説明

プレキャストコンクリート版の施工法および該施工法に使用されるプレキャストコンクリート版および摺り付け板

【課題】空港の滑走路やエプロンなどのPCa版の交換作業の施工法において、既設もしくは交換済みのPCa版に隣接して新たなPCa版を仮施工する際に発生する段差を、簡単な構成にて解消する。
【解決手段】既設もしくは交換済みのプレキャストコンクリート版20の端部高さに対して、隣接している仮設のプレキャストコンクリート版20Aの端部高さが低くて段差Hが発生した場合は、一端部が前記段差に相当する厚みを有し、かつ他端部は厚みが漸減するテーパー部44を有する摺り付け板40を形成し、該摺り付け板40を前記仮設のプレキャストコンクリート版20Aの端部上面に固定して前記段差Hを解消し、さらに、前記仮設のプレキャストコンクリート版20Aを本施工する際には、前記摺り付け板40を取り外した後に、本施工することを特徴とするプレキャストコンクリート版の施工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレキャストコンクリート版の施工法および該施工法に使用されるプレキャストコンクリート版および摺り付け板に関するものであり、特に、空港の滑走路やエプロン、あるいは自動車道路などに敷設したプレキャストコンクリート版の交換作業における施工法および該施工法に使用されるプレキャストコンクリート版および摺り付け板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空港の滑走路やエプロン、あるいは自動車道路などでは、造成した路盤にプレキャストコンクリート版(以下、PCa版という)を連続して敷設する施工法が広く行われている。PCa版は予め工場などで生産されるため、製作精度が高く、かつ現場での工期を短縮することができる。
【0003】
路盤に敷設されたPCa版同士を連結するには、種々の方法があるが、コッター式継手装置で連結する方法が知られている。コッター式継手装置は、受け金具と、対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具とで構成され、前記受け金具は上面に平面視C形状の溝穴を有しており、該溝穴の底部にボルト螺着用の螺子部を設けてある。PCa版の端部上面には所定間隔で前記受け金具が埋設されており、該受け金具の上面に開口凹部が設けられている。
【0004】
そして、隣接するPCa版のそれぞれの端部に設けた前記受け金具を対峙させ、相互に平面視H形状に合体した溝穴内に、差し込み金具である平面断面視H形状のコッターを垂直に挿入して、PCa版同士を連結する。また、該コッターに開穿されたボルト孔にボルトを挿入して前記溝穴底部の螺子部へ螺着することにより、該コッターが双方の受け金具の溝穴に固定され、隣接するPCa版同士が確実かつ強固に連結されるように構成されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
ここで、空港の滑走路やエプロンなどを改修する場合は、飛行機の発着がない夜間に工事を行う。このため、滑走路やエプロンの全領域を一度に改修することはできず、限られた区域の既設舗装を少しずつ撤去して、新たなPCa版を敷設し、翌朝には、再び飛行機が発着できる状態に復帰させなければならない。
【0006】
しかし、限られた区域であっても、既設舗装を撤去した後に、新たなPCa版を設置し、さらに、高さ調整やグラウト材の注入などの本施工をすべて完了させることは、夜間の限られた時間内では無理である。このため、新たなPCa版を設置したら、飛行機の発着が可能である状態に仮施工しておき、翌日の作業時に、前日仮施工した区域のPCa版を本施工している。
【0007】
図17は従来の空港舗装における改修工事のうち、仮施工までの手順を示すフローチャートである。PCa版がコッター式継手装置で連結されて、連続して敷設されている作業領域のうち、当日仮施工する区域の既設舗装を撤去する(ステップ101)。既設舗装を撤去した後、露出した路盤に新たなPCa版を敷設するために、先ず路盤充填材を充填し(ステップ102)、その上にビニールシートを敷設する(ステップ103)。
【0008】
続いて、新たなPCa版を仮設するのであるが、まだPCa版を交換していない箇所、あるいは、すでにPCa版を交換して本施工が完了している箇所など、既設もしくは交換済みのPCa版に隣接して新たなPCa版を仮設する場合は、既設舗装もしくは交換済みのPCa版の端部高さと、仮設するPCa版の端部高さを揃えて、双方のPCa版同士の段差を規定値以内にする必要がある。もし規定値を超える段差があると、飛行機の発着などで機体が移動走行する際に、段差部分で機体に衝撃を与えたり、あるいは、PCa版に欠けなどの損傷が発生したりするおそれがある。
【0009】
このため、仮設側のPCa版の設置高さを計算し、双方のPCa版同士の段差が規定値以内になるように、PCa版を仮設する前に、予め発泡スチロール、ブルーシート、防炎シートなどを設置し(ステップ104)、これらの上に新たなPCa版を1枚ずつクレーンで吊り下げて仮設する(ステップ105)。
【0010】
このように、隣接するPCa版との段差を規定値以内にして新たなPCa版を仮設し、仮設したPCa版の横ずれを防ぐために、双方のPCa版のコッター式継手装置にコッターを差し込んで仮接続し(ステップ106)、コッター式継手装置の受け金具に蓋を設置して開口部を被蔽する(ステップ107)。さらに、ラインなどの仮マーキングを行って(ステップ108)、当該区域での仮施工が終了する。
【0011】
図18は従来の空港舗装における改修工事のうち、本施工での手順を示すフローチャートである。前日仮施工した区域のPCa版を本施工するためには、仮施工時に段差解消のために設置した発泡スチロール、ブルーシート、防炎シートなどを撤去する必要がある。このため、先ず、コッター式継手装置の受け金具の蓋を撤去して開口部を開き(ステップ111)、コッター式継手装置のコッターを取り外した後に(ステップ112)、仮設のPCa版を1枚ずつクレーンで持ち上げて一時的に撤去する(ステップ113)。
【0012】
続いて、仮施工時に高さ調整のために設置した発泡スチロール、ブルーシート、防炎シートなどを撤去する(ステップ114)。そして、一時的に撤去したPCa版を1枚ずつクレーンで吊り下げて再設置し(ステップ115)、高さ調整ボルトなどを用いて仮設のPCa版の高さを調整し、隣接するPCa版同士の段差を規定値以内にする(ステップ116)。
【0013】
そして、仮設のPCa版の下部へグラウト材を注入し(ステップ117)、所定の時間だけ養生を施した後に(ステップ118)、隣接するPCa版のコッター式継手装置にコッターを差し込んで本接続し(ステップ119)、コッター式継手装置の受け金具に蓋を設置して開口部を被蔽する(ステップ120)。さらに、機材の片付けや清掃を行って(ステップ121)、当該区域での本施工が終了する。なお、当該区域で本施工を行っているとき、これと同時に、別な区域で仮施工を行うことにより、作業日数を短縮させている。
【0014】
このように、従来は隣接するPCa版同士の段差や既設舗装との段差を解消するために、仮設するPCa版の下部に、予め発泡スチロールやブルーシートなどを設置していたが、本施工でこれらの発泡スチロールなどを撤去するためにPCa版を一時撤去する必要があり、クレーンの稼働時間が長くなり、施工コストが嵩むという不具合があった。また、この発泡スチロールは本来では再使用も可能であるが、施工作業の規則などで再使用が禁じられているため、一回の仮施工ごとに廃棄されている。したがって、資源保存や環境保護などの観点でも問題があった。
【0015】
このほかに、仮施工時における道路やコンクリート版の段差を解消する方法としては、アスファルト基礎舗装工事からアスファルト仕上げ舗装工事までの期間中、アスファルト基礎舗装面と側溝との段差にゴムマットによる斜面を仮設する方法(例えば、特許文献3参照)、ボックスカルバートを施工するに際して、地盤に土留壁を造成し、土留壁の内側地盤を所定深さだけ掘削して、土留壁の上端付近にブラケットを取り付ける。このブラケットにボックスカルバートの上スラブを設置することにより、施工の際の切梁と仮設覆工を兼ねるようにして、仮設覆工の高さを周辺路面と同一に設定する施工方法(例えば、特許文献4参照)などが知られている。
【特許文献1】特開2001−152403号公報
【特許文献2】特開2001−214694号公報
【特許文献3】特開平9−13307号公報
【特許文献4】特開2002−138561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1および特許文献2記載の発明は、空港の滑走路やエプロンなどの広範囲な場所でのコンクリート舗装の急速施工を可能にするものであり、敷設されたPCa版同士をコッター式継手装置で連結する構成が開示されている。コッターにボルトを挿通して受け金具に螺着させるので、コッターの緩みや抜け出しを防止でき、PCa版を強固に連結することができる。しかし、既設の滑走路やエプロンなどを改修する施工法は開示されていない。
【0017】
特許文献3記載の発明は、ゴムマットを仮設して段差を解消しているが、空港の滑走路やエプロンなどのように大重量物の移動走行には耐えられない。
【0018】
特許文献4記載の発明は、仮設覆工時に段差が発生しないように仮設覆工するが、仮設した上スラブの下側で地盤を掘削していくなど、目的および用途がまったく異なる。
【0019】
そこで、空港の滑走路やエプロン、あるいは自動車道路などに連続して敷設されたPCa版の交換作業の施工法において、既設もしくは交換済みのPCa版に隣接して新たなPCa版を仮施工する際に発生する段差を、発泡スチロールなどを設置することなく簡単な構成にて解消するとともに、クレーンの稼働時間を短縮して施工コストを低減するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、造成した路盤に連続して敷設されている既設舗装を順次新たなPCa版に交換する施工法において、既設もしくは交換済みのPCa版に隣接して、新たなPCa版を仮据付する際に、前記既設もしくは交換済みのPCa版の端部高さに対して、仮設のPCa版の端部高さが低くて段差が発生した場合は、一端部が前記段差に相当する厚みを有し、かつ他端部は厚みが漸減するテーパー部を有する摺り付け板を形成し、該摺り付け板の一端部と前記仮設のPCa版の端部を所定の状態に合致させ、該摺り付け板を前記仮設のPCa版の端部上面に固定して前記段差を解消し、さらに、前記仮設のPCa版を本施工する際には、前記摺り付け板を取り外した後に、仮設のPCa版を本施工することを特徴とするPCa版の施工法を提供する。
【0021】
この構成によれば、既設舗装もしくは交換済みのPCa版の端部高さに対して、仮設のPCa版の端部高さが低くて段差が発生した場合は、この段差に相当する厚みを有する摺り付け板を仮設のPCa版の端部上面に固定することにより、仮施工におけるPCa版の段差を解消することができる。そして、仮設のPCa版を本施工する際には、前記摺り付け板を撤去した後に、高さ調整やグラウト注入して本施工する。
【0022】
請求項2記載の発明は、上記既設舗装もしくは交換済みのPCa版の端部と、上記仮設のPCa版の端部との隙間にL字状金具の一辺を挿入するとともに、該L字状金具の他辺を上記摺り付け板の一端部上面に当接し、さらに、前記L字状金具の一辺と前記既設もしくは交換済みのPCa版の端部との間にくさび手段を打ち込んで、前記摺り付け板を前記仮設のPCa版の端部上面に固定することを特徴とする請求項1記載のPCa版の施工法を提供する。
【0023】
この構成によれば、既設舗装もしくは交換済みのPCa版と仮設のPCa版との隙間にL字状金具の一辺を挿入し、この隙間にくさび手段を打ち込むことにより、該L字状金具の他辺が上記摺り付け板の一端部上面を強く押圧して、摺り付け板が仮設のPCa版の端部上面に固定される。
【0024】
請求項3記載の発明は、上記隣接するPCa版は、受け金具と、対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具とで構成される継手装置にて連結され、前記受け金具は、差し込み金具を挿入するための溝穴と、該溝穴の底部に設けられたボルト螺着用の螺子部とを有し、前記PCa版の端部上面に所定間隔で設けられた開口凹部の底面に、前記溝穴を露出させて前記受け金具を埋設してあり、一方、前記摺り付け板の一端部底面には、前記PCa版の開口凹部に嵌合可能な凸部を形成し、かつ前記摺り付け板の上面には、前記底面の凸部の中央部を貫通するボルト挿通孔と、該ボルト挿通孔に挿通されるボルトの頭部が埋没する座ぐり穴を形成するとともに、前記摺り付け板の他端部には、該他端部方向へ厚みが漸減するテーパー部を形成してあり、仮設のPCa版の開口凹部に前記摺り付け板の凸部を嵌合して、前記PCa版の端部と前記摺り付け板の一端部が所定の状態に位置決めされ、さらに、前記摺り付け板のボルト挿通孔にボルトを挿通して前記溝穴底部の螺子部へ螺着することにより、前記摺り付け板を前記仮設のPCa版の端部上面に固定できるように形成されたことを特徴とする請求項1記載の施工法に使用されるPCa版および摺り付け板を提供する。
【0025】
この構成によれば、隣接するPCa版同士は継手装置で連結され、一体化したコンクリート版が形成される。前記継手装置は受け金具と、対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具とで構成され、前記摺り付け板の凸部を仮設のPCa版の開口凹部に嵌合すれば、摺り付け板の一端部と前記仮設のPCa版の端部が所定の状態に位置決めされ、さらに、前記摺り付け板のボルト挿通孔にボルトを挿通して受け金具の螺子部へ螺着することにより、前記摺り付け板が仮設のPCa版の端部上面に固定される。
【0026】
請求項4記載の発明は、上記PCa版の端部近傍上面に所定間隔で複数の凹部を設け、一方、上記摺り付け板の底面には、前記PCa版の凹部に嵌合可能な複数の凸部を形成し、前記PCa版の凹部に前記摺り付け板の凸部を嵌合して、前記PCa版の端部と前記摺り付け板の一端部が所定の状態に位置決めできるように形成されたことを特徴とする請求項1記載の施工法に使用されるPCa版および摺り付け板を提供する。
【0027】
この構成によれば、摺り付け板の凸部を仮設のPCa版の凹部に嵌合すれば、摺り付け板の一端部と前記仮設のPCa版の端部が所定の状態に位置決めされる。
【0028】
請求項5記載の発明は、上記摺り付け板の上面には、上記底面の凸部の中央部を貫通するボルト挿通孔と、該ボルト挿通孔に挿通されるボルトの頭部が埋没する座ぐり穴を形成し、上記PCa版の凹部には、前記摺り付け板の凸部に設けたボルト挿通孔に対応する位置にエア吹き抜け用の垂直孔兼用のボルト挿通孔を設けるとともに、該ボルト挿通孔の中にナットを埋設したことを特徴とする請求項4記載のPCa版および摺り付け板を提供する。
【0029】
この構成によれば、摺り付け板の凸部をPCa版の凹部に嵌合すれば、摺り付け板の一端部と前記仮設のPCa版の端部が所定の状態に位置決めされ、前記摺り付け板の凸部に設けたエア吹き抜け用の垂直孔兼用のボルト挿通孔にボルトを挿通し、該ボルトをPCa版の凹部に埋設されたナットに螺着することにより、前記摺り付け板が仮設のPCa版の端部上面に固定される。
【0030】
請求項6記載の発明は、上記摺り付け板の上面には、上記底面の凸部の中央部を貫通するボルト挿通孔と、該ボルト挿通孔に挿通されるボルトの頭部が埋没する座ぐり穴を形成し、上記PCa版の凹部には、前記摺り付け板の凸部に設けたボルト挿通孔に対応する位置に、ボルト螺着用のインサートを埋設したことを特徴とする請求項4記載のPCa版および摺り付け板を提供する。
【0031】
この構成によれば、摺り付け板の凸部をPCa版の凹部に嵌合すれば、摺り付け板の一端部と前記仮設のPCa版の端部が所定の状態に位置決めされ、前記摺り付け板の凸部に設けたボルト挿通孔にボルトを挿通し、該ボルトをPCa版の凹部に埋設されたインサートに螺着することにより、前記摺り付け板が仮設のPCa版の端部上面に固定される。
【0032】
請求項7記載の発明は、上記PCa版の端部側面には、隣接するPCa版の端部側面にそれぞれ対峙してエア吹き抜け用の水平孔を開穿し、上記摺り付け板の一端部には、隣接するPCa版との隙間に挿入される差し込み部を垂設するとともに、該差し込み部には前記水平孔に対応する位置に水平ジョイント挿通用孔を設けたことを特徴とする請求項4記載のPCa版および摺り付け板を提供する。
【0033】
この構成によれば、既設もしくは交換済みのPCa版と仮設のPCa版との隙間に、摺り付け板の一端部に垂設された差し込み部を差し込むとともに、摺り付け板の凸部をPCa版の凹部に嵌合すれば、摺り付け板の一端部と前記仮設のPCa版の端部が所定の状態に位置決めさる。さらに、PCa版に設けられたエア吹き抜け用の水平孔と前記差し込み部に設けた水平ジョイント挿通用孔を合致させ、一方のPCa版の水平孔から他方のPCa版の水平孔へ水平ジョイントを貫通することにより、前記摺り付け板が仮設のPCa版の端部上面に固定される。
【0034】
請求項8記載の発明は、上記摺り付け板は、上記PCa版の長さに対して複数枚に分割されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,または7記載のPCa版および摺り付け板を提供する。
【0035】
この構成によれば、上記摺り付け板は、PCa版の長さに対して複数枚に分割されているので、運搬および据付作業が容易である。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、既設舗装を順次新たなPCa版に交換する施工法において、既設もしくは交換済みのPCa版の端部高さに対して、仮設のPCa版の端部高さが低くて段差が発生した場合は、この段差に相当する厚みを有する摺り付け板を仮設のPCa版の端部上面に固定することにより、仮据付時におけるPCa版の段差を解消することができる。前記摺り付け板の固定方法としては、例えば、隣接するPCa版の隙間にL字状金具の一辺を挿入して、くさび手段を打ち込むことにより、L字状金具の他辺が摺り付け板の一端部上面を強く押圧するので、簡素な構成で容易に摺り付け板を固定することができる。
【0037】
あるいは、受け金具と、対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具とで構成される継手装置により、隣接するPCa版同士が連結される構成の場合、摺り付け板に設けた凸部を前記受け金具の開口凹部に嵌合することにより、摺り付け板の一端部と前記仮設のPCa版の端部が所定の状態に位置決めされ、さらに、ボルトを挿通して受け金具の螺子部へ螺着することにより、前記摺り付け板を仮設のPCa版の端部上面に固定することができる。
【0038】
このように、新たなPCa版を仮据付する際には、発泡スチロールなどを設置することなく、摺り付け板によって段差を簡単に解消することができ、仮据付後の移動走行に支承を来たすことがない。一方、新たなPCa版を本施工する際には、前記摺り付け板を簡単に撤去できるので、仮設のPCa版を一時撤去する必要がなく、クレーンの稼動時間を短縮して施工コストを低減することができる。また、従来の施工法では、発泡スチロールを一回の使用で廃棄処分していたが、本発明に係る摺り付け板は、再使用することが可能であり、資源保存や環境保護などの観点からも極めて高い効果を奏する発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明に係る融雪路盤構造物および融雪路盤の施工方法について、好適な実施例をあげて説明する。空港の滑走路やエプロン、あるいは自動車道路などに連続して敷設されたPCa版の交換作業の施工法において、既設もしくは交換済みのPCa版に隣接して新たなPCa版を仮施工する際に発生する段差を、発泡スチロールなどを設置することなく簡単な構成にて解消するとともに、クレーンの稼働時間を短縮して施工コストを低減するという目的を達成するために、
造成した路盤に連続して敷設されている既設舗装を順次新たなPCa版に交換する施工法において、
既設もしくは交換済みのPCa版に隣接して、新たなPCa版を仮据付する際に、前記既設もしくは交換済みのPCa版の端部高さに対して、仮設のPCa版の端部高さが低くて段差が発生した場合は、
一端部が前記段差に相当する厚みを有し、かつ他端部は厚みが漸減するテーパー部を有する摺り付け板を形成し、
該摺り付け板の一端部と前記仮設のPCa版の端部を所定の状態に合致させ、該摺り付け板を前記仮設のPCa版の端部上面に固定して前記段差を解消し、
さらに、前記仮設のPCa版を本施工する際には、前記摺り付け板を取り外した後に、仮設のPCa版を本施工することにより実現した。
【実施例1】
【0040】
図1は本発明に係るPCa版(プレキャストコンクリート版)の施工法の一例として、空港の誘導路10を示す平面図である。この誘導路10は、造成した路盤上に連続して複数のPCa版20を敷設して形成されている。
【0041】
前述したように、空港の誘導路10を改修する場合は、飛行機の発着がない夜間に工事を行うが、限られた区域の既設舗装20を少しずつ撤去して新たなPCa版を仮据付し、翌日の夜間に、前日仮設した区域のPCa版を本施工する。本実施例では、例えばすでに改修工事が終了している等の理由で、一部の既設領域11はそのまま残して、残りの改修領域12のPCa版20を順次新たなPCa版に交換していく施工法を説明する。
【0042】
本実施例では、仮施工する区域を例えば斜線で示す部分のように、1回(一晩)に5枚程度ずつのPCa版20を交換するものとし、残存した区域は、2回目以降(翌日の夜以降)に順次仮施工あるいは本施工を行っていくものとする。
【0043】
図2は連続して敷設されたPCa版20を示す部分平面図、図3はコッター式継手装置を示す部分断面図である。PCa版20の4辺の端部21と、隣接するPCa版20の4辺の端部21とは所定幅の隙間22を有しており、所定間隔に設けられたコッター式継手装置30にて連結されている。
【0044】
コッター式継手装置30については前述の特許文献2に詳細な説明が記載されているが、その構成を簡単に説明すれば、平面視C字形状に開口された溝穴31を有する受け金具32と、対峙した受け金具32の溝穴31同士が相互に形成する溝穴内に着脱可能な差し込み金具である平面断面視H形状のコッター33とで構成されている。
【0045】
前記受け金具32には、ボルト螺着用の螺子部34が設けられており、背面部にはロッド状のアンカ35を延設して、PCa版20の端部21に所定間隔で受け金具32が埋設されている。該受け金具32はPCa版20の上面23からわずかに凹んで埋設されており、該受け金具32の上面に開口凹部24が形成されている。また、コッター33のフランジ部36にはボルト孔37が開穿されている。
【0046】
所定幅の隙間22を隔てて隣接するPCa版20同士は、対峙した受け金具32の溝穴31が相互に形成する平面視H字形状の溝穴内に、平面断面視H形状のコッター33を差し込んで、さらに、コッター33のボルト孔37にボルト38を挿通し、該ボルト38を受け金具32の溝穴31の底部に設けた螺子部34へ螺着することにより、該コッター33が双方の受け金具32の溝穴31に固定され、隣接するPCa版20同士が確実かつ強固に連結される。なお、図示は省略するが、隣接するPCa版20同士を連結した後は、前記それぞれの開口凹部24に蓋を装着して被蔽する。
【0047】
図4は本発明に係る実施例1のPCa版の施工法のうち、仮施工までの手順を示すフローチャートである。前述したように、改修領域12の既設舗装を順次新たなPCa版に交換していく場合、限られた区域を1回(一晩)で仮施工する。先ず仮施工する区域のPCa版のコッター式継手装置のコッターを取り外し、仮施工区域内にある既設舗装を順次撤去する(ステップ1)。既設舗装を撤去した後、露出した路盤に新たなPCa版を敷設するために、先ず路盤充填材を充填し(ステップ2)、その上にビニールシートを敷設する(ステップ3)。
【0048】
続いて、新たなPCa版を1枚ずつクレーンで吊り下げて仮設し(ステップ4)、仮設したPCa版の横ずれを防ぐために、双方のPCa版のコッター式継手装置にコッターを差し込んで仮接続する(ステップ5)。従来の施工法では、新たなPCa版を仮設する前に、予め発泡スチロール、ブルーシート、防炎シートなどを設置して、双方のPCa版同士の段差が規定値以内になるようにしていたが、本発明では、発泡スチロールなどを設置することなく、敷設されたビニールシートの上に、新たなPCa版を設置する。
【0049】
このため、図5(a)に示すように、既設もしくは交換後に本施工が済んだPCa版20の端部高さに対して、新たに仮設したPCa版20Aの端部高さが低くなり、段差Hが発生する。この段差Hを解消するために、本発明では、図5(b)に示すように、段差Hが発生した仮設のPCa版20Aの端部上面に、後述する摺り付け板40を設置する(ステップ6)。
【0050】
なお、摺り付け板40を固定する手段については、後段で詳しく説明する。また、説明の都合上、既設もしくは交換済みのPCa版20と、新たに仮設するPCa版20Aとを、それぞれ別の符号を付して説明しているが、構造上では両者はまったく同一のものである。以後、とくに必要な場合を除き、単にPCa版20と表記するものとする。
【0051】
摺り付け板の設置によって、段差Hを解消もしくは規定値以内に減少した後は、コッター式継手装置の受け金具に蓋を設置して開口部を被蔽する(ステップ7)。さらに、ラインなどの仮マーキングを行って(ステップ8)、当該区域での仮施工が終了する。
【0052】
図6は本発明に係る実施例1のPCa版の改修作業のうち、本施工での手順を示すフローチャートである。前日以前に仮施工した区域のPCa版を本施工するために、先ず、仮設のPCa版に設置した摺り付け板を撤去し(ステップ11)、コッター式継手装置の受け金具の蓋を撤去して開口部を開く(ステップ12)。
【0053】
続いて、高さ調整ボルトなどを用いて仮設のPCa版の高さを調整し、既設もしくは交換済みのPCa版との段差を規定値以内に調整する(ステップ13)。そして、仮設のPCa版の下部へグラウト材を注入し(ステップ14)、所定の時間だけ養生を施した後に(ステップ15)、隣接するPCa版の端部同士を再びコッター式継手装置で本接続し(ステップ16)、コッター式継手装置の受け金具に蓋を設置して開口部を被蔽する(ステップ17)。さらに、機材の片付けや清掃を行って(ステップ18)、当該区域での本施工が終了する。
【0054】
図7は本発明に係る実施例1の摺り付け板40の一例を示す平面図、図8は図7のA−A線断面図である。該摺り付け板40の一端部は前記段差Hに相当する厚みを有し、その一端部底面には前記PCa版20の開口凹部24に嵌合可能な凸部41を形成し、かつ前記摺り付け板40の上面には、前記底面の凸部41の中央部を貫通するボルト挿通孔42と、該ボルト挿通孔42に挿通されるボルトの頭部が埋没する座ぐり穴43を形成するとともに、前記摺り付け板40の他端部には、該他端部方向へ厚みが漸減するテーパー部44を形成してある。
【0055】
図9は前記摺り付け板40の設置状態を示す平面図、図10は図9のB−B線断面図である。図5にて前述したように、既設もしくは交換済みのPCa版20に隣接して、新たなPCa版20Aを仮設したときの段差Hを解消するために、仮設のPCa版20Aの端部上面に前記摺り付け板40を設置するが、先ず、対峙した受け金具32の溝穴31同士が相互に形成する平面視H字形状の溝穴内に、平面断面視H形状のコッター33を上方から差し込んで、コッター式継手装置30を仮接続する。
【0056】
次に、仮設のPCa版20Aの開口凹部24に、前記摺り付け板40の凸部41を嵌合させて、前記仮設のPCa版20Aの端部と摺り付け板40の端部を所定の状態(この場合は双方の端部をほぼ面一状態)に位置決めし、双方のPCa版20および20Aの端部の段差が規定値以内に収まっていることを確認した後に、前記摺り付け板40のボルト挿通孔42およびコッター33のボルト孔37にボルト38を挿通し、該ボルト38の先端を受け金具32の螺子部34へ螺着することにより、前記摺り付け板40が仮設のPCa版20Aの端部上面に固定される。
【0057】
このように、既設もしくは交換済みのPCa版20と、それに隣接して1日の仮施工区域で新たに仮設されたPCa版20Aとのすべての段差部分に、前記摺り付け板40を順次並べて固定することにより、既設もしくは交換済みのPCa版20と仮設のPCa版20Aとの段差Hをすべて解消することができる。
【0058】
翌日以降の作業工程で、前記仮設されたPCa版20Aを本施工する場合は、図6のフローチャートで説明したように、前記摺り付け板40を固定しているボルト38を弛緩して、仮設のPCa版20Aの端部上面から摺り付け板40を撤去するとともに、既設もしくは交換済みのPCa版20のコッター式継手装置30の受け金具32の蓋を撤去して開口部を開く。
【0059】
そして、ジャッキなどを用いて仮設のPCa版20Aの高さ調整を行い、既設もしくは交換済みのPCa版20との段差を規定値以内となるように調整した後に、仮設のPCa版20Aの下部へグラウト材を注入する。所定の時間だけ養生を施した後には、隣接するPCa版20と20Aの端部にそれぞれ設けられた受け金具32において、対峙する溝穴31同士が形成する平面視H字形状の溝穴内にコッター33を差し込んで、コッター33のボルト孔37にボルト38を挿通し、該ボルト38を受け金具32の螺子部34へ螺着して、コッター式継手装置30を本接続する。そして、コッター式継手装置30の受け金具32に蓋を設置して開口部を被蔽すれば、当該区域でのPCa版20の本施工が終了する。
【実施例2】
【0060】
前述した実施例1は、空港の誘導路10の既設領域11に敷設されたPCa版20同士が、コッター式継手装置30で連結されている場合についての施工法であるが、実施例2では、既設領域11に敷設されたPCa版20同士が、ボルト締めなどコッター式継手装置とは異なる他の形式の継手で連結されている場合についての施工法を説明する。
【0061】
実施例2の施工法は、PCa版20が他の形式の継手で連結されていること以外は、実施例1とほぼ同様であり、飛行機の発着がない夜間に、限られた区域の既設舗装20を少しずつ撤去して新たなPCa版を仮施工し、翌日の夜間に、前日仮施工した区域のPCa版を本施工する。
【0062】
図11は本発明に係る実施例2のPCa版の施工法のうち、仮施工までの手順を示すフローチャートである。実施例1と同様に、改修領域12の既設舗装を順次新たなPCa版に交換していく場合、限られた区域を1回(一晩)で仮施工する。先ず仮施工する区域の既設舗装を撤去する(ステップ21)。既設舗装を撤去した後、露出した路盤に新たなPCa版を敷設するために、先ず路盤充填材を充填し(ステップ22)、その上にビニールシートを敷設する(ステップ23)。
【0063】
続いて、新たなPCa版を1枚ずつクレーンで吊り下げて仮設し(ステップ24)、既設のPCa版に対して、段差Hが発生した仮設のPCa版の端部上面に、後述する摺り付け板を設置する(ステップ25)。そして、既設舗装と仮設のPCa版を継手で仮接続し(ステップ26)。さらに、ラインなどの仮マーキングを行って(ステップ27)、当該区域での仮施工が終了する。
【0064】
図12は本発明に係る実施例2のPCa版の改修作業のうち、本施工での手順を示すフローチャートである。前日以前に仮施工した区域のPCa版を本施工するために、先ず、仮設のPCa版に設置した摺り付け板を撤去し(ステップ31)、継手を一時撤去する(ステップ32)。
【0065】
続いて、高さ調整ボルトなどを用いて仮設のPCa版の高さ調整を行い、既設もしくは交換済みのPCa版との段差を規定値以内に調整する(ステップ33)。そして、仮設のPCa版の下部へグラウト材を注入し(ステップ34)、所定の時間だけ養生を施した後に(ステップ35)、隣接するPCa版の端部同士を再び継手で本接続し(ステップ36)、さらに、機材の片付けや清掃を行って(ステップ37)、当該区域での本施工が終了する。
【0066】
図13は本発明に係る実施例2の一例である摺り付け板40Aを示す説明図である。該摺り付け板40Aの一端部は段差Hに相当する厚みを有し、該摺り付け板40Aにはボルト孔は開穿されていない。また、摺り付け板40Aの他端部には、該他端部方向へ厚みが漸減するテーパー部44Aを形成してある。
【0067】
実施例2では、既設領域11に敷設されたPCa版20にコッター式継手装置30が設けられていないため、受け金具32を利用して摺り付け板40Aを固定することはできない。このため、前記摺り付け板40Aを使用して仮設のPCa版20Aの段差を解消する場合は、前記仮設のPCa版20Aの端部と摺り付け板40Aの端部を所定の状態(この場合は双方の端部をほぼ面一状態)に位置決めし、既設のPCa版20の端部と仮設のPCa版20Aの端部との隙間22へ、L字状金具45Aの一辺45Aaを挿入するとともに、該L字状金具45Aの他辺45Abを上記摺り付け板40Aの一端部上面に当接し、さらに、前記L字状金具の一辺45Aaと前記既設のPCa版20の端部との間にくさび手段46Aを打ち込むことにより、該L字状金具の他辺45Abが上記摺り付け板40Aの一端部上面を強く押圧して、前記摺り付け板40Aが前記仮設のPCa版20Aの端部上面に固定される。前記くさび手段46Aとしては、打ち込み式のくさびのほか、エアジャッキを挿入して膨拡させてもよい。
【0068】
なお、双方のPCa版20,20Aには、所定間隔で複数のエア抜き用の水平孔47が対峙して設けられ、それぞれの水平孔47に連通した垂直孔48がPCa版20,20Aの上面に開口されている。PCa版20Aを仮設する際には、予め一方の水平孔47に水平ジョイント49を差し込んでおき、一方の垂直孔48からエアを吹き入れて水平ジョイント49を移動させ、該水平ジョイント49を双方の水平孔47に亘って挿通させることにより、仮設のPCa版20Aの横ずれを防止する。
【0069】
翌日以降の作業工程で、前記仮設されたPCa版20Aを本施工する場合は、図12のフローチャートで説明した手順に従って本施工する。
【0070】
図14は本発明に係る実施例2の他の一例である摺り付け板40Bを示す説明図である。該摺り付け板40Bの一端部は段差Hに相当する厚みを有し、該摺り付け板40Bの他端部には該他端部方向へ厚みが漸減するテーパー部44Bを形成してある。また、該摺り付け板40Bの底面には所定間隔で複数の凸部41Bを設け、該摺り付け板40Bの上面には、前記底面の凸部41Bの中央部を貫通するボルト挿通孔42Bと、該ボルト挿通孔42Bに挿通されるボルトの頭部が埋没する座ぐり穴43Bを形成してある。
【0071】
一方、前記PCa版20Aの上面には、前記摺り付け板40Bの底面に設けた凸部41Bに対応する位置に、該凸部41Bに嵌合可能な複数の凹部51Bを設け、該凹部51Bには、前記摺り付け板40Bのボルト挿通孔42Bに対応する位置にエア吹き抜け用の垂直孔兼用のボルト挿通孔50Bを開穿し、該ボルト挿通孔50の下端部にナット52を埋設してある。
【0072】
前記摺り付け板40Bを使用して、仮設のPCa版20Aの段差を解消する場合は、前記摺り付け板40Bの凸部41BをPCa版20Aの凹部51Bに嵌合すれば、前記仮設のPCa版20Aの端部と摺り付け板40Bの一端部が所定の状態(この場合は双方の端部をほぼ面一状態)に位置決めされ、前記摺り付け板40Bのボルト挿通孔42BおよびPCa版20Aのボルト挿通孔50にボルト53Bを挿通し、該ボルト53BをPCa版20Aに埋設されたナット52Bに螺着することにより、前記摺り付け板40Bが仮設のPCa版20Aの端部上面に固定される。
【0073】
なお、この場合も、双方のPCa版20,20Aに対峙して設けられた複数のエア抜き用の水平孔47に、水平ジョイント49を双方の水平孔47に亘って挿通させて、仮設のPCa版20Aの横ずれを防止する。
【0074】
翌日以降の作業工程で、前記仮設されたPCa版20Aを本施工する場合は、図12のフローチャートで説明した手順に従って本施工する。
【0075】
図15は本発明に係る実施例2の他の一例である摺り付け板40Cを示す説明図である。該摺り付け板40Cの一端部は段差Hに相当する厚みを有し、該摺り付け板40Cの他端部には該他端部方向へ厚みが漸減するテーパー部44Cを形成してある。また、該摺り付け板40Cの底面には所定間隔で複数の凸部41Cを設け、該摺り付け板40Cの上面には、前記底面の凸部41Cの中央部を貫通するボルト挿通孔42Cと、該ボルト挿通孔42Cに挿通されるボルトの頭部が埋没する座ぐり穴43Cを形成してある。
【0076】
一方、前記PCa版20Aの上面には、前記摺り付け板40Cの底面に設けた凸部41Cに対応する位置に、該凸部41Cに嵌合可能な複数の凹部51Cを設け、該凹部51Cには、前記摺り付け板40Cのボルト挿通孔42Cに対応する位置にボルト螺着用のインサート52Cを埋設してある。
【0077】
前記摺り付け板40Cを使用して、仮設のPCa版20Aの段差を解消する場合は、前記摺り付け板40Cの凸部41CをPCa版20Aの凹部51Cに嵌合すれば、前記仮設のPCa版20Aの端部と摺り付け板40Cの一端部が所定の状態(この場合は双方の端部をほぼ面一状態)に位置決めされ、前記摺り付け板40Cのボルト挿通孔42Cにボルト53Cを挿通し、該ボルト53CをPCa版20Aに埋設されたボルト螺着用のインサート52Cに螺着することにより、前記摺り付け板40Cが仮設のPCa版20Aの端部上面に固定される。
【0078】
なお、この場合も、双方のPCa版20,20Aに対峙して設けられた複数のエア抜き用の水平孔47に、水平ジョイント49を双方の水平孔47に亘って挿通させて、仮設のPCa版20Aの横ずれを防止する。
【0079】
翌日以降の作業工程で、前記仮設されたPCa版20Aを本施工する場合は、図12のフローチャートで説明した手順に従って本施工する。
【0080】
図16は本発明に係る実施例2の他の一例である摺り付け板40Dを示す説明図である。該摺り付け板40Dは段差Hに相当する厚みを有し、該摺り付け板40Dの一端部には、既設のPCa版20と仮設のPCa版20Aとの隙間22に挿入される差し込み部54Dを垂設し、該摺り付け板40Dの他端部には該他端部方向へ厚みが漸減するテーパー部44Dを形成してある。
【0081】
また、この場合も、双方のPCa版20,20Aには、所定間隔で複数のエア抜き用の水平孔47が対峙して設けられ、それぞれの水平孔47に連通した垂直孔48がPCa版20,20Aの上面に開口されている。そして、PCa版20Aの端部に近い方の垂直孔48の開口部分には、PCa版20Aの上面に複数の凹部51Dを設ける。
【0082】
前記摺り付け板40Dの底面には、PCa版20Aの上面に設けた凹部51Dに対応する位置に、該凹部51Dに嵌合可能な複数の凸部41Bを設け、さらに、前記摺り付け板40Dの差し込み部54Dには、前記水平孔47に対応する位置に水平ジョイント挿通用孔55Dを開穿する。
【0083】
前記摺り付け板40Dを使用して、仮設のPCa版20Aの段差を解消する場合は、前記摺り付け板40Dの凸部41DをPCa版20Aの凹部51Dに嵌合すれば、前記仮設のPCa版20Aの端部と摺り付け板40Dの一端部が所定の状態(この場合は差し込み部54Dが双方の端部の隙間22に挿入できる状態)に位置決めされる。そして、双方のPCa版20,20Aに対峙して設けられた複数のエア抜き用の水平孔47に、水平ジョイント49を双方の水平孔47に亘って挿通させることにより、前記摺り付け板40Bが仮設のPCa版20Aの端部上面に固定されるとともに、仮設のPCa版20Aの横ずれを防止する。
【0084】
なお、図11〜図16に示した実施例2においては、前記仮設するPCa版20Aの他端部側に、予めコッター式継手装置30の受け金具32を設けておくことにより、既設のPCa版20に隣接した区域のPCa版20の交換が済めば、それ以降は、実施例1と同じ施工法で、改修領域12のPCa版20を順次新たなPCa版20Aに交換していくことができる。
【0085】
ここで、前記摺り付け板40,40A,40B,40C,40Dの大きさや材質は任意に設定できるが、実験では、段差Hを規定値以内にするために、厚み9ミリ程度で長手方向×幅方向が1500ミリ×200ミリ程度の鉄板を使用した。これは、もちろん、段差の程度により鉄板の厚みもしくは重ねる枚数などは任意に変更できる。また、PCa版20を複数枚に分割して形成することにより、作業者が搬送しやすいこと、施工が容易であることなどから考慮した。
【0086】
したがって、飛行機などの大重量の移動走行に耐えられるものであれば、例えば軽量の金属材料や強化プラスチックをはじめとする合成樹脂などで、前記摺り付け板40を形成することも可能である。然るときは、摺り付け板40の重量が軽くなって、より一層施工が容易となり、工期の短縮化を図ることができる。
【0087】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る実施例1の施工法の一例で空港の滑走路を示す平面図。
【図2】実施例1に係るPCa版の敷設状態を示す部分平面図。
【図3】実施例1に係るコッター式継ぎ手装置の部分破断図。
【図4】実施例1に係るPCa版の仮施工でのフローチャート。
【図5】実施例1に係るPCa版の仮施工での段差を示す説明図。
【図6】実施例1に係るPCa版の本施工でのフローチャート。
【図7】実施例1に係る摺り付け板の一例を示す平面図。
【図8】図7のA−A線断面図。
【図9】実施例1に係る摺り付け板の設置状態を示す断面図。
【図10】図9のB−B線断面図。
【図11】実施例2に係るPCa版の仮施工でのフローチャート。
【図12】実施例2に係るPCa版の本施工でのフローチャート。
【図13】実施例2に係る摺り付け板の一例を示す断面図。
【図14】実施例2に係る摺り付け板の他の一例を示す断面図。
【図15】実施例2に係る摺り付け板の他の一例を示す断面図。
【図16】実施例2に係る摺り付け板の他の一例を示す断面図。
【図17】従来のPCa版の仮施工でのフローチャート。
【図18】従来のPCa版の本施工でのフローチャート。
【符号の説明】
【0089】
10 誘導路
11 既設領域
12 改修領域
20 プレキャストコンクリート版(PCa版)
20A 新たに仮設したPCa版
21 4辺
22 隙間
23 PCa版の上面
24 開口凹部
30 コッター式継手装置
31 溝穴
32 受け金具
33 (差し込み金具)コッター
34 螺子部
35 アンカ
36 フランジ
37 ボルト孔
38 ボルト
40,40A,40B,40C,40d 摺り付け板
41,41B,41C,41D 凸部
42,42B,42C ボルト挿通孔
43,43B,43C 座ぐり孔
44,44A,44B,44C,44D テーパー部
45A L字状金具
45Aa 一辺
45Ab 他辺
46A くさび手段
47 水平孔
48 垂直孔
49 水平ジョイント
50B ボルト挿通孔
51B,51C,51D 凹部
52B ナット
52C インサート
53B,53C ボルト
54D 差し込み部
55D 水平ジョイント挿通用孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造成した路盤に連続して敷設されている既設舗装を順次新たなプレキャストコンクリート版に交換する施工法において、
既設もしくは交換済みのプレキャストコンクリート版に隣接して、新たなプレキャストコンクリート版を仮据付する際に、前記既設もしくは交換済みのプレキャストコンクリート版の端部高さに対して、仮設のプレキャストコンクリート版の端部高さが低くて段差が発生した場合は、
一端部が前記段差に相当する厚みを有し、かつ他端部は厚みが漸減するテーパー部を有する摺り付け板を形成し、
該摺り付け板の一端部と前記仮設のプレキャストコンクリート版の端部を所定の状態に合致させ、該摺り付け板を前記仮設のプレキャストコンクリート版の端部上面に固定して前記段差を解消し、
さらに、前記仮設のプレキャストコンクリート版を本施工する際には、前記摺り付け板を取り外した後に、仮設のプレキャストコンクリート版を本施工することを特徴とするプレキャストコンクリート版の施工法。
【請求項2】
上記既設舗装もしくは交換済みのプレキャストコンクリート版の端部と、上記仮設のプレキャストコンクリート版の端部との隙間にL字状金具の一辺を挿入するとともに、該L字状金具の他辺を上記摺り付け板の一端部上面に当接し、さらに、前記L字状金具の一辺と前記既設もしくは交換済みのプレキャストコンクリート版の端部との間にくさび手段を打ち込んで、前記摺り付け板を前記仮設のプレキャストコンクリート版の端部上面に固定することを特徴とする請求項1記載のプレキャストコンクリート版の施工法。
【請求項3】
上記隣接するプレキャストコンクリート版は、受け金具と、対峙した受け金具の相互に亘って着脱可能な差し込み金具とで構成される継手装置にて連結され、
前記受け金具は、差し込み金具を挿入するための溝穴と、該溝穴の底部に設けられたボルト螺着用の螺子部とを有し、前記プレキャストコンクリート版の端部上面に所定間隔で設けられた開口凹部の底面に、前記溝穴を露出させて前記受け金具を埋設してあり、
一方、前記摺り付け板の一端部底面には、前記プレキャストコンクリート版の開口凹部に嵌合可能な凸部を形成し、かつ前記摺り付け板の上面には、前記底面の凸部の中央部を貫通するボルト挿通孔と、該ボルト挿通孔に挿通されるボルトの頭部が埋没する座ぐり穴を形成するとともに、前記摺り付け板の他端部には、該他端部方向へ厚みが漸減するテーパー部を形成してあり、
仮設のプレキャストコンクリート版の開口凹部に前記摺り付け板の凸部を嵌合して、前記プレキャストコンクリート版の端部と前記摺り付け板の一端部が所定の状態に位置決めされ、さらに、前記摺り付け板のボルト挿通孔にボルトを挿通して前記溝穴底部の螺子部へ螺着することにより、前記摺り付け板を前記仮設のプレキャストコンクリート版の端部上面に固定できるように形成されたことを特徴とする請求項1記載の施工法に使用されるプレキャストコンクリート版および摺り付け板。
【請求項4】
上記プレキャストコンクリート版の端部近傍上面に所定間隔で複数の凹部を設け、
一方、上記摺り付け板の底面には、前記プレキャストコンクリート版の凹部に嵌合可能な複数の凸部を形成し、
前記プレキャストコンクリート版の凹部に前記摺り付け板の凸部を嵌合して、前記プレキャストコンクリート版の端部と前記摺り付け板の一端部が所定の状態に位置決めできるように形成されたことを特徴とする請求項1記載の施工法に使用されるプレキャストコンクリート版および摺り付け板。
【請求項5】
上記摺り付け板の上面には、上記底面の凸部の中央部を貫通するボルト挿通孔と、該ボルト挿通孔に挿通されるボルトの頭部が埋没する座ぐり穴を形成し、
上記プレキャストコンクリート版の凹部には、前記摺り付け板の凸部に設けたボルト挿通孔に対応する位置にエア吹き抜け用の垂直孔兼用のボルト挿通孔を設けるとともに、該ボルト挿通孔の中にナットを埋設したことを特徴とする請求項4記載のプレキャストコンクリート版および摺り付け板。
【請求項6】
上記摺り付け板の上面には、上記底面の凸部の中央部を貫通するボルト挿通孔と、該ボルト挿通孔に挿通されるボルトの頭部が埋没する座ぐり穴を形成し、
上記プレキャストコンクリート版の凹部には、前記摺り付け板の凸部に設けたボルト挿通孔に対応する位置に、ボルト螺着用のインサートを埋設したことを特徴とする請求項4記載のプレキャストコンクリート版および摺り付け板。
【請求項7】
上記プレキャストコンクリート版の端部側面には、隣接するプレキャストコンクリート版の端部側面にそれぞれ対峙してエア吹き抜け用の水平孔を開穿し、
上記摺り付け板の一端部には、隣接するプレキャストコンクリート版との隙間に挿入される差し込み部を垂設するとともに、該差し込み部には前記水平孔に対応する位置に水平ジョイント挿通用孔を設けたことを特徴とする請求項4記載のプレキャストコンクリート版および摺り付け板。
【請求項8】
上記摺り付け板は、上記プレキャストコンクリート版の長さに対して複数枚に分割されていることを特徴とする請求項3,4,5,6,または7記載のプレキャストコンクリート版および摺り付け板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−308816(P2008−308816A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154742(P2007−154742)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(592179067)株式会社ガイアートT・K (25)
【出願人】(593017887)石田工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】