説明

プラント監視制御装置

【課題】更新用プログラムの事前検証が容易にでき、かつ更新用プログラムによる実行運転と先の実行プログラムによる実行運転の切替えが迅速にできるプラント監視制御装置の提供。
【解決手段】プラントを制御するコントローラと、通信回線を介して接続され運転操作員による監視操作を行う監視操作卓と、実行系と待機系のメモリ空間とを有する分散型制御システム構成のプラント監視制御装置において、待機系のメモリ空間に更新用プログラム・パラメータのローディングを行うローディング機能と、更新用プログラム・パラメータによるシミュレーション試行後に、実行系のメモリ空間に存在する実行用プログラム・パラメータに基づく実行運転から更新用プログラム・パラメータによる実行運転に切替えたり、逆に更新用プログラム・パラメータによる実行運転から先の実行用プログラム・パラメータによる実行運転に切替えたりする切替機能を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造プラント向け監視制御装置に関わり、特に制御に関するプログラムの構造・変更等の保守を行うための機能を持つプラント監視制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラント監視制御装置は、製造プラントの運転を監視・制御するオートメーション機器として広く用いられる。プラント運転・制御方法は製造プラント毎に異なるため、上記監視制御装置に制御に関するプログラムやパラメータをローディングすることによって切替えている。
【0003】
プログラムやパラメータのローディングに関しては、特許文献1、特許文献2に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−178157号公報
【特許文献2】特2006−202233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1また特許文献2では、制御装置内のパラメータを外部装置に取り出して保存し、必要に応じて切替えることができるようにしている。
【0006】
しかしながら、制御に関するプログラムが変更/更新されると、パラメータの意味付けがことなってくる可能性があり、さらに変更したパラメータで正しく動作するのかが事前に検証できず、安心して切替えができないという問題点があった。
【0007】
また、監視制御装置内の制御に関する更新用プログラムとパラメータは、高機能化に伴いサイズが大きくなっており変更前のプログラムに戻す際に、バックアップファイルからのローディング時間に数10分〜数時間の多大な時間を必要とする問題点があった。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑み、更新用プログラムの事前検証が容易にできるプラント監視制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
また、更新用プログラムによる実行運転と先の実行プログラムによる実行運転の切替えが迅速にできるプラント監視制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、プラントを制御するコントローラと、前記コントローラに通信回線を介して接続され、運転操作員による監視操作を行う監視操作卓と、前記コントローラと前記監視操作卓にそれぞれ設けた実行系と待機系のメモリ空間とを有する分散型制御システム構成のプラント監視制御装置において、前記待機系のメモリ空間に更新用プログラム・パラメータのローディングを行うローディング機能と、前記更新用プログラム・パラメータによるシミュレーション試行後に、前記実行系のメモリ空間に存在する実行用プログラム・パラメータに基づく実行運転から更新用プログラム・パラメータによる実行運転に切替えたり、逆に更新用プログラム・パラメータによる実行運転から先の実行用プログラム・パラメータによる実行運転に切替えたりする切替機能が備わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、更新用プログラム・パラメータによるシミュレーション試行により、実行運転が正しく動作するか否かの事前に検証ができる。また、更新用プログラム・パラメータによる実行運転と先の実行用プログラム・パラメータによる実行運転との切替えが迅速に行なわれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面を用いて説明する。
【0013】
本発明が適用されるプラント監視制御装置は、図1に示すような構成を備えている。
【0014】
図1において、オペレータコンソール(監視操作卓)100は、通信ネットワークを含む通信回線を介してマルチコントローラ200(コントローラ)と接続される。
【0015】
マルチコントローラ200はプラントで使用しているフィールド機器203と接続され、プラントの制御を実施しているマルチコントローラ200の監視、操作を実施する。
【0016】
制御に関するプログラム・パラメータの改造、変更を実施する場合、オペレータコンソール100内に格納された制御に関するプログラム・パラメータをオペレータコンソール100及びマルチコントローラ200内のメモリ空間へ転送することで実現する。
【0017】
本発明の実施例の監視制御装置では、図2で示すオペレータコンソール100の補助記憶装置103内の1〜Nのエリアに制御に関する更新用プログラム・パラメータを格納して置く。
【0018】
そのエリア内の1つを選択して待機系であるオペレータコンソール100内の第2メモリ空間102とマルチコントローラ200内の第2メモリ空間202へ転送する機能を有する。
【0019】
こうして、オペレータコンソール100(監視操作卓)の待機系の第2メモリ空間102には、監視操作卓用の更新用プログラム・パラメータがローディング(装填)される。マルチコントローラ200の待機系の第2メモリ空間202には、コントローラ用の更新用プログラム・パラメータがローディング(装填)される。
【0020】
オペレータコンソール100、マルチコントローラ200には、補助記憶装置103内の1〜Nのエリアに格納されている更新用プログラム・パラメータを第2メモリ空間102、第2メモリ空間202にローディングするローディング機能が備えられている。
【0021】
これらの更新用プログラム・パラメータがローディング(装填)ときには、オペレータコンソール100及びマルチコントローラ200内の制御に関するプログラムは第1メモリ空間101及び第1メモリ空間201の実行系で動作しているため、プラント制御に影響は無い。
【0022】
また、本発明の実施例の監視制御装置では、オペレータコンソール100とマルチコントローラ200内の第1メモリ空間101,201及び第2メモリ空間102,202の制御に関するプログラム内容を補助記憶装置(記憶装置)103内の1〜Nのエリアにダンプする戻し機能を有する。
【0023】
すなわち、マルチコントローラ内の制御に関するパラメータ内容はプラント運転時に運転操作員が製造/運転が最適化されるように変更する可能性があります。また、積算情報(バルブの開閉回数や流量のトータル量)など、ローディング当初と運転終了後で相違のあるパラメータも多々あります。プラント運転時に標準のプログラム部分は変更されることはないが、制御に関するパラメータは運転に伴い変更されていく内容が含まれているため、バックアップの手段としてダンプ機能が存在する。
【0024】
なお、第2メモリ空間102,202が実行系となっている場合、第1メモリ空間101,201を待機系として切替える機能を有する。
【0025】
「実行系」「待機系」は各メモリ空間の、ある時点における状態を表すものであって、各メモリ空間は、実行系にも待機系にもなり得る。ただし、第1メモリ空間と第2メモリ空間が同時に実行系または待機系になることはないように構成する。
【0026】
図3で示すプラントのフィールド機器203から収集した各アナログ/デジタル情報(信号)は、プロセス入出力装置205に集められ、マルチコントローラ200内にプロセス入力データ206として取り込まれる。
【0027】
プロセス入力データ206は第1メモリ空間201及び第2メモリ空間202のプロセス入力エリア207及び210に同様の内容が展開され、それぞれの制御に関するプログラム・パラメータ208,211により演算され、演算結果がプロセス出力エリア209及び212に展開される。
【0028】
このとき、切替スイッチ204で実行系が選択されている第1メモリ空間201のプロセス出力エリア209がプロセス出力データ213としてプロセス入出力装置205に出力される。
【0029】
第1メモリ空間201のプロセス入力エリア207の内容とプロセス出力エリア209の内容は通信ネットワークを経由し、オペレータコンソール100内に取り込まれ、実行系である第1メモリ空間101の各プログラムによって処理実行される。
【0030】
第2メモリ空間202のプロセス入力エリア210の内容、プロセス出力エリア212の内容も同様に通信ネットワークを経由し、オペレータコンソール100内に取り込まれ、待機系である第2メモリ空間102の各プログラムによって処理実行される。
【0031】
第1メモリ空間201が実行系の場合、第1メモリ空間201の処理内容が実際のフィールド機器203への入出力の内容であり、第2メモリ空間202のプロセス出力内容は実際のフィールド機器203への入出力内容では無いため、プラント運転には影響を及ぼさない。
【0032】
プラント運転には影響を及ぼさない待機系である第2メモリ空間202、および待機系である第2メモリ空間102の処理内容が、更新用プログラムの事前検証である更新用プログラム・パラメータによるシミュレーション試行である。
【0033】
シミュレーションによる事前検証により、変更するパラメータで正しく動作するか否かが確認できるので、安心して更新用プログラム・パラメータに切替えることができる。
【0034】
オペレータコンソール100の第2メモリ空間102内の画面表示プログラムで待機系のシミュレーション試行の動作確認を実施する。この動作確認は、図4に示す画面表示機能の表示画面を運転操作員に監視して行なう。
【0035】
オペレータコンソール100の表示画面であるウィンドウ111,ウィンドウ113内の実行切替(切替表示域)112及び114を選択(クリック)することによりマルチコントローラ200内の切替スイッチ204及びオペレータコンソール100内の切替スイッチ104を切替ることができ、オペレータコンソール100及びマルチコントローラ200内の各プログラムを連携させて内容を瞬時に切替ることが可能となる。
【0036】
上記切替スイッチ204、切替スイッチ104は、オペレータコンソール100及びマルチコントローラ200の実行系と待機系の信号をソウト的に処理するソフト的切替機能手段で、瞬時に同期して切替る。このため、更新用プログラム・パラメータによるシミュレーション試行後に実行系から待機系に瞬時に移行されるので、プラント運転は停止することなく継続運転される。
【0037】
切替後、第2メモリ空間102,202は実行系に、第1メモリ空間101,201は待機系に変更され、切替スイッチ104及び204の現在の状態をウィンドウA111またはウィンドウB113のウィンドウ上部に表示する。
【0038】
図5で示すオペレータコンソール100の画面である110の中の第1メモリ105または第2メモリ106を選択し、107で示すダンプしたいエリアを107内の1〜Nの中から1つを選択し、ダンプ108またはローディング109を選択することにより図3で示す第1メモリ空間101,201または第2メモリ空間102,202の内容をダンプ及びローディングすることが可能となる。
【0039】
図6に本発明の一連の流れを示す。
【0040】
はじめにステップ300にて待機系のメモリ空間に対して制御に関する更新用プログラム・パラメータのローディングを実施する。
【0041】
ローディング後、ステップ301にてオペレータコンソール100でシミュレーション試行により待機系の動作を確認し、ステップ302にて待機系の更新用プログラムの動作が異常で有ればステップ300に戻り、再度待機系のメモリ空間に対して手直した更新用プログラムのローディングを実施する。
【0042】
動作が正常であれば、ステップ303にて実行切替を実施し、待機系の更新用プログラム・パラメータを実行系とする。このとき、ステップ304にて実行系に切替えられた制御に関する更新用プログラム・パラメータの動作が異常であれば、ステップ303に戻り再度先に使用した実行プログラムによる運転に切替られ、切替前の状態に戻すことが可能である。
【0043】
更新用プログラム・パラメータによる実行運転の動作に支障が生じたときは、先の実行プログラムによる運転に戻されるので、プラントは継続して運転される。
【0044】
更新用プログラム・パラメータによる実行運転と、実行用プログラム・パラメータによる実行運転との切替は、分散型制御システム構成するコントローラと監視操作卓の切替機能により同期して行なわれる。
【0045】
このため、わざわざ、記憶装置のエリアに格納した制御に関するプログラム・パラメータそのものは移動する必要がなく、実行系と待機系は即座に切替えることができるので、プラントの運転は途切れなく継続される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例に係わるもので、プラント監視制御装置を用いる分散型デジタル計装システムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施例に係わるもので、プラント監視制御装置を実現するためのハード/ソフト構成である。
【図3】本発明の実施例に係わるもので、プラント監視制御装置の切替論理図である。
【図4】本発明の実施例に係わるもので、プラント監視制御装置の制御監視画面表示である。
【図5】本発明の実施例に係わるもので、プラント監視制御装置のメモリ空間ダンプ・ローディング画面表示である。
【図6】本発明の実施例に係わるもので、プラント監視制御装置の処理の流れを説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
200…マルチコントローラ、100…監視操作卓、101…監視操作卓の実行系の第1メモリ空間、102…監視操作卓の待機系の第2メモリ空間、201…マルチコントローラの実行系の第1メモリ空間、202…マルチコントローラの待機系の第2メモリ空間、104…切替スイッチ(切替機能)、204…切替スイッチ(切替機能)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントを制御するコントローラと、前記コントローラに通信回線を介して接続され、運転操作員による監視操作を行う監視操作卓と、前記コントローラと前記監視操作卓にそれぞれ設けた実行系と待機系のメモリ空間とを有する分散型制御システム構成のプラント監視制御装置において、
前記待機系のメモリ空間に更新用プログラム・パラメータのローディングを行うローディング機能と、
前記更新用プログラム・パラメータによるシミュレーション試行後に、前記実行系のメモリ空間に存在する実行用プログラム・パラメータに基づく実行運転から更新用プログラム・パラメータによる実行運転に切替えたり、逆に更新用プログラム・パラメータによる実行運転から先の実行用プログラム・パラメータによる実行運転に切替えたりする切替機能が備わることを特徴とするプラント監視制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラント監視制御装置において、
前記監視操作卓は、前記実行用プログラム・パラメータによる実行運転、および前記更新用プログラム・パラメータによる試行の制御内容結果を表示する画面表示機能が備わることを特徴とするプラント監視制御装置。
【請求項3】
請求項1記載のプラント監視制御装置において
前記切替機能は、前記実行系、および前記待機系の信号をソウト的に処理するソフト的切替機能手段であることを特徴とするプラント監視制御装置。
【請求項4】
請求項1記載のプラント監視制御装置において、
前記監視操作卓は、監視操作卓用の複数の前記更新用プログラム・パラメータ、およびコントローラ用の複数の前記更新用プログラム・パラメータを記憶する記憶装置を有することを特徴とするプラント監視制御装置。
【請求項5】
請求項1記載のプラント監視制御装置において、
前記切替機能は、前記監視操作卓と、前記コントローラに備えられ、
双方の前記切替機能は、切替えが同期して行なわれることを特徴とするプラント監視制御装置。
【請求項6】
請求項4記載のプラント監視制御装置において、
前記監視操作卓と前記コントローラの前記実行系、および前記待機系に存在するそれぞれの前記更新用プログラム・パラメータが前記記憶装置に戻される戻し機能が備わることを特徴とするプラント監視制御装置。
【請求項7】
請求項2記載のプラント監視制御装置において、
前記画面表示機能の表示画面は切替表示域を有し、この切替表示域のクリックにより前記切替機能が作動することを特徴とするプラント監視制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−118518(P2008−118518A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301454(P2006−301454)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】