説明

プリンタ装置

【課題】印刷ジョブのデータを高いセキュリティーで管理しつつファーストプリントを迅速に行うこと。
【解決手段】クライアント端末14から印刷対象の原稿画像の印刷ジョブが入力した際に、インクジェット記録装置1の制御ユニット10は、RAM92のフレームメモリ領域92bに頁単位で順次書き込まれる原稿画像のラスタデータを用いて、プリンタ部102により1部目の印刷を実行させる。また、印刷部数が2部以上である場合は、外部記憶装置93に暗号化して記憶させた印刷ジョブのデータを復号化し、これを用いて2部目以降の印刷を実行させる。なお、印刷部数に拘わらず、再印刷が許可されている印刷ジョブについては、そのデータを暗号化して外部記憶装置93に記憶、保存する。そして、再印刷時には、暗号化して保存した外部記憶装置93のデータを復号化し、これを用いて原稿画像の再印刷を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から入力されて一時メモリに一時的に記憶される印刷ジョブのデータを暗号化して記憶、保存する保存用メモリを有し、暗号化したデータを保存用メモリに記憶、保存したら一時メモリからデータを消去するプリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ装置においては、外部から入力された印刷ジョブのデータをメモリに記憶、保存する。その際、外部からの不正アクセスによりデータが外部に漏洩しないように、入力されたデータを暗号化してメモリに記憶、保存することがある(例えば、特許文献1)。その場合、具体的には、印刷ジョブの入力時にそのデータをRAM等の一時メモリに一時記憶させ、さらに、暗号化してハードディスクドライブ等の保存用メモリに記憶、保存することになる。そして、印刷処理を行う際には、保存用メモリの暗号化されたデータを復号化して用いる。なお、一時メモリのデータは、保存用メモリにデータを暗号化して記憶、保存した時点で消去される。
【0003】
このように、印刷ジョブのデータを暗号化して記憶、保存することは、印刷処理を終えた印刷ジョブによる再印刷を可能とするために、印刷ジョブのデータを記憶、保存しておく場合にも(例えば、特許文献2)、有効な処置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−63788号公報
【特許文献2】特開2006−285610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、印刷ジョブのデータを暗号化してメモリに記憶、保存し、印刷に使用する際に復号化して使用することは、画像データのセキュリティー管理の面では非常に有効な処置である。しかしその反面、データの暗号化及び復号化のため1部目の印刷(ファーストプリント)までに要する時間が長くなるというデメリットを有している。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、印刷ジョブのデータを高いセキュリティーで管理しつつファーストプリントを迅速に行うことができるプリンタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、
外部から入力されて一時メモリに一時的に記憶される印刷ジョブのデータを暗号化して記憶、保存する保存用メモリを有し、該保存用メモリに暗号化して記憶、保存した前記データを前記一時メモリから消去するプリンタ装置において、
前記一時メモリに記憶された前記データを用いて前記印刷ジョブによる1部目の印刷処理を実行する初期印刷実行手段と、
前記印刷ジョブの属性情報に基づいて、前記データの保存の要否を判定する判定手段と、
前記データの保存を要すると前記判定手段が判定した場合に、前記データを暗号化して前記保存用メモリに記憶、保存させ、該記憶、保存の終了後であって、かつ、前記初期印刷実行手段による1部目の印刷処理の実行後に、前記一時メモリの前記データを消去させると共に、前記データの保存を要しないと前記判定手段が判定した場合に、前記初期印刷実行手段による1部目の印刷処理の実行後に、前記一時メモリの前記データを消去させる保存実行手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、外部から入力されて一時メモリに一時的に記憶された印刷ジョブのデータを用いて、初期印刷実行手段により1部目の印刷処理(ファーストプリント)が実行される。したがって、データの暗号化や復号化を要さずにファーストプリントを迅速に行うことができる。しかも、データの保存は保存用メモリにおいて暗号化した状態で行われるので、保存したデータを高いセキュリティーで管理することができる。
【0009】
また、上記発明において、前記判定手段が少なくとも、前記属性情報中の印刷部数が複数部に設定されている場合に前記データの保存を要すると判定するものであり、前記属性情報中の印刷部数が複数部に設定されている場合に前記印刷ジョブによる2部目以降の印刷処理を実行する継続印刷実行手段をさらに備えており、該継続印刷実行手段が、前記保存用メモリに記憶、保存された暗号化された前記データを復号化して前記2部目以降の印刷処理に用いることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、印刷ジョブが複数部の印刷を要求する属性情報を有するものである場合、印刷ジョブのデータを暗号化して保存用メモリに記憶、保存し、かつ、2部目以降の印刷処理のために保存用メモリから読み出して復号化する間に、一時メモリに一時的に記憶されたデータを用いて1部目の印刷処理(ファーストプリント)を先行して実行することができる。
【0011】
一時メモリのデータはファーストプリントの終了後に消去されるので、全体として、迅速なファーストプリントの実現と、2部目以降の印刷処理に用いるデータの暗号化による高いセキュリティー管理の実現とを、両立させることができる。
【0012】
さらに、上記発明において、前記判定手段が少なくとも、前記属性情報中の再印刷許可ステータスが許可に設定されている場合に前記データの保存を要すると判定するものであり、前記印刷ジョブによる再印刷処理の要求時に前記印刷ジョブによる再印刷処理を実行する再印刷実行手段をさらに備えており、該再印刷実行手段が、前記保存用メモリに記憶、保存された暗号化された前記データを復号化して全記載印刷処理に用いることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、印刷ジョブが再印刷を許可するステータスを属性情報に含むものである場合、再印刷のために印刷ジョブのデータを暗号化して保存用メモリに記憶、保存する間に、一時メモリに一時的に記憶されたデータを用いて1部目の印刷処理(ファーストプリント)を先行して実行することができる。
【0014】
一時メモリのデータは、ファーストプリントが終了し、かつ、データが暗号化されて保存用メモリに記憶、保存された後に消去されるので、全体として、迅速なファーストプリントの実現と、再印刷に用いるデータの暗号化による高いセキュリティー管理の実現とを、両立させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷ジョブのデータを高いセキュリティーで管理しつつファーストプリントを迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタ装置を含むプリンタネットワークシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置の概略構成を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る、図1のクライアント端末の出力部において表示される原稿画像の印刷設定画面を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る、図1のインクジェット記録装置のディスプレイにおいて表示される登録ジョブリスト画面を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る、図1のインクジェット記録装置のディスプレイにおいて表示される基本設定画面を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る、図1のインクジェット記録装置の制御ユニットのCPUが行う原稿画像の印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る、図1のインクジェット記録装置の制御ユニットのCPUが行う原稿画像の印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る、図1のインクジェット記録装置の制御ユニットのCPUが行う原稿画像の印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に係る、図1のインクジェット記録装置の制御ユニットのCPUが行う原稿画像の印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施形態に係る、図1のインクジェット記録装置の制御ユニットのCPUが行う原稿画像の印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態に係る、図1のインクジェット記録装置の制御ユニットのCPUが行う原稿画像の印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るプリンタ装置を含むプリンタネットワークシステムの概略構成を示す説明図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のプリンタネットワークシステムは、インクジェット記録装置1とクライアント端末14とを有している。
【0020】
図2に示すように、前記インクジェット記録装置1(請求項中のプリンタ装置に相当)は、原稿上の原稿画像を読み取って画像信号を出力するスキャナ部101と、スキャナ部101から出力された画像信号に基づいて記録紙S(片面又は両面)に原稿画像を印刷(記録)するプリンタ部102と、全体制御用の制御ユニット10(図1参照)とを備えている。プリンタ部102における原稿画像の印刷に使用する記録紙Sは、給紙部105からプリンタ部102を介して排紙部109に搬送される。
【0021】
図1に示すように、制御ユニット10には、外部インターフェイス部11を介して、後述するクライアント端末14の外部インターフェイス部15が接続されている。このクライアント端末14から制御ユニット10は、原稿画像の印刷ジョブを受け取る。制御ユニット10は、受け取った印刷ジョブの画像情報から原稿画像のラスタデータを生成する。インクジェット記録装置1は、印刷ジョブの属性情報において指定された条件で、原稿画像の記録紙Sへの印刷をプリンタ部102において実行する。
【0022】
また、制御ユニット10にはディスプレイ110が接続されている。このディスプレイ110は、図2に示すように、インクジェット記録装置1の上部に配置されている。このディスプレイ110は、印刷部数や印刷倍率といった印刷条件をユーザが入力する入力操作部等として利用することができる。
【0023】
なお、ディスプレイ110から印刷条件を入力するのは、例えは、スキャナ部101にセットした原稿画像を複写印刷する複写モードや、後述するハードディスクドライブ等の外部記憶装置93に記憶、保存した過去の印刷ジョブによる原稿画像を再印刷する再印刷モード等で、インクジェット記録装置1を使用する場合である。
【0024】
上述したプリンタ部102に印刷動作を行わせるインクジェット記録装置1の制御ユニット10は、図1に示すように、CPU90を備える。このCPU90は、ROM91に格納されているプログラム及び設定情報に基づいて、ディスプレイ110から入力設定される内容に応じたスキャナ部101やプリンタ部102の動作を制御する。
【0025】
制御ユニット10にはRAM92が設けられており、RAM92にはディスプレイ110から入力された印刷部数や各種の設定内容が随時記憶される。また、RAM92には、一時メモリ領域(請求項中の一時メモリに相当)92aとフレームメモリ領域92bとが設けられている。一時メモリ領域92aには、クライアント端末14から制御ユニット10に入力された印刷ジョブのデータが一時的に記憶される。フレームメモリ領域92bには、一時メモリ領域92aに一時的に記憶された印刷ジョブのデータによってCPU90が生成する原稿画像のラスタデータが、プリンタ部102に出力されるまでの間、一時的に記憶される。
【0026】
さらに、CPU90には外部記憶装置93(請求項中の保存用メモリに相当)が接続されている。この外部記憶装置93には、クライアント端末14から入力されてRAM92の一時メモリ領域92aに記憶された印刷ジョブのデータが必要に応じて、暗号化して記憶、保存される。なお、保存するデータは、属性情報に含まれる指定条件を加味して画像情報をラスタ処理した後のラスタデータでもよく、ラスタ処理する前の入力された印刷ジョブのままのデータであってもよい。
【0027】
制御ユニット10のCPU90がROM91のプログラムにしたがって行う処理の詳細については、後述する。
【0028】
クライアント端末14は、PC(パーソナルコンピュータ)等によって構成されるものであり、ROM17に格納された制御プログラムに基づいて各種の処理を実行するCPU16と、CPU16のワーキングエリアとして機能するRAM18と、キーボードやマウス等から構成される入力部19と、液晶ディスプレイ等から構成される出力部20(メッセージ出力手段に相当)とを備えている。
【0029】
CPU16には、上述した外部インターフェイス部15の他に、外部記憶装置21とディスクドライブ22とが接続されている。外部記憶装置21には、原稿画像のデータを生成するためのアプリケーションプログラムの格納領域や、インクジェット記録装置1のプリンタドライバプログラムの格納領域、及び、アプリケーションプログラムを用いて生成された原稿画像のデータファイルを格納するデータベース領域等が確保されている。
【0030】
CPU16は、入力部19から入力される起動要求にしたがって外部記憶装置21のアプリケーションプログラムを起動させ、また、入力部19からのパラメータ入力等により指示された内容の原稿画像のデータを、起動されたアプリケーションプログラム上において生成する。生成された原稿画像のデータは出力部20において表示出力され、また、入力部19から保存要求が入力された場合には、外部記憶装置21の原稿画像のデータのデータベース領域に記憶される。
【0031】
外部記憶装置21のデータベース領域に記憶された原稿画像のデータは、アプリケーションプログラムの起動中に入力部19からの読み出し要求が入力された場合に、外部記憶装置21から読み出される。読み出された原稿画像のデータは、出力部20に表示出力することができ、また、アプリケーションプログラム上において加工して新たな原稿画像のデータに生成し直すこともできる。
【0032】
そして、CPU16は、アプリケーションプログラムの起動中に入力部19から、アプリケーションプログラムでファイルを開いた原稿画像の印刷要求が入力された場合に、印刷対象の原稿画像の印刷ジョブを生成して、生成した印刷ジョブを外部インターフェイス部15から制御ユニット10の外部インターフェイス部11に出力する。この印刷ジョブは、外部記憶装置21に格納されたプリンタドライバプログラムをCPU16が実行することによって、制御ユニット10に出力することができる。
【0033】
プリンタドライバプログラムは、クライアント端末14のディスクドライブ22により光学ディスク等のディスク状記録媒体50から読み取って、外部記憶装置21にインストールする(記憶させる)ことができる。
【0034】
ディスク状記録媒体50のプリンタドライバプログラムが外部記憶装置21にインストールされると、クライアント端末14において起動されたアプリケーションプログラム上でデータを生成した原稿画像の印刷要求を入力部19から入力した際に、CPU16によってプリンタドライバプログラムが起動される。
【0035】
また、アプリケーションプログラムが起動されていなくても、外部記憶装置21のデータベース領域にデータが格納された原稿画像の印刷要求を、出力部20に表示させたOS(オペレーションシステム)のファイル一覧画面において入力部19により入力すると、その原稿画像のデータを生成するのに用いられたアプリケーションプログラムと共に、プリンタドライバプログラムがクライアント端末14において起動される。
【0036】
そして、CPU16は、アプリケーションプログラムによって開かれた印刷対象の原稿画像のファイルデータを用いて、起動されたプリンタドライバプログラムの処理を実行することで、原稿画像の印刷ジョブを生成し制御ユニット10に出力する。
【0037】
図3は、クライアント端末14の出力部20において表示される原稿画像の印刷設定画面の一例を示す説明図である。この印刷設定画面は、アプリケーションプログラムの印刷メニューにおける入力部19の操作によって、原稿画像の印刷要求がCPU16に入力されると、出力部20に表示される。また、印刷設定画面は、OSのファイル一覧画面上における入力部19の操作によって、外部記憶装置21のデータベース領域にファイルデータが記憶された1又は複数の原稿画像の指定及び印刷の要求がCPU16に入力された場合にも、出力部20に表示される。
【0038】
この印刷設定画面においては、CPU16が制御ユニット10に印刷ジョブを出力してインクジェット記録装置1に印刷動作させる原稿画像の、印刷範囲(全ページ、指定ページ)や印刷部数等を入力設定することができる。また、印刷設定画面においては、この原稿画像の再印刷の許可/不許可を入力設定することができる。再印刷の許可/不許可の入力設定は、「プリンタ」の欄にあるチェックボックスを入力部19の操作によりチェックするか否かによって行うことができる。
【0039】
印刷設定画面において各項目の設定入力を(入力部19の操作によって)行った後、OKボタンを(入力部19の操作によって)クリック操作すると、印刷対象の原稿画像の中間データがそれぞれ生成され、印刷ジョブとしてインクジェット記録装置1の制御ユニット10に出力される。
【0040】
このとき、原稿画像の再印刷の許可/不許可の入力設定内容は、再印刷許可ステータスとして印刷ジョブの属性情報に含められる。原稿画像の再印刷が許可されていれば再印刷許可ステータスがオンとなり、許可されていなければ再印刷許可ステータスはオフとなる。
【0041】
クライアント端末14における以上の動作は、ディスクドライブ22がこれにセットしたディスク状記録媒体50から読み出して外部記憶装置21にインストールしたプリンタドライバプログラムを、CPU16が実行することで実現される。
【0042】
図1のインクジェット記録装置1のディスプレイ110には、通常、基本入力画面が表示されている。この基本入力画面には、4つのタブがあり、そのうち「登録ジョブ呼び出し」のタブを画面上でタッチ操作すると、図4に示す登録ジョブリスト画面が表示される。
【0043】
登録ジョブリスト画面には、外部記憶装置93に記憶、保存されている過去の印刷ジョブが入力順にリストアップされている。この登録ジョブリスト画面では、リストの中から原稿画像の再印刷をする対象の印刷ジョブを、タッチ操作によって選択することができる。なお、選択の際に認証コードの入力を要求し、照合が取れた場合にのみ再印刷を許可するロジックとしてもよい。また、再印刷部数については、再印刷対象の印刷ジョブを登録ジョブリスト画面上で選択する際に、ディスプレイ110に表示されているテンキーを用いて設定することができる。
【0044】
ここで、過去の印刷ジョブのデータがラスタ処理前のデータのまま外部記憶装置93に記憶、保存されている場合は、再印刷対象の印刷ジョブを選択した際に、図5に示すように、登録ジョブリスト画面上に基本設定画面をオーバーラップ表示させて、クライアント端末14側で設定した基本設定の内容を再設定(変更)できるようにすることも可能である。
【0045】
本実施形態のインクジェット記録装置1における以上のような動作は、制御ユニット10のCPU90がROM91に格納された制御プログラムを実行することで実現される。この制御プログラムを実行することでCPU90が行う処理の手順を、図6乃至図11のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
まず、インクジェット記録装置1の電源が投入された後、CPU90は、RAM92の各種フラグをオフにリセットする初期設定を行った後で、インクジェット記録装置1の電源が切断されるまでの間、印刷ジョブ割込確認処理や、再印刷割込確認処理等を、それぞれに個別に設定された適当な周期毎に繰り返し実行する。
【0047】
このうち、印刷ジョブ割込確認処理では、図6に示すように、印刷ジョブが入力されたか否かを確認し(ステップS101a)、入力されていない場合は(ステップS101aでNO)、CPU90は、印刷ジョブ割込確認処理を終了する。一方、印刷ジョブが入力された場合は(ステップS101aでYES)、CPU90は、図8を参照して後述する印刷処理を行った後(ステップS101b)、印刷ジョブ割込確認処理を終了する。
【0048】
また、再印刷割込確認処理では、図7に示すように、図4の登録ジョブリスト画面において再印刷対象の印刷ジョブが選択指定されたか否かを確認する(ステップS501a)。この確認は、図4の登録ジョブリスト画面にリストアップされた過去の印刷ジョブがタッチ操作されたか否かによって、行うことができる。
【0049】
選択指定されていない場合は(ステップS501aでNO)、CPU90は、再印刷割込確認処理を終了する。一方、選択指定された場合は(ステップS501aでYES)、CPU90は、図11を参照して後述する再印刷処理を行った後(ステップS501b)、再印刷割込確認処理を終了する。
【0050】
そして、図6のステップS101bの印刷処理において、CPU90は、図8に示すように、入力された印刷ジョブの属性情報中に設定されている印刷部数が「1」である否かを確認する(ステップS111)。「1」である場合は(ステップS111でYES)、図9を参照して後述する「1部印刷処理」を実行した後(ステップS113)、印刷処理を終了する。印刷部数が「1」でない場合は(ステップS111でNO)、図10を参照して後述する「複数部印刷処理」を行った後(ステップS115)、印刷処理を終了する。
【0051】
図8のステップS113の1部印刷処理において、CPU90は、図9に示すように、入力された印刷ジョブのデータをRAM92の一時メモリ領域92aに一時的に記憶、保存する(ステップS120)。そして、一時メモリ領域92aにデータを一時的に記憶した印刷ジョブの属性情報中の設定内容にしたがって、印刷ジョブの中間データから原稿画像のラスタデータを頁単位で生成する(ステップS121)。そして、生成した頁のラスタデータをRAM92のフレームメモリ領域92bに書き込み(ステップS123)、書き込んだ頁のラスタデータを用いて、プリンタ部102によりその頁の印刷を行わせる(ステップS125)。印刷が終了した頁のラスタデータはRAM92のフレームメモリ領域92bから消去する(ステップS127)。
【0052】
続いて、印刷ジョブの原稿画像の最終頁まで印刷が終了したか否かを確認し(ステップS129)、終了していない場合は(ステップS129でNO)、ステップS121にリターンする。終了した場合は(ステップS129でYES)、入力された印刷ジョブの属性情報中の再印刷許可ステータスがオンであるか否かを確認する(ステップS131)。オンである場合は(ステップS131でYES)、入力された印刷ジョブのデータを暗号化して外部記憶装置93に記憶、保存させた後(ステップS133)、後述するステップS135に移行する。一方、オンでない場合は(ステップS131でNO)、ステップS135に移行する。ステップS135では、RAM92の一時メモリ領域92aに記憶、保存した印刷ジョブのデータを消去する。その後、1部印刷処理を終了する。
【0053】
次に、図8のステップS115の複数部印刷処理において、CPU90は、図10に示すように、入力された印刷ジョブのデータをRAM92の一時メモリ領域92aに一時的に記憶、保存する(ステップS140)。そして、一時メモリ領域92aにデータを一時的に記憶した印刷ジョブの属性情報中の設定内容にしたがって、印刷ジョブの中間データから原稿画像のラスタデータを頁単位で生成する(ステップS141)。そして、生成した頁のラスタデータをRAM92のフレームメモリ領域に書き込み(ステップS143)、書き込んだ頁のラスタデータを用いて、プリンタ部102によりその頁の印刷を行わせる(ステップS145)。印刷が終了した頁のラスタデータはRAM92のフレームメモリ領域から消去する(ステップS147)。
【0054】
続いて、印刷ジョブの原稿画像の最終頁まで印刷が終了したか否かを確認し(ステップS149)、終了していない場合は(ステップS149でNO)、ステップS141にリターンする。終了した場合は(ステップS149でYES)、入力された印刷ジョブのデータを暗号化して外部記憶装置93に記憶、保存させる(ステップS151)。そして、RAM92の一時メモリ領域92aに記憶、保存した印刷ジョブのデータを消去する(ステップS152)。その後、2部目以降の原稿画像の印刷をプリンタ部102により部単位で行わせる(ステップS153)。このステップS153では、外部記憶装置93に暗号化して記憶、保存させた印刷ジョブのデータを復号化したデータを用い、印刷ジョブの属性情報中の設定内容にしたがって、ステップS141乃至ステップS149の各処理と同様の処理を行う。
【0055】
そして、属性情報中に設定された部数の印刷が終了したか否かを確認し(ステップS155)、終了していない場合は(ステップS155でNO)、ステップS153にリターンする。終了した場合は(ステップS155でYES)、入力された印刷ジョブの属性情報中の再印刷許可ステータスがオンであるか否かを確認する(ステップS157)。
【0056】
再印刷許可ステータスがオンでない場合は(ステップS157でNO)、暗号化して外部記憶装置93に記憶、保存させた印刷ジョブのデータを消去した後(ステップS159)、複数部印刷処理を終了する。一方、オンである場合は(ステップS157でYES)、複数部印刷処理を終了する。
【0057】
なお、図9のステップS133や図10のステップS151において、入力された印刷ジョブのデータを暗号化して外部記憶装置93に記憶、保存させる場合、前述したように、印刷ジョブのデータの記憶、保存形式は、ラスタデータであってもよく、ラスタデータに変換する前の入力された印刷ジョブのままのデータでもよい。
【0058】
次に、図7のステップS501bの再印刷処理において、CPU90は、図11に示すように、図4の登録ジョブリスト画面のタッチ操作によって、再印刷対象の印刷ジョブが選択指定されたか否かを確認する(ステップS511)。選択指定されていない場合は(ステップS511でNO)、再印刷処理を終了する。
【0059】
一方、再印刷対象の印刷ジョブが選択指定された場合は(ステップS511でYES)、選択指定された再印刷対象の印刷ジョブに対応する、外部記憶装置93に暗号化して記憶、保存されたデータを復号化したデータを用いて、原稿画像の再印刷をプリンタ部102により部単位で行わせる(ステップS513)。このステップS513では、図9のステップS121乃至ステップS129の各処理や、図10のステップS141乃至ステップS149の各処理と同様の処理を行う。
【0060】
そして、CPU90は、ディスプレイ110のテンキーの操作により設定された部数の再印刷が終了したか否かを確認し(ステップS515)、終了していない場合は(ステップS515でNO)、ステップS511にリターンする。終了した場合は(ステップS515でYES)、再印刷処理を終了する。
【0061】
以上に図6乃至図11を参照して説明した処理手順は、プリンタ部102による原稿画像の印刷や再印刷を部単位(1頁、2頁、3頁、…、1頁、2頁、3頁、…)で行う場合を示している。
【0062】
したがって、プリンタ部102による原稿画像の印刷や再印刷を頁単位(1頁、1頁、…、2頁、2頁、…、3頁、3頁、…)で行う場合には、RAM92のフレームメモリ領域に各頁のラスタデータが順次書き込まれる毎に、設定された部数分の印刷を行ってから、その頁のラスタデータをフレームメモリ領域から消去する処理を行うことになる。
【0063】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態のインクジェット記録装置1では、図9のフローチャートにおけるステップS121乃至ステップS129と、図10のフローチャートにおけるステップS141乃至ステップS149とが、請求項中の初期印刷実行手段に相当する処理となっている。
【0064】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1では、図8のフローチャートにおけるステップS111と、図9中のステップS131とが、請求項中の判定手段に相当する処理となっている。さらに、本実施形態のインクジェット記録装置1では、図9中のステップS133及びステップS135と、図10中のステップS151及びステップS152とが、請求項中の保存実行手段に対応する処理となっている。
【0065】
また、本実施形態のインクジェット記録装置1では、図10中のステップS153及びステップS155が、請求項中の継続印刷実行手段に相当する処理となっている。さらに、本実施形態のインクジェット記録装置1では、図7中のステップS501bと、図11のフローチャートにおける各ステップが、請求項中の再印刷実行手段に相当する処理となっている。
【0066】
このように構成された本実施形態のインクジェット記録装置1によれば、クライアント端末14から入力されてRAM92の一時メモリ領域92aに一時的に記憶された印刷ジョブのラスタデータを用いて、1部目の印刷処理(ファーストプリント)が実行される。したがって、データの暗号化や復号化を要さずにファーストプリントを迅速に行うことができる。しかも、2部目以降の印刷や再印刷に必要な印刷ジョブのデータは、外部記憶装置93に暗号化した状態で保存し、一時メモリ領域92aの印刷ジョブのデータは2部目以降の印刷や再印刷前に消去するので、保存したデータを高いセキュリティーで管理することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、印刷ジョブのデータを保存して再印刷することができる場合の構成を例に取って説明したが、本発明は、再印刷に関する構成を有しないプリンタ装置についても適用可能である。また、本発明は、インクジェット方式や電子写真方式、孔版印刷方式等、各種の方式のプリンタ装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 インクジェット記録装置(プリンタ装置)
10 制御ユニット
11 外部インターフェイス部
14 クライアント端末
15 外部インターフェイス部
16 CPU
17 ROM
18 RAM
19 入力部
20 出力部
21 外部記憶装置
22 ディスクドライブ
50 ディスク状記録媒体
90 CPU(初期印刷実行手段、判定手段、保存実行手段、継続印刷実行手段、再印刷実行手段)
91 ROM
92 RAM
92a 一時メモリ領域(一時メモリ)
92b フレームメモリ領域
93 外部記憶装置(保存用メモリ)
101 スキャナ部
102 プリンタ部
105 給紙部
109 排紙部
110 ディスプレイ
S 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力されて一時メモリに一時的に記憶される印刷ジョブのデータを暗号化して記憶、保存する保存用メモリを有し、該保存用メモリに暗号化して記憶した後に前記データを前記一時メモリから消去するプリンタ装置において、
前記一時メモリに記憶された前記データを用いて前記印刷ジョブによる1部目の印刷処理を実行する初期印刷実行手段と、
前記印刷ジョブの属性情報に基づいて、前記データの保存の要否を判定する判定手段と、
前記データの保存を要すると前記判定手段が判定した場合に、前記データを暗号化して前記保存用メモリに記憶させ、該記憶の終了後であって、かつ、前記初期印刷実行手段による1部目の印刷処理の実行後に、前記一時メモリの前記データを消去させると共に、前記データの保存を要しないと前記判定手段が判定した場合に、前記初期印刷実行手段による1部目の印刷処理の実行後に、前記一時メモリの前記データを消去させる保存実行手段と、
を備えることを特徴とするプリンタ装置。
【請求項2】
前記判定手段は少なくとも、前記属性情報中の印刷部数が複数部に設定されている場合に前記データの保存を要すると判定するものであり、前記属性情報中の印刷部数が複数部に設定されている場合に前記印刷ジョブによる2部目以降の印刷処理を実行する継続印刷実行手段をさらに備えており、該継続印刷実行手段は、前記保存用メモリに記憶された暗号化された前記データを復号化して前記2部目以降の印刷処理に用いることを特徴とする請求項1記載のプリンタ装置。
【請求項3】
前記判定手段は少なくとも、前記属性情報中の再印刷許可ステータスが許可に設定されている場合に前記データの保存を要すると判定するものであり、前記印刷ジョブによる再印刷処理の要求時に前記印刷ジョブによる再印刷処理を実行する再印刷実行手段をさらに備えており、該再印刷実行手段は、前記保存用メモリに記憶された暗号化された前記データを復号化して全記載印刷処理に用いることを特徴とする請求項1又は2記載のプリンタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−66508(P2012−66508A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213870(P2010−213870)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】