説明

プレス成形方法

【課題】出隅表面を有する成形体の表面を凹凸状に形成する際、凹凸形状の制約を軽減すると共に成形体表面を損傷することなく脱型でき、且つ成形体表面にバリが発生しないプレス成形方法を提供する。
【解決手段】成形材料1を成形型2によりプレス成形して凹凸形状が形成された出隅表面4を有する成形体3を得るプレス成形方法である。成形型2を出隅表面4のコーナー部4aを成形するためのコーナー型5と、コーナー部4aの両側の平面部4bを成形するための二つの平面型6,6とで構成する。成形型2をコーナー型5と各平面型6,6とを一体とした状態で成形材料1に押圧してプレス成形した後、コーナー型5と各平面型6,6とを分離して脱型する。コーナー型5と平面型6,6からの成形材料1への押圧力が集中が防止されて突き合わせ部分の隙間への成形材料1の侵入が抑制される。平面型6,6の脱型方向は成形体3の出隅方向のみには規制されなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁や天井等における出隅部に用いられる出隅役物等のような出隅表面を有する成形体の表面を凹凸状に形成するためのプレス成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁や天井等における出隅部に用いられる出隅役物をプレス成形する方法としては、例えば成形材料1を断面山形状の下型9上に押出成形した後、未硬化状態の成形材料1に入隅状の型面11を有する成形型2’(上型)を押圧してプレス成形する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年、建物の壁等の外面に凹凸加工を施して意匠性の高い外観を付与することが求められており、このため上記のような出隅役物としても、その表面に凹凸形状を形成することが求められている。このとき、出隅役物の外面は二つの平面を90°等の角度をつけて突き合わせた出隅状の面(出隅表面4)であり、このような出隅表面4に凹凸形状を形成することになる。
【0004】
このような出隅役物等の成形体3の出隅表面4に凹凸形状を形成するためには、図3に示すように、上記の成形型2’の型面11に凹凸を形成し、これをプレス成形により転写することが考えられる。
【0005】
ところが、このような成形型2’にて成形体3の出隅表面4をプレス成形にて凹凸形状とする場合には、成形型2’を成形体3の出隅方向に向けて、すなわち出隅表面4の平面状の部分に対して斜め方向に向けて脱型しなければならない。このため、成形体3に形成される凹凸形状によっては、脱型時に成形体3の凹凸形状に型面11の凹凸が食い込んでしまって、成形体3の表面を損傷するおそれがある。このような事態を避けるためには、脱型方向(成形体3の出隅方向)に対する成形体3の出隅表面4の凹部内面の傾斜方向が、この凹部の内側に向けて下り傾斜する方向となるようにして抜き角θを確保することで、成形体3の出隅表面4の凹凸形状が脱型時に成形型2に食い込まないようにしなければならない。すなわち成形型2’の脱型方向が制約されることにより成形体3に形成される凹凸形状が制約を受けてしまうものである。
【0006】
そこで、例えば図4(a)乃至(d)に示すように、一つの平面に凹凸を設けた形状の型面11を有する二つに分割された成形型2’を用い、この成形型2’の端縁同士を各型面11のなす角が90°となるように斜めに突き合わせて成形材料1をプレス成形する方法が考えられる。このようにすると、成形型2’を脱型する際には各成形型2’をそれぞれ別個に移動させればその脱型方向の制約が軽減され、上記のような成形体3の凹凸形状の制約は解消されるものである。
【特許文献1】特開平5−185410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のように二分割した成形型2’を用いてプレス成形を行うと、成形材料1に成形型2’の型面11を押圧した際に、成形型2’同士の突き合わせ部分では二つの成形型2’による異なる方向からの押圧力が集中するためにこの突き合わせ部分の隙間に向けて成形材料1が押し出されやすくなり(図4(c))、このため成形体3の頂点部分にバリ10が発生し(図4(d))、後工程においてこのバリ10を除去する別途の仕上げ作業を行う必要がある。このようなバリ10の発生は、特にセメント系板やセメント系中空押出原板を成形する際に顕著になる。このため、成形性を向上して成形体3の表面にバリ10が生じないようなプレス成形方法が望まれている。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、出隅表面を有する成形体の表面を凹凸状に形成するにあたり、凹凸形状の制約を軽減すると共に成形体表面を損傷することなく脱型を行うことができ、且つ成形体表面にバリが発生しないプレス成形方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るプレス成形方法は、成形材料1を成形型2によりプレス成形して凹凸形状が形成された出隅表面4を有する成形体3を得るプレス成形方法であって、前記成形型2を前記出隅表面4のコーナー部4aを成形するためのコーナー型5と、前記コーナー部4aの両側の平面部4bを成形するための二つの平面型6,6とで構成し、前記成形型2を前記コーナー型5と各平面型6,6とを一体とした状態で成形材料1に押圧してプレス成形した後、前記コーナー型5と各平面型6,6とを分離して脱型することを特徴とする。このため、プレス時には平面型6,6とコーナー型5との突き合わせ部分にこのコーナー型5と平面型6,6からの成形材料1への押圧力が集中することがなくなって、この突き合わせ部分の隙間への成形材料1の侵入が抑制されるものであり、また脱型時には、平面型6,6の脱型方向は成形体3の出隅方向のみに規制されるようなことがなく、成形体3に対して種々の方向に移動させて脱型することができ、平面型6,6の脱型方向とその型面5a,6aに設ける凹凸の形状とを、脱型時の食い込みが生じないように調整して、脱型時に成形体3の表面を損傷させることなく出隅表面4の平面部4bに種々の凹凸形状を形成することができる。
【0010】
また、このようなプレス成形方法においては、上記成形型2の型面5a,6aに上記出隅表面4に目地7を有する凹凸形状を形成するための凹凸を設けると共に前記目地7を形成するための凸部8を上記平面型6の型面6aに設けるようにしても良い。このようにすると、出隅表面4を構成する平面に対して直交する方向に深い目地7を形成する場合でも、平面型6,6に設ける凹凸と平面型6,6の脱型方向を調整することで、脱型時に型面6aが目地7に食い込むことなく脱型することができるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プレス成形時にコーナー型5と平面型6,6との突き合わせ部分の隙間に成形材料1が侵入することによる成形体3のバリ10の発生を抑制することができて、後工程におけるバリ10の除去の手間を削減することができ、しかも平面型6,6によって種々の凹凸形状を成形体3の出隅表面4に形成することができて、成形型2の脱型方向が規制されることによる出隅表面4の凹凸形状の制約を軽減することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のを実施するための最良の形態について説明する。
【0013】
まず、セメント系成形材料等の適宜の成形材料1を押出成形するなどして下型9上に成形する(図1(a))。図示の下型9は上方に突出する断面山形状のものであって、その上面は二つの平面を例えば90°で突き合わせた出隅状の形状を有する。成形材料1はこの下型9の上面に沿った平面視L字状に成形され、その上面がプレス成形により成形体3の出隅表面4として形成される。
【0014】
プレス成形は、上記成形材料1に上型である成形型2を押圧してなされる(図1(b)(c))。この成形型2は、成形体3の出隅表面4のコーナー部4aを成形するためのコーナー型5と、前記コーナー部4aの両側の平面部4bを成形するための二つの平面型6,6とで構成される。出隅表面4のコーナー部4aとは成形体3の出隅表面4における、二つの平面を突き合わせた頂点とその両側の二つの平面の一部で構成される部分であり、平面部4bとは前記コーナー部4aの両側における、前記コーナー部4aに含まれる部分を除く一つの平面のみで構成されている部分である。
【0015】
上記コーナー型5の型面5aは、二つの平面を例えば90°で突き合わせた入隅状の面に転写用の凹凸を設けた形状を有しており、また、各平面型6,6の型面6aは一つの平面に転写用の凹凸を設けた形状を有している。これらは、コーナー型5の両端部にそれぞれ平面型6,6の一端部を突き合わせることにより一体の成形型2が構成されるようになっており、この一体の成形型2の型面5a,6aは、二つの平面を例えば90°で突き合わせた入隅状の面に転写用の凹凸を設けた形状を備えるようになっている。
【0016】
このような成形型2を用いてプレス成形を行うにあたっては、まず上記のようにコーナー型5の両端部にそれぞれ平面型6,6の一端部を突き合わせて一体の成形型2として、この状態で成形型2を下型9上の成形材料1に押圧する。これにより型面5a,6aに押圧された面が出隅表面4として形成されると共に、この出隅表面4に成形型2の型面5a,6aの形状が転写されて凹凸状に形成される。
【0017】
このプレス成形時には、コーナー型5と平面型6,6とは、それぞれの型面5a,6aに沿った方向に互いに突き合わされているため、コーナー型5と平面型6,6からの成形材料1への押圧力は前記突き合わせ部分に集中することがなく、このためコーナー型5と平面型6,6との突き合わせ部分の隙間への成形材料1の侵入が抑制され、それに伴って成形体3の出隅表面4におけるバリ10の発生が抑制されるものである。
【0018】
次に、成形型2を脱型する際には、上記のコーナー型5と各平面型6,6とを分離して別個に脱型するものであり(図1(d))、このときコーナー型5は成形材料1に対して出隅表面4の出隅方向、すなわち出隅表面4の二つの平面のなす角を分割する方向に沿って移動させて脱型し、各平面型6,6は例えばその型面6aと直交する方向に沿って移動させて脱型する。
【0019】
ここで、コーナー型5の型面5aに設けられる凹凸と、平面型6,6の型面6aに設けられる凹凸は、その脱型方向に応じ、各脱型方向に対する成形体3の出隅表面4の凹部内面の傾斜方向が、この凹部の内側に向けて下り傾斜する方向となるようにして、脱型時に型面5a,6aの凹凸が成形体3の出隅表面4に形成される凹凸形状に食い込まないよう抜き角が確保されるように設計され、これにより脱型時の成形体3の表面の損傷が防止される。
【0020】
このようにして成形材料1をプレス成形すると、断面L字状の成形体3が得られ、この成形体3の外面の出隅表面4にはプレス成形により転写された凹凸形状が形成される。このとき、上記のように平面型6,6は型面6aと直交する方向に移動させて脱型を行うことができるため、平面型6,6にて形成される出隅表面4の平面部4bの凹凸形状は、既述の図3に示す場合のような成形型2’を出隅方向にしか脱型できない場合に特有の制約を受けることがなくなるものであり、例えば成形型2’を出隅方向にしか脱型できない場合には型面の凹凸に食い込んでしまうような凹凸形状も形成することができるものである。
【0021】
しかも、平面型6,6の脱型方向は型面6aと直交する方向には限られず、成形体3に対して種々の方向に移動させて脱型することができ、またこのとき平面型6,6の型面6aには、形成される成形体3の凹凸形状が脱型の際に型面6aに食い込まないように設計された凹凸を設けるようにすることができる。このように平面型6,6の脱型方向とその型面6aに設ける凹凸の形状とを、脱型時の食い込みが生じないように調整することにより、脱型時に成形体3の表面を損傷させることなく出隅表面4の平面部4bに種々の凹凸形状を形成することができ、これにより出隅表面4における凹凸形状の制約が軽減されて設計の自由度が広がるものである。
【0022】
また、特に成形体3の出隅表面4に凹溝等で構成される目地7を有する凹凸形状を形成する場合には、図2に示すように平面型6,6の型面6aに前記目地7に対応する凸部8を設けることにより、平面型6,6にて形成される出隅表面4の平面部4bに前記目地7を形成することが好ましい。すなわち、出隅表面4を構成する平面に対して直交する方向に深い目地7を形成する場合、脱型方向が制約されているコーナー型5にて前記目地7を形成すると脱型時に目地7が型面5aに食い込んで成形体3の表面が損傷するおそれがあるが、上記のように平面型6,6にて形成される平面部4bは、平面型6,6の型面6aに設ける凹凸と平面型6,6の脱型方向を調整することで種々の凹凸形状を形成することができるため、平面型6,6にて目地7を形成すると、出隅表面4を構成する平面に対して直交する方向に深い目地7であっても脱型時に型面6aが目地7に食い込むことなく脱型することができるものである。
【0023】
このようにして得られた成形体3は、例えば上記のように成形材料1としてセメント系成形材料を用いている場合には、必要に応じて養生処理を施すなどして硬化成形し、建物の壁や天井等における出隅部に用いられる出隅役物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)乃至(d)は概略の断面図である。
【図2】同上の一部の概略の断面図である。
【図3】従来技術の一例を示す概略の断面図である。
【図4】従来技術の他例を示す概略の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 成形材料
2 成形型
3 成形体
4 出隅表面
4a コーナー部
4b 平面部
5 コーナー型
6 平面型
7 目地
8 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を成形型によりプレス成形して凹凸形状が形成された出隅表面を有する成形体を得るプレス成形方法であって、前記成形型を前記出隅表面のコーナー部を成形するためのコーナー型と、前記コーナー部の両側の平面部を成形するための二つの平面型とで構成し、前記成形型を前記コーナー型と各平面型とを突き合わせて一体とした状態で成形材料に押圧してプレス成形した後、前記コーナー型と各平面型とを分離して脱型することを特徴とするプレス成形方法。
【請求項2】
上記成形型の型面に上記出隅表面に目地を有する凹凸形状を形成するための凹凸を設けると共に前記目地を形成するための凸部を上記平面型の型面に設けることを特徴とする請求項1に記載のプレス成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−305831(P2006−305831A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130068(P2005−130068)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】