説明

プラズマ処理方法

【課題】本発明は、密部スペース幅20nm以下のパターンにおいて、疎密マイクロローディングの低減を可能とするプラズマ処理方法を提供する。
【解決手段】本発明は、シリコン基板上に密部スペース幅20nm以下のパターンのマスクを有する試料のシリコンをプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、Cl2ガスとN2ガスの混合ガスを用い、0.1Pa以下の圧力で、デューティー比5%〜50%の時間変調された間欠的な高周波電力を前記試料に印加しながら、シリコンのエッチングを行うことを特徴とするプラズマ処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子等をプラズマ処理するプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の製造分野においては、素子分離技術としてShallow Trench Isolation(以下STIと略称する)技術が多用されており、STI技術では、例えば、異方性エッチングによりシリコン基板にトレンチ(エッチング溝)を形成している。
【0003】
異方性エッチングの一例として、特許文献1には、エッチング室内に設けられた一対の対向電極のうち、一方にシリコン基板を配置し、対向電極の双方に高周波電力を供給し、エッチング室内にCl2又はHBrを含むガスを供給してシリコン基板をドライエッチングする方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、0.1Pa以下の低ガス圧力条件下でのエッチングの一例としてポリシリコンの終点判定検出時に起こる酸化膜の損傷を防止するため、光干渉式リアルタイム膜厚モニタでポリシリコン残膜を検知し、終点直前に高選択エッチング条件に切り換える方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−007679号公報
【特許文献2】特開1999−260799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリコン基板上に作製される半導体デバイスの高集積化や高性能化に伴って、デバイスを構成する半導体素子は約0.7倍のスケーリング則で微細化している。そして、現在の半導体製品に適用されている32nm,22nmのデザインルール(設計基準)は次世代の開発製品では20nm以下となり、STIのスペース幅の縮小がますます進む。
【0007】
STIのプラズマエッチングにおいては、プラズマエッチング処理中に被エッチング材のシリコンの反応生成物(例えば、SiCl,SiBr等)の再付着が発生するが、スペース幅が広い従来のデザインルールにおいては大きく問題となることは無かった。
【0008】
しかしながら、密部のスペース幅が20nm以下のSTIのプラズマエッチングにおいては、図3に示すように、微量の反応生成物がマスク側壁に堆積することでスペース幅が狭まるか、もしくはスペースが塞がるため、エッチングの進行が困難になるという問題が発生した。
【0009】
上記の反応生成物の堆積量はガス圧力の影響を強く受ける。すなわち、ガス圧力が高くなると衝突散乱が頻繁になって、反応生成物の再入射量が増加するため、マスク側壁の堆積量が非常に大きくなることが分かっている。
【0010】
従来のドライエッチング技術では、高エッチングレートを考慮しているため、一般的に0.5Pa〜2.0Paの処理室の圧力領域でSTIにおいてシリコンのプラズマ処理を行っている。しかし、密部のスペース幅が20nm程度のパターンでは、前述したようにマスク側壁に反応生成物が堆積し、スペース幅が狭まるか、スペースが塞がってしまう。その結果、密部パターンではエッチングが進行せず、密部パターンで最もエッチング量が少なかったトレンチの深さと、疎部パターンの最もエッチング量が多かったトレンチの深さの差である疎密マイクロローディングが大きくなる。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みて、密部スペース幅20nm以下のパターンにおいて、疎密マイクロローディングの低減を可能とするプラズマ処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、シリコン基板上に密部スペース幅20nm以下のパターンのマスクを有する試料のシリコンをプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、Cl2ガスとN2ガスの混合ガスを用い、0.1Pa以下の圧力で、デューティー比5%〜50%の時間変調された間欠的な高周波電力を前記試料に印加しながら、シリコンのエッチングを行うことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0013】
また、本発明は、シリコン基板上に密部スペース幅20nm以下のパターンのマスクを有する試料のシリコンをプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、Cl2ガスとO2ガスの混合ガスを用い、0.1Pa以下の圧力で、デューティー比5%〜50%の時間変調された間欠的な高周波電力を前記試料に印加しながら、シリコンのエッチングを行うことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、密部スペース幅20nm以下のパターンにおいて、疎密マイクロローディングを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るプラズマエッチング装置の概断面図である。
【図2】本実施例にかかる半導体素子の構成を説明する断面図である。
【図3】従来技術の条件を用いた場合のプラズマエッチング後の断面図である。
【図4】本発明の条件を用いた場合のプラズマエッチング後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照しながら説明する。図1に本実施例で使用するプラズマエッチング装置を示す。上部が開放された真空容器101の上部に、真空容器101内に処理ガスを導入するためのシャワープレート104(例えば石英製),誘電体窓105(例えば石英製)を設置し、密封することにより処理室106を形成する。シャワープレート104には処理ガスを流すためのガス供給装置107が接続される。また、真空容器101には真空排気口108を介し真空排気装置(図示せず)が接続されている。
【0017】
プラズマを生成するための電力を処理室106に伝送するため、誘電体窓105の上方には電磁波を伝送する導波管109を設けている。導波管109へ伝送される電磁波(プラズマ生成用高周波)は電磁波発生用電源103から発振させる。電磁波の周波数は特に限定されないが、本実施例では2.45GHzのマイクロ波(プラズマ生成用高周波)を使用する。処理室106の外周部には、磁場を形成する磁場発生用コイル110が設けてあり、電磁波発生用電源103より発振された電力は、形成された磁場との相互作用により、処理室106内に高密度プラズマを生成する。
【0018】
また、シャワープレート104に対向して真空容器101の下部にはウエハ載置用電極102を設けている。ウエハ載置用電極102は電極表面が溶射膜(図示せず)で被覆されており、高周波フィルタ114を介して直流電源115が接続されている。さらに、ウエハ載置用電源102には、マッチング回路112を介してバイアス用高周波電源である高周波電源113が接続される。ウエハ載置用電極102には、温度調節器(図示せず)も接続されている。
処理室106内に搬送された試料であるウエハ111は、直流電源115から印加される直流電圧の静電気力でウエハ載置用電極102上に吸着,温度調節され、ガス供給装置107によって所望の処理ガスを供給した後、真空容器101内を所定の圧力とし、処理室106内にプラズマを発生させる。ウエハ載置用電極102に接続された高周波電源113から高周波電力を印加することにより、プラズマからウエハへイオンを引き込み、ウエハ111がプラズマ処理される。また、高周波電源113は、パルス発振器を備えるため、ウエハ載置用電極に時間変調された間欠的な高周波電力または、連続的な高周波電力を印加することができる。
【0019】
以下、本プラズマエッチング装置を用いた本発明のプラズマ処理方法について説明する。
【0020】
搬送手段(図示せず)により、ウエハ111を真空容器101に搬送し、ウエハ載置用電極102に載置する。ウエハ載置用電極102に載置されたウエハは、図2に示すように、シリコン基板201上に所定の形状にパターンニングされた、フォトレジストマスク(図示せず)または、ハードマスク202が成膜されている。また、所定の形状にパターニングされたハードマスク202のパターンの密部のスペース幅は、従来の半導体デバイスより極めて狭い10nm程度である。
【0021】
ウエハ111をウエハ載置用電極102に載置した後、表1に示すように、CF4ガスとN2ガスをガス供給装置107より真空容器101内に供給し、真空排気装置を介して処理室106内の圧力を0.4Paに制御し、電磁波発生用電源から800Wの高周波電力を処理室106内に供給してプラズマを発生させ、高周波電源113からウエハ載置用電極102に80Wの連続的な高周波電力を印加しながら、前記の処理室106内に発生させたプラズマにより、ハードマスク202のパターンに沿ってシリコン基板201をエッチングする。また、上記のエッチング中はウエハ載置用電極102の温度を30℃に温調している。このエッチングステップは、シリコン基板201のエッチングのブレイクスルーを行う第1ステップである。
【0022】
次に、表1に示すように、Cl2ガスとN2ガスをガス供給装置107より真空容器101内に供給し、真空排気装置を介して処理室106内の圧力を0.08Paに制御し、電磁波発生用電源から400Wの高周波電力を処理室106内に供給してプラズマを発生させ、高周波電源113からウエハ載置用電極102に300Wのデューティー比30%の時間変調された間欠的な高周波電力を印加しながら、前記の処理室106内に発生させたプラズマにより、シリコン基板201をエッチングする。また、上記のエッチング中はウエハ載置用電極102の温度を30℃に温調している。このエッチングステップはシリコン基板のメインエッチングを行う第2ステップである。尚、デューティー比とは、時間変調された間欠的な高周波電力のオン時間をTon、オフ時間をToffとした場合、
デューティー比=Ton/(Ton+Toff
となる。
【0023】
次に第2ステップのエッチングが終了した後、ウエハ111を搬送手段(図示せず)により、真空容器101より搬出して、本発明のプラズマ処理を終了する。
【0024】
【表1】

【0025】
上述の2ステップでウエハ111のエッチング処理を行った結果、図4に示すように、ハードマスク202の側壁にSiClやSiBr等の反応生成物203が堆積させずにシリコン基板201のエッチングを行うことができ、疎密マイクロローディングを低減した所望のエッチング形状を得ることができた。この効果は以下の理由と考えられる。
【0026】
処理室106内の圧力を0.1Pa以下の圧力領域でプラズマエッチングを行うことで、ハードマスク202側壁への反応生成物203の堆積を抑制することができ、ハードマスク202のスペース幅を維持することが可能となった。また、ウエハ載置用電極102に時間変調された間欠的な高周波電力を印加したことによって、ウエハ載置用電極102に印加された高周波電力の平均値は同じでもオン時間の高周波電力が高くなり、かつ、オフ時間中に反応生成物203の排気を促進することにより、狭いスペース幅でもプラズマエッチングが可能となった。
【0027】
また、本実施例の第2ステップでは、Cl2ガスとN2ガスの混合ガスであったが、Cl2ガスとO2ガスの混合ガスを用いても、本実施例と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の第2ステップでは、処理室106内の圧力を0.08Paとしたが、0.01Pa〜0.1Paでも本実施例と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の第2ステップでのデューティー比は、30%としたが、5%〜50%でも本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0028】
また、本実施例ではプラズマエッチング用ガスに反応生成物203の飽和蒸気圧が低いCl2ガスを使用し、N2ガスを含む混合ガスとしたが、プラズマエッチング用ガスとしてはHBrガスまたは、HBrガスおよびCl2ガスの混合ガスにN2またはO2を添加した混合ガスを使用した場合(HBrとN2の混合ガス、HBrとO2の混合ガス、Cl2とHBrとN2の混合ガス、Cl2とHBrとO2の混合ガス)においても、本実施例と同様に疎密マイクロローディングを改善できる。
【符号の説明】
【0029】
101 真空容器
102 ウエハ載置用電極
103 電磁波発生用電源
104 シャワープレート
105 誘電体窓
106 処理室
107 ガス供給装置
108 真空排気口
109 導波管
110 磁場発生用コイル
111 ウエハ
112 マッチング回路
113 高周波電源
114 高周波フィルタ
115 直流電源
201 シリコン基板
202 ハードマスク
203 反応生成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板上に密部スペース幅20nm以下のパターンのマスクを有する試料のシリコンをプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、
Cl2ガスとN2ガスの混合ガスを用い、0.1Pa以下の圧力で、デューティー比5%〜50%の時間変調された間欠的な高周波電力を前記試料に印加しながら、シリコンのエッチングを行うことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
シリコン基板上に密部スペース幅20nm以下のパターンのマスクを有する試料のシリコンをプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、
Cl2ガスとO2ガスの混合ガスを用い、0.1Pa以下の圧力で、デューティー比5%〜50%の時間変調された間欠的な高周波電力を前記試料に印加しながら、シリコンのエッチングを行うことを特徴とするプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−169390(P2012−169390A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28063(P2011−28063)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】