説明

プリント配線板、そのプリント配線板を用いた回路基板、および回路基板の製造方法

【課題】電子部品が実装されるプリント配線板において、線膨張係数の差が大きい電子部品がはんだにより接合されるはんだ接合部の疲労寿命を改善すること。
【解決手段】プリント配線板は、プリント配線板の上面に実装される電子部品の電極端子に対応する位置に設けられた基板電極の近傍に細隙を有する。細隙は、プリント配線板の上面から下面に貫通する貫通孔(スルーホール)で、基板電極の全周囲(四方)のうちの一方を除いた残りの三方をU字形状に取り囲むように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品が実装されるプリント配線板と、プリント配線板に電子部品が実装された回路基板と、その回路基板の製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品(リレー、抵抗、コンデンサ、ICなど)をプリント配線板の上に実装する場合、電子部品の電極端子とプリント配線板の上に形成された基板電極とが、はんだにより接合される。しかし、プリント配線板と電子部品の線膨張係数の差が大きい場合や、電子部品の電極端子の間隔が広い場合には、周辺環境の温度変化や自己発熱などによる膨張量が大きく異なり、この差から電子部品とプリント配線板とがはんだで接合されるはんだ接合部に熱応力が生じてはんだ接合部の疲労寿命が短くなる。
【0003】
これに対し、特許文献1では、プリント配線板の上に実装された電子部品の周囲に溝または穴を開け、この溝または穴に装着した高剛性の棒または板を製品の筐体内部などに固定する構成のプリント配線板が開示されている。これにより、プリント配線板の熱膨張が拘束されるため、プリント配線板の熱膨張量が電子部品の熱膨張量より大きい場合であっても、プリント配線板と電子部品の熱膨張量の差が小さくなり、はんだ接合部の疲労寿命が改善するという効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−174239号公報(第2頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す構成のプリント配線板においては、高剛性の棒または板などの専用器具を製作し、この専用器具をプリント配線板に設けた溝または穴に装着する必要があるため、製造コストや作業工程が増加するという問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、製造コストや作業工程の増加を伴うことなく、はんだ接合部に作用する熱応力を低減し、はんだ接合部の疲労寿命を改善することが可能なプリント配線板と、そのプリント配線板を用いた回路基板、およびその回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のプリント配線板は、電子部品の電極と接続される基板電極を備え、基板電極の近傍にプリント配線板の上面から下面に貫通し、平面視において線状の細隙が設けられ、基板電極が細隙の一方の端部と他方の端部とを通る仮想の直線と細隙とにより囲まれるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明のプリント配線板によれば、プリント配線板に形成された基板電極をU字形状に取り囲むように、プリント配線板を貫通する線状の細隙を設けることにより、基板電極の近傍のプリント配線板が容易に変形する。そのため、プリント配線板と電子部品の線膨張係数の差に依存してはんだ接合部に作用する熱応力が低減し、はんだ接合部の疲労寿命が改善する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1におけるプリント配線板の上面図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるプリント配線板の断面図であって、図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1における回路基板の上面図である。
【図4】この発明の実施の形態1における回路基板の断面図であって、図3のB−B線に沿う断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1における回路基板のはんだ接合部の拡大断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1における回路基板に温度変化を与えた場合の形状の変形を示す断面図である。
【図7A】この発明の実施の形態1における回路基板に温度変化を与える前のプリント配線板の形状を示す断面図である。
【図7B】この発明の実施の形態1における回路基板に温度変化を与えた後のプリント配線板の形状を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態1における回路基板のシミュレーションモデルを説明する図である。
【図9A】この発明の実施の形態1における回路基板のシミュレーションモデルを説明する図であって、はんだ接合部の拡大図である。
【図9B】この発明の実施の形態1における回路基板のシミュレーションモデルを説明する図であって、図9AのC−C線に沿う断面図である。
【図10】この発明の実施の形態1における細隙の配置方向とはんだ接合部に生じる熱応力との関係を示す表である。
【図11】この発明の実施の形態1における細隙の配置例を示す上面図である。
【図12】この発明の実施の形態1における細隙の配置例を示す上面図である。
【図13】この発明の実施の形態1における細隙の配置例を示す上面図である。
【図14】この発明の実施の形態2におけるプリント配線板の上面図である。
【図15】この発明の実施の形態2における回路基板の上面図である。
【図16】この発明の実施の形態2における回路基板の断面図であって、図15のE−E線に沿う断面図である。
【図17】この発明の実施の形態2における回路基板に温度変化を与えた場合の形状の変形を示す上面図である。
【図18】この発明の実施の形態2における細隙の配置例を示す上面図である。
【図19】この発明の実施の形態3におけるプリント配線板の細隙部分を拡大した上面図である。
【図20】この発明の実施の形態3におけるプリント配線板の細隙部分を拡大した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の実施形態について、図を参照して以下に説明する。なお、各図において、同一または同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0011】
実施の形態1.
【0012】
この発明の実施の形態1における回路基板100の構成について、図1〜5を用いて説明する。
【0013】
図1は、この発明の実施の形態1におけるプリント配線板1の構成を示す上面図で、プリント配線板1は、基板電極2a〜2dと線状の細隙3a〜3dとを備える。図2は、図1に示したプリント配線板1のA−A線に沿った断面図である。図3は、図1に示したプリント配線板1の上面に電子部品4を実装した回路基板100の上面図で、図4は、図3に示した回路基板100のB−B線に沿った断面図である。図5は、電子部品4の電極端子5cと基板電極2cとのはんだ接合部の拡大図である。
【0014】
プリント配線板1は、上面に実装される電子部品の電極端子に対応する位置に、基板電極2a〜2dを有する。また、基板電極2a〜2dの近傍には細隙3a〜3dが設けられている。プリント配線板1は、例えば、板厚1.6mm、線膨張係数17ppm/Kのガラスエポキシなどからなる。
【0015】
基板電極2a〜2dは、図2を参照して、プリント配線板1の上面から下面に貫通する貫通孔(スルーホール)で、貫通孔の開口部の近傍と貫通孔の内壁面に、Cuなどの導電膜が設けられている。貫通孔の孔径は、例えば、1.4mmとする。
【0016】
細隙3aは、プリント配線板1の上面から下面に貫通し、平面視において線状の隙間で、プリント配線板1における基板電極2aの全周囲(四方)のうち、一方を除いた残りの三方を、U字形状に取り囲むように設けられる。基板電極2aは、細隙3aと図1に細い破線で示した直線6aとによって全周囲を取り囲まれる。基板電極2b〜2dについても同様である。なお、直線6a〜6dは細隙3a〜3dのU字形状の一方の端部と他方の端部を通る仮想の直線で、実際のプリント配線板1の上にはない。(以降においても同様である。)
【0017】
また、細隙3a〜3dは、図3に太い破線によりその配置位置を示した電子部品4の短辺と直線6a〜6dが平行、つまり、細隙3a〜3dの両端部を通る直線6a〜6cが電子部品4の長辺に対して略垂直になるように配置され、更に、細隙3a、3cのU字形状の底部と細隙3b、3dのU字形状の底部とが対向するように配置される。なお、図3においては、基板電極2a〜2dと電子部品4の電極端子5a〜5dの位置関係を見易くするために電子部品4の配置位置を太い破線により示し、電子部品4の本体部分を除去した状態を図示している。(以降においても同様である。)
細隙3a〜3dの幅は、例えば1mmとする。細隙3a〜3dの幅は、プリント配線板1の板厚より小さくすることにより、電子部品4をフローはんだ付けするときに、細隙3a〜3dを通ってプリント配線板1の上にはんだが上がるのを防止することができる。
【0018】
電子部品4は、四隅に電極端子5a〜5dを有し、電極端子5a〜5dは、予め近傍に細隙3a〜3dが形成されている基板電極2a〜2dにそれぞれ挿入される。挿入された電極端子5a〜5dが、フローはんだ付けによって基板電極2a〜2dと電気的に接合されることにより、回路基板100が形成される。図4は、基板電極2c、2dと電子部品4の電極端子5c、5dとをはんだ7c、7dで接合したはんだ接合部の断面図である。また、図5は、基板電極2cと電子部品4の電極端子5cとのはんだ接合部の断面の拡大図である。
電子部品4は、例えば、線膨張係数が110ppm/Kのプラスチックからなり、隣り合う電極の最長間隔は50mmとする。
接合に用いるはんだ7c、7dは、例えば、Sn−Ag−Cu系はんだとする。
【0019】
なお、細隙3a〜3dが予め設けられているプリント配線板1の基板電極2a〜2dに電子部品4の電極端子5a〜5dを挿入した後、フローはんだ付けによって電子部品4の電極端子5a〜5dと基板電極2a〜2dとを接合することにより、回路基板100を製造する方法について説明した。しかしこれに限らず、まず、細隙3a〜3dを設ける前のプリント配線板1の基板電極2a〜2dに電子部品4の電極端子5a〜5dを挿入し、フローはんだ付けによって電子部品4の電極端子5a〜5dと基板電極2a〜2dとを接合し、その後、レーザ加工や切削加工などによって基板電極2a〜2dの近傍に細隙3a〜3dを設けてもよい。
【0020】
次に、このように構成された回路基板100に熱が加えられたときの変形について説明する。
【0021】
まず、図6、7A、7Bを参照して、電子部品4の線膨張係数がプリント配線板1の線膨張係数より大きい場合について説明する。
図6、7A、7Bは、電子部品4の線膨張係数がプリント配線板1の線膨張係数より大きい場合に、熱が加えられることによって回路基板100が変形した状態を説明する図である。図6は、図3のB−B線に沿った断面図である。図7A、7Bは、図6に示すプリント配線板1の細隙3c付近の拡大図で、温度の上昇によりプリント配線板1が変形する前(図7A)と変形した後(図7B)の様子を示している。
【0022】
回路基板100に熱が与えられると、プリント配線板1と電子部品4は膨張する。電子部品4の線膨張係数がプリント配線板1の線膨張係数より大きい場合、電子部品4の膨張量はプリント配線板1の膨張量を上回る。プリント配線板1の基板電極2a〜2dと電子部品4の電極端子5a〜5dとは、はんだ7a〜7dにより接合されているため、電子部品4の膨張が拘束され、はんだ接合部に熱応力が生じる。
【0023】
しかし、はんだ接合部の近傍には細隙3a〜3dが設けられているため、基板電極2a〜2dの近傍のプリント配線板1は、プリント配線板1の厚み方向であって、実装されている電子部品4の方向に容易にたわむ。この変形により、プリント配線板1と電子部品4との間の膨張量の差が吸収され、はんだ接合部に生じた熱応力が緩和する。
【0024】
次に、電子部品4の線膨張係数がプリント配線板1の線膨張係数より小さい場合について説明する。
回路基板100に熱が与えられると、プリント配線板1と電子部品4は膨張する。電子部品4の線膨張係数がプリント配線板1の線膨張係数より小さい場合、電子部品4の膨張量はプリント配線板1の膨張量を下回る。プリント配線板1の基板電極2a〜2dと電子部品4の電極端子5a〜5dとは、はんだ7a〜7dにより接合されているため、プリント配線板1の膨張が拘束され、はんだ接合部に熱応力が生じる。
【0025】
しかし、はんだ接合部の近傍には細隙3a〜3dが設けられているため、基板電極間におけるプリント配線板1の熱膨張が細隙3a〜3dに吸収され、プリント配線板1と電子部品4の熱膨張量の差が小さくなり、はんだ接合部に作用する熱応力が緩和される。
【0026】
次に、細隙の配置方向とはんだ接合部に生じる熱応力との関係をシミュレーションにより求めた結果について説明する。
図8はシミュレーションで用いた回路基板100のモデル、図9Aは図8の細隙3b付近を拡大した拡大図、図9Bは図9Aに示したC−C線に沿った断面図である。プリント配線板1の4隅に設けた基板電極2a〜2dの近傍には細隙3a〜3dが設けられ、電子部品4の電極端子5a〜5dが基板電極2a〜2dに挿入されてはんだにより接合されている。また、電子部品4の本体部分を太い破線により示している。
【0027】
シミュレーションでは、隣接する基板電極の間隔は50mm、基板電極の近傍に設けられる細隙はコの字形状とした。図9Aを参照して、細隙3a〜3dの寸法は、細隙3a〜3dのコの字形状の両端部の間隔Wを4mm、細隙3a〜3dのコの字形状の両端部を結ぶ仮想の直線6a〜6dからコの字形状の底部までの長さLを4mm、細隙3a〜3dの幅Sを1mmとした。
【0028】
また、電極端子5a〜5dには、プリント配線板1の板面と電子部品4の長辺に平行で、電子部品4の内側から外側に向かう方向の力Fを加えた。電極端子5a〜5dに力Fを加える位置は、図9Bを参照して、プリント配線板1の上面から1mm離れた位置とした。このような力Fを電極端子5a〜5dに加えることにより、電子部品4の膨張量がプリント配線板1の膨張量を上回る場合においてはんだ接合部に生じる熱応力のうち、電子部品4の長手方向の熱応力を模擬した。
【0029】
図10は、シミュレーション結果を示す表で、細隙3a〜3dの配置方向を変えた場合(方向1〜方向4)と細隙を設けていない場合(方向5)において、電極端子5a〜5dに力Fを加えたときに、電極端子5a〜5dと基板電極2a〜2dとのはんだ接合部に作用する相当応力を、方向1〜方向5の最大値で除した比を熱応力として示している。
図10中の方向1は、電子部品4の一方の短辺側に設けられた細隙3a、3cのコの字形状の底部と、他方の短辺側に設けられた細隙3b、3dのコの字形状の底部とが対向するように細隙3a〜3dが配置された場合に、電極端子5a〜5dと基板電極2a〜2dとのはんだ接合部に作用する熱応力を示している。
図10中の方向2は、電子部品4の一方の長辺側に設けられた細隙3a、3bのコの字形状の底部と、他方の長辺側に設けられた細隙3c、3dのコの字形状の底部とが対向するように細隙3a〜3dが配置された場合に、電極端子5a〜5dと基板電極2a〜2dとのはんだ接合部に作用する熱応力を示している。
図10中の方向3は、電子部品4の一方の長辺側に設けられた細隙3a、3bのコの字形状の両端部と、他方の長辺側に設けられた細隙3c、3dのコの字形状の両端部とが対向するように細隙3a〜3dが配置された場合に、電極端子5a〜5dと基板電極2a〜2dとのはんだ接合部に作用する熱応力を示している。
図10中の方向4は、電子部品4の一方の短辺側に設けられた細隙3a、3cのコの字形状の両端部と、他方の短辺側に設けられた細隙3b、3dのコの字形状の両端部とが対向するように細隙3a〜3dが配置された場合に、電極端子5a〜5dと基板電極2a〜2dとのはんだ接合部に作用する熱応力を示している。
また、比較のために、基板電極2a〜2dの近傍に細隙が設けられていない場合に、電極端子5a〜5dと基板電極2a〜2dとのはんだ接合部に作用する熱応力を図10中の方向5に示している。
【0030】
シミュレーションの結果から、図10中の方向1のように細隙3a〜3dを配置することにより、はんだ接合部に作用する熱応力が最も緩和されることが分かる。また、図10中の方向2、方向3のように細隙3a〜3dを配置した場合でも、はんだ接合部に作用する熱応力が緩和されることが分かる。
【0031】
また、図10中の方向4のように細隙3a〜3dを配置した場合には、はんだ接合部に作用する熱応力は緩和されない。しかし、実際のプリント配線板1や電子部品4は、電子部品の長手方向だけでなく全方向に膨張するため、図10中の方向4のように細隙3a〜3dを配置した場合であっても、力Fに垂直な方向の力が電極端子5a〜5dに加わると、図10中の方向2、方向3と同様に熱応力を緩和することができると言える。
【0032】
つまり、プリント配線板1と電子部品4との間に生じる熱応力を緩和するためには、電極端子5a〜5dに力が加えられる方向と細隙3a〜3dとが交差するように細隙3a〜3dを配置すればよい。ただし、プリント配線板1や電子部品4は全方向に膨張することから、電極端子5a〜5dに加えられる力が1方向とは限らないため、熱応力をより多く吸収するためには、電極端子5a〜5dに加えられる力と細隙3a〜3dとがより多く交差するように細隙3a〜3dを配置するのが望ましい。
【0033】
なお、実施の形態1では、細隙3a〜3dは平面視においてU字形状やコの字形状としたが、各基板電極2a〜2dの全周囲のうちの一方を除いた残りの周囲を取り囲むような形状であれば良く、例えば、V字形状であっても良い。
【0034】
また、実施の形態1では、細隙3a〜3dは、細隙3a〜3dのU字形状の両端部を通る直線6a〜6dが電子部品4の長辺と平行で、一方の長辺側に設けられた細隙3a、3bのU字形状の底部と、他方の長辺側に設けられた細隙3c、3dのU字形状の底部とが対向する場合について図示した。
【0035】
しかしこれに限らず、例えば、図11に示すように、細い破線で示した直線16a〜16dが電子部品4の長辺と平行で、一方の長辺側に設けられた細隙13a、13bのU字形状の底部と、他方の短辺側に設けられた細隙13c、13dのU字形状の底部とが対向するように、細隙13a〜13dが配置されていてもよい。
また、図12に示すように、細い破線で示した直線26a〜26dが電子部品4の短辺と平行で、一方の短辺側に設けられた細隙23a、23cのU字形状の両端部と、他方の短辺側に設けられた細隙23b、23dのU字形状の両端部とが対向するように、細隙23a〜23dが配置されていてもよい。
また、図13に示すように、細い破線で示した直線36a〜36dが電子部品4の長辺と平行で、一方の長辺側に設けられた細隙33a、33bのU字形状の両端部と、他方の長辺側に設けられた細隙33c、33dのU字形状の両端部とが対向するように、細隙33a〜33dが配置されていてもよい。
【0036】
つまり、細隙は、基板電極の近傍に、基板電極の全周囲のうちいずれか一方を除いた三方を取り囲むように設けられていればその向きは特に問わない。ただし、基板電極の近傍のプリント配線基板1の面内方向のたわみによる変形より、面外方向のたわみによる変形において膨張量の差がより多く吸収されるため、電子部品の電極端子の間隔が広い方向(つまり膨張量が大きい方向)と細隙の両端部を通る仮想の直線とを直交させるように細隙を配置するのが望ましい。
【0037】
また、この発明の実施の形態1では、ガラスエポキシ製のプリント配線板1を用いた場合について述べたが、これに限るものではなく、例えば、ガラスクロス、ガラス不織布、紙基材などにエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、またはフェノール樹脂などを含浸させた基材でも同様の効果が得られる。
さらに、はんだ7の材料としては、Sn−Ag−Cu系はんだ以外にも、Sn−Cu系はんだ、Sn−Bi系はんだ、Sn−In系はんだ、Sn−Sb系はんだ、Sn−Pb系はんだなどを用いても同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0038】
また、この発明の実施の形態1では、貫通孔からなる基板電極2a〜2dと、基板電極2a〜2dに挿入した電子部品4の電極端子5a〜5dとをフローはんだ付けにより接合して回路基板100を製造する方法について説明した。しかしこれに限らず、プリント配線板の表面に形成したパッド電極にソルダペーストを供給し、表面実装タイプの電子部品の電極をプリント配線板のパッド電極に載せ、リフロー炉で加熱するリフローはんだ付けによってプリント配線板のパッド電極と電子部品の電極とを接合して回路基板を製造しても良い。
【0039】
以上のように構成されたプリント配線板1、および回路基板100においては、基板電極2a〜2dの近傍に細隙3a〜3dを設けることにより、プリント配線板1と電子部品4との線膨張係数の差に起因する熱応力が基板電極2a〜2dと電極端子5a〜5dとのはんだ接合部に生じたとしても、基板電極2a〜2dの近傍のプリント配線板1が容易に変形し、プリント配線板1の熱膨張を細隙3a〜3dが吸収するため、はんだ接合部に生じる熱応力を低減することができる。その結果、はんだ接合部の疲労寿命が改善する。
【0040】
また、この実施の形態においては、電子部品4の線膨張係数がプリント配線板1の線膨張係数より大きい場合、基板電極2a〜2dの近傍のプリント配線板1が容易に変形するため、はんだ接合部の疲労寿命が改善する。逆にプリント配線板1の線膨張係数が電子部品4の線膨張係数より大きい場合、基板電極間のプリント配線板1の熱膨張が細隙3a〜3dに吸収され、プリント配線板1と電子部品4の熱膨張量の差が小さくなり、はんだ接合部の疲労寿命が改善する。
【0041】
また、基板の板厚より太い幅の細隙を設けたい場合、フローはんだ付けによって電子部品4をプリント配線板1に実装した後、基板電極2a〜2dの近傍に細隙3a〜3dを設けることにより、フローはんだ付けする際に細隙3a〜3dを通ってプリント配線板1の電子部品4の実装面上にはんだが這い上がるはんだ上がりの発生を防止することができる。
【0042】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2における回路基板104の構成について、図14〜図16を用いて説明する。この実施の形態においては、複数の基板電極を1つの細隙とその細隙の両端部を通る1つの仮想の直線とにより取り囲む点で実施の形態1と相違する。これ以外の構成および製造方法は上述した実施の形態1と同様である。
【0043】
図14は、この発明の実施の形態2におけるプリント配線板41の構成を示す上面図で、プリント配線板41は、基板電極42a〜42eと線状の細隙43a、43bとを備える。図15は、図14に示したプリント配線板41の上面に電子部品44を実装した回路基板104の上面図で、図16は、図15に示した回路基板104のE−E線に沿った断面図である。
【0044】
プリント配線板41は、上面に実装される電子部品44の電極端子に対応する位置に、基板電極42a〜42hを有する。また、電子部品44の一方の短辺側の電極端子に対応する基板電極42a〜42dの近傍には細隙43aが、他方の短辺側の電極端子に対応する基板電極42e〜42fの近傍には細隙3bがそれぞれ設けられている。
【0045】
基板電極42a〜42hは、プリント配線板41の上面から下面に貫通する貫通孔で、貫通孔の開口部の近傍と貫通孔の内壁面に、Cuなどの導電膜が設けられている。
【0046】
細隙43aは、プリント配線板41の上面から下面に貫通し、平面視において線状の隙間で、基板電極42a〜42dからなる基板電極群を囲む全周囲のうち、一方を除いた残りの三方を、U字形状に取り囲むように設けられる。基板電極42a〜42dからなる基板電極群は、細隙43aと図14に細い破線で示した直線46aとによって全周囲を取り囲まれる。基板電極42e〜42hからなる基板電極群についても同様である。なお、直線46a、46bは細隙43a、43bのU字形状の一方の端部と他方の端部を通る仮想の直線で、実際のプリント配線板41の上にはない。(以降においても同様である。)
【0047】
また、細隙43a、43bは、細隙43a、43bのU字形状の両端部を通る直線46a、46bが図15に太い破線によりその配置位置を示した電子部品44の短辺と平行で、細隙43aのU字形状の底部と細隙43bのU字形状の底部とが対向するように配置される。
細隙43a、43bの幅は、プリント配線板41の板厚より小さくすることにより、電子部品44をフローはんだ付けするときに、細隙43a、43bを通ってプリント配線板41の上にはんだが上がるのを防止することができる。
【0048】
電子部品44は、一方の短辺に沿って電極端子45a〜45dを、他方の短辺に沿って電極端子45e〜45hを有し、電極端子45a〜45hは基板電極42a〜42hにそれぞれ挿入される。挿入された電極端子45a〜45hは、フローはんだ付けにより基板電極42a〜42hと電気的に接合される。図16は、基板電極42d、42hと電子部品4の電極端子45d、45hとを、はんだ47d、47hで接合したはんだ接合部の断面である。
【0049】
なお、実施の形態2では、電子部品44の一方の短辺に沿って設けられた電極端子45a〜45d(または電極端子45e〜45h)に対応する基板電極からなる基板電極群が、細隙43a(または43b)と直線46a(または46b)とにより囲まれる場合について図示した。しかし、電子部品の長辺に沿って電極端子が設けられている場合には、電子部品の一方の長辺に沿って設けられた電極端子に対応する基板電極からなる基板電極群が、細隙と直線とにより囲まれるように細隙を設ければよい。
【0050】
次に、このように構成された回路基板104に熱が加えられたときの変形について説明する。
【0051】
まず、図17を参照して、電子部品44の線膨張係数がプリント配線板41の線膨張係数より大きい場合について説明する。
図17は、電子部品44の線膨張係数がプリント配線板41の線膨張係数より大きい場合に、熱が加えられることによって回路基板104が変形した状態を説明する図である。
【0052】
回路基板104に熱が与えられると、プリント配線板41と電子部品44は膨張する。電子部品44の線膨張係数がプリント配線板41の線膨張係数より大きい場合、電子部品44の膨張量はプリント配線板41の膨張量を上回る。プリント配線板41の基板電極42a〜42hと電子部品44の電極端子45a〜45hとは、はんだ47a〜47hにより接合されているため、電子部品44の膨張が拘束され、はんだ接合部に熱応力が生じる。
【0053】
しかし、はんだ接合部の近傍には細隙43a、43bが設けられているため、基板電極42a〜42d、および42e〜42hの近傍のプリント配線板41は、プリント配線板41の板面の厚み方向であって、電子部品44が実装されている方向に向かって容易にたわむ。この変形により、電子部品44の長辺方向、つまり細隙43a、43bの両端部を通る直線46a、46bと直交する方向におけるプリント配線板41と電子部品44との間の膨張量の差が吸収され、はんだ接合部に生じた熱応力が緩和する。
【0054】
次に、電子部品44の線膨張係数がプリント配線板41の線膨張係数より小さい場合について説明する。
回路基板104に熱が与えられると、プリント配線板41と電子部品44は膨張する。電子部品44の線膨張係数がプリント配線板41の線膨張係数より小さい場合、電子部品44の膨張量はプリント配線板41の膨張量を下回る。プリント配線板41の基板電極42a〜42hと電子部品44の電極端子45a〜45hとは、はんだ47a〜47hにより接合されているため、プリント配線板41の膨張が拘束され、はんだ接合部に熱応力が生じる。
【0055】
しかし、はんだ接合部の近傍には細隙43a、43bが設けられているため、基板電極間のプリント配線板1の熱膨張が細隙43a、43dに吸収され、プリント配線板1と電子部品4の熱膨張量の差が小さくなり、はんだ接合部に作用する熱応力が緩和される。
【0056】
プリント配線板41の線膨張係数が電子部品44の線膨張係数より小さい回路基板104の構成としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂製のプリント配線板に、セラミックス基板を搭載した電子部品44を実装した場合が考えられる。しかしこれに限らず、ガラスクロス、ガラス不織布、紙基材などにエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂などを含浸させた基材やセラミックス基板に対して、シリコン、銅、アルミやポリブチレンテレフタラート、ポリアミド66、ポリアセタールなどをベースとした電子部品を組み合わせてもよい。
【0057】
なお、実施の形態2では、細隙43a、43bは、細隙43a、43bのU字形状の両端部を通る直線46a、46bが、電子部品44の短辺と平行で、一方の短辺側に設けられた細隙43aのU字形状の底部と、他方の短辺側に設けられた細隙43bのU字形状の底部とが対向する場合について図示した。
【0058】
しかしこれに限らず、例えば、図18を参照して、細い破線で示した直線56a、56bが電子部品の短辺と平行で、一方の短辺側に設けられた細隙53aの両端部と、他方の短辺側に設けられた細隙53bの両端部とが対向するように、細隙53a、53bが配置されていてもよい。
【0059】
以上のように構成されたプリント配線板41、および回路基板104においては、基板電極42a〜42d、および基板電極42e〜42hからなる基板電極群の近傍に細隙43a、43bを設けることにより、プリント配線板41と電子部品44との線膨張係数の差に起因する熱応力が基板電極42a〜42hと電極端子45a〜45hとのはんだ接合部に生じたとしても、基板電極42a〜42hの近傍のプリント配線板41が容易に変形するため、はんだ接合部に生じる熱応力を低減することができる。その結果、はんだ接合部の疲労寿命が改善する。
【0060】
また、この実施の形態においては、基板電極ごとに細隙を設けるのではなく、複数の基板電極42a〜42d、または42e〜42hからなる基板電極群を取り囲むように細隙を設けている。そのため、電子部品44の電極端子45a〜45hの間隔が細隙を設けることができないほど狭い場合であっても、プリント配線板41の変形を容易にしてはんだ接合部に生じる熱応力を緩和することができる。また、基板電極と基板電極の間を横切る細隙が減るため、基板電極42a〜42hからの配線方向の自由度が増すという利点も有する。
【0061】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3におけるプリント配線板の構成について、図19、20を用いて説明する。この実施の形態においては、基板電極の近傍に設けた細隙の両端部に円孔が形成されている点で実施の形態1、2と相違する。これ以外の構成は上述した実施の形態1、2と同様である
【0062】
図19は、実施の形態1において説明した形状の細隙の両端部に円孔を形成したプリント配線板61の上面図である。図20は、実施の形態2において説明した形状の細隙の両端部に円孔を形成したプリント配線板71の上面図である。
【0063】
図19を参照して、プリント配線板61は、上面に実装される電子部品の電極端子に対応する位置に、基板電極62aを有する。また、基板電極62aの近傍には細隙63aが設けられている。
【0064】
基板電極62aは、プリント配線板61の上面から下面に貫通する貫通孔で、貫通孔の開口部の近傍と貫通孔の内壁面に、Cuなどの導電膜が設けられている。
【0065】
細隙63aは、プリント配線板61の上面から下面に貫通し、平面視において線状の隙間で、基板電極62aを囲む全周囲のうち、一方を除いた残りの三方を、U字形状に取り囲むように設けられている。また、U字形状の両端部には、細隙63aの幅以上の径の円孔68a、68bが形成されている。基板電極62aは、図19に細い破線で示した直線66aと細隙63aによって全周囲を取り囲まれる。直線66aは細隙63aのU字形状の一方の端部に形成された円孔68aと他方の端部に形成された円孔68bとを通る仮想の直線である。
【0066】
図20を参照して、プリント配線板71は、上面に実装される電子部品の一辺に沿って設けられた複数の電極端子に対応する位置に基板電極72a〜72dを有する。また、基板電極72a〜72bからなる基板電極群の近傍には細隙73aが設けられている。
【0067】
基板電極72a〜72dは、プリント配線板71の上面から下面に貫通する貫通孔で、貫通孔の開口部の近傍と貫通孔の内壁面に、Cuなどの導電膜が設けられている。
【0068】
細隙73aは、プリント配線板71の上面から下面に貫通し、平面視において線状の隙間で、基板電極72a〜72dからなる基板電極群を囲む全周囲のうち、一方を除いた残りの三方を、U字形状に取り囲むように設けられている。また、U字形状の両端部には、細隙73aの幅以上の径の円孔78a、78bが形成されている。基板電極72a〜72dからなる基板電極群は、図20に細い破線で示した直線76aと細隙73aによって、全周囲を取り囲まれる。直線76aは細隙73aのU字形状の一方の端部に形成された円孔78aと他方の端部に形成された円孔78bを通る仮想の直線である。
【0069】
以上のように構成されたプリント配線板61、71、およびこのプリント配線板61、71に電子部品を実装した回路基板においては、細隙63a、73aの両端部に円孔68a、68b、78a、78bを設けることにより、プリント配線板がたわむことによって生じる細隙63a、73aの両端部での応力集中が緩和される。その結果、細隙63a、73aの端部からプリント配線板61、71に発生する亀裂を防ぐことができる。
【0070】
また、細隙63a、73aの両端部と円孔68a、68b、78a、78bとの繋ぎ目を曲線にするなど、細隙63a、73aの内壁を全て曲面で構成することにより、さらに応力集中を緩和することができる。
【0071】
また、細隙63a、73aの両端部に円孔68a、68b、78a、78bを設けることにより、細隙63a、73aの両端部の間のプリント配線板61、71の幅が細くなるため、基板電極62a、72a〜72dの近傍のプリント配線基板61、71の変形能が向上し、はんだ接合部に作用する熱応力をさらに低減することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 プリント配線板、2a、2b、2c、2d 基板電極、3a、3b、3c、3d 細隙、4 電子部品、5a、5b、5c、5d 電極端子、6a、6b、6c、6d 細隙の両端部を結ぶ直線、7c、7d はんだ、68a、68b 円孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の電極と接続される基板電極を備えたプリント配線板において、
前記基板電極の近傍に前記プリント配線板の上面から下面に貫通し、平面視において線状の細隙が設けられ、前記基板電極が前記細隙の一方の端部と他方の端部とを通る仮想の直線と前記細隙とにより囲まれるプリント配線板。
【請求項2】
電子部品の一辺に沿って設けられた複数の電極に対応する前記基板電極が、
前記細隙と前記仮想の直線とにより囲まれることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
細隙は、
平面視においてV字形状、コの字形状、あるいはU字形状であることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項4】
基板電極は、
前記基板の上面から下面に貫通した貫通孔、または前記基板の表面に設けられたパッド電極であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項5】
細隙は、
端部に円孔が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のプリント配線板に電子部品を実装した回路基板であって、
前記基板電極と前記電子部品の電極とが電気的に接合される回路基板。
【請求項7】
電子部品の電極と接続される基板電極を備えたプリント配線板を形成する第1の工程と、
前記基板電極と前記電子部品の電極とを電気的に接合する第2の工程とを備えた回路基板の製造方法であって、
前記第2の工程後に、前記基板電極の近傍に前記プリント配線板の上面から下面に貫通し、平面視において線状の細隙を設ける第3の工程を行うことを特徴とする回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−204775(P2012−204775A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70418(P2011−70418)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】