説明

プラットホームドア装置

【課題】ドアパネルが戸袋パネルを貫通する形態のプラットホームドア装置において、ドアパネルの開閉の妨げにならないようにしつつ戸袋パネル内を外部と遮断する。
【解決手段】戸袋パネル12のドア開閉方向の幅がドアパネル16のドア開閉方向の幅よりも小さく形成される。乗降通路を閉じるときにはドアパネル16の戸尻16bが戸袋パネル12内にその戸尻側端部12bの開口を通して入り込む。乗降通路を開放するときにはドアパネル16の戸尻16bが戸袋パネル12の戸尻側端部12bの開口から突出する。乗降通路を閉じるときに戸袋パネル12の戸尻側端部12bの開口を塞ぐ一方、ドアパネル16が開き位置まで移動するのに伴って開口を開放する開閉部材52を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームから線路に転落したり或いは走行列車と接触するという危険から乗客を保護するためのプラットホームドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラットホームにいる乗客の安全を確保する目的で据え付けられるプラットホームドア装置が知られている。この種のプラットホームドア装置は、例えば下記特許文献1に開示されているように、プラットホームの軌道側縁部に沿って設置される複数の戸袋パネルを備えており、この戸袋パネルに対して引戸式のドアパネルを往復移動させることで乗降通路を開閉するものである。
【0003】
例えば図9に示すように、戸袋パネル91内には、ガイドレール92と、このガイドレール92と平行に設置されるエンドレスのベルト93と、このベルト93を周回させるためのモータ94と、このモータ94の駆動制御等を行うことによりドアパネル95を開閉制御するドア開閉制御盤96とが配設されている。一方、ドアパネル95にはドアハンガ97が取り付けられており、このドアハンガ97をベルト93に連結し、ベルト93の周回に伴ってガイドレール92に沿ってドアハンガ97を走行させることにより、ドアパネル95が開閉するようになっている。そして、列車が入線していない場合はドアパネル95を閉状態に保持する一方、入線した列車の乗降ドアの開放動作に応じてドアパネル95を開放し、このときドアパネル95は戸袋パネル91に収納されるようになっている。
【0004】
戸袋パネル91の戸尻側(図9における左側)には、図示省略しているが戸袋パネル91と同じ高さの仕切り壁が接続されていて、この仕切り壁によって、互いに隣り合う戸袋パネル91同士が接続されている。この仕切り壁には、開き戸式の非常脱出ドアが設けられている。この非常脱出ドアは、ドアパネルが閉じた状態で列車がプラットホームの定位置に停止しない場合やドアが故障した場合等の緊急時に乗客がプラットホーム上に避難できる避難路を確保するためのものである。
【0005】
このように戸袋パネル91内にドアパネル95が完全に収納されるタイプのものに、非常脱出ドアを備えると設置スペース上の制約がでてくるので、非常脱出ドアを仕切り壁に設けるものでは、戸袋パネルをドアパネルよりも小幅にし、戸袋パネルの戸尻側にドアパネルが通過可能な開口を設け、ドアパネルが開いたときに戸袋パネルからドアパネルの戸尻が突出する構成とすることにより、ドアパネルの必要幅を確保しつつ戸袋パネル間の避難路においても必要幅を確保するようにしたものが提案されている。
【特許文献1】特開2001−164833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記の如く戸袋パネル91の戸尻側に開口を有する構成のものでは、以下のような問題が生ずる。すなわち、ドアパネル95が乗降通路を閉鎖する閉じ位置にあるときには、ドアパネル95の戸尻が戸袋パネル91内に入り込むために、戸袋パネル91内部が前記開口を通して外部に露出された状態となる。プラットホームドア装置は、プラットホームの軌道側縁部に沿って設置されるため、戸袋パネル91内に前記開口から雨水などが浸入し、戸袋パネル91内の開閉駆動用機器に悪影響を与える。そのため前記開口をモヘヤや、ゴムシートなどの弾性部材で塞ぐことが考えられるが、このような構成では、雨水などの浸入をある程度防止することは出来ても、昆虫等の小動物の侵入までは防止できず、戸袋パネル91内に収容された開閉駆動用機器に悪影響を与えることが心配される。
【0007】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ドアパネルが戸袋パネルを貫通する形態のプラットホームドア装置において、ドアパネルの開閉の妨げにならないようにしつつ戸袋パネル内を外部と遮断することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、プラットホームの軌道側縁部に沿って所定の間隔を置いて配置される複数の戸袋パネルと、前記戸袋パネルの戸先側に位置する乗降通路を閉じる閉じ位置と前記乗降通路を開放する開き位置との間を往復動する引戸式のドアパネルと、隣り合う前記戸袋パネルの戸尻側端部同士を繋ぐ仕切りパネルとを備え、前記戸袋パネルのドア開閉方向の幅が前記ドアパネルのドア開閉方向の幅よりも小さく、前記閉じ位置で前記ドアパネルの戸尻が前記戸袋パネル内に入り込む一方、前記開き位置で前記ドアパネルの戸尻が前記戸袋パネルの戸尻側端部の開口からこの戸袋パネルの外部へ突出するように構成されたプラットホームドア装置を前提として、前記ドアパネルが前記閉じ位置にあるときに前記戸袋パネルの戸尻側端部の前記開口を塞ぐ一方、前記ドアパネルの戸尻が前記開き位置へ向かって前記開口を通過する際にこの開口を開放する開閉部材が設けられ、前記開閉部材は、前記戸袋パネルの戸尻側端部に前記開口を閉じる位置と開放する位置との間で回動可能に設けられた開き戸部材によって構成されているものである。
【0009】
このプラットホームドア装置では、ドアパネルが閉じ位置にあるときには、ドアパネルの戸尻が戸袋パネル内へ没入されて、開閉部材である開き戸部材が戸袋パネルの戸尻側端部の開口を塞ぐ。このため、乗降通路が閉じられているときには戸袋パネル内部が露出されない。このときドアパネルの戸尻が戸袋パネル内に入り込んでいるので、前記開き戸部材が邪魔になることはない。一方、ドアパネルが開き位置へ向かって移動する際に、ドアパネルの戸尻が戸袋パネルの開口を通過するときに開き戸部材が回動して戸袋パネルの開口を開放する。このため、ドアパネルが戸袋パネルの開口から突出するのが許容される。したがって、このときにも開閉部材が邪魔になることはない。
【0010】
ここで、前記戸袋パネルの開口がこの戸袋パネルの厚みに応じてその一方の縁部に厚み方向に段差を有する形状をなしている場合には、前記開き戸部材が前記開口の段差を境にして上下に分割され、分割された前記各開き戸部材の回動支軸が、それぞれ前記厚み方向に位置ずれした状態で前記戸袋パネルの前記一方の縁部に設けられている構成とすることができる。
【0011】
この構成では、開き戸部材が複数に分割されることで、その回動支軸も複数に分割することができ、これにより分割された各回動支軸をそれぞれ開口の縁部に沿って配置することができる。このため、戸袋パネルの厚みが段差を有するように上下で異なり、それに伴って開口幅が上下で異なっていても、分割された各開き戸部材の大きさをそれぞれ開口幅に合わせて形成することにより、開き戸部材の回動範囲が拡大されるのを抑制することができる。この結果、プラットホームドア装置をその分だけプラットホームの建築限界に寄せて配置することが可能となる。そして、例えば、開口幅が上側で小さい場合には、その分戸袋パネルの上側厚みを薄くすることができる。このような場合には、上側ほどプラットホームの軌道側縁部から離れたところに設定される建築限界に対して有効となり、その分、プラットホームドア装置を軌道側縁部に近づけられるので、幅の狭いプラットホームに有効となる。しかも、雨が降りこみ易いプラットホームの軌道側縁部に近づけて設置しても、開き戸部材が設けられることで戸袋パネルの内部が雨水に曝されるのを有効に防止することができる。
【0012】
前記開き戸部材は、前記ドアパネルが前記開き位置に向かって移動する際にこのドアパネルの戸尻と当接することにより前記開口を開放する構成とするのが好ましい。
【0013】
そして、この構成において、前記開き戸部材にこの開き戸部材を閉じる方向に回動付勢力を付与する回動付勢部材と、前記開き戸部材及び前記ドアパネルの一方に設けられ且つ前記開き戸部材及び前記ドアパネルの他方に当接することで前記回動付勢力に抗して前記開き戸部材を前記ドアパネルから離間した状態に保持する支持部材とが設けられ、前記開き戸部材及び前記ドアパネルの他方と当接する前記支持部材の先端部には、前記ドアパネルの開閉移動に応じて転動する回転体が設けられている構成とすることができる。
【0014】
この構成では、回動付勢部材によって開き戸部材を確実に閉じておくことができる一方、ドアパネルによって開き戸部材が開放されているときには、この開き戸部材がドアパネルから離間した状態に保持されるので、開き戸部材とドアパネルとの衝突音(がたつき音)が生ずるのを抑止することができる。しかも、支持部材の先端部に回転体を設けるようにしたので、ドアパネルに傷が付くのを抑制することができる。
【0015】
前記ドアパネルが前記閉じ位置にあるときに前記開口を塞ぐように前記開き戸部材を前記戸袋パネルに吸着させる吸着部材が配設されている構成とすれば、吸着部材で開き戸部材を吸着するので、開き戸部材を閉じる方向に付勢する付勢力が小さな場合においても、開き戸部材が開口を閉じた状態に確実に保持することができる。また、開き戸部材を閉じる方向の付勢力を小さくできるので、開き戸部材が戸袋パネルと衝突する力を低減でき、磨耗するのを低減することができる。
【0016】
そして、前記吸着部材が磁性ゴムからなる構成とすれば、開き戸部材と戸袋パネルとの衝突音の発生を緩和することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、戸袋パネルの戸尻側端部の開口を開閉する開閉部材を設けるようにしたので、ドアパネルの開閉往復移動の支障をきたすことなく、戸袋パネル内部が露出するのを防止することができる。この結果、戸袋パネル内部に小動物が入り込んだり、内部が雨曝しになったりするのを抑止できるので、プラットホームドア装置が誤作動したり短命化するのを有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係るプラットホームドア装置10をホーム側から軌道側に向かって見た正面図である。図2は、本プラットホームドア装置10を上から見たものを概念的に表している。両図に示すように、本プラットホームドア装置10は、プラットホームの軌道側縁部に沿って所定の間隔を置いて配置される複数の戸袋パネル12,12と、隣り合う戸袋パネル12,12同士の間に配置される仕切りパネル14と、各戸袋パネル12,12を貫通した状態で配置される引戸式の複数のドアパネル16,16とを備えている。そして、これらドアパネル16,16を開閉することで、列車の乗降客が通る乗降通路20,20を開閉するようになっている。
【0020】
同図では、戸袋パネル12が2つ配置されたものを示しているが、プラットホームにはこれらが軌道側縁部に沿って一列に多数配置されることとなる。
【0021】
各戸袋パネル12は図外のアンカーボルトを介しプラットホームに凹設されたピット(図示省略)に立設されている。戸袋パネル12は上下に長い縦長に形成されるともに、軌道に沿う方向(図1における左右方向)にドアパネル16が貫通可能な筒形となっている。この軌道に沿う方向における戸袋パネル12の幅は、ドアパネル16の幅よりも短い長さに形成されている。このため、ドアパネル16は、開閉移動中に戸袋パネル12からドア開閉方向両側に突出した状態となる。
【0022】
ドアパネル16は、開き位置と閉じ位置との間を軌道に沿う方向に往復移動する。開き位置とは、ドアパネル16の戸先16aが戸袋パネル12の戸先側端部12aの近傍に位置するとともにドアパネル16の戸尻16bが戸袋パネル12の戸尻側端部12bから突出し、戸袋パネル12よりも戸先側に位置する乗降通路20を開放する位置をいう。一方、閉じ位置とは、ドアパネル16の戸尻16bが戸袋パネル12の戸尻側端部12bの内側に入り込むとともにドアパネル16の戸先16aが戸袋パネル12よりも戸先側に突出し、前記乗降通路20を閉じる位置をいう。
【0023】
図1に示すように両戸袋パネル12,12は左右対称の構成となっている。即ち、左側の戸袋パネル12では、戸先側端部12aとしての左端部からドアパネル16が左方向に移動することで乗降通路20を閉じるようになっている。一方、右側の戸袋パネル12では、戸先側端部12aとしての右端部からドアパネル16が右方向に移動することで乗降通路20を閉じるようになっている。左側のドアパネル16では右端部が戸尻16bとなっており、右側のドアパネル16では左端部が戸尻16bとなっている。
【0024】
両戸袋パネル12,12は、両ドアパネル16,16が開き位置に来たときにその戸尻16b,16b同士が互いに干渉しないような間隔に設定されている。
【0025】
仕切りパネル14は、矩形パネルからなり、両戸袋パネル12,12の戸尻側端部12b,12b同士を繋ぐように配置されている。これにより、プラットホームは軌道側と乗降客の待機場所としてのホーム側とに仕切られる。
【0026】
仕切りパネル14は、開き戸式の非常脱出ドアとして構成されている。つまり、仕切りパネル14は、右側の戸袋パネル12における左端部(戸尻側端部)12bに設けられた支軸22(図5、図6参照)を中心としてホーム側に回動するようになっており、非常時等に避難路を開放する。例えば、列車の乗降ドアがプラットホームドア装置10のドアパネル16に対応しない状態で列車が停止した場合やドアパネル16が故障した場合等に、仕切りパネル14を回動することで避難路を開放する。なお、図示省略しているが仕切りパネル14にはロックが設けられていて、このロックを解除することにより、仕切りパネル14を回動可能としている。
【0027】
次にドアパネル16および戸袋パネル12の構成について詳しく説明する。左右のドアパネル16及び戸袋パネル12の構成は左右対称であるので、ここでは、図1における右側のドアパネル16及び戸袋パネル12の構成について図3〜図8を参照して説明する。
【0028】
ドアパネル16は、図3に示すように、ドアパネル本体25と、このドアパネル本体25に取り付けられた支持板26と、この支持板26に固定されたリニアレール27と、ドアパネル本体25に取り付けられたリニアガイドカバー28とを備えている。
【0029】
ドアパネル本体25は、矩形パネルからなり、このドアパネル本体25の上部にはガラスパネル30が嵌め込まれている。
【0030】
支持板26は、ドアパネル本体25における軌道側面の下部に横方向即ちドア開閉方向に延びるように取り付けられている。この支持板26の戸尻側の端部26aは、ドアパネル本体25よりも所定長さだけドア閉方向に突出されている。
【0031】
リニアレール27は、支持板26の全長に亘ってドア開閉方向に延びるように配設され、このリニアレール27は、図4に示すように支持板26から軌道側に向かって突出する形状に構成されている。そして、リニアレール27は、突出方向の中間部において上下両側が窪んだ断面形状に形成されている。なお、両ドアパネル16,16の支持板26がそれぞれ異なる高さに取り付けられることで、両ドアパネル16,16が開き位置に移動しても両支持板26,26の戸尻側端部26a,26aが互いに干渉するのが防止されている。
【0032】
ドアパネル本体25の下面部にはその全長に亘ってラック32が設けられている。このラック32は、後述するモータ40のピニオンギア41に噛み合わされるものである。
【0033】
戸袋パネル12は、軌道に沿う方向(ドア開閉方向)における両端部12a,12bが開口した筒形に形成されるものである。そして、図4に示すように、戸袋パネル12は、ホーム側壁部12eが平板状に形成される一方、軌道側壁部12fがその高さ方向の中間部で段差状に折り曲げられて形成されることで、この段差部の上側部12cと段差部の下側部12dとはドア厚方向の厚みが異なる形状となっている。このように、戸袋パネル12の上側部12cが下側部12dに対してホーム側に凹んだ形状に形成されることで、戸袋パネル12内に所定の機器を収容できる厚みを確保しつつ、プラットホームの建築限界Lにより近づけて設置できるようになっている。
【0034】
戸袋パネル12の戸尻側端部12bの開口49は、戸袋パネル12の形状に応じた形状となっている。つまり、開口49のドア厚方向の幅が上側部と下側部とで異なっていて、上側の開口幅が下側の開口幅よりも小さくなっている。
【0035】
戸袋パネル12には、ドアパネル16を開閉駆動するためのドア開閉用機器36と、ドアパネル16の開閉移動を許容しながらドアパネル16を支持するドア支持機構38とが収容されている。
【0036】
ドア開閉用機器36は、モータ40と、このモータ40の出力軸に設けられたピニオンギア41と、モータ40の制御を行う図略のコントローラとを備えている。このピニオンギア41には、減速機構が含まれている。
【0037】
モータ40は、戸袋パネル12内の下端部にピニオンギア41が戸先側に位置する姿勢で設置されていて、ピニオンギア41はドアパネル本体25の下端部に設けられたラック32に噛み合わされている。
【0038】
コントローラは列車の入線に合わせて駅の集中管理システム等から送信される制御信号に基づいてモータ40の駆動制御を行うように構成されている。
【0039】
一方、ドア支持機構38は、ブラケット45とスライドブロック46とローラガイド47とを備えている。
【0040】
ブラケット45は、スライドブロック46を支持するためのものであり、戸袋パネル12の底部に立設されている。このブラケット45は、図5に示すように、戸袋パネル12内における軌道寄りに配置され、ドア開閉方向の所定長さに亘って形成されるものである。そして、このブラケット45には、起立した平板状の支持部45aが形成されていて、この支持部45aにおけるドア開閉方向の両端部にスライドブロック46が締結固定されている。
【0041】
スライドブロック46は、リニアレール27をガイドするためのものであり、ドア開閉方向に所定間隔を置いて並設される一対のものである。各スライドブロック46の側部には、ドア開閉方向に延びるガイド溝が形成されている。このガイド溝は、リニアレール27をガイドするための溝であり、奥側が上下に拡大された断面形状に形成されている。そして、ガイド溝の一方の端部からリニアレール27を挿入することでリニアレール27がガイド溝に係合し、リニアレール27が外れることなくその長さ方向に摺動可能となっている。
【0042】
ローラガイド47は戸袋パネル12の上側部12cに収容されるものであり、このローラガイド47は、戸袋パネル12の上框部に回転自在に設けられた一対のローラからなり、ドアパネル本体25をその厚み方向に挟持することでドアパネル16を支持している。ローラガイド47は、図3及び図5に示すように、戸袋パネル12内の戸先側端部12aの近傍に配置されている。なお、図5ではローラガイド47を仮想線にて示している。
【0043】
ブラケット45及びスライドブロック46は、図4に示すように、戸袋パネル12の下側部12dに収容されている。つまり、戸袋パネル12の下側部12dは、ブラケット45、スライドブロック46、モータ40等を収容できるような幅に形成される一方、上側部12cはそれよりも薄い幅に形成されている。
【0044】
前記リニアガイドカバー28は、ドアパネル本体25の軌道側面に取り付けられるものである。このリニアガイドカバー28は、支持板26、リニアレール27及びスライドブロック46を上方から覆うためのカバーであり、図7に示すように、ドア開閉方向に細長い形状のものである。リニアガイドカバー28は、ドアパネル本体25の軌道側面から軌道側に向かってブラケット45の支持部45aを超えるまで斜めやや下方に突出する上面部28aとこの上面部28aの先端から垂下した側面部28bとを備えている。また、リニアガイドカバー28の戸尻側の端部28cは、ドアパネル本体25から離れるに従って戸先側に向かうように傾斜しており、支持板26、リニアレール27及びスライドブロック46を側方から覆っている。
【0045】
図5及び図6に示すように、戸袋パネル12の戸尻側端部12bには、その開口49を開閉するための開閉部材の一例としての開き戸部材51,52が設けられている。この開き戸部材は、図8にも示すように、上側開き戸部材51と下側開き戸部材52とに上下に2分割されている。上側開き戸部材51は、戸袋パネル12の上側部12cに対応する前記開口49の上側部を開閉し、下側開き戸部材52は、戸袋パネル12の下側部12dに対応する前記開口49の下側部を開閉する。
【0046】
上側開き戸部材51は、図6に示すように、戸袋パネル12の軌道側壁部12fにおける上側部に設けられた鉛直に延びる回動支軸54回りに回動可能となっている。一方、下側開き戸部材52は、図5に示すように、戸袋パネル12の軌道側壁部12fにおける下側部に設けられた鉛直に延びる回動支軸55回りに回動可能となっている。したがって、上側開き戸部材51及び下側開き戸部材52の回動軸は、互いに水平方向に位置ずれしている。
【0047】
両開き戸部材51,52の回動支軸54,55が軌道側壁部12fに設けられているのは、戸袋パネル12のホーム側に仕切りパネル14が配設されるために、開放時に仕切りパネル14と干渉するのを回避するためである。なお、両開き戸部材51,52は、開放角度を規制する手段を設けた上でホーム側壁部12eの回動軸回りに回動するように配設してもよい。
【0048】
各開き戸部材51,52には、回動付勢部材の一例としてのトーションバネ57,58と、支持部材61,62とが設けられている。トーションバネ57,58は回動支軸54,55に設けられるものであり、このトーションバネ57,58は、開き戸部材51,52を閉方向に回動付勢するものである。つまり、トーションバネ57,58は、開き戸部材51,52に閉方向の回動付勢力を付与する。一方、支持部材61,62は開き戸部材51,52の内面に突設されるものであり、その先端部に回転体としての車輪61a,62aが回動自在に設けられている。この車輪61a,62aはゴム製のものである。
【0049】
図5に示すように、下側開き戸部材52の支持部材62は、下側開き戸部材52が閉じられた状態でリニアガイドカバー28の戸尻側端部28cにおける軌道側の部位に向かって突設している。このため、ドアパネル16が閉方向に移動したときには、リニアガイドカバー28は支持部材62の車輪62aとだけ当接し、下側開き戸部材52とは当接しないようになっている。そして、ドアパネル16の移動に伴って、車輪62aはリニアガイドカバー28の戸尻側端部28cから側面部28bに亘って接触しながら転動する。このとき、下側開き戸部材52は、トーションバネ58の回動付勢力に抗しながらもリニアガイドカバー28に対して所定の間隔に維持される。
【0050】
図6に示すように、上側開き戸部材51の支持部材61は、上側開き戸部材51が閉じられた状態でドアパネル本体25の戸尻における軌道側の部位に向かって突設している。このため、ドアパネル16が閉方向に移動したときには、ドアパネル本体25は支持部材61の車輪61aとだけ当接し、上側開き戸部材51とは当接しないようになっている。そして、ドアパネル16の移動に伴って、車輪61aはドアパネル本体25の戸尻から軌道側面に亘って接触しながら転動する。このとき、上側開き戸部材51は、トーションバネ57の回動付勢力に抗しながらもドアパネル本体25に対して所定の間隔に維持される。
【0051】
戸袋パネル12の開口49における縁部には、上側部12c及び下側部12dそれぞれにおいて開き戸部材51,52を戸袋パネル12に吸着させる吸着部材64,65がそれぞれ配設されている。これら各吸着部材64,65は、各開き戸部材51,52が閉じたときにこの開き戸部材51,52の先端部が当接する位置に配置されている。吸着部材64,65はそれぞれ磁性ゴムからなる。したがって、吸着部材64,65は、開き戸部材51,52を戸袋パネル12に吸引する機能を有するとともに、衝突を緩和する緩衝材としての機能を有する。
【0052】
図5及び図6に示すように、仕切りパネル14は、開き戸部材51,52よりもホーム側に配設されている。このため、開き戸部材51,52が開閉動作しても仕切りパネル14と干渉することはない。逆に、開き戸部材51,52が仕切りパネル14の開閉動作の邪魔になることもない。
【0053】
次に、プラットホームドア装置10の動作について説明する。
【0054】
まず、列車が入線していない通常時においては、各ドアパネル16,16は閉じ位置にあり乗降通路20,20を閉じている。具体的には、図1における左側のドアパネル16が左方へ位置付けられる一方、図1における右側のドアパネル16が右方へ位置付けられ、両ドアパネル16,16の戸尻16b,16bが戸袋パネル12,12の戸先側端部12a,12aの内側に入り込んでいる。これにより、プラットホームの乗客は軌道側に出ることはできず、乗客の安全が確保されている。このとき、ドアパネル16の戸尻16bが戸袋パネル12内に入り込んでいるので、ドアパネル16と上側開き戸部材51及び下側開き戸部材52とはそれぞれ離間しているので、両開き戸部材51,52はトーションバネ57,58の付勢力を受けることで閉じられている。またこのとき、両開き戸部材51,52は、吸着部材64,65に吸着されることで戸袋パネル12の開口49を閉じた状態に保持されている。
【0055】
そして、列車が入線すると、集中管理システム等から送信された制御信号が各戸袋パネル12内のコントローラに入力され、モータ40を駆動する。これにより、ドアパネル16のラック32と噛み合うピニオンギア41が回転してドアパネル16を移動させ、これにより乗降通路20が開放される。このとき、ドアパネル16のリニアガイドカバー28が下側開き戸部材52に突設された支持部材62の車輪62aと当接するとともにドアパネル本体25が上側開き戸部材51に突設された支持部材61の車輪61aと当接する。これにより、下側開き戸部材52の車輪62aがリニアガイドカバー28に沿って転動することで下側開き戸部材52がトーションバネ58の付勢力に抗して開放されるとともに、上側開き戸部材51の車輪61aがドアパネル本体25に沿って転動することで上側開き戸部材51がトーションバネ57の付勢力に抗して開放される。この結果、両開き戸部材51,52がドアパネル16の移動の邪魔になることはないので、ドアパネル16がスムーズに乗降通路20を開放する。
【0056】
そして、乗降が終了して列車の乗降扉が閉じられるのに合わせてコントローラに制御信号が入力されると、ドアパネル16が閉じ位置に向かって移動して乗降通路20が閉鎖される。このとき、開き戸部材51,52がトーションバネ57,58の付勢力によって回動して戸袋パネル12の開口49を塞ぐ。
【0057】
一方、列車が入線しても所定位置に停止しない等の非常時には仕切りパネル14のロックを解除して仕切りパネル14をホーム側へ回動することにより、避難路を開放することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係るプラットホームドア装置10では、ドアパネル16が閉じ位置にあるときには、ドアパネル16の戸尻16bが戸袋パネル12内へ没入されて、開き戸部材51,52が戸袋パネル12の戸尻側端部12bの開口49を塞ぐ。このため、乗降通路20が閉じられているときには戸袋パネル12内部が露出されない。このときドアパネル16の戸尻16bが戸袋パネル12内に入り込んでいるので、開き戸部材51,52が邪魔になることはない。一方、ドアパネル16が開き位置にあるときには、ドアパネル16の戸尻16bが戸袋パネル12から突出するのに伴って、開き戸部材51,52が戸袋パネル12の開口49を開放する。このため、戸袋パネル12の開口49がドアパネル16自身によって概ね塞がれるので、戸袋パネル12内部は露出されない。しかもこのとき、開き戸部材51,52がドアパネル16の開放移動の邪魔になることはない。
【0059】
したがって、ドアパネル16の開閉往復移動の支障をきたすことなく、戸袋パネル12内部が露出するのを防止することができる。この結果、戸袋パネル12内部に小動物が入り込んだり、雨曝しになったりするのを抑止できるので、プラットホームドア装置10が誤作動したり短命化するのを有効に防止することができる。
【0060】
また、本実施形態では、開き戸部材は上下に2分割されているので、戸袋パネル12の厚みが上下で異なっていて段差状になっていても、分割された開き戸部材51,52をそれぞれ戸袋パネル12の厚みに対応した構成とすればいいので、開き戸部材51,52の回動範囲が拡大されるのを抑制することができる。この結果、その分だけプラットホームドア装置10をプラットホームの建築限界Lに寄せて配置することが可能となる。また、戸袋パネル12の厚みが上側で薄ければ、上側ほどプラットホームの軌道側縁部から離れたところに設定される建築限界Lに対して有効となり、その分、プラットホームドア装置10を軌道側縁部に近づけられるので、幅の狭いプラットホームに有効となる。しかも、雨が降りこみ易いプラットホームの軌道側縁部に近づけて設置しても、開き戸部材51,52が設けられることで戸袋パネル12の内部が雨水に曝されるのを有効に防止することができる。
【0061】
また、本実施形態では、トーションバネ57,58で開き戸部材51,52を閉じる方向に付勢するとともに、開き戸部材51,52に支持部材61,62を設けるようにしているので、開き戸部材51,52を確実に閉じておくことができる一方、ドアパネル16によって開き戸部材51,52が開放されているときには、この開き戸部材51,52がドアパネル16から離間した状態に保持されるので、開き戸部材51,52とドアパネル16との衝突音(がたつき音)が生ずるのを抑止することができる。しかも、支持部材61,62の先端部に車輪61a,62aを設けるようにしたので、ドアパネル16に傷が付くのを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、戸袋パネル12に吸着部材64,65を配設しているので、開き戸部材51,52を閉じる方向に付勢する付勢力が小さな場合においても、開き戸部材51,52が開口49を閉じた状態に確実に保持することができる。また、開き戸部材51,52を閉じる方向の付勢力を小さくできるので、開き戸部材51,52が戸袋パネル12と衝突する力を低減でき、磨耗するのを低減することができる。
【0063】
しかも吸着部材64,65を磁性ゴムで構成するようにしたので、開き戸部材51,52と戸袋パネル12との衝突音の発生を緩和することができる。
【0064】
尚、本実施形態では、ドアパネル16はラックアンドピニオンによる開閉駆動としたが、これに限られるものではなく、例えばモータの出力軸に駆動プーリを取り付け、この駆動プーリと従動プーリとの間にタイミングベルトを架け渡し、このタイミングベルトを周回させることでドアパネル16を開閉駆動する構成としてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、上側開き戸部材51及び下側開き戸部材52はそれぞれ鉛直方向に延びる回動支軸54,55回りに回動する構成としたが、これに代え、両開き戸部材は水平方向に延びる支軸回りに回動するようにしてもよい。この場合において上向きに開放する開き戸部材については自重で閉方向の付勢力が発生するためにトーションバネ等の付勢手段を省略することができる。このとき、ダンパー等で開き戸部材の閉速度を調整するのが好ましい。
【0066】
また、本実施形態では、支持部材61,62を開き戸部材51,52の裏面に設けるようにしたが、これに代え、支持部材をドアパネル16の戸先16a、即ちドアパネル本体25の戸先及びリニアガイドカバー28の戸先側の端部28cに設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態に係るプラットホームドア装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】前記プラットホームドア装置を上から見たものを概念的に示す図である。
【図3】図1における右側の戸袋パネル及びドアパネルを示す図である。
【図4】前記右側の戸袋パネルを戸尻側から見た断面図である。
【図5】図4のV−V線における断面図である。
【図6】図4のVI−VI線における断面図である。
【図7】リニアガイドカバーを示す斜視図である。
【図8】前記右側の戸袋パネルを戸尻側から見た側面図である。
【図9】従来のプラットホームドア装置の構成を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0068】
12 戸袋パネル
12b 戸尻側端部
14 仕切りパネル
16 ドアパネル
16b 戸尻
20 乗降通路
49 開口
51 上側開き戸部材(開き戸部材の一例)
52 下側開き戸部材(開き戸部材の一例)
57 トーションバネ(回動付勢部材の一例)
58 トーションバネ(回動付勢部材の一例)
61 支持部材
61a 車輪(回転体の一例)
62 支持部材
62a 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームの軌道側縁部に沿って所定の間隔を置いて配置される複数の戸袋パネルと、前記戸袋パネルの戸先側に位置する乗降通路を閉じる閉じ位置と前記乗降通路を開放する開き位置との間を往復動する引戸式のドアパネルと、隣り合う前記戸袋パネルの戸尻側端部同士を繋ぐ仕切りパネルとを備えたプラットホームドア装置において、
前記戸袋パネルのドア開閉方向の幅が前記ドアパネルのドア開閉方向の幅よりも小さく、前記閉じ位置で前記ドアパネルの戸尻が前記戸袋パネル内に入り込む一方、前記開き位置で前記ドアパネルの戸尻が前記戸袋パネルの戸尻側端部の開口からこの戸袋パネルの外部へ突出するように構成されていることを特徴とするプラットホームドア装置。
【請求項2】
前記仕切りパネルが、非常脱出ドアとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプラットホームドア装置。
【請求項3】
前記仕切りパネルは、前記戸袋パネルの戸尻側端部に設けられた支軸を中心としてホーム側に回動可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載のプラットホームドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−120194(P2009−120194A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323842(P2008−323842)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【分割の表示】特願2004−187507(P2004−187507)の分割
【原出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】