説明

プリンヌクレオチド誘導体

本発明は、新規な8−カルビル置換cAMPSおよび重要な出発原料である8−Br−cAMPを調製するための新規な方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なプリンヌクレオチド誘導体、その製造のためのプロセス、その製造における中間体、それを含む組成物、医薬および診断薬におけるその使用、ならびにそれを使用する処置方法およびアッセイ方法に関し、特に、ここでは、プリンヌクレオチド誘導体がプリン環の8−炭素において炭素付加置換基によって置換されたプリン環状モノホスフェートホスホロチオエートである。
【背景技術】
【0002】
天然のプリン環状モノリン酸塩、環状アデノシンモノリン酸塩(cAMP)および環状グアノシンモノリン酸塩(cGMP)は、ホルモンの細胞機能に対する効果を媒介するために重要なメッセンジャー分子である。
【0003】
そのような環状ヌクレオチドの類似体を免疫機能の低下または強化に関連する疾病状態の処置に使用し得ることが提案されてきた。そのような類似体の1つは、アデノシン環状一ホスホロチオ酸塩(cAMPS)、より正確にはアデノシン3’,5’−環状一ホスホロチオ酸塩である(なお、リン原子からぶら下がった酸素の1つは硫黄によって置換されている)。その結果のリンはキラル中心であり、(リン原子における)Rp立体配置においてcAMPSはcAMPアンタゴニストであり、他方(リン原子における)Sp立体配置においてcAMPSはcAMPアゴニストである。HIVの処置の一部としてRp−cAMPSをcAMPアンタゴニストとして使用することは、例えばWO98/48809(特許文献1)において提案され、cAMPSを新生物(腫瘍)の増殖の阻害剤として使用することは米国特許第US−A−5843916号(特許文献2)において提案されている。
【0004】
WO98/48809は、特に酵素であるcAMP依存性タンパク質キナーゼI(PKAI)の活性を阻害するcAMPアンタゴニストの使用、およびこの点に関して、プリン環の8−炭素においてヘテロ原子(例えば、BrまたはCl)またはヘテロ原子付加基(例えば、ピペリジン)で置換されたRp−cAMPSの使用を示唆した。さらに、J.Biol.Chem. 270:20599−20607(1995)(非特許文献1)においてGjertsenらは、8−クロロおよび8−ブロモRp−cAMPSが8−非置換Rp−cAMPSよりもPKAIに対して高いアンタゴニスト活性を有することを実証した。
【0005】
種々な8−置換cAMPSは、バイオログ・ライフ−サイエンス・インスティティート・オブ・ブレーメン(Biolog−Life Science Institute of Bremen)(ドイツ)から市販されている。これらは、特に、Rp−8−Br−cAMPS、Rp−8−Br−MB−cAMPS(MBは、リボース環の2’位におけるモノブチリル置換基)、Rp−8−Cl−cAMPS、Rp−8−CPT−cAMPS(ここで、CPT=4−クロロフェニルチオ)、Rp−8−HA−cAMPS(ここで、HA=ヘキシルアミノ)、Rp−8−OH−cAMPS、Rp−8−PIP−cAMPS(ここで、PIP=ピペリジノ)、Rp−8−AEA−cAMPS(ここで、AEA=2−アミノエチルアミノ)、Rp−8−AHA−cAMPS(ここで、AHA=6−アミノヘキシルアミノ)、Rp−8−N3−cAMPS(ここで、N3=アジド)、およびRp−8−I−cAMPSである。また、バイオログ(Biolog)は、Sp−cAMPS化合物を供給するが、やはりこれらはすべて8−非置換、またはヘテロ原子もしくはヘテロ原子付加基による8−置換のいずれかである。
【0006】
HIV感染の現在の処置は、抗HIV薬の強力な多剤併用療法である(高活性抗レトロウイルス療法(HAART))。HAARTは、ウイルスを標的にするプロテアーゼ阻害剤ならびにヌクレオシド類似体および非ヌクレオシド類似体を含み、HIV感染患者の処置における主な構成要素である。しかし、HAARTはAIDSの進展を停止させることによってHIV感染患者の生命を著しく延ばすが、T細胞の機能は低下したままのようである。実際に、HIV特異的免疫応答がHAART中に増加するのではなく減退することが観察されてきた。さらに、HAARTはウイルスを根絶せず、患者は処置を中止した際にウイルス学的な再発を示し、患者によってはウイルスが処置に対して抵抗性を発達する。加えて、多くの患者においては、重篤となり得る副作用とともに現在の薬に対して不耐性が生じる。
【0007】
したがって、他の治療法が必要であることがますます認識されている。免疫調節に基づいた処置によって、HIV患者のある程度「ノックダウン」された免疫系の機能を改善できれば、免疫系がウイルスを保有者から駆除する能力を有するので、HIV患者において重要なアジュバント療法となり得る。cAMPのレベルを上昇させ、したがってPKAタイプIの活性を増加させると、現在のHAARTに対して非依存性であるHIV感染患者からのT細胞の増殖が著しく阻害される。PKAタイプIの選択的アンタゴニストを使用すると、HIV感染患者からのT細胞の低下していた増殖が300%まで改善される。上記の観察によると、PKAタイプIが免疫調節療法のための可能性がある標的であることが示唆される。Rp−8−Br−cAMPSなどのPKAタイプI選択的アンタゴニストは、免疫不全においてPKAタイプIの不適切な活性を逆転させ、これによりT細胞機能および免疫応答性を回復する1つの可能性を提供する。大半のRp−cAMPS異性体は、RサブユニットのcAMP結合部位に競合的に結合することによってPKAのアンタゴニストとして作用するが、その酵素を解離および活性化しないことが示されてきた。
【0008】
さらに、Rp−cAMPSの誘導体の特性評価によると、いくつかの化合物(例えば、Rp−8−Br−cAMPS)は、PKAタイプIイソ酵素の選択的および完全なアンタゴニストとして、およびPKAタイプIIイソ酵素の部分的アゴニストとして作用することが示されてきた。ほとんどの細胞および組織は、多くの細胞内部位につながれたPKAタイプII(多くのcAMP誘導効果を媒介する点で関係するとされる)を非常に大量に含む。
【特許文献1】国際公開第98/48809号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5843916号明細書
【非特許文献1】Gjertsenら、J.Biol.Chem.、1995年、270巻、p20599−20607
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これに対し、PKAタイプIも広く分布するが、免疫細胞の機能の調整に対して必要かつ十分であることが主に示されてきた。これはある程度の組織/細胞選択性を提供し、PKAタイプI選択的アンタゴニストに基づく可能な処置にとって好都合であり得る。PKAタイプIは興味深い薬剤標的であるにもかかわらず、薬剤として許容されるcAMPアンタゴニストは得られていない。cAMP作用を妨害する免疫刺激薬を開発すれば、Tリンパ球の免疫機能を改善し、cAMP作用を打ち消すPKAタイプI選択的cAMPアンタゴニストを開発することによって前臨床試験に持っていくことができる。行われた研究の特定の目的は、そのような化合物の開発、ならびにHIVにおける免疫不全を逆転させる免疫刺激薬としても化合物を評価するための方法およびモデルの開発であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここで本発明者らは驚くべきことを見出した。すなわち、特に高いPKAI(より正確にはPKA RIα)親和性(すなわち、cAMPアゴニズムおよびより特別にはアンタゴニズム)が、プリン8−炭素がカルビル(carbyl)基(すなわち、炭素付加基)によって置換されたcAMPSを使用して実現され得ることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
したがって、1態様によると、本発明は、8−カルビル置換cAMPSまたはその誘導体を提供する。
【0012】
本文中、誘導体という用語は、化学的に改変されるが、使用においては8−置換cAMPSの活性を発揮する能力を保持する化合物(例えば、塩、エステル、プロドラッグ(すなわち、生体前駆体)などの形態)を意味する。誘導体が、8−置換cAMPSとは別の成分(例えば、対イオンまたは開裂可能な保護基)を含むか、または使用中に生成する場合、この成分は好ましくは生理学的に許容される成分である。
【0013】
8−置換基は、記載されるように炭素−炭素結合によってアデニン環の8位に結合される必要があり、典型的には25個まで、より好ましくは20個まで、殊には15個まで、特には10個までの非水素原子を含む。これらの非水素原子は、少なくとも1つの炭素を含むか、すべてが炭素であり得るが、好ましくは非水素原子の少なくとも1つ(例えば、6個まで)はヘテロ原子(例えば、ハロゲン、酸素、硫黄、窒素またはリン、特にO、NまたはS)であり得る。8−置換基は、直鎖、分岐鎖、もしくは環状、またはそれらの2つもしくは3つの組み合わせであり得、飽和または不飽和であってもよい。特に好ましくは、置換基は、環式基、特に同素または複素環式アリール基(例えば、5〜10個の環状原子を含む)、最も特に5個の環状原子を含むヘテロアリール基またはフェニル基であるか、またはそれを含む。したがって、例えば、置換基は、カルボニルまたはチオカルボニル基を介して結合されてもよく、かつアシル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、アミノ、カルボキシ(または他のオキシ酸)、シアノ、アジド、アルコキシ、エステル、エーテルまたはアルキルチオ基によって置換されてもよい、アリール、アラルキル、アルカリール、アルキル、環状アルキル、アルケニル、またはアルキニル基であってもよい。いずれのそのような置換基においても、アルキル基またはそれらの不飽和類似体は、好ましくは10個までの炭素、特に6個までの炭素を含む。
【0014】
本発明に係る典型的な8−置換基の例には、以下を含む。

アリール基、例えば
ベンゼン、ナフタレンおよび
環化カルボキシル系、および
ピリジン、ジ−およびトリアジン、フラン、チオフェンおよびピロール、およびアゾール、およびトリアゾール、およびオキサ−およびチアジアゾール、およびテトラゾールを含む環化複素環系;

ヘテロアリール基、例えば
6員環アジン、ピリジン、ジアジン、トリアジンおよび環化炭素環系、および
上記のような環化複素環系、および
5員環系(例えば、フラン、チオフェンおよびピロール、アゾール、およびトリアゾール、およびオキサ−およびチアジアゾール、およびテトラゾール)および
上記のような環化複素環系および炭素環系;

任意に置換されているアリールおよびヘテロアリール基、例えば以下により置換されている:
(i)OR1(ここでR1=H、C1〜C10のアルキル、C2〜C10のアルケニル、C2〜C10のアルキニル、アリールまたはヘテロアリール基)、およびそれらの任意に置換された誘導体、
(ii)SR1、SOR1およびSO21(ここで、R1は上記のとおり)、
(iii)NR11(ここで、各R1は上記のとおりであり、同一または異なっていてもよい)、
(iv)ハロゲン、
(v)CO21、COR1、またはCONR11(ここで、各R1は上記のとおりであり、同一または異なっていてもよい)、および
(vi)さらに任意に置換されているアリールおよびヘテロアリール基;

カルボニル、チオカルボニル、イミノカルボニルおよびシアノ誘導体(例えば、CO21、COR1、CONR11、C(NR1)NR11、CSNR11およびCN(ここで、各R1は上記のとおりであり、同一または異なっていてもよい));ならびに

任意に置換されてもよい非芳香族炭素置換基、例えば
1〜C10のアルキル、
2〜C10のアルケニル、
2〜C10のアルキニル、例えば、ここで前記任意な置換には、
(a)C2〜C10のアルケニルまたはアルキニル基への、さらなる二重および三重結合の挿入、
(b)ケトンまたはアルデヒドを形成するためのオキソ基の挿入、
(c)アリールおよびヘテロアリール置換基による置換(アリールおよびヘテロアリール置換基自身は、ハロゲン(例えばFおよび/またはCl)、OR1、SR1、S−オキサイド(例えばSOR1およびSO21)、NR11、CO21、またはCONR11(ここで、各R1は上記のとおりであり、同一または異なっていてもよい)によって置換されてもよい)を含む。
【0015】
特に好ましい8−置換基には、フェニル、フリル、およびチエニル基、特に2−フリル基を含む。
【0016】
8−置換基がアリール基である場合、所望であれば1以上の極性基、例えばOR1、SR1、SOR1、SO21、NR12、ハロゲン、CO21、COR1、CONR11、NO2、P(OR12、およびCH2OR1によって置換され得る。
【0017】
本発明の8−カルビル置換cAMPSにおいて、所望ならば他の骨格位置も置換され得る(例えば、2’−酸素、6−アミノ基の窒素ならびに環状リン原子からぶらさがる酸素および硫黄)。これに関し、置換基は、8位に対する上記に定義したような置換基、または例えば、cAMPおよびcAMPSと合わせて公知の置換基(例えば、アシル、アルキルカルボニル、アリールなど)である。2’−酸素のシリル置換は、活性化合物を2’−保護化したものである本発明の化合物において特に好ましい。
【0018】
プロドラッグを生成するための置換を除いて、本発明に係る化合物は、8位だけが置換される形態において使用されるのが望ましい。しかし、環状リン基の酸性度をマスクするためにリンからぶら下がった酸素または硫黄が置換されたプロドラッグ形態が特に好ましい。したがって、そのようなプロドラッグは、例えば典型的にはS−アルキル化される。S−アルキル化は好ましい選択肢であるが、導入される基は、典型的にはホスホロチオ酸の硫黄に結合されたメチレン基に直接または間接に結合されたエステル、またはチオエステル(すなわち、R−CS−S−R−、R−CO−S−R−またはR−CS−O−R−)基であり得る。間接結合の場合、リンカーは、好ましくは(チオ)エステル開裂が脱保護を引き起こすような(例えば、下記のスキーム2bにおけるようにP−アシル−ベンジル保護基を使用)非局在化電子構造を含む。あるいは、アデニン環の6位におけるアミノ基またはフリル環上のヒドロキシル基が投与後に除去可能な基(例えば、エステルまたは二重エステル保護基)によって保護されるプロドラッグ形態が使用され得る。同様に、6−アミノ基は、アシルオキシアルキル基(ピバリルオキシメチルなど)またはアルキルオキシメチル基によってN−保護化され得る。一般に、そのようなプロドラッグの生成において、アミンまたはヒドロキシル保護は、O−およびN−保護基の性質に応じて、チア化(thiation)の前または後のいずれにおいてもなされ得る。
【0019】
リンにぶら下がった酸素または硫黄において置換された化合物は、調製プロセスが、例えばクロマトグラフィまたは結晶化によってRpおよびSp異性体を分離することが必要な場合に特に有用であり得る。同様に、2’−位がシリル化された化合物は、精製を容易にする中間体として特に好ましくあり得る。
【0020】
本発明の8−カルビル置換cAMPSは、RpまたはSp立体配置であるか、またはRpおよびSp異性体の両方を含み得る。本発明に係る使用のためには、化合物は、好ましくは少なくとも90%Rp(またはSp)、殊に少なくとも95%、特に少なくとも98%である。化合物は、cAMPアンタゴニストとして使用するためには、好ましくは主にRp異性体の形態であり、cAMPアゴニストとして使用するためには、好ましくは主にSp異性体の形態である。
【0021】
以下に、本発明の8−カルビル置換化合物が形成され得る4つのプロセススキームを特に詳細に記載する。第1において、8−ハロゲン化3’5’−環状ホスホラミデート(phosphoramidate)を8−カルビル化し、その後キラルなリンの立体配置を維持する反応において、リンが結合された窒素を硫黄で置き換える。第2および3において、アデノシンを8−カルビル化し、その後環状リン基を導入する。第4において、8−ハロ−cAMPSを8−カルビル化する。第1および第2プロセススキームは、第1の場合は柔軟性(および立体化学の維持)の理由で好ましく、第2の場合は経済性の理由で好ましい。すべてのこれらのプロセススキームは、本発明のさらなる態様を形成する。この態様によると、本発明は8−カルビル化cAMPSまたはその誘導体を製造するためのプロセスを提供し、このプロセスは以下のステップの少なくとも1つを含む。
a)2’−保護化8−カルビル化−アデノシン3’,5’−環状ホスホラミデートを二硫化炭素と反応させること、および2’−ヒドロキシルを脱保護するステップ、
b)8−カルビル化−アデノシンをSPCl3と乾燥溶媒中で反応させるステップ、
c)8−カルビル化−アデノシンを亜リン酸塩と反応させ、その後硫黄と反応させるステップ、
d)2’−任意に保護された8−ハロ−cAMPSをアルキル化剤と反応させ、および必要であれば、2’−ヒドロキシルを脱保護するステップと、
e)8−カルビル化cAMPSをその塩に変換するステップと、
f)8−カルビル化cAMPSを生物学的に開裂可能な保護基と反応させるステップ、および
g)8−カルビル化cAMPSまたはその誘導体のRp/Sp異性体混合物のRpおよびSp異性体を分離するステップ。
【0022】
プリン8位におけるカルビル化は、8位において官能基化された物質を用いて特に容易になされ得る。プリン複素環の8位における簡便な官能化は、簡単な臭素化によって臭素原子を導入することによって実現できる。
【0023】
本発明の化合物における8−カルビル置換基は、望ましくは電子供与または電子吸引基であってもよい。
【0024】
アデノシンは、周囲温度で臭素をNaOAc緩衝水溶液に添加することによって、8位において位置選択的に臭素化される。cAMPは、同様な方法で臭素化できるが、市販でも入手可能である。あるいは、8位におけるハロゲン化は、対応のリチウム化種、およびハロゲンの添加によってなされ得、特にこの方法はアデノシンの臭素化およびヨウ化のために使用されてきた。この場合の基質は、完全にシリル−保護化(TBDMS)されたアデノシンであった。8位におけるリチウム化は、標準の条件下でnBuLiを用いてなされた。このアプローチは、8−ヨード誘導体を得るための最も良い方法を提供し得る。
【0025】
カルビル化反応:
(i)ヌクレオシドレベルまたは環状ヌクレオチドレベルの両方において、カルビル化は、遷移金属で触媒されたクロスカップリング反応によって実現できる。本発明者らは、一連のパラジウム触媒反応の調製に有用な方法を開発した。
【0026】
(ii)中間の環状ホスホラミデートレベルにおいて、プリン8位におけるカルビル化は、遷移金属で触媒されたクロスカップリング反応によって実現できる。
【0027】
(iii)また、カルビル化は、環状ホスホロチオ酸レベルにおいて実現できる。好ましくは、ホスホロチオ酸は、O−エステルまたはS−エステルの形態で存在する。その後、エステルは、対応のホスホロチオ酸誘導体に開裂され得る。
【0028】
クロスカップリング反応において、簡単なアルキル化は、Pd−触媒条件下においてパーアセチル化(peracetylated)8−Br−アデノシンとテトラアルキル水素化スズとの反応において実現されてきた。低級アルキルプリンヌクレオシドの合成のためのさらに簡便な方法は、ハロゲン化プリン(halogenopurine)ヌクレオシドとトリアルキルアルミニウムのパラジウム触媒クロスカップリング反応によって得られ得る。ビニル化およびアリル化の両方は、Pd−触媒作用を使用して適切な水素化スズから実現されてきた。アルキン官能基は、8−ブロモ誘導体を介して、ソノガシラ(Sonogashira)条件下でヨウ化Cu(I)の存在下でPd−触媒作用を使用して、末端アルキンと結合され、導入されてきた。
【0029】
以下に示す反応スキームは例示であり、他の試薬および最終生成物が類似に使用または生成され得る。
【0030】
プロセスI
チレーション(thiylation)のためのアミデート中間体:
(RP)−8−置換アデノシンホスホロチオ酸の調製
【0031】
【化1】

【0032】
スキーム1のホスホロチオエートCの合成のためのこの方法において、cAMPアミデート中間体は必須の基質である。cAMPは、アデノシンについて記載したように臭素化され、またはその臭素化化合物は市販により得られる。3’,5’−環状ホスホラミデートのジアステレオ異性体混合物を調製するための方法が文献に記載されている(Stec、Acc.Chem.Res.16:411−417(1983)およびBeres et al. J.Org.Chem.50:1271−1278(1985)を参照)。最初のステップは、Ph3P/CCl4とのアップル(Apple)タイプ反応を含み、対応の塩化ホスホリルを生じる。明らかに、リン原子における塩素化反応中の立体化学制御は小さい。したがって、アニリドのジアステレオ異性体混合物は、塩素のアミド化の後に生じる(スキーム2を参照)。アミデートは、多くの有機溶媒に可溶であり、クロマトグラフィ処理または分別晶析によって純粋なジアステレオ異性体に分離できうる中性な分子である。
【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【0035】

【0036】
スキーム2における本発明者らによる新規性かつ進歩性のある方法において、アンモニウム塩1としてのcAMP−8−Brは、嵩高いシリル基によって2’−O−保護化される。TBDMS−Clは、この目的のための簡便かつ効率的な試薬である(TBDMS=t−ブチルジメチルシリル)。その後、シリルエーテル2は塩素化され構造体3を形成する。
【0037】
嵩高いシリル基は、また合成シーケンスにおいて第2の重要な機能を有する。シリル基により、チア化後の生成物が水性反応混合物から効率的に析出することが可能になり、下記の精製において役立つ。同様な性質を有する他の保護基もまた使用され得る。
【0038】
塩素化方法において、塩化オキサリルは、触媒量の、または過剰量のDMFとともに良好に使用されてきた。リンの実際の塩素化剤は、塩化オキサリルおよびDMFからその場で生成される中間体クロロ−イミノ誘導体である。所望の塩化ホスホリル立方異性体3は単離することができる。しかし、粗生成物をその後のアミド化ステップにおいて使用してもよい。
【0039】
種々の第一アミン、またはマスクされたアミンを、アミン化のために用いてもよい。求核アミンは塩素と容易に反応する。しかし、アミデートは、アミノ基の残りの水素を引き抜くために十分に強酸でなければならない。いくつかの芳香族アミンが後者の要件を満足し得る。本発明者らは、この研究のためにアニリンを選択した。アニリンとの反応は、冷所においてジクロロメタン中で実現できる。これらの条件下で反応は立体特異的である、すなわち、アミデート立方異性体4が1つだけ反応混合物から得られる。
【0040】
アミデートは、いくつかの通常の有機溶媒に容易に溶解する中性な分子である。したがって、これらの分子は、8位におけるカルビル化反応に適切である。いくつかの遷移金属はこのプロセスを触媒する。本発明者らは、パラジウムを触媒系において広く使用した。ほとんどの場合、スタンニル試薬を用いるスチレ(Stille)条件を予備研究において使用した。クロスカップリングされた生成物の収率は極めて良い。他の有機金属試薬(例えば、亜鉛およびホウ素化合物)が使用できる。スズキ(Suzuki)条件下のボロン酸のカップリングは、スキーム3に示したものと同じように進行する。したがって、多くの8−置換誘導体がこの方法で得られるようになる。
【0041】
【化4】

【0042】
スキーム2、2aおよび3における8−ブロモ誘導体4および8−カルビル化アミデート5および11はその後チア化される。アミンの置換のため、二硫化炭素によるチレーションが推薦された。本発明者らは、THF中二硫化炭素および塩基としてカリウムt−ブトキシドを用いる場合、室温でのチア化に要する時間は3時間未満であることを見い出した。ホスホロチオエート6は、極めて良好な収率で得られる。置換は、リン原子においての立体配置を維持しながら立体選択的に進行する。しかし、正式な立体配置帰属は、命名法の優先規則によって変えられる。この研究により、ホスホロチオ酸標的分子においてRp立体配置が得られる。
【0043】
保護に加えて、嵩高いシリル基の存在は、チア化生成物6の単離のために非常に重要である。なぜなら、単離および精製プロセスにおける相対的な可溶性のためである。
【0044】
生成物6の脱シリル化は、DMF溶液においてフッ化アンモニウムによって実現される。脱シリル化は室温で5日間行われた後、目的の生成物7が極めて良好な収率で単離される。このように、8−カルビル化の目的の生成物および8−ブロモcAMPSが得られる。所望ならば、8−ブロモcAMPSは、酸官能基におけるO−またはS−保護の後のクロスカップリング反応のための基質であり得る(プロセスIVにおいて称す)。
【0045】
アミデート(スキーム2における4)を立体選択的に形成することは、この欄で概略した合成において重要なステップである。アニリンアミデート水素は、後のチア化のための迅速な引き抜き(例えば、アルコキシド塩基を用いる)を引き起こすのに十分酸性である。しかし、また非常に効率的かつ立体選択的チア化は、アニリンの代わりに脂肪族または置換脂肪族アミン(例えば、ベンジルアミン)がアミデート形成のために使用される場合に達成できる。この場合、強塩基(例えば、ブチルリチウム)は脱プロトン化のために使用される(例えば、スキーム2Aを参照)。
【0046】
脂肪族または置換アミン(ベンジルアミンなど)が使用される場合、さらに、8−カルビル化は、有機亜鉛化合物、殊に有機基が小さな複素環であるもの、特に環ヘテロ原子に隣接する環炭素において結合されたものを、例えばパラジウム触媒と併用して使用することにより有利に実現され得る。一般に、環状基が8位に結合されるべきである場合、環炭素結合部位に隣接する原子は置換されないことが好ましい。
【0047】
プロセスII
閉環反応によるチア化:
(Rp)−cAMPSは、対応のヌクレオシド5’−O−(1−チオトリホスフェート)から酵素的に合成された。酵素技術は下記の実施例では使用されないが、別の方法を与え得る。
【0048】
化学合成において、O−保護のないN−ベンゾイル−アデノシンをピリジン中でビス(p−ニトロフェニル)ホスホロクロロチオエートで処理した。その後、生成物のアデノシン5’−ビス(p−ニトロフェニル)ホスホロチオエートを、カリウムt−ブトキシドを塩基として用いて乾燥DMF中で環化した。濃アンモニア水で非ブロック化した後、ジアステレオ異性体をクロマトグラフィによって分離した。
【0049】
【化5】

【0050】
非保護化ヌクレオシドのシクロチオリン酸化によるヌクレオシド−3’,5’−環状ホスホロチオエートの合成は、三塩化チオスホスホリルを用いて実現された(スキーム4)。最初のリン酸化は、おそらく糖における5’−OH基において起きる。トリアルキルホスフェートは溶媒として推薦される。生成物は、アセトニトリル水中のアルカリ性水酸化物によって高希釈で直接環化され、ジアステレオ異性体ヌクレオシド−3’,5’−環状ホスホロチオエートcAMPを1:1の比で与えた。ジアステレオ異性体ヌクレオシド−3’,5’−環状ホスホロチオエートcAMPはクロマトグラフィ手法で分離する必要がある。スキーム4における親化合物10のジアステレオ異性体は、8位において置換基を有さない。
【0051】
本発明において、アデノシン8は、スキーム6に概略されるように(Rp)−8−置換−アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオエート7に変換された。本発明者らは、ほとんど排他的に所望の3’,5’−環状ホスホロチオエート7(ただし、立体化学混合物として)を与える方法を開発した。反応は、この点において、チオリン酸化および環化が冷所において乾燥ピリジン中で実現される場合、クリーンである。いずれの立方異性体もクロマトグラフィ分離後に純粋な状態で単離することができる。8−フェニル誘導体7eは、スキーム5に示される方法によって調製された。
【0052】
所望であれば、(SP)−cAMPS誘導体は同様に得られ得る。
【0053】
【化6】

【0054】
ピリジンおよび同様の溶媒が特に乾燥していなければならないという知見は、発明といえる。なぜなら、これらの条件下の環化反応は選択性および収率の両方について非常に改善されるからである。
【0055】
【化7】

【0056】
プロセスIIおよびプロセスIIIの研究について、本発明者らは、多くの8−カルビル化ヌクレオシドを調製した。ヌクレオシド中間体は、チオ塩化ホスホリルを使用して慣用の方法で環化した。アデノシンのカルビル化反応は、スキーム6に要約される。
【0057】
スキーム7におけるヌクレオシドのカルビル化について、アデノシンの8−ブロモ誘導体11を使用した。糖ヒドロキシル基の保護は、アセチル化によりトリアセチル化基質12を提供するか、またはシリル化によってトリシリル化基質13を提供するかのいずれによってもよい。いくつかのPd−触媒系をクロスカップリング反応のために使用した。反応条件は変化させる必要があった。より良い条件のいくつかは、スキーム7において化合物14〜16を調製するために与えられる。スチレ条件はクロスカップリングされた生成物14を調製するために使用され、メチル化(15a)はネギシ(Negishi)条件下でトリメチルアルミニウムから実現された。また、同じ条件を使用して、同じ化合物(番号14b)を与えるスチレ条件下で得られた収率と同じ収率で2−フリル誘導体15bを調製した。
【0058】
【化8】

【0059】
また、スズキ条件下のボロン酸からの反応は十分に進行して化合物16を高収率で提供した。フェニル化合物16aは、スチレ条件下の14aとほぼ同じ収率で得られた。その後、8−置換アデノシンを、加水分解条件でエステル14から、およびシリルエーテル15および16からフッ化テトラブチルアンモニウム脱シリル化によって調製した。すべての反応は良好に進行した。
【0060】
【化9】

【0061】
スキーム8は、8−置換基中のα−炭素においてオキソ基およびヒドロキシル基を有するアデノシンの調製を示す。出発材料は、クロスカップリングされた8−(α−エトキシエテニル)アデノシン17kであった。おだやかな酸条件で、ビニルエーテル官能基は開裂され、アセチル誘導体17lが高収率で形成される。その後に水素化ホウ素ナトリウム還元により、対応のヒドロキシル誘導体17mを与えた。エピ異性体アルコール炭素において立体選択性は見られなかった。等量で存在する立方異性体を分離することは試みなかった。
【0062】
プロセスIII
亜リン酸塩P(III)アプローチ:
スキーム7および8における8−カルビル化ヌクレオシド17およびそれらの誘導体は、プロセスII(上記参照)と同様にプロセスIIIに対しても適切な基質である。これまでに、本発明者らは、親ホスホロチオ酸19の調製により、プロセスIIIについての原理を実証した。8−カルビル化類似体は、スキーム9において示される基質9における8−R置換基によって示される。
【0063】
【化10】

【0064】
アデノシンは、3価リン試薬と反応して環状亜リン酸塩を形成する。位置選択的3’,5’−シクロ亜リン酸塩化を確実にするためには、二官能リン(III)試薬からの第一級5’−ヒドロキシ基に対する最初の攻撃が必要である。したがって、最も良い試薬であれば非常に大きな立体的大きさを有する。文献によると、2’O−メチルアデノシンは、ビス(N,N−ジイソプロピルアミノ)メトキシホスフィンとの反応において2’O−メチル−シス−アデノシン−3’,5’−環状メチルモノ亜リン酸塩に変換され得る。反応は1H−テトラゾールによって促進される。シス−およびトランス−シクロ亜リン酸塩エステルの両方が形成される。温度を上げると、トランス−ジアステレオ異性体はシス−異性体に反転する。
【0065】
その後、各異性体は単独で、または混合物として、硫黄を用いてチア化できる。硫黄の酸化的付加は、リン原子上の電子の孤立電子対の部位において生じ、リン原子の相対的立体配置は維持される。酸化的チア化は、立方異性体混合物上または純粋な立方異性体上で行われる。前者のアプローチにおいて、ホスホロチオ酸立体異性体を分離することがさらに必要である。
【0066】
本発明者らは、亜リン酸塩化が非保護化アデノシン上で等しく十分に行われ得ることを見い出した。最初に形成される生成物は、シス−(31P NMRδ123およびトランス−(31P NMRδ129)亜リン酸塩の混合物である。混合物は、原料を失わずにシス−異性体と平衡に達した。さらなる1H−テトラゾールが異性体変換を促進することが分かった。その後、各異性体は単独で、または混合物として、硫黄を用いてチア化された。硫黄の酸化的付加は、リン原子上の電子の孤立電子対の部位で生じ、リン原子における相対的な構成は維持される。本明細書中に記載の実施例において、酸化的チア化は、ホスフェートジアステレオ異性体の混合物上で行われた。この場合、ホスホロチオ酸ジアステレオ異性体はクロマトグラフィによって分離される。
【0067】
プロセスIV
カルビル化
クロスカップリング反応によるカルビル化は、スキーム10に示すように最終のホスホロチオ酸レベルにおいて行われる。基質はプリン8位において離脱基を有する。反応シーケンスは、カルビル化反応が実現された後で純粋な立方異性体に分離される必要のあるジアステレオ異性体混合物または純粋な立方異性体のいずれかとして、従来スキームにおいて示された反応によって得られ得る2’−OTBDMS−8−ブロモ誘導体20に対して例示される。
【0068】
チオリン酸のS−またはO−原子のいずれかが保護化され、S−エステル21または対応のO−エステルが提供される。スキーム11に示されるように、S−エステル21はスチレまたはスズキ条件のいずれかでクロスカップリングされるか、またはクロスカップリング反応において使用される別の修飾がなされ、8−カルビル化生成物22が提供される。後者は、脱保護されてチオ酸6と、さらに目的化合物7となり得る。同様に、カップリング反応は、遊離2’−OH基を用いて基質上で実現され(シーケンス23−>25)、さらに目的化合物7となり得る。
【0069】
【化11】

【0070】
上記のように、本発明の化合物をプロドラッグ形態で使用することが望ましくあり得る。典型的なそのようなプロドラッグはS−アルキル化によって生成され得、S−アルキル化ための2つの反応スキームを以下にスキーム11および12として記載する。スキーム11および12は、ホスホロチオエートとハロゲン化アルキル(さらに具体的には、カルボン酸ハロアルキル)の反応を記載する。
【0071】
【化12】

【0072】
【化13】

【0073】
上記のプロセススキームにおける種々の中間体は新規であり、それ自身が本発明のさらなる態様を形成する。
【0074】
本発明の親水性の8−置換cAMPS化合物は、好ましくは、可溶性のトリアルキルアンモニウム(例えば、トリブチルアンモニウム)塩に変換した後、フラッシュクロマトグラフィ(例えば、シリカゲル上で)を行うことによって精製される。そのようなアルキルアンモニウム塩は、アンモニウム塩をアルキルアミンと混合し、アンモニアを蒸発させることによって調製され得る。次いで、所望であれば、得られた生成物は、使用前に別の塩形態(例えば、ナトリウム塩形態)に変換され得る。
【0075】
これらのプロセスで使用される条件および試薬は、一例にすぎない。他の試薬、溶媒および反応条件もまた使用できる(特に、これらのプロセスが産業的に使用されて薬剤を製造する場合)。当業者は、コスト、安全性、危険性、毒性、環境および規制面を考慮しつつ、条件、試薬および溶媒を選択することによって、慣行的にこれらのプロセスを改善し得る。
【0076】
したがって、さらなる態様によると、本発明は、8−カルビル化アデノシン環状3’,5’−ホスホラミデートまたはその誘導体を提供する。
【0077】
さらなる態様によると、本発明は、8−カルビル化−2’−保護化(例えば、シリル化)アデノシン環状3’,5’−ホスホロチオエートまたはその誘導体を提供する。
【0078】
別の態様によると、本発明は、8−ハロ(および、好ましくは2’−保護化(例えばシリル化))アデノシン環状3’,5’−ホスホラミデートまたはその誘導体を提供する。
【0079】
さらなる態様によると、本発明は、8−カルビル化アデノシン環状3’,5’−モノ亜リン酸塩またはその誘導体を提供する。
【0080】
さらなる態様によると、本発明は、8−カルビル化cAMPSまたはその誘導体を生理学的に許容可能な担体またはレシピエントとともに含む医薬組成物を提供する。
【0081】
本発明の組成物は、いずれの都合のよい投与形態を採用し得る(例えば、錠剤、カプセル、粉末、シロップ、スプレー、溶液、分散液、座剤、など)。活性剤は、適当な担体または賦形剤(例えば、溶媒(注射剤のための水など)、希釈剤、安定剤、粘度調整剤、pH調整剤、香料、ブレーバー、酸化防止剤、など)と混合され、および組成物は、従来の方法で調製され得る。
【0082】
さらなる態様によると、本発明は、ヒトまたは非ヒト動物(好ましくは、哺乳動物)の体を処置する方法であって、その体内でcAMPアゴニストまたはアンタゴニスト効果を達成する方法を提供する。この方法は、本発明に係る8−カルビル化cAMPSまたは誘導体の有効量をその体内に投与するステップを含む。
【0083】
特に好ましくは、処置方法は、新生物疾病、免疫不全およびウイルス感染(特に、HIV感染)の処置のためのものである。
【0084】
さらなる態様によると、本発明は、ヒトまたは非ヒト動物(好ましくは、哺乳動物)の体を処置する方法であって、その体内でcAMPアゴニストまたはアンタゴニスト効果を達成する方法において使用するための薬剤を製造するための、本発明に係る8−カルビル化cAMPSまたは誘導体の使用を提供する。
【0085】
8−カルビル化cAMPSまたは誘導体の用量は、処置される状態の性質、およびレシピエントの大きさ、性別および種に依存し得る。一般に、ヒトである対象に対する1日の用量は、特に、体重1kg当たり0.01〜100mg程度であり得る。好ましくは、投与は経口または静注である。
【0086】
本発明の8−カルビル化cAMPSおよび誘導体は、それらのcAMPアゴニスト/アンタゴニスト性質のために、cAMPのための競合的結合アッセイ(例えば、生物学的サンプルにおいて)において使用され得る。1つのそのようなアッセイは、WO2004/027074に記載される。そのようなアッセイにおいて、8−カルビル化cAMPSは、好ましくは標識され(例えば、放射性標識または発色団標識)、簡便には基質結合され得る。
【0087】
したがって、さらなる態様によると、本発明は、サンプル(一般に、生物学的サンプル)中のcAMPを決定するためのアッセイ方法を提供する。この方法は、サンプルをcAMP−類似体およびcAMP結合試薬と接触させるステップを含む。ここで、その類似体は8−カルビル化cAMPSまたはその誘導体であることを特徴とする。
【0088】
本発明は、アデノシン以外の他のプリンヌクレオチドに利用できる(特にグアノシン、およびアデノシンおよびグアノシン類似体(それらのジ−およびトリ−アザ類似体を含む(例えば、1−デアザプリン、3−デアザプリン、7−デアザプリンおよび1,3−デアザプリンなどの環状ジ−およびトリ−アザ類似体(例えば、環化イミダゾ−ピリジン、ベンズイミダゾールおよび環化ピロロ−ピリミジンおよびピロロ−ピリジン))))、および本発明のさらなる態様において、本明細書中に含まれる定義および実験の教示は、上記の8−カルビル化cAMPSに対して他の骨格位置で類似的にもちろん置換され得るそのような他のプリンヌクレオチドに対して必要な変更を加えて準用され得る。そのような8−カルビル化非アデノシンプリン環状3’,5’ホスホロチオエートは、例えば、ウイルス感染、免疫不全および新生物疾病の処置のために、特定のヌクレオチドに利用可能な用途において治療的に使用され得る。
【0089】
本発明の1つの態様は、本cAMPアンタゴニスト/アゴニストと、免疫系に効果を有する他の薬物との組み合わせの使用である。
【0090】
本発明の別の態様は、本cAMPアンタゴニスト/アゴニストと、HIV感染および新生物疾病の処置に有用な他の薬物との組み合わせに関する。
【0091】
本発明に係る化合物の多くの調製において重要な試薬は8−Br−cAMPである。これまでの文献の報告では、酢酸/酢酸塩媒質におけるcAMPの希釈(0.1M)溶液を使用して、この物質の小規模な調製(例えば<100mg)のみが示されている。同様の希釈条件をより大きな規模の研究で使用することを試みたが、必要な溶媒が大量であるので問題が生じた。本発明者らは、その方法が、cAMPと臭素の反応中のHBrを除去するためにcAMPの濃縮溶液を濃縮緩衝液とともに使用して、スケールアップされ得ることを見い出した。濃縮cAMP溶液を使用することによって、二重の恩恵も達成される。すなわち、形成するように沈殿する8−Br−cAMP生成物の割合が最適化されること(したがって、生成物の収集がより容易となる)、およびcAMP(H)出発原料が緩衝系に寄与することである。したがって、例えば0.2MのcAMP(H)および0.4Mの酢酸ナトリウムは、臭素化中に約4.7で安定するpHを有する0.2MのNaOAc/AcOHに等価な緩衝系を生成する。
【0092】
そのようなプロセスは、本発明のさらなる態様を形成する。この態様によると、本発明は、8−Br−cAMPの調製ためのプロセスであって、cAMPと臭素を緩衝化溶液(好ましくは、水性)中で反応させるステップ、還元剤(例えば、亜硫酸ナトリウム)と反応させて余剰の臭素を除去するステップ、生成された8−Br−cAMPを収集するステップ、および必要に応じて、収集された8−Br−cAMPから遊離臭素を除去するステップを含み、ここでcAMPは濃縮溶液の形態(例えば、0.15〜0.6M、好ましくは0.16〜0.3M、特に0.17〜0.25M)で使用され、および緩衝液(例えば、酢酸緩衝液)は十分に濃縮されて溶液pHを3.5〜5.5、特に4〜5の範囲に維持する、プロセスを提供する。このプロセスにおいて、臭素は、好ましくはゆっくりと加えられ、その後還元剤もまたゆっくりと加えられる。このプロセスは下記の実施例47に例示される。
【0093】
ここで、本発明をさらに以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0094】
8−ブロモ−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスフェートトリブチルアンモニウム塩(2)
TBDMS−Cl(2.72g、18mmol)をDMF(30ml)中の8−ブロモ−cAMPトリブチルアンモニウム塩(1)(7.0g、11.8mmol)およびイミダゾール(2.45g、36mmol)の溶液に室温で加えた。混合物を50℃で48時間アルゴン下で攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を水(150ml)中に懸濁し、1.2MのHCl(76ml)を加えた。沈殿物をろ過して取り出し、水で洗浄し、真空下で乾燥させた。酸をMeOH(80ml)中に懸濁し、Bu3N(5ml)を加えた。混合物を室温で3時間攪拌し、溶媒を蒸留して除去し、生成物を真空下で乾燥させた。収率 6.50g(78%)の白色固体。
【0095】
【化14】

【0096】
HRMS(エレクトロスプレー)):観察された陰イオン:M 520.0427。計算値 520.0422。
【実施例2】
【0097】
(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’、5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)
CH2Cl2(7ml)中の8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状ホスフェートトリブチルアンモニウム塩(2)(500mg、0.71mmol)の溶液を、CH2Cl2(15ml)中の塩化オキサリル(0.24ml、2.8mmol)およびDMF(1滴)の溶液に0℃で滴下して加えた。混合物を室温で30分間攪拌した後、溶媒を真空下で除去した。粗生成物をCH2Cl2(20ml)中に再溶解し、アニリン(0.5ml、4.26mmol)を0℃で滴下して加え、混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をCH2Cl2:MeOH(3:97および5:95)を溶出のために使用したフラッシュクロマトグラフィによって精製した。収率 125mg(29%)の白色固体。
【0098】
【化15】

【実施例3】
【0099】
(Sp)−8−(2−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’、5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5a)
DMF(15ml)中のPd(OAc)2(99mg、0.37mmol)およびPPh3(253mg、0.81mmol)の溶液を50℃で15分間攪拌した後、トリ−n−ブチル(2−フリル)スタンナン(1.4ml、4.4mmol)を加えた。その後、DMF(10ml)中の(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)(2.2g、3.7mmol)の溶液を加えた。混合物を80℃で1時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をCH2Cl2:MeOH(3:97および5:95)を溶離液として使用したフラッシュクロマトグラフィによって精製した。収率 1.93g(90%)の白色固体。
【0100】
【化16】

【0101】

【0102】
HRMS(エレクトロスプレー、TOF ES)−陽イオン:M 585.2023。計算値 585.2041。
【実施例4】
【0103】
(Sp)−8−(2−チエニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5b)
DMF(15ml)中のPd(OAc)2(117mg、0.44mmol)およびPPh3(299mg、0.96mmol)の溶液を50℃で30分間攪拌した後、トリ−n−ブチル(2−チエニル)スタンナン(2.2ml、6.8mmol)を加えた。その後、DMF(10ml)中の(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)(2.72g、4.6mmol)の溶液を加えた。混合物を85℃で1時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をCH2Cl2:MeOH(3:97および5:95)を溶離液として使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィによって精製した。収率 1.91g(71%)の白色固体。
【0104】
【化17】

【実施例5】
【0105】
(Sp)−8−(3−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5c)
DMF(20ml)中のPd(OAc)2(133mg、0.50mmol)およびPPh3(342mg、1.1mmol)の溶液を50℃で30分間攪拌した後、トリ−n−ブチル(3−フリル)スタンナン(2.67g、7.5mmol)を加えた。その後、DMF(10ml)中の(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)(3.00g、5.0mmol)の溶液を加えた。混合物を85℃で2時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をCH2Cl2:MeOH(3:97および5:95)を溶離液として使用したフラッシュクロマトグラフィによって精製した。収率 2.70g(92%)の白色固体。
【0106】
【化18】

【実施例6】
【0107】
(Sp)−8−(3−チエニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5d)
ジオキサン(3ml)中のPd(OAc)2(0.008g、0.03mmol)およびPPh3(0.02g、0.07mmol)の溶液をアルゴン下でフラッシュした。混合物を50℃で25分間攪拌すると、反応混合物は赤味がかった茶色になった。水中の(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)(0.10g、0.17mmol)、3−チオフェンボロン酸(0.03g、0.25mmol)およびCs2CO3(0.16g、0.50mmol)の溶液を加えた。温度を95℃に上げ、4.5時間攪拌した。得られた溶液を冷却し、THF(15ml)で希釈し、飽和NaHCO3(10ml)で洗浄した。有機相を分離し、MgSO4で乾燥させた。ろ過液を減圧下で蒸発させて乾燥させ、EtOAc中の3%MeOHを使用したフラッシュクロマトグラフィを行って残留物質から生成物を単離した。収率 50%の黄褐色固体。
【0108】
【化19】

【実施例7】
【0109】
(Rp)−8−(2−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸(6a)
THF中のt−BuOKの1.0M溶液(3.6ml、3.6mmol)をTHF(30ml)中の(Sp)−8−(2−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5a)(1.51g、2.6mmol)の溶液に室温で加えた。混合物をこの温度で1時間攪拌した後、CS2(0.47ml、7.8mmol)を加え、混合物をさらに3時間室温で攪拌した。溶媒の体積を約10mlに減らした後、ヘキサン(90ml)を加えた。沈殿物が形成され、ろ過によって収集し、水(55ml)中に懸濁し、1.2MのHCl(9ml)を加えた。生成物をろ過によって収集し、水で洗浄し、乾燥させた。収率 1.23g(91%)の淡黄褐色固体。
【0110】
【化20】

【0111】
HRMS(エレクトロスプレー):M 526.1326。C202856PSSiに対する計算値:526.1339。
【実施例8】
【0112】
(Rp)−8−(2−チエニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸(6b)
THF中のt−BuOKの1.0M溶液(3.8ml、3.8mmol)をTHF(35ml)中の(Sp)−8−(2−チエニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5b)(1.87g、3.1mmol)の溶液に室温で加えた。混合物を1時間攪拌した後、CS2(0.57ml、9.5mmol)を加え、混合物をさらに3時間室温で攪拌した。溶媒の体積を約10mlに減らした後、ヘキサン(90ml)を加えた。沈殿物が形成され、ろ過によって収集し、水中に懸濁し(55ml)、1.2MのHCl(10ml)を加えた。生成物をろ過によって収集し、水で洗浄し、乾燥させた。収率 1.54g(91%)の淡黄褐色固体。
【0113】
【化21】

【実施例9】
【0114】
(Rp)−8−(3−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸(6c)
THF中のt−BuOKの1.0M溶液(5.3ml、5.3mmol)をTHF(35ml)中の(Sp)−8−(3−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5c)(2.58g、4.4mmol)の溶液に室温で加えた。混合物を1時間攪拌した後、CS2(0.80ml、13.3mmol)を加え、混合物をさらに3時間室温で攪拌した。溶媒の体積を約10mlに減らした後、ヘキサン(90ml)を加えた。沈殿物が形成され、ろ過によって収集し、水中に懸濁し(55ml)、1.2MのHCl(10ml)を加えた。生成物をろ過によって収集し、水で洗浄し、乾燥させた。収率 1.95g(84%)の淡黄褐色固体。
【0115】
【化22】

【実施例10】
【0116】
(Rp)−8−(2−フリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸アンモニウム塩(7a)
DMF(10ml)中の(Rp)−8−(2−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸(6a)(1.15g、2.7mmol)およびNH4F(225mg、6.0mmol)の溶液を室温で5日間攪拌した。その後、TMSOMe(1mL)を加え、24時間攪拌を続けた。溶媒を減圧下で蒸留して除去し、MeOH(10ml)中で粗生成物を懸濁し、Et2O(80ml)を加えた。淡黄褐色の固体をろ過して取り出し、乾燥させた。収率 847mg(90%)。
【0117】
【化23】

【0118】

【0119】
HRMS(エレクトロスプレー、TOF ES)−陰イオン:M 410.0330。計算値 410.0329。
【実施例11】
【0120】
(Rp)−8−(2−チエニル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸アンモニウム塩(7b)
DMF(15ml)中の(Rp)−8−(2−チエニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸(6b)(1.33g、2.5mmol)およびNH4F(281mg、7.5mmol)の溶液を室温で5日間攪拌した。その後、TMSOMe(1ml)を加え、24時間攪拌を続けた。溶媒を減圧下で蒸留して除去し、粗生成物をMeOH(10ml)中に懸濁し、Et2O(80ml)を加えた。淡黄褐色の固体をろ過して取り出し、乾燥させた。収率 934mg(86%)の淡黄褐色固体。
【0121】
【化24】

【実施例12】
【0122】
(Rp)−8−(3−フリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸アンモニウム塩(7c)
DMF(20ml)中の(Rp)−8−(3−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸(6c)(1.9g、3.6mmol)およびNH4F(404mg、10.8mmol)の溶液を室温で5日間攪拌した。その後、TMSOMe(1ml)を加え、24時間攪拌を続けた。溶媒を減圧下で蒸留して除去し、粗生成物をMeOH(10ml)中に懸濁し、Et2O(80ml)を加えた。淡黄褐色の固体をろ過して取り出し、乾燥させた。収率 1.38g(89%)の淡黄褐色固体。
【0123】
【化25】

【実施例13】
【0124】
(Rp)−8−フェニルアデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸(7e)
8−フェニルアデノシン(17e)(0.343g、1mmol)をピリジンを用いた共沸蒸留を繰返すことによって乾燥させ、次いでアルゴンガス下で連続蒸留器上で水素化カルシウムから新しく蒸留されたピリジン(10ml)中に溶かした。乾燥THF(2ml)中の塩化チオホスホリル(0.169g、1mmol)を、アルゴン雰囲気下で−12℃において10分間にわたり、上記ピリジン溶液に加えた。混合物を−12℃で15分間攪拌した後、反応混合物を、水(40ml)中の水酸化ナトリウム(0.240g、6mmol)の激しく攪拌した溶液に60℃で加え、その後すばやく破砕ドライアイス上に注いだ。二酸化炭素の発生が止まってから、溶媒を減圧下で蒸留して除去した。蒸留中の浴温度は、35℃を超えないようにした。固体残留物をジエチルエーテルで繰返し洗浄し、メタノール(5ml)中に抽出し、混合物をろ過し、ろ過液を激しく攪拌しながらゆっくりとTHF(100ml)に加えた。セライトを通してろ過し、ろ過液を減圧下で蒸発させると、固体物質が残った。生成物は、(RP)−および(SP)−8−フェニルアデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸ジアステレオ異性体の1:1の混合物であった。混合物に対して溶離剤(水:メタノール:ギ酸=80:20:0.5)を使ったC18−官能化シリカゲルカラム上の分取逆相クロマトグラフィを行って異性体をクロマトグラフィで分離した。表題の化合物の物理データ:MS(エレクトロスプレー、負ESI、m/z):863.1(8%、2M+Na−2H)、420(100%、M−1)210.1(35%)。31PNMR(CD3OD)(ナトリウム塩):57.8ppm。
【0125】
同様に、(Sp)−8−フェニルアデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸(7e)異性体は、HPLC−分離の後で得られ得る。
【実施例14】
【0126】
2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−ブロモアデノシン(12)
無水酢酸(5.66ml、60mmol)をピリジン(50ml)中の8−ブロモアデノシン(11)(3.46g、10mmol)の溶液に滴下して加え、その後DMAP(1mmol)を加え、混合物を室温で5時間攪拌した。メタノール(10ml)を加えることによって反応を停止した。溶液を減圧下で蒸発させて乾燥させ、残留物質を酢酸エチル(250ml)に溶かし、NaHCO3(100ml)、水(3×50ml)を加えて溶液を振り、乾燥させ(MgSO4)、溶液を減圧下で濃縮した。生成物は固体であった。収率 3.21g、(68%)。
【実施例15】
【0127】
2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)−8−ブロモアデノシン(13)
TBDMS−Cl(2.30g、15.0mmol)をDMF(15ml)中の8−ブロモアデノシン(11)(1.32g、3.82mmol)およびイミダゾール(2.08g、30.5mmol)の溶液に加え、溶液を室温で24時間攪拌した。飽和NH4Cl水溶液(35ml)を加え、混合物をEtOAc(2×40ml)で抽出した。有機抽出物を水で洗浄し(2×15ml)、乾燥させ(MgSO4)、蒸発させて表題の化合物を生じた。収率 2.16g(82%)。
【実施例16】
【0128】
2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−フェニルアデノシン(14a)
2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−ブロモアデノシン(12)(0.89g、1.88mmol)、TFP(0.17g、0.75mmol)およびPd2dba3*CHCl3(0.10g、0.10mmol)をアルゴン下でDMF(14ml)中に溶かし、Bu3SnPh(0.61ml、1.88mmol)を滴下して加えながら溶液を50℃に加熱した。反応混合物を110℃で20時間加熱し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。生成物をEtOAc:MeOH(99:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィを行って残留物質から単離した。収率 0.75g(85%)。HRMS:M 469.1581。C222357に対する計算値:469.1597。
【0129】
【化26】

【実施例17】
【0130】
2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−(2−フリル)アデノシン(14b)
2−(トリブチルスタンニル)フラン(12)(1.52ml、4.84mmol)を、アルゴン下で50℃において、DMF(30ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−ブロモアデノシン(1.90g、4.03mmol)、TFP(0.37g、1.61mmol)およびPd2dba3*CDCl3(0.21g、0.20mmol)の溶液に加えた。反応混合物110℃で一晩加熱し、溶液を減圧下で蒸発させ、EtOAc:MeOH(99:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィを行って残留物質から表題の物質を単離した。収率 1.61g(87%)。HRMS:M 458.1402。C202158に対する計算値:459.1390。
【0131】
【化27】

【実施例18】
【0132】
2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−(3−フリル)アデノシン(14c)
3−トリブチルスタンニルフラン(1.36g、3.81mmol)を、アルゴン下で50℃においてDMF(22.5ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−ブロモアデノシン(12)(1.50g、3.18mmol)、TFP(0.30g、1.27mmol)およびPd2dba3*CHCl3(0.16g、0.16mmol)の溶液に室温で滴下して加えた。温度を110℃上げ、反応混合物をこの温度で一晩攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物質をEtOAc:MeOH(99:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 1.25g(86%)。HRMS:M 459.1384。C202158に対する計算値:459.1390。
【0133】
【化28】

【実施例19】
【0134】
2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−(2−チエニル)アデノシン(14d)
2−(トリブチルスタンニル)チオフェン(0.40ml、1.27mmol)を、アルゴン下で50℃において、DMF(9ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−ブロモアデノシン(12)(0.50g、1.06mmol)、TFP(0.10g、0.42mmol)およびPd2dba3*CHCl3(0.05g、0.05mmol)の溶液に滴下して加えた。得られた混合物を一晩攪拌しながら110℃で加熱した。混合物を減圧下で蒸発させて乾燥させ、EtOAc:MeOH(99:1)を使用した残留物質のフラッシュクロマトグラフィを行って表題の化合物を単離した。収率>80%。HRMS:M 475.1158。C202157Sに対する計算値:475.1162。
【0135】
【化29】

【実施例20】
【0136】
2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−(1−メチル−2−ピロリル)アデノシン(14e)
2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−ブロモアデノシン(12)(1.50g、3.18mmol)、トリス(2−フリル)ホスフィン(0.29g、1.27mmol)およびPd2dba3*CHCl3(0.16g、0.16mmol)をアルゴン下でフラッシュし、DMF(10ml)中に溶かした。混合物を50℃に加熱し、1−メチル−2−(トリブチルスズ)ピロール(1.41g、3.81mmol)を加え、溶液を110℃で一晩加熱した。溶媒を減圧下で除去し、残留物質をEtOAc:MeOH(99:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 1.15g(77%)。HRMS:M 472.1716。C212467に対する計算値:472.1706。
【0137】
【化30】

【実施例21】
【0138】
2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−エチルアデノシン(14f)
Et4Sn(0.84ml、4.24mmol)をNMP(25ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−ブロモアデノシン(12)(1.0g、2.12mmol)およびPd(PPh34(0.24g、0.21mmol)の溶液にアルゴン下で室温において滴下して加えた。混合物を130℃に加熱し、混合物をこの温度で20時間加熱した。EtOAc(100ml)を冷却した反応混合物に加え、溶液を水(4×50ml)および飽和NaCl水溶液(50ml)で洗浄した。有機溶液を乾燥させ(MgSO4)、溶媒を蒸留して除去し、残留物質をCH2Cl2中10%のMeOHを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 0.51g(57%)。HRMS:M 421.1585。C182357に対する計算値:421.1597。
【0139】
【化31】

【実施例22】
【0140】
2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−(1−エトキシビニル)アデノシン(14g)
(1−エトキシビニル)トリブチルスズ(0.60ml、1.78mmol)をDMF(14ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−ブロモアデノシン(12)(0.70g、1.48mmol)、TFP(0.14g,0.59mmol)およびPd2dba3*CHCl3(0.08g、0.07mmol)の溶液にアルゴン下で50℃において滴下して加えた。反応混合物を80℃で17時間攪拌した。反応混合物を減圧下で蒸発させて乾燥させ、残留物質をEtOAc:MeOH(99:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 0.52g(76%)の白色固体。
【実施例23】
【0141】
2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)−8−メチルアデノシン(15a)
AlMe3(トルエン中2M、0.44ml、0.87mmol)をTHF(5ml)中の8−ブロモ−2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)アデノシン(13)(0.30g、0.44mmol)およびPd(PPh34(0.03g、0.02mmol)の溶液にアルゴン下で滴下して加えた。混合物を70℃で4時間加熱したとき、TLCは反応が完了したことを示した。溶液を減圧下で蒸発させ、CH2Cl2中10%のMeOHを使用したシリカゲル上での残留物質のフラッシュクロマトグラフィを行って生成物を単離した。収率 0.27g(>98%)。
【実施例24】
【0142】
2’、3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)−8−(2−フリル)アデノシン(15b)
NMP(25ml)中の8−ブロモ−2’,3’,5’−トリス−O−(t−ブチルジメチルシリル)アデノシン(13)(3.44g、5.0mmol)、Pd2dba3・CHCl3(65mg、0.063mmol)、トリ(2−フリル)ホスフィン(115mg、0.5mmol)および2−トリブチルスタンニルフラン(1.9ml、6.0mmol)の溶液を80℃で25時間加熱した。EtOAc(300ml)を冷却した反応混合物に加え、溶液を水(3×50ml)を加えて振り、有機溶液を乾燥させ(MgSO4)、蒸発させ、残留物質をEtOAc:ヘキサン(最初に1:4、次に1:2)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。生成物は白色固体であった。収率 2.94g(87%)。
【0143】
【化32】

【0144】

【実施例25】
【0145】
2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)−8−フェニルアデノシン(16a)
フェニルボロン酸(0.09g、0.76mmol)およびCs2CO3(0.49g、1.53mmol)をジオキサン(5ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)−8−ブロモアデノシン(13)(0.35g、0.51mmol)およびPd(PPh34(0.06g、0.05mmol)の溶液にアルゴン下で室温において加えた。混合物を100℃に加熱し、すべてのCs2CO3が溶けるまで水を加え、溶液を還流下で一晩加熱した。EtOAc(15ml)を冷却した反応混合物に加え、その後水(10ml)を加えて振った。有機溶液を乾燥させ(MgSO4)、蒸発させ、EtOAc:MeOH(99:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィを行って残留物質から表題化合物を単離した。収率 0.31g(89%)。
【0146】
【化33】

【0147】

【実施例26】
【0148】
2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)−8−(3−チエニル)アデノシン(16b)
3−チオフェンボロン酸(0.14g、1.09mmol)およびCs2CO3(0.71g、2.18mmol)をジオキサン(7ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)−8−ブロモアデノシン(13)(0.50g、0.73mmol)およびPd(PPh34(0.08g、0.07mmol)の溶液にアルゴン下で加えた。混合物を100℃に加熱し、水(1ml)を加えてすべてのCs2CO3を溶かした。溶液を還流下で一晩加熱し、室温に冷却し、EtOAc(20ml)を加えた。溶液を水(15ml)を加えて振り、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で蒸発させた。EtOAc:MeOH(99:1)使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィを行って生成物を残留物質から単離した。収率 0.43g(86%)。HRMS:M 691.3425。C325754SSi3に対する計算値:691.3439。
【0149】
【化34】

【0150】

【実施例27】
【0151】
2’,3’,5’−トリス−O−(t−ブチルジメチルシリル)−8−(3−ピリジニル)アデノシン(16c)
ピリジン−3−ボロン酸(0.59g、0.48mmol)およびCs2CO3(3.11g、9.57mmol)をジオキサン(50ml)中の2’,3’,5’−トリス−O−(t−ブチルジメチルシリル)−8−ブロモアデノシン(13)(2.20g、3.19mmol)およびPd(PPh34(0.37g、0.32mmol)の溶液にアルゴン下で加えた。水(10ml)を加えてすべてのCs2CO3を溶かした。溶液を還流下で一晩加熱した。EtOAc(200ml)を冷却した反応混合物に加え、得られた溶液を水(100ml)を加えて振り、有機溶液を乾燥させ(MgSO4)、蒸発させ、残留物質をEtOAc:MeOH(99:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 1.76g(80%)。HRESI:M+H 687.3900。C335864Si3+Hに対する計算値:687.3900。
【0152】
【化35】

【0153】

【実施例28】
【0154】
2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)−8−(4−ピリジニル)アデノシン(16d)
水(11ml)中のピリジン−4−ボロン酸(0.27g、2.18mmol)およびCs2CO3(1.42g、4.35mmol)の溶液をジオキサン(25ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)−8−ブロモアデノシン(13)(1.0g、1.45mmol)およびPd(PPh34(0.17g、0.15mmol)の溶液に加え、反応混合物を100℃で一晩加熱した。EtOAc(80ml)を冷却した反応混合物に加え、得られた混合物を水(50ml)を加えて振った。乾燥させた(MgSO4)溶液を蒸発させ、残留物質をEtOAc:MeOH(99:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 0.58g(58%)。HRESI:M+H 687.3883。C335864Si3+Hに対する計算値:687.3900。
【0155】
【化36】

【実施例29】
【0156】
8−(2−フリル)アデノシン(17a)(エステル加水分解)
MeOH(50ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−(2−フリル)アデノシン(14b)(1.39g、3.03mmol)およびK2CO3(0.14g、1.01mmol)の溶液を室温で一晩攪拌した。シリカゲルを溶液に加え、懸濁液を攪拌し、蒸発させて乾燥させ、残留物質をシリカゲルを有するカラムの最上部に加えてフラッシュクロマトグラフィを行った。カラムは、CH2Cl2中15%のMeOHで展開した。収率 0.68g(67%)。
【実施例30】
【0157】
8−(2−フリル)アデノシン(17a)(脱シリル化)
THF(70ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)−8−(2−フリル)アデノシン(15b)(2.78g、4.1mmol)およびTBAF×3H2O(5.30g、16.8mmol)の溶液を室温で2時間攪拌した。溶媒を蒸留して除去し、MeOH:CH2Cl2(1:9)を使用したフラッシュクロマトグラフィによって生成物を精製し、少量のMeOHを加えて生成物を粉砕した。収率 1.24g(90%)の淡黄褐色固体。
【0158】
【化37】

【実施例31】
【0159】
8−(2−チエニル)アデノシン(17b)
MeOH中の2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−(2−チエニル)アデノシン(14d)およびK2CO3の溶液を室温で一晩攪拌し、減圧下で蒸発させて乾燥させ、CH2Cl2中10%のMeOHを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィを行って残留物質から表題化合物を単離した。収率>60%。HRMS:M 349.0832。C141554Sに対する計算値:349.0845。
【0160】
【化38】

【実施例32】
【0161】
8−(3−フリル)アデノシン(17c)
MeOH(35ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−(3−フリル)アデノシン(14c)(0.95g、2.07mmol)およびK2CO3(0.10g、0.69mmol)の溶液を室温で一晩攪拌した。シリカゲルを加え、懸濁液を攪拌し、溶媒を減圧下で蒸発させて除去した。残留物質をCH2Cl2中15%のMeOHを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 0.50g(72%)。HRESI:M+H 350.0902。C141554S+Hに対する計算値:350.0917。M+Na:372.0747。C141554S+Naに対する計算値:372.0736。
【0162】
【化39】

【実施例33】
【0163】
8−(3−チエニル)アデノシン(17d)
THF(67ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)−8−(3−チエニル)アデノシン(16b)(1.21g、1.75mmol)およびTBAF(1.83g、6.99mmol)の溶液を室温で一晩攪拌した。溶媒を蒸留して除去し、残留物質をCH2Cl2中10%のMeOHを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 0.51g(84%)。HRESI:M+H 350.0902。C141554S+Hに対する計算値:350.0917。M+Na 372.0747。C141554S+Naに対する計算値:372.0736。
【0164】
【化40】

【0165】

【実施例34】
【0166】
8−フェニルアデノシン(17e)
MeOH(23ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル−8−フェニルアデノシン(14a)(0.73g、1.56mmol)およびK2CO3(0.07g、0.52mmol)の溶液を室温で24時間攪拌した。シリカゲル(約2g)を加えた。懸濁液を攪拌し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。残留物質をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィカラムの最上部に加え、カラムをCH2Cl2中10%のMeOHで展開した。収率 0.48g(91%)。HRMS:M 343.1287。C161754に対する計算値:343.1281。
【0167】
【化41】

【実施例35】
【0168】
8−(3−ピリジニル)アデノシン(17f)
THF(31ml)中の2’,3’,5’−トリス−O−(t−ブチルジメチルシリル)−8−(3−ピリジニル)アデノシン(16c)(0.56g、0.82mmol)およびTBAF(0.85g、3.26mmol)の溶液をアルゴン下で室温において一晩攪拌した。溶媒を蒸留して除去し、残留物質をMeOH(10ml)中に溶かした。溶液を0℃で一晩放置し、表題化合物をろ過によって単離した。
【0169】
【化42】

【0170】

【実施例36】
【0171】
8−(4−ピリジニル)アデノシン(17g)
TBAF(7.39ml、1M、7.39mmol)を、THF(28ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)−8−(4−ピリジニル)アデノシン(16d)(1.27g、1.85mmol)の溶液に加え、溶液を室温で一晩攪拌した。溶液を減圧下で蒸発させて乾燥させ、残留物質をCH2Cl2中15%のMeOHを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 0.46g(72%)。HRESI:M+H 345.1313。C151664+Hに対する計算値:345.1305。
【0172】
【化43】

【実施例37】
【0173】
8−(1−メチル−2−ピロリル)アデノシン(17h)
MeOH(37ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−(1−メチル−2−ピロリル)アデノシン(14e)(1.04g、2.20mmol)およびK2CO3(0.10g、0.73mmol)の溶液を室温で一晩攪拌し、溶液を減圧下で蒸発させ、残留物質をCH2Cl2中15%のMeOHを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 0.64g(84%)。HRMS:M 346.1371。C151864に対する計算値:346.1390。
【0174】
【化44】

【実施例38】
【0175】
8−メチルアデノシン(17i)
THF(30ml)中の8−ブロモ−2’,3’,5’−トリス−(O−t−ブチルジメチルシリル)アデノシン(15a)(1.41g、2.26mmol)およびTBAF(2.37g、9.05mmol)の溶液を室温で一晩攪拌した。溶媒を蒸留して除去し、残留物質をCH2Cl2中15%のMeOHを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 0.59g(93%)。
【実施例39】
【0176】
8−エチルアデノシン(17j)
MeOH(19ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−エチルアデノシン(14f)(0.63g、1.5mmol)およびK2CO3(0.07g、0.50mmol)の溶液を室温で18時間攪拌した。シリカゲルを加え、懸濁液を攪拌し、溶媒を減圧下で蒸発させて除去した。残留物質を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィカラムの最上部に加え、カラムをCH2Cl2中15%のMeOHで展開した。収率 0.23g、52%。
【実施例40】
【0177】
8−(1−エトキシビニル)アデノシン(17k)
MeOH(17ml)中の2’,3’,5’−トリス−(O−アセチル)−8−(1−エトキシビニル)アデノシン(14g)(0.53g、1.15mmol)およびK2CO3(0.05g、0.38mmol)の溶液を室温で24時間攪拌した。このとき、TLCは完全な変換を示した。シリカゲルを溶液に加え、懸濁液を攪拌し、減圧下で蒸発させて乾燥させた。残留物質をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィカラムの最上部に加え、カラムをCH2Cl2中10%のMeOHで展開した。収率 0.37g(>95%)。HRMS:M 337.1395。C141955に対する計算値:337.1386。
【0178】
【化45】

【0179】

【実施例41】
【0180】
8−アセチルアデノシン(17l)
1MのHCl(10ml)を、THF(40ml)中の8−エトキシビニルアデノシン(17k)(1.48g、4.37mmol)の溶液に加え、溶液を室温で20時間攪拌した。K2CO3水溶液を加えて中性pHにし、混合物を直接フラッシュクロマトグラフィシリカゲルカラムに加え、カラムをCH2Cl2中15%のMeOHで展開した。収率 1.17g(87%)。
【0181】
【化46】

【実施例42】
【0182】
8−(1−ヒドロキシエチル)アデノシン(17m)
NaBH4(0.19g、5.05mmol)をTHF(35ml)およびMeOH(4ml)中の8−アセチルアデノシン(17l)(0.78g、2.52mmol)の溶液にアルゴン下で加え、混合物を室温で18時間攪拌した。混合物を中性pHになるまで1MのHClを滴下して処理し、混合物をフラッシュクロマトグラフィカラムの最上部に加え、カラムをCH2Cl2中30%のMeOHで展開した。収率 0.46g(59%)。生成物は2つのアルコールエピマーの混合物であった(比1:1)。
【実施例43】
【0183】
(Rp)−アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸O−メチルエステル(19)
乾燥DMF(7ml)中のアデノシン(9)(0.106g、0.4mmol)の溶液を(0.45ml、0.2mmol)アセトニトリル中の0.5Mテトラゾールに加え、溶液をアルゴン雰囲気下で60℃に加熱した。次いで、ビス(N,N−ジイソアミノ)メトキシホスフィン(0.105g、0.4mmol)をゆっくりと加え、反応混合物をこの温度で15分間放置した。反応混合物を室温に冷却し、硫黄(0.013g、0.4mmol)を加えた。混合物を室温で8時間攪拌した。反応混合物を減圧下で蒸発させて乾燥させた。残留固体は(Rp)−アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸およびその(SP)−異性体の混合物(比2:3)であった。異性体を逆相C18−官能シリカゲル上の分取HPLCによって分離した。単離された表題化合物の収率は0.018g(12%)であった。
【0184】
【化47】

【実施例44】
【0185】
(RP)−8−(2−チエニル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸S−メチルピバレート(26)
(Rp)−8−(2−チエニル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸アンモニウム塩(7b)(0.2mmol)をメタノール(5ml)に溶かし、トリエチルアミン(0.3mmol)を加えた。真空下で混合物を蒸発させると、(Rp)−8−(2−チエニル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリエチルアンモニウム塩が残った。この生成物の一部(74mg、0.14mmol)およびNaI(20mg、0.11mmol)をDMF(3ml)中にアルゴン下で溶かし、クロロメチルピバレート(20mg、0.11mmol)を加えた。混合物を室温で48時間攪拌した。溶媒を減圧下で蒸留して除去し、残留物質をCH2Cl2:MeOH(最初に3:97、次いで5:95)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 30mg(40%)の白色固体。
【0186】
【化48】

【実施例45】
【0187】
(RP)−および(SP)−8−フェニルアデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸S−メチルピバレート(27)
(RP)−および(SP)−8−フェニルアデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸(7e)(そのナトリウム塩として)の粗製1:1ジアステレオ異性体混合物(150mg、0.34mmol)をメタノール(5ml)中に溶かし、ヨウ化ナトリウム(51mg、0.34mmol mg)を加え、その後クロロメチルピバレート(61mg、0.41mmol)を加えた。反応混合物をアルゴン下で保持し、還流下で6時間加熱した。混合物を減圧下で蒸発させて乾燥させ、固体残留物をジクロロメタンで数回抽出した。抽出物を収集し、蒸発させて、茶色がかった固体(142mg)を得た。リンNMRから、粗生成物が約1:1の比で表題化合物のみからなることが明らかであった。次いで、ジアステレオ異性体をCH2Cl2:MeOH(95:1)を使用したシリカゲルフラッシュクロマトグラフィによって分離した。
【0188】
(RP)−8−フェニルアデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸S−メチルピバレート(27)
固体生成物を16%の収率(28mg)で単離した。
【0189】
【化49】

【0190】
(SP)−8−フェニルアデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸S−メチルピバレート(27)
固体生成物を20%の収率(36mg)で単離した。
【0191】
【化50】

【実施例46】
【0192】
PKA Iα酵素活性
公知のRp−8−Br−cAMPSに対するPKAタイプIα酵素活性のための結合クック比色アッセイ(coupled Cook colorimeric assay)においてRp−8−カルビル化cAMPSをそれらの効力についてテストした。結果を以下の表1に記載する。
【0193】
【表1】

【実施例47】
【0194】
8−ブロモアデノシン−3’,5’−環状リン酸(1)
臭素(15.4ml、0.30mol)を水(1.5l)中のcAMP(98.8g、0.30mol)および酢酸ナトリウム三水和物(81.6g、0.60mol)の溶液に1時間にわたり室温で攪拌しながら加えた。24時間後、暗赤色の消えるまで亜硫酸ナトリウムをゆっくりと加えた。沈殿物をろ過によって収集し、固体を水、イソプロピルアルコールおよびジエチルエーテルで洗浄し、その後減圧下で乾燥させた。生成物を水(500ml)中に分散させ、重炭酸ナトリウム(1当量)をゆっくりと加えて溶かした。すべての物質が溶けてから、少量の亜硫酸ナトリウムを加えて溶液の暗赤色を除去した。激しく攪拌しながら1.0M臭化水素酸を滴下して生成物を沈殿させた。沈殿物を収集し、水、イソプロピルアルコール、ジエチルエーテルで洗浄し、明黄色粉末を高真空下で乾燥させた。収率 92.0g(76%)。1HNMRは文献と一致していた。
【実施例48】
【0195】
(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)
乾燥THF(20ml)中の乾燥DMF(0.289g、3.96mmol)をアルゴンガスの雰囲気下に置き、0℃に冷却し、その後ジクロロメタン中の塩化オキサリル(2ml、2M、4mmol)をゆっくりと加えた。冷却槽を除き、懸濁液を攪拌しながら室温で30分間放置し、反応混合物を−7℃に冷却し、乾燥ジクロロメタン(8ml)中のトリブチルアンモニウム8−ブロモアデノシン−2O−TBDMS−3,5−環状モノホスフェート(1)(2.55g、3.60mmol)の溶液に加えた。混合物をこの温度で1時間攪拌し、放置して室温にし、乾燥(CaH2)アニリン(3.35g、36mmol)を加えた。3時間後、混濁した反応混合物をジクロロメタンで100mlに希釈し、冷たい飽和炭酸水素ナトリウム(3×25ml)で洗浄した。次いで、有機相をMgSO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去し、残留物質をシクロヘキサン(100ml)に激しく攪拌しながらゆっくりと加えた。沈殿物を乾燥させ、ジクロロメタン中7%のメタノールを溶離剤として使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 1.46g(68%)。1HNMRは文献と一致していた。
【実施例49】
【0196】
(Sp)−8−(5−メチル−2−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5e)
乾燥脱気DMF(6ml)、酢酸パラジウム(0.0169g、0.07mmol)およびトリフェニルホスフィン(0.041g、0.158mmol)を深赤色の均質溶液となるまで(約15分)50℃においてアルゴン下でともに加熱した。2−トリブチルスタンニル−5−メチルフラン(0.904mmol)および(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(0.450g、0.753mmol)を加え、混合物を80℃で4時間加熱した。溶媒を蒸留して除去し、残留物をジクロロメタン(3ml)に溶かし、溶液をヘキサン(50ml)に激しく攪拌しながら加えた。ジクロロメタン中7%のメタノールを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィに沈殿物をかけて生成物を得た。収率:0.405g(90%)。HRMS(エレクトロスプレー):(M+H) 599.2181。C273566PSi+Hに対する計算値:599.2197。
【0197】
【化51】

【実施例50】
【0198】
(Sp)−8−(5−メトキシ−2−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5f)
乾燥脱気DMF(6ml)中の酢酸パラジウム(16.9mg、0.075mmol)およびトリフェニルホスフィン(41.5mg、0.158mmol)の溶液を50℃においてアルゴン下で15分間加熱し(深赤色)、その後2−(トリブチルスタンニル)−5−メトキシフラン(0.387g、1.00mmol)および(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)(0.450g、0.753mmol)を加えた。混合物を85℃で4時間加熱した。溶媒を真空下で除去し、残留物質をジクロロメタン(3ml)に溶かし、溶液を激しく攪拌したヘキサン(50ml)にゆっくりと加え、沈殿した物質をジクロロメタン中7%のメタノールを使用したシリカ上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 310mg(67%)。HRMS(エレクトロスプレー):(M+H) 615.2118。C273567PSi+Hに対する計算値:615.2146。
【0199】
【化52】

【実施例51】
【0200】
(Sp)−8−(5−(t−ブチルジメチルシリルオキシメチル)−2−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5g)
乾燥脱気DMF(6ml)中の酢酸パラジウム(16.9mg、0.075mmol)およびトリフェニルホスフィン(41.5mg、0.158mmol)の溶液を50℃においてアルゴン下で15分間加熱し(深赤色)、その後2−トリブチルスタンニル−5−(t−ブチルジメチルシリルオキシメチル)フラン(0.478g、0.904mmol)および(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)(0.450g、0.753mmol)を加えた。混合物を85℃で4時間加熱した。溶媒を真空下で除去し、残留物質をジクロロメタン(3ml)に溶かし、溶液を激しく攪拌したヘキサン(50ml)にゆっくりと加え、沈殿した物質をジクロロメタン中7%のメタノールを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 461mg(84%)。HRMS(エレクトロスプレー):(M+H) 729.3001。C334967PSi2+Hに対する計算値:729.3011。
【0201】
【化53】

【実施例52】
【0202】
(SP)−8−(2−ベンゾフリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホロアミデート(5h)
乾燥脱気DMF(6ml)中の酢酸パラジウム(16.9mg、0.075mmol)およびトリフェニルホスフィン(41.5mg、0.158mmol)の溶液を50℃においてアルゴン下で15分間加熱し(深赤色)、その後2−(トリブチルスタンニル)ベンゾフラン(0.381g、0.936mmol)および(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)(0.450g、0.753mmol)を加えた。混合物を85℃で4時間加熱した。溶媒を真空下で除去し、残留物質をジクロロメタン(3ml)に溶かし、溶液を激しく攪拌したヘキサン(50ml)にゆっくりと加えた。沈殿物をジクロロメタン中7%のメタノールを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率:439mg(92%)。HRMS(エレクトロスプレー):(M+H) 635.2171。C303566PSi+Hに対する計算値:635.2197.
【0203】
【化54】

【実施例53】
【0204】
(SP)−8−(2−N−メチルピロリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5i)
DMF(5ml)中のPd(OAc)2(37mg、0.166mmol)およびPPh3(91mg、0.348mmol)の混合物を溶液が暗赤色に変るまで50℃で攪拌した。DMF(2ml)中の(SP)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニル−ホスホラミデート(4)(0.500g、0.83mmol)、および2−(トリブチルスタンニル)−N−メチル−2−ピロール(0.461g、1.24mmol)を加えた。反応混合物を90℃で4時間攪拌した。DMFを減圧下で除去し、残留物質をCH2Cl2中7.5%のMeOHを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。生成物は、微量の有機スズ残留物が混じった白色固体であった。有機スズ残留物はCH2Cl2中に生成物を溶かすことによって除去し、ヘキサンで再沈殿させた。収率 0.350g(70%)。HRMS(エレクトロスプレー):M+H 598.2339。C273675PSi+Hに対する計算値:598.2357。
【0205】
【化55】

【実施例54】
【0206】
(SP)−8−(3−ピリジニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5j)
NMP(4ml)中のPd(OAc)2(37mg、0.166mmol)およびPPh3(91mg、0.348mmol)の混合物を溶液が暗赤色に変るまで50℃で攪拌した。NMP(2ml)中の(SP)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)(0.500g、0.83mmol)、および3−(トリブチルスタンニル)ピリジン(0.610g、1.66mmol)の溶液を加えた。反応混合物を110℃で10時間攪拌した後、NMPを減圧下で除去し、残留物質をCH2Cl2中7.5%のMeOHを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。生成物は、微量の有機スズ残留物が混じった白色固体であった。有機スズ残留物はCH2Cl2中にカップリング生成物を溶かすことによって除去し、ヘキサンで再沈殿させた。収率 0.280g(57%)。HRMS(エレクトロスプレー):M+H 596.2211。C273475PSi+Hに対する計算値:596.2201。
【0207】
【化56】

【実施例55】
【0208】
(SP)−8−(フェニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5k)
DMF(4ml)中のPd(OAc)2(37mg、0.166mmol)およびPPh3(91mg、0.348mmol)の混合物を50℃で溶液が暗赤色に変るまで攪拌した。NMP(2ml)中の(RP)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)(0.500g、0.83mmol)、およびフェニルトリブチル水素化スズ(0.609g、1.66mmol)の溶液を加えた。反応混合物を135℃で7時間攪拌した後、NMPを減圧下で除去し、残留物質をCH2Cl2中7.5%のMeOHを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。生成物は、微量の有機スズ残留物が混じった白色固体であった。有機スズ残留物はCH2Cl2中に生成物を溶かすことによって除去し、ヘキサンで再沈殿させた。収率 0.310g(63%)。HRMS(エレクトロスプレー):M+H 595.2275。C283565PSi+Hに対する計算値:595.2248。
【0209】
【化57】

【実施例56】
【0210】
(SP)−8−(4−メトキシフェニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5l)
DMF(4ml)中のPd(OAc)2(37mg、0.166mmol)およびPPh3(91mg、0.348mmol)の混合物を溶液が暗赤色に変るまで50℃で攪拌した。NMP(2ml)中の(SP)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)(0.500g、0.83mmol)、および4−(トリブチルスタンニル)アニソール(0.666g、1.66mmol)の溶液を加えた。反応混合物を120〜125℃で10時間攪拌した後、NMPを減圧下で除去した。残留物質をCH2Cl2中7.5%のMeOHを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。生成物は、微量の有機スズ残留物が混じった白色固体であった。有機スズ残留物はCH2Cl2中に生成物を溶かすことによって除去し、ヘキサンで再沈殿させた。収率 0.315g(61%)。HRMS(エレクトロスプレー):M+H 625.2368。C293766PSi+Hに対する計算値:625.2354。
【0211】
【化58】

【実施例57】
【0212】
(Sp)−8−(2−チアゾリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5m)
DMF(5ml)中のPd(OAc)2(27mg、0.10mmol)およびPPh3(62mg、0.20mmol)の溶液を50℃で30分間攪拌し、その後2−(トリブチルスタンニル)チアゾール(260mg、0.70mmol)を加え、その後(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(4)(340mg、0.58mmol)を加えた。混合物を85℃で3時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をCH2Cl2:MeOH(3:97および5:9)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィによって精製した。収率:160mg(47%)の黄褐色固体。MS(エレクトロスプレー)602.2。
【0213】
【化59】

【実施例58】
【0214】
(Rp)−8−(2−チアゾリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸アンモニウム塩(7m)
THF(0.29ml、0.29mmol)中のt−BuOKの1.0M溶液をTHF(3ml)中の(Sp)−8−(2−チアゾリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニル−ホスホラミデート(5m)(136mg、0.23mmol)の溶液に室温で加えた。混合物を1時間攪拌した後、二硫化炭素(0.04ml、0.7mmol)を加えた。混合物をさらに3時間室温で攪拌した。溶媒の体積を約1mlに減らした後、ヘキサン(30ml)を加えた。形成した沈殿物をろ過によって単離した。粗生成物をDMF(2ml)に溶かし、NH4F(52mg、1.4mmol)を加え、混合物をアルゴン下で40℃において48時間攪拌した。溶媒を蒸発させて除去し、粗生成物をiPrOH:EtOAc:H2O:NH3(水溶液)(7:7:1:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィによって精製した。収率 54mg(53%)の白色固体。HRMS(エレクトロスプレー)M 427.0047。C131265PS2に対する計算値:427.0048。
【0215】
【化60】

【実施例59】
【0216】
(Rp)−8−(5−メチル−2−フリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩(8e)
乾燥THF(7ml)中の1Mナトリウムt−ブトキシド(0.60ml)を(Sp)−8−(5−メチル−2−フリル)−アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5e)(0.350g、0.552mmol)の溶液をアルゴンガス下で加えた。混合物を30分間攪拌した後、二硫化炭素(0.126g、1.66mmol)を加え、攪拌を3時間続けた。反応混合物をヘキサンにゆっくりと加え、沈殿物をろ過して取り出し、水(10ml)に溶かした。1MのHClをpH3になるまで激しく攪拌しながら氷冷した反応混合物に滴下して加えた。沈殿したチオ酸6eをろ過して取り出し、冷水で洗浄し、高真空下で乾燥させた。0.270gの黄色固体を生じた。次いで、酸(6e)をDMF(3ml)中にアルゴン下で溶かし、フッ化アンモニウム(0.056g、1.5mmol)を加えた。混合物を3日間40℃で攪拌した。このとき、過剰のトリブチルアミンを加えた。すべての揮発性物質を減圧下で蒸留して除去し、残留物質をジクロロメタン中1%のトリブチルアミンおよび5%のメタノールを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。チオエート生成物は遊離トリブチルアミンを含んでいた。ヘキサンで繰返し洗浄して遊離トリブチルアミンを除去した。収率:0.276g(82%)。HRMS(エレクトロスプレー):M 424.0488。C151556PS-に対する計算値:424.0487。
【0217】
【化61】

【実施例60】
【0218】
(Rp)−8−(5−メトキシ−2−フリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩(8f)
乾燥THF(6ml)中の1Mナトリウムt−ブトキシド(0.50ml)を(Sp)−8−(5−メトキシ−2−フリル)−アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5f)(0.280g、0.456mmol)の溶液にアルゴンガス下で加えた。混合物を30分間攪拌した後、二硫化炭素(0.104g、1.3mmol)を加え、攪拌を3時間続けた。反応混合物をヘキサンにゆっくりと加え、沈殿物をろ過して取り出し、水(10ml)に溶かした。1MのHClをpH3になるまで激しく攪拌しながら氷冷した反応混合物に滴下して加えた。沈殿したチオ酸6fをろ過して取り出し、冷水で洗浄し、高真空下で乾燥させた。0.127gの茶色固体を生じた。チオ酸6fを乾燥DMF(2ml)にアルゴン下で溶かし、フッ化アンモニウム(0.037g、1mmol)を加えた。混合物を3日間40℃で攪拌した後、過剰のトリブチルアミンを加えた。減圧下で蒸発させてすべての揮発性物質を除去した。残留物質をジクロロメタン中1%のトリブチルアミンおよび5%のメタノールを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。チオエート生成物中に存在する遊離トリブチルアミンをヘキサンで繰返し洗浄して除去した。収率:0.109g(29%)。HRMS(エレクトロスプレー):M 440.0427。C151557PS-に対する計算値:440.0436。
【0219】
【化62】

【実施例61】
【0220】
(Rp)−8−(2−ヒドロキシメチル−5−フリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩(8g)
1Mナトリウムt−ブトキシド(0.62ml)を乾燥THF(7ml)中の(Sp)−8−(5−t−ブチルジメチルシリルオキシメチル)−2−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5g)(0.410g、0.563mmol)の溶液にアルゴン下で加えた。混合物を30分間攪拌した後、二硫化炭素(0.128g、1.69mmol)を加えた。反応混合物を3時間攪拌した後、滴下してヘキサンに加えた。形成した沈殿物を再度水に溶かした。1MのHClをpH3になるまで氷冷の激しく攪拌した水溶液にゆっくりと加え、チオ酸6gを沈殿させ、これをろ過して取り出し、冷水で洗浄し、高真空下で乾燥させ、チオ酸を茶色固体(0.294g)として得た。生成物を乾燥DMF(3ml)にアルゴン下で再溶解し、フッ化アンモニウム(0.097g、2.63mmol)を加えた。混合物を40℃で3日間攪拌した後、過剰のトリブチルアミンを加えた。減圧下で蒸留してすべての揮発性物質を除去し、残留物質をジクロロメタン中1%のトリブチルアミンおよび5%のメタノールを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。生成物はいくらかの遊離トリブチルアミンを含んでいた。遊離トリブチルアミンをヘキサンで繰返し洗浄して除去した。収率 0.243g(69%)。HRMS(エレクトロスプレー):M 440.043。C151557PS-に対する計算値:440.0436。
【0221】
【化63】

【実施例62】
【0222】
(Rp)−8−(2−ベンゾフリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩(8h)
1Mナトリウムt−ブトキシド(0.69ml)を、乾燥THF(8ml)中の(Sp)−8−(2−ベンゾフリル)−アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5h)(0.400g、0.631mmol)の溶液にアルゴン下で加えた。混合物を30分間攪拌した後、二硫化炭素(0.143g、1.89mmol)を加え、攪拌を3時間続けた。反応混合物をヘキサンにゆっくりと加え、沈殿物をろ過して取り出し、水(4ml)に溶かした。1MのHClをpH3になるまで氷冷の激しく攪拌した水溶液にゆっくりと加えて、チオ酸6hを沈殿させ、ろ過して取り出し、冷水で洗浄し、高真空下で乾燥させ、茶色固体(0.221g)を得た。生成物を乾燥DMF(2ml)にアルゴン下で再溶解し、フッ化アンモニウム(0.043g、1.1mmol)を加えた。混合物を40℃で3日間攪拌し、過剰のトリブチルアミンを加えた。揮発性物質を減圧下で蒸留によって除去し、残留物質をジクロロメタン中1%のトリブチルアミンおよび5%のメタノールを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。生成物をヘキサンで繰返し洗浄して遊離トリブチルアミンを除去した。収率 0.155g(38%)。HRMS(エレクトロスプレー):M 460.0461。C181556PS-に対する計算値:460.0487。
【0223】
【化64】

【実施例63】
【0224】
(RP)−8−(2−N−メチルピロリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩(8i)
乾燥THF(6ml)中の(SP)−8−(2−N−メチルピロリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニル−ホスホラミデート(5i)(0.300g、0.5mmol)、およびカリウムt−ブトキシド(THF中1M、0.62ml、0.62mmol)の混合物をアルゴン下で室温において1時間攪拌した後、二硫化炭素(0.09ml、1.5mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した後、ほとんどの溶媒を減圧下で蒸留して除去した。ジエチルエーテルを加えると、固体沈殿物を得た。固体沈殿物を水(9ml)に溶かし、0℃で1.2MのHCl(1.25ml)を加えた。沈殿物は、シリル化(RP)−8−(2−N−メチルピロリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸6iであった。生成物を真空中で十分に乾燥させた後、固体(0.170g、0.3mmol)をDMF(1.5ml)にアルゴン下で溶かし、フッ化アンモニウム(0.075g、2.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で5日間攪拌した後、トリブチルアミン(0.111g、0.6mmol)を加えて透明な溶液を生成した。揮発性物質を減圧下で除去し、残留物をヘキサンで粉砕してトリブチルアミンがあれば除去し、残留物質をCH2Cl2:CH3OH:NBu3(100:10:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。いくらかの遊離トリブチルアミンを含むアンモニウム塩をCH2Cl2中に溶かし、ヘキサンで沈殿させてさらに精製した。収率 0.105g(5iから34%)の白色固体。HRMS(エレクトロスプレー):M−NHBu3423.0647。C274475PS−NH(C493に対する計算値:423.0646。
【0225】
【化65】

【0226】

【実施例64】
【0227】
(RP)−8−(3−ピリジニル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩(8j)
THF(6ml)中の(SP)−8−(3−ピリジニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5j)(0.300g、0.5mmol)およびカリウムt−ブトキシド(THF中1M、0.62ml、0.62mmol)の混合物をアルゴン下で室温において1時間攪拌した後、二硫化炭素(0.09ml、1.5mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した。溶媒を部分的に減圧下で除去し、沈殿が完了するまでヘキサンを加えた。沈殿物を水(9ml)に再溶解し、0℃で1.2MのHCl(1.25ml)を加えた。沈殿したシリル化(RP)−8−(3−ピリジニル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸6jをろ過によって収集し、高真空において一晩乾燥させた。この物質(0.180g、0.33mmol)のほとんどを乾燥DMF(1.5ml)にアルゴン下で溶かし、フッ化アンモニウム(0.075g、2mmol)を加えた。混合物を室温で5日間攪拌し、ろ過した。トリブチルアミン(0.111g、0.6mmol)をろ過液に加えた後、減圧下で蒸発させた。残留物質をヘキサンで粉砕して過剰のトリブチルアミンを除去し、CH2Cl2:CH3OH:NBu3(100:10:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。微量のトリブチルアミンを含むアンモニウム塩を、CH2Cl2に溶かし、ジエチルエーテルを加えて沈殿させることによってさらに精製した。収率 0.100g(5jから34%)の白色固体。HRMS(エレクトロスプレー):M−NHBu3 421.0492。C274275PS−NH(C493に対する計算値:421.0489。
【0228】
【化66】

【実施例65】
【0229】
(RP)−8−フェニルアデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩(8k)
THF(6ml)中の(SP)−8−(フェニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5k)(0.250g、0.42mmol)およびカリウムt−ブトキシド(0.52ml、0.52mmol、1M)の混合物をアルゴン下で室温において1時間攪拌した後、二硫化炭素(0.08ml、1.26mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌し、ほとんどの溶媒を蒸発させて除去した。沈殿が完了するまでヘキサンを残留物に加えた。固体沈殿物を水(9ml)に溶かし、0℃で1.2MのHCl(1.05ml)を加えた。生成物は、シリル化(RP)−8−フェニルアデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸であった。この物質(0.210g、0.39mmol)の一部を乾燥DMF(2ml)にアルゴン下で溶かし、フッ化アンモニウム(0.100g、2.73mmol)を加えた。混合物を室温で5日間攪拌した。反応混合物をろ過し、ろ過液にトリブチルアミン(0.144g、0.78mmol)を加えた。揮発性物質を減圧下で蒸留して除去し、残留物質をヘキサンで粉砕して遊離トリブチルアミンがあれば除去した。残留物質をCH2Cl2:CH3OH:NBu3(100:10:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。トリブチルアミンを含むアンモニウム塩を、CH2Cl2に溶かし、ヘキサンで沈殿させることによってさらに精製した。収率 0.100g(5kから39%)の白色固体。HRMS(エレクトロスプレー):M−NHBu3420.0534。C284365PS−NH(C493に対する計算値:420.0537。
【0230】
【化67】

【実施例66】
【0231】
(RP)−8−(4−メトキシフェニル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩(8l)
THF(6ml)中の(RP)−8−(4−メトキシフェニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−フェニルホスホラミデート(5l)(0.300g、0.48mmol)およびカリウムt−ブトキシド(THF中1M、0.6ml、0.6mmol)の混合物をアルゴン下で室温において1時間攪拌した後、二硫化炭素(0.09ml、1.44mmol)を加えた。反応混合物を室温で3時間攪拌した。このとき、ほとんどの溶媒は減圧下で蒸留して除去し、沈殿が完了するまでジエチルエーテルを加えた。沈殿物を水(9ml)に再溶解し、0℃で1.2MのHCl(1.2ml)を加えた。シリル化(RP)−8−(4−メトキシフェニルアデノシン)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸6lをろ過によって収集し、一晩高真空において乾燥させた。乾燥させた生成物(0.250g、0.44mmol)の一部を乾燥DMF(2ml)にアルゴン下で溶かし、フッ化アンモニウム(0.104g、2.8mmol)を加えた。混合物を室温で5日間攪拌し、ろ過した。トリブチルアミン(0.163g、0.88mmol)をろ過液に加え、溶媒を減圧下で除去した。残留物質をヘキサンで抽出して、過剰のトリブチルアミンがあれば除去し、残留物をCH2Cl2:CH3OH:NBu3(100:10:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。いくらかの遊離トリブチルアミンを含むアンモニウム塩を、CH2Cl2に溶かし、ヘキサンで沈殿させることによって、さらに精製した。収率 0.130g(5lから42%)の白色固体。HRMS(エレクトロスプレー):M−NHBu3 450.0648。C294566PS−NH(C493に対する計算値:450.0642。
【0232】
【化68】

【0233】

【実施例67】
【0234】
(RP)−8−(2−N−メチルピロリル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸ナトリウム塩(9i)
(RP)−8−(N−メチル−2−ピロリル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸アンモニウム塩(5i)(0.100g、0.16mmol)をMeOH中0.1MのNaOH(1.7ml)に溶かした。ジエチルエーテルを加えてナトリウム塩を沈殿させ、ろ過によって収集した。収率 0.060g(84%)の白色固体物質。HRMS(エレクトロスプレー):M−Na 423.0630。C151665PS−Naに対する計算値:423.0646。
【0235】
【化69】

【実施例68】
【0236】
(RP)−8−(3−ピリジニル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸ナトリウム塩(9j)
(RP)−8−(3−ピリジニル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩(8j)(0.100g、0.16mmol)をMeOH中0.1MのNaOH(1.7ml)に溶かした。ジエチルエーテルを加えてナトリウム塩を沈殿させた。収率 0.057g(80%)の白色固体物質。HRMS(エレクトロスプレー):M−Na 421.0495。C151465PS−Naに対する計算値:421.0489。
【0237】
【化70】

【実施例69】
【0238】
(RP)−8−フェニルアデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸ナトリウム塩(9k)
(RP)−8−フェニルアデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩(8k)(0.100g、0.16mmol)をMeOH中0.1MのNaOH(1.7ml)に溶かした。ジエチルエーテルを加えてナトリウム塩を沈殿させた。収率 0.053g(75%)の白色固体。HRMS(エレクトロスプレー):M−Na 420.0529。C161555PS−Naに対する計算値:420.0537.
【0239】
【化71】

【0240】

【実施例70】
【0241】
(RP)−8−(4−メトキシフェニル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸ナトリウム塩(9l)
(RP)−8−(4−メトキシフェニル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩(8l)(0.090g、0.14mmol)をMeOH中0.1MのNaOH(1.5ml)に溶かした。ジエチルエーテルを加えてナトリウム塩を沈殿させた。収率 0.050g(75%)の白色固体。HRMS(エレクトロスプレー):M−Na 450.0648。C171756PS−Naに対する計算値:450.0642。
【0242】
【化72】

【実施例71】
【0243】
(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−ベンジルホスホラミデート(10)
CH2Cl2(5ml)中の8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチル−ジメチルシリル)−3’,5’−環状リン酸トリブチルアンモニウム塩(2)(2.14g、3.0mmol)の溶液をTHF(15ml)中の塩化オキサリル(0.31ml、3.6mmol)およびDMF(0.28ml、3.6mmol)の溶液に0℃で滴下して加えた。30分後ベンジルアミン(15mmol、1.64ml)を加え、混合物を10分間0℃でおよび2時間室温で攪拌し、CHCl3(50ml)で希釈し、飽和NaHCO3(水溶液)(2×15ml)で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO4)、溶媒を蒸留して除去し、残留物をCH2Cl2:MeOH(3:97および5:95)を使用したフラッシュクロマトグラフィによって精製した。収率 1.28g(67%)の白色固体。MS(エレクトロスプレー):611.2/613.2。
【0244】
【化73】

【実施例72】
【0245】
(Sp)−8−(2−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−ベンジルホスホラミデート(11a)
DMF(8ml)中のPd(OAc)2(60mg、0.27mmol)およびPPh3(142mg、0.54mmol)の溶液をアルゴン下で50℃において15分間攪拌した後、2−(トリ−n−ブチルスタンニル)フラン(0.63ml、2.0mmol)を加えた。その後、DMF(10ml)中の(Sp)−8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−ベンジルホスホラミデート(10)(800mg、1.3mmol)の溶液を加えた。混合物を85℃で2.5時間攪拌した。溶媒を蒸留して除去し、残留物をCH2Cl2:MeOH(3:97および5:95)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィで精製した。収率 636mg(80%)の白色固体。MS(エレクトロスプレー):599.2。
【0246】
【化74】

【実施例73】
【0247】
(Rp)−8−(2−フリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸アンモニウム塩(7a)
ヘキサン中のBuLiの1.6M溶液(0.25ml、0.39mmol)を、THF(4ml)中の(Sp)−8−(2−フリル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−ベンジルホスホラミデート(11a)(200mg、0.33mmol)の溶液に−78℃で加えた。混合物を10分間この温度で攪拌した後、二硫化炭素(0.06ml、1.0mmol)を加え、冷却槽を除去した。混合物を3時間室温で攪拌した。溶媒の体積を約1mlに減らした後、ヘキサン(40ml)を加えた。沈殿物を収集し、乾燥DMF(2ml)に溶かし、フッ化アンモニウム(75mg、2.0mmol)を加えた。混合物をアルゴン下で40℃において48時間攪拌した。溶媒を蒸留して除去し、粗生成物をiPrOH:EtOAc:H2O:NH3(水溶液)(7:7:1:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィで精製した。収率:106mg(74%)の白色固体。分光データは従来に記録されるとおり。
【実施例74】
【0248】
S−4−(イソブチルオキシ)ベンジル(Rp)−8−(3−フリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオエート(12)
(Rp)−8−(3−フリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸アンモニウム塩(7c)(0.2mmol)をメタノール(5ml)に溶かし、トリエチルアミン(0.3mmol)を加えた。混合物を真空下で蒸発させると、(Rp)−8−(3−フリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリエチルアンモニウム塩が残った。この生成物(70mg、0.16mmol)の一部およびDMF(2mL)中のヨウ化4−(イソブチリルオキシ)ベンジル(73mg、0.24mmol)を室温で48時間攪拌した。溶媒を蒸発させて除去し、残留物をCH2Cl2:MeOH(3:97および5:95)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィで精製した。収率:38mg(40%)の白色固体。MS(エレクトロスプレー):588.2。
【0249】
【化75】

【実施例75】
【0250】
(RP)−8−(4−フルオロフェニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−ベンジルホスホラミデート 11m
NMP(4ml)中のPd(OAc)2(0.037g、0.163mmol)およびPPh3(0.091g、0.348mmol)の混合物を溶液が暗赤色に変るまで50℃で攪拌した。NMP(2ml)中の8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−ベンジルホスホラミデート(10)(0.500g、0.81mmol)、および1−トリブチルスタンニル−4−フルオロベンゼン(0.623g、1.62mmol)の溶液を加えた。反応混合物を130〜135℃で8時間攪拌し、放置して室温に冷却し、NMPを減圧下で除去し、残留物質をCH2Cl2中7.5%のMeOHを使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。生成物は、微量の有機スズ残留物を含む白色固体物質であった。CH2Cl2に生成物を溶かし、ヘキサンを加えて再沈殿させて有機スズ残留物を除去した。収率 0.248g(49%)。
【0251】
【化76】

【実施例76】
【0252】
(RP)−8−(4−フルオロフェニル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩 8m
ヘキサン(0.27ml、0.43mmol)中の1.6MのnBuLiをTHF(6ml)中の(RP)−8−(4−フルオロフェニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−ベンジルホスホラミデート(11m)(0.250g、0.39mmol)の溶液に−78℃で加えた。混合物をアルゴン下で−78℃において10分間攪拌した後、CS2(0.08ml、1.24mmol)を加えた。反応混合物を−78℃で20分間および室温で2時間攪拌した。ほとんど溶媒を蒸留して除去し、沈殿が完了するまでヘキサンを加えた。沈殿物を水(9ml)に溶かし、0℃で1.2MのHCl(1.1ml)を加えた。(RP)−8−(4−フルオロフェニル)−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸(6m)が沈殿した。乾燥させたチオ酸(0.150g、0.27mmol)を乾燥DMF(1.5ml)に溶かし、フッ化アンモニウム(0.070g、1.9mmol)を加え、混合物を室温で5日間攪拌した。反応混合物をろ過し、溶液が透明になるまでトリブチルアミンをろ過液に加えた。ろ過液から揮発性物質を蒸留して除去し、残留物質をヘキサンで抽出して過剰のトリブチルアミンを除去し、残留物質をCH2Cl2:CH3OH:NBu3(100:10:1)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。トリブチルアミンを含むアンモニウム塩を、CH2Cl2に溶かし、ヘキサンを加えて再沈殿させてさらに精製した。収率 0.065g(11mからの38%)の白色固体物質。
【0253】
【化77】

【実施例77】
【0254】
(RP)−8−(4−フルオロフェニル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸ナトリウム塩(9m)
(RP)−8−(4−フルオロフェニル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸トリブチルアンモニウム塩(8m)(0.050g、0.11mmol)をMeOH中0.1MのNaOH(1.1ml)に溶かした。ヘキサンを加えてナトリウム塩を沈殿させた。収率 0.027g(51%)の白色固体物質。
【0255】
【化78】

【実施例78】
【0256】
(Sp)8−(2−チエニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−ベンジルホスホラミデート(11b)
THF(2ml)中の塩化2−チエニル亜鉛(0.3ml、1M、0.300mmol)の溶液を、THF(2ml)中の(S)8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−ベンジルホスホラミデート(10)(0.122g、0.200mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.046g、0.040mmol)の溶液にアルゴン下で加えた。反応混合物をおだやかな還流下に3時間加熱した。塩化アンモニウムの飽和水溶液(3ml)およびジクロロメタン(10ml)を冷却した反応混合物に加え、有機相を飽和ブライン(2×3ml)で抽出し、乾燥させ(MgSO4)、溶媒を蒸留して除去した。残留物質をMeOH:CH2Cl2(1:20)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 0.059g(48%)。
【0257】
【化79】

【0258】
その後の反応(例えば、二硫化炭素および強塩基によるチア化ならびに脱シリル化)によりチオ酸7bが生じる。
【実施例79】
【0259】
経口投与のためのカプセルの調製
(Rp)−8−(2−フリル)アデノシン−3’,5’−環状ホスホロチオ酸アンモニウム塩(実施例73) − 50mg
ラクトース − 適量
粉末を混合し、カプセル(カプセルサイズO)に充填した。
【実施例80】
【0260】
注射調製物の調製
(Rp)−8−(4−フルオロフェニル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸ナトリウム塩(実施例77) − 25mg
塩化ナトリウム − 適量
精製水 − 5mlまで
この化合物および塩化ナトリウムを水に溶かして(Rp)−8−(4−フルオロフェニル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸ナトリウム塩の等張溶液を調製した。溶液を5mlバイアルに充填し、オートクレーブした。生成物は、1ml当たり5mgの(Rp)−8−(4−フルオロフェニル)−3’,5’−環状ホスホロチオ酸ナトリウム塩を含む。
【実施例81】
【0261】
インビトロでのPKAタイプIα酵素活性化アッセイ(クック(Cook)キナーゼアッセイ)における新規なRp−cAMPS類似体のIC50値の決定
以下の分析の目的は、新規なRp−cAMPS類似体をcAMP依存性タンパク質キナーゼのタイプI(RIα/Cα)ホロ酵素複合体のアンタゴニストまたはアゴニストとして分類し、クックによる分光測光アッセイに基づいた抑制または活性化アッセイを使用してEC50値を決定することである。
【0262】
アンタゴニストおよびアゴニストについてのRp−cAMPS類似体スクリーニング:
第一に、新規なRp−cAMPS類似体を10nMのRIαホロ酵素および各Rp−cAMPS類似体の10μMを使用した活性化アッセイにおいてスクリーニングして、活性化についてテストした。Rp−cAMPS類似体のアンタゴニスト性質を詳細に特徴づけるために抑制アッセイを使用した。1μMのSp−8−Br−cAMPSを加えることによって(3分間のアッセイ混合)、10nMのRIαホロ酵素を部分的に(80%)活性化した。次いで、Rp−cAMPSアンタゴニストを加えることによって(濃度を増加、5分間のインキュベーション時間の後、ケンプチド(kemptide)でアッセイを開始)、ホロ酵素を再構成する。次いで、アンタゴニストは、Sp−8−Br−cAMPSによるPKAの結合および活性化を競合的アンタゴニズムにより妨害し、その結果キナーゼ活性が低下する。
【0263】
Rp−cAMPS類似体対PKAタイプIαについてのEC50の決定:
アンタゴニストに対するEC50値を、クックによる分光測光アッセイおよびpMからmMの範囲のRp−cAMPS類似体の異なる濃度に基づく抑制アッセイを使用して決定した。1類似体当たり少なくとも10回の二重測定を、1μMのSp−8−Br cAMPS(複合体の80%活性化)における部分的に活性化されたRIαホロ酵素(10nM)を使用して行った。5分間の前インキュベーションを行った後、ケプチドを加えてアンタゴニスト性質を有する化合物に対してホロ酵素複合体の再構成を可能にした。新規な化合物をテストにおいてRp−8−Br−cAMPSと比較した。
【0264】
cAMPを用いたRIαホロ酵素の活性化定数を決定した。アッセイ混合物における10nMのRIαホロ酵素によるcAMPの濃度を増加する3分間の前インキュベーションの後、200μMケプチドを加えて反応を開始した。OD340を1分間監視し、傾き(ΔOD340/分)を、活性化された触媒サブユニットの相対活性に対する直接的な相関としてプロットした。EC50は88nMであった。
【0265】
Rp−8−(2−フリル)−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−(2−フリル)−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系における3つの実験において238、337および360nMであった。
【0266】
Rp−8−(2−チエニル)−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−(2−チエニル)−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において449nMであった。
【0267】
Rp−8−(3−フリル)−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−(3−フリル)−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において607nMであった。
【0268】
Rp−8−(3−チエニル)−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−(3−チエニル)−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において739nMであった。
【0269】
Rp−8−フェニル−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−フェニル−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において1058μMであった。
【0270】
Rp−8−アセチル−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−アセチル−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において1.58μMであった。
【0271】
Rp−8−エトキシビニル−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−エトキシビニル−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において2.4μMであった。
【0272】
Rp−8−(2−Br−5−フリル)−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−(2−Br−5−フリル)−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において2.9μMであった。
【0273】
Rp−8−エチル−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転。Rp−8−エチル−cAMPS−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において6.13μMであった。
【0274】
Rp−8−メチル−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−Me−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において8.76μMであった。
【0275】
従来公知化合物Rp−8−Br−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−Br−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において1202nMであり、およびいくつかの実験(n=3)の平均は1350nMであった。
【0276】
Rp−8−(3−ピロル)−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−(3−pyr)−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において3.61μMであった。
【0277】
Rp−8−(5−メチル−2−フリル)−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−(5−Me−2−フリル)−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において1.16μMであった。
【0278】
Rp−8−ベンゾフリル−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−Me−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において2.78μMであった。
【0279】
Rp−8−(5−ヒドロキシメチル−2−フリル)−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKA活性化の反転を調べた。Rp−8−(5−MeOH−2−フリル)−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において1.98μMであった。
【実施例82】
【0280】
インビトロでPKAタイプIIα酵素活性化アッセイ(クックキナーゼアッセイ)における新規なRp−cAMPS類似体のIC50値の決定
好ましい薬物標的(PKAタイプIα)対、免疫刺激のためにPKAタイプIαを標的にする際に阻害されるべきでない他のPKA酵素についてのアンタゴニスト化合物の選択性プロファイルを特徴づけるために、いくつかの選択された化合物対PKAタイプIIαについてのEC50値を、クックによる分光測光アッセイに基づいた抑制アッセイを使用して決定した。
【0281】
Rp−cAMPS類似体対PKAタイプIIαについてのEC50決定:
1類似体当たり少なくとも10回の二重測定を、1μMのSp−8−Br cAMPS(複合体の75%活性化)における部分的に活性化されたRIIαホロ酵素(10nM)を使用して行った。5分間の前インキュベーションを行った後、ケプチドを加えてホロ酵素複合体の再構成を行った。
【0282】
アゴニストSp−8−Br−cAMPSを用いたホロRIIαの活性化定数を決定した。アッセイ混合物における10nMのホロRIIαによるcAMPの濃度を増加する3分間の前インキュベーションの後、200μMケプチドを加えて反応を開始した。OD340を1分間監視し、傾き(ΔOD340/分)を、活性化された触媒サブユニットの相対活性に対する直接的な相関としてプロットした。EC50は294nMであった。
【0283】
Rp−8−(2−フリル)−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKAタイプII活性化の反転を調べた。Rp−8−(2−フリル)−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系における2つの実験において11.6および16.7μMであった。
【0284】
Rp−8−フェニル−cAMPSによるSp−8−Br−cAMP−媒介PKAタイプII活性化の反転を調べた。Rp−8−フェニル−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において48.6μMであった。
【0285】
従来公知化合物であるRp−8−Br−cAMPSによるPKAタイプIIのSp−8−Br−cAMP−媒介活性化の反転を調べた。Rp−8−Br−cAMPSの半値アンタゴニスト効果(IC50またはEC50)は、このテスト系において14.9μMであった。
【実施例83】
【0286】
インビトロにおける競合的リガンド結合アッセイ(ビアコア(Biacore)アッセイ)における、PKAタイプIαに結合する新規なRp−cAMPS類似体のEC50値の決定
実験の目的は、ビアコア技術に基づいた表面結合および競合アッセイにおいてcAMP依存性タンパク質キナーゼのタイプI(RIα/Cα)ホロ酵素複合体のアンタゴニストとして作用するcAMP類似体の性質を評価し、酵素活性アッセイに依存しないこのリガンド結合方法によってアンタゴニスト効果に関するEC50値を決定することである。
【0287】
ホロRIαのアンタゴニストを用いた表面競合アッセイ:
ビアコア表面競合アッセイを、クックによるアッセイに基づく活性に対する別の方法として設計した。このアッセイは、ホロ酵素複合体内の異なるcAMP−結合領域に特異的に結合するcAMP類似体に対するEC50値を決定するために、キナーゼ活性に依存しないアンタゴニスト結合の測定を可能にする。したがって、活性または結合のいずれかに基づく両方のアッセイは、アンタゴニスト結合がどのようにホロ酵素複合体の活性化を妨げるかというメカニズムについての補完的な情報を与える。
【0288】
これらの研究に対して、アゴニストセンサ表面(すなわち8−AHA cAMP)上への調節サブユニットの捕捉だけでなく、アンタゴニストリガンド(すなわち、Rp−8AHA cAMPS)を介して方向づけられるホロ酵素複合体部位全体を固定する必要がある。これにより、ホロ酵素複合体または調節サブユニットの単独部位のいずれかに対するアンタゴニスト結合についてのEC50値を決定することが容易になる。ホロ酵素複合体は、チップ表面に注入される前に異なる量のアンタゴニストを用いてインキュベートされる。アンタゴニストの結合によりアンタゴニストに対するEC50値を与えるチップ表面(表面競合)上の結合信号が低下する。しかし、ホロ複合体がリガンドの部分的なアゴニスト性質のためにリガンド表面に結合した際に解離すると、得られる結合信号は期待される値よりも低くなり、解離は観察されるアンタゴニストに対するEC50値を変更し得る。したがって、種々の実験を行って、ホロRIαまたはRIαのみが会合する間にRp−8−AHA cAMPSまたは8−AHA cAMP表面に結合するかどうかを確認する必要があった。
【0289】
その理由のために、ホロRIαを異なる2つの異なる条件を使用して2つの異なる表面(8−AHA cAMPおよびRp 8AHA−cAMPS表面)上の結合についてテストした。ATPおよびMgの存在下では調節および触媒サブユニットは強固に結合しホロ酵素複合体を形成するが、Mgイオンをキレート化するEDTAの存在下では親和性は著しく低くなり、複合体の解離が容易になる。10nMのRIαホロ酵素溶液の会合の間、Rp−8−AHA cAMPS表面上で900RUの応答信号が達成された。8−AHA cAMP表面上ではこの信号の半分に達しない。このことは、ホロ酵素のRIαサブユニットだけが8−AHA cAMP表面に結合されるか、またはホロ酵素の結合中にチップ表面に結合されたRIαサブユニットだけを残して複合体が解離することを示す。注入前に10mMのEDTAをホロ酵素に加えて複合体の解離を容易にした場合、250RUだけがRp−8−AHA cAMPSおよび8−AHA cAMP表面の両方に結合した。これは、RIαサブユニットだけが結合したためであり得る。過剰のアンタゴニスト(10μMのRp−8−Br cAMPSまたは10μMのRp−8−(2−フリル)cAMPS)をホロ酵素に加えた場合、ホロ複合体の結合はRp−8−AHA cAMPS表面において完全に妨害されるが、8−AHA cAMP表面への結合には影響が見られなかった。
【0290】
アンタゴニストのEC50値を決定するために、異なる濃度のアンタゴニストを10nMのホロRIαとともにインキュベートし、2つの検出表面に注入した。Rp−8−(2フリル)cAMPSおよびRp−8−Br cAMPSの競合効果はRp−8AHA cAMPS表面において検出可能であったが、8−AHA cAMPへの結合はいずれの濃度のアンタゴニストによっても影響されなかった。得られたEC50をRp−8−AHA cAMPS表面上で決定した。Rp−8−(2−フリル)cAMPSについてEC50は377nMであり、Rp−8−Br cAMPSについてEC50は2.9μMであり、これらのデータは、従来の研究においてクックアッセイにより推定されたEC50値(Rp−8−(2−フリル)cAMPSについてEC50=349nMおよびRp−8−Br cAMPSについてEC50=1.3μM)と同様である。Rp−8−(3フリル)cAMPSを同じ方法で分析したところ、EC50は743nM(クックアッセイ 607nM)であった。したがって、ビアコア上のリガンド結合アンタゴニストアッセイは活性アッセイに基づくデータと同等の結果を与えると結論できる。
【0291】
10nMのホロRIα、10mMのEDTA中のホロRIα、および10μMのアンタゴニストRp−8−Br cAMPSまたはRp−8−2−フリルcAMPSの存在下でのホロRIαを用いたRp−8−AHA cAMPSおよび8−AHA cAMP表面についての競合結合アッセイを行った。10μl/分の流量での5分の会合および解離時間を記録した。
【0292】
Rp−8−AHA cAMPSおよび8−AHA cAMPセンサ表面に結合した3.9nM〜8μMのRp−8−(2−フリル)cAMPSおよび19nM〜38.4μMのRp−8−Br cAMPSとともに10nMのホロRIαを注入して、10μl/分の流量において5分の会合および解離時間を与えた。
【0293】
Rp−8−AHA cAMPS表面上のアンタゴニストRp−8−(2フリル)cAMPSのEC50値を決定した。10μl/分の流量での5分の会合時間後のホロRIαの結合信号をアンタゴニスト濃度の対数に対してプロットした。EC50を377nMとして決定した。
【0294】
Rp−8−AHA cAMPS表面上のアンタゴニストRp−8−(3フリル)cAMPSのEC50値を決定した。10μl/分の流量での5分の会合時間後のホロRIαの結合信号をアンタゴニスト濃度の対数に対してプロットした。EC50を743nMとして決定した。
【0295】
Rp−8−AHA cAMPS表面上の従来公知のアンタゴニストRp−8−Br−cAMPSのEC50値を決定した。10μl/分の流量での5分の会合時間後のホロRIαの結合信号をアンタゴニスト濃度の対数に対してプロットした。EC50を2.6μMとして決定した。
【0296】
インビトロでの生物学的特徴づけ結果の要約
表1は、PKAタイプIα酵素活性についてのクックアッセイからのデータの概略を与える。
【0297】
【表2】

【0298】
表2は、選択された化合物に対するPKAタイプIαについての活性化データと比較されたPKAタイプIIα酵素活性についてのクックアッセイからのデータの概略を与え、選択性プロファイルを示す。
【0299】
【表3】

【0300】
表3は、選択された化合物を用いたリガンド結合競合アッセイ(ビアコアアッセイ)からのデータと比較したPKAタイプIα酵素活性についてのクックアッセイからのデータを示す。
【0301】
【表4】

【実施例84】
【0302】
ヒトT細胞における前臨床テスト、HIV+T細胞における生体外臨床テスト。
【0303】
cAMP類似体に対し、Tリンパ球増殖に対する化合物の効果を評価可能であるアッセイを使用して、アゴニストまたはアンタゴニスト性質、効力および毒性効果について特徴づけた。CD3表面マーカをクロスリンクさせてヒト末梢Tリンパ球を活性化し、ポリクローナルに増殖させた。PKAタイプIアゴニストであるSp−8−Br−cAMPSの非存在下または存在下で細胞を増加する濃度の種々の新規なcAMP類似体にさらした。増加する濃度のcAMP類似体はHIV感染患者からのTリンパ球におけるcAMPの上昇するレベルを模倣するために加えられた。
【0304】
それらのキラルリンのRp立体配置に基づいて、化合物はアンタゴニスト性質を呈すると予想された。テストした化合物は、アデニン環の8位において置換を有するRp−8−Br−cAMPSの誘導体であった。この位置は、薬物標的選択性を与える電子吸引中心である。この位置における変更は、PKAタイプIのRサブユニット上の部位Bに対するより強い親和性(したがって、より高い効力および改善された選択性)を有する化合物を与えると期待された。
【0305】
表4は、ヒト第一Tリンパ球を使用してテストされたcAMP類似体化合物の性質を要約する。cAMP分子のいくつかの変更を種々の位置で行ったが、Tリンパ球増殖アッセイを使用して検出して、出発化合物であるRp−8−Br−cAMPSと比較して、効力および選択性の点でなんらかの改善を与えたものはなかった。しかし、いくつかの化合物(表4を参照)は、酵素アッセイを使用してPKAタイプIホロ酵素について直接テストした場合、基準化合物であるRp−8−Br−cAMPSよりも効力が高いことが示された(表4を参照)。
【0306】
【表5】

【実施例85】
【0307】
マウスレトロウイルス誘発免疫不全(ネズミのAIDS)における原理実験の証明
図1。感染マウスをPKAタイプIアンタゴニストで処置すると、TNF−α産生CD4 T細胞の頻度が低下する。TNF−αポシティブ細胞の頻度を細胞質内染色によって評価した。細胞をブドウ球菌エンテロトキシン(SEB)後、または基本状態で分析した。SEB刺激産生に対するRp−8−Br−cAMPの効果は有意であった(p=0.0012)。Rp−8−フリルの効果も有意であった(p=0.0041)。
【0308】
Rp−8−Br−cAMPの処置により、感染マウスのCD4 T細胞によるTNF−α産生が劇的に低下する(図1)。MAIDSは、CD4+ T細胞がTNF−αを産生する頻度が自発的にまたはSEBの刺激後に非常に上昇するという特徴を有する。処置されたマウスにおいては、この頻度が正常値近くに低減される。Rp−8−Br−cAMPの場合、このことは毒性効果に帰することができなかった。なぜなら、抗CD3mAbに対する増殖応答が実際に増加するからである。Rp−8−フリル−cAMPは、感染動物からのCD4+ T細胞によるTNF−α産生を阻害した。これらの実験において、Rp−8−フリル−cAMPおよびRp−8−Br−cAMPは、CD4+ T細胞によるTNF−αの自発的およびSEB誘発産生に対して同様の効果を有した(図1)。Rp−8−Br−cAMPおよびRp−8−(2−フリル)−cAMPSの処置により、感染マウスからのCD4+ T細胞の産生プロファイルは変更された(IFN−γがわずかに増加し(図示せず)およびブドウ球菌エンテロトキシンSEBで刺激した後のTNF−α産生を低減した)。このことは、このクラスの剤を用いた処置によって、症候群の炎症徴候を低減するのに役立ちながら日和見細胞内病原体に対して向けられたTh1免疫応答を改善し得ることを示す。
【0309】
実施例81〜85についての実験の詳細
PKAに対するクック結合酵素アッセイ
RIαホロ酵素複合体の調製
ホロ酵素の形成は、PKA RIαおよびPKA Cαを1.2対1.0のモル比で一晩透析することにより行った。3回の1l緩衝液の交換(透析緩衝液:20mM MOPS pH7.0、150mM NaCl、5mM MgCl2、100μM ATP、5mM β−メルカプト−エタノール)を行ってcAMPを調節サブユニットから除去した。
【0310】
ホロ酵素複合体形成のテストおよびアッセイ条件:
ホロ酵素を1μMのストック溶液に希釈し(希釈緩衝液:100mM MOPS pH7.0、10mM MgCl2、1mM ATP、1mM DTT)、クックアッセイ(アッセイ混合物:100mM MOPS pH7.0、10mM MgCl2、1mMホスホエノールピルビン酸、1mM ATP、200μM NADH、1mM DTT、15U/ml乳酸デヒドロゲナーゼ、70U/mlピルビン酸キナーゼ)において活性についてテストした。総体積が100μlのアッセイ混合物において1μlの25mMケプチド(最終濃度が200μMの活性ペプチド)を1μlのホロ酵素(10nMの最終濃度)に混合することによって反応を開始させた。OD340を1分間監視し、Cαの相対活性をOD減衰/分の傾きとしてプロットした。Cαのほんの小さな残留活性(<活性化複合体の8%)は、不活性ホロ酵素複合体の完全に近い形成を示した。
【0311】
cAMPの活性化定数の決定は、アッセイ混合物において10nMのホロ酵素を用いた3分間前インキュベーションにおいてcAMPの濃度を増加することによって行った(EC50=88nM)。
【0312】
RIIαホロ複合体の調製:
ホロ酵素の形成は、PKA RIIαおよびPKA Cαを1.2対1.0のモル比で一晩透析することにより行った。ホロRIIαの形成にATP/Mgは必要ないが、ホロRIa形成のための透析緩衝液と同じもの(20mM MOPS pH7.0、150mM NaCl、100μM ATP、1mM MgCl2)を再度使用した。なぜなら、ATPはクックよるアッセイに必要であり、この緩衝液はインビボ状態に似ているからである。完全なホロ形成および1μMのcAMPによるホロ活性化は、滴定実験の前後にチェックした。氷上4週間後でも、ホロRIIαは同じPKA Ca残留活性(21%)を示し、新たに調製されるのと同様にcAMPによって完全に活性化できた。
【0313】
Rp−cAMPSストック溶液の調製:
すべてのRp−cAMPS類似体を最終濃度が10mMとなるように20%DMSOを有する希釈緩衝液に溶かし、λmaxでのモル吸光係数を使用して分光測光的に濃度を決定した。希釈緩衝液において1:10倍希釈を繰返してRp−cAMPS類似体のさらなる希釈を調製した。好ましくは1μlであるが5μl以下のRp−cAMPS類似体をアッセイ混合物に加えた。したがって、最終アッセイ混合物のDMSO濃度は1%以下であった。DMSOのアッセイ酵素に対する効果をテストし、その結果、1%以上のDMSO濃度はアッセイ酵素(ADPカラム)およびホロRIα(Cα、ホロRIαおよびcAMP活性化ホロRIαカラム)に効果がないことを示した。
【0314】
cAMPアンタゴニスト(ビアコアアッセイ)についてのインビトロ競合的リガンド結合アッセイ
RIαおよびRIIαホロ複合体の調製:
ホロ酵素形成は、PKA RIαまたはRIIαおよびPKA Cαを1.2対1.0のモル比で一晩透析することによって行った。3回の1l緩衝液の交換(透析緩衝液:20mM MOPS pH7.0、150mM NaCl、5mM MgCl2、100μM ATP、5mM β−メルカプト−エタノール)を行って、調節サブユニットからcAMPを除去した。両方のホロ酵素複合体は従来の研究で使用およびテストされた。
【0315】
Rp−8−AHA cAMPSおよび8−AHA cAMP表面の調製:
両方のヌクレオチドを濃度が3mMとなるように100mMホウ酸緩衝液(pH8.5)に溶かし、EDC/NHSを使用する標準のアミノカップリングによってCM5センサチップに共有結合させた。未処置のCMデキストラン表面を空表面として使用した。
【0316】
表面競合アッセイのための実験条件:
機器:ビアコア2000、ビアコアAB、Uppsala、スウェーデン
温度:25℃
CM5チップ(01.12.03):FC1:CMデキストラン(基準)
FC2:3mM Rp−8−AHA cAMPS
FC3:CMデキストラン
FC4:3mM 8−AHA cAMP
表面: FC1−FC2−FC3−FC4、連続フロー
基準: FC1
ランニング緩衝液1: 20mM MOPS pH7.4、150mM NaCl、100μM ATP、5mM MgCl2、0.005% Tween20、ろ過および脱気
ランニング緩衝液2:20mM MOPS pH7.4、150mM NaCl、0.005% Tween20、ろ過および脱気
アッセイ条件:10または2nMのホロ複合体を解離時間5分のキンジェクトコマンド(kinject command)を使用して5分間注入した。ホロRIαについてはランニング緩衝液1、ホロRIIαについてはランニング緩衝液2を使用した。適切な範囲内にある10〜14の異なる濃度のPKAアゴニストまたはアンタゴニストを使用してこれらのcAMP類似体のEC50値を決定した。したがって、5分間の会合時間の後のRp−8−AHA cAMPSおよび8−AHA cAMP表面上の両方の結合信号を化合物濃度の対数に対してプロットした。
注入体積: 50μl
流量: 10μl/分
再生: 0.1%SDS、3M塩酸グアニジウム。
【0317】
ヒトT細胞における前臨床テスト、HIV+ T細胞における生体外臨床テスト。
【0318】
末梢血CD3+ T細胞の陰性選択:
リンパ調製(lymphoprep)溶液を用いた密度勾配遠心分離を介して軟膜から慣用方法でヒト末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。PBMCとともに単離された血小板の多くをPBSでの洗浄を介して除去した。PBMCからのTリンパ球の単離は、CD14表面マーカを有する単球およびCD19表面マーカを有するBリンパ球を、それぞれの細胞特異的マーカに対する抗体をコーティングされた単分散磁気ビーズを使用して除去することに基づく。
【0319】
10mLの軟膜および25mLのPBSを各50mLチューブに加え、混合した。10mLのリンパ調製溶液をチューブの底に層状に置き、それらを800×gで25分間4℃において遠心分離した(ブレーキは最小限におさえた)。PBMCの層を単離し、PBS中で2度洗浄した(300×gで7分間4℃において遠心分離)。ペレットをRPMI1640/10%FCS/PS中に懸濁し、PBMCの数をカウントした。ダイナビーズCD14およびCD19をMPCを使用しRPMI1640/10%FCS/PS中で6度洗浄し、次いでビーズ対細胞比5:1でPBMC(3×107細胞/mL)と混合し(PBMCは20%の単球および20%のBリンパ球を含むと推定された)、4℃において揺動台に載せた。45分後、陽性選択された細胞(単球およびBリンパ球)をMPCを使用して細胞混合物から除去し、Tリンパ球の懸濁液を残した。Tリンパ球の数をカウントし、細胞を実験に使用するか、または1mL当たり1〜2×106細胞の懸濁液中(RPMI1640/10%FCS/PS、37℃および5%CO2)で培養した。
【0320】
増殖アッセイ:
増殖アッセイを行ってTリンパ球の増殖の阻害剤またはエンハンサーとしての種々のcAMP類似体の効力を調べた。数十万の陰性選択されたTリンパ球を平底96穴マイクロタイタープレートの各穴に総体積100μLのRPMI1640/10%FCS/PS中でインキュベートした。細胞の活性化は、最終希釈度1:104(50ng/mL)で抗CD3抗体を加え、その後羊抗マウスIgGでコーティングした磁気ビーズをビーズ対細胞比1:1で加えてTCR/CD3複合体のクロスリンクを行って達成した。ビーズをMPCを使用してRPMI1640/10%FCS/PS中で6度洗浄した後、細胞懸濁液に加えた。細胞を65時間37℃でインキュベートし(5%CO2)、この期間の48時間後に5μCi[メチル−3H]チミジンを加えて増殖を調べた。細胞をマルチサンプルハーベスタを使用してフィルタプレートに取り出し、フィルタプレートをヒートインキュベータにおいて50℃で2時間乾燥させた。20μLシンチレーション液を各穴に加え、その後増殖をβシンチレーションカウントによって測定した。すべての分析は3回行った。
【0321】
cAMP類似体を用いた活性化Tリンパ球の処置:
Tリンパ球を増加する濃度の種々のcAMP類似体で処置した。cAMP類似体を加えた30分後に抗CD3抗体を加えて化合物が細胞中へ拡散できるようにして細胞を活性化させた。細胞増殖を阻害または刺激する各類似体の効力を、[メチル−3H]チミジン取り込みをcAMP類似体濃度の関数として測定することにより決定した。
【0322】
マウスレトロウイルス誘発免疫不全(ネズミAIDS)についての実験原理:
動物:
C57BL6マウスを、MAIDSを起す検出可能なウイルスを含有するウイルス調製物を用いて感染させ(XCプラークアッセイを用いて滴定したところ103PFUエコトロピックウイルスを含んでいる)、感染後約10週目に異なる薬剤で処置した。
【0323】
処置:
異なる化合物を10日間、繰返しIP注射するかまたは浸透圧ポンプを挿入することによって投与した。以下の剤をテストした:
Rp−8−Br−cAMP:1mg/日/マウス
Rp−8−フリル−cAMP:2つの用量をテストした(1mg/日/マウスおよび2.5mg/日/マウス)
ロフェコキシブ:60μg/日/マウス
感染マウスにロフェコキシブまたはRp−Br/フリル−cAMPのニセモノとしてそれぞれイントラリピッド(intralipid)またはPBS注射剤を与えた。通常、各実験グループは6〜9動物を含んだ。動物を屠殺した後、細胞を培養し、異なる剤を培地に加えた。
【0324】
増殖およびサイトカインアッセイ:
動物を屠殺した後、細胞を抗CD3mAb(2C11:4μg/ml)の存在下で72時間培養した。培養の最後に三重水素化チミジンを加え、放射能をシンチレーション分析器で測定した。
【0325】
抗CD3Abに応答するリンパ節リンパ球に対して行った増殖アッセイに加え、細胞質内染色方法を使用してSEBで6時間活性化した後、CD4+ T細胞におけるTNFαの産生を測定した。
【実施例86】
【0326】
(Sp)8−(2−チエニル)アデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−ベンジルホスホラミデート(11b)
THF(2ml)中の塩化2−チエニル亜鉛(0.3ml、1M、0.300mmol)の溶液を、THF(2ml)中の(S)8−ブロモアデノシン−2’O−(t−ブチルジメチルシリル)−3’,5’−環状N−ベンジルホスホラミデート(0.122g、0.200mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.046g、0.040mmol)の溶液にアルゴン下で加えた。反応混合物をおだやかな還流下で3時間加熱した。塩化アンモニウムの飽和水溶液(3ml)およびジクロロメタン(10ml)を冷却した反応混合物に加え、有機相を飽和ブライン(2×3ml)で抽出し、乾燥させ(MgSO4)、溶媒を蒸留して除去した。残留物質をMeOH:CH2Cl2(1:20)を使用したシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィにかけた。収率 0.059g(48%)。
【0327】
【化80】

【図面の簡単な説明】
【0328】
【図1】図1は、種々の化合物によるTNF−アルファ−正CD4T細胞の%を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
8−カルビル置換cAMPS化合物またはその誘導体。
【請求項2】
前記8−置換基が、25個までの非水素原子を含む請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記8−置換基が、5〜10個の環状原子を含む環状基を含む請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記8−置換基が、任意に置換されているアリール基及び任意に置換されているヘテロアリール基から選択され、
前記任意に置換されているアリール基が、例えば
ベンゼン、ナフタレンおよび
環化カルボキシル系、および
ピリジン、ジ−およびトリアジン、フラン、チオフェンおよびピロール、およびアゾール、およびトリアゾール、およびオキサ−およびチアジアゾール、およびテトラゾールを含む環化複素環系であり、
前記任意に置換されているヘテロアリール基が、例えば、
6員環アジン、ピリジン、ジアジン、トリアジンおよび環化炭素環系、および
前記のような環化複素環系、および
5員環系(例えば、フラン、チオフェンおよびピロール、アゾール、およびトリアゾール、およびオキサ−およびチアジアゾール、およびテトラゾール)および
環化複素環系および炭素環系である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
前記8−置換基が、フェニル、フリルまたはチエニル基を含む請求項1から4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項6】
ホスホロチオ酸硫黄、アデノシンアミン基およびフリルヒドロキシル基の1つ以上において保護化される、請求項1から5のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項7】
少なくとも90%モルが、RpまたはSp形態である請求項1から6のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項8】
8−カルビル化cAMPSまたはその誘導体の製造のためのプロセスであって、
a)2’−保護8−カルビル化−アデノシン3’,5’−環状ホスホラミデートを二硫化炭素と反応させ、2’−ヒドロキシルを脱保護するステップ、
b)8−カルビル化−アデノシンを乾燥溶媒中でSPCl3と反応させるステップ、
c)8−カルビル化−アデノシンを亜リン酸塩と反応させ、その後硫黄と反応させるステップ、
d)2’−保護化されてもよい8−ハロ−cAMPSをアルキル化剤と反応させ、必要ならば2’ヒドロキシルを脱保護するステップ、
e)8−カルビル化cAMPSをその塩に変換するステップ、
f)8−カルビル化cAMPSを生物学的に開裂可能な保護基と反応させるステップ、および
g)8−カルビル化cAMPSまたはその誘導体のRp/Sp異性体混合物のRpおよびSp異性体を分離するステップ
のうちの少なくとも1つのステップを含むプロセス。
【請求項9】
8−カルビル化アデノシン環状3’,5’−ホスホラミデートまたはその誘導体。
【請求項10】
8−カルビル化−2’−保護化(例えばシリル化)アデノシン環状3’,5’−ホスホロチオエートまたはその誘導体。
【請求項11】
8−ハロ(および好ましくは2’−保護化(例えばシリル化)された)アデノシン環状3’,5’−ホスホラミデートまたはその誘導体。
【請求項12】
8−カルビル化cAMPSまたはその誘導体を生理学的に許容可能な担体またはレシピエントとともに含む医薬組成物。
【請求項13】
ヒトまたは非ヒト動物(好ましくは哺乳動物)の体を処置して前記体内でcAMPアゴニストまたはアンタゴニスト効果を達成するための方法であって、請求項1から7のいずれか1つに記載の8−カルビル化cAMPSまたはその誘導体の有効量を前記体に投与するステップを含む方法。
【請求項14】
ヒトまたは非ヒト動物(好ましくは哺乳動物)の体を処置して前記体内でcAMPアゴニストまたはアンタゴニスト効果を達成するための方法において使用するための薬剤を製造するための請求項1から7のいずれか1つに記載の8−カルビル化cAMPSまたはその誘導体の使用。
【請求項15】
サンプル(一般に生物学的サンプル)中のcAMPを決定するためのアッセイ方法であって、前記サンプルをcAMP−類似体およびcAMP結合試薬に接触させるステップを含み、前記類似体が、8−カルビル化cAMPSまたはその誘導体である、アッセイ方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−502673(P2008−502673A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516050(P2007−516050)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002418
【国際公開番号】WO2005/123755
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506418817)
【Fターム(参考)】