説明

プラズマ処理装置

【課題】処理の面内均一性の向上を図ることができるとともに、装置の小型化と処理効率の向上を図ることができ、かつ、上部電極と下部電極との間隔を容易に変更することのできるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】処理チャンバー201内に設けられた下部電極202と、シャワーヘッドとしての機能を備え上下動可能とされた上部電極100と、前記上部電極の上側に設けられ処理チャンバーの上部開口を気密に閉塞する蓋体205と、前記上部電極の面内に形成された複数の排気孔13と、前記上部電極の周縁部に沿って下方に突出するように設けられ該電極と連動して上下動可能とされて、下降位置において前記下部電極と前記上部電極とによって囲まれた処理空間を形成する環状部材220と、前記環状部材の内壁部分に誘電体製の容器230内に収容されて配置されたコイル240と、を具備したプラズマ処理装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造分野等においては、半導体ウエハ等の基板に向けてガスをシャワー状に供給するためのシャワーヘッドが用いられている。すなわち、例えば半導体ウエハ等の基板にプラズマエッチング処理を施すプラズマ処理装置では、処理チャンバー内に、基板を載置するための載置台が設けられており、この載置台と対向するように、シャワーヘッドが設けられている。このシャワーヘッドには、載置台と対向する対向面に、ガス吐出孔が複数設けられており、これらのガス吐出孔から基板に向けてガスをシャワー状に供給する。
【0003】
上記したプラズマ処理装置では、処理チャンバー内のガスの流れを均一化するため、載置台の周囲から下方に排気を行う構成としたものが知られている。また、シャワーヘッドの周囲から処理チャンバーの上方に向けて排気を行うよう構成されたプラズマ処理装置も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、処理チャンバーの中に設けられた対向電極と、処理チャンバーの外側の側壁部分に設けられた誘導結合プラズマ(ICP)を発生させるためのコイルとを有するプラズマ処理装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、誘導結合型プラズマを発生させるためのコイルを、誘電体で囲まれた状態として処理チャンバー内に配置したプラズマ処理装置が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2662365号公報
【特許文献2】特開平8−64540号公報
【特許文献3】特開平10−98033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来の技術では、載置台(基板)の周囲から処理チャンバーの下方へ排気するか、又はシャワーヘッドの周囲から処理チャンバーの上方に向けて排気する構成となっている。このため、シャワーヘッドから供給されたガスが基板の中央部から周辺部に向けて流れる流れが形成され、基板の中央部と周辺部とで処理の状態に差が生じ易く、処理の面内均一性が低下するという問題があった。また、載置台(基板)の周囲又はシャワーヘッドの周囲に排気流路を設ける必要があるため、処理チャンバー内部の容積が、収容する基板よりもかなり大型になり、無駄な空間が多くなり装置全体の小型化を図ることが難しいという問題があった。また、このような装置の大型化に伴い、立ち上げ時の待機時間が長くなるとともに、初期に発生する処理変動が大きくなり、処理効率が低下するという問題があった。
【0007】
さらに、シャワーヘッドが上部電極、載置台が下部電極を兼ねた容量結合型のプラズマ処理装置では、この上部電極(シャワーヘッド)と下部電極(載置台)との間隔を可変とすることが望まれる。しかし、処理チャンバー内が減圧雰囲気とされるため、処理チャンバー内外の圧力差に抗して、上部電極(シャワーヘッド)又は下部電極(載置台)を上下動させるには、駆動源に大きな力が必要となり、駆動に要するエネルギーも多くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、従来に比べて処理の面内均一性の向上を図ることができるとともに、装置の小型化と処理効率の向上を図ることができ、かつ、上部電極と下部電極との間隔を容易に変更することのできるプラズマ処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプラズマ処理装置は、処理チャンバー内に設けられ、基板を載置するための載置台を兼ねた下部電極と、前記下部電極と対向するように前記処理チャンバー内に設けられ、前記下部電極と対向する対向面に複数設けられたガス吐出孔から前記基板に向けてガスをシャワー状に供給するシャワーヘッドとしての機能を備え、かつ、上下動可能とされ前記下部電極との間隔を変更可能とされた上部電極と、前記上部電極の上側に設けられ前記処理チャンバーの上部開口を気密に閉塞する蓋体と、前記対向面に形成された複数の排気孔と、前記上部電極の周縁部に沿って下方に突出するように設けられ前記上部電極と連動して上下動可能とされた環状部材であって、下降位置において前記下部電極と前記上部電極と当該環状部材とによって囲まれた処理空間を形成する環状部材と、前記環状部材の内壁部分に、誘電体製の容器内に収容され前記処理空間と気密に隔離された状態で配設され、高周波電力を印加することによって誘導プラズマを発生させるコイルとを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来に比べて処理の面内均一性の向上を図ることができるとともに、装置の小型化と処理効率の向上を図ることができ、かつ、上部電極と下部電極との間隔を容易に変更することのできるプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の構成を示す縦断面図。
【図2】図1のプラズマ処理装置の要部構成を拡大して示す縦断面図。
【図3】図1のプラズマ処理装置の要部構成を拡大して示す縦断面図。
【図4】図1のプラズマ処理装置のシャワーヘッドを上昇させた状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明のプラズマ処理装置の一実施形態に係るプラズマエッチング装置200の断面構成を模式的に示す図であり、図2は、図1のプラズマエッチング装置200に設けられたシャワーヘッド100の構成を模式的に示す断面図である。本実施形態のプラズマエッチング装置200は、電極板が上下平行に対向し、プラズマ形成用電源(図示せず。)が接続された容量結合型平行平板プラズマエッチング装置としてその主要部が構成されている。
【0014】
図2に示すように、シャワーヘッド100は、下側部材1と、この下側部材1の上側に配置された上側部材2の2枚の板状部材を積層させた積層体10から構成されている。これらの下側部材1及び上側部材2は、例えば、表面に陽極酸化処理を施したアルミニウム等から構成されている。このシャワーヘッド100は、図1に示すように、プラズマエッチング装置200の処理チャンバー201に、半導体ウエハ(基板)が載置される載置台202と対向するように配設される。すなわち、図2に示す下側部材1側が図1に示す載置台202と対向する対向面14を形成するように配設される。
【0015】
上記積層体10のうち、載置台202と対向する対向面14を形成する下側部材1には、ガス吐出孔11が多数形成されており、下側部材1と上側部材2との間には、これらのガス吐出孔11に連通するガス流路12が形成されている。これらのガス吐出孔11は、図2中に矢印で示すように、基板(図2中下側)に向けてガスをシャワー状に供給するためのものである。なお、積層体10の周縁部には、ガス流路12内にガスを導入するためのガス導入部(図示せず。)が設けられている。
【0016】
また、上記積層体10には、この積層体10、すなわち、下側部材1と上側部材2とを貫通して、多数の排気孔13が形成されている。これらの排気孔13は、図2中に点線の矢印で示すように、基板側(図2中下側)から基板と反対側(図2中上側)に向けてガスの流れが形成されるように排気を行う排気機構を構成している。
【0017】
これらの排気孔13は、直径が例えば1.2mm程度とされており、シャワーヘッド100の周縁部(後述する環状部材220を固定するための固定部となる)を除き、その全領域に亘って略均等に設けられている。排気孔13の数は、例えば12インチ(300mm)径の半導体ウエハを処理するためのシャワーヘッド100の場合、2000〜2500個程度である。排気孔13の形状は、円形に限らず例えば楕円形状等としてもよく、これらの排気孔13は、反応生成物を排出する役目も果たす。なお、本実施形態では、シャワーヘッド100の外形は、被処理基板である半導体ウエハの外形に合わせて円板状に構成されている。
【0018】
図1に示されるプラズマエッチング装置200の処理チャンバー(処理容器)201は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等から円筒形状に形成されており、この処理チャンバー201は接地されている。処理チャンバー201内には、被処理基板としての半導体ウエハを載置し、かつ、下部電極を構成する載置台202が設けられている。この載置台202には、図示しない高周波電源等の高周波電力印加装置が接続されている。
【0019】
載置台202の上側には、その上に半導体ウエハを静電吸着するための静電チャック203が設けられている。静電チャック203は、絶縁材の間に電極を配置して構成されており、この電極に直流電圧を印加することにより、クーロン力によって半導体ウエハを静電吸着する。また、載置台202には、温調用媒体を循環させるための流路(図示せず。)が形成されており、静電チャック203上に吸着された半導体ウエハを所定の温度に温度調整できるようになっている。また、図4に示すように、処理チャンバー201の側壁部には、半導体ウエハを処理チャンバー201内に搬入、搬出するための開口215が形成されている。
【0020】
載置台202の上方に、載置台202と間隔を隔てて対向するように、図2に示したシャワーヘッド100が配置されている。そして、シャワーヘッド100が上部電極となり、載置台202が下部電極となる一対の対向電極が形成されている。シャワーヘッド100のガス流路12内には、図示しないガス供給源から所定の処理ガス(エッチングガス)が供給される。
【0021】
また、シャワーヘッド100の上部には、処理チャンバー201の上部開口を気密に閉塞し、処理チャンバー201の天井部を構成する蓋体205が設けられており、この蓋体205の中央部には、筒状の排気管210が配設されている。この排気管210には、開閉制御弁及び開閉機構等を介してターボ分子ポンプ等の真空ポンプ(図示せず。)が接続されている。
【0022】
シャワーヘッド100の下面には、その周縁部に沿って下方に突出するように円環状(円筒状)に形成された環状部材220が設けられている。この環状部材220は、例えば絶縁性の被膜(陽極酸化被膜等)で覆われたアルミニウム等から構成されており、上部電極としてのシャワーヘッド100と電気的に導通した状態で固定されている。
【0023】
図3に示すように、環状部材220は、環状部材220の側壁の主要分を構成する上側部材221と、この上側部材221の下部に取り付けられた下側部材222とを具備している。上側部材221の内壁の上端部には、内側に向けて突出する突出部221aが設けられている。そして、この突出部221aと下側部材222の上面との間に狭持されるように、環状部材220の内壁に沿って、全体形状が円環状であり、縦断面形状が逆U字状とされた誘電体製の容器、本実施形態では石英から構成された石英容器230が設けられている。
【0024】
石英容器230の下端部と、下側部材222の上面との間には、気密封止部材としてのOリング231が配置されている。一方、石英容器230の上端部は、上側部材221の突出部221aによって下方に向けて押圧された状態に維持されており、これによって、石英容器230内部と処理チャンバー201内部の処理空間とが気密に隔離された状態で石英容器230が環状部材220に固定されている。
【0025】
石英容器230の内部には、ICPコイル240が配設されている。このICPコイル240は、全体形状が円環状とされており、本実施形態では、処理空間の周囲を複数回巻回するように設けられている。本実施形態では、ICPコイル240は、中空のパイプ状の金属から構成されている。このICPコイル240には、図示しない温調用媒体循環機構が接続されており、その内部の中空の空間に温調用媒体を循環させることができるよう構成されている。
【0026】
また、このICPコイル240は、図示しない高周波電源に接続されている。そして、この高周波電源から所定周波数(例えば、450KHz〜2MHzの範囲)の高周波電力を印加することによって、石英容器230よりも内側の処理空間212内にICPプラズマを発生させることができるよう構成されている。石英容器230の内部は、大気又は不活性ガスで置換された雰囲気とされており、内部で放電が発生しない圧力(例えば、1330Pa(10Torr)以上大気圧以下の圧力)とされている。
【0027】
上記のICPコイル240によって、処理空間212内の周辺部にICPプラズマを発生させ、処理空間212内の周辺部のプラズマ密度を制御することができる。この時、ICPコイル240の温度が上昇する傾向があり、このICPコイル240の温度上昇を、内部に温調用媒体を循環させることによって防止することができる。
【0028】
また、メンテナンス等のために一旦処理チャンバー201内部を大気開放した後に、再度処理を開始する場合には、処理を開始するための準備の工程において、ICPコイル240によってプラズマを発生させることによって、処理チャンバー201内の部品に吸着している水分等を脱離させることができる。これによって、待機時間を短縮することができるとともに、立ち上げ時の初期に発生する処理変動を低減することができる。
【0029】
環状部材220は、昇降機構270に接続されており、シャワーヘッド100と共に上下動可能とされている。この環状部材220の内径は、載置台202の外径より僅かに大きく設定されており、その下側部分が載置台202の周囲を囲む状態となる位置に下降させることができるようになっている。図1は、環状部材220及びシャワーヘッド100を下降位置とした状態を示している。この下降位置では、載置台202の上方には、載置台(下部電極)202と、シャワーヘッド(上部電極)100と、環状部材220とによって囲まれた処理空間212が形成されるようになっている。このように、上下動可能な環状部材220によって処理空間212を仕切ることにより、処理空間212を載置台202の上方のみに形成し、載置台202の周縁部から外側に向かって水平方向に拡がった無駄な空間が形成されることを抑制することができる。
【0030】
一方、図4は、環状部材220及びシャワーヘッド100を上昇位置とした状態を示している。この上昇位置では、半導体ウエハを処理チャンバー201内に搬入、搬出するための開口215が開いた状態となっており、この状態で半導体ウエハの処理チャンバー201への搬入、搬出が行われるようになっている。この開口215は、図1に示すように、環状部材220及びシャワーヘッド100を下降位置とした際には、環状部材220によって覆われ閉塞した状態となっている。
【0031】
昇降機構270の駆動源として、本実施形態では電動シリンダー260を用いている。そして、複数の昇降機構270を処理チャンバー201の周方向に沿って等間隔で設けた多軸駆動方式とされている。このように、電動シリンダー260を用いた多軸駆動方式とすることにより、例えば、空気圧駆動の駆動機構とした場合に比べて環状部材220及びシャワーヘッド100の位置を精度よく制御することができる。また、多軸駆動方式としても、その協調制御を電気的に容易に行うことができる。
【0032】
図1に示すように、電動シリンダー260の駆動軸は昇降軸261に接続されており、この昇降軸261は、処理チャンバー201の底部から処理チャンバー201内の上部に向けて延在するように立設された円筒状の固定軸262内を貫通するように配設されている。そして、気密封止部263において、例えば2重のOリング等によって昇降軸261の駆動部分の気密封止がなされている。
【0033】
本実施形態では、シャワーヘッド100が、処理チャンバー201の上部開口を気密に閉塞する蓋体205の内側の減圧雰囲気内に配置されており、シャワーヘッド100自体に減圧雰囲気と大気雰囲気との間の圧力差が加わることがなく、昇降軸261の部分のみに圧力差が加わる。このため、シャワーヘッド100を少ない駆動力で、容易に上下動させることができ、省エネルギー化を図ることができる。また、駆動機構の機械的強度を軽減することができるので、装置コストの低減を図ることができる。
【0034】
環状部材220と、載置台202下部の高周波側ラインの接地側には、これらの間を電気的に接続するためのシートケーブル250が設けられている。このシートケーブル250は、環状部材220の周方向に沿って、等間隔で複数設けられている。シートケーブル250は、銅等からなるシート状の導体の表面を絶縁層で被覆して構成され、その両側端部近傍には、導体が露出しねじ止め用の貫通孔が形成された接続部が設けられている。このシートケーブル250は、厚さが例えば数百ミクロン程度とされており、可撓性を有し、環状部材220及びシャワーヘッド100の上下動に応じて自在に変形するよう構成されている。
【0035】
シートケーブル250は、環状部材220及び上部電極としてのシャワーヘッド100の高周波のリターンを目的としたものであり、上部電極としてのシャワーヘッド100と環状部材220がシートケーブル250によって電気的に接続され、高周波側ラインの接地側に電気的に接続されている。
【0036】
このように、本実施形態では、処理チャンバー壁等ではなく、シートケーブル250によって、短い経路で環状部材220及び上部電極としてのシャワーヘッド100が高周波側ラインの接地側に電気的に接続されている。これによってプラズマによる各部位の電位差を極めて低く抑えることができるようになっている。
【0037】
また、環状部材220及び上部電極としてのシャワーヘッド100が上下動する構成でありながら、これらがシートケーブル250によって常に高周波側ラインの接地側に電気的に接続された構成となっており、電気的にフローティング状態となることがないように構成されている。
【0038】
上記の通り、プラズマエッチング装置200では、上下動可能とされた環状部材220を具備しているので、処理空間212を載置台202の上方のみに形成することができ、水平方向外側に拡がった無駄な空間が形成されることを抑制することができる。これによって消費される処理ガスの削減等を図ることができる。また、環状部材220に配設されたICPコイル240によって、処理空間内の周辺部にICPプラズマを発生させ、処理空間内の周辺部のプラズマ密度を制御することができるので、処理空間212内のプラズマの状態を、より細かく制御することができ、均一な処理を行うことができる。さらに、上部電極としてのシャワーヘッド100と載置台202との間の距離を、処理の条件等によって変更することができる。
【0039】
さらに、処理空間212の物理的な形状が対称となり、半導体ウエハを処理チャンバー201内に搬入、搬出するための開口215が存在することによる非対称な形状の影響がプラズマに加わることを抑制することができるので、より均一な処理を行うことができる。
【0040】
上記構成のプラズマエッチング装置200によって、半導体ウエハのプラズマエッチングを行う場合、まず、図4に示すように、環状部材220及びシャワーヘッド100を上昇させ、開口215を開ける。この状態で、半導体ウエハを、開口215から処理チャンバー201内へと搬入し、半導体ウエハを静電チャック203上に載置して、静電チャック203上に静電吸着する。
【0041】
次いで、環状部材220及びシャワーヘッド100を下降させるとともに、開口215を閉じ、半導体ウエハの上方に処理空間212を形成した状態とする。そして、真空ポンプ等によって、排気孔13を介して処理チャンバー201内の処理空間212を所定の真空度まで真空引する。
【0042】
その後、所定流量の所定の処理ガス(エッチングガス)を、図示しないガス供給源から供給する。この処理ガスは、シャワーヘッド100のガス流路12を経てガス吐出孔11からシャワー状に載置台202上の半導体ウエハに供給される。
【0043】
そして、処理チャンバー201内の圧力が、所定の圧力に維持された後、載置台202に所定の周波数,例えば13.56MHzの高周波電力が印加される。これにより、上部電極としてのシャワーヘッド100と下部電極としての載置台202との間に高周波電界が生じ、エッチングガスが解離してプラズマ化する。さらに、例えば、処理空間212の周縁部におけるプラズマ密度を上昇させたい場合等には、必要に応じてICPコイル240に高周波電力が印加され、処理空間内の周辺部にICPプラズマを発生させる。そして、これらのプラズマによって、半導体ウエハに所定の均一なエッチング処理が行われる。
【0044】
上記エッチング処理において、シャワーヘッド100のガス吐出孔11から供給された処理ガスは、シャワーヘッド100に分散して多数形成された排気孔13から排気されるので、処理チャンバー201の下部から排気を行う場合のように、半導体ウエハの中央部から周辺部に向かうようなガスの流れが形成されることがない。このため、半導体ウエハに供給される処理ガスをより均一化することができる。これによって、プラズマの状態を均一化することができ、半導体ウエハの各部に均一なエッチング処理を施すことができる。すなわち、処理の面内均一性を向上させることができる。
【0045】
そして、所定のプラズマエッチング処理が終了すると、高周波電力の印加及び処理ガスの供給が停止され、上記した手順とは逆の手順で、半導体ウエハが処理チャンバー201内から搬出される。
【0046】
上記したとおり、本実施形態のプラズマエッチング装置200によれば、シャワーヘッド100から処理ガスの供給及び排気を行う構成となっているので、半導体ウエハに供給される処理ガスをより均一化することができる。これによって、半導体ウエハの各部に均一なエッチング処理を施すことができる。
【0047】
また、上記のプラズマエッチング装置200では、シャワーヘッド100に設けた排気孔13から排気を行うので、従来の装置のように、載置台202の周囲又はシャワーヘッド100の周囲に排気経路を設ける必要がない。このため、処理チャンバー201の径をより被処理基板である半導体ウエハの外径に近づけることが可能となり、装置の小型化を図ることができる。また、真空ポンプを、処理チャンバー201の上方に設けることができ、処理チャンバー201の処理空間により近い部分から排気することができるので、効率良く排気することができる。
【0048】
また、シャワーヘッド(上部電極)100と載置台(下部電極)202との間隔を処理に応じて変更することができ、かつ、シャワーヘッド100を少ない駆動力で容易に上下動させることができるので、省エネルギー化や装置コストの低減を図ることができる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは勿論である。例えば、上記実施形態では、載置台(下部電極)に1つの周波数の高周波電力を供給する場合について説明したが、下部電極に周波数の異なった複数の高周波電力を印加するタイプの装置等に対しても同様にして適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
11……ガス吐出孔、13……排気孔、100……シャワーヘッド(上部電極)、200……プラズマエッチング装置、201……処理チャンバー、202……載置台(下部電極)、205……蓋体、212……処理空間、220……環状部材、230……石英容器、240……ICPコイル、270……昇降機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバー内に設けられ、基板を載置するための載置台を兼ねた下部電極と、
前記下部電極と対向するように前記処理チャンバー内に設けられ、前記下部電極と対向する対向面に複数設けられたガス吐出孔から前記基板に向けてガスをシャワー状に供給するシャワーヘッドとしての機能を備え、かつ、上下動可能とされ前記下部電極との間隔を変更可能とされた上部電極と、
前記上部電極の上側に設けられ前記処理チャンバーの上部開口を気密に閉塞する蓋体と、
前記対向面に形成された複数の排気孔と、
前記上部電極の周縁部に沿って下方に突出するように設けられ前記上部電極と連動して上下動可能とされた環状部材であって、下降位置において前記下部電極と前記上部電極と当該環状部材とによって囲まれた処理空間を形成する環状部材と、
前記環状部材の内壁部分に、誘電体製の容器内に収容され前記処理空間と気密に隔離された状態で配設され、高周波電力を印加することによって誘導プラズマを発生させるコイルと
を具備したことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記処理チャンバー側壁の、前記下部電極と前記上部電極との間の位置に前記基板を搬入・搬出するための開閉自在な開口部が設けられ、前記環状部材を上昇させた状態で前記基板の搬入・搬出を行うよう構成されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプラズマ処理装置であって、
前記環状部材が絶縁性の被膜に覆われたアルミニウムから構成されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記誘電体製の容器内は、大気又は不活性ガス雰囲気で、1330Pa以上大気圧以下の圧力とされている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記コイルは、パイプ状の中空の導体から構成され、その内部に温調用媒体が導入されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記コイルに印加される高周波電力の周波数は、450KHz〜2MHzの範囲である
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記環状部材と前記上部電極は電気的に導通した状態で固定され、前記環状部材は、表面が絶縁層で覆われた金属シートからなり可撓性を有するシートケーブルで接地電位に接続されている
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記環状部材と前記上部電極の上下動を行う駆動手段は、電動シリンダーによる多軸駆動である
ことを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−243688(P2011−243688A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113262(P2010−113262)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】