説明

プリプレグの製造装置

【課題】既存のホットメルト法用の設備を利用することが可能で、溶剤を用いることなく高粘度で低濃度の熱硬化性樹脂を簡単に繊維体に含浸せしめることが可能な極めて実用性に秀れたプリプレグの製造装置の提供。
【解決手段】繊維体1に、離型フィルム2に樹脂3を積層して成る樹脂シート4を積層して加熱することでプリプレグ5を製造するプリプレグの製造装置であって、搬送される前記繊維体1に積層される前記樹脂シート4を供給する樹脂シート供給機構6は、前記離型フィルム2を供給する離型フィルム供給部7と、前記離型フィルム2上に溶剤を含んだ前記樹脂3を塗布する樹脂塗布部8とで構成し、前記離型フィルム2に前記樹脂3を積層して成る樹脂シート4をロール状とすることなく前記繊維体1に積層するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の炭素繊維フィラメントを収束剤で収束した炭素繊維フィラメントの束(以下、繊維束または単に糸という。)を経糸及び緯糸として織成して成る織成繊維体(炭素繊維織物)や、上記糸を一方向に引き揃えて成る一方向繊維体は、例えばエポキシ樹脂等を均一に含浸せしめてプリプレグとし、このプリプレグを複数重ねて硬化成形して複合材料とすることにより、軽量且つ高強度を発現することから、特に炭素繊維織物から成る複合材料は航空機材料分野や車両分野などで幅広く利用されている。
【0003】
プリプレグの製造方法として近年一般的に用いられているのは、例えば特許文献1,2に開示されるように、上記繊維体をガイド部に沿って連続的に搬送しながら、この繊維体の片面若しくは両面に、離型フィルムに熱硬化性樹脂を積層して成る樹脂シートを積層して加熱・加圧することで樹脂を含浸せしめる所謂ホットメルト法である。
【0004】
このホットメルト法は、上記樹脂シートを別工程で製造し、繊維体と同様に巻回ロールに巻回しておき、繊維体及び樹脂シートを夫々巻回ロール等から引き出して積層し加熱含浸するだけで樹脂を繊維体に含浸できるため、工程数が少なく設備も簡易で済む等の利点がある。
【0005】
【特許文献1】特開平11−309716号公報
【特許文献2】特開2003−138041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ホットメルト法では、樹脂シートを別工程で製造しロール状にしておく必要があり、よって、離型フィルム上に塗布される樹脂は、塗布後、ロール状にした際に両脇から押し出されないように離型フィルムから流れ落ちない程度に固形状態を保つ必要がある。即ち、溶剤を含有せず且つ低温(常温)で高粘度のものである必要がある(離型フィルム上で固形状態を保てない樹脂はロール状にした際に離型フィルムから流れ落ちてしまうため、利用できない。)。
【0007】
ところで、粘度が高く(50Pa・s/30℃程度)且つ固形分濃度の低い(10%未満)熱硬化性樹脂の中には、複合材料とした場合に秀れた特性を発揮するものが少なくないが、このような粘度が高く且つ固形分濃度の低い熱硬化性樹脂は、以下のような理由によりホットメルト法を適用することが困難である。
【0008】
即ち、粘度が高いため、離型フィルムへの塗布が困難であり、粘度を低くするために溶剤を用いると、樹脂シートをロール状とした際に離型フィルムから脱落してしまう。また、溶剤により固形分濃度が更に低下するため、所定量の樹脂を繊維体に含浸させるためには繰り返し含浸工程を行う必要があり、極めて生産性が悪化する。更に、溶剤を含んだ樹脂を用いて形成されたプリプレグから成る複合材料は、溶剤の存在により機械的特性が悪化することが知られており、この点においても好ましくない。
【0009】
また、ホットメルト法以外のプリプレグの製造方法として、溶剤で希釈した熱硬化性樹脂中に繊維体を浸漬させることで繊維体に樹脂を含浸させて乾燥させる方法(所謂フリーディップ)も存在するが、この場合、低濃度であるために所定量の樹脂を含浸させるには長時間若しくは繰り返し樹脂中に浸漬させる必要があり、極めて生産性が悪化する。また、溶剤を用いるため、上記同様に機械的特性が悪化し好ましくない。
【0010】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、特殊な設備を用いる必要なく、既存のホットメルト法用の設備を利用することが可能で、溶剤を用いることなく高粘度で低濃度の熱硬化性樹脂を簡単に繊維体に含浸せしめることが可能な極めて実用性に秀れたプリプレグの製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
複数の繊維フィラメントを収束した経糸と緯糸とを織成して成る繊維体1若しくは複数の繊維フィラメントを収束した糸を一方向に引き揃えて成る繊維体1を連続的に搬送しながら該繊維体1に、離型フィルム2に樹脂3を積層して成る樹脂シート4を積層して加熱することで該樹脂3を含浸せしめてプリプレグ5を製造するプリプレグの製造装置であって、搬送される前記繊維体1に積層される前記樹脂シート4を供給する樹脂シート供給機構6は、前記離型フィルム2を供給する離型フィルム供給部7と、前記離型フィルム2上に溶剤を含んだ前記樹脂3を塗布する樹脂塗布部8とで構成され、この樹脂シート供給機構6は、前記離型フィルム2に溶剤を含んだ前記樹脂3を積層して成る樹脂シート4をロール状とすることなく前記繊維体1に積層するように構成されていることを特徴とするプリプレグの製造装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1記載のプリプレグの製造装置において、前記樹脂3として、粘度が0.5〜50Pa・s/30℃で且つ固形分濃度が10〜50%の熱硬化性樹脂が採用されていることを特徴とするプリプレグの製造装置に係るものである。
【0014】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の記載のプリプレグの製造装置において、前記樹脂3として、ポリイミド,ビスマレイミド若しくはポリアミドイミドが採用されていることを特徴とするプリプレグの製造装置に係るものである。
【0015】
また、請求項1記載のプリプレグの製造装置において、前記樹脂3として、熱可塑性樹脂が採用されていることを特徴とするプリプレグの製造装置に係るものである。
【0016】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載のプリプレグの製造装置において、前記樹脂シート供給機構6は、前記樹脂塗布部8によって前記離型フィルム2の上面に前記樹脂3が塗布された樹脂シート4を、前記樹脂3が前記離型フィルム2の上面に積層された状態のまま該樹脂3が前記繊維体1側となるように該繊維体1の下面に積層するように構成されていることを特徴とするプリプレグの製造装置に係るものである。
【0017】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載のプリプレグの製造装置において、前記樹脂塗布部8にはスリット部9が設けられ、このスリット部9の幅を調整することで樹脂の塗布量を制御し得るように構成されていることを特徴とするプリプレグの製造装置に係るものである。
【0018】
また、請求項6記載のプリプレグの製造装置において、前記樹脂塗布部8には、前記繊維体1の搬送速度に同期回転するロール体10と、このロール体10に設けられ該ロール体10と共に回転して前記スリット部9から前記樹脂3を前記離型フィルム2上に押し出す樹脂押出部11とが設けられていることを特徴とするプリプレグの製造装置に係るものである。
【0019】
また、請求項1〜7いずれか1項に記載のプリプレグの製造装置において、前記繊維体1に前記樹脂シート4が積層せしめられた状態で該繊維体1と該樹脂シート4とを加熱して該樹脂シート4の前記樹脂3から溶剤を除去する溶剤除去部12が設けられていることを特徴とするプリプレグの製造装置に係るものである。
【0020】
また、請求項8記載のプリプレグの製造装置において、前記溶剤除去部12の前記繊維体1の搬送方向下流側位置には、前記樹脂シート4の前記樹脂3を前記繊維体1に含浸せしめる樹脂含浸用の加熱部13が設けられていることを特徴とするプリプレグの製造装置に係るものである。
【0021】
また、請求項1〜9いずれか1項に記載のプリプレグの製造装置において、前記繊維フィラメントは炭素繊維フィラメントであることを特徴とするプリプレグの製造装置に係るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上述のようにしたから、特殊な設備を用いる必要なく、既存のホットメルト法用の設備を利用することが可能で、溶剤を用いることなく高粘度で低濃度の熱硬化性樹脂を簡単に繊維体に含浸せしめることが可能な極めて実用性に秀れたプリプレグの製造装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0024】
離型フィルム2上に溶剤を含む樹脂3を塗布した樹脂シート4を、ロール状とすることなくそのまま繊維体1に積層し加熱含浸を行うことができ、従って、樹脂シート4を別工程で製造する必要がない。
【0025】
また、樹脂シート4をロール状とすることなく、そのまま繊維体1に積層できるから、離型フィルム2上に樹脂3を塗布するに際し、この樹脂3に溶剤を含ませることができる。即ち、樹脂3に溶剤を含ませても樹脂3を離型フィルム2から脱落させることなく繊維体1に積層でき、高粘度で且つ固形分濃度が低い樹脂(例えば粘度が0.5〜50Pa・s/30℃で且つ固形分濃度が10〜50%の熱硬化性樹脂)であってもホットメルト法と同様に効率良く連続的に繊維体1に樹脂3を含浸せしめることが可能となる。
【0026】
また、樹脂シート4の製造と繊維体1への樹脂3の含浸を1つの装置を用いて行うことができ、それだけ作業を簡略化でき、品質の安定したプリプレグを製造可能となる。
【実施例】
【0027】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0028】
本実施例は、複数の炭素繊維フィラメントを収束した糸を一方向に引き揃えて成る繊維体1を連続的に搬送しながら該繊維体1に、離型フィルム2に樹脂3を積層して成る樹脂シート4を積層して加熱することで該樹脂3を含浸せしめてプリプレグ5を製造するプリプレグの製造装置であって、搬送される前記繊維体1に積層される前記樹脂シート4を供給する樹脂シート供給機構6は、前記離型フィルム2を供給する離型フィルム供給部7と、前記離型フィルム2上に溶剤を含んだ前記樹脂3を塗布する樹脂塗布部8とで構成され、この樹脂シート供給機構6は、前記離型フィルム2に溶剤を含んだ前記樹脂3を積層して成る樹脂シート4をロール状とすることなく前記繊維体1に積層するように構成されているものである。
【0029】
本実施例は樹脂3として、粘度が0.5〜50Pa・s/30℃で且つ固形分濃度が10〜50%の熱硬化性樹脂が採用されている。具体的には、粘度5.0Pa・s/30℃で固形分濃度30%のポリイミドが採用されている。尚、ポリイミドに限らず、ビスマレイミドやポリアミドイミド等の他の樹脂を採用しても良いし、熱可塑性樹脂を採用しても良い。
【0030】
また、本実施例においては、炭素繊維フィラメントを採用しているが、アラミド繊維など他の繊維フィラメントを採用しても良い。また、本実施例においては繊維体として一方向繊維体を採用しているが、経糸と緯糸とを織成して成る織成繊維体を採用しても良い。
【0031】
各部を具体的に説明する。
【0032】
複数の炭素繊維フィラメントを収束した糸(炭素繊維束)は、CFロービング15から複数本引き出され、一方向に引き揃えられて繊維体1としてガイドロール20にガイドされて搬送される。尚、繊維体1の搬送速度は6つのプーラー14の回転速度を調整することで制御される。
【0033】
搬送される繊維体1の下方位置には、樹脂シート供給機構6が設けられている。
【0034】
樹脂シート供給機構6の離型フィルム2を供給する離型フィルム供給部7は、離型フィルム2が巻回される巻回ロール17とこの離型フィルム2をガイドする複数のガイドロール26とで構成されている。
【0035】
樹脂塗布部8は、繊維体1の搬送速度(プーラーの回転速度)に同期回転するロール体10(フリーロール)と、このロール体10に設けられ該ロール体10と共に回転して数100μ程度のスリット幅のスリット部9から樹脂3を離型フィルム2上に押し出す樹脂押出部11とが設けられている。
【0036】
従って、繊維体1の搬送速度(プリプレグ製造速度)に連動してロール体10が回転するため、製造速度毎のロール体10の速度設定は不要であり、常に安定した量の樹脂3を塗布することができる。
【0037】
この樹脂押出部11は、ロール体10の外周部に取り付けた底板体25とロール体10との間に樹脂3が貯留されるように構成され、ロール体10の回転に伴って傾いてスリット部9を介して樹脂3を離型フィルム2上に押し出すように構成されている。従って、スリット部9を通過した離型フィルム2には、このスリット部9を介して押し出された樹脂3が所定厚で積層される。
【0038】
ガイドロール26にガイドされる離型フィルム2は、樹脂押出部11とロール体10との間(底板体25にしてロール体10との当接部の一部に設けた離型フィルム2が通過し得る溝)を通過し、ロール体10及び該ロール体10と所定間隔をおいて設けられるスリット用ロール16の間を通過するようにロール体10に掛け回されて繊維体1の下面に向かって搬送される。尚、スリット用ロール16は樹脂押出部11より離型フィルム2の搬送方向下流側位置に設けられる。
【0039】
従って、繊維体1の搬送速度と同期回転するロール体10の回転に伴い樹脂押出部11から離型フィルム2上に(ロール体10とスリット用ロール16を用いて樹脂を塗布する所謂ロールコートによって)適宜樹脂3を押し出して塗布することができ、しかも、スリット用ロール16の位置を適宜調整してスリット部9のスリット幅を変えることで簡単に離型フィルム2への樹脂3の塗布量を制御することができ、用途に応じた樹脂量を設定できる。
【0040】
また、樹脂シート供給機構6は、離型フィルム2の上面に溶剤を含んだ樹脂3を積層して成る樹脂シート4を、略直線的に、ロール状とすることなく(巻いたり曲げたりすることなく)、樹脂3が離型フィルム2の上面に積層された状態のまま該樹脂3が繊維体1側となるように繊維体1の下面に積層するように構成されている。
【0041】
従って、離型フィルム2をできるだけ変形させずに、離型フィルム2上から溶剤を含んだ樹脂3を脱落させることなく繊維体1へと積層することができ、従来のホットメルト法のようにロール状にする必要がないため、今までホットメルト法を適用できなかった様々な樹脂を簡単に繊維体1に含浸せしめることが可能となる。
【0042】
尚、樹脂3には溶剤が含まれており離型フィルム2から脱落し易い状態であり、また、長時間そのままにしておくと樹脂が離型フィルム2上で凝集して均一な樹脂シート4を得られないため、このスリット部9から繊維体1までの距離は可及的に短く設定するのが望ましい。具体的には3000mm以内が望ましい。
【0043】
また、ロール体10から下記溶剤除去部12を構成する加熱板へと向かう樹脂シート4の角度(繊維体1への入射角度)は、10〜30°に設定すると良い。10°未満であると装置構成上ロール設定ができない等の不具合があり、30℃を超えると重力により樹脂が垂れてしまう。本実施例においては17°に設定されている。
【0044】
繊維体1と樹脂シート4との接触部位の搬送下流側位置には、繊維体1に樹脂シート4を積層しつつ(重ね合わせた直後に)この樹脂シート4の樹脂3から溶剤を加熱して除去するための溶剤除去部12(加熱板)が設けられている。この溶剤除去部12による加熱温度は80〜180℃に設定すると良い。80℃未満では溶剤が十分に揮発せず、180℃を超えると粘度が低下し樹脂が凝集してしまう。本実施例においては160℃に設定されている。
【0045】
従って、溶剤を含み脱落し易い樹脂3から早期に溶剤除去部12により溶剤を除去して粘度を上昇させることができ、更に、後記加熱部13において良好に樹脂3を繊維体1に含浸せしめることが可能となる。
【0046】
溶剤除去部12の搬送下流側位置には、繊維体1の上面に設けられる保護フィルム30を供給する保護フィルム供給部が設けられている。この保護フィルム供給部は、保護フィルム30が巻回される巻回ロール18と該保護フィルム30をガイドするガイドロール27とで構成されている。
【0047】
保護フィルム供給部により保護フィルム30が供給される部位の搬送下流側位置には、樹脂含浸用の加熱部13(加熱板)が設けられている。この加熱部13で樹脂3が繊維体1に含浸せしめられてプリプレグ5となる。この加熱部13による加熱温度は50〜150℃に設定すると良い。50℃未満では樹脂粘度低下が小さくプリプレグに未含浸部位が生じてしまい、150℃を超えると粘度低下が大きく樹脂が流れ出てしまう。本実施例においては100℃に設定されている。
【0048】
従って、溶剤除去部12の加熱板と加熱部13の加熱板とを並設することで、プリプレグの乾燥状態を任意に設定でき、目的に応じたプリプレグの製造が容易となる。
【0049】
加熱部13の搬送下流側位置には、一対の熱ラミネートロール23が設けられている。この一対の熱ラミネートロール23を通過することでプリプレグ5は平坦化される。
【0050】
熱ラミネートロール23の搬送下流側位置には平坦化されたプリプレグ5から保護フィルム30を回収する保護フィルム回収部が設けられている。保護フィルム回収部は、保護フィルム30を巻き取る巻取ロール19と保護フィルム30をガイドするガイドロール28とで構成されている。
【0051】
保護フィルム回収部により保護フィルム30が回収される部位の搬送下流側位置には、プリプレグ5の上面にセパレータ31を供給するセパレータ供給部が設けられている。セパレータ供給部は、セパレータ31(ポリエチレンフィルム)が巻回される巻回ロール22とセパレータ31をガイドするガイドロール29とで構成されている。
【0052】
セパレータ供給部によりセパレータ31が供給される部位の搬送下流側位置には、プリプレグ5が巻き取られる巻取ロール24が設けられている。
【0053】
即ち、樹脂シート供給機構6及び該樹脂シート供給機構6により供給された樹脂シート4の樹脂3から溶剤を除去した後の工程は、従来のホットメルト法と同様に行うことが可能であり、既存の設備を利用してそれだけ容易に実施可能となる。
【0054】
本実施例は上述のように構成したから、離型フィルム2上に溶剤を含む樹脂3を塗布した樹脂シート4を、ロール状とすることなくそのまま繊維体1に積層し加熱含浸を行うことができ、従って、樹脂シート4を別工程で製造する必要がない。
【0055】
また、樹脂シート4をロール状とすることなく、そのまま繊維体1に積層できるから、離型フィルム2上に樹脂3を塗布するに際し、この樹脂3に溶剤を含ませることができる。即ち、樹脂3に溶剤を含ませても樹脂3を離型フィルム2から脱落させることなく繊維体1に積層でき、高粘度で且つ固形分濃度が低い樹脂(例えば粘度が0.5〜50Pa・s/30℃で且つ固形分濃度が10〜50%の熱硬化性樹脂)であってもホットメルト法と同様に効率良く連続的に繊維体1に樹脂3を含浸せしめることが可能となる。
【0056】
また、樹脂シート4の製造と繊維体1への樹脂3の含浸を1つの装置を用いて行うことができ、それだけ作業を簡略化でき、品質の安定したプリプレグを製造可能となる。
【0057】
従って、本実施例は、特殊な設備を用いる必要なく、既存のホットメルト法用の設備を利用することが可能で、溶剤を用いることなく高粘度で低濃度の熱硬化性樹脂を簡単に繊維体に含浸せしめることが可能な極めて実用性に秀れたものとなる。
【0058】
本実施例の効果を裏付ける実験例について説明する。
【0059】
図2に図示したように、使用基材、使用樹脂、希釈溶剤、樹脂固形分濃度及び樹脂粘度を同一に設定し、上述の本実施例に係る装置(ロールギャップ(スリット幅)は400μm)を用いて製造したプリプレグ(実施例1)と、従来のフリーディップにより製造したプリプレグ(比較例1)の樹脂付着量及び揮発分を測定し、PP状態を観察した。
【0060】
図2より、実施例1は目標の樹脂付着量を達成し且つPP状態も良好であるのに対し、比較例1は目標の樹脂付着量を達成できず且つPP状態も悪いことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施例の概略説明図である。
【図2】実験条件及び実験結果を示す表である。
【符号の説明】
【0062】
1 繊維体
2 離型フィルム
3 樹脂
4 樹脂シート
5 プリプレグ
6 樹脂シート供給機構
7 離型フィルム供給部
8 樹脂塗布部
9 スリット部
10 ロール体
11 樹脂押出部
12 溶剤除去部
13 加熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維フィラメントを収束した経糸と緯糸とを織成して成る繊維体若しくは複数の繊維フィラメントを収束した糸を一方向に引き揃えて成る繊維体を連続的に搬送しながら該繊維体に、離型フィルムに樹脂を積層して成る樹脂シートを積層して加熱することで該樹脂を含浸せしめてプリプレグを製造するプリプレグの製造装置であって、搬送される前記繊維体に積層される前記樹脂シートを供給する樹脂シート供給機構は、前記離型フィルムを供給する離型フィルム供給部と、前記離型フィルム上に溶剤を含んだ前記樹脂を塗布する樹脂塗布部とで構成され、この樹脂シート供給機構は、前記離型フィルムに溶剤を含んだ前記樹脂を積層して成る樹脂シートをロール状とすることなく前記繊維体に積層するように構成されていることを特徴とするプリプレグの製造装置。
【請求項2】
請求項1記載のプリプレグの製造装置において、前記樹脂として、粘度が0.5〜50Pa・s/30℃で且つ固形分濃度が10〜50%の熱硬化性樹脂が採用されていることを特徴とするプリプレグの製造装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の記載のプリプレグの製造装置において、前記樹脂として、ポリイミド,ビスマレイミド若しくはポリアミドイミドが採用されていることを特徴とするプリプレグの製造装置。
【請求項4】
請求項1記載のプリプレグの製造装置において、前記樹脂として、熱可塑性樹脂が採用されていることを特徴とするプリプレグの製造装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載のプリプレグの製造装置において、前記樹脂シート供給機構は、前記樹脂塗布部によって前記離型フィルムの上面に前記樹脂が塗布された樹脂シートを、前記樹脂が前記離型フィルムの上面に積層された状態のまま該樹脂が前記繊維体側となるように該繊維体の下面に積層するように構成されていることを特徴とするプリプレグの製造装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載のプリプレグの製造装置において、前記樹脂塗布部にはスリット部が設けられ、このスリット部の幅を調整することで樹脂の塗布量を制御し得るように構成されていることを特徴とするプリプレグの製造装置。
【請求項7】
請求項6記載のプリプレグの製造装置において、前記樹脂塗布部には、前記繊維体の搬送速度に同期回転するロール体と、このロール体に設けられ該ロール体と共に回転して前記スリット部から前記樹脂を前記離型フィルム上に押し出す樹脂押出部とが設けられていることを特徴とするプリプレグの製造装置。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項に記載のプリプレグの製造装置において、前記繊維体に前記樹脂シートが積層せしめられた状態で該繊維体と該樹脂シートとを加熱して該樹脂シートの前記樹脂から溶剤を除去する溶剤除去部が設けられていることを特徴とするプリプレグの製造装置。
【請求項9】
請求項8記載のプリプレグの製造装置において、前記溶剤除去部の前記繊維体の搬送方向下流側位置には、前記樹脂シートの前記樹脂を前記繊維体に含浸せしめる樹脂含浸用の加熱部が設けられていることを特徴とするプリプレグの製造装置。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか1項に記載のプリプレグの製造装置において、前記繊維フィラメントは炭素繊維フィラメントであることを特徴とするプリプレグの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−91377(P2009−91377A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260085(P2007−260085)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】