プラズマ処理装置
【課題】試料に対して均一なプラズマ処理を行うことのできるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】試料をプラズマ処理する真空処理室と、前記真空処理室の上面を形成する誘電体窓と、前記真空処理室内にガスを導入するガス導入手段と、前記真空処理室内に配置され前記試料を載置する試料台と、前記誘電体窓の上方に設けられた誘導コイル4dと、誘導コイル4dに高周波電力を供給する高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、誘導コイル4dの下方に配置された平板の導体12を備え、誘導コイル4dは、交差した給電部を有し、導体12は、前記給電部の下方に配置され、誘導コイル4dの給電部の誘導磁場分布を調整して試料上でのプラズマ分布を補正する。
【解決手段】試料をプラズマ処理する真空処理室と、前記真空処理室の上面を形成する誘電体窓と、前記真空処理室内にガスを導入するガス導入手段と、前記真空処理室内に配置され前記試料を載置する試料台と、前記誘電体窓の上方に設けられた誘導コイル4dと、誘導コイル4dに高周波電力を供給する高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、誘導コイル4dの下方に配置された平板の導体12を備え、誘導コイル4dは、交差した給電部を有し、導体12は、前記給電部の下方に配置され、誘導コイル4dの給電部の誘導磁場分布を調整して試料上でのプラズマ分布を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置に係り、特に誘導結合型プラズマ源を用いた装置に好適なプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造分野においては、試料のエッチングや表面処理に誘導結合型(Inductively Coupled Plasma:ICP)のプラズマ装置も利用されている。従来のICPプラズマ処理装置としては、特許文献1に記載のような、真空処理室の一部を構成するとともに処理ガスの吹き出し口を備えたガスリングと、ガスリングの上部を被って真空処理室を形成するベルジャと、ベルジャ上部に配置され、真空処理室内に高周波電界を供給してプラズマを生成するアンテナと、真空処理室内にウエハを載置する載置台と、アンテナとベルジャ間に配置されるとともに高周波バイアス電圧が付与されるファラデーシールドとを備えるICPプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
一般的に、ICPプラズマ源を用いたプラズマ処理装置では、誘導コイルの電流分布が不均一になることは避けられず、誘導コイルの周方向に沿ってプラズマが不均一になることが知られている。これにより、ウエハ上に拡散したプラズマの中心軸が誘導コイルの中心軸とずれるというプラズマの偏芯を生じる。
【0004】
この課題を解決する手段としては、特許文献2に、誘導アンテナとほぼ同心のリング状導体であり、当該リング状導体と前記誘導アンテナ間及び前記リング状導体とプラズマ間の相互インダクタンスが前記リング状導体の周方向への周回に応じて漸化するような形状を有する導体を前記誘導アンテナに沿って配置したプラズマ処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−158373号公報
【特許文献2】特開2011−103346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、誘導コイルの電流分布が不均一による誘導コイルの周方向に沿ってプラズマが不均一になる問題には、誘導コイルの給電部による誘導コイルの周方向のプラズマ分布の不均一も含まれるが、特許文献2では、誘導コイルの給電部による誘導コイルの周方向のプラズマ分布の不均一については考慮されていない。
【0007】
なお、ウエハ上でプラズマが偏芯したままエッチングを行うと、エッチング処理の均一性やエッチング形状の垂直性等が悪化する。このため、現在、エッチング処理の高精度化の要求が高まっている中、安定したエッチング処理を行うには、誘導コイルの給電部による誘導コイルの周方向のプラズマ分布の不均一の影響は無視できないものとなってきた。
【0008】
本発明の目的は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、誘導コイルの給電部の誘導磁場分布を調整して試料上でのプラズマ分布を補正し、試料に対して均一なプラズマ処理を行うことのできるプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、試料をプラズマ処理する真空処理室と、前記真空処理室の上面を形成する誘電体窓と、前記真空処理室内にガスを導入するガス導入手段と、前記真空処理室内に配置され前記試料を載置する試料台と、前記誘電体窓の上方に設けられた誘導コイルと、前記誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、前記誘導コイルの下方に配置された平板の導体を備え、前記誘導コイルは、交差した給電部を有し、前記導体は、前記給電部の下方に配置されたことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、試料をプラズマ処理する真空処理室と、前記真空処理室の上面を形成する誘電体窓と、前記真空処理室内にガスを導入するガス導入手段と、前記真空処理室内に配置され前記試料を載置する試料台と、前記誘電体窓の上方に設けられた誘導コイルと、前記誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源と、前記誘導コイルの下方にあり、前記誘導コイルから発生する電場を調整するファラデーシールドとを備えるプラズマ処理装置において、前記誘導コイルは、交差した給電部を有し、前記ファラデーシールドは、スリットを有し、前記給電部に対向した箇所のスリットが塞がれた形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、誘導コイルによる誘導磁場分布を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例であるプラズマ処理装置を示す縦断面図である。
【図2】図1のAから見た誘導コイルとファラデーシールドの平面図である。
【図3】本発明に係る誘導コイルの斜視図である。
【図4】本発明の導体と誘導コイルとファラデーシールドの平面図である。
【図5】図4をD−Dから見た本発明の導体の設置方法(1)を示す縦断面図である。
【図6】図4をD−Dから見た本発明の導体の設置方法(2)を示す縦断面図である。
【図7】本発明の導体がリング状の導体の場合の平面図である。
【図8】本発明の導体を複数設置する方法(1)を示す図である。
【図9】本発明の導体を複数設置する方法(2)を示す図である。
【図10】本発明の導体と誘導コイルとプラズマとの位置関係を示す図である。
【図11】本発明の導体の位置による誘導磁場分布を示すシミュレーション図である。
【図12】本発明の導体と誘導コイルとプラズマとの位置関係を示す図である。
【図13】本発明の誘導コイルの縦断面図である。
【図14】本発明の一体型ファラデーシールドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のプラズマ処理装置の一実施例を図1ないし図14により説明する。
【0014】
図1は誘導結合タイプのプラズマ処理装置の縦断面図を示す。円筒状の処理容器1bの上部開口部には内部を気密に保持可能な天板である誘電体窓1aが取付けられ、真空処理室1を構成する。誘電体窓1aは、電磁波を透過可能な絶縁材料、例えば、アルミナ(Al2O3)セラミック等の非導電性材料から成る。真空処理室1の外側上面となる誘電体窓1aの上方には誘導アンテナが配置されている。この場合、誘導アンテナは、図2に示すように内径の異なる1ターンから成る誘導コイル4aないし4dが同芯上に配置されてなる。図3(a)に示すように誘導コイル4aないし4dのそれぞれは、両端に給電端(電源が交流のため両側が給電端となる)を有し、一方の給電端を始点として1周より長く巻回され一部が重なりを有して他端に給電端を設けた形状となっている。図3(a)に示すように誘導コイル4に反時計回りに高周波電流が流れる場合、E点での高周波電流のベクトルは、図3(b)のように分解できる。一方、給電部の交差部17のF点及びG点での高周波電流ベクトルは、図3(c)のように分解でき、f1とg1のような同じ方向のベクトルが存在する。このため、誘導コイル4の給電部の交差部17は、給電部の交差部17以外の円周上の箇所より強い誘導磁場を発生させることができる。
【0015】
また、誘導コイル4は、重なり部での接触を防ぐために、図3(a)に示すように給電端部の立ち上がりも含め絶縁材で被覆してある。誘導コイル4は整合器7を介して第1の高周波電源8に接続されている。第1の高周波電源8は、例えば、13.56MHz又は27.12MHzの高周波電力を発生させる。
【0016】
誘導コイル4と誘電体窓1aとの間にはファラデーシールド6が配置される。この場合、ファラデーシールド6は誘電体窓1aの上面に取付けてある。ファラデーシールド6は導体から成り、図2に示すように中央部と外周部とにおいてそれぞれに円周方向に繋がり、中央部と外周部との間の領域に放射状のスリットを有して形成されている。誘電体窓1aとファラデーシールド6と誘導コイル4とは同芯上で且つ所定の間隔で平行に取付けられている。また、図4に示すようにファラデーシールド6の反誘電体窓1a側であるファラデーシールド6の上面には、誘導コイル4dの給電部(給電端)の近傍の下方に板状の導体12が配置されている。
【0017】
この導体12の形状は、処理室を構成する処理容器1bから中心部に向かって先細りとなる三角形状である。誘導コイル4dに流れる高周波電流13が図4の点線矢印の向き(右回り)の場合、処理容器1bには、逆向き(左回り)の誘導電流が流れ、導体12に給電部の強い誘導磁場を打ち消す方向の誘導磁場が発生するため、給電部から発生する誘導磁場を弱めることが可能となる。尚、導体12は、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅のような材料から製作されている。
【0018】
この場合、ファラデーシールド6は、外周部が導体で繋がらないようにし、誘導コイル4dの近傍で逆向きの誘導電流(周回電流)が流れないようにしてある。これにより、誘導コイル4dの給電部において誘電体窓を透過する誘導磁場の分布を局部的に補正することができ、誘導コイル4の全体の範囲において、誘導磁場分布を略均一に補正することができる。
【0019】
図5は、図4をD−Dから見た縦断面図であり、導体12の取付状態を示す。上記導体12は、図5のように処理容器1bにボルト15a、15bで固定されており、これらのボルトの位置を変更することで、水平方向、垂直方向に上記導体を所望の位置へと調節可能となる。
【0020】
また、図5では導体12を処理容器1bに固定しているが、誘導電流が流れる閉回路を形成すれば良いので、例えば、図6に示すように、誘導コイル4dを覆った誘導コイル保護カバー14の壁面に導体12を固定してもよい。但し、処理容器1bは接地され、誘導コイル保護カバー14は、処理容器1bを介して接地されている。また、誘導コイル保護カバー14は直接、接地されていても良い。また、誘導コイル保護カバー14の材質は、導体である。
【0021】
また、誘導コイル4から発生する誘導磁場の補正には、導体12に誘導電流を発生させることが必須である。上記の導体12は接地されたものと導通することにより、誘導電流を発生させていた例であるが、必ずしも導体12が接地または、接地されたものと導通している必要はない。導体12が導体12自身だけで誘導電流を発生させ得る形状であれば良い。すなわち、導体12は、周回の誘導電流を発生させる形状であれば良い。
【0022】
例えば、図7に示すように、誘導コイル4が1ターンの誘導コイルの場合、誘導コイル4の給電部を囲うようにリング状の導体12を設置することにより、導体12にも誘導コイル4から発生する誘導電場を打ち消す向きに誘導電流が流れる。
【0023】
さらに、図8のように、誘導コイル4が1ターンで90度おきに給電部を有する誘導コイルの場合、誘導コイル4の円周方向に沿って、各給電部の近傍で下方に導体12を配置すると、各々の給電部の誘導磁場の補正が可能となり、給電部が1つの1ターンの誘導コイルより誘導コイル4の円周方向のプラズマ不均一を改善できる。
【0024】
また、誘導コイル4が1ターンで1つの給電部を有する誘導コイルの4本からなり、それぞれの誘導コイルの給電部の位置が周方向で異なる場合、図9に示すように導体12の形状を四角形とし、上記の導体12の四角形部分が給電部の直下に位置するように導通する箇所(この場合、処理容器1b)から所定の位置まで伸ばして配置すると良い。この場合、内側に配置される誘導コイルの場合、その誘導コイルの外側の部分では、ファラデーシールド15のスリット部分を塞がないように、スリットでない部分に投影するように四角形状の部分を支持するサポート部16を設ける。
【0025】
または導体12の四角形状の板状部材を必要としない箇所については、ファラデーシールド15のスリット形状に合わせ同様にスリットを設ける。このように、所望の誘導磁場分布が得られるように、導体12と給電部の組合せの数や導体12の形状を適正化すればよい。
【0026】
誘電体窓1aの真空処理室内側には図示を省略した処理ガスの供給路が形成されており、ガス供給装置9が接続してある。真空処理室1内には、試料台3が図示を省略した支持部材により処理容器1bに支持されて設置されている。試料台3の上面には試料載置面が形成され、図示を省略した搬送装置により試料2が配置され、試料2を静電吸着等により保持可能となっている。試料台3上面に配置された試料2には、試料の処理中にバイアス電圧を印加可能に第2の高周波電源11が接続されている。第2の高周波電源11は、例えば、800KHz又は4MHzの第1の高周波電源の周波数よりも低い周波数の高周波電力を発生させる。処理容器1bの下面には真空処理室1内を減圧排気する排気装置10が取付けられている。
【0027】
上述のように構成されたプラズマ処理装置では、まず排気装置10によって真空処理室1内を減圧排気するとともにガス供給装置9によって流量制御された処理ガスを誘電体窓1aを介して真空処理室1内に供給し、真空処理室1内を所定の圧力にする。次に第1の高周波電源8によって整合器7を介して誘導コイル4aないし4dに高周波電力を供給する。
【0028】
これにより、真空処理室1内に処理ガスのプラズマが生成される。誘導コイル4aないし4dには図示を省略された制御装置により真空処理室1内のプラズマ分布に基づいてそれぞれに供給される電力を調整可能となっている。
【0029】
誘導コイル4から放射される誘導磁場は、導体12およびファラデーシールド6の作用を受け誘電体窓1aを透過して真空処理室1内に伝播される。
【0030】
ここで、図10、図11により導体12が及ぼす作用について説明する。導体12は前述のようにファラデーシールド6上に設けられ、誘導コイル4から導体12の表面までの最短距離をLrとし、誘導コイル4から誘電体窓1aの直下に生成されるプラズマ5までの最短距離をLpとすると、誘導コイルの給電部では、Lp≧Lrを満たす位置に導体12を設置する。導体12の位置を誘導コイル4の給電部に対してLp≧Lrを満たす位置にすることにより、誘導コイル4とプラズマ間の相互インダクタンスを局所的に変化させることができる。
【0031】
距離Lp,Lrの関係を以下、シミュレーション結果を用いて導体12の設置位置と誘導磁場強度分布とによって説明する。図11は、誘導コイル4に10A/mの電流を一定に流したときに誘導コイル4から発生する誘導磁場分布を等高線で示した図である。図11の等高線は、色が薄い部分ほど誘導磁場強度が弱く(最も誘導磁場強度の弱い部分は、ハッチング表示)、逆に色が濃い部分ほど誘導磁場強度が強いことを示す。通常、誘導コイル4から発生した誘導磁場は、誘導コイル4から同心円状に広がりながら、誘電体窓1aを透過し、真空処理室1内に到達する。ほぼ図11(c)に示した誘導磁場強度の等高線に似た分布となる。
【0032】
図11(a)に、導体12がLp>Lrを満たす位置に設置された場合のシミュレーション結果を示す。導体12が設置された位置では、誘導コイル4から発生した誘導磁場が導体12によって遮蔽され、導体12の内側、すなわち、誘導コイル4が存在する側の誘導磁場だけが誘電体窓1a側に達する。これは、前述したとおり、導体12がプラズマ生成面までの距離Lpよりも誘導コイル4に近い距離Lrで配置されているため、プラズマ生成に用いられる誘導磁場よりも強い誘導磁場を、導体12に発生する誘導電流の作用によって打ち消して、導体12近傍の領域の誘導磁場を弱めてしまうことによるものである。
【0033】
図11(b)に導体12をLp=Lrを満たす位置に設置した場合のシミュレーション結果を示す。また、図11(c)に導体12をLp<Lrを満たす位置に設置した場合のシミュレーション結果を示す。図11(b)、(c)においても、導体12が設置された位置では、図11(a)と同様に誘導磁場を遮蔽するための誘導電流は発生する。しかしながら、図11(b)、(c)に示すように誘導コイル4から導体12を遠ざけるに従い、真空処理室1内に到達する誘導磁場の領域が広がっていることがわかる。
【0034】
このことより、導体12の取付け位置によって真空処理室1内に形成されるプラズマ領域が変化することがわかる。言い換えると、導体12の位置を調整することによりプラズマの形成領域を調整することができる。また、導体12の位置がLp<Lrの関係にある場合は、誘導コイル4の最も外側の誘導コイル4dの位置にもよるが、本実施例のようにほぼ外側まである場合(処理室内径(直径D)−誘導コイル径(直径d)の値が約2Lp以内の場合)には有効に作用しない。このため、導体12の位置はLp≧Lrを満たす位置に設置することが効果的であり、誘電体窓1a直下に生成されるプラズマ位置を調整可能となるので、このため、導体12は、誘導コイル4の下方で、かつ、Lp≧Lrを満たす位置に設置することが望ましい。
【0035】
このように、導体12の設置は、誘電体窓1a上部に限られるものではなく、誘電体窓1a内に形成されても良く、誘電体窓1a下面に設けても良い。すなわち、誘導コイル4とプラズマ生成面までの間に配置されれば良い。
【0036】
また、本実施例では導体12を誘導コイル4とファラデーシールド6の間のファラデーシールド6上に配置したが、必ずしも導体12は誘導コイル4とファラデーシールド6の間に設置されている必要はなく、図12(a)に示すように導体12がファラデーシールド6とウィンドウ1aの間に設置されても良い。さらに、ファラデーシールド6の作用を必要としない場合には、図12(b)に示すようにファラデーシールド6をなくし、誘電体窓1aの上面に導体12を設置するだけでも良い。
【0037】
以上、本発明は、本実施例の誘導コイル4の形状により、局部的に交差部を有する給電部で発生させる誘導磁場を誘導コイル4の円周上の中で、最も強くすることができ、導体12を給電部の下方に配置することにより、誘導コイル4の円周上で最も強い誘導磁場を弱めることができる。このため、本発明により、誘導コイルの周方向の誘導磁場分布の不均一性を改善できる。また、この改善された誘導磁場分布により、誘導コイルの周方向のプラズマ不均一性を改善でき、試料に対して均一なプラズマ処理を行うことができる。
【0038】
また、本発明に適用する誘導コイル4は、給電部が交差している形状であればよいので、図13(a)に限定されるのではなく、図13(b)のように給電部が垂直に交差した形状でも良い。
【0039】
さらに、本実施例ではファラデーシールド6と導体12とを別々に設けているが、ファラデーシールド6と導体12の機能を合わせた一体のものとしても良い。
【0040】
例えば、図14に、本実施例の誘導コイル4の給電部における誘導磁場分布の補正を可能とする一体型ファラデーシールド18の取付け例を説明する。本実施例での誘導コイル4の給電部は交差しているので、円周方向で最も誘導磁場の強度が強い箇所となる。ここで、弱い誘導磁場を強くすることはできないが、強い磁場強度を弱くすることは本実施例で述べた局所的な周回の誘導電流を形成させることにより可能となる。図14に示すように誘導コイルの給電部に対向する箇所のスリットを塞ぐことにより、給電部の強い磁場強度を遮断し、誘導コイルの周方向のプラズマ不均一性を改善することができる。なお、本実施例では1周巻の誘導コイル4を用いたが、複数巻の誘導コイルであっても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 真空処理室
1a 誘電体窓
1b 処理容器
2 試料
3 試料台
4、4a、4b、4c、4d 誘導コイル
5 プラズマ
6 ファラデーシールド
7 整合器
8 第1の高周波電源
9 ガス供給装置
10 排気装置
11 第2の高周波電源
12 導体
13a、13b 誘導電流
14 誘導コイル保護カバー
15a、15b ボルト
16 サポート部
17 給電部の交差部
18 一体型ファラデーシールド
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置に係り、特に誘導結合型プラズマ源を用いた装置に好適なプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造分野においては、試料のエッチングや表面処理に誘導結合型(Inductively Coupled Plasma:ICP)のプラズマ装置も利用されている。従来のICPプラズマ処理装置としては、特許文献1に記載のような、真空処理室の一部を構成するとともに処理ガスの吹き出し口を備えたガスリングと、ガスリングの上部を被って真空処理室を形成するベルジャと、ベルジャ上部に配置され、真空処理室内に高周波電界を供給してプラズマを生成するアンテナと、真空処理室内にウエハを載置する載置台と、アンテナとベルジャ間に配置されるとともに高周波バイアス電圧が付与されるファラデーシールドとを備えるICPプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
一般的に、ICPプラズマ源を用いたプラズマ処理装置では、誘導コイルの電流分布が不均一になることは避けられず、誘導コイルの周方向に沿ってプラズマが不均一になることが知られている。これにより、ウエハ上に拡散したプラズマの中心軸が誘導コイルの中心軸とずれるというプラズマの偏芯を生じる。
【0004】
この課題を解決する手段としては、特許文献2に、誘導アンテナとほぼ同心のリング状導体であり、当該リング状導体と前記誘導アンテナ間及び前記リング状導体とプラズマ間の相互インダクタンスが前記リング状導体の周方向への周回に応じて漸化するような形状を有する導体を前記誘導アンテナに沿って配置したプラズマ処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−158373号公報
【特許文献2】特開2011−103346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、誘導コイルの電流分布が不均一による誘導コイルの周方向に沿ってプラズマが不均一になる問題には、誘導コイルの給電部による誘導コイルの周方向のプラズマ分布の不均一も含まれるが、特許文献2では、誘導コイルの給電部による誘導コイルの周方向のプラズマ分布の不均一については考慮されていない。
【0007】
なお、ウエハ上でプラズマが偏芯したままエッチングを行うと、エッチング処理の均一性やエッチング形状の垂直性等が悪化する。このため、現在、エッチング処理の高精度化の要求が高まっている中、安定したエッチング処理を行うには、誘導コイルの給電部による誘導コイルの周方向のプラズマ分布の不均一の影響は無視できないものとなってきた。
【0008】
本発明の目的は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、誘導コイルの給電部の誘導磁場分布を調整して試料上でのプラズマ分布を補正し、試料に対して均一なプラズマ処理を行うことのできるプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、試料をプラズマ処理する真空処理室と、前記真空処理室の上面を形成する誘電体窓と、前記真空処理室内にガスを導入するガス導入手段と、前記真空処理室内に配置され前記試料を載置する試料台と、前記誘電体窓の上方に設けられた誘導コイルと、前記誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、前記誘導コイルの下方に配置された平板の導体を備え、前記誘導コイルは、交差した給電部を有し、前記導体は、前記給電部の下方に配置されたことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、試料をプラズマ処理する真空処理室と、前記真空処理室の上面を形成する誘電体窓と、前記真空処理室内にガスを導入するガス導入手段と、前記真空処理室内に配置され前記試料を載置する試料台と、前記誘電体窓の上方に設けられた誘導コイルと、前記誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源と、前記誘導コイルの下方にあり、前記誘導コイルから発生する電場を調整するファラデーシールドとを備えるプラズマ処理装置において、前記誘導コイルは、交差した給電部を有し、前記ファラデーシールドは、スリットを有し、前記給電部に対向した箇所のスリットが塞がれた形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、誘導コイルによる誘導磁場分布を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例であるプラズマ処理装置を示す縦断面図である。
【図2】図1のAから見た誘導コイルとファラデーシールドの平面図である。
【図3】本発明に係る誘導コイルの斜視図である。
【図4】本発明の導体と誘導コイルとファラデーシールドの平面図である。
【図5】図4をD−Dから見た本発明の導体の設置方法(1)を示す縦断面図である。
【図6】図4をD−Dから見た本発明の導体の設置方法(2)を示す縦断面図である。
【図7】本発明の導体がリング状の導体の場合の平面図である。
【図8】本発明の導体を複数設置する方法(1)を示す図である。
【図9】本発明の導体を複数設置する方法(2)を示す図である。
【図10】本発明の導体と誘導コイルとプラズマとの位置関係を示す図である。
【図11】本発明の導体の位置による誘導磁場分布を示すシミュレーション図である。
【図12】本発明の導体と誘導コイルとプラズマとの位置関係を示す図である。
【図13】本発明の誘導コイルの縦断面図である。
【図14】本発明の一体型ファラデーシールドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のプラズマ処理装置の一実施例を図1ないし図14により説明する。
【0014】
図1は誘導結合タイプのプラズマ処理装置の縦断面図を示す。円筒状の処理容器1bの上部開口部には内部を気密に保持可能な天板である誘電体窓1aが取付けられ、真空処理室1を構成する。誘電体窓1aは、電磁波を透過可能な絶縁材料、例えば、アルミナ(Al2O3)セラミック等の非導電性材料から成る。真空処理室1の外側上面となる誘電体窓1aの上方には誘導アンテナが配置されている。この場合、誘導アンテナは、図2に示すように内径の異なる1ターンから成る誘導コイル4aないし4dが同芯上に配置されてなる。図3(a)に示すように誘導コイル4aないし4dのそれぞれは、両端に給電端(電源が交流のため両側が給電端となる)を有し、一方の給電端を始点として1周より長く巻回され一部が重なりを有して他端に給電端を設けた形状となっている。図3(a)に示すように誘導コイル4に反時計回りに高周波電流が流れる場合、E点での高周波電流のベクトルは、図3(b)のように分解できる。一方、給電部の交差部17のF点及びG点での高周波電流ベクトルは、図3(c)のように分解でき、f1とg1のような同じ方向のベクトルが存在する。このため、誘導コイル4の給電部の交差部17は、給電部の交差部17以外の円周上の箇所より強い誘導磁場を発生させることができる。
【0015】
また、誘導コイル4は、重なり部での接触を防ぐために、図3(a)に示すように給電端部の立ち上がりも含め絶縁材で被覆してある。誘導コイル4は整合器7を介して第1の高周波電源8に接続されている。第1の高周波電源8は、例えば、13.56MHz又は27.12MHzの高周波電力を発生させる。
【0016】
誘導コイル4と誘電体窓1aとの間にはファラデーシールド6が配置される。この場合、ファラデーシールド6は誘電体窓1aの上面に取付けてある。ファラデーシールド6は導体から成り、図2に示すように中央部と外周部とにおいてそれぞれに円周方向に繋がり、中央部と外周部との間の領域に放射状のスリットを有して形成されている。誘電体窓1aとファラデーシールド6と誘導コイル4とは同芯上で且つ所定の間隔で平行に取付けられている。また、図4に示すようにファラデーシールド6の反誘電体窓1a側であるファラデーシールド6の上面には、誘導コイル4dの給電部(給電端)の近傍の下方に板状の導体12が配置されている。
【0017】
この導体12の形状は、処理室を構成する処理容器1bから中心部に向かって先細りとなる三角形状である。誘導コイル4dに流れる高周波電流13が図4の点線矢印の向き(右回り)の場合、処理容器1bには、逆向き(左回り)の誘導電流が流れ、導体12に給電部の強い誘導磁場を打ち消す方向の誘導磁場が発生するため、給電部から発生する誘導磁場を弱めることが可能となる。尚、導体12は、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅のような材料から製作されている。
【0018】
この場合、ファラデーシールド6は、外周部が導体で繋がらないようにし、誘導コイル4dの近傍で逆向きの誘導電流(周回電流)が流れないようにしてある。これにより、誘導コイル4dの給電部において誘電体窓を透過する誘導磁場の分布を局部的に補正することができ、誘導コイル4の全体の範囲において、誘導磁場分布を略均一に補正することができる。
【0019】
図5は、図4をD−Dから見た縦断面図であり、導体12の取付状態を示す。上記導体12は、図5のように処理容器1bにボルト15a、15bで固定されており、これらのボルトの位置を変更することで、水平方向、垂直方向に上記導体を所望の位置へと調節可能となる。
【0020】
また、図5では導体12を処理容器1bに固定しているが、誘導電流が流れる閉回路を形成すれば良いので、例えば、図6に示すように、誘導コイル4dを覆った誘導コイル保護カバー14の壁面に導体12を固定してもよい。但し、処理容器1bは接地され、誘導コイル保護カバー14は、処理容器1bを介して接地されている。また、誘導コイル保護カバー14は直接、接地されていても良い。また、誘導コイル保護カバー14の材質は、導体である。
【0021】
また、誘導コイル4から発生する誘導磁場の補正には、導体12に誘導電流を発生させることが必須である。上記の導体12は接地されたものと導通することにより、誘導電流を発生させていた例であるが、必ずしも導体12が接地または、接地されたものと導通している必要はない。導体12が導体12自身だけで誘導電流を発生させ得る形状であれば良い。すなわち、導体12は、周回の誘導電流を発生させる形状であれば良い。
【0022】
例えば、図7に示すように、誘導コイル4が1ターンの誘導コイルの場合、誘導コイル4の給電部を囲うようにリング状の導体12を設置することにより、導体12にも誘導コイル4から発生する誘導電場を打ち消す向きに誘導電流が流れる。
【0023】
さらに、図8のように、誘導コイル4が1ターンで90度おきに給電部を有する誘導コイルの場合、誘導コイル4の円周方向に沿って、各給電部の近傍で下方に導体12を配置すると、各々の給電部の誘導磁場の補正が可能となり、給電部が1つの1ターンの誘導コイルより誘導コイル4の円周方向のプラズマ不均一を改善できる。
【0024】
また、誘導コイル4が1ターンで1つの給電部を有する誘導コイルの4本からなり、それぞれの誘導コイルの給電部の位置が周方向で異なる場合、図9に示すように導体12の形状を四角形とし、上記の導体12の四角形部分が給電部の直下に位置するように導通する箇所(この場合、処理容器1b)から所定の位置まで伸ばして配置すると良い。この場合、内側に配置される誘導コイルの場合、その誘導コイルの外側の部分では、ファラデーシールド15のスリット部分を塞がないように、スリットでない部分に投影するように四角形状の部分を支持するサポート部16を設ける。
【0025】
または導体12の四角形状の板状部材を必要としない箇所については、ファラデーシールド15のスリット形状に合わせ同様にスリットを設ける。このように、所望の誘導磁場分布が得られるように、導体12と給電部の組合せの数や導体12の形状を適正化すればよい。
【0026】
誘電体窓1aの真空処理室内側には図示を省略した処理ガスの供給路が形成されており、ガス供給装置9が接続してある。真空処理室1内には、試料台3が図示を省略した支持部材により処理容器1bに支持されて設置されている。試料台3の上面には試料載置面が形成され、図示を省略した搬送装置により試料2が配置され、試料2を静電吸着等により保持可能となっている。試料台3上面に配置された試料2には、試料の処理中にバイアス電圧を印加可能に第2の高周波電源11が接続されている。第2の高周波電源11は、例えば、800KHz又は4MHzの第1の高周波電源の周波数よりも低い周波数の高周波電力を発生させる。処理容器1bの下面には真空処理室1内を減圧排気する排気装置10が取付けられている。
【0027】
上述のように構成されたプラズマ処理装置では、まず排気装置10によって真空処理室1内を減圧排気するとともにガス供給装置9によって流量制御された処理ガスを誘電体窓1aを介して真空処理室1内に供給し、真空処理室1内を所定の圧力にする。次に第1の高周波電源8によって整合器7を介して誘導コイル4aないし4dに高周波電力を供給する。
【0028】
これにより、真空処理室1内に処理ガスのプラズマが生成される。誘導コイル4aないし4dには図示を省略された制御装置により真空処理室1内のプラズマ分布に基づいてそれぞれに供給される電力を調整可能となっている。
【0029】
誘導コイル4から放射される誘導磁場は、導体12およびファラデーシールド6の作用を受け誘電体窓1aを透過して真空処理室1内に伝播される。
【0030】
ここで、図10、図11により導体12が及ぼす作用について説明する。導体12は前述のようにファラデーシールド6上に設けられ、誘導コイル4から導体12の表面までの最短距離をLrとし、誘導コイル4から誘電体窓1aの直下に生成されるプラズマ5までの最短距離をLpとすると、誘導コイルの給電部では、Lp≧Lrを満たす位置に導体12を設置する。導体12の位置を誘導コイル4の給電部に対してLp≧Lrを満たす位置にすることにより、誘導コイル4とプラズマ間の相互インダクタンスを局所的に変化させることができる。
【0031】
距離Lp,Lrの関係を以下、シミュレーション結果を用いて導体12の設置位置と誘導磁場強度分布とによって説明する。図11は、誘導コイル4に10A/mの電流を一定に流したときに誘導コイル4から発生する誘導磁場分布を等高線で示した図である。図11の等高線は、色が薄い部分ほど誘導磁場強度が弱く(最も誘導磁場強度の弱い部分は、ハッチング表示)、逆に色が濃い部分ほど誘導磁場強度が強いことを示す。通常、誘導コイル4から発生した誘導磁場は、誘導コイル4から同心円状に広がりながら、誘電体窓1aを透過し、真空処理室1内に到達する。ほぼ図11(c)に示した誘導磁場強度の等高線に似た分布となる。
【0032】
図11(a)に、導体12がLp>Lrを満たす位置に設置された場合のシミュレーション結果を示す。導体12が設置された位置では、誘導コイル4から発生した誘導磁場が導体12によって遮蔽され、導体12の内側、すなわち、誘導コイル4が存在する側の誘導磁場だけが誘電体窓1a側に達する。これは、前述したとおり、導体12がプラズマ生成面までの距離Lpよりも誘導コイル4に近い距離Lrで配置されているため、プラズマ生成に用いられる誘導磁場よりも強い誘導磁場を、導体12に発生する誘導電流の作用によって打ち消して、導体12近傍の領域の誘導磁場を弱めてしまうことによるものである。
【0033】
図11(b)に導体12をLp=Lrを満たす位置に設置した場合のシミュレーション結果を示す。また、図11(c)に導体12をLp<Lrを満たす位置に設置した場合のシミュレーション結果を示す。図11(b)、(c)においても、導体12が設置された位置では、図11(a)と同様に誘導磁場を遮蔽するための誘導電流は発生する。しかしながら、図11(b)、(c)に示すように誘導コイル4から導体12を遠ざけるに従い、真空処理室1内に到達する誘導磁場の領域が広がっていることがわかる。
【0034】
このことより、導体12の取付け位置によって真空処理室1内に形成されるプラズマ領域が変化することがわかる。言い換えると、導体12の位置を調整することによりプラズマの形成領域を調整することができる。また、導体12の位置がLp<Lrの関係にある場合は、誘導コイル4の最も外側の誘導コイル4dの位置にもよるが、本実施例のようにほぼ外側まである場合(処理室内径(直径D)−誘導コイル径(直径d)の値が約2Lp以内の場合)には有効に作用しない。このため、導体12の位置はLp≧Lrを満たす位置に設置することが効果的であり、誘電体窓1a直下に生成されるプラズマ位置を調整可能となるので、このため、導体12は、誘導コイル4の下方で、かつ、Lp≧Lrを満たす位置に設置することが望ましい。
【0035】
このように、導体12の設置は、誘電体窓1a上部に限られるものではなく、誘電体窓1a内に形成されても良く、誘電体窓1a下面に設けても良い。すなわち、誘導コイル4とプラズマ生成面までの間に配置されれば良い。
【0036】
また、本実施例では導体12を誘導コイル4とファラデーシールド6の間のファラデーシールド6上に配置したが、必ずしも導体12は誘導コイル4とファラデーシールド6の間に設置されている必要はなく、図12(a)に示すように導体12がファラデーシールド6とウィンドウ1aの間に設置されても良い。さらに、ファラデーシールド6の作用を必要としない場合には、図12(b)に示すようにファラデーシールド6をなくし、誘電体窓1aの上面に導体12を設置するだけでも良い。
【0037】
以上、本発明は、本実施例の誘導コイル4の形状により、局部的に交差部を有する給電部で発生させる誘導磁場を誘導コイル4の円周上の中で、最も強くすることができ、導体12を給電部の下方に配置することにより、誘導コイル4の円周上で最も強い誘導磁場を弱めることができる。このため、本発明により、誘導コイルの周方向の誘導磁場分布の不均一性を改善できる。また、この改善された誘導磁場分布により、誘導コイルの周方向のプラズマ不均一性を改善でき、試料に対して均一なプラズマ処理を行うことができる。
【0038】
また、本発明に適用する誘導コイル4は、給電部が交差している形状であればよいので、図13(a)に限定されるのではなく、図13(b)のように給電部が垂直に交差した形状でも良い。
【0039】
さらに、本実施例ではファラデーシールド6と導体12とを別々に設けているが、ファラデーシールド6と導体12の機能を合わせた一体のものとしても良い。
【0040】
例えば、図14に、本実施例の誘導コイル4の給電部における誘導磁場分布の補正を可能とする一体型ファラデーシールド18の取付け例を説明する。本実施例での誘導コイル4の給電部は交差しているので、円周方向で最も誘導磁場の強度が強い箇所となる。ここで、弱い誘導磁場を強くすることはできないが、強い磁場強度を弱くすることは本実施例で述べた局所的な周回の誘導電流を形成させることにより可能となる。図14に示すように誘導コイルの給電部に対向する箇所のスリットを塞ぐことにより、給電部の強い磁場強度を遮断し、誘導コイルの周方向のプラズマ不均一性を改善することができる。なお、本実施例では1周巻の誘導コイル4を用いたが、複数巻の誘導コイルであっても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 真空処理室
1a 誘電体窓
1b 処理容器
2 試料
3 試料台
4、4a、4b、4c、4d 誘導コイル
5 プラズマ
6 ファラデーシールド
7 整合器
8 第1の高周波電源
9 ガス供給装置
10 排気装置
11 第2の高周波電源
12 導体
13a、13b 誘導電流
14 誘導コイル保護カバー
15a、15b ボルト
16 サポート部
17 給電部の交差部
18 一体型ファラデーシールド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をプラズマ処理する真空処理室と、前記真空処理室の上面を形成する誘電体窓と、前記真空処理室内にガスを導入するガス導入手段と、前記真空処理室内に配置され前記試料を載置する試料台と、前記誘電体窓の上方に設けられた誘導コイルと、前記誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
前記誘導コイルの下方に配置された平板の導体を備え、
前記誘導コイルは、交差した給電部を有し、
前記導体は、前記給電部の下方に配置されたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
試料をプラズマ処理する真空処理室と、前記真空処理室の上面を形成する誘電体窓と、前記真空処理室内にガスを導入するガス導入手段と、前記真空処理室内に配置され前記試料を載置する試料台と、前記誘電体窓の上方に設けられた誘導コイルと、前記誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源と、前記誘導コイルの下方にあり、前記誘導コイルから発生する電場を調整するファラデーシールドとを備えるプラズマ処理装置において、
前記誘導コイルは、交差した給電部を有し、
前記ファラデーシールドは、スリットを有し、前記給電部に対向した箇所のスリットが塞がれた形状であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、
前記真空処理室は接地され、
前記導体は、前記真空処理室と導通していることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、
前記導体は、周回の誘導電流が発生する形状であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、
前記導体は、前記給電部の数に応じた個数であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項1】
試料をプラズマ処理する真空処理室と、前記真空処理室の上面を形成する誘電体窓と、前記真空処理室内にガスを導入するガス導入手段と、前記真空処理室内に配置され前記試料を載置する試料台と、前記誘電体窓の上方に設けられた誘導コイルと、前記誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
前記誘導コイルの下方に配置された平板の導体を備え、
前記誘導コイルは、交差した給電部を有し、
前記導体は、前記給電部の下方に配置されたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
試料をプラズマ処理する真空処理室と、前記真空処理室の上面を形成する誘電体窓と、前記真空処理室内にガスを導入するガス導入手段と、前記真空処理室内に配置され前記試料を載置する試料台と、前記誘電体窓の上方に設けられた誘導コイルと、前記誘導コイルに高周波電力を供給する高周波電源と、前記誘導コイルの下方にあり、前記誘導コイルから発生する電場を調整するファラデーシールドとを備えるプラズマ処理装置において、
前記誘導コイルは、交差した給電部を有し、
前記ファラデーシールドは、スリットを有し、前記給電部に対向した箇所のスリットが塞がれた形状であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、
前記真空処理室は接地され、
前記導体は、前記真空処理室と導通していることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、
前記導体は、周回の誘導電流が発生する形状であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、
前記導体は、前記給電部の数に応じた個数であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−80643(P2013−80643A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220611(P2011−220611)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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