説明

プリント配線基板及びその製造方法

【課題】簡素な工程で、大電流配線及び信号配線を含むプリント配線基板を製造する。
【解決手段】プリント配線基板の製造方法は、絶縁基材11の少なくとも一方の面を被覆する導体層の一部をエッチングして導体層除去パターンを形成する工程と、絶縁基材11の導体層除去パターン内の部分を除去して溝パターン33を形成する工程と、溝パターン33に適合した形状の導体パターンを溝パターン33内に挿入して大電流配線21を形成する工程と、大電流配線21と溝パターン33との間を接着剤22で固定する工程と、導体層の残余の部分をパターニングして、信号配線13に形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板及びその製造方法に関し、更に詳しくは、信号回路及び大電流回路を含むプリント配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板では、信号回路(配線)及び大電流回路(配線)が混在している。配線パターンを構成する導体層の膜厚を大きくすると、微細配線のエッチングが難しくなるため、信号配線と大電流配線とを同一層に配置することが困難になる。このため、大電流配線と信号配線とを別層で構成するプリント配線基板の製造方法が幾つか提案されている。特許文献1及び特許文献2には、絶縁基板に打ち抜き溝を形成し、その溝内に大電流配線となる導体パターンを埋め込むプリント配線基板の製造方法が記載されている。これらの文献では、大電流配線を埋め込んだ絶縁基板の上面又は下面に、プリプレグシートを加熱及び加圧により貼付し、大電流配線を絶縁基板の溝内に固定する。その後、絶縁基板及びプリプレグシートの双方の表面に一般信号配線を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3509315号公報(図1)
【特許文献2】特開平07−235756号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、何れも絶縁基板の打ち抜き溝内に導体層を固定するために、絶縁基板にプリプレグシートを積層している。このプリプレグ層を積層する工程のため、プリント配線基板の製造プロセスが複雑になる。
【0005】
本発明は、上記関連技術における問題に鑑み、絶縁基板とプリプレグシートの積層を必要とすることなく製造することが出来る、大電流配線及び信号配線を含むプリント配線基板、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、絶縁基材の少なくとも一方の面を被覆する導体層の一部をエッチングして導体層除去パターンを形成する工程と、前記絶縁基材の前記導体層除去パターン内の部分を除去して溝パターンを形成する工程と、前記溝パターンに適合した形状の導体パターンを前記溝パターン内に挿入する工程と、少なくとも前記導体パターンと前記溝パターンとの間を接着剤で固定する工程と、前記導体層の残余の部分をパターニングして配線パターンに形成する工程と、を有するプリント配線基板の製造方法を提供する。
【0007】
本発明は、また、少なくとも一方の面に溝パターンが形成された絶縁基材と、前記溝パターン内に挿入され、該溝パターンと接着剤により固定された導体パターンと、前記溝パターン以外の前記絶縁基材の表面に形成された配線パターンと、を備えるプリント配線基板を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプリント配線基板、及び、本発明方法で製造されたプリント配線基板は、導体パターンと溝パターンとが接着剤で固定されるので、絶縁基材にプリプレグ等を積層する必要がなく、製造工程が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)〜(e)は、本発明の第1の実施形態に係るプリント配線基板を示す平面図及び断面図。
【図2】(a)及び(b)はそれぞれ、図1のプリント配線基板の製造プロセスの一工程段階を示す、絶縁基板の表面図及び裏面図。
【図3】(a)〜(c)はそれぞれ、図2に後続する工程段階を示す、絶縁基板の表面図、裏面図、及び、断面図。
【図4】(a)〜(c)は、図2の絶縁基板の溝に収容される導体パターンの平面図及び断面図。
【図5】(a)〜(c)はそれぞれ、図3に後続する工程段階を示す、プリント配線基板の表面図、裏面図、及び、断面図。
【図6】図5に後続する工程段階を示す、プリント配線基板の断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るプリント配線基板の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の説明に先立って本発明の概要を説明する。本発明のプリント配線基板の製造方法は、絶縁基材の少なくとも一方の面を被覆する導体層の一部をエッチングして導体層除去パターンを形成する工程と、前記絶縁基材の前記導体層除去パターン内の部分を除去して溝パターンを形成する工程と、前記溝パターンに適合した形状の導体パターンを前記溝パターン内に挿入する工程と、少なくとも前記導体パターンと前記溝パターンとの間を接着剤で固定する工程と、前記導体層の残余の部分をパターニングして配線パターンに形成する工程とを有する。
【0011】
本発明のプリント配線基板は、少なくとも一方の面に溝パターンが形成された絶縁基材と、前記溝パターン内に挿入され、該溝パターンと接着剤により固定された導体パターンと、前記溝パターン以外の前記絶縁基材の表面に形成された配線パターンとを備える。
【0012】
本発明のプリント配線基板、及び、本発明方法で製造されたプリント配線基板は、導体パターンと溝パターンとが接着剤で固定されるので、絶縁基材にプリプレグ等を積層する必要がなく、製造工程が簡素化される。
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るプリント配線基板を示すもので、(a)〜(e)はそれぞれ、その表面図、裏面図、(a)におけるA−A断面図、B−B断面図、及び、C−C断面図である。なお、図1に示すプリント配線基板は、それ自体でプリント配線基板として使用可能であるものの、配線パターン及び絶縁層を含む別のプリント配線層と積層してもよい。本実施形態では、図1の構造をプリント配線基板と呼び、また、他のプリント配線層と積層したものもプリント配線基板と呼ぶ。
【0014】
図1のプリント配線基板10は、絶縁基板(以下、絶縁基材と呼ぶ)11と、絶縁基材11の表面及び裏面に形成された大電流配線21と、絶縁基材11の表面及び裏面に形成された信号配線13を構成する表層パターンと、絶縁基材11の表面及び裏面に形成された配線ランド(以下、ランドと呼ぶ)12とを有する。プリント配線基板10は、この例では、1層の絶縁基材11及び2層の配線層を含む。大電流配線21は、例えば電源配線又は接地配線を構成し、信号配線13及びランド12を含む信号回路に電源を供給する。プリント配線基板10には、同様な形状の図示しない電源配線及び接地配線が、他の大電流配線として含まれている。以下の記述では、大電流配線21を電源配線として説明する。
【0015】
絶縁基材11の表面に形成された電源配線21は、スルーホール14内に充てんされた図示しない導体プラグを介して、絶縁基材11の裏面に形成され電源配線21及びランド12に接続される。また、絶縁基材11の裏面に形成された電源配線21は、絶縁基材11の表面に形成された電源配線21及びランド12に接続される。電源配線21は、絶縁基材11に形成された溝33の内部に挿入された、厚みが大きな導体パターンで構成される。信号配線13及びランド12は、絶縁基材11の表面及び裏面に形成されたパターニングされた銅箔から形成される。
【0016】
図1(c)〜(e)の断面図に示すように、電源配線21は、溝33の底部付近で幅が大きく、溝33の表面に向かって幅が縮小する順テーパー形状を有する。溝33の側壁と電源配線21との間の隙間には、接着剤22が充てんされ、その接着剤22により電源配線21がその溝33の内部に固定されている。電源配線21の表面は、絶縁基材11の表面から僅かに突出し、銅箔からなる信号配線13及びランド12の表面と同じ面内にある。なお、信号配線13は、絶縁基材11の表面にのみ示したが、絶縁基材11の裏面にも同様に形成されている。
【0017】
以下、図1のプリント配線基板の製造方法について、図2〜図5を参照して説明する。図2において、例えば、厚みが5mm程度のエポキシ樹脂からなる絶縁基材11の表面及び裏面には、銅箔31が公知の手法,例えば無電解めっき法で形成されている。表面及び裏面の銅箔31は、エッチングによって、後に形成される電源配線21の導体パターンに適合した部分が除去され、銅箔31には、銅箔除去部分32が形成される。図2は、このステップで配線基板を示している。次いで、銅箔除去部分32の絶縁基材11が、所定の深さまでエッチングされ、溝(溝パターン)33が形成される(図3)。溝33の深さは、絶縁基材11の厚みの1/2よりも小さい寸法、例えば2mmである。
【0018】
次いで、予め用意した電源配線21となる導体パターンを表面及び裏面の溝33内に埋め込む。導体パターン21Aの形状を図4に示した。同図(a)は、絶縁基材11の表面に形成された溝33内に埋め込まれる導体パターン21Aを、同図(b)は、絶縁基材11の裏面に形成された溝33内に埋め込まれる導体パターン21Aをそれぞれ示す。また、同図(c)は、裏面の導体パターン21AのD−D断面図である。導体パターン21Aは、銅板をエッチングして形成される。導体パターン21Aの溝底部の幅(a1)は例えば20mmであり、導体パターン21Aの頂面の幅(a2)は、例えば19.5mmである。つまり、寸法b=(a1−a2)/2は、0.25mmである。例えば、厚み2mmの銅板から導体パターン21Aをエッチングで形成すると、エッチングの条件にもよるものの、寸法bは、0.1mm〜0.5mm程度である。
【0019】
導体パターン21Aを溝33内に挿入し、他の電源配線や信号配線と接続して電源配線21とする。電源配線21の周囲を接着剤22で溝33の側壁に固定する(図5)。図5(a)は、得られたプリント配線基板10の表面図、同図(b)は、得られたプリント配線基板10の裏面図、同図(c)は、図(a)のC−C断面図である。導体パターン21Aのテーパー形状が、接着剤22の注入に好適である。溝33の周囲に付着した接着剤22は、研磨等によって除去される。
【0020】
次いで、電源配線21の周囲に残された銅箔31を、所望の配線層となるようにパターニングする。このパターニングは、公知の手法、例えばウエットエッチングによって行われる。このようにして、図1に示した、大電流配線21、信号配線13、ランド12が同じ高さに揃えられたプリント配線基板10が得られる。本プリント配線基板10は、例えばランド12の部分には、プリント配線基板10上に登載される半導体チップや、チップ抵抗などの回路部品が半田付けで接続され、プリント配線基板10の表面側の電源配線21は、外部電源に接続される。また、裏面側の電源配線21は、例えば裏面に搭載される部品の電源に利用され、或いは、本プリント配線基板に積層されるプリント配線層の電源配線に接続される。
【0021】
種々の回路部品の搭載や、外部配線との接続に際しては、半田工法が用いられる。半田の供給に先立って、ソルダーレジストがプリント配線基板の表面及び裏面に供給される。本実施形態では、ランド12、信号配線13及び大電流配線21との間に実質的に段差が形成されず、また、これらと絶縁基材11との間の段差も小さいので、ソルダーレジストの塗布が容易になる。このため、良好な半田付けが可能になる。
【0022】
本実施形態のプリント配線基板10は、図1の状態でも、2層の配線層を有するプリント配線基板として使用可能である。しかし、例えば図6に示すように、信号配線などの小電流配線42のみが表面に形成された2枚の絶縁層から成るプリント配線層41で、図1のプリント配線基板10を挟んで得られる構造のプリント配線基板50として構成することが出来る。図6の例では、2枚のプリント配線層41でプリント配線基板10を挟んだ後に、スルーホール43が形成される。スルーホール43は、信号配線などを含む双方のプリント配線層41と、これらに挟まれたプリント配線基板10とを一体とした後に、ドリル法などによって形成される。スルーホール43内には、例えばめっき法によって、図示しない中実又は中空の金属プラグが形成される。
【0023】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るプリント配線基板の要部を示す断面図である。本実施形態のプリント配線基板60では、絶縁基材11に、打ち抜き溝34を形成し、その打ち抜き溝34の内部に導体パターンを挿入して大電流配線21を形成している。導体パターンは、溝33の中央部分の幅をa1とし、溝33の表面近傍での幅をa2とするとき、b=(a1―a2)/2は、図4の例と同様に、0.1〜0.5mm程度である。このテーパー形状のため、接着剤22の表面及び裏面から間隙への注入が容易となる。このため、大電流配線21の溝パターン33内での固定が簡素な工程で行われる。図7では、配線としては、大電流配線21のみを示したが、図1と同様な図示しない信号配線やランドが、絶縁基材11の表面に形成されている。
【0024】
上記各実施形態では、別工程で製造した大電流用導体パターンを、コア材を構成する絶縁基材11に形成された溝パターン33内に埋め込む構成を採用する。このため、大電流配線と一般信号配線とが同一面に混在する配線層が得られる。この工程では、プリプレグの積層を要しないので、製造工程が簡素化される。
【0025】
また、大電流配線の大部分がコア材内に埋め込まれるため、表面の凹凸差が小さくなり、ソルダーレジストの塗布が容易となる。このため、良好な半田付けが可能になる。
【0026】
上記実施形態では、配線材料を銅とした例を示したが、配線材料は、銅に限定はされず、例えばアルミニウムやニッケルなども使用可能である。また、絶縁基板がエポキシ樹脂である例を示したが、同様にこの例には限定されない。
【0027】
本発明を特別に示し且つ例示的な実施形態を参照して説明したが、本発明は、その実施形態及びその変形に限定されるものではない。当業者に明らかなように、本発明は、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
10、50、60:プリント配線基板
11:絶縁基材(基板)
12:配線ランド(ランド)
13:信号配線
14、43:スルーホール
21:大電流配線(電源配線)
21A:導体パターン
22:接着剤
31:銅箔
32:銅箔除去部分
33:溝(溝パターン)
34:打ち抜き溝
41:プリント配線層
42:小電流配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材の少なくとも一方の面を被覆する導体層の一部をエッチングして導体層除去パターンを形成する工程と、
前記絶縁基材の前記導体層除去パターン内の部分を除去して溝パターンを形成する工程と、
前記溝パターンに適合した形状の導体パターンを前記溝パターン内に挿入する工程と、
少なくとも前記導体パターンと前記溝パターンとの間を接着剤で固定する工程と、
前記導体層の残余の部分をパターニングして配線パターンに形成する工程と、を有するプリント配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記導体パターンがエッチングで形成される、請求項1に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記導体層が、前記絶縁基材の双方の面を被覆しており、前記導体パターンが前記絶縁基材の双方の面にそれぞれ形成される、請求項1又は2に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記導体パターンが、前記溝パターンの底面に隣接する幅が、前記溝パターンから露出する面の幅よりも0.1mm〜0.5mm広い、請求項3に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記双方の面に形成される導体パターンがスルーホールを介して互いに接続される、請求項3又は4に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記溝パターンが、前記絶縁基材を貫通する打ち抜き溝として形成され、前記導体パターンは、前記溝パターンの内に収容されている中央部分の幅が前記溝パターンから露出する面の幅よりも0.1mm〜0.5mm広い、請求項1又は2に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項7】
少なくとも一方の面に溝パターンが形成された絶縁基材と、
前記溝パターン内に挿入され、該溝パターンと接着剤により固定された導体パターンと、
前記溝パターン以外の前記絶縁基材の表面に形成された配線パターンと、を備えるプリント配線基板。
【請求項8】
導体パターン及び配線パターンが形成された前記絶縁基材を相互間に挟む一対のプリント配線層を更に備える、請求項7に記載のプリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−108704(P2011−108704A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259522(P2009−259522)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】