説明

プリント配線板用プリプレグ、積層板及びプリント配線板

【課題】樹脂の含浸性や樹脂とガラスクロスの接着性が良好であり、熱膨張係数が低く、耐熱性や絶縁信頼性に優れた積層板、プリント配線板を提供する。
【解決手段】1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)を有機溶媒中で反応させて製造される不飽和マレイミド基を有する樹脂(A)と熱硬化性樹脂(B)を含有する熱硬化性樹脂組成物を、下記一般式(I)で表されるフェニルアミノシラン処理剤で処理された熱膨張係数が5ppm/℃以下のガラスクロスに含浸し、加熱乾燥してBステージ化して得られたプリント配線板用プリプレグ、積層板及びプリント配線板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージやプリント配線板用に好適なガラスクロを用いたプリプレグ、積層板及びプリント配線板に関し、詳しくは樹脂の含浸性や樹脂とガラスクロスの接着性が良好であり、熱膨張係数が低く、耐熱性や絶縁信頼性に優れたプリプレグ、積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化・高性能化の流れに伴い、プリント配線板では配線密度の高度化、高集積化が進展し、これにともなって、配線用積層板の耐熱性の向上による信頼性向上への要求が強まっている。このような用途においては、優れた耐熱性、低線膨張係数を兼備することが要求されている。特に近年、半導体パッケ−ジ基板等には、このような特性が特に強く要求されている。
【0003】
プリント配線板用積層板としては、エポキシ樹脂を主剤とした樹脂組成物とガラス織布とを硬化・一体成形したものが一般的である。
エポキシ樹脂は、絶縁性や耐熱性、コスト等のバランスに優れるが、近年のプリント配線板の高密度実装、高多層化構成にともなう耐熱性向上への要求に対応するには、どうしてもその耐熱性の向上には限界がある。
また、熱膨張率が大きいため、芳香環を有するエポキシ樹脂の選択やシリカ等の無機充填材を高充填化することで低熱膨張化を図っている(例えば、特許文献1参照)。しかし、充填量を増やすことは吸湿による絶縁信頼性の低下や樹脂−配線層の密着不足、プレス成形不良を起こすことが知られている。
【0004】
高密度実装、高多層化積層板に広く使用されているポリビスマレイミド樹脂は、その耐熱性は非常に優れているものの、耐湿性が高く、接着性に難点がある。さらに、積層時にエポキシ樹脂に比べ高温、長時間を必要とし生産性が悪いという欠点もある。一般的に、エポキシ樹脂の場合180℃以下の温度で硬化可能であるが、ポリビスマレイミド樹脂を積層する場合は220℃以上の高温でかつ長時間の処理が必要である。
【0005】
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂及びフェノール樹脂と変性イミド樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。この変性イミド樹脂含有組成物は耐湿性や接着性が改良されるものの、メチルエチルケトン等の汎用性溶媒への可溶性確保のため水酸基とエポキシ基を含有する低分子化合物で変性するので、得られる変性イミド樹脂の耐熱性がポリビスマレイミド樹脂と比較すると、大幅に劣るという問題がある。
【0006】
また、プリント配線板用積層板で用いられるガラスクロスは、樹脂の含浸性や樹脂とガラスクロスとの界面の接着性を発現するために、一般にシランカップリング処理剤が用いられている。従来使用されているエポキシ樹脂用のシランカップリング処理剤としては、エポキシ系シランカップリング剤やカチオン系シランカップリング剤が挙げられる。しかしポリビスマレイミド樹脂を主剤とした樹脂組成物の場合は、エポキシ系シランカップリング剤等を用いても樹脂の含浸性や樹脂とガラスクロスとの接着性に劣るため、耐熱性や絶縁信頼性が低下するといった問題がある。
【0007】
一方,プリント配線板用積層板で用いられるガラスクロスは、一般にはEガラス(熱膨張係数:5.6ppm/℃、組成 SiO2:53〜56%、Al23:14〜18%、CaO:20〜24%、B23:5〜10%、MgO、R2O:<1%)が用いられている。しかし近年、プリント配線板用積層板の低熱膨張率化が進む中で、熱膨張係数が低いガラスクロス(Sガラス、Dガラスなど)が用いられるケースが増えてきている。
低熱膨張係数のガラスクロス(Sガラス、Dガラスなど)を用いた場合は、ガラスクロスが硬いためドリル加工性が悪く、加工時に樹脂とガラスクロスの界面に発生したクラックの影響により、絶縁信頼性が大幅に低下するという問題がある。そのため、低熱膨張係数のガラスクロスを用いた場合でも、絶縁信頼性が確保できるガラスクロスの処理剤が必須となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−148343号公報
【特許文献2】特開平6−263843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、耐熱性、接着性に優れる熱硬化性樹脂組成物と、それに適したガラスクロス処理剤を選択し、樹脂の含浸性や樹脂とガラスクロスの接着性が良好であり、熱膨張係数が低く、耐熱性や絶縁信頼性に優れた積層板、プリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前期目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、マレイミド化合物とアミン化合物を有機溶媒中で反応させて製造される樹脂と熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を、フェニルアミノシラン処理剤で処理した特定のガラスクロスに含浸し、加熱、乾燥してBステージ化して得られるプリント配線板用プリプレグを用いることで、上記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、かかる知見にもとづいて完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のプリント配線板用プリプレグ、積層板及びプリント配線板を提供するものである。
1.1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)を有機溶媒中で反応させて製造される不飽和マレイミド基を有する樹脂(A)と熱硬化性樹脂(B)を含有する熱硬化性樹脂組成物を、下記一般式(I)で表されるフェニルアミノシラン処理剤で処理された熱膨張係数が5ppm/℃以下のガラスクロスに含浸し、加熱乾燥してBステージ化して得られたものであることを特徴とするプリント配線板用プリプレグ。
【0012】
【化1】

(式中,Rは炭素数1〜5のアルキレン基,Xは独立に、OCH3、OC25又はOC37である。)
【0013】
2.熱硬化性樹脂組成物に、さらに、一般式(II)に示す酸性置換基を有するアミン化合物(C)を含有する請求項1に記載のプリント配線板用プリプレグ。
【化2】

(式中、R1は、複数個ある場合は各々独立に、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基から選ばれる酸性置換基、R2は、複数個ある場合は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
【0014】
3.熱硬化性樹脂組成物に、さらに、無機充填材(D)を含有する上記1又は2のプリント配線板用プリプレグ。
4.熱硬化性樹脂組成物に、さらに、難燃剤(E)を含有する上記1〜3いずれかのプリント配線板用プリプレグ。
5.熱硬化性樹脂(B)がエポキシ樹脂及び/又はシアネート樹脂である上記1〜4いずれかのプリント配線板用プリプレグ。
6.絶縁樹脂層が上記1〜5のいずれかのプリント配線板用プリプレグを用いて成形されたものであることを特徴とする積層板。
7.上記6の積層板における絶縁樹脂層の片面又は両面に配置された金属箔を回路加工して得られたものであることを特徴とするプリント配線板。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプリント配線板用プリプレグを使用して得られる積層板は、成形性が良好であり熱膨張係数が低く、耐熱性、接着性、絶縁信頼性に優れており、高密度実装、高多層化された積層板を得ることができ、高性能化された電気・電子機器の材料として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明は、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)を有機溶媒中で反応させて製造される不飽和マレイミド基を有する樹脂(A)と熱硬化性樹脂(B)を含有する熱硬化性樹脂組成物を、下記一般式(I)で表されるフェニルアミノシラン処理剤で処理された熱膨張係数が5ppm/℃以下のガラスクロスに含浸し、加熱乾燥してBステージ化して得られたプリント配線板用プリプレグを提供する。
【0017】
【化3】

(式中,Rは炭素数1〜5のアルキレン基,Xは独立に、OCH3、OC25又はOC37である。)
【0018】
ここで不飽和マレイミド基を有する樹脂(A)は、1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)を有機溶媒中で反応させて製造されるものである。
【0019】
1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)としては、例えば、N,N'−エチレンビスマレイミド、N,N'−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N'−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N'−[1,3−(2−メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N'−[1,3−(4−メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N'−(1,4−フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4−マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4−ビス(4−マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル] −1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2,2'−ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド〔例えば大和化成(株)製、商品名:BMI−2300など〕等が挙げられる。
【0020】
これらのマレイミド化合物(a)は、単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中で、反応率が高く、より高耐熱性化できるビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、N,N'−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ポリフェニルメタンマレイミドが好ましく、溶剤への溶解性の点から、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンが特に好ましい。
【0021】
1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)としては、特に限定されるものではないが、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノメシチレン、m−キシレン−2,5−ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ビス(アミノ−t−ブチル)トルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノデュレン、4,5−ジアミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、3−ビス(3−アミノベンジル)ベンゼン、4−ビス(4−アミノベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、4−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、3−ビス(3−(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、4−ビス(4−(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、3−ビス(α,α−ジメチル−3−アミノベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(α,α−ジメチル−3−アミノベンジル)ベンゼン、3−ビス(α,α−ジメチル−4−アミノベンジル)ベンゼン、ビス(4−メチルアミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、ビス[(4−アミノフェニル)−2−プロピル]1,4−ベンゼン、2,5−ジアミノベンゼンスルホン酸、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメチル,5,5'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、3,3'−ジアミノジフェニルエタン、4,4'−ジアミノジフェニルエタン、2,2'−ジアミノジフェニルプロパン、3,3'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、2,2'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3−(2',4'−ジアミノフェノキシ)プロパンスルホン酸、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノ−t−ブチルフェニル)エ−テル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル−2,2'−ジスルホン酸、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ベンジジン、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル−6,6'−ジスルホン酸、2,2',5,5'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノ−3,3'−ビフェニルジオール、1,5−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、9,9'−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9'−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−2,7−ジスルホン酸、9,9'−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)フルオレン、ジアミノアントラキノン、3,7−ジアミノ−2,8−ジメチルジベンゾチオフェンスルホン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ジアミノポリシロキサン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾ−ル、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂肪族アミン類、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−アリル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−アクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン等のグアナミン化合物類が挙げられる。
【0022】
これらのアミン化合物(b)は単独で、または2種類以上混合して用いることもできる。これらの中で、良好な反応性や耐熱性を有する芳香族アミン類であるm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2'−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ベンジジン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノ−3,3'−ビフェニルジオール及びグアナミン化合物類であるベンゾグアナミンが好ましく、安価である点からp−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ベンゾグアナミンがより好ましく、溶媒への溶解性の点から4,4'−ジアミノジフェニルメタンが特に好ましい。
【0023】
この反応で使用される有機溶媒は特に制限されないが、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチルエステルやγ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤等が挙げられる。
これら有機溶媒は1種又は2種以上を混合して使用できる。これらの中で、溶解性の点からシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ−ブチロラクトンが好ましく、低毒性であることや揮発性が高く残溶剤として残りにくい点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0024】
この反応でマレイミド化合物(a)とアミン化合物(b)の使用量の比率は、(b)の−NH2基の当量(Tb)に対する(a)のマレイミド基の当量(Ta)の当量比(Ta/Tb)が1.0〜10.0の範囲であることが好ましく、該当量比(Ta/Tb)が2.0〜10.0の範囲であることがさらに好ましい。該当量比(Ta/Tb)を1.0以上とすることによりゲル化及び耐熱性が低下することがなく、10.0以下とすることにより有機溶剤への溶解性、銅箔接着性、及び耐熱性が低下することがない。
また、有機溶媒の使用量は、マレイミド化合物(a)とアミン化合物(b)の合計量100質量部当たり、10〜1000質量部とすることが好ましく、100〜500質量部とすることがより好ましく、200〜500質量部とすることが特に好ましい。有機溶剤の使用量は溶解性の観点から10質量部以上とし、反応時間の観点から1000質量部以下とする。
【0025】
マレイミド化合物(a)とアミン化合物(b)の反応温度は、50〜200℃であることが好ましく70〜160℃であることが特に好ましい。反応時間は0.1〜10時間であることが好ましく、1〜6時間であることが特に好ましい。
この反応には任意に反応触媒を使用することができ、特に限定されないが、反応触媒の例としては、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒等が挙げられ、1種又は、2種以上を混合して使用できる。
【0026】
熱硬化性樹脂(B)としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。これらの中で、成形性や電気絶縁性の点からエポキシ樹脂及びシアネート樹脂が好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物およびこれらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの中で、耐熱性、難燃性の点からビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0028】
また、シアネート樹脂としては、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂などのビスフェノール型シアネート樹脂およびこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどを挙げることができる。これらの中で耐熱性、難燃性の点からノボラック型シアネート樹脂が好ましい。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0029】
熱硬化性樹脂(B)には、必要に応じて硬化剤や硬化促進剤を使用することができる。
硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、アミノトリアジンノボラック樹脂等の多官能フェノール化合物、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等のアミン化合物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0030】
また、硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、及び第四級アンモニウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0031】
本発明のプリプレグに用いられる熱硬化性樹脂組成物には、さらに不飽和マレイミド基を有する樹脂(A)と共に下記一般式(II)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(C)を任意に含有させることができる。
酸性置換基を有するアミン化合物(C)を含有させる場合、不飽和マレイミド基を有する樹脂(A)と酸性置換基を有するアミン化合物(C)は、配合前に有機溶媒中で反応させておくことが好ましい。
【0032】
【化4】

(式中、R1は、複数個ある場合は各々独立に、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基から選ばれる酸性置換基、R2は、複数個ある場合は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
【0033】
一般式(II)で表される酸性置換基を有するアミン化合物(C)としては、例えば、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3,5−ジヒドロキシアニリン、3,5−ジカルボキシアニリン等が挙げられ、これらの中で、溶解性や合成の収率の点からm−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、及び3,5−ジヒドロキシアニリンが好ましく、耐熱性の点からm−アミノフェノール及びp−アミノフェノールがより好ましく、低毒性である点からm−アミノフェノールが特に好ましい。
【0034】
不飽和マレイミド基を有する樹脂(A)と酸性置換基を有するアミン化合物(C)を反応させる際に使用される有機溶媒には、前記のマレイミド化合物(a)とアミン化合物(b)を反応させる際に使用される有機溶媒と同様の溶媒が用いられる。
【0035】
ここで不飽和マレイミド基を有する樹脂(A)と酸性置換基を有するアミン化合物(C)の使用量は、(C)成分の−NH2基の当量(TC)に対する(A)成分のマレイミド基の当量(TA)の当量比(TA/TC)が1.0〜10.0の範囲であることが好ましく、該当量比(TA/TC)が2.0〜10.0の範囲であることがさらに好ましい。ゲル化及び耐熱性の観点から該当量比(TA/TC)を1.0以上とすることが好ましく、有機溶剤への溶解性、メッキ密着強度及び耐熱性の観点から10.0以下とすることが好ましい。
【0036】
また、有機溶媒の使用量は、(A)成分と(C)成分の合計量100質量部当たり、10〜1000質量部とすることが好ましく、100〜500質量部とすることがより好ましく、200〜500質量部とすることが特に好ましい。(C)成分の溶解性の観点から有機溶剤の配合量を10質量部以上とすることが好ましく、反応時間の観点から1000質量部以下とすることが好ましい。
【0037】
(A)成分と(C)成分の反応温度は、50〜200℃であることが好ましく、70〜160℃であることが特に好ましい。反応時間は0.1〜10時間であることが好ましく、1〜6時間であることが特に好ましい。
この反応には任意に反応触媒を使用することができ、特に限定されない。反応触媒の例としては、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0038】
本発明のプリプレグに用いられる熱硬化性樹脂組成物には、さらに無機充填材(D)を任意に含有させることができる。
無機充填材(D)としては、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、EガラスやTガラス、Dガラス等のガラス粉や中空ガラスビーズ等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、誘電特性、耐熱性、低熱膨張性の点からシリカが特に好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられ、乾式法シリカとしてはさらに、製造法の違いにより破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融球状シリカが挙げられる。これらの中で、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性から溶融球状シリカが好ましい。
また,無機充填材(D)の中で,水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム等は難燃剤として作用する。これら難燃性の無機充填剤を併用することが好ましい。
【0039】
無機充填材(D)として溶融球状シリカを用いる場合、その平均粒子径は0.1〜10μmであることが好ましく、0.3〜8μmであることがより好ましい。該溶融球状シリカの平均粒子径を0.1μm以上にすることで、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保つことができ、さらに10μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らし粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、ちょうど体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0040】
無機充填材(D)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物において10〜60体積%であることが好ましく、20〜55体積%であることがより好ましい。無機充填材の含有量を10〜60体積%にすることで、プリプレグの成形性と低熱膨張性を良好に保つことができる。
【0041】
本発明のプリプレグに用いられる熱硬化性樹脂組成物には、さらに難燃剤(E)を任意に含有させることができる。
難燃剤としては、無機充填材(D)に挙げた水酸化アルミニウムやベーマイト,水酸化マグネシウム以外では、臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、赤リン等のリン系難燃剤、スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤、シクロホスファゼン、ポリホスファゼン等のホスファゼン系難燃剤、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤が挙げられる。
【0042】
本発明のプリプレグに用いられる熱硬化性樹脂組成物には、上記成分以外に、樹脂組成物として熱硬化性の性質を損なわない程度に、熱可塑性樹脂、エラストマー、有機充填材、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び接着性向上剤等を使用できる。
【0043】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。
【0044】
エラストマーとしては、ポリブタジエン、アクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン及びカルボキシ変性アクリロニトリル等が挙げられる。
【0045】
有機充填材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂等よりなる均一構造の樹脂フィラー、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、共役ジエン系樹脂等よりなるゴム状態のコア層と、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、シアン化ビニル系樹脂等よりなるガラス状態のシェル層を持つコアシェル構造の樹脂フィラーが挙げられる。
【0046】
その他、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系やヒンダードアミン系酸化防止剤、光重合開始剤としてはベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系の光重合開始剤、蛍光増白剤としてはスチルベン誘導体の蛍光増白剤、接着性向上剤としては尿素シラン等の尿素化合物やシラン系、チタネート系、アルミネート系等のカップリング剤が挙げられる。
【0047】
本発明のプリプレグは、以上の各成分が有機溶媒中に溶解もしくは分散されたワニスの状態として製造することが好ましい。
この際用いる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、溶解性の点からメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、低毒性である点からメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
また、配合時、無機充填材をシラン系、チタネート系等のカップリング剤、シリコーンオリゴマー等の表面処理剤で前処理、あるいはインテグラルブレンド処理することも好ましい。
最終的に得られるワニス中の樹脂組成物は、ワニス全体の40〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。ワニス中の樹脂組成物の含有量を40〜90質量%にすることで、塗工性を良好に保ち、適切な樹脂組成物付着量のプリプレグを得ることができる。
【0048】
本発明のプリプレグでは積層板の低熱膨張率化を目的として、熱膨張係数が5ppm/℃以下の低熱膨張係数のガラスクロスを用いる。
ガラスクロスの種類は、熱膨張係数が5ppm/℃以下であれば特に限定されないが、例えばSガラス(熱膨張係数:2.4ppm/℃、組成 SiO2:62〜65%、Al23:20〜25%、MgO:10〜15%、R2O,B23:0〜1%)、Dガラス(熱膨張係数:3.1ppm/℃、組成 SiO2:75〜76%,Al23:20〜25%、B23:19〜20%、R2O:<3%、Al23,CaO,MgO:<1%)、Qガラス(熱膨張係数:0.5ppm/℃、組成 SiO2:99.9%)などが挙げられる。
【0049】
本発明では、上記のようなガラスクロスを下記一般式(I)で表されるフェニルアミノシラン処理剤で処理したものを用いる。フェニルアミノシラン処理剤の処理量は,ガラスクロス100質量部に対して0.05〜1.0質量部であることが好ましい。
【0050】
【化5】

(式中,Rは炭素数1〜5のアルキレン基,Xは独立に、OCH3、OC25又はOC37である。)
【0051】
本発明のプリプレグは、前述の熱硬化性樹脂組成物を、フェニルアミノシラン処理剤で処理された熱膨張係数が5ppm/℃以下のガラスクロスに含浸し、加熱乾燥してBステージ化して得られたものである。以下、本発明のプリプレグについて詳述する。
【0052】
本発明のプリプレグは、前述の熱硬化性樹脂組成物を、上記のガラスクロスに含浸又は、吹付け、押出し等の方法で塗工し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して本発明のプリプレグを製造することができる。ガラスクロスの厚さは、特に制限されず、例えば、約0.02〜0.5mmを使用することができる。ガラスクロスに対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90質量%となるように、ガラスクロスに含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、本発明のプリプレグを得ることができる。
【0053】
本発明の積層板は、絶縁樹脂層が上記のプリプレグを用いて成形されたものであり、該プリプレグを用いて積層成形して形成することができる。例えば、本発明のプリプレグを1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。
金属箔は、電気絶縁材料用積層板に用いるものであれば特に制限されない。また、成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力0.2〜10MPa、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
【0054】
本発明のプリント配線板は、前記の積層板における絶縁樹脂層の片面又は両面に配置された金属箔を回路加工して得られたものであり、積層板の表面に回路を形成して製造される。すなわち、本発明に係る積層板の導体層を通常のエッチング法によって配線加工し、前述のプリプレグを介して配線加工した積層板を複数積層し、加熱プレス加工することによって一括して多層化する。その後、ドリル加工又はレーザ加工によるスルーホール又はブラインドビアホールの形成と、メッキ又は導電性ペーストによる層間配線の形成を経て多層プリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0055】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、各実施例および比較例で得られた銅張積層板は、以下の方法で性能を測定・評価した。
【0056】
(1)熱膨張係数
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板のX方向のTg未満の熱膨張係数を測定した。
【0057】
(2)はんだ耐熱性
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5cm角の評価基板を作製し、平山製作所(株)製プレッシャー・クッカー試験装置を用いて、121℃、0.2MPaの条件で4時間までプレッシャー・クッカー処理を行った後、温度288℃のはんだ浴に、評価基板を20秒間浸漬した後、外観を観察することによりはんだ耐熱性を評価した。
【0058】
(3)吸湿性(吸水率)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板を作製し、平山製作所(株)製プレッシャー・クッカー試験装置を用いて、121℃、2atmの条件で5時間までプレッシャー・クッカー処理を行った後、評価基板の吸水率を測定した。
【0059】
(4)銅付き耐熱性(T−300)
銅張積層板から5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、300℃で評価基板の膨れが発生するまでの時間を測定することにより評価した。
【0060】
(5)絶縁信頼性
銅張積層板を、直径0.15mmのドリルで、穴間隔0.25mmに加工し、穴の間に電圧5.5Vを印加して、130℃、85%RHの条件で200時間放置後の絶縁抵抗を測定することにより評価した。
【0061】
製造例1:不飽和マレイミド基を有する樹脂(A−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:569.30gと、4,4'−ジアミノジフェニルメタン:59.04g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:350.00gを入れ、還流させながら5時間反応させて不飽和マレイミド基を有する樹脂(A−1)の溶液を得た。
【0062】
製造例2:不飽和マレイミド基を有する樹脂(A−2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:555.04gと、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン:73.84g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル:350.00gを入れ、還流させながら5時間反応させて不飽和マレイミド基を有する樹脂(A−2)の溶液を得た。
【0063】
製造例3:不飽和マレイミド基を有する樹脂(A−3)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:556.53gと、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン:72.29g、及びジメチルアセトアミド:350.00gを入れ、100℃で5時間反応させて不飽和マレイミド基を有する樹脂(A−3)の溶液を得た。
【0064】
製造例4:酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤(A−4)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン:556.53gと3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン:74.03g,m−アミノフェノール:21.19g、及びジメチルアセトアミド:350.00gを入れ,100℃で5時間反応させて酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する樹脂(A−4)の溶液を得た。なお、この製造例4は(C)成分の酸性置換基を有するアミン化合物を予め(A)成分と反応させたものである。
【0065】
実施例1〜5、比較例1〜5
下記成分を第1表および第2表に示した配合割合(質量部)で混合し、溶媒にはメチルエチルケトンを使用して樹脂分65質量%の均一なワニスを得た。なお、(D)成分の難燃性無機充填材AlOOHは(E)成分の難燃剤を兼ねるものであり、全ての実施例および比較例において熱硬化性樹脂組成物中の(D)無機充填材が50質量%(32体積%)である。
次に、得られたワニスを厚さ0.1mm、第1表および第2表に示した処理剤で処理されたS−ガラスクロスまたはE−ガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量50質量%のプリプレグを得た。
次に、このプリプレグを4枚重ね、18μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力2.5KPa、温度185℃で90分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
得られた銅張積層板の測定・評価結果を第1表および第2表に示す。
【0066】
(A)不飽和マレイミド基を有する樹脂:製造例1〜4で得られた(A−1)〜(A−4)の溶液。
(B)熱硬化性樹脂:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、商品名:NC−3000−H)。
(D)無機充填材:溶融シリカ((株)アドマテックス製、商品名:SO−25R)。
硬化促進剤:下記の式(III)に示す構造のビスフェノールA型エポキシ樹脂と2−フェニルイミダゾールの付加反応物。
難燃剤:ベーマイト型水酸化アルミニウム(河合石灰工業(株)製、商品名:BMT−3L)。
ガラスクロス(#2116:厚さ0.095mm)
Sガラス(日東紡績(株)製、商品名:GAT−7010、熱膨張係数:2.4ppm/℃)。
Eガラス(日東紡績(株)製、商品名:GA−7010、熱膨張係数:5.6ppm/℃)。
ガラスクロス処理剤:
KBM573:N-フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製〕。
KBM403:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製〕。
【0067】
【化6】

【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
第1表から明らかなように、本発明の実施例では、いずれも、熱膨張係数が低く、はんだ耐熱性、耐吸湿性、銅付き耐熱性、絶縁信頼性の全てに優れる。
一方、第2表の比較例1〜4では、ガラスクロスがフェニルアミノシラン処理剤で処理されていないため、はんだ耐熱性、銅付き耐熱性、絶縁信頼性が著しく劣っている。また、比較例5はガラスクロスの処理剤にフェニルアミノシラン処理剤を用いており、はんだ耐熱性、耐吸湿性、銅付き耐熱性、絶縁信頼性に優れるが,Eガラスクロスを用いているため熱膨張係数が本発明の実施例と比較して大きく劣っている。
従って、本発明により、熱膨張係数が低く、耐熱性や絶縁信頼性に優れたプリプレグ、積層板及びプリント配線板が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明により、熱膨張係数が低く、耐熱性や絶縁信頼性に優れたプリプレグ、積層板及びプリント配線板が得られ、高性能化された電気・電子機器の材料として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に少なくとも2個のN−置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a)と、1分子中に少なくとも2個の1級アミノ基を有するアミン化合物(b)を有機溶媒中で反応させて製造される不飽和マレイミド基を有する樹脂(A)と熱硬化性樹脂(B)を含有する熱硬化性樹脂組成物を、下記一般式(I)で表されるフェニルアミノシラン処理剤で処理された熱膨張係数が5ppm/℃以下のガラスクロスに含浸し、加熱乾燥してBステージ化して得られたものであることを特徴とするプリント配線板用プリプレグ。
【化1】

(式中,Rは炭素数1〜5のアルキレン基,Xは独立に、OCH3、OC25又はOC37である。)
【請求項2】
熱硬化性樹脂組成物に、さらに、一般式(II)に示す酸性置換基を有するアミン化合物(C)を含有する請求項1に記載のプリント配線板用プリプレグ。
【化2】

(式中、R1は、複数個ある場合は各々独立に、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基から選ばれる酸性置換基、R2は、複数個ある場合は各々独立に、水素原子、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示し、xは1〜5の整数、yは0〜4の整数で、且つxとyの和は5である。)
【請求項3】
熱硬化性樹脂組成物に、さらに、無機充填材(D)を含有する請求項1又は2に記載のプリント配線板用プリプレグ。
【請求項4】
熱硬化性樹脂組成物に、さらに、難燃剤(E)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のプリント配線板用プリプレグ。
【請求項5】
熱硬化性樹脂(B)がエポキシ樹脂及び/又はシアネート樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載のプリント配線板用プリプレグ。
【請求項6】
絶縁樹脂層が請求項1〜5のいずれかに記載のプリント配線板用プリプレグを用いて成形されたものであることを特徴とする積層板。
【請求項7】
請求項6の積層板における絶縁樹脂層の片面又は両面に配置された金属箔を回路加工して得られたものであることを特徴とするプリント配線板。

【公開番号】特開2013−71940(P2013−71940A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209668(P2011−209668)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】