説明

プレキャスト部材の接合構造

【課題】プレキャスト部材及び既設部材の主筋を施工誤差や製造誤差に影響されることなく連結することができる接合構造を提供することを課題とする。
【解決手段】プレキャスト部材2の接合端面2aを既設部材3の接合端面3aに突き合わせて接合した接合構造1Aであって、プレキャスト部材2及び既設部材3に主筋20,30が配筋されるとともに、プレキャスト部材2及び既設部材3の接合端面2a,3aに凹部2b,3bが形成され、各主筋20,30の先端部に設けられた継手部材21,31が対向した状態で凹部2b,3b内に配置されており、両継手部材21,31の間に接着材A1を介在させることで、両継手部材21,31を連結していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト部材を既設部材に接合して形成した接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルなどの構造物を建築する場合に、工場で予め製作されたコンクリート製のプレキャスト部材を現場に搬入し、プレキャスト部材を既設部材に組み付けることで、柱や梁を構築する工法が用いられている。この工法では、施行現場における作業期間を短縮することができるとともに、柱や梁の構築作業を簡単に行うことができる。
【0003】
前記したプレキャスト部材を用いた工法において、プレキャスト部材と既設部材との接合構造としては、図7に示すように、プレキャスト部材2及び既設部材3の端面2a,3aから主筋20,30を突出させた状態で、プレキャスト部材2の端面2aと既設部材3の端面3aとを所定間隔を離して配置し、プレキャスト部材2と既設部材3との間にグラウトGを充填することで、プレキャスト部材2を既設部材3に接合しているものがある。この構成では、プレキャスト部材2の主筋20の先端部と、既設部材3の主筋30の先端部とを大きく重ね合わせている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−82805号公報(段落0013〜0018、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来のプレキャスト部材の接合構造では、プレキャスト部材2と既設部材3との間に生じた施工誤差や各部材の製作誤差によって、各主筋20,30の間にずれが生じて、両主筋20,30を接触させることができない場合には、プレキャスト部材2の位置を調整して誤差を解消しないと、両主筋20,30を連結することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、プレキャスト部材の主筋と既設部材の主筋とを施工誤差や製造誤差に影響されることなく連結することができるプレキャスト部材の接合構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、プレキャスト部材の接合端面を既設部材の接合端面に突き合わせて接合した接合構造であって、前記プレキャスト部材及び前記既設部材に主筋が配筋されるとともに、前記プレキャスト部材及び前記既設部材の接合端面に凹部が形成され、前記各主筋の先端部に設けられた継手部材が対向した状態で前記凹部内に配置されており、前記両継手部材の間に接着材を介在させることで、前記両継手部材を連結していることを特徴としている。
【0008】
この構成では、プレキャスト部材及び既設部材の各主筋の継手部材は、両継手部材の間に介在させた接着材によって連結されており、プレキャスト部材と既設部材との間に施工誤差や製造誤差が生じた場合であっても、両継手部材の間に生じたずれが接着材の厚みによって吸収されるため、両継手部材を連結することができる。
また、プレキャスト部材及び既設部材の各主筋の先端部に設けられた継手部材を連結することで、両主筋を連結しているため、各主筋の先端部を重ね合わせる従来の接合構造のように、プレキャスト部材や既設部材の接合端面から主筋を突出させる必要がない。したがって、一体のプレキャスト部材の容積が小さくなり、多数のプレキャスト部材を施工現場に搬入するときに、一台のトラックに積載可能な個数が多くなるため、搬入効率を高めることができる。
また、プレキャスト部材や既設部材の接合端面から主筋を突出させる必要がないため、接合構造における鋼材の重量を小さくすることができる。
【0009】
前記したプレキャスト部材の接合構造において、前記両継手部材が箱体内に収容されている場合には、箱体内に接着材を充填することで、接着材を両継手部材の間に簡単に介在させることができる。また、両継手部材は、箱体内に充填された接着材に埋め込まれた状態となるため、両継手部材を強固に連結することができる。
【0010】
前記した接合構造において、前記両継手部材の間の外周部が、被覆部材によって覆われている場合には、液体状の接着材を両継手部材の間に簡単に充填することができる。
【0011】
前記した接合構造において、前記両継手部材の間に、固体状の前記接着材が挿入される場合には、接着材を両継手部材の間に簡単に介在させることができる。
【0012】
前記課題を解決するため、本発明の他の構成としては、プレキャスト部材の接合端面を既設部材の接合端面に突き合わせて接合した接合構造であって、前記プレキャスト部材及び前記既設部材に主筋が配筋されるとともに、前記プレキャスト部材及び前記既設部材の接合端面に凹部が形成され、前記両主筋の先端部が対向した状態で前記凹部内に配置され、前記両主筋の先端部は筒状の連結部材内に挿入されており、前記連結部材内に接着材を充填することで、前記両主筋の先端部を連結していることを特徴としている。
【0013】
この構成では、プレキャスト部材及び既設部材の各主筋の先端部は、両主筋の先端部の間に介在させた接着材によって連結されており、プレキャスト部材と既設部材との間に施工誤差や製造誤差が生じた場合であっても、両主筋の先端部の間に生じたずれが接着材の厚みによって吸収されるため、両主筋の先端部を連結することができる。
また、プレキャスト部材及び既設部材の各主筋の先端部を重ね合わせることなく連結しているため、各主筋の先端部を重ね合わせる従来の接合構造のように、プレキャスト部材や既設部材の接合端面から主筋を突出させる必要がない。したがって、一体のプレキャスト部材の容積が小さくなり、多数のプレキャスト部材を施工現場に搬入するときに、一台のトラックに積載可能な個数が多くなるため、搬入効率を高めることができる。
また、プレキャスト部材や既設部材の接合端面から主筋を突出させる必要がないため、接合構造における鋼材の重量を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプレキャスト部材の接合構造によれば、プレキャスト部材の主筋と既設部材の主筋とを施工誤差や製造誤差に影響されることなく連結することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
【0016】
[第一実施形態]
まず、第一実施形態の接合構造について説明する。
第一実施形態の接合構造1Aは、図1(a)及び(b)に示すように、プレキャスト部材2の接合端面2aを既設部材3の接合端面3aに突き合わせて接合したものである。
接合構造1Aでは、プレキャスト部材2及び既設部材3の各主筋20,30の先端部に設けられた継手部材21,31が、プレキャスト部材2及び既設部材3の接合端面2a,3aに形成された凹部2b,3b内で箱体40内に収容され、箱体40内には接着材Aが充填されており、両継手部材21,31の間に接着材A1を介在させることで、両継手部材21,31が連結されている。
【0017】
プレキャスト部材2は、工場で予め製作されたコンクリート製の部材であり、その内部には主筋20が軸方向(水平方向)に配筋されている。
プレキャスト部材2の接合端面2a側の縁部には、主筋20の先端部に対応する位置に凹部2bが形成されている。この凹部2bは、直方体状に形成され、プレキャスト部材2の接合端面2a及び外面2cに開口しており、内部には主筋20の先端部が露出している。
【0018】
プレキャスト部材2の主筋20の先端部には、図2(a)に示すように、板状の継手部材21が取り付けられている。この継手部材21は、長方形に形成されており、主筋20の軸方向に対して平面方向が直交し、本実施形態では長手方向が高さ方向になるように配置されている。また、図1(b)に示すように、継手部材21において主筋20側に向けられた取付面21aの下部には、主筋20の先端面が摩擦圧接や溶接などによって接合されている。
【0019】
継手部材21は、プレキャスト部材2の外面2cよりも突出しないように高さが設定されるとともに、既設部材3側に向けられた連結面21bはプレキャスト部材2の接合端面2aよりも内側に配置されている。
【0020】
既設部材3は、図1(a)及び(b)に示すように、内部に主筋30が軸方向(水平方向)に配筋されている。なお、この実施形態では、工場で予め製作されたコンクリート製の部材を用いて既設部材3を構成しているが、場所打ちコンクリートを用いてもよい。
既設部材3の接合端面3a側の縁部には、主筋30の先端部に対応する位置に凹部3bが形成されている。この凹部3bは、直方体状に形成され、既設部材3の接合端面3a及び外面3cに開口しており、内部には主筋30の先端部が露出している。
【0021】
既設部材3の主筋30の先端部には、図2(a)に示すように、板状の継手部材31が取り付けられている。この継手部材31は、長方形に形成されており、主筋30の軸方向に対して平面方向が直交し、本実施形態では長手方向が高さ方向になるように配置されている。また、図1(b)に示すように、継手部材31において主筋30側に向けられた取付面31aの下部には、主筋30の先端面が摩擦圧接や溶接などによって接合されている。
【0022】
継手部材31は、既設部材3の外面3cよりも突出しないように高さが設定されるとともに、プレキャスト部材2側に向けられた連結面31bは既設部材3の接合端面3aよりも内側に配置されている。
【0023】
プレキャスト部材2の接合端面2aと、既設部材3の接合端面3aとを突き合わせて接合した状態では、プレキャスト部材2の主筋20の継手部材21の連結面21bと、既設部材の主筋30の継手部材31の連結面31bとが、凹部2b,3b内で所定間隔を離して対向している。
【0024】
プレキャスト部材2及び既設部材3の凹部2b,3b内には、直方体状の中空な箱体40が、プレキャスト部材2と既設部材3の接合部を跨ぐように配置されている。この箱体40は、上面が開口しており(図2(a)参照)、上端部がプレキャスト部材2及び既設部材3の外面2c,3cよりも突出しないように配置されている。また、箱体40内には各主筋20,30の継手部材21,31が収容されている。
【0025】
図2(a)に示すように、箱体40の既設部材3側の側面42において幅方向の中央には、上端縁から下部に亘ってU字状に切り欠いて形成した挿入溝42aが設けられている。この挿入溝42aの溝幅は、既設部材3の主筋30の直径と略同じ大きさに形成されている。
挿入溝42aには、図2(b)に示すように、上方から主筋30が挿入されており、主筋30の先端部に取り付けられた継手部材31が箱体40内に収容されている。
また、挿入溝42aにおいて、挿入された主筋30よりも上方の部位は、長方形の板状部材である閉塞板42bによって塞がれている。閉塞板42bは、箱体40の側面42に固着されている。
【0026】
図1(a)及び(b)に示すように、箱体40のプレキャスト部材2側の側面41には、前記した既設部材3側の側面42に形成された挿入溝42aと同じ構成の挿入溝41aが設けられている。
挿入溝41aには主筋20が挿入され、主筋20の先端部に取り付けられた継手部材21が箱体40内に収容されている。また、挿入溝41aは、主筋20よりも上方の部位は閉塞板41bによって塞がれている(図2(b)参照)。
【0027】
プレキャスト部材2を既設部材3に接合する場合には、まず、図1(a)及び(b)に示すように、プレキャスト部材2の接合端面2aを既設部材3の接合端面3aに対向させて配置し、プレキャスト部材2の接合端面2aと既設部材3の接合端面3aとを突き合わせる。
これにより、プレキャスト部材2の接合端面2aに形成された凹部2bと、既設部材3の接合端面3aに形成された凹部3bとが連結し、プレキャスト部材2と既設部材3との境界部に凹状の空間が形成される。この凹状の空間内では、プレキャスト部材2の主筋20に取り付けられた継手部材21の連結面21bと、既設部材3の主筋30に取り付けられた継手部材31の連結面31bとが所定間隔を離して対向している。
【0028】
また、プレキャスト部材2と既設部材3とを突き合わせるときは、既設部材3の主筋30の先端部を、箱体40の挿入溝42aに挿入しながら凹部3b内に配置した後に、プレキャスト部材2の主筋20の先端部を、箱体40の挿入溝41aに挿入して凹部2b内に配置することで、箱体40内に両継手部材21,31を収容する。
さらに、箱体40の側面41,42に閉塞板41b、42bを取り付け、各挿入溝41a,42aに挿入された各主筋20,30よりも上方を塞いだ後に、箱体40内に接着材A1を充填する。この実施形態では、接着材A1として溶融金属を箱体40内に充填しており、両継手部材21,31は、箱体40内で接着材A1の中に埋め込まれ、両継手部材の間に接着材A1が介在している。そして、箱体40内で硬化した接着材A1の接着力によって、両継手部材21,31が連結されている。
【0029】
続いて、プレキャスト部材2の接合端面2aと既設部材3の接合端面3aとの間に図示しないグラウト(充填材)を充填するとともに、プレキャスト部材2及び既設部材3の凹部2b,3b内に図示しないグラウト(充填材)を充填して、プレキャスト部材2と既設部材3との接合構造1Aの構築を完了する。
【0030】
以上のような接合構造1Aでは、図1(a)及び(b)に示すように、プレキャスト部材2及び既設部材3の各主筋20,30の継手部材21,31は、各継手部材21,31の間に介在させた接着材A1によって連結されており、プレキャスト部材2と既設部材3との間に施工誤差や製造誤差が生じた場合であっても、両継手部材21,31の間に生じたずれが接着材A1の厚みによって吸収されるため、両継手部材21,31を連結することができる。
【0031】
また、プレキャスト部材2及び既設部材3の各主筋20,30の先端部に設けられた継手部材21,31を連結することで、両主筋20,30を連結しているため、各主筋20,30の先端部を重ね合わせる従来の接合構造のように、プレキャスト部材2や既設部材3の接合端面2a,3aから主筋20,30を突出させる必要がない。したがって、一体のプレキャスト部材2の容積が小さくなり、多数のプレキャスト部材2を施工現場に搬入するときに、一台のトラックに積載可能な個数が多くなるため、搬入効率を高めることができる。
【0032】
また、プレキャスト部材2や既設部材3の接合端面2a,3aから主筋20,30を突出させる必要がないため、接合構造1Aにおける鋼材の重量を小さくすることができる。
【0033】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明は前記第一実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
例えば、前記第一実施形態では、図1(a)及び(b)に示すように、プレキャスト部材2及び既設部材3の接合端面2a,3aを平面に形成しているが、プレキャスト部材2の接合端面2aに形成した凸部と、既設部材3の接合端面3aに形成した凹部とが嵌り合うように構成することもできる。
この構成では、プレキャスト部材2の接合端面2aに形成した凸部がせん断キーの役割りを果たすことになり、プレキャスト部材2の接合端面2aと既設部材3の接合端面3aとの間のせん断力の伝達性能を高めることができる。
なお、プレキャスト部材2の接合端面2aに凹部を形成し、既設部材3の接合端面3aに凸部を形成してもよい。
【0034】
また、プレキャスト部材2及び既設部材3の各接合端面2a,3aの表面に目荒らしを施すことで、プレキャスト部材2の接合端面2aと既設部材3の接合端面3aとの間のせん断力の伝達性能を高めることもできる。
【0035】
また、前記第一実施形態では、主筋20,30を摩擦圧接や溶接などによって継手部材21,31に接合しているが、その接合方法は限定されるものではない。例えば、各主筋20,30の先端部にねじ部を形成し、各継手部材21,31に形成されたねじ孔に各主筋20,30のねじ部をそれぞれ螺合させることで、各主筋20,30を各継手部材21,31に接合することもできる。
【0036】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態の接合構造について説明する。
第二実施形態の接合構造1Bでは、図3(a)及び(b)に示すように、プレキャスト部材2の主筋20に取り付けられた継手部材21の連結面21bと、既設部材3の主筋30に取り付けられた継手部材31の連結面31bとが、プレキャスト部材2及び既設部材3の凹部2b,3b内で所定間隔を離して対向しており、両継手部材21,31の間に接着材A2を介在させることで、両継手部材21,31が連結されている。
【0037】
図4に示すように、接合構造1Bでは、各継手部材21,31の間に形成された隙間の外周部のうち両側部と底部がテープT(被覆部材)によって覆われている。
接合構造1Bを構築するときには、各継手部材21,31の間の外周部をテープTによって覆った状態で、両継手部材21,31の間に液体状の接着材A2を充填しており(図3(b)参照)、両継手部材21,31の間で硬化した接着材A2の接着力によって、両継手部材21,31が連結されている。
なお、液体状の接着材A2としては、無機系、有機系など各種の接着材を用いることができる。
【0038】
以上のような接合構造1Bでは、プレキャスト部材2及び既設部材3の各主筋20,30の継手部材21,31は、両継手部材21,31の間に介在させた接着材A2によって連結されており、プレキャスト部材2と既設部材3との間に施工誤差や製造誤差が生じた場合であっても、両継手部材21,31の間に生じたずれが接着材A2の厚みによって吸収されるため、両継手部材21,31を連結することができる。
【0039】
また、プレキャスト部材2及び既設部材3の各主筋20,30の先端部に設けられた継手部材21,31を連結することで、両主筋20,30を連結しているため、各主筋20,30の先端部を重ね合わせる従来の接合構造のように、プレキャスト部材2や既設部材3の接合端面2a,3aから主筋20,30を突出させる必要がない。したがって、一体のプレキャスト部材2の容積が小さくなり、多数のプレキャスト部材2を施工現場に搬入するときに、一台のトラックに積載可能な個数が多くなるため、搬入効率を高めることができる。
【0040】
また、プレキャスト部材2や既設部材3の接合端面2a,3aから主筋20,30を突出させる必要がないため、接合構造1Bにおける鋼材の重量を小さくすることができる。
【0041】
また、両継手部材21,31の間の外周部がテープTによって覆われており、液体状の接着材A2が両継手部材21,31の間から漏れないため、接着材A2を両継手部材21,31の間に簡単に充填することができる。
【0042】
なお、各継手部材21,31の間隔が大きい場合には、両継手部材21,31の間に板状部材を介在させることで、両継手部材21,31の間の強度を高めることができる。
【0043】
前記第二実施形態の接合構造の変形例としては、図5(a)に示す接合構造1Cのように、プレキャスト部材2及び既設部材3の両継手部材21,31の間に半固体状の接着材A3をへらなど工具を用いて塗り込んでいるものがある。
【0044】
この接合構造1Cにおいて、半固体状の接着材A3として金属パテを用いた場合には、両継手部材21,31の連結面21b,31bの間に塗り込まれた接着材A3に対して、熱を加えたり通電したりすることで、接着材A3を溶融させている。
【0045】
以上のような接合構造1Cでは、両継手部材21,31の間の外周部をテープなどの被覆部材によって覆わなくても、半固体状の接着材A3が両継手部材21,31の間から漏れないため、両継手部材21,31を連結するときの作業効率を高めることができる。
【0046】
さらに、前記第二実施形態の変形例としては、図5(b)に示す接合構造1Dのように、プレキャスト部材2及び既設部材3の両継手部材21,31の間に固体状の接着材A4を挿入しているものがある。
【0047】
この接合構造1Dにおいて、固体状の接着材A4として板状の金属部材を用いた場合には、両継手部材21,31の連結面21b,31bの間に挿入した接着材A4に対して、熱を加えたり通電したりすることで、接着材A4を溶融させ、再度硬化した接着材A4の接着力によって、両継手部材21,31を連結している。
【0048】
以上のような接合構造1Dでは、両継手部材21,31の間に固体状の接着材A4を挿入することで、両継手部材21,31の間に接着材A4を簡単に介在させることができるため、両継手部材21,31を連結するときの作業効率を高めることができる。
【0049】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態の接合構造について説明する。
第三実施形態の接合構造1Eでは、図6(a)に示すように、プレキャスト部材2及び既設部材3の各主筋20,30の先端部が、円筒状の連結部材50内に挿入された状態で(図6(b)参照)、プレキャスト部材2及び既設部材3の接合端面2a,3aに形成された凹部2b,3b内に配置され、連結部材50内には接着材A5が充填されており、両主筋20,30の先端部の間に接着材A5を介在させることで、両主筋20,30の先端部が連結されている。
【0050】
連結部材50は、図6(b)に示すように、円筒状の部材であり、その内径は各主筋20,30の外径よりも大きく形成されている。図6(a)に示すように、各主筋20,30は連結部材50の両端から内部にそれぞれ挿入されており、各主筋20,30の先端部の外周面と、連結部材50の内周面との間には隙間が形成されている。
各主筋20,30の先端部は、接触することなく所定間隔を離して対向した状態で、連結部材50内に配置されており、両主筋20,30の先端部の間で硬化した液体状又は半固体状の接着材A5の接着力によって、両主筋20,30の先端部が連結されている。
【0051】
このような接合構造1Eでは、プレキャスト部材2及び既設部材3の各主筋20,30の先端部は、両主筋20,30の先端部の間に介在させた接着材A5によって連結されており、プレキャスト部材2と既設部材3との間に施工誤差や製造誤差が生じた場合であっても、両主筋20,30の先端部の間に生じたずれが接着材A5の厚みによって吸収されるため、両主筋20,30の先端部を連結することができる。
【0052】
また、プレキャスト部材2及び既設部材3の各主筋20,30の先端部を重ね合わせることなく連結しているため、両主筋20,30の先端部を重ね合わせる従来の接合構造のように、プレキャスト部材2や既設部材3の接合端面2a,3aから主筋20,30を突出させる必要がない。したがって、一体のプレキャスト部材2の容積が小さくなり、多数のプレキャスト部材2を施工現場に搬入するときに、一台のトラックに積載可能な個数が多くなるため、搬入効率を高めることができる。
【0053】
また、プレキャスト部材2や既設部材3の接合端面2a,3aから主筋20,30を突出させる必要がないため、接合構造1Eにおける鋼材の重量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第一実施形態の接合構造を示した図で、(a)は平面図、(b)は側断面図である。
【図2】第一実施形態の接合構造における箱体を示した図で、(a)は継手部材を収容する前の状態を示した斜視図、(b)は継手部材を収容した後の斜視図である。
【図3】第二実施形態の接合構造を示した図で、(a)は平面図、(b)は側断面図である。
【図4】第二実施形態の接合構造における両継手部材の連結状態を示した斜視図である。
【図5】第二実施形態の接合構造の変形例を示した図で、(a)は半固体状の接着材を用いた構成の側断面図、(b)は固体状の接着材を用いた構成の側断面図である。
【図6】第三実施形態の接合構造を示した図で、(a)は平面図、(b)は両主筋の先端部の連結状態を示した斜視図である。
【図7】従来の接合構造を示した側断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1A 接合構造(第一実施形態)
1B 接合構造(第二実施形態)
1C 接合構造(第二実施形態の変形例)
1D 接合構造(第二実施形態の変形例)
1E 接合構造(第三実施形態)
2 プレキャスト部材
2a 接合端面
2b 凹部
3 既設部材
3a 接合端面
3b 凹部
20 主筋
21 継手部材
21b 連結面
30 主筋
31 継手部材
31b 連結面
40 箱体
41a 挿入溝
41b 閉塞板
42a 挿入溝
42b 閉塞板
T テープ
50 連結部材
A1 接着材(第一実施形態)
A2 接着材(第二実施形態)
A3 接着材(第二実施形態の変形例)
A4 接着材(第二実施形態の変形例)
A5 接着材(第三実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャスト部材の接合端面を既設部材の接合端面に突き合わせて接合した接合構造であって、
前記プレキャスト部材及び前記既設部材に主筋が配筋されるとともに、前記プレキャスト部材及び前記既設部材の接合端面に凹部が形成され、
前記各主筋の先端部に設けられた継手部材が対向した状態で前記凹部内に配置されており、
前記両継手部材の間に接着材を介在させることで、前記両継手部材を連結していることを特徴とするプレキャスト部材の接合構造。
【請求項2】
前記両継手部材が箱体内に収容されていることを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト部材の接合構造。
【請求項3】
前記両継手部材の間の外周部が、被覆部材によって覆われていることを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト部材の接合構造。
【請求項4】
前記両継手部材の間に、固体状の前記接着材が挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト部材の接合構造。
【請求項5】
プレキャスト部材の接合端面を既設部材の接合端面に突き合わせて接合した接合構造であって、
前記プレキャスト部材及び前記既設部材に主筋が配筋されるとともに、前記プレキャスト部材及び前記既設部材の接合端面に凹部が形成され、
前記各主筋の先端部が対向した状態で前記凹部内に配置され、前記各主筋の先端部は筒状の連結部材内に挿入されており、
前記連結部材内に接着材を充填することで、前記両主筋の先端部を連結していることを特徴とするプレキャスト部材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−65417(P2010−65417A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231257(P2008−231257)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】