合され、固定接地リング340に対するRFリターンパスを提供する。基板支持アセンブリ内310に支持された半導体基板はプラズマ処理される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
半導体技術開発の世代が重ねられるにつれて、ウエハの直径は大きくなり、一方でトランジスタの大きさは小さくなる傾向にあるため、基板処理において高い精度と再現性とが求められている。シリコンウエハ等の半導体基板材料は、通常、プラズマ処理チャンバを用いて処理される。プラズマ処理方法には、スパッタ蒸着法、プラズマ化学気相成長法(plasma-enhanced chemical vapor deposition: PECVD)、レジスト除去法及びプラズマエッチング法等がある。プラズマ処理チャンバ内で適当な処理ガスに高周波(radio frequency: RF)パワーを印加することによりプラズマが生成される。プラズマ処理チャンバ内を流れるRF電流により処理が影響される。
【0002】
プラズマ処理チャンバは、誘導結合(トランス結合)、ヘリコン、電子サイクロトロン共鳴、容量結合(平行板)等、さまざまな機構でプラズマを生成することができる。たとえば、トランス結合プラズマ(transformer coupled plasma: TCP(商標))処理チャンバ又は電子サイクロトロン共鳴(electron cyclotron resonance: ECR)プラズマ処理チャンバで高密度プラズマを生成することができる。RFエネルギーがチャンバ内に誘導結合されるトランス結合プラズマ処理チャンバは、カリフォルニア州フレモントのLam Research Corporation(ラムリサーチ・コーポレーション)から市販されている。高密度プラズマが生成されるハイフロー・プラズマ処理チャンバの例は、本出願に参照することにより組み込まれる同一出願人による米国特許第5,948,704号に開示されている。平行板プラズマ処理チャンバ、電子サイクロトロン共鳴(electron cyclotron resonance: ECR)プラズマ処理チャンバ及びトランス結合プラズマ(transformer coupled plasma: TCP(商標))処理チャンバに関しては、本出願に参照することにより組み込まれる同一出願人による米国特許第4,340462号、4,948,458号、5,200,232号及び5,820,723号に開示されている。
【0003】
たとえば、参照することにより本出願に組み込まれる同一出願人による米国特許第6,090,304号に記述されたデュアル周波数プラズマエッチングチャンバ等の平行板処理チャンバ内でプラズマを発生させるようにしてもよい。平行板プラズマ処理チャンバの好適な例は、デュアル周波数容量結合プラズマ処理チャンバであり、上部シャワー電極と基板支持部とを備える。以下、平行板型のプラズマ処理チャンバを例にとって説明する。
【0004】
図1に、プラズマエッチング用の平行板プラズマ処理チャンバを示す。プラズマ処理チャンバ100は、チャンバ110と、入口ロードロック112と、必要に応じて、出口ロードロック114と、を備える。これらの詳細に関しては、本出願に参照することによりその全体が組み込まれる同一出願人による米国特許第6,824,627号に記載されている。
【0005】
ロードロック112(存在する場合には、さらにロードロック114)は、ウエハ等の基板をウエハ供給源162からチャンバ110を通りウエハ容器164まで移送する移送装置を備える。ロードロックポンプ176により、ロードロック112及び114を所望の圧力に減圧可能である。
【0006】
ターボポンプ等の真空ポンプ172を用いて、チャンバ110内を所望の圧力に維持する。プラズマエッチングの際、チャンバ圧力を制御して、プラズマを持続するのに十分なレベルに圧力を維持することが望ましい。チャンバ圧力が高すぎると、エッチングを停止させてしまう可能性があり、一方、チャンバ圧力が低すぎると、プラズマを消滅させてしまう可能性がある。平行板プラズマ処理チャンバ等の中密度プラズマ処理チャンバでは、チャンバ圧力を約200mTorr未満に維持することが望ましい(たとえば、100mTorr未満、20ないし50mTorr)。ここで、「約」は±10%の意味で用いている。
【0007】
真空ポンプ172をチャンバ110の壁部の出口に接続し、バルブ173によりスロットル調節して、チャンバ内の圧力を制御するようにしてもよい。エッチングガスがチャンバ110内に流入する間、チャンバ110内の圧力を200mTorr未満に維持できる真空ポンプが望ましい。
【0008】
チャンバ110は、上部電極125(たとえば、シャワーヘッド電極)を含む上部電極アセンブリ120と、基板支持部150と、を備える。上部電極アセンブリ120は、上部ハウジング130内に搭載される。上部ハウジング130は機構132により鉛直方向に移動可能であり、上部電極125と基板支持部150との間のギャップを調節できる。
【0009】
処理ガス源170がハウジング130に接続され、1種類以上のガスを含有する処理ガスが上部電極アセンブリ120に供給される。プラズマ処理チャンバにおいて、上部電極アセンブリが基板表面近傍の領域に処理ガスを供給するために用いられるガス供給システムを備えることが望ましい。1つ以上のガスリング、インジェクター及び/又はシャワーヘッド(たとえば、シャワーヘッド電極)を備えるガス供給システムが、本出願に参照することにより組み込まれる同一出願人による米国特許第6,333,272号、6,230,651号、6,013,155号及び5,824,605号に開示されている。
【0010】
上部電極125は、好ましくは、処理ガスを供給するためのガス穴(図示しない)を有するシャワーヘッド電極を備える。ガス穴の直径は、たとえば、0.02インチ(=約0.05センチメートル)ないし0.2インチ(=約0.5センチメートル)である。シャワーヘッド電極は、1つ以上の鉛直方向に間隔をあけて配置され、処理ガスの供給を促進するバッフル板を備えるものでもよい。上部電極及び基板支持部は、グラファイト、シリコン、炭化ケイ素、アルミニウム(たとえば、陽極酸化アルミニウム)やこれらの組み合わせ等、任意の適当な材料から形成される。伝熱液体源174を上部電極アセンブリ120に接続し、他の伝熱液体源を基板支持部150に接続するようにしてもよい。
【0011】
基板支持部150は、基板支持部150の上面155(支持面)上で基板を静電的に固定する1つ以上の埋め込み式クランプ電極を備えるものでもよい。RF源及びRF整合回路等の付属回路(図示しない)により基板支持部150に動力を供給するようにしてもよい。基板支持部150を温度制御することが望ましく、必要に応じて(図示しない)加熱素子を備えるものでもよい。加熱素子の例は、本出願に参照することにより組み込まれる同一譲受人に譲渡された米国特許第6,847,014号及び7,161,121号に開示されている。基板支持部150は、支持面155上に平面パネルや200mmや300mmの大きさのウエハ等の半導体基板を支持する。
【0012】
基板支持部150が、支持面155上に支持される基板の下にヘリウム等の伝熱ガスを供給する流路を備え、プラズマ処理の間、基板の温度を制御するようにしてもよい。たとえば、ヘリウムにより基板裏面を冷却することにより、基板上でフォトレジストの焼き付きが生じないように十分低い温度にウエハを維持できる。基板と基板支持面との間の隙間に加圧ガスを導入することにより基板温度を制御する方法が、本出願に参照することにより組み込まれる同一出願人による米国特許第6,140,612号に開示されている。
【0013】
基板支持部150が(図示しない)リフトピン穴を備え、この穴を介してリフトピンを適当な機構で鉛直方向に駆動して、支持面155から基板を持ちあげて、チャンバ110に出し入れするようにしてもよい。リフトピン穴の直径は、たとえば、約0.08インチ(=約0.20センチメートル)である。リフトピン穴の詳細に関しては、本出願に参照することにより組み込まれる同一出願人による米国特許第5,885,423号及び第5,796,066号に開示されている。
【0014】
図2は、RF電流の通路を備える容量結合プラズマ処理チャンバ200を示すブロック図である。図示される例では、基板206が処理チャンバ200内で処理されている。チャンバ200内の処理ガスにRFパワーを印加して、基板206をエッチングするためのプラズマを点火させる。基板処理の際に、RF電流が、RF源222からケーブル224に沿ってRF整合回路220を介して処理チャンバ200内に流れる。RF電流が通路240に沿って流れて、処理ガスに結合することにより、閉じ込めチャンバ容量210内でプラズマが生成され、底部電極204上に配置される基板206が処理される。
【0015】
プラズマ形成を制御し、処理チャンバの壁部を保護するために、閉じ込めリング212が用いられる。閉じ込めリングの例の詳細に関しては、本出願に参照することにより組み込まれる同一出願人により2009年8月31日に出願された米国仮特許出願第61/238656号、61/238665号及び61/238670号及び米国特許出願公表第2008/0149596号に記述されている。閉じ込めリング212は、シリコン、ポリシリコン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、セラミック、アルミニウム等の導電性材料から形成されるものでもよい。一般的に、閉じ込めリング212は、プラズマがその内部で生成される閉じ込めチャンバ容量210の周囲を囲むように設けられる。閉じ込めリング212に加えて、上部電極202と、底部電極204と、1つ以上の絶縁体リング(たとえば、216及び218)と、エッジリング214と、下部電極支持構造228と、により閉じ込めチャンバ容量210の周囲が規定される。
【0016】
閉じ込め領域(閉じ込めチャンバ容量210)から中性ガス種を排出するために、閉じ込めリング212が複数のスロット(たとえば、スロット226a、226b及び226c)を備えるようにしてもよい。中性ガス種は、閉じ込めチャンバ容量210から処理チャンバ200の外部領域232(外部チャンバ容量)に流出し、ターボポンプ234により処理チャンバ200外に排出される。
【0017】
基板処理の際に生成されたプラズマを閉じ込めチャンバ容量210内に保持する必要がある。ただし、所定の条件下では、プラズマが閉じ込めチャンバ容量210外で点火される場合がある。たとえば、高与圧環境では、(閉じ込めチャンバ容量210から処理チャンバ200の外部領域232に排出される)中性ガス種がRF場に接触する可能性がある。外部チャンバ容量にRF場が存在すると、非閉じ込めプラズマ250が生成される場合がある。
【0018】
典型的な処理環境では、RF電流がRF生成器から閉じ込めチャンバ容量210に流れ、さらに、電気接地に流れる。閉じ込めチャンバ容量210から電気接地までのRF電流の通路をRFリターンパスと称する。図2に示すように、閉じ込めリング212群の内側に沿って、RF戻り電流がRFリターンパス242内を流れる。所定の場所252で、処理チャンバ200の内側壁面を越えて、RF戻り電流は閉じ込めリング212の外側に沿って流れる。RF戻り電流は、チャンバ壁部から、ストラップ230群に沿って下部電極支持構造228まで流れる。RF戻り電流は、さらに、下部電極支持構造228の表面からRF整合回路220を介してRF源222に戻る。
【0019】
以上の説明からわかるように、RF電流は、通路242に沿って、閉じ込めチャンバ容量210の外側を電気接地まで流れる。この結果、RF場がチャンバ領域の外側に形成される。このようなRF場の存在により、処理チャンバ200の外部領域232に非閉じ込めプラズマ250が生成される場合がある。
【0020】
したがって、非閉じ込めプラズマの点火を防ぐと共に、RFリターンパスを短くできる構成が望ましい。
【発明の概要】
【0021】
ギャップ調節可能な容量結合プラズマ処理チャンバにおいて、可動基板支持アセンブリの固定接地リングの周囲に嵌合され、固定接地リングに対するRFリターンパスを提供する可動基板支持アセンブリの可動接地リングを記述する。基板支持アセンブリ内に支持された半導体基板は、プラズマ処理さる。可動接地リングは、その下面に複数のセンタリング・スロットを有する環状底壁と、底壁の内周から上向きに伸長する側壁であって、固定接地リングに対して可動接地リングが鉛直方向に移動できるように固定接地リングの外周を囲む内表面を有する側壁と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】プラズマ処理チャンバを例示する概略図。
【0023】
【図2】容量結合プラズマ処理チャンバとその内部に形成されたRFリターンパスとを示すブロック図。
【0024】
【図3A】ギャップ調節可能な容量結合プラズマ処理チャンバをその可動基板支持アセンブリが上側位置にある状態で示す部分断面図。
【0025】
【図3B】図3Aのギャップ調節可能な容量結合プラズマ処理チャンバをその可動基板支持アセンブリが下側位置にある状態で示す部分断面図。
【0026】
【図3C】図3Aのギャップ調節可能な容量結合プラズマ処理チャンバをその可動基板支持アセンブリが下側位置にある状態で示す部分斜視図。
【0027】
【図4A】一実施例に従って、他の図と共に可動基板支持アセンブリの可動接地リングの詳細を示す図。
【図4B】一実施例に従って、他の図と共に可動基板支持アセンブリの可動接地リングの詳細を示す図。
【図4C】一実施例に従って、他の図と共に可動基板支持アセンブリの可動接地リングの詳細を示す図。
【図4D】一実施例に従って、他の図と共に可動基板支持アセンブリの可動接地リングの詳細を示す図。
【図4E】一実施例に従って、他の図と共に可動基板支持アセンブリの可動接地リングの詳細を示す図。
【図4F】一実施例に従って、他の図と共に可動基板支持アセンブリの可動接地リングの詳細を示す図。
【図4G】一実施例に従って、他の図と共に可動基板支持アセンブリの可動接地リングの詳細を示す図。
【図4H】一実施例に従って、他の図と共に可動基板支持アセンブリの可動接地リングの詳細を示す図。
【図4I】一実施例に従って、他の図と共に可動基板支持アセンブリの可動接地リングの詳細を示す図。
【0028】
【図5A】可動接地リングを支持する押圧可能なプランジャーの断面を示す図。
【0029】
【図5B】固定接地リングに搭載された押圧可能なプランジャーの断面を示す図。
【0030】
【図6A】可動接地リングの上部内側端部上に載置された複数の凹部を備える石英リングの詳細を他の図と共に示す図。
【図6B】可動接地リングの上部内側端部上に載置された複数の凹部を備える石英リングの詳細を他の図と共に示す図。
【図6C】可動接地リングの上部内側端部上に載置された複数の凹部を備える石英リングの詳細を他の図と共に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、ギャップ調節可能な容量結合プラズマ処理チャンバにおいて、可動基板支持アセンブリの固定接地リングの周囲に嵌合され、固定接地リングに対するRFリターンパスを提供するように構成される可動接地リングを説明する。図3A及び図3Bは、ギャップ調節可能な容量結合プラズマ処理チャンバ300を例示する部分断面図である。チャンバ300は、可動基板支持アセンブリ310と、中央電極板303と環状外側電極304とを含む上部電極と、環状外側電極304から外側に伸長する導電性閉じ込めリング305と、を備える。閉じ込めリング305は、上側水平部305aと、上側水平部305aの外側端部から下向きに伸長する鉛直部305bと、鉛直部305bの下端部から内側に伸長する下側水平部305cと、を備える。下側水平部305cは、プラズマ処理チャンバ300の外に処理ガスと反応副生成物とを排出するための径方向に伸長するスロットを備える。可動基板支持アセンブリ310が図3Aに示すような上側位置にある場合に、下側水平部305cの内側端部の下面は、可動接地リング400の上端部と電気的に接触する。可動接地リング400との電気的接触が増大するように、下側水平部305cの内側端部の下面が導電性被覆されていることが望ましい。可動基板支持アセンブリ310が上側位置にある場合に、可動基板支持アセンブリ310上に支持される半導体基板のプラズマ処理が行なわれる。閉じ込めリング305が下側水平部305cの下方に少なくとも1つの穴あきリング307を備え、穴あきリング307が下側水平部305cに対して回転可能で、かつ、鉛直方向に移動可能であり、径方向に伸長するスロットを介してガス流の伝導度を調節するような構成でもよい。図3Bに、半導体基板を可動基板支持アセンブリ310に移送可能な下側位置にある可動基板支持アセンブリ310を示す。
【0032】
可動基板支持アセンブリ310は、可動接地リング400と、下部電極317と、半導体基板が静電的に固定される静電チャック(electrostatic chuck: ESC)312と、ESC312を囲むプラズマ露出面を有するエッジリング311と、エッジリング311を囲むプラズマ露出面を有する誘電体リング306と、エッジリング311の下方に配置される少なくとも1つの絶縁体リング315と、誘電体リング306の下方に配置され、絶縁体リング315を囲む、導電性材料から形成される固定接地リング340と、を備える。可動接地リング400は、固定接地リング340上に支持された押圧可能なプランジャー350上に支持される。可動接地リング400は、固定接地リング340に対して鉛直方向に移動可能であり、上側位置に基板支持アセンブリ310を移動させた場合に閉じ込めリング305と電気的に接触する。可動基板支持アセンブリ310は、電気的に接地されたバイアスハウジング360上に支持されるものでもよい。
【0033】
固定接地リング340が、底壁340aと、底壁340aの内周から上向きに伸長する側壁340bと、を備えるものでもよい。側壁340bは、誘電体リング306の外径以下の外径を有する。図3Cに示すように、固定接地リング340の底壁340aは、望ましくは、固定接地リング340と可動接地リング400との間にRFリターンパスを形成する可撓性RFリターンストラップ390用に、円周方向に間隔をあけて配置される8つのRFリターンストラップ接続部340cを備える。ストラップ390の代わりに、可動接地リング400と固定接地リング340との間に配置されるRFガスケットを用いて、RFリターンパスの一部として滑りRF接点を形成するようにしてもよい。
【0034】
固定接地リング340は、底壁の外側部に円周方向に間隔をあけて配置される3つのプランジャー支持穴を備え、プランジャー支持穴の各々が、押圧可能なピンの上端部が底壁の上面の上方に伸長するように押圧可能なピンが収容されるプランジャー支持ハウジングに係合する。
【0035】
図4Aないし図4Iに、実施例に従う可動接地リング400の詳細を示す。可動接地リング400は、環状底壁402と、底壁402の内周から上向きに伸長する側壁401と、を備える。側壁401は、固定接地リング340に対して可動接地リング400が鉛直方向に移動できるように固定接地リング340の外周を囲む内表面401aを有する。内表面401aは、固定接地リング340の側壁の外径よりも最大で0.04インチ(=約0.10cm)大きな、より好ましくは最大で0.03インチ(=0.076cm)約大きな直径を有する。
【0036】
可動接地リング400は、その下面402aに複数のセンタリング・スロット403を備える(図4C)。スロット403は、方位角的に間隔をあけて配置される。可動接地リング400が、120度の間隔をあけて配置される3つのセンタリング・スロット403を備える構成が望ましい。また、センタリング・スロット403が、可動接地リング400の中心軸を通る径方向の直線に沿って伸長し、V字型断面を備える構成が望ましい。図4Dにスロット403の1つの上面図を示す。図4Eに径方向の直線に沿って形成されるスロット403の1つの断面図を示す。図4Fに径方向の直線と垂直に形成されるスロット403の1つの断面図を示す。スロット403は、好ましくは45度ないし90度の開口角度を有し、より好ましくは、すべての方向に約60度の開口角度を有する。
【0037】
可動接地リング400は、複数のRFリターンストラップ接続部を備える。RFリターンストラップ390が、RFリターンストラップ接続部に結合されて、可動接地リング400を固定接地リング340に電気的に接地するようにしてもよい。望ましくは、RFリターンストラップ接続部は、底壁402の外周上に8つの径方向外側に伸長する突起488を備える。
【0038】
可動接地リング400が、側壁401の上面401bに鉛直方向に伸長する環状凹部415を備えるものでもよい(図4G)。凹部415は、RFガスケットを収容するように形成される。あるいは、可動接地リング400が凹部415を備えることなく、側壁401の上端部が、側壁401の外表面401cに伸長する環状スロット420を備え、鉛直方向に伸長する薄肉部430aと薄肉部430aの上端部から径方向外側に伸長するたわみ可能な環状部430bとを備える屈曲部430を形成するようにしてもよい(図4I)。RFガスケット又は屈曲部430は、側壁401の上部周縁全体に沿って閉じ込めリング305を弾性的に係合するように作用する。RFガスケット及び屈曲部は、可動接地リング400と閉じ込めリング305との間の凹凸に対応して、上部周縁全体に沿って可動接地リング400と閉じ込めリング305との間の電気的接触を確実にするように作用する。
【0039】
図4Bに示すように、可動接地リング400は、望ましくは、その内表面401aに、側壁401の上面401bから伸長する鉛直面440aと内表面401a及び鉛直面440aの間に伸長する水平面440bとから形成される段部440を備える。図4Hに示すように、水平面440bは、可動基板支持アセンブリ310が下側位置にある場合に、誘電体リング306から側壁401の上端部を離すように配置される消耗品の石英リング320(図4Hには図示せず、図3Aないし図3Cに図示される)の下面に形成された位置合わせ孔に嵌合する鉛直ピン499を収容するように形成される複数の盲穴440hを備える。
【0040】
図5A及び図5Bに示すように、押圧可能なプランジャー350は、各々、ハウジング351と、ハウジング351の下端部を覆うキャップ352と、ハウジング351内に配置されるバネバイアス・ピン353と、を備える。ピン353は、ハウジング351の上端部351aに伸長する上部353aを備え、可動接地リング400におけるセンタリング・スロット403の1つに係合する。ピン353は、ピン353の上向きの移動を制限するとともにピン353を上向きにバイアスさせるバネ354と係合するフランジ353bを備える。可動接地リング400の上端部が閉じ込めリング350と電気的に接触する基板支持アセンブリ310の上向きの移動の際に、ピン353は押圧可能である。可動基板支持アセンブリ310が上側位置にある場合に、バネ354により30ポンド(=約13.6キログラム)以上の力をピン353に加えて、可動接地リング400と閉じ込めリング305との間の電気的接続を確実なものにすることが望ましい。
【0041】
図5Bに示すように、ハウジング351の上端部351aは、固定接地リング340のねじ開口部に係合される小径ねじ切り部と、固定接地リング340の嵌合開口部に収容される大径部351bと、を備える。ピン353の上端部353aは、ハウジング351の上端部351aに対して少なくとも0.5インチ(=約1.27cm)押圧可能であることが望ましい。
【0042】
図3A、図3B及び図4Hに示すように、石英リング320は、その下面に複数のセンタリング凹部321を備える。凹部321は、段部440の水平面440bに形成された盲穴440hから伸長する鉛直ピン499を収容するように形成される。鉛直ピン499は、各々、1つのセンタリング凹部321に配置される。
【0043】
図6Aないし図6Cに示す一実施例において、石英リング320は、断面が長方形で、内径が約14.8インチ(=約37.6センチメートル)、外径が約15.1インチ(=約38.4センチメートル)、高さが約0.3インチ(=約0.76センチメートル)である。3つの凹部321が、石英リング320の外側下隅に方位角的に120度の間隔をあけて配置される。各凹部321は、約0.1インチ(=約0.25センチメートル)の直径を有する半円筒部321aを備える。半円筒部321aの中心軸は、石英リング320の中心軸から半径約7.5インチ(=約19センチメートル)の位置にある。半円筒部321aは、石英リング320の外表面に開口する直線部321bと接続される。直線部321bの幅が半円筒部321aの直径と等しい。凹部321の深さは約0.09インチ(=約0.23センチメートル)である。凹部321のすべての端部は約0.02インチ(=約0.05センチメートル)の幅で45度に面取りされることが望ましい。凹部321は、石英リング320と好適にはアルミニウム製である可動接地リング400との間の熱膨張係数の差を調整し、可動接地リング400と石英リング320とがさらされる温度範囲で可動接地リング400の中心と石英リング320の中心をそろえる役割を果たす。
【0044】
上述したギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバにおいて半導体基板を処理する方法は、可動基板支持アセンブリ310を下側位置に移動させる工程と、 半導体基板を静電チャック312に移送する工程と、可動基板支持アセンブリ310を上側位置に移動させる工程と、上部電極(303及び304)と静電チャック312との間のギャップに処理ガスを供給する工程と、上部電極と下部電極の少なくとも1つにRFエネルギーを供給して、処理ガスをプラズマ状態に活性化する工程と、半導体基板をプラズマで処理する(プラズマエッチング)工程と、を備える。
【0045】
可動基板支持アセンブリ310を下側位置から上側位置に移動させる際に、可動接地リング400の上端部が閉じ込めリング305の下側水平部305cと電気的に接触するまで可動接地リング400を鉛直方向に移動させて、その後、可動基板支持アセンブリ310が所望のギャップ幅を与える上側位置に到達するまで、可動接地リング400が、固定接地リング340上に支持された押圧可能なプランジャー350を押圧することが望ましい。
【0046】
可動接地リングを用いることにより、閉じ込めリング305を通るウエハポートが必要なくなる。このウエハポートは、プラズマエッチングが不均一になったり、プラズマ閉じ込めが不完全になったりする原因と成り得る。
【0047】
可動接地リング、可動基板支持アセンブリ及びギャップ調節可能な容量結合プラズマ処理チャンバを、実施例を参照して詳述してきた。ただし、当業者には自明のように、特許請求の範囲から逸脱することなく、さまざまに変化、変可能であり、これらと等価の態様も特許請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギャップ調節可能な容量結合プラズマ処理チャンバにおいて、可動基板支持アセンブリの固定接地リングの周囲に嵌合され、前記固定接地リングに対するRFリターンパスを提供する前記可動基板支持アセンブリの可動接地リングであって、前記基板支持アセンブリ内に支持された半導体基板がプラズマ処理され、前記可動接地リングは、
その下面に複数のセンタリング・スロットを有する環状底壁と、
前記底壁の内周から上向きに伸長する側壁であって、前記固定接地リングに対して前記可動接地リングが鉛直方向に移動できるように前記固定接地リングの外周を囲む内表面を有する側壁と
を備える可動接地リング。
【請求項2】
請求項1に記載の可動接地リングであって、
前記複数のセンタリング・スロットは、前記可動接地リングの中心軸を通る径方向の直線に沿って各々伸長する3つの細長いV字型スロットを備える
可動接地リング。
【請求項3】
請求項1に記載の可動接地リングであって、
さらに、前記底壁上に複数のRFリターン・ストラップ状接続部を備え、
前記複数のRFリターン・ストラップ状接続部が、前記底壁の外周上に径方向外側に伸長する8つの突起を有する
可動接地リング。
【請求項4】
前記側壁の上面が、RFガスケットを収容する環状凹部を備える請求項1に記載の可動接地リング。
【請求項5】
請求項1に記載の可動接地リングであって、
前記側壁の上端部が、前記側壁の外表面内に伸長して、鉛直方向に伸長する薄肉部と前記薄肉部の上端部から径方向外側に伸長するたわみ可能な環状部とを備える屈曲部を形成する環状スロットを備える
可動接地リング。
【請求項6】
請求項1に記載の可動接地リングであって、
前記内表面が、前記側壁の前記上面から伸長する鉛直面と、前記内面及び前記鉛直面の間に伸長する水平面と、により形成される段部を備え、
前記水平面が、前記基板支持アセンブリの外側上端部において、誘電体リングから前記側壁の前記上端部を離すように配置される石英リングの下面に形成される位置合わせ孔に嵌合するピンを収容するように形成される複数の盲孔を備える
可動接地リング。
【請求項7】
請求項1に記載の可動接地リングを備える基板支持アセンブリであって、
前記基板支持アセンブリは、
下部電極と、
前記半導体基板が静電的に固定される静電チャックと、
前記静電チャックを囲むプラズマ露出面を有するエッジリングと、
前記エッジリングを囲むプラズマ露出面を有する誘電体リングと、
前記エッジリングの下方に配置される少なくとも1つの絶縁体リングと、
前記誘電体リングの下方に配置され、前記絶縁体リングを囲む、導電性材料から形成される固定接地リングと、を備え、
前記可動接地リングの前記側壁の前記内表面が前記固定接地リングの側壁の外径よりも最大で0.04インチ(=約0.10cm)大きな直径を有し、
前記可動接地リングは前記固定接地リング上に支持された複数の押圧可能なプランジャー上に支持され、
前記可動接地リングは前記固定接地リングに対して鉛直方向に移動可能であり、前記プラズマ処理チャンバ内で前記半導体基板が処理される上側位置に前記基板支持アセンブリを移動させた場合に、前記可動接地リングがプラズマ閉じ込め領域の内壁を形成する閉じ込めリングと電気的に接触する
基板支持アセンブリ。
【請求項8】
請求項7に記載の基板支持アセンブリであって、
前記複数の押圧可能なプランジャーは、各々、ハウジングと、前記ハウジングの下端部を覆うキャップと、前記ハウジング内に配置されるバネバイアス・ピンと、を備え、
前記ピンは、前記ハウジングの上端部に伸長する上部を備え、前記可動接地リングにおける前記センタリング・スロットの1つに係合し、
前記ピンは、前記ピンの上向きの移動を制限するとともに前記ピンを上向きにバイアスさせるバネと係合するフランジを備え、
前記可動接地リングの上端部が前記閉じ込めリングと電気的に接触する際に、前記ピンは押圧可能である
基板支持アセンブリ。
【請求項9】
請求項8に記載の基板支持アセンブリであって、
前記ハウジングの前記上端部が、前記固定接地リングのねじ開口部に係合される小径ねじ切り部と前記固定接地リングの嵌合開口部に収容される大径部とを備える
基板支持アセンブリ。
【請求項10】
前記ピンの上端部が、前記ハウジングの前記上端部に対して少なくとも0.5インチ(=約1.27cm)移動可能である請求項7に記載の基板支持アセンブリ。
【請求項11】
請求項7に記載の基板支持アセンブリを備えるギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバであって、
前記基板支持アセンブリは、前記静電チャックの上面に半導体基板を移動可能な下側位置から、前記半導体基板のプラズマ処理が実行される上側位置に、移動可能であり、
前記プラズマ処理チャンバは、
上部電極と、
前記上部電極から外側に伸長する導電性閉じ込めリングと、を備え、
前記閉じ込めリングは、上側水平部と、前記上側水平部の外側端部から下向きに伸長する鉛直部と、前記鉛直部の下端部から内向きに伸長する下側水平部と、を備え、
前記下側水平部は、処理ガスと反応副生成物とを前記プラズマ閉じ込め領域の外に排出するための径方向に伸長する複数のスロットを備え、
前記基板支持アセンブリが前記上側位置にあって、前記上部電極と前記下部電極との間のギャップを調節する場合に、前記下側水平部の内側端部の下面が前記可動接地リングの上端部と電気的に接触する
ギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバ。
【請求項12】
請求項11に記載のギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバであって、
前記閉じ込めリングの前記下側水平部の前記内側端部の下面が、前記可動接地リングとの電気的接触が増大するように導電性被覆されている
ギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバ。
【請求項13】
複数の可撓性RFリターン・ストラップが、前記可動接地リングと前記固定接地リングとの間に伸長する請求項11に記載のギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバ。
【請求項14】
請求項11に記載のギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバであって、
石英リングが、前記可動接地リングの前記側壁の前記上面から伸長する鉛直面と前記内表面と前記鉛直面との間に伸長する水平面とにより形成される段部内に配置され、
前記石英リングが、その下面に複数のセンタリング凹部を備え、
前記可動接地リングが、前記段部の前記水平面に形成された盲穴から伸長する複数の鉛直ピンを備え、
前記複数の鉛直ピンは、各々、前記センタリング凹部の1つに配置される
ギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバ。
【請求項15】
RFガスケットが、前記可動接地リングの前記側壁の上端部に形成された環状凹部に配置される請求項11に記載のギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバ。
【請求項16】
請求項11に記載のギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバであって、
前記閉じ込めリングが、前記下側水平部の下方に配置される穴あきリングを備え、
前記穴あきリングが、前記下側水平部に対して回転可能及び鉛直方向に移動可能であり、前記下側水平部の径方向に伸長する位置合わせスロットと前記穴あきリングとを介してガス流の伝導度を調節する
ギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバ。
【請求項17】
請求項11に記載のギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバであって、
前記固定接地リングが、底壁と、前記底壁の内周から上向きに伸長する側壁と、を備え、
前記固定接地リングの前記側壁が、前記誘電体リングの外径以下の外径を有し、
前記固定接地リングの前記底壁が、円周方向に間隔をあけて配置される8つのRFリターン・ストラップ接続部を備え、
前記可動接地リングが、円周方向に間隔をあけて配置される8つのRFリターン・ストラップ接続部と、前記可動接地リングの前記RFリターン・ストラップ接続部と前記固定接地リングの前記RFリターン・ストラップ接続部との間に電気的リターンパスを形成する8つの可撓性RFリターン・ストラップと、を備える
ギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバ。
【請求項18】
請求項17に記載のギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバであって、
前記固定接地リングが、前記底壁の外側部に円周方向に間隔をあけて配置される3つのプランジャー支持穴を備え、
前記プランジャー支持穴の各々が、押圧可能なピンの上端部が前記底壁の上面の上方に伸長するように前記押圧可能なピンが収容されるプランジャー支持ハウジングに係合する
ギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバ。
【請求項19】
請求項11に記載のギャップ調節可能なプラズマ処理チャンバにおいて半導体基板を処理する方法であって、
前記基板支持アセンブリを前記下側位置に移動させる工程と、
半導体基板を前記静電チャックに移送する工程と、
前記基板支持アセンブリを前記上側位置に移動させる工程と、
前記上部電極と前記静電チャックとの間のギャップに処理ガスを供給する工程と、
前記上部電極と前記下部電極の少なくとも1つにRFエネルギーを供給して、前記処理ガスをプラズマ状態に活性化する工程と、
前記半導体基板を前記プラズマで処理する工程と
を備える方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記基板支持アセンブリを前記下側位置から前記上側位置に移動させる際に、前記可動接地リングの上端部が前記閉じ込めリングの前記下側水平部と電気的に接触するまで前記可動接地リングを鉛直方向に移動させて、その後、前記基板支持アセンブリが前記上側位置に到達するまで、前記可動接地リングが、前記固定接地リング上に支持された前記押圧可能なプランジャーを押圧する
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2012−15514(P2012−15514A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−143639(P2011−143639)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】